説明

超臨界水を反応場とするリグニンのガス化触媒及びリグニンのガス化方法

【課題】超臨界水を反応場とするリグニンのガス化触媒及びリグニンのガス化方法を提供する。
【解決手段】超臨界水中で、リグニンを燃料ガスに変換するリグニンのガス化反応に用いるための触媒であって、高表面積グラファイトにルテニウム金属を担持したグラファイト担持ルテニウム触媒からなるリグニンのガス化触媒、及び、上記グラファイト担持ルテニウム触媒を用いて、超臨界水中で、木質系バイオマスの主成分であるリグニンを燃料ガスに変換することを特徴とするリグニンの燃料ガス化方法。
【効果】従来法と比べて、リグニンを、高選択率で、効率よくメタンや水素などの燃料ガスへ変換することを可能とするリグニンの燃料ガス化技術並びに木質系バイオマス資源の高度利用技術を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系バイオマスの主成分であるリグニンの燃料ガス化反応に関するものであり、更に詳しくは、リグニンのガス化触媒、及び水と担持ルテニウム触媒を用いて、リグニンを、効率よくメタンや水素へ変換する方法に関するものである。難分解性である木質系バイオマスの有効利用技術において、従来の水蒸気ガス化法では、反応温度が800℃以上と高いこと、触媒の劣化が激しいこと、などの問題があり、その解決として、超臨界水中でのガス化法が提案されている。本発明は、利用価値の低い木質系バイオマスを、メタンや水素に変換するための触媒技術を提供するものであり、超臨界水中で、より効率的にリグニンを燃料ガスにすることを可能とするリグニンのガス化触媒及びリグニンのガス化方法並びに木質系バイオマス資源の高度利用技術に関する新技術・新製品を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
おがくずなどの木質系バイオマスの主成分であるリグニンは、アルキルフェノール骨格が、炭素−炭素結合あるいは炭素−酸素−炭素結合によって繋がった構造をしており、その構成成分は、多岐にわたっている。これらのことが原因して、リグニンは、化学反応による有用な物質への変換、及び分離・精製が困難となっており、その有効利用としては、焼却による熱回収がほとんどであるのが実情である。
【0003】
従来、超臨界水中で、担持金属触媒により、リグニンをガス化することができること、及び、単一金属種としては、ルテニウムが高活性であること、が知られている。また、ルテニウム金属を、効率的にガス化反応に関与させるために、高表面積を有する担体に、微粒子のルテニウムを担持させた触媒が、リグニンの超臨界ガス化反応に用いられており、その初期ガス化活性は、チタニア担持ルテニウム(Ru/TiO)触媒>アルミナ担持ルテニウム(Ru/γ−Al)触媒>活性炭担持ルテニウム(Ru/C)触媒の順となっている(非特許文献1、2)。
【0004】
これらのうち、アルミナ担持ルテニウム(Ru/γ−Al)触媒は、超臨界ガス化反応中に担体であるγ−Alがα−Alへ構造変化を起こし、ルテニウムが溶出してしまうという問題点がある。また、活性炭担持ルテニウム(Ru/C)触媒は、担体である活性炭は、高表面積かつ超臨界水中で安定であるが、活性炭担体の細孔内に担持されたルテニウム金属微粒子は、十分にガス化反応に関与することができず、また、リグニンのガス化反応中に生成する低分子化合物が、活性炭の細孔を塞いでしまうといった問題点がある。
【0005】
更に、チタニア担持ルテニウム(Ru/TiO)触媒においては、担体であるチタニアが、超臨界水中で安定で、細孔を有していないため、チタニア表面に担持したルテニウムが、全て外表面に存在し、ガス化反応に関与できるが、チタニア表面積が小さいことから、ルテニウム金属微粒子を、高分散担持できないという問題点がある(非特許文献1、2)。
【0006】
木質系バイオマスは、水蒸気化ガス化により、メタンや水素などの燃料ガスに変換できるが、1000K以上の高温を必要とすること、炭素質の堆積により触媒の失活が速いこと、などの問題点を有する。本発明者らは、これまで、超臨界水と担持ルテニウム触媒を用いることで、木質系バイオマスの主成分であるリグニンを、673Kでガス化できること、担持ルテニウム触媒は、担持されているルテニウム微粒子のサイズが小さいほど、活性が高いこと、活性炭は、超臨界水中で安定であり、担体として有効であること、を報告してきた。
