説明

超電導ケーブル、および超電導ケーブルの接続部

【課題】超電導ケーブル同士を接続する際、接続部においてサイズをできるだけ小さくできる超電導ケーブルをおよびその接続部を提供する。
【解決手段】中心側からフォーマ11と、超電導導体層12と、絶縁層13とを有する超電導ケーブル100であって、フォーマ11は、中心側に設けられ、ステンレス鋼からなる中心側フォーマ11aと、この中心側フォーマ11aの外周に設けられ、銅、アルミニウム、銅合金、およびアルミニウム合金から選ばれる1種以上の金属からなる外側フォーマ11bとを備える。中心側フォーマ11a同士が、互いの外径が等しくなるように突き合わされて固定され、外側フォーマ11b同士も互いの外径が等しくなるように突き合わされて接合されて、超電導導体層12同士が接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中心側からフォーマと、超電導導体層と、絶縁層とを有する超電導ケーブルおよび超電導ケーブルの接続部に関するものである。特に、超電導ケーブル同士を接続する際に、接続部分の長さおよび径方向の大きさをできるだけ小さくできる超電導ケーブルおよび超電導ケーブルの接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Bi系高温超電導テープ線などからなる超電導導体を用いた超電導ケーブルにおいて、ケーブルコアは、中心から順にフォーマ(例えば被覆絶縁付き軟銅より線)、超電導導体層、電気絶縁層、シールド層、保護層を備えている。超電導導体層は、フォーマ上に超電導線材を多層に螺旋状に巻回して構成される。電気絶縁層は、半合成絶縁紙を巻回して構成される。シールド層は、電気絶縁層上に超電導線材を螺旋状に巻回して構成される。そして、ケーブルコアを真空断熱用の二重SUS管の内部に収納している。
【0003】
フォーマは、事故時の短絡電流を通電できることが要求されるだけでなく、超電導ケーブルの初期冷却時に発生する熱応力(引張力)に耐えられる機械的強度が要求される。このため、強度的に充分な断面積を有することが必要であるとともに、充分な電流容量を確保できる断面積を有することが必要となる。しかし、ケーブル全体の外径が大きくならないようにする必要もあることから、フォーマの外径の大径化を抑えるために、通常は、銅素線を絶縁被覆(例えばエナメルで被覆)したものを撚り合わせて構成している。
【0004】
以上のような超電導ケーブルを用いて、長距離に亘る線路を構築する場合、複数の超電導ケーブルを繋ぎ合わせて所定の長さの線路を構築している。各超電導ケーブルの接続は、特許文献1に開示されているような接続部を用いて行われる。
【0005】
即ち、超電導ケーブル同士を接続する場合には、例えば特許文献1に示されているように、ケーブルのフォーマ同士を銅からなる接続スリーブで圧縮接続している。通常、接続スリーブは、長手方向中心部にフォーマを圧縮する小径部と、超電導導体が所定の隙間を介して挿入される大径部とを有し、小径部でフォーマを圧縮した後、大径部の内面と超電導導体との間の隙間に半田を流し込んで接続スリーブと超電導導体とを接続するようになっている。
【0006】
フォーマ同士を接続する方法としては、ケーブルコアの外側から、段剥ぎして、最終的にフォーマを露出させた後、フォーマの素線を広げて、端部の素線絶縁被覆を除去し、素線を巻戻してフォーマ同士を突き合わせた状態で、接続スリーブで圧縮接続する方法がある。
【0007】
ここで、接続スリーブでフォーマ接続を行う際、接続スリーブを介してフォーマ同士の電流容量を確保するために、上記したようにフォーマの素線絶縁被覆を除去した上で、圧縮接続をすることが必要となる。
【0008】
そして、超電導導体と接続スリーブとの接続は、超電導導体をそのまま接続スリーブに接続することもできるが、フォーマの剥ぎ出し部分に接続スリーブの逃がし代を設ける場合に、逃がし代まで超電導導体を除去したときは、超電導導体と接続スリーブとを接続用導体を介して接続している。
【0009】
フォーマを接続スリーブで接続する場合、「短絡電流の通電」「冷却時の熱応力へ対応するための所定の機械的強度」の両方を満足するために、通常は、銅製の接続スリーブを用いて圧縮接続を行っている。
【0010】
【特許文献1】特開2005−353379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、超電導導体を接続するまでの接続作業は、概略以下(1)〜(5)の作業で実施する。
【0012】
