説明

超電導ケーブルの接続方法、接続部材、接続部材の製作治具及び接続部材の製作方法

【課題】作業現場に半田等の導電性接着材を用意する必要がなく、作業性よく超電導ケーブル同士を接続することができる超電導ケーブルの接続部材を提供する。
【解決手段】この接続部材1は、すだれ状に配列された複数の接続用超電導線材5が、幅方向に懸け渡される仮固定部材6によって仮固定され、かつ各接続用超電導線材5の両端下部の接続面に導電性接着材層7,7が形成されている。このような接続部材1を、超電導ケーブル4,4同士を接続している接続スリーブ8に巻き付けて、各導電性接着材層7,7を段剥ぎした超電導ケーブル4,4の超電導体層3,3の接続部に対応当接させて、各接続部をまとめて加熱することにより作業性よく接続することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーマの外周に超電導体層を有する超電導ケーブル同士を接続するための超電導ケーブルの接続方法、接続部材、接続部材の製作治具及び接続部材の製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多心一括型超電導ケーブル(以下、超電導ケーブルという)は、内管と外管からなる二重管構造に形成された断熱管内にケーブルコアを収納してなり、両管の間には真空断熱層が形成され、外管の外周には防食層が形成されている。一方、ケーブルコアは、中心から順にフォーマ、超電導導体層、絶縁層、シールド層、保護層が形成されている。その超電導導体層は、複数本の超電導線材を線条体のフォーマの外周に螺旋状に巻き付けることにより形成されている。
【0003】
このような超電導ケーブル同士を接続する際には、まず、段剥ぎ処理によって露出させたフォーマの接続端同士を接続スリーブに挿入して該接続スリーブを圧縮することによってフォーマの接続端同士を接続する。そして、接続用の超電導線材を接続スリーブに縦沿い状に懸け渡してその両端を接続対象となる両方の超電導導体層に半田付けして電気的に接続する作業を順次繰り返しおこなう方法が採られていた(例えば特許文献1参照)。尚、接続用の超電導線材は、超電導導体層を構成する超電導線材と同一素材からなり、これを例えば400mm長程度に切断したもの等が用いられ、通常は、その断面形状は偏平なテープ状を呈している。
【0004】
【特許文献1】特開2007−28710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のように、接続用の超電導線材を1本ずつ個々に順次両方の超電導導体層に懸け渡して半田付けする接続方法では作業能率がきわめて低かった。即ち、まず、半田付けする作業回数が多くなる難点があった。また、半田等の導電性接着材を作業現場に用意しなければならないことも面倒であった。さらに、通常、接続されるべき超電導ケーブルは長尺なため、接続作業時に回動させることができない。従って、接続スリーブの下部に懸け渡した接続用の超電導線材の両端を半田付けする作業は狭隘な箇所で上向き作業を強いられるので容易ではなく作業性がよくなかった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされ、作業現場に半田等の導電性接着材を用意する必要がなく、作業性よく超電導ケーブル同士を接続することができる超電導ケーブルの接続方法、接続部材、接続部材の製作治具及び接続部材の製作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の超電導ケーブルの接続方法は、フォーマの外周に超電導体層を有する超電導ケーブル同士を接続するための超電導ケーブルの接続方法であって、
超電導ケーブルの対向し合う両接続端をそれぞれ段剥ぎ処理して所定長のフォーマを露出させ、該露出させたフォーマ同士を突き合わせた状態に接続する工程と、
複数の接続用超電導線材をすだれ状に仮固定してなる接続部材を前記フォーマ同士の接続部の外周に巻き付けて、各接続用超電導線材の両端を、接続対象となる両方の超電導体層の接続端の表面に懸け渡した状態とする工程と、
