超音波カテーテル・プローブ
【課題】
リンギングをはじめとする、トランスデューサ・アセンブリが送受信する信号中のノイズの発生原因を現レベルより低下させる超音波カテーテル・プローブを提供する。
【解決手段】
トランスデューサのバッキングとして機能し第2セクションと比べて大きな音響エネルギ吸収率を有する第1材料から成る第1セクションと、集積電子回路要素を支持するための第2材料から成る第2セクションとを有するマルチセクション形ボディを備える超音波カテーテル・プローブ。
リンギングをはじめとする、トランスデューサ・アセンブリが送受信する信号中のノイズの発生原因を現レベルより低下させる超音波カテーテル・プローブを提供する。
【解決手段】
トランスデューサのバッキングとして機能し第2セクションと比べて大きな音響エネルギ吸収率を有する第1材料から成る第1セクションと、集積電子回路要素を支持するための第2材料から成る第2セクションとを有するマルチセクション形ボディを備える超音波カテーテル・プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは超音波画像形成の分野に関し、より詳しくは、比較的小さな体腔並びにその周囲の体液ないし体組織の様々な特性を判定するための超音波画像形成に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、米国特許第4917097号(Proudian et al. )「Apparatus and Method for Imaging Small Cavities (小腔の画像形成のための装置及び方法)」の記載と、米国特許第5167233号(Eberle et al. )「Dilating and Imaging Apparatus(拡張術及び画像形成のための装置)」の記載とを、この言及をもって本開示に組み入れるものである。
【0003】
専門医が心臓発作の防止のために特に力を入れているのは、完全なまたは部分的な遮断が生じている心臓動脈の診断及び治療である。冠動脈の血管壁にプラクが蓄積することによって生じる動脈遮断を原因とする心臓発作の発生を防止するために、外科医は経皮経管冠動脈形成術(PTCAと呼ばれるが、「バルーン血管形成術」という呼び名の方が一般的である)を行なっており、それによって良好な結果を得ている。バルーン血管形成術を行なうには、動脈の障害発生部位にカテーテルを注意深く挿通する必要がある。外科医は、バルーンが動脈内の適切な位置に入ったことを確認したならば、動脈壁にプラクが蓄積したために遮断ないし狭窄が発生している血管内通路を拡張するために、そのカテーテルの膨張可能な部分を膨張させる。
【0004】
画像形成デバイスを使用して、ヒトの血管等の狭い囲繞領域の画像を治療及び診断に使用可能な画質で診断用画像ディスプレイ装置上に表示できるようにすることが望まれていることはいうまでもない。カテーテルの先端に超小型の超音波画像形成デバイスを搭載したものを使用して、冠動脈の内壁のリアルタイム画像を表示させるということが、既に公知になっている。このような装置を、ここでは超音波カテーテルと呼ぶことにする。
【0005】
【特許文献1】米国特許第4917097号明細書
【特許文献2】米国特許第5167233号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
公知の超音波カテーテルでは、電子回路部品一式が搭載される電子回路部品担持部材とトランスデューサ・アセンブリのバッキング材料とに、同一の材料が使用されている。この公知の超音波カテーテルに付随する欠点は、電子回路部品の担持部材として好適に使用できる材料に求められる物理的及び音響的特質と、高感度トランスデューサ材料を用いたトランスデューサ・アセンブリのためのバッキング材料として好適に使用できる材料に求められる物理的及び音響的特質とを、共に提供することのできる、担持部材とバッキング材料とに兼用できる材料を見つけることが困難だということにある。
【0007】
上述の公知の超音波カテーテルの構造によれば構造及び組立が簡単になるという利点が得られるが、その構造にはある欠点が付随しており、その欠点は、バッキング材料としての必要条件と電子回路部品の担持部材としての必要条件とが、特殊でしかも互いに相容れないことに原因している。電子回路ボディを構成するための電子回路部品担持部材は、剛性が大きく、電子回路部品が発生する高温に耐えられるだけの耐熱性を有するものであることが求められている。ところが、電子回路ボディの必要条件を満足することのできる公知の電子回路部品担持部材の材料は、高感度が得られるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)組成物を用いた、現時点で好適であると考えられているトランスデューサ・アセンブリのためのバッキング材料としては不適当である。