【0007】
担持ルテニウム触媒については、担持されているルテニウム金属の粒子サイズが、より小さいほど、表面に存在する割合が多くなることから、高分散に担持されること、超臨界水反応において、溶出や成長が起こらないことが望ましいこと、が想定される。しかし、実際には、上述のような各種の問題点があることから、当技術分野においては、担持ルテニウム触媒に関して、従来の担持ルテニウム触媒を上回る高活性の触媒を開発することが強く要請されていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】“Stability of Supported Ruthenium Catalysts for Lignin Gasification in Supercritical Water”, Energy & Fuels,20巻,2337−2343頁(2007)
【非特許文献2】“担持金属触媒による超臨界水中でのリグニンのガス化反応”, 触媒,49巻,4号,2337−2343頁(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上述の問題点を解決すべく長年鋭意検討を重ねた結果、従来のチタニア担持ルテニウム触媒よりも、超臨界水中で、効率的にリグニンをガス化することが可能な、高表面積グラファイトに、ルテニウム金属微粒子を担持させた触媒を開発することに成功し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、超臨界水中で、リグニンを効率的にガス化させる触媒を提供することを目的としている。
【0010】
また、本発明は、超臨界水を反応場とする新しいリグニンのガス化触媒であるグラファイト担持ルテニウム触媒を提供することを目的とするものである。更に、本発明は、水と、担持ルテニウム触媒を用いて、木質系バイオマスの主成分であるリグニンを、高選択率で、効率よくメタンや水素へ変換するリグニンのガス化方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)超臨界水中で、リグニンを燃料ガスに変換するリグニンのガス化反応に用いるための触媒であって、高表面積グラファイトにルテニウム金属を担持したグラファイト担持ルテニウム触媒からなることを特徴とするリグニンのガス化触媒。
(2)ルテニウム担持量を0.5〜5wt%の条件となるように高表面積グラファイトにルテニウムを担持した触媒である、前記(1)に記載のリグニンのガス化触媒。
(3)グラファイトを、ルテニウム塩水溶液に含浸したのち、水を蒸発乾固させ、水素気流中で還元処理することを特徴とするグラファイト担持ルテニウム触媒の調製方法。
(4)ルテニウム塩の還元温度が、250〜500℃である、前記(3)に記載のグラファイト担持ルテニウム触媒の調製方法。
(5)ルテニウム塩が、ニトロシル硝酸ルテニウム(III)、又は塩化ルテニウムである、前記(3)に記載のグラファイト担持ルテニウム触媒の調製方法。
(6)前記(1)又は(2)に記載のグラファイト担持ルテニウム触媒を用いて、超臨界水中で、木質系バイオマスの主成分であるリグニンを燃料ガスに変換することを特徴とするリグニンの燃料ガス化方法。
(7)水密度を0.1〜0.5g/cmの範囲に設定する、前記(6)に記載のリグニンの超臨界水ガス化方法。
(8)反応温度を400〜500℃に設定する、前記(6)に記載のリグニンの超臨界水ガス化方法。
【0012】
次に、本発明において更に詳細に説明する。
本発明は、超臨界水中で、リグニンを燃料ガスに変換するリグニンのガス化反応に用いるための触媒であって、高表面積グラファイトにルテニウム金属を担持した、グラファイト担持ルテニウム触媒からなることを特徴とするものである。また、本発明は、木質系リグニンの燃料ガス化方法であって、上記グラファイト担持ルテニウム触媒を用いて、超臨界水中で、木質系バイオマスの主成分であるリグニンを、燃料ガスに変換することを特徴とするものである。
【0013】