加熱手段により各接続用超電導線材の両端に形成された導電性接着材層を両超電導体層の接続端に対してそれぞれ溶融接続する工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
このような接続方法によれば、フォーマ同士を接続した後、その接続部の外周に接続部材を巻き付ける。すると、各接続用超電導線材の両端に形成された導電性接着材層が、接続対象となる両方の超電導体層の(円環状の)接続端に被さるように対応当接した状態になる。従って、例えばリング状に加熱線を配列したヒータ等からなる加熱手段を用いて接続箇所をまとめて加熱することにより作業性よく超電導ケーブル同士を接続することができる。また、各接続用超電導線材の両端に予め導電性接着材層が形成されているため、作業現場で、別途、導電性接着材を用意する必要がなくなる。尚、接続部における電流容量を適切に確保するために、接続対象となる超電導ケーブルの超電導体層を構成する超電導線材と同じ本数の接続用超電導線材を具えた接続部材によって超電導ケーブル同士を接続するのが望ましい。また、接続対象となる超電導ケーブルが複数の超電導体層が積層されてなる場合には、同じ層数の接続用超電導線材を積層した多層構成の接続部材によって接続すればよい。その場合、接続部材の接続用超電導線材の接続端を段違い状に形成しておけば、段剥ぎ処理した超電導ケーブルの各層の接続端に、各超電導体層の接続端をそれぞれ段違い状に対応当接させることができるので、それらの接続箇所をまとめて加熱することにより作業性よく接続作業を完了することができる。また、フォーマ同士を接続スリーブを介して接続する場合には、接続スリーブの外周に接続部材を巻き付ければよい。
【0009】
このような接続方法では、前記超電導ケーブル同士を接続する際に、前記接続部材を前記フォーマ同士の接続部の外周に仮止め状態に固定するのが好ましい。このようにすれば、各接続用超電導線材の両端の導電性接着材層を超電導体層の接続端に対して安定な対応当接状態に保持させることができるため、加熱手段による接続作業時に、接続箇所のアライメントが安定状態に保持されるので良好な接続状態が得られる。接続部材を仮止めするための仮止部材は、例えばガラステープ等を使用することができる。ガラステープは耐熱性と絶縁性を有する粘着性テープで取り扱いやすく作業性も良好であり仮止部材として好適である。
【0010】
前記フォーマ同士を接続スリーブを介して接続する場合、前記各接続用超電導線材の前記接続スリーブの両端部に対応する部分を補強材によって補強するのが好ましい。補強材として例えば銅テープ等の補強効果のある導電性粘着テープを接続用超電導線材の上面に沿わせて貼り付ければよい。このような補強を施すことによって、接続用超電導線材の上に例えばPPLP(住友電気工業株式会社の登録商標,Poly-Propylene Laminated Paper)等からなる絶縁層やシールド層等を巻き付ける際又は取り扱い時等に、接続スリーブの両端付近で接続用超電導線材が傾斜している部分に圧力が作用しても座屈による破損、損傷等のトラブルが発生するのを回避することができる。
【0011】
本発明の超電導ケーブルの接続部材は、フォーマの外周に超電導体層を有する超電導ケーブル同士を接続するための接続部材であって、
すだれ状に配列された複数の接続用超電導線材と、
各接続用超電導線材の幅方向に懸け渡されて、これら接続用超電導線材を相互に仮固定する仮固定部材と、
前記各接続用超電導線材の両端下部の接続面に形成される導電性接着材層とを備えることを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、フォーマ同士を接続スリーブによって接続した後、接続スリーブの外周に接続部材を巻き付けると、各接続用超電導線材の両端に形成された導電性接着材層が、両方の超電導体層の接続端に被さるように対応当接した状態になる。従って、例えばリング状に加熱線を配列したヒータ等からなる加熱手段を用いて、その接続箇所をまとめて加熱することによって作業性よく超電導ケーブル同士の接続作業を完了することができる。