説明

超電導モータシステム

【課題】冷凍機を含む超電導モータシステムにおいて、超電導モータの運転再開を早期に行え、かつ、超電導モータの運転停止時のエネルギ使用量を減少させることである。
【解決手段】超電導モータシステムは、収容容器14に収容する超電導モータ10と、超電導モータ10を冷却する冷凍機12と、超電導モータ10の温度を検出する温度センサ17と、制御部16とを備える。制御部16は、超電導モータ10の運転停止時において、温度センサ17の検出値に基づいて、予め設定した所定条件成立時まで、超電導モータ10が、運転可能な可動温度のうち、最も高い可動温度よりも高い所定温度または所定温度範囲で冷却されるように冷凍機12を作動させ続ける。これにより、冷凍機12の作動時の消費電力を、超電導モータ10を運転停止時に可動温度で冷却し続ける場合よりも低くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導モータと、超電導モータを冷却する冷却装置と、超電導モータの運転停止時において、冷却装置の作動を制御する制御部とを備える超電導モータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気自動車またはハイブリッド車両等のモータを搭載した電動車両が知られている。電気自動車は、モータを駆動源として車両の左右両側の左右車輪を駆動する。ハイブリッド車両は、モータと内燃機関とを備え、モータと内燃機関とのうち、少なくとも一方を主駆動源として、車両の左右両側の左右車輪を駆動する。
【0003】
また、このような電動車両に使用するモータとして、超電導モータを使用し、エネルギ使用量を低減することが考えられる。超電導モータは、コイルとして金属系超電導体や、酸化物高温超電導体等の超電導材料を用いることで、小電力で大きな磁場を発生でき、駆動力を大きくできる。
【0004】
このような超電導モータは、駆動時に駆動に伴う発熱、例えば、鉄損及びACロスと呼ばれる交流電流の通電による発熱や、超電導モータを筐体である収容容器内に固定するための構造材や外気などから熱侵入が発生する可能性がある。したがって、超電導状態を維持し続けるためには、超電導モータを冷却装置により冷却することが考えられる。
【0005】
一方、超電導モータの運転停止時においては、駆動による発熱はなく、超電導モータを断熱性を有する収容容器内に固定している構造材や外気などからの熱侵入のみを補償すればよい。このため、超電導モータを運転停止時においても、超電導モータを、予め設定した温度であり、運転可能な温度である「可動温度」に保つためには、冷却装置の冷却能力を小さくして運転することができる。なお、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−56839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ただし、電動車両等、限られたエネルギ源しか有しない装置に超電導モータを使用する条件では、超電導モータと、冷却装置とを含む超電導モータシステム全体のエネルギを有効利用するためには、超電導モータの運転停止時のエネルギ使用量を減少させることが好ましい。これに対して、超電導モータの運転停止時に冷却装置の運転を常に停止させることも考えられるが、この場合には、運転停止時に超電導モータの温度が常温等、高い温度になる可能性があり、運転再開時に超電導モータの始動に要する時間が過度に長くなる可能性がある。
【0008】
これに対して、特許文献1には、加熱機構または冷却機構により冷却される被温度制御体の温度が予め設定された第1設定温度となった状態が所定時間継続した場合に、加熱機構または冷却機構の運転を停止し、被温度制御体の温度が予め設定された第2設定温度となった状態が別の所定時間継続したことを条件として、加熱機構または冷却機構の運転を再開するよう制御する制御装置が記載されている。
【0009】
このような特許文献1に記載された構成は、飲料供給装置の冷却装置または加熱機構を有する装置であり、その目的は、冷却装置で生成される氷塊の氷厚を精度よく制御することである。特許文献1には、冷却装置を含む超電導モータシステムにおいて、超電導モータの運転再開を早期に行え、かつ、超電導モータの運転停止時のエネルギ使用量を減少させることのできる手段は開示されていない。
【0010】