(1) 両側ケーブルのケーブルコアにおけるフォーマの剥ぎ出しを行う。
(2) 治具を用いて、フォーマ素線の絶縁剥ぎ出しを行う。
(3) 接続スリーブを一方のフォーマに嵌めこむ。このとき、一方のフォーマには、接続スリーブの逃がし代が必要となる。
(4) 圧縮機による接続スリーブとフォーマとの圧縮接続作業を行う。このとき、圧縮機を据え付けるための作業スペースが必要となるし、また、圧縮作業による接続スリーブの伸び代を考慮する必要がある。
(5) 超電導線材と接続スリーブとを半田付けにより接続する作業を行う。
【0013】
上記(1)のフォーマの剥ぎ出しは、フォーマ素線を広げる際に、超電導導体に損傷を与えないようにするため、接続スリーブの長さよりも長く剥き出す必要がある。
【0014】
さらに、上記(3)の接続スリーブをフォーマに挿通する作業のとき、超電導導体の機械的強度を考慮してむやみに曲げておくことができないので、フォーマの剥ぎ出し部分には、接続スリーブの逃がし代も必要となる。この逃がし代は無駄になっている。
【0015】
また、接続スリーブは、短絡電流に対応できる電流容量を確保する大きな断面積が必要となる。また、接続スリーブの機械的強度は、接続スリーブのフォーマを把持する長さと断面積で決まり、接続スリーブはフォーマの強度以上の機械的強度を必要とするため、長さが長くなるだけでなく、径も大きくなる。
【0016】
さらに、接続スリーブは、銅により形成されているため、接続スリーブでフォーマを圧縮接続したとき、常電導導体の接続スリーブと、ケーブルコアの超電導導体との接続部分が生じる。そのため、この接続部分で発熱が起こり得る場合がある。
【0017】
また、接続スリーブの断面積を増大させて電流容量を大きくし、発熱を抑えるようにすると、接続スリーブの外径が超電導導体の外径よりも大きくなる。しかも、このように接続スリーブの外径が大きくなると、層方向に電界ストレスが発生するため、電界ストレス緩和のためのストレスコーンを設ける必要がでてくる。このように、接続スリーブとストレスコーンを設けることにより、接続部全体が径方向および長手方向に大きくなる可能性もある。
【0018】
以上のように、本発明は、超電導ケーブル同士を接続する際、接続部においてサイズをできるだけ小さくできる超電導ケーブルをおよびその接続部を提供することを主目的とする。
【0019】
また、本発明の他の目的は、超電導ケーブルの接続部において、接続部の電気抵抗が大きくならないようにすることができる超電導ケーブルおよびその接続部を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の超電導ケーブルは、中心側からフォーマと、超電導導体層と、絶縁層とを有する超電導ケーブルであって、フォーマは、中心側に設けられ、ステンレス鋼からなる中心側フォーマと、この中心側フォーマの外周に設けられ、銅、アルミニウム、銅合金、およびアルミニウム合金から選ばれる1種以上の金属からなる外側フォーマとを備えることを特徴とする。
【0021】
中心側フォーマは、超電導導体層の形状維持部材としての機能を有し、外側フォーマは、短絡電流の通電用部材としての機能を有する。
【0022】
中心側フォーマは、超電導導体層の形状を維持するために、所定の強度が得られる断面積とする。
【0023】
外側フォーマは、例えば、銅、アルミニウム、銅合金、およびアルミニウム合金のうちのいずれかの金属で形成される複数の素線を中心側フォーマの外周に螺旋状に巻きつけて形成することができるし、銅、アルミニウム、銅合金、およびアルミニウム合金のうちのいずれかの金属で形成した管状体で構成することもできる。素線を用いる場合、その外周を絶縁被覆することが好ましい。
【0024】
本発明の超電導ケーブルは、以上のようにフォーマを、機械的強度に優れたステンレス鋼で形成する中心側フォーマと、短絡電流容量に必要な電流容量を確保できる銅、アルミニウム、銅合金、およびアルミニウム合金から選ばれる1種以上の金属からなる外側フォーマとを有する構成としている。その結果、中心側フォーマ同士の接続によってケーブルの接続部に所定の機械的強度が得られるようにし、外側フォーマで短絡電流へ対応するようにして、それぞれに機能を分担させることができる。
【0025】
従って、従来の接続スリーブを使用しなくても、機械的強度を充分満足できる接続部の構造が得られるようになり、接続部の長手方向の寸法を短くでき、組立に必要なスペースも小さくできる。
【0026】