【0008】
この新しい、より高い感度が得られるPZT組成物をトランスデューサ材料として使用し、一方、公知の電子回路部品担持部材の材料を、そのトランスデューサのためのバッキング材料として使用した場合には、カテーテルが音響信号を受信ないし送信したときに、トランスデューサ・アセンブリに不都合なリンギングが発生する。このリンギングによって発生する信号のために、トランスデューサ・アセンブリが送出する信号の品質が劣化し、ひいては、より高感度のトランスデューサ材料を超音波カテーテルに用いたことによって期待できる利点までもが限られてしまう。また、リンギングに起因するこの信号品質の劣化によって、超音波カテーテルが提供する画像の画質も制約される。そして、その画質が制約されるための、医療用及び診断用の画像形成のための超音波カテーテルの有用性そのものまでもが制約されてしまう。
【0009】
公知の超音波カテーテルでは、トランスデューサ電極が、静電容量を有する接着剤層を介してトランスデューサ層に結合されていた。先に言及したPZT組成物は、音響信号に対するより高い感度が得られるものであるため、それ以前に使用されていたより低い感度しか得られない強誘電体ポリマーのトランスデューサ材料に取って代わるものであると考えられている。PZT組成物は強誘電体コポリマーと比較して優れた感度を有するが、誘電率が大きいという性質も持っている。新材料であるPZT組成物にはインピーダンスが小さい(即ち、静電容量が大きい)という性質があるため、PZT組成物から成るトランスデューサ層を、静電容量を有する接着剤層を介してトランスデューサ電極に結合すると、PZT組成物を用いたことによって得られるはずであった信号感度の向上が無に帰してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の超音波カテーテル・プローブは、超音波を発射し、その発射した超音波の超音波エコーから変換された電気信号を提供する、脈管内へ挿入して使用する超音波カテーテル・プローブにおいて、トランスデューサ・アレイと集積回路とを別々に支持する互いに材質の異なった複数のセクションを有するマルチセクション形ボディであって、トランスデューサのバッキングとして機能し第2セクションと比べて大きな音響エネルギ吸収率を有する第1材料から成る第1セクションと、集積回路を支持するための第2材料から成る第2セクションと、を含んでいるマルチセクション形ボディと、前記マルチセクション形ボディの前記第1セクションに取付けられたトランスデューサ・アセンブリであって、前記トランスデューサ・アレイを含んでおり、該トランスデューサ・アレイは、脈管内へ超音波を送信して、その送信した超音波の超音波エコーに応じて第1電気信号を生成するものである、トランスデューサ・アセンブリと、前記マルチセクション形ボディの前記第2セクションに取付けられた信号変換用集積回路であって、前記トランスデューサ・アセンブリから前記第1電気信号を受け取り、該第1電気信号を第2電気信号に変換し、そして、該第2電気信号を、該第2電気信号を伝送するための少なくとも1本の信号チャネルを含んでいるケーブルを介して、脈管の外部の環境へ送出する、信号変換用集積回路と、前記第1電気信号を前記トランスデューサ・アレイから前記信号変換用集積回路へ伝達する、前記トランスデューサ・アレイと前記信号変換用集積回路との間の複数の電気伝送経路と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記第1セクションと前記第2セクションとを互いに隣接させてガイド・ワイヤ・ルーメン上に取付けてある。
また好ましくは、前記第1材料が前記第2材料と比較して小さな音響インピーダンスを有する。
【0012】
また好ましくは、前記第2材料が前記第1材料と比べて小さな熱膨張係数を有する。
また好ましくは、前記トランスデューサ・アセンブリが、トランスデューサ層に直接に結合した複数の導電用電極を含んでいる。
【0013】
また好ましくは、前記トランスデューサ・アセンブリが、トランスデューサ層に直接に結合した連続した1つの層から成る導電用電極を含んでいる。
また好ましくは、前記トランスデューサ・アセンブリが、円筒面状の配列形態としたトランスデューサ・アレイを含んでいる。
【0014】
また好ましくは、前記トランスデューサ・アセンブリが、平面状の配列形態としたトランスデューサ・アレイを含んでいる。
また好ましくは、前記トランスデューサ・アレイを、脈管内の側方視野を提供するために前記マルチセクション形ボディの一側に配設してある。