また、各接続用超電導線材の両端に予め導電性接着材層が形成されているため、作業現場で、別途、導電性接着材を用意する必要がなくなる。尚、フォーマ同士を接続スリーブを用いることなく接続する場合においては、その接続部の外周に接続部材を巻き付けるようにすればよい。また、仮固定部材としては、例えば絶縁性、耐熱性のある粘着性テープを用いるのが好ましいが、これに限定されることなく、接続用超電導線材を相互に仮固定することができれば仮固定部材の構成の如何を問わない。このような仮固定部材を各接続用超電導線材の幅方向に所定間隔おきに複数本懸け渡すようにすれば、取り扱い時及び作業時等にも、各接続用超電導線材をすだれ状に安定な状態で保持することができる。
【0013】
このような超電導ケーブルの接続部材では、前記各接続用超電導線材がビスマス系超電導線材からなるのが好ましい。ビスマス系超電導材料からなる接続用超電導線材は、ビスマス系超電導材料を銀合金で覆って形成されるため表裏の区別がなく、導電性接着材として例えばSn−Ag系の半田材(半田ペースト)を用いることで良好な半田施工性が得られる。即ち、超電導ケーブルのビスマス系超電導材料からなる超電導体層の上に半田材を介して接続部材のビスマス系超電導材料からなる接続用超電導線材を載せた状態で外部からヒータ等で加熱することによって銀合金を介在させた状態でビスマス系超電導材料同士が良好な導通状態で接合される。
【0014】
前記各接続用超電導線材が中間導電性接着材層を介して複数層に形成され、かつ、各接続用超電導線材は、両端下部に所定の接続面を確保するために必要な長さだけ、上側に積層される接続用超電導線材の長さが下側に積層される接続用超電導線材よりも大に設定されるようにしてもよい。このような接続部材を用いることにより、超電導ケーブルの接続端を段剥ぎして、各超電導体層が段違い状の円環状となるようにして、その接続部に接続部材を巻き付けると、各超電導体層の接続端に各接続用超電導線材の接続端を対応当接させることができるので、接続箇所をまとめて加熱することにより作業性よく接続作業を完了することができる。このよう接続された接続部での電流容量の低下はない。中間導電性接着材層は導電性接着剤層と同一材料が利用できる。
【0015】
前記各層の接続用超電導線材の両端下部の接続面に形成される導電性接着材層は、中間導電性接着材層よりも厚く形成されるようにしてもよい。このようにすれば、接続用超電導線材の両端下部の接続面に形成される導電性接着材層が加熱溶融された際に、余分の導電性接着材が接続用超電導線材間の隙間に侵入するので超電導ケーブルに対する接続部材の接着強度が向上する。導電性接着剤層は接続用超電導線材における所定の接続面の他、同線材の側面や端面に形成されていてもよい。このようにすれば、加熱溶融時に接続用超電導線材間の隙間や接続スリーブと本発明接続部材との隙間などに導電性接着剤層を充填できる。
【0016】
本発明の超電導ケーブルの接続部材の製作治具は、フォーマの外周に超電導体層を有する超電導ケーブル同士を接続するための接続部材を製作するための製作治具であって、所定長の接続用超電導線材を嵌め込むための複数の凹部を、互いの間隔を詰めて横並びに整列させた状態で基板に形成してなることを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、例えば、基板に形成された各凹部の両端に半田ペースト等の粘着性のある導電性接着材を配置した後、各凹部に、所定長に切断された接続用超電導線材を嵌め込み、接続用超電導線材の両端下部に導電性接着材層を形成する。そして、2〜3本の粘着テープ等からなる仮固定部材を各接続用超電導線材の幅方向に懸け渡して各接続用超電導線材同士をすだれ状に仮固定すれば、接続部材を得ることができる。このような凹部を有する基板は、例えば樹脂材の型成形等によって容易に形成することができ、安価に提供することができる。尚、接続用超電導線材の両端下部に形成する導電性接着材層は、各接続用超電導線材を凹部に嵌め込む前に形成しておいてもよく、各接続用超電導線材同士をすだれ状に仮固定した後で形成してもよい。
【0018】