即ち、中心側フォーマがステンレス鋼から形成されているので、フォーマ全体としての機械的強度を向上でき、ケーブルコア同士を接続する際、この機械的強度の強い中心側フォーマ同士を例えば溶接により接続して固定することにより、従来のような接続スリーブを用いることなく、所定の機械的強度を維持した接続を行えるようになる。
【0027】
さらに、接続スリーブが不要となるので、ケーブル接続部での接続長さを短くできるだけでなく、接続部の径方向の大きさも、超電導ケーブルの径と、ほとんど変わらない大きさにできる。しかも、接続スリーブを使用しないことで、接続部の沿層方向電界ストレスを低減できる。
【0028】
中心側フォーマは、ステンレス鋼管で形成してもよいし、ステンレス鋼の撚り線や、メッシュ部材や、テープ線材で形成してもよい。
【0029】
ステンレス鋼管で形成する場合には、中心側フォーマは、中空の状態にできるので、この中心側フォーマの内部に冷媒通路を形成することが好ましい。冷媒通路に、液体窒素などの冷媒を流通させることにより、超電導導体層、中心側フォーマ、外側フォーマなどの導体を中心側から冷却して、温度上昇を抑制することができる。
【0030】
中心側フォーマを、メッシュ部材で形成する場合には、メッシュ部材で中実状に形成することが好ましい。なお、メッシュ部材は、細いステンレス線の周りに巻きつけて中実状に中心側フォーマを形成することが好ましい。このように中心側フォーマを、メッシュ部材で形成することにより、ステンレス鋼という大きな機械的強度を持ちながら、ケーブルの曲げに対応できる可撓性を有するようになり、ケーブルコア自体の剛性を向上させることができる。
【0031】
中心側フォーマを、テープ線材で形成する場合には、スパイラルに巻きつけて筒状に形成することが好ましい。このように、スパイラル構造にすることで、中心側フォーマを、ステンレス鋼という大きな機械的強度を持ちながら、ケーブルの曲げに対応できる可撓性を有するようになり、ケーブルコア自体の剛性を向上させることができる。さらに、筒状の中心側フォーマ内部を冷媒通路にすることができる。
【0032】
中心側からフォーマと、超電導導体層と、絶縁層とを有する超電導ケーブル同士を接続する本発明の超電導ケーブルの接続部は、超電導ケーブルのフォーマが、中心側に設けられ、ステンレス鋼からなる中心側フォーマと、この中心側フォーマの外周に設けられ、銅、アルミニウム、銅合金、およびアルミニウム合金から選ばれる1種以上の金属からなる外側フォーマとを備え、中心側フォーマ同士が、互いの外径が等しくなるように突き合わされて固定され、外側フォーマ同士も互いの外径が等しくなるように突き合わされて接合されて、超電導導体層同士が接続されていることを特徴とする。
【0033】
本発明の超電導ケーブルの接続部は、低温領域でも使用可能で機械的強度の強いステンレス鋼の中心側フォーマ同士を突き合わせて固定することにより、従来の接続スリーブを使用しなくても、機械的強度を充分満足できる接続部の構造が得られる。また、銅、アルミニウム、銅合金、およびアルミニウム合金から選ばれる1種以上の金属の導体を用いて外側フォーマを形成しているので、短絡電流容量に必要な電流容量を確保できる。
【0034】
その結果、本発明の超電導ケーブルの接続部は、長手方向の寸法と径方向の寸法とを短くでき、組立に必要なスペースも小さくできる。しかも、接続スリーブを使用しないことで、接続部の沿層方向電界ストレスを低減できる。
【0035】
さらに、本発明の超電導ケーブルの接続部の構造は、超電導導体層同士を接続スリーブを用いることなく接続するので、常電導導体の接続スリーブを用いた場合に生じていた発熱を回避できる。
【0036】
超電導ケーブルの超電導導体層同士は、外側フォーマの接合部分を覆い、超電導部材からなる接続用超電導導体層を介して接続することもできる。このように、超電導導体層同士を、同じ超電導部材からなる接続用超電導導体層を介して接続することにより、ケーブルコアを段剥ぎしても、電気抵抗がほとんど無い状態でケーブルの接続が可能となる。
【0037】
超電導導体としては、銀などのマトリクス中にBi2223系などの超電導フィラメントが多数本埋め込まれた超電導線材を用いることができる。超電導導体層は、外側フォーマ上に超電導線材を螺旋状に巻回した構成が挙げられる。このとき超電導線材は、通常、多層に巻回される。超電導導体層の超電導線材同士の接続は、例えば、半田付けにより行うことができる。
【0038】
接続用超電導導体層も、前記超電導線材を用いることができ、多数の超電導線材を超電導導体層間に掛け渡すように超電導導体層の外周全周に均等配置し、半田付けにより接続することができる。
【0039】