【0015】
また好ましくは、前記トランスデューサ・アレイを、脈管内の前方視野を提供するために前記マルチセクション形ボディの正面に配設してある。
また好ましくは、前記マルチセクション形ボディに近接した位置に配設したバルーン・セクションを含んでいる。
【0016】
また好ましくは、前記バルーンを、前記マルチセクション形ボディに先んじて挿入されるカテーテルの一部分に配設してある。
また好ましくは、前記複数の電気伝送経路が、複数のトランスデューサ接点から成るトランスデューサ接点集合を含んでおり、それら複数のトランスデューサ接点は、前記トランスデューサ・アレイの複数の導電用電極に結合していると共に前記トランスデューサ・アレイから横方向へ突出しており、それによって、前記複数の導電用電極を、前記第2セクション上に配設され前記信号変換用集積回路に電気的に結合した複数本の導体ラインに接続することを容易にしてある。
【0017】
また好ましくは、前記複数のトランスデューサ接点が前記複数本の導体ラインと重なり合うようにしてあり、それによって、ギャップ・ウェルダを用いて前記複数のトランスデューサ接点の各々を前記複数の導体ラインのうちの対応する1本のずつの導体ラインに接続することを容易にしてある。
【0018】
また、上記課題を解決するための本発明の超音波画像形成カテーテルは、超音波を発射し、その発射した超音波の超音波エコーから変換された電気信号を提供する、脈管内へ挿入して使用する超音波画像形成カテーテルにおいて、少なくとも1本のルーメンを内蔵しているシャフトと、前記シャフトに取付けた超音波プローブと、を備えており、前記超音波プローブが、トランスデューサ・アレイと集積回路とを別々に支持する互いに材質の異なった複数のセクションを有するマルチセクション形ボディであって、トランスデューサのバッキングとして機能し第2セクションと比べて比較的大きな音響エネルギ吸収率を有する第1材料から成る第1セクションと、集積回路を支持するための第2材料から成る第2セクションとを含んでいるマルチセクション形ボディと、前記マルチセクション形ボディの前記第1セクションに取付けられたトランスデューサ・アセンブリであって、前記トランスデューサ・アレイを含んでおり、該トランスデューサ・アレイは、脈管内へ超音波を送信して、その送信した超音波の超音波エコーに応じて第1電気信号を生成するものである、トランスデューサ・アセンブリと、前記マルチセクション形ボディの前記第2セクションに取付けられた信号変換用集積回路であって、前記トランスデューサ・アセンブリから前記第1電気信号を受け取り、該第1電気信号を第2電気信号に変換し、そして、該第2電気信号を、該第2電気信号を伝送するための少なくとも1本の信号チャネルを含んでいるケーブルを介して、脈管の外部の環境へ送出する、信号変換用集積回路と、前記第1電気信号を前記トランスデューサ・アレイから前記信号変換用集積回路へ伝達する、前記トランスデューサ・アレイと前記信号変換用集積回路との間の複数の電気伝送経路と、を備えた画像形成デバイスである、ことを特徴とする。
【0019】
さらに、上記課題を解決するための本発明の超音波脈管内カテーテル・プローブの組立方法は、トランスデューサ・アレイと集積回路とを別々に支持するためのマルチセクション形ボディを備え、該マルチセクション形ボディがトランスデューサのバッキングで構成された第1セクションと集積回路を支持するための第2セクションとを有する、超音波脈管内カテーテル・プローブの組立方法において、前記トランスデューサ・アレイを含んでいるトランスデューサ・アセンブリを前記マルチセクション形ボディの前記第1セクションに取付けるトランスデューサ・アセンブリ取付ステップであって、前記トランスデューサ・アレイは、脈管内へ超音波を送信して、その送信した超音波の超音波エコーに応じて第1電気信号を生成するものであり、該トランスデューサ・アセンブリは、複数のトランスデューサ接点から成るトランスデューサ接点集合を含んでおり、それら複数のトランスデューサ接点は、前記トランスデューサ・アレイの複数の導電用電極に結合していると共に前記トランスデューサ・アレイから横方向へ突出している、トランスデューサ・アセンブリ取付ステップと、信号変換用集積回路を前記マルチセクション形ボディの前記第2セクションに取付ける信号変換用集積回路取付ステップであって、該信号変換用集積回路は、前記トランスデューサ・アレイから前記第1電気信号を受け取って該第1電気信号を第2電気信号に変換し、該第2電気信号がケーブルを介して伝送されるようにしてあり、該ケーブルは前記マルチセクション形ボディを脈管の外部の環境へ接続しており前記第2電気信号を伝送するための少なくとも1本の信号チャネルを備えている、信号変換用集積回路取付ステップと、前記第1セクションと前記第2セクションとを隣接した位置に配置して、前記複数のトランスデューサ接点の各々が、前記信号変換用集積回路に信号伝達可能に接続された複数の導体ラインのうちの対応する1本ずつの導体ラインと重なり合うようにするセクション配置ステップと、互いに重なり合ったトランスデューサ接点と導体ラインとの組に局所的電流を供給してその組のトランスデューサ接点と導体ラインとを融着させる局所的電流供給ステップと、を含んでいることを特徴とする。