上記のような製作治具を用いて超電導ケーブルの接続部材を製作するための方法では、前記基板に形成された各凹部の両端に導電性接着材を配置した後、各凹部に所定長に切断された接続用超電導線材を嵌め込んで、各接続用超電導線材の両端下部に導電性接着材層を形成し、さらに、仮固定部材を各接続用超電導線材の幅方向に懸け渡して各接続用超電導線材同士をすだれ状に仮固定することを特徴とする。
【0019】
このような方法によれば、まず、基板に形成された各凹部の両端に半田ペースト等の粘着性を有する導電性接着材を配置する。そして、各凹部に所定長に切断された接続用超電導線材を嵌め込んで、各接続用超電導線材の両端下部に導電性接着材層を形成する。次いで、仮固定部材を各接続用超電導線材の幅方向に懸け渡して各接続用超電導線材同士をすだれ状に仮固定すれば、接続部材を得ることができ、製作容易である。尚、仮固定部材は、所定間隔おきに複数本懸け渡すようにすれば、各接続用超電導線材同士を安定したすだれ状に保持しやすくなる。また、粘着性のない導電性接着材を使用する際には、接続用超電導線材の両端下部に接着剤を塗布してからその接続用超電導線材を凹部に嵌め込めばよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の超電導ケーブルの接続方法によれば、超電導ケーブルの接続端を段剥ぎしてフォーマ同士を接続した後、その接続部の外周に複数の接続用超電導線材をすだれ状に仮固定してなる接続部材を巻き付ける。すると、各接続用超電導線材の両端に形成された導電性接着材層が、両方の超電導体層の接続端に対応当接する。従って、例えばリング状に加熱線を配列したヒータ等からなる加熱手段を用いて、接続箇所をまとめて加熱することにより作業性よく超電導ケーブル同士を接続することができる。また、各接続用超電導線材の両端に予め導電性接着材層が形成されているため、作業現場で、別途、導電性接着材を用意する必要がなくなる。
【0021】
本発明の超電導ケーブルの接続部材は、すだれ状に配列された複数の接続用超電導線材が、各接続用超電導線材に幅方向に懸け渡される仮固定部材によって相互に仮固定され、かつ前記各接続用超電導線材の両端下部の接続面に導電性接着材層が形成されているので、超電導ケーブルの接続端を段剥ぎしてフォーマ同士を接続した後、その接続部の外周に、このような接続部材を巻き付けると、各接続用超電導線材の両端に形成された導電性接着材層が、両方の超電導体層の接続端に対応当接する。従って、例えばリング状に加熱線を配列したヒータ等からなる加熱手段を用いて、接続箇所をまとめて加熱することにより作業性よく超電導ケーブル同士を接続することができる。また、各接続用超電導線材の両端に予め導電性接着材層が形成されているため、作業現場で、別途、導電性接着材を用意する必要がなくなる。
【0022】
本発明の超電導ケーブルの接続部材の製作治具は、所定長の接続用超電導線材を嵌め込むための複数の凹部を、互いの間隔を詰めて横並びに整列させた状態で基板に形成してなるので、まず、例えば、基板に形成された各凹部の両端に半田ペースト等の導電性接着材を配置する。そして、各凹部に、所定長に切断された接続用超電導線材を嵌め込み、接続用超電導線材の両端下部に導電性接着材層を形成する。次いで、仮固定部材を各接続用超電導線材の幅方向に懸け渡して各接続用超電導線材同士をすだれ状に仮固定すれば、接続部材を得ることができ、製作容易である。
【0023】
上記のような製作治具を用いて超電導ケーブルの接続部材を製作するための方法では、まず、基板に形成された各凹部の両端に半田ペースト等の導電性接着材を配置する。次いで、各凹部に所定長に切断された接続用超電導線材を嵌め込んで各接続用超電導線材の両端下部に導電性接着材層を形成する。そして、仮固定部材を各接続用超電導線材の幅方向に懸け渡して各接続用超電導線材同士をすだれ状に仮固定すれば、接続部材を得ることができ、製作容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態に係る超電導ケーブルの接続方法、接続部材、接続部材の製作治具及び接続部材の製作方法について説明する。図1(a)は接続用超電導線材をすだれ状に一体化してなる接続部材の斜視図、(b)は接続用超電導線材の接続端の断面図、(c)は接続部材を超電導ケーブル同士の接続部に巻き付けた状態の側面図である。