本発明者らが種々の実験を経て開発した高表面積グラファイト担持ルテニウム触媒は、例えば、高表面積グラファイトを、ニトロシル硝酸ルテニウム水溶液に含浸し、水を蒸発乾固させたのち、水素気流中で、300℃で処理することにより調製する。
【0014】
用いるルテニウム塩は、ニトロシル硝酸ルテニウム(III)に限定する必要はなく、塩化ルテニウムなども用いることができる。但し、水素還元により、ルテニウム以外の成分を除去させることが望ましい。
【0015】
担持するルテニウム金属の量は、特に制限されないが、より好ましくは、金属として、0.5〜5wt%であり、更に好ましくは1〜2wt%である。担持量が多ければ、ルテニウム金属粒子のサイズが大きくなり、分散度が低下する。
【0016】
担持したルテニウム塩の還元温度は、特に制限はされないが、より好ましくは250〜500℃であり、更に好ましくは300〜400℃である。反応温度が高ければ、微粒子のサイズが大きくなり、分散度が低下する。
【0017】
次に、本発明で用いる担持ルテニウム触媒について、その触媒調製法について具体的に説明する。ルテニウム塩、例えば、ニトロシル硝酸ルテニウム(III)を、所定量の蒸留水と混合することで調製したルテニウム水溶液に、所定量の高表面グラファイトを加え、高表面グラファイト−水スラリーを調製する。このスラリーを、エバポレータなどで処理して水を蒸発させ、得られた粉末を、水素気流中で還元処理して、高表面積グラファイト担持ルテニウム触媒を調製する。
【0018】
更に具体的には、ルテニウム担持量1.5〜5.0wt%を調製する方法として、例えば、ニトロシル硝酸ルテニウム(III)水溶液(ルテニウム含有量1.5〜5.0wt%)5.0〜17.6gを、100mlの蒸留水と混合することで調製したルテニウム水溶液に、高表面グラファイト5.0gを加え、この高表面グラファイト−水スラリーを、調製し、これをエバポレータで処理して水を蒸発させ、得られた粉末を、水素気流中で300℃前後で処理して、高表面積グラファイト担持ルテニウム触媒(ルテニウム担持量1.5〜5.0wt%)を調製する。
【0019】
次に、超臨界ガス化法について説明すると、本発明を容易に実施可能にするために、例えば、リグニン、水及び担持ルテニウム触媒を、反応温度400℃に設定した、内容積6mlのステンレス製反応器に導入して、リグニンをガス化する。
【0020】
反応場としての水の温度及び圧力条件は、臨界点(臨界温度374℃、臨界圧力22.1MPa)以上であれば、特に制限はされないが、反応温度は、より好ましくは380〜500℃であり、更に好ましくは400〜450℃である。反応温度が高ければ、装置のコストや、耐久性が劣ることになる。
【0021】
本発明者らは、木質系バイオマスの超臨界水ガス化反応に高活性を示す新しい触媒を開発することを目標として、ルテニウム金属を種々の担体に担持した触媒を調製し、実際に、活性を評価した結果、グラファイトに、ルテニウム金属を担持した触媒が、最も高い活性を示した。
【0022】
本発明では、表面積の異なる炭素系担体による担持ルテニウム触媒について、触媒活性を比較するために、担体として、高表面積グラファイト(TIMCAL)、粉末状活性炭(関東化学株式会社)、を用いた。担持ルテニウム触媒は、所定量(金属ルテニウム量として、1.5wt%)のルテニウムニトロシル硝酸塩水溶液を、担体に、含浸法により担持後、水素気流中、573Kで、2時間、処理することで、触媒を調製した。水素還元処理した活性炭、グラファイト担持ルテニウム触媒を、Ru/AC、Ru/HSAGと表す。
【0023】
触媒のガス化反応活性は、バッチ法により評価した。触媒、オルガノソルブリグニン(Aldrich)、そして、水を加えた、ステンレス製チューブリアクターを、溶融塩に入れ、揺動した。所定時間の後、チューブリアクターから気体を回収し、ガス量を定量した。
【0024】
回収した気体の一部を用いて、ガスクロマトグラフで組成分析を行った。得られた水スラリーは、水溶性成分、水不溶−テトラヒドロフラン可溶成分、そして、テトラヒドロフラン不溶分、に分離した。水溶性成分は、全有機物分析で、テトラヒドロフラン不溶分は、重量法により決定した。
【0025】