【0020】
好ましくは、前記局所的電流供給ステップが、互いに重なり合ったトランスデューサ接点と導体ラインの各組にギャップ・ウェルダを用いて局所的電流を供給するステップを含んでいる。
【0021】
[本発明の目的(効果)]
本発明の目的は、従来例によってこれまで得ることのできた超音波画像より優れた、実質的にリアルタイムの、比較的小さな体腔及びその周囲の体組織の超音波画像を提供することにある。
【0022】
本発明の更なる目的は、画像の解像度を向上させるために、体腔の内壁からの反射信号に対する感度を向上させることにある。
本発明の更なる目的は、その他の目的を満たしつつ更に、リンギングをはじめとする、トランスデューサ・アセンブリが送受信する信号中のノイズの発生原因を現レベルに維持し、或いは現レベルより低下させることによって、より鮮鋭な体腔の画像を提供することにある。
【0023】
本発明の更なる目的は、超音波カテーテルのトランスデューサ・アセンブリに用いられる非常に小さなトランスデューサ・エレメントを、より容易に製造する手段を提供することにある。
【0024】
本発明の更なる目的は、超音波カテーテルに用いられる非常に小さなトランスデューサ・エレメントを、非常に小さな公差で形成する手段を提供することにある。
本発明の更なる目的は、超音波カテーテルの電子回路ボディとトランスデューサ・アセンブリとに用いられる、好適な担持部材材料/バッキング材料を提供することにある。
【0025】
本発明の更なる目的は、超音波カテーテルの別々に製作したセクションである集積回路を包含しているセクションとトランスデューサ・アセンブリを包含しているセクションとの間の信号経路を提供するために、電子回路ボディの複数本の導体ラインをトランスデューサ・アセンブリの複数の導電用電極へ接続する手段を提供することにある。
【0026】
以上の様々な目的が本発明のカテーテル・プローブ・アセンブリによって達成される。本発明のカテーテル・プローブ・アセンブリは、体腔へ挿入するマルチセクション形ボディを備えている。このマルチセクション形ボディは、互いから分離し互いに材質が異なった、電子回路ボディとトランスデューサ・アセンブリとの夫々のための担持部材材料/バッキング材料を用いたことを特徴とする。本発明は、米国特許第4917097号(故 Proudian 他)や、米国特許第5167233号(Eberle et al. )に記載されているものと略々同タイプの超音波カテーテルに用いて実質的にリアルタイムの小体腔及びその周囲の体組織の画像を発生するための、プローブ・アセンブリを含むものである。
【0027】
トランスデューサ・アセンブリは、複数のトランスデューサから成るトランスデューサ・アレイを備えており、マルチセクション形ボディの第1セクションに取付けられている。トランスデューサ・アレイは、体腔内へ超音波を送信し、複数のトランスデューサが受信した反射超音波に応答して電気信号を発生する。
【0028】
トランスデューサ・アセンブリのためのバッキング材料には、音響インピーダンスが小さく吸収率が大きいという特性を有する材料を特に選択している。音響インピーダンスの小さなバッキング材料は、そのバッキング材料の中へ結合された信号を吸収し、トランスデューサ・アセンブリに発生するリンギングの存続時間を短縮する。更に加えて、複数のトランスデューサ電極から成るトランスデューサ電極集合を、トランスデューサ材料に直接に結合してあり、それによって、以前はトランスデューサ回路に用いられていた静電容量を有する接着剤層をなくしている。
【0029】
複数の集積回路が、マルチセクション形ボディの第2セクションに取付けられている。第2セクションは、第1セクションから音響的に絶縁されており、熱膨張係数の小さな担持部材材料から成る。それら集積回路は、トランスデューサ・アセンブリの複数の電極とそれら集積回路の複数のパッドとを接続している複数本の導体を介して、トランスデューサ・アレイから、複数の電気信号から成る第1電気信号集合を受け取る。それら複数本の導体は、集積回路からトランスデューサ・アセンブリへ励振信号を送出するためにも使用される。集積回路は、受け取った第1電気信号集合を、複数の電気信号から成る第2電気信号集合に変換する。続いて集積回路は、その第2電気信号集合を、ケーブルを介して、体腔環境の外部に設置されている信号処理装置へ送出する。