【0025】
この超電導ケーブルの接続部材1は、図1(c)に示すように、フォーマ2の外周に複数の超電導線材を撚り合わせた超電導体層(単層)3が形成された超電導ケーブル4,4同士を接続するために使用される。この超電導ケーブル4は、図示を省略するが、超電導体層3の外側に、絶縁層、シールド層、保護層が形成され、これらが断熱管内に収納された構成になっている。この接続部材1は、図1(a)及び(b)に示すように、所定の間隔をおいてすだれ状に配列された複数の接続用超電導線材5が、その幅方向に懸け渡される仮固定部材6によって相互に仮固定されてなる。その仮固定部材6には、絶縁性、耐熱性に優れたカプトンテープ(商品名)等の粘着テープを用いることができるが、柔軟なシート材等で各接続用超電導線材5を所定の間隔をおいて仮固定してもよい。各接続用超電導線材5の両端下部の接続面には半田ペースト等からなる導電性接着材層7,7が被着形成されている。尚、接続用超電導線材5の本数は、接続対象となる超電導ケーブル4の超電導体層3を構成する超電導線材の本数と同数であることが好ましい。接続用超電導線材5は、超電導体層3を構成する超電導線材と同一素材からなり、これを例えば400mm長程度に切断したものを用いることができ、通常は、その断面形状は偏平なテープ状を呈しているが、特に、その形状を特定するものではない。また、各接続用超電導線材5は、図示のように平行に配列されればよいが、接続対象となる超電導体層3,3の超電導線材の撚り方向に合わせて配列されてもよい。
【0026】
このような接続部材1で超電導ケーブル4,4同士を接続するには、まず、超電導ケーブル4,4の対向し合う両接続端をそれぞれ段剥ぎ処理して所定長のフォーマ2,2を露出させる。次いで、該露出させたフォーマ2,2同士を突き合わせて銅合金等からなる接続スリーブ8で接続する。そして、接続スリーブ8の外周に接続部材1を巻き付けて、各接続用超電導線材5の両端を、接続対象となる両方の超電導体層3,3の接続端の表面に被せるように懸け渡す。すると、各接続用超電導線材5の両端の導電性接着材層7が両方の超電導体層3,3の接続端に対応当接した状態になる。さらに、別途用意してあるガラステープ等からなる仮止部材9によって接続部材1を仮止め状態に固定する。このとき、仮固定部材6を取り外して、図1(c)に示すような状態とする。尚、ガラステープ等からなる仮止部材9に代えて、開閉自在な半割れ状の保持具によって接続部材1を仮止め状態に挟み付けるようにしてもよい。また、充分に絶縁性、耐熱性のある仮固定部材を用いれば、必ずしも仮止部材9を用いる必要はない。
【0027】
このような状態で、例えばリング状に加熱線を配列したヒータ等からなる加熱手段(図示省略)を用いて、接続部10をまとめて加熱することによって超電導ケーブル4,4同士を作業性よく接続することができる。加熱手段による加熱作業は、片方の接続部10の全ての接続箇所を同時に加熱した後、他方の接続部10を加熱するようにしてもよく、両方の接続部10,10を同時に加熱してもよい。
【0028】
このような接続方法では、仮止部材9によって各接続用超電導線材5の両端の導電性接着材層7,7を両方の超電導体層3,3の接続端に対して安定な状態に保持させることができるため、加熱手段による接続作業時に、接続箇所のアライメントを安定状態に保持させることができるので良好な接続状態が得られる。また、各接続用超電導線材5の両端に予め導電性接着材層7,7が形成されているため、作業現場で、別途、導電性接着材を用意する必要がなくなる。
【0029】
接続部材1の接続用超電導線材5の本数は、接続対象となる超電導ケーブル4の超電導体層3を構成する超電導線材と同数であればよいが、このような接続部材1を接続スリーブ8に巻き付けたときに、接続用超電導線材5が1,2本ラップするような場合があっても、ラップさせたまま接続端同士を加熱することによって接続部全体として良好な導通接続状態を得られ接続部では適切な電流容量を確保することができる。
【0030】