Ru/AC及びRu/HSAG触媒による超臨界水ガス化反応における(リグニン中の炭素を基準とした)気体生成物の回収率を調べた。Ru/AC及びRu/HSAGのどちらにおいても、反応時間とともに、ガス化反応が進行した。ほぼ100%ガス化するのに、Ru/HSAGでは、3時間、Ru/ACでは、4時間以上を要した。また、窒素吸着法により求めた表面積及び細孔容積は、Ru/AC(1100m/g、1.01cm/g)、Ru/HSAG(268m/g、0.44cm/g)であった。
【0026】
リグニンの超臨界水ガス化は、超臨界水によるリグニンのアルキルフェノール類への加水分解と、アルキルフェノール類のルテニウム金属上でのガス化の2段階で進行する。Ru/AC触媒では、細孔を多く有するため、超臨界水中で分解したアルキルフェノール類のルテニウム金属表面への接触が不十分であるために、Ru/HSAGより低い活性を示したものと考えられる。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)リグニンのガス化触媒として有用な新規なリグニンのガス化触媒である高表面積グラファイト担持ルテニウム触媒を提供することができる。
(2)水と、上記担持ルテニウム触媒を用いて、リグニンを、高選択率で、効率よくメタンや水素の燃料ガスへ変換することができる。
(3)水素還元処理した活性炭担持ルテニウム(Ru/AC)触媒を用いた従来法と比較して、約3/4の反応時間で、リグニンをほぼ100%ガス化することができる。
(4)本発明の高表面積グラファイト担持ルテニウム触媒は、リグニンの超臨界水ガス化反応において、従来法のRu/AC触媒よりも高い活性を示す。
(5)木質系バイオマスの超臨界水ガス化反応プロセスに高活性を示す高表面積グラファイト担持ルテニウム触媒、及び当該担持ルテニウム触媒と超臨界水を用いた、木質系バイオマスの超臨界水ガス化技術並びに木質系バイオマス資源の高度利用技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】気体生成物の時間/分に対する回収率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、以下の実施例は、本発明の好適な例を具体的に説明したものであり、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0030】
まず、触媒調製法について具体的に説明する。しかしながら、以下の触媒調製例は、本発明の好適な例を具体的に説明したものであり、本発明は、これらの触媒調製法に限定されるものではない。
【0031】
ニトロシル硝酸ルテニウム(III)水溶液(Wako Chemicals、ルテニウム含有量1.5wt%)5.0gを、100mlの蒸留水と混合することで調製したルテニウム水溶液に、高表面グラファイト(TIMCAL)5.0gを加え、スラリーを得た。この高表面グラファイト−水スラリーを、エバポレータで処理して水を蒸発させた。得られた粉末を、水素気流中、300℃、2時間の条件で還元処理をして、高表面積グラファイト担持ルテニウム触媒(ルテニウム担持量1.5wt%)を調製した。
【実施例2】
【0032】
ニトロシル硝酸ルテニウム(III)水溶液(Wako Chemicals、ルテニウム含有量1.5wt%)17.6gを、100mlの蒸留水に混合することで調製したルテニウム水溶液に、高表面グラファイト(TIMCAL)5.0gを加え、スラリーを得た。この高表面グラファイト−水スラリーをエバポレータで処理して水を蒸発させた。得られた粉末を、水素気流中、300℃、2時間の条件で還元処理をして、高表面積グラファイト担持ルテニウム触媒(ルテニウム担持量5.0wt%)を調製した。
【0033】
(比較例1)
比較として、ニトロシル硝酸ルテニウム(III)水溶液とチタニア及び活性炭から、触媒を調製した。
【0034】
ニトロシル硝酸ルテニウム(III)水溶液(Wako Chemicals、ルテニウム含有量1.5wt%)5.0gを、100mlの蒸留水に混合することで調製したルテニウム水溶液に、粉末状活性炭(関東化学株式会社)5.0gを加え、スラリーを得た。この粉末状活性炭−水スラリーを、エバポレータで処理して水を蒸発させた。得られた粉末を、水素気流中、300℃、2時間の条件で還元処理をして、活性炭担持ルテニウム触媒(ルテニウム担持量1.5wt%)を調製した。