また、超電導導体層の接続部分の外側には、補強絶縁層を設けることが好ましい。この補強絶縁層は、外径を超電導ケーブルの絶縁層の外径と等しくすることが好ましい。補強絶縁層は、接続部において、電気絶縁を確保する部材である。この補強絶層は、絶縁紙を超電導導体層の外周に巻回することにより形成することができる。本発明では、補強絶縁層は、従来の接続スリーブを設けた場合のように、厚みの大きいストレスコーンを形成する必要が無く、接続部を小さくできる。
【0040】
さらに、超電導ケーブルのケーブルコアは、絶縁層の外側にシールド層を形成してもよい。例えば、絶縁層の上に、超電導導体層と同じ超電導線材を螺旋状に巻回して、シールド層を形成することができる。
【0041】
シールド層を設ける場合も、ケーブルを接続する際には、接続部の補強絶縁層の外側に、このシールド層と同じ外径のまま、シールド層の超電導線材同士を突き合わせて半田付けにより接続することが好ましい。
【0042】
なお、本発明の超電導ケーブルは、単心超電導ケーブルはもちろんのこと、2心、3心などの複数のケーブルコアを撚り合わせた超電導ケーブルにも適用できる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の超電導ケーブルによれば、中心側フォーマ同士の接続によってケーブルの接続部に所定の機械的強度が得られるようにし、外側フォーマで短絡電流へ対応するようにしているので、従来の接続スリーブを使用しなくても、機械的強度を充分満足できる接続部の構造が得られる。その結果、接続部の長手方向の寸法と径方向の寸法を小さくでき、しかも、組立に必要なスペースも小さくできる。さらに、接続スリーブを使用しないことで、接続部の沿層方向電界ストレスを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の超電導ケーブルの実施の形態を説明する。本実施形態では、断熱管内に三心のケーブルコアが収納された超電導ケーブルの構成について説明する。
【0045】
本発明の超電導ケーブル100は、図2に示すように、3心のケーブルコア10と、そのケーブルコア10を収納する断熱管20とから構成されている。各ケーブルコア10は、中心から順に、フォーマ11、超電導導体層12、絶縁層13、シールド層14、保護層15を有している。
【0046】
フォーマ11は、ステンレス鋼からなる中心側の中心側フォーマ11aと、この中心側フォーマ11aの外周に設けられ、銅、アルミニウム、銅合金、およびアルミニウム合金のうちのいずかの金属からなる外側フォーマ11bとを備える。
【0047】
中心側フォーマ11aは、ステンレス鋼管(SUS管)で形成されており、中心側フォーマ11aの筒内部に冷媒通路を形成する。
【0048】
外側フォーマ11bは、銅、アルミニウム、銅合金、およびアルミニウム合金のうちのいずかの金属の素線を中心側フォーマ11aの外周に多層で螺旋状に巻き付けて形成している。銅等の素線は、絶縁被覆が施されている。
【0049】
超電導導体層12は、外側フォーマ11b上に超電導線材を多層で螺旋状に巻き付けて形成している。この超電導線材は、銀マトリクス中にBi2223系超電導フィラメントが多数本埋め込まれて形成されている。
【0050】
絶縁層13は、絶縁紙とポリプロピレンフィルムとを接合した半合成紙を超電導導体層12上に巻き付けて形成している。
【0051】
シールド層14は、超電導導体層12に用いたものと同様の超電導線材を絶縁層13上に多層に巻き付けて形成している。
【0052】
一方、断熱管20は、内管21および外管22を備える二重管からなり、内外管21、22の間に真空断熱層が構成される。内管21および外管22は、いずれもコルゲート管で構成されている。真空断熱層内には、プラスチックメッシュと金属箔を積層したいわゆるスーパーインシュレーション(商品名)が配置されている。さらに、外管の外側には、順次、防食層23、保護被覆層(図示せず)が形成される。
【0053】
断熱管20における内管21内部および中心側フォーマ11aの内部は、ケーブルコア10を冷却する液体窒素などの冷媒を充填する冷媒流通路となっている。
【0054】
本実施形態の超電導ケーブルは、上記構成を有する複数のケーブルコア10が撚り合わされた状態で前記断熱管20内に収納されている。
【0055】
次に、上記超電導ケーブル同士を接続した接続部の構成を図1に基づいて説明する。
【0056】