また、上述のような接続作業が完了した後、例えば図3(a)に示すように、各接続用超電導線材5の接続スリーブ8の両端部(テーパー状の部分)に対応して若干傾斜している部分を粘着性を有する銅テープ等の補強材5a,5aによって補強するのが好ましい。このような補強を施すことによって、接続用超電導線材5の上に絶縁層やシールド層、保護層等を巻き付ける際又は取り扱い時等に、その部分に圧力が作用しても各接続用超電導線材5の座屈による破損、損傷等のトラブルが発生するのを回避することができる。
【0031】
上述のような接続部材1を構成する各接続用超電導線材5はビスマス系超電導線材からなるのが好ましい。ビスマス系接続用超電導線材は、ビスマス系超電導材料の表裏両面を銀合金で覆って形成されるため表裏の区別がなく、導電性接着材7として例えばSn−Ag系の半田材(半田ペースト)を用いることで良好な半田施工性が得られる。即ち、ビスマス系超電導線材からなる超電導体層3と接続用超電導線材5の間に半田材を介在させて外部からヒータ等で加熱することによって超電導体層3と接続用超電導線材5を良好な導通状態に接続することができる。従って、ビスマス系超電導線材からなる接続用超電導線材5を具えた接続部材1は、ビスマス系超電導線材からなる超電導体層3,3を有する超電導ケーブル4,4同士の接続に最適である。尚、このようなビスマス系超電導線材からなる接続部材1を運搬・保管する際には、半田材の酸化を防止するために、窒素ガスを封入した容器に入れることが望ましい。
【0032】
また、ビスマス系超電導線材からなる接続用超電導線材5を具えた接続部材1は、このようなビスマス系超電導線材からなる超電導体層を有する超電導ケーブル同士の接続に限定されることなく、ビスマス系超電導線材からなる超電導体層とイットリウム系超電導線材からなる超電導体層の接続、又は、イットリウム系超電導線材からなる超電導体層同士の接続にも使用することができる。ビスマス系超電導線材はIc値が高く電気的性能が良い(ビスマス系超電導線材のIc値=200Aに比し、イットリウム系超電導線材のIc値=140A)。従って、ビスマス系超電導線材からなる超電導体層とイットリウム系超電導線材からなる超電導体層の接続、又は、イットリウム系超電導線材からなる超電導体層同士の接続にビスマス系超電導線材からなる接続用超電導線材5を具えた接続部材1を使用しても、接続部での電流容量の低下はなく、コストが安くなるという利点もある。
【0033】
図2(a)は、3層の超電導体層3を具えた超電導ケーブル4,4同士の接続部と3層構成の接続用超電導線材5(51,52,53)を具えた接続部材1の対応関係を示す模式的な断面図、(b)は接続用超電導線材5の接続端の断面図である。図示のように、3層構成の超電導体層3を段剥ぎ処理して段違い状に露出させた超電導体層(の接続端)31,32,33に対して、各接続用超電導線材51,52,53の両端下部に形成した導電性接着材層7,7が、段違い状に対応するように、所定の接続面を確保するために必要な長さだけ、上側に積層される接続用超電導線材52,53の長さを下側に積層される接続用超電導線材51,52よりも大に設定している。また、各接続用超電導線材51,52,53はそれぞれ中間導電性接着材層71,72によって相互に接合されている。
【0034】
このような多層構成の接続部材1も、各接続用超電導線材5を平行に配列して仮固定部材6によってすだれ状に仮固定して使用することができる。尚、各接続用超電導線材5を、超電導ケーブル4の各超電導体層3を構成する超電導線材の撚りの方向に合わせて配列するようにしてもよい。このような多層構成の接続用超電導線材5からなる接続部材1に対する補強対策については、図示は省略するが、接続スリーブ8のテーパー状に形成された両端部で若干傾斜状となる最上層の接続用超電導線材5(ここでは接続用超電導線材53)の上側部分が銅テープ等の補強材5aによって補強されればよい(図3(b)参照)。また、中間導電性接着材層71,72は、接続対象となる超電導テープ線材52,53の下面全長にわたって塗布形成されていてもよい。さらに、接続スリーブ8と当接する超電導線材51の下面全長に渡って導電性接着材層が塗布形成されてもよい。これにより、縦添え超電導線材51とスリーブ8間のずれがなくなり、超電導線材51を補強することもできる。