【0035】
(比較例2)
ニトロシル硝酸ルテニウム(III)水溶液(Wako Chemicals、ルテニウム含有量1.5wt%)5.0gを、100mlの蒸留水に混合することで調製したルテニウム水溶液に、チタニア(日本エアロジル(株)P25)5.0gを加え、スラリーを得た。このチタニア−水スラリーを、エバポレータで処理して水を蒸発させた。得られた粉末を、水素気流中、300℃、2時間の条件で還元処理をして、チタニア担持ルテニウム触媒(ルテニウム担持量1.5wt%)を調製した。
【0036】
(比較例3)
ニトロシル硝酸ルテニウム(III)水溶液(Wako Chemicals、ルテニウム含有量1.5wt%)17.6gを、100mlの蒸留水に混合することで調製したルテニウム水溶液に、チタニア(日本エアロジル(株)P25)5.0gを加え、スラリーを得た。このチタニア−水スラリーを、エバポレータで処理して水を蒸発させた。得られた粉末を、水素気流中、300℃、2時間の条件で還元処理をして、チタニア担持ルテニウム触媒(ルテニウム担持量5.0wt%)を調製した。
【0037】
次に、上記担持ルテニウム触媒を用いて、リグニンの燃料ガス化実験を行った。
【実施例3】
【0038】
内容積6mlのステンレス製チューブ反応管に、リグニン(Aldlich)0.1gと、グラファイト担持ルテニウム触媒(ルテニウム担持量1.5wt%)0.2gと、水3gを入れ、反応管内を、0.1MPaの窒素で置換したのち、反応温度400℃、反応時間30分間、の反応条件で、反応処理を行った。処理後、ガス状生成物を捕集し、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、得られた気体は、54mlであり、選択性は、メタン50%、水素11%、二酸化炭素36%、エタン、プロパン、ブタン(C2−C4)2%であった。
【実施例4】
【0039】
実施例3と同様に反応させて、ガス状生成物を得た。但し、反応条件を、以下のようにして反応を行った。
(反応条件)
リグニン:0.1g
触媒:グラファイト担持ルテニウム触媒(ルテニウム担持量1.5wt%)0.2g
水:3g
反応温度:400℃
反応時間:1時間
【0040】
得られたガス状生成物について、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、得られた気体は、68mlであり、選択性は、メタン54%、水素10%、二酸化炭素35%、C2−C4が1%であった。
【実施例5】
【0041】
実施例3と同様に反応させて、ガス状生成物を得た。但し、反応条件を、以下のようにして反応を行った。
(反応条件)
リグニン:0.1g
触媒:グラファイト担持ルテニウム触媒(ルテニウム担持量1.5wt%)0.2g
水:3g
反応温度:400℃
反応時間:2時間
【0042】
得られたガス状生成物について、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、得られた気体は、84mlであり、選択性は、メタン57%、水素7%、二酸化炭素32%、C2−C4のエタン、プロパン、ブタンが1%であった。
【実施例6】
【0043】
実施例3と同様に反応させて、ガス状生成物を得た。但し、反応条件を、以下のようにして反応を行った。
(反応条件)
リグニン:0.1g
触媒:グラファイト担持ルテニウム触媒(ルテニウム担持量5wt%)0.1g
水:3g
反応温度:400℃
反応時間:30分間
【0044】
得られたガス状生成物について、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、得られた気体は、56mlであり、選択性は、メタン52%、水素10%、二酸化炭素36%、C2−C4のエタン、プロパン、ブタンが2%であった。
【実施例7】
【0045】
実施例3と同様に反応させて、ガス状生成物を得た。但し、反応条件を、以下のようにして反応を行った。
(反応条件)
リグニン:0.1g