本発明の目的は、冷却装置を含む超電導モータシステムにおいて、超電導モータの運転再開を早期に行え、かつ、超電導モータの運転停止時のエネルギ使用量を減少させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る超電導モータシステムは、筐体に収容された超電導モータと、超電導モータを冷却する冷却装置と、超電導モータの温度を検出する温度センサと、超電導モータの運転停止時において、温度センサの検出値に基づいて、予め設定した所定条件成立時まで、超電導モータが、予め設定した運転可能な可動温度のうち、最も高い可動温度よりも高い、所定温度または所定温度範囲で冷却されるように冷却装置を作動させ続ける制御部とを備えることを特徴とする超電導モータシステムである。なお、「運転可能な可動温度」は、「超電導モータを運転する場合の、超電導モータの臨界温度以下の予め定めた一定の温度であり、例えば77K以下の一定温度」を意味する。また、「可動温度」は、予め定めた設定にしたがって、超電導モータの運転状態や、運転環境に応じて、臨界温度以下のある範囲内で変動させる場合のそれぞれの設定温度も含む。なお、可動温度が変動しない場合には、上記の「最も高い可動温度」とは、可動温度そのものを意味する(以下、同様とする。)。
【0012】
また、本発明に係る超電導モータシステムにおいて、好ましくは、制御部は、所定条件を、超電導モータの運転準備開始信号が入力されることとして設定している。
【0013】
また、本発明に係る超電導モータシステムにおいて、好ましくは、制御部は、超電導モータの運転停止時において、所定条件成立時まで超電導モータが可動温度よりも高い所定温度または所定温度範囲で冷却されるように、PID制御により、冷却装置の作動を制御する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る超電導モータシステムによれば、制御部が、超電導モータの運転停止時において、温度センサの検出値に基づいて、予め設定した所定条件成立時まで、超電導モータが可動温度のうち、最も高い可動温度よりも高い所定温度または所定温度範囲で冷却されるように冷却装置を作動させ続けるので、冷却装置を含む超電導モータシステムにおいて、超電導モータの運転再開を早期に行え、かつ、超電導モータの運転停止時のエネルギ使用量を減少させることができる。また、超電導モータの運転停止時の温度変化を小さい範囲に抑制でき、温度変化に伴う構成部材の膨張、収縮による繰り返し応力を緩和でき、耐久性を有効に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態の超電導モータシステムの構成を、一部を断面にして示す図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる超電導モータの運転停止時における、冷凍機の制御状態と、モータ温度変化との1例を示す図である。
【図3】図1の構成において、超電導モータの熱侵入量の77K時に対する割合とモータ温度との関係を示す図である。
【図4】図1の構成において、同じ電力消費量での冷凍機の出力(冷凍出力)と温度との関係を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかる超電導モータの運転停止時における、超電導モータの制御温度と、冷凍機の消費電力とを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態にかかる超電導モータの運転停止時における、超電導モータの制御温度と、8時間での冷凍機の消費電力量とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1から図2は、本発明の第1の実施の形態を示している。
【0017】
図1に示すように、超電導モータシステムは、超電導モータ10と、冷却装置である冷凍機12と、収容容器14と、制御部16と、温度センサ17とを備える。超電導モータ10は、回転シャフト18に固定されたロータ20と、ロータ20に対し径方向外側に対向するように設けられたステータ22とを備える。ロータ20は、周方向複数個所に設けられた永久磁石24を有する。ステータ22は、鉄心等により構成するステータコア26の周方向複数個所に設けたティースに集中巻きまたは分布巻きで巻装された複数のステータコイル28を設けている。例えば、ステータコイル28は3相等の複数相とする。また、ステータコイル28は、金属系超電導体や、イットリウム系、ビスマス系、タリウム系、ネオジウム系等の酸化物高温超電導体等の超電導材料により構成する超電導コイルである。なお、これらの超電導コイルの材料や、ステータ及びロータ等の構成は、1例に過ぎず、本発明はこれらの材料及び構成に限定されるものではない。
【0018】
また、各相のステータコイル28に接続した電流導入線30に複数の電流導入端子32を、それぞれ接続している。超電導モータ10は、収容容器14内に固定しており、収容容器14の外側に、複数の電流導入端子32の先端部を導出させている。
【0019】
各電流導入端子32は、図示しないインバータに接続しており、制御部16は、インバータの駆動を制御することで、超電導モータ10の駆動状態を制御する。インバータに、図示しないバッテリが接続されている。制御部16は、CPU、メモリであるRAM、ROM等を有するマイクロコンピュータを含む。このような超電導モータ10は、超電導コイルを有する永久磁石付きモータとして作動する。また、超電導モータ10の温度を検出する温度センサ17を設けており、温度センサ17の検出値を表す信号を制御部16に入力している。温度センサ17は、例えば、その検出部が収容容器14内のステータ22またはステータ22に接触する部材に接触するように設ける。