【0035】
また、各層の接続用超電導線材5の両端下部の接続面に形成される導電性接着材層7を、中間導電性接着材層71,72よりも厚く形成するのが好ましい(図2(b)参照)。このようにすれば、接続用超電導線材5の両端下部の接続面に形成される導電性接着材層7が加熱溶融された際に、余分の導電性接着材が隣接する接続用超電導線材5,5間の隙間に侵入するので(図示省略)、超電導ケーブル4と接続部材1の接合強度(接着力)が向上する。
【0036】
図1に示すような接続部材1を製作するための治具は、例えば図4に示される。図4(a)は、製作治具の平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。これらの図に示すように、この製作治具11は、所定長の接続用超電導線材5を嵌め込むための複数の凹部12を、互いの間隔を詰めて横並びに整列させた状態で基板13に形成したものである。
【0037】
このような製作治具により接続部材1を製作するには、例えば、基板13に形成された各凹部12の両端に半田ペースト等の粘着性のある導電性接着材を配置した後、各凹部12に、所定長に切断された接続用超電導線材5を嵌め込み、接続用超電導線材5の両端下部に導電性接着材層7,7を形成する。そして、2〜3本の仮固定部材6を各接続用超電導線材5の幅方向に懸け渡して各接続用超電導線材5同士をすだれ状に仮固定すれば、接続部材1を形成することができる。このような凹部12を有する基板13は、例えばMCナイロン(登録商標)等の樹脂材の型成形等によって容易に形成することができ、安価に提供することができる。尚、粘着性のない導電性接着材を用いる場合は、接続用超電導線材5の両端下部に接着剤を塗布しておけばよい。また、接続用超電導線材5の両端下部に形成する導電性接着材層7,7は、接続用超電導線材5を凹部12に嵌め込む前に形成しておいてもよく、各接続用超電導線材5同士をすだれ状に仮固定した後で形成してもよい。また、基板13上の仮固定部材6を懸け渡す箇所に予め蝋材等を塗っておけば、各接続用超電導線材5に仮固定した後で、その仮固定部材6を基板13から容易に取り外すことができる。また、図示は省略するが、多層構成の接続用超電導線材5からなる接続部材1を製作する治具は、例えば図2(a)の断面図に示すように、各接続用超電導線材5を段違い状に積み重ねることができるように、両端部を段違い状に形成した各凹部12を有する基板13を製作すればよい。尚、本発明は、実施の形態に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない限りにおいて適宜必要に応じて改良変更等は自由である。また、本発明でいう超電導体層は、超電導線材で形成される超電導導体層だけでなく、シールド層をも含む。従って、本発明は、シールド層の接続にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の超電導ケーブルの接続方法によれば、超電導ケーブル同士をきわめて作業性よく接続することができるため、超電導ケーブル同士の現場の接続作業に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(a)は本発明の実施の形態に係る超電導ケーブルの接続部材の斜視図、(b)は接続用超電導線材の接続端の断面図、(c)は接続部材を超電導ケーブル同士の接続部に巻き付けた状態の側面図である。
【図2】(a)は、多層の超電導体層を具える超電導ケーブル同士の接続部と多層構成の接続用超電導線材を具えた接続部材の対応関係を示す模式的な断面図、(b)は多層構成の接続用超電導線材の接続端の断面図である。
【図3】(a)は単層構成の超電導ケーブル同士の接続部の縦断面図、(b)は多層構成の超電導ケーブル同士の接続部の半断面図である。
【図4】(a)は製作治具の平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 接続部材