上記した超電導ケーブル100同士を接続する場合、断熱管20の端部から各ケーブルコア10を一定長さ露出させる。そして、ケーブルコア10の端部において、保護層15を端部から所定長さ分除去し、超電導シールド層14の端部を一旦ほぐして広げ、絶縁層13を露出させる。その状態で、さらに、絶縁層13を所定長さ分除去する。絶縁層13を除去する長さは、超電導導体層12の超電導線材と、フォーマ11の外側フォーマ11bの素線とをほぐして広げた状態で中心側フォーマ11aを溶接して接続固定する際に、作業の支障にならない十分な長さとする。
【0057】
なお、超電導導体層12の端部とフォーマ11の端部を同じ長さとして、超電導導体層12の超電導線材と、フォーマ11の外側フォーマ11bの素線をほぐして広げるようにしてもよいが、図1に示すように、外側フォーマ11bの端部が露出するように、超電導導体層12の長さを短くするようにしてもよい。図のように、超電導導体層12の長さが短い場合には、超電導導体層12の端部同士を接続するように、接続用超電導導体層3を設けるようにする。
【0058】
そして、超電導導体層12の超電導線材をほぐして広げ、さらに、外側フォーマ11bの素線をほぐして広げる。この状態で中心側フォーマ11aを溶接して接続固定する。本実施形態では、超電導導体層12の超電導線材と外側フォーマ11bの素線をほぐして広げるが、従来のように接続スリーブは使用しないので、接続スリーブの逃がし代は設ける必要が無くなる。
【0059】
そして、外側フォーマ11bの素線を元の状態に巻き戻し、外側フォーマ11bの素線同士を突き合わせて半田付けにより接合する。半田付けの場合、半割れの薄肉のスリーブカバー(例えば、銅管)を用いれば、半田付けの作業性が良い。この状態では、中心側フォーマ11aは、接続固定する前と同じ外径となっている。なお、外側フォーマ11bの素線は、半田付けするために、ほぐして広げた際に端部の絶縁被覆層を剥がしておく。外側フォーマ11bの素線は、端部の絶縁被覆を剥がして半田付けで接続しているので、この半田部分が中心側フォーマ11aのSUS管と接触することになり、SUS管と外側フォーマ11bの素線とが繋がった状態にでき、SUS管にも電流を流すことができる。
【0060】
さらに、超電導導体層12の超電導線材を元の状態に巻き戻し、各超電導導体層12の超電導線材の端部同士を接続用超電導導体層3で連結して超電導線材と接続用超電導導体層3とを半田付けにより接合する。
【0061】
接続用超電導導体層3は、超電導導体層12の端部に接触するように、超電導導体層12の全周亘って、等間隔で配置して掛け渡される多数の超電導線材と、これら超電導線材をモールドする樹脂部とから構成されている。
【0062】
接続用超電導導体層3を形成する方法としては、まず、対向する超電導導体層12の端部にそれぞれ接触するように多数の超電導線材を、超電導導体層12の全周亘って、等間隔で配置して掛け渡す。そして、接続用超電導導体層3の超電導線材と超電導導体層12の超電導線材とを半田付けにより接続する。最後に接続用超電導導体層3の超電導線材を樹脂でモールドして、接続用超電導導体層3を超電導導体層12の一部と、外側フォーマ11bを覆うように形成する。
【0063】
このように、超電導導体層12を接続用超電導導体層3で接続するので、接続部の電気抵抗を小さくでき、発熱を抑制できる。
【0064】
次に、接続用超電導導体層3を設けた状態で、超電導導体層12の露出している端部と、接続用超電導導体層3とを覆うように補強絶縁層4で覆う。補強絶縁層4は、絶縁紙を超電導導体層12の露出している端部と、接続用超電導導体層3とを覆うように巻き付けて形成することができる。この補強絶縁層4の外径は、ケーブルコア10の絶縁層13と同じ外径になるように形成する。
【0065】
次に、補強絶縁層4の上に、一旦ほぐして広げておいたシールド層14の超電導線材を巻き戻し、超電導線材同士を突き合わせて半田付けにより接続する。このシールド層14同士の接続により、シールド層14も、接続部において、超電導ケーブルの外径と同じ外径にすることができる。
【0066】
保護層15も接続部において、超電導ケーブルの外径と同じ外径となるように形成しなおす。
【0067】
以上のようにして超電導ケーブル同士を接続するので、接続部の外径は、ケーブルコア10の外径とほぼ同じ外形とすることができ、超電導ケーブルの接続部を小型化することができる。
【0068】
さらに、本実施形態では、中心側フォーマ11aのステンレス鋼管同士を溶接により固定することで強度を持たせることができる。その結果、従来必要としていた接続スリーブの逃がし代分の剥ぎ出し長さを無くすことができて接続部の長手方向の長さを小さくできる。さらに、接続スリーブを用いた場合には、層方向のストレスが大きくなるため、補強絶縁層を含めて接続部の外径が大きくなっていたが、本実施形態では接続スリーブが不要になるので、接続部の径を小さくでき、全体的にコンパクトにできる。