触媒:グラファイト担持ルテニウム触媒(ルテニウム担持量5wt%)0.1g
水:3g
反応温度:400℃
反応時間:1時間
【0046】
得られたガス状生成物について、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、得られた気体は、84mlであり、選択性は、メタン60%、水素6%、二酸化炭素32%、C2−C4のエタン、プロパン、ブタンが1%であった。
【0047】
(比較例4)
実施例3と同様に反応させて、ガス状生成物を得た。但し、反応条件を、以下のようにして反応を行った。
(反応条件)
リグニン:0.1g
触媒:粉末状活性炭担持ルテニウム触媒(ルテニウム担持量1.5wt%)0.2g
水:3g
反応温度:400℃
反応時間:30分間
【0048】
得られたガス状生成物について、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、得られた気体は、42mlであり、選択性は、メタン39%、水素9%、二酸化炭素49%、C2−C4のエタン、プロパン、ブタンが2%であった。
【0049】
(比較例5)
実施例3と同様に反応させて、ガス状生成物を得た。但し、反応条件を、以下のようにして反応を行った。
(反応条件)
リグニン:0.1g
触媒:粉末活性炭担持ルテニウム触媒(ルテニウム担持量1.5wt%)0.2g
水:3g
反応温度:400℃
反応時間:1時間
【0050】
得られたガス状生成物について、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、得られた気体は、51mlであり、選択性は、メタン38%、水素11%、二酸化炭素49%、C2−C4のエタン、プロパン、ブタンが3%であった。
【0051】
(比較例6)
実施例3と同様に反応させて、ガス状生成物を得た。但し、反応条件を、以下のようにして反応を行った。
(反応条件)
リグニン:0.1g
触媒:粉末活性炭担持ルテニウム触媒(ルテニウム担持量1.5wt%)0.2g
水:3g
反応温度:400℃
反応時間:2時間
【0052】
得られたガス状生成物について、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、得られた気体は、63mlであり、選択性は、メタン51%、水素6%、二酸化炭素39%、C2−C4のエタン、プロパン、ブタンが2%であった。
【0053】
(比較例7)
実施例3と同様に反応させて、ガス状生成物を得た。但し、反応条件を、以下のようにして反応を行った。
(反応条件)
リグニン:0.1g
触媒:チタニア担持ルテニウム触媒(ルテニウム担持量1.5wt%)0.2g
水:3g
反応温度:400℃
反応時間:30分間
【0054】
得られたガス状生成物について、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、得られた気体は、36mlであり、選択性は、メタン35%、水素25%、二酸化炭素38%、C2−C4のエタン、プロパン、ブタンが1%であった。
【0055】
(比較例8)
実施例3と同様に反応させて、ガス状生成物を得た。但し、反応条件を、以下のようにして反応を行った。
(反応条件)
リグニン:0.1g
触媒:チタニア担持ルテニウム触媒(ルテニウム担持量1.5wt%)0.2g
水:3g
反応温度:400℃
反応時間:1時間
【0056】
得られたガス状生成物について、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、得られた気体は、45mlであり、選択性は、メタン35%、水素23%、二酸化炭素41%、C2−C4のエタン、プロパン、ブタンが1%であった。
【0057】
(比較例9)
実施例3と同様に反応させて、ガス状生成物を得た。但し、反応条件を、以下のようにして反応を行った。
(反応条件)
リグニン:0.1g
触媒:チタニア担持ルテニウム触媒(ルテニウム担持量1.5wt%)0.2g
水:3g
反応温度:400℃
反応時間:2時間
【0058】