【0020】
また、超電導モータ10に、冷凍機12に設けた吸熱部を接続することで、冷凍機12により超電導モータ10を冷却している。例えば、冷凍機12は、ピストン型の可変容量圧縮型である、スターリングクーラと呼ばれるもので、冷凍機駆動源34と、コールドヘッド36とを含み、コールドヘッド36の先端部(図1の左端部)を吸熱部として、熱伝導材38を介して、ステータ22の外面に押し付けている。
【0021】
冷凍機12は、例えばヘリウムガスを作動流体(冷媒)として使用するもので、冷凍機駆動源34内に設けたシリンダ内に駆動側ピストンと、コールドヘッド36内に設けたシリンダ内に、ディスプレーサと呼ばれる従動側ピストンとを、それぞれ移動可能に設けている。シリンダと従動側ピストンとにより囲まれる低温側の内部空間を膨張空間とし、冷凍機駆動源34内にシリンダと駆動側ピストンとで囲われた空間を圧縮空間とする。膨張空間及び圧縮空間は、シリンダ周囲またはディスプレーサ内に設けた蓄冷器により接続している。駆動側ピストンは、冷凍機駆動源34を構成するリニアモータの可動子と直接接続されており、リニアモータにより、駆動側ピストンは、シリンダ内で往復するように駆動される。リニアモータの駆動は、制御部16により制御される。駆動側ピストンが往復移動することに伴って、作動流体のヘリウムガスが圧力変動し、この圧力変動により、従動側ピストンも往復移動し、その際、膨張空間内で作動流体が膨張することで、コールドヘッド36の先端部(図1の左端部)が冷却される。
【0022】
なお、冷凍機12は、このような構成に限定するものではなく、コールドヘッド36の先端部に対応する部分等、超電導モータ10を冷却できるものであれば、種々の構成を採用できる。例えば、冷媒として液体窒素を使用する冷凍機も使用できる。このような冷凍機12及び超電導モータ10は、断熱性を有する収容容器14に収容されており、冷凍機12及び超電導モータ10を収容容器14外部に対し断熱状態に保っている。
【0023】
また、収容容器14の内面と超電導モータ10、コールドヘッド36及び熱伝導材38の外側との間とに、真空の空間40,42を設けている。また、ロータ20の外周面とステータ22の内周面との間に、真空の環状空間44を設けている。
【0024】
このような超電導モータシステムは、例えば電気自動車、ハイブリッド車両等の電動車両に搭載し、超電導モータ10を車両の駆動源として使用する。図1では、収容容器14を車台46の上面に載置し、車台46に収容容器14を固定している。
【0025】
また、制御部16は、超電導モータ10の運転停止時において、超電導モータ10が予め設定された所定条件成立時まで、予め設定した所定温度または所定温度範囲で冷却され続けるように冷凍機12の作動を制御する機能を有する。すなわち、制御部16は、超電導モータ10が所定条件である、超電導モータ10の「運転準備開始信号」が入力されることが成立したときまで、温度センサ17の検出値に基づいて、超電導モータ10が、予め設定した運転可能な温度である「可動温度」のうち、最も高い「可動温度」よりも高い所定温度または所定温度範囲で冷却され続けるように冷凍機12を作動させ続ける。これにより、超電導モータ10を運転停止時に「可動温度」で冷却し続ける場合よりも、超電導モータ10に対する、常温とつながっているステータ22と収容容器14とを接続する図示しない部材等の構造部材からの熱侵入量を低減し、冷凍機12のエネルギ使用量を総合的に減少させている、すなわち冷凍機12の作動時の消費電力を低くしている。例えば、制御部16は、冷凍機12の出力を、超電導モータ10を運転停止時に可動温度に保つ場合の冷凍機12の出力を100%とした場合の20〜40%とし、より好ましくは30%付近としている。また、超電導モータ10は、ステータコイル28を流れる電流が超電導状態となる温度である、可動温度で運転可能となる。すなわち、「可動温度」とは、「超電導モータを運転する場合の、超電導モータの臨界温度以下の予め定めた一定の温度であり、例えば77K以下の一定温度」を意味する。また、「可動温度」は、予め定めた設定にしたがって、超電導モータの運転状態や、運転環境に応じて、臨界温度以下のある範囲内で変動させる場合のそれぞれの設定温度も含む。上記の「可動温度」の表す意味は、本明細書全体及び特許請求の範囲全体で同じである。
【0026】
次に、図2を用いて、制御部16の超電導モータ10運転停止時の冷凍機12制御方法を説明する。図2では、超電導モータ10の運転停止時の冷凍機12の作動状態(図2では「冷凍機制御状態」として表している。)と、超電導モータ10の温度との時間的変化を示している。冷凍機12の作動状態は、「0%」が冷凍機12の作動停止を表し、「100%」が冷凍機12を、超電導モータ10が可動温度Ta(例えば77k)で冷却されるように作動させることを表し、0から100%の中間にある場合には、冷凍機12をその割合に応じた電力で作動させることを表している。