【0069】
上記した実施形態では、中心側フォーマ11aにSUS管を用いたが、テープ状ステンレス鋼をスパイラル巻きして、筒状に形成することにより、所定の可撓性が得られるようにしてもよい。スパイラル構造とすることにより、中心側フォーマ11aが筒状に形成され、筒内部を冷媒通路にすることができる。さらに、編組線のようにメッシュ構造のステンレス鋼を用いて、全体の断面積で必要な強度を得ながら、メッシュ構造で可撓性を得るようにしてもよい。
【0070】
また、フォーマ11の中心側フォーマ11aは、ケーブル全長に亘って形成してもよいし、ケーブル端部の所定長さだけ形成するようにしてもよい。
【0071】
本発明の超電導ケーブルは、直流送電用、交流送電用の何れの超電導ケーブルで採用してもよい。直流送電用に用いる場合には、フォーマの素線絶縁が不要となり、フォーマには被覆無しの素線を用いることができる。
【0072】
さらに、本発明の超電導ケーブルの構造および接続部の構造は、上記した実施形態に限らないのであり、本発明の範囲が上記実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明超電導ケーブルおよびその接続部の構成は、交流送電又は直流送電といった電力供給に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明超電導ケーブルのケーブル同士の接続部における部分断面図を示す。
【図2】本発明超電導ケーブルの径方向断面図である。
【符号の説明】
【0075】
100 超電導ケーブル
10 ケーブルコア
11 フォーマ 11a 中心側フォーマ 11b 外側フォーマ
12 超電導導体層 13 絶縁層
14 シールド層 15 保護層
20 断熱管 21 内管 22 外管 23 防食層
3 接続用超電導導体層 4 補強絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心側からフォーマと、超電導導体層と、絶縁層とを有する超電導ケーブルであって、
フォーマは、中心側に設けられ、ステンレス鋼からなる中心側フォーマと、この中心側フォーマの外周に設けられ、銅、アルミニウム、銅合金、およびアルミニウム合金から選ばれる1種以上の金属からなる外側フォーマとを備えることを特徴とする超電導ケーブル。
【請求項2】
中心側フォーマがステンレス鋼管で形成され、中心側フォーマの内部に冷媒通路を形成していることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブル。
【請求項3】
中心側フォーマが、メッシュ部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブル。
【請求項4】
中心側フォーマは、テープ線材をスパイラルに巻きつけて筒状に形成していることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブル。
【請求項5】
中心側からフォーマと、超電導導体層と、絶縁層とを有する超電導ケーブル同士を接続する超電導ケーブルの接続部であって、
超電導ケーブルのフォーマは、中心側に設けられ、ステンレス鋼からなる中心側フォーマと、この中心側フォーマの外周に設けられ、銅、アルミニウム、銅合金、およびアルミニウム合金から選ばれる1種以上の金属からなる外側フォーマとを備え、
中心側フォーマ同士が、互いの外径が等しくなるように突き合わされて固定され、外側フォーマ同士も互いの外径が等しくなるように突き合わされて接合されて、超電導導体層同士が接続されていることを特徴とする超電導ケーブルの接続部。
【請求項6】
超電導ケーブルの超電導導体層同士は、外側フォーマの接合部分を覆い、超電導部材からなる接続用超電導導体層を介して接続されていることを特徴とする請求項5に記載の超電導ケーブルの接続部。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−226624(P2008−226624A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62585(P2007−62585)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】