得られたガス状生成物について、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、得られた気体は、53mlであり、選択性は、メタン42%、水素15%、二酸化炭素39%、C2−C4のエタン、プロパン、ブタンが2%であった。
【0059】
(比較例10)
実施例3と同様に反応させて、ガス状生成物を得た。但し、反応条件を、以下のようにして反応を行った。
(反応条件)
リグニン:0.1g
触媒:チタニア担持ルテニウム触媒(ルテニウム担持量5wt%)0.1g
水:3g
反応温度:400℃
反応時間:30分間
【0060】
得られたガス状生成物について、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、得られた気体は、44mlであり、選択性は、メタン44%、水素21%、二酸化炭素34%、C2−C4のエタン、プロパン、ブタンが1%であった。
【0061】
(比較例11)
実施例3と同様に反応させて、ガス状生成物を得た。但し、反応条件を、以下のようにして反応を行った。
(反応条件)
リグニン:0.1g
触媒:チタニア担持ルテニウム触媒(ルテニウム担持量5wt%)0.1g
水:3g
反応温度:400℃
反応時間:1時間
【0062】
得られたガス状生成物について、ガスクロマトグラフを用いて、分析した。その結果、得られた気体は、56mlであり、選択性は、メタン48%、水素14%、二酸化炭素34%、C2−C4のエタン、プロパン、ブタンが2%であった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上詳述したように、本発明は、木質系バイオマスの主成分であるリグニンを燃料ガスへ変換するグラファイト担持ルテニウム触媒及びリグニンのガス化方法に係るものであり、本発明により、超臨界水と、高表面積グラファイトにルテニウム金属を担持したグラファイト担持ルテニウム触媒を用いることで、従来技術と比較して、より短時間で、木質系バイオマスの主成分であるリグニンを燃料ガスに変換することができる。本発明は、未利用バイオマスを、燃料ガスに変換する新しい担持ルテニウム触媒及び燃料ガス化技術並びに木質系バイオマス資源の高度利用技術を提供することを可能にするものとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界水中で、リグニンを燃料ガスに変換するリグニンのガス化反応に用いるための触媒であって、高表面積グラファイトにルテニウム金属を担持したグラファイト担持ルテニウム触媒からなることを特徴とするリグニンのガス化触媒。
【請求項2】
ルテニウム担持量を0.5〜5wt%の条件となるように高表面積グラファイトにルテニウムを担持した触媒である、請求項1に記載のリグニンのガス化触媒。
【請求項3】
グラファイトを、ルテニウム塩水溶液に含浸したのち、水を蒸発乾固させ、水素気流中で還元処理することを特徴とするグラファイト担持ルテニウム触媒の調製方法。
【請求項4】
ルテニウム塩の還元温度が、250〜500℃である、請求項3に記載のグラファイト担持ルテニウム触媒の調製方法。
【請求項5】
ルテニウム塩が、ニトロシル硝酸ルテニウム(III)、又は塩化ルテニウムである、請求項3に記載のグラファイト担持ルテニウム触媒の調製方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のグラファイト担持ルテニウム触媒を用いて、超臨界水中で、木質系バイオマスの主成分であるリグニンを燃料ガスに変換することを特徴とするリグニンの燃料ガス化方法。
【請求項7】
水密度を0.1〜0.5g/cmの範囲に設定する、請求項6に記載のリグニンの超臨界水ガス化方法。
【請求項8】
反応温度を400〜500℃に設定する、請求項6に記載のリグニンの超臨界水ガス化方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−50924(P2012−50924A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195156(P2010−195156)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】