【0027】
なお、以下の説明では、図1の要素と同一の要素には同一の符号を付して説明する。図2に示すように、制御部16は、超電導モータ10の運転時に、冷凍機12を作動させ、超電導モータ10が運転可能な可動温度Ta、例えば77kに維持されるようにする。これに対して、超電導モータ10の運転停止時には、冷凍機12の作動を停止させる。これに伴って、超電導モータ10の温度は徐々に上昇する。そして、制御部16は、超電導モータ10の運転停止時において、運転停止から所定時間t1経過後からPID制御を開始し、超電導モータ10が可動温度Taよりも高い所定の温度Tb(>Ta)、または可動温度Taよりも高い所定温度範囲で冷却され続けるように冷凍機12を作動する。この場合、制御部16は、超電導モータ10の温度を検出する温度センサ17の検出値に基づいて、超電導モータ10の「運転準備開始信号」が制御部16に入力されるとき(運転停止からt2経過時)まで、超電導モータ10が可動温度Taよりも高い所定温度Tbに維持されるようにPID制御する。「運転準備開始信号」は、例えば、超電導モータ10のユーザ、例えば、超電導モータ10を搭載した電動車両の運転者が始動スイッチをオンする等、操作部を操作した場合に制御部16に入力される信号である。なお、図2では、可動温度Taが超電導モータ10の運転状態や運転環境にかかわらず一定である場合を示している。また、図2では、超電導モータ10の運転停止時において、PID制御開始により、制御部16に運転開始信号が入力されるまで、超電導モータ10が一定の所定温度Tbで冷却され続けるようにしている。ただし、同じ場合に、超電導モータ10が所定温度範囲で冷却され続けるようにすることもできる。また、可動温度が超電導モータの運転状態や運転環境に応じて変動するように予め設定している場合には、制御部は、超電導モータの運転停止時において、運転停止から所定時間経過後からPID制御を開始し、超電導モータが可動温度のうち、最も高い可動温度よりも高い、所定温度または所定温度範囲で冷却され続けるように冷凍機を作動する。
【0028】
また、制御部16は、運転開始信号が入力されたとき以降は、冷凍機12を超電導モータ10が可動温度Taで冷却されるように冷凍機12の冷却能力を高くする。次いで、制御部16は、冷凍機12が可動温度Taまで冷却されたとき(運転停止からt3経過時)に、超電導モータ10の運転を開始させる。これにより、超電導モータ10の温度(モータ温度)が、運転停止後に時間t1以降で、運転準備開始信号が入力されるまで所定温度Tbまたは所定温度範囲に維持されるようにしている。したがって、超電導モータ10を運転停止時に可動温度taに保つ場合よりも、冷凍機12のエネルギ使用量が総合的に減少する。
【0029】
冷凍機12は、例えば冷凍機駆動源34に収容された駆動側ピストンのストロークを変えることにより、冷凍機12の冷却能力を変えることができる。なお、図2では所定温度であるTbを110kとしているが、これは1例であり、可動温度Taよりも高く、常温や0℃(=273.15k)よりも低い温度であれば、種々に変更可能である。例えば、超電導モータ10の熱容量が小さい場合には運転準備開始から運転開始までの時間を短くできるので、運転停止時に超電導モータ10を維持する所定温度Tbをより高くできる。また、制御部16への運転準備開始信号の入力から超電導モータ10の運転開始が可能となるまでの時間である、超電導モータ10の再始動に要する許容時間を長く設定できる場合にも、運転停止時に超電導モータ10を維持する所定温度Tbをより高くできる。
【0030】
このような本実施の形態の超電導モータシステムによれば、制御部16が、超電導モータ10の運転停止時において、温度センサ17の検出値に基づいて、予め設定した所定条件成立時まで、超電導モータ10が可動温度Taのうち、最も高い可動温度Taよりも高い所定温度Tbまたは所定温度範囲で冷却されるように冷凍機12を作動させ続ける。このため、冷凍機12を含む超電導モータシステムにおいて、超電導モータ10の運転再開を早期に行え、かつ、超電導モータ10の運転停止時のエネルギ使用量を減少させることができる。すなわち、超電導モータ10の運転停止時に、冷凍機12を常に可動温度で運転し続ける場合に比べて総合的にエネルギ使用量の減少を図れる。また、超電導モータ10の運転停止時に冷凍機12を常に停止させる場合には、超電導モータ10の温度が常温等、高温に戻る可能性があるが、本実施の形態によれば、超電導モータ10の運転停止時でも可動温度Taよりも高いが常温よりも低い温度Tbまたは低い温度範囲に維持でき、過度にモータ温度が高くなることを防止できる。このため、超電導モータ10を運転再開時に可動温度Taまで早期に冷却でき、運転再開を早期に行える。
【0031】