2 フォーマ
3,31,32,33 超電導体層
4 超電導ケーブル
5,51,52,53 接続用超電導線材
5a 補強材
6 仮固定部材
7 導電性接着材(層)
71,72 中間導電性接着材層
8 接続スリーブ
9 仮止部材
10 接続部
11 製作治具
12 凹部
13 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーマの外周に超電導体層を有する超電導ケーブル同士を接続するための超電導ケーブルの接続方法であって、
超電導ケーブルの対向し合う両接続端をそれぞれ段剥ぎ処理して所定長のフォーマを露出させ、該露出させたフォーマ同士を突き合わせた状態に接続する工程と、
複数の接続用超電導線材をすだれ状に仮固定してなる接続部材を前記フォーマ同士の接続部の外周に巻き付けて、各接続用超電導線材の両端を、接続対象となる両方の超電導体層の接続端の表面に懸け渡した状態とする工程と、
加熱手段により各接続用超電導線材の両端に形成された導電性接着材層を両超電導体層の接続端に対してそれぞれ溶融接続する工程とを備えることを特徴とする超電導ケーブルの接続方法。
【請求項2】
前記超電導ケーブル同士を接続する際に、前記接続部材を前記フォーマ同士の接続部の外周に仮止め状態に固定することを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブルの接続方法。
【請求項3】
前記フォーマ同士を接続スリーブを介して接続する場合、前記各接続用超電導線材の前記接続スリーブの両端部に対応する部分を補強材によって補強することを特徴とする請求項1又は2に記載の超電導ケーブルの接続方法。
【請求項4】
フォーマの外周に超電導体層を有する超電導ケーブル同士を接続するための接続部材であって、
すだれ状に配列された複数の接続用超電導線材と、
各接続用超電導線材の幅方向に懸け渡されて、これら接続用超電導線材を相互に仮固定する仮固定部材と、
前記各接続用超電導線材の両端下部の接続面に形成される導電性接着材層とを備えることを特徴とする超電導ケーブルの接続部材。
【請求項5】
前記各接続用超電導線材がビスマス系超電導線材からなることを特徴とする請求項4に記載の超電導ケーブルの接続部材。
【請求項6】
前記各接続用超電導線材が中間導電性接着材層を介して複数層に形成され、かつ、各接続用超電導線材は、両端下部に所定の接続面を確保するために必要な長さだけ、上側に積層される接続用超電導線材の長さが下側に積層される接続用超電導線材よりも大に設定されることを特徴とする請求項4又は5に記載の超電導ケーブルの接続部材。
【請求項7】
前記各層の接続用超電導線材の両端下部の接続面に形成される導電性接着材層は、中間導電性接着材層よりも厚く形成されることを特徴とする請求項6に記載の超電導ケーブルの接続部材。
【請求項8】
フォーマの外周に超電導体層を有する超電導ケーブル同士を接続するための接続部材を製作するための製作治具であって、
所定長の接続用超電導線材を嵌め込むための複数の凹部を、互いの間隔を詰めて横並びに整列させた状態で基板に形成してなることを特徴とする超電導ケーブルの接続部材の製作治具。
【請求項9】
請求項8に記載の超電導ケーブルの接続部材の製作治具を用いて、前記超電導ケーブルの接続部材を製作するための方法であって、
前記基板に形成された各凹部の両端に導電性接着材を配置した後、各凹部に所定長に切断された接続用超電導線材を嵌め込んで、各接続用超電導線材の両端下部に導電性接着材層を形成し、さらに、仮固定部材を各接続用超電導線材の幅方向に懸け渡して各接続用超電導線材同士をすだれ状に仮固定することを特徴とする超電導ケーブルの接続部材の製作方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−245477(P2008−245477A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85962(P2007−85962)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】