次に、超電導モータ10の運転停止時の制御温度を可動温度taよりも高くすることにより、エネルギ使用量を減少できる理由を、図3、図4を用いて説明する。図3は、図1の構成において、超電導モータ10の熱侵入量の77K時に対する割合とモータ温度との関係を示す図である。ここで、「熱侵入量」は、ステータ22と収容容器14とを接続する図示しない部材等、常温とつながっている構造部材から超電導モータ10への熱侵入量である。図4は、図1の構成において、同じ電力消費量での冷凍機12の出力(冷凍出力)と温度との関係を示す図である。
【0032】
図3に示すように、本実施の形態の構成によれば、超電導モータ10の運転停止時の温度が上昇するほど、構造部材から超電導モータ10への熱侵入量は減少する。また、超電導モータ10の温度が上昇するほど、冷凍機12の効率は高くなる。すなわち、図4に示すように、超電導モータ10の温度が上昇するほど、同じ電力消費量での冷凍機12の出力を高くでき、冷凍機12の効率を高くできる。逆に、超電導モータ10の温度が低くなる場合には、同じ電力消費量での冷凍機12の出力が低くなり、冷凍機12の効率が低くなる。このため、超電導モータ10の運転停止時に維持する温度Tbまたは温度範囲を可動温度Taよりも高くする本実施の形態では、エネルギ使用量を減少できる。
【0033】
図5は、本実施の形態にかかる超電導モータの運転停止時における、超電導モータの制御温度と、冷凍機の消費電力とを示す図である。図6は、本実施の形態にかかる超電導モータの運転停止時における、超電導モータの制御温度と、8時間での冷凍機の消費電力量とを示す図である。
【0034】
図5、図6に示すように、超電導モータ10の運転停止時に、超電導モータ10の制御温度Tbまたは温度範囲を可動温度Taよりも高くする本実施の形態の場合には、冷凍機12の消費電力及び8時間での消費電力量をいずれも低くできることが分かる。
【0035】
また、本実施の形態では、超電導モータ10の運転停止時でも常温よりも低い温度Tbまたは温度範囲で維持されるので、常温まで温度が上昇するように温度上昇及び温度低下の変化を生じる場合と異なり、超電導モータ10の耐久性を有効に向上できる。すなわち、モータ10が運転停止時に常温まで温度上昇する場合、モータ10の温度変化が大きくなり、温度変化に伴う構成部材の大きな膨張、収縮を繰り返すので、大きな繰り返し応力が発生し、交差、隙間等を常温に戻ることを考慮して設計する必要がある。これに対して本実施の形態によれば、超電導モータ10が常温に戻ることを過度に考慮せずにすみ、耐久性を有効に向上できる。
【0036】
なお、本実施の形態において、超電導モータ10の駆動を制御する制御部と、超電導モータ10の運転停止時において、超電導モータ10が予め設定された所定温度または所定温度範囲に維持されるように冷凍機12を作動させる制御部とを、互いに別の制御部とすることもできる。
【符号の説明】
【0037】
10 超電導モータ、12 冷凍機、14 収容容器、16 制御部、17 温度センサ、18 回転シャフト、20 ロータ、22 ステータ、24 永久磁石、26 ステータコア、28 ステータコイル、30 電流導入線、32 電流導入端子、34 冷凍機駆動源、36 コールドヘッド、38 熱伝導材、40,42 空間、44 環状空間、46 車台。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に収容された超電導モータと、
超電導モータを冷却する冷却装置と、
超電導モータの温度を検出する温度センサと、
超電導モータの運転停止時において、温度センサの検出値に基づいて、予め設定した所定条件成立時まで、超電導モータが、予め設定した運転可能な可動温度のうち、最も高い可動温度よりも高い、所定温度または所定温度範囲で冷却されるように冷却装置を作動させ続ける制御部とを備えることを特徴とする超電導モータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の超電導モータシステムにおいて、
制御部は、所定条件を、超電導モータの運転準備開始信号が入力されることとして設定していることを特徴とする超電導モータシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の超電導モータシステムにおいて、
制御部は、超電導モータの運転停止時において、所定条件成立時まで超電導モータが可動温度のうち、最も高い可動温度よりも高い、所定温度または所定温度範囲で冷却されるように、PID制御により、冷却装置の作動を制御することを特徴とする超電導モータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−244517(P2011−244517A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111897(P2010−111897)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】