【0030】
この独特の、マルチセクション形のプローブ・アセンブリ構造を採用すれば、プローブ・アセンブリの設計者は、集積回路チップの担持部材に適した構造上及び音響上の特性を有する材料と、トランスデューサ・エレメントのバッキング材料に適した構造上及び音響上の特性を有する材料とを、個別に選択することができる。
【0031】
トランスデューサ・アセンブリと電子回路ボディとの、両方の部分の構成部品を損傷から保護するために、超音波カテーテル・プローブ・アセンブリのそれら2つの部分を別々に製造した上で、この超音波カテーテルの最終製造段階でそれら2つの部分を連結するようにしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明それ自体、その目的、及びその利点は、以下の詳細な説明を添付図面と共に参照することによって最も良く理解することができよう。
これより本発明を、血管形成術に用いるカテーテルに関連させて説明して行くが、ただし、本発明がその用途に限定されるものではないことは明らかである。むしろ、本発明は、小体腔内での画像形成が必要になり得る全ての用途を網羅するものである。その種の別用途の具体例は、バルーンなしのカテーテルに本発明を用いるというものである。この場合には、そのカテーテルは診断用またはモニタ用の装置として機能する。本発明の更に別の具体的な用途例は、本発明を組み合わせたドプラ型音像形成を利用して血流計測を行なうというものである。本発明は更に、体内の様々な管の内部画像を提供するという用途にも用いることができ、例えば胆管の中の胆石をモニタしたり、泌尿器科や婦人科の分野における検査ないし治療の目的に使用することができる。本発明の用途のその他の具体例としては、レーザ治療の施術中や、血管形成術を行なって血管の管壁からプラクを除去しているときなどに、血管その他の管の画像を提供するために、超音波カテーテルを使用するという用途がある。
【0033】
更に、当業者であれば、本明細書に含まれている本発明の説明並びにそれに付随する本発明の様々な実施例の説明に基づいて想到し得る、その他の種類のトランスデューサ・アレイ配列形態にも、本発明は適用可能である。
【0034】
本発明は、電子回路ボディ及びトランスデューサ・アセンブリのための担持部材/バッキング材料の構造と、トランスデューサ・アセンブリの物理層に対する改良とに関するものであるが、ただし本発明は、大体において、米国特許第4917097号(故 Proudian 他)に記載されている種類の超音波カテーテル画像形成システムの中に組み込むことを意図したものであり、同米国特許の教示は先の言及によって本明細書に組み込まれている。
【0035】
図1には本発明の実施例に係るカテーテルの断面図を模式的に示した。バルーン1を装備した図1に示したカテーテルは血管形成術に広く使用されるタイプのものであるが、ただし本発明は、様々な構造のカテーテルに組み合せて使用し得るものであり、例えば、図6、図7、ないし図8に例示したような種類のカテーテル等と組み合せることによって、小さな体腔の診断用画像を提供し、或いは摘出処置を可能にするものである。一般的な構造のガイド・ワイヤ・ルーメン2及び3を、X線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4の外周に嵌合させて接続してあり、このX線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4は、通常のカテーテル挿入操作の実行中にカテーテル・ガイド・ワイヤを挿通しておくための中央孔6を形成している。エポキシ材料製の封止材8が、電子回路ボディ12とトランスデューサ・アセンブリ14とから成る画像形成デバイス10を、カテーテル・シャフト16の端部に固定している。本発明に係る画像形成デバイス10はマルチセクション型ボディを備えており、このマルチセクション型ボディは、互いに分離した、そして互いに異なった材質の、担持部材20のための材料と、トランスデューサ・バッキング材料24として使用するための材料とで構成されている。封止材8は担持部材20に搭載された複数の集積回路(IC)18から成る集積回路一式を保護して絶縁している。本発明の好適実施例に係る図示のバルーン血管形成術用の装置では、画像形成デバイス10は、バルーン1の基端部スリーブ19の中に配設されている。
【0036】
トランスデューサ・アセンブリ14については後に図3を参照しつつ更に詳細に説明するが、ここでその概要を説明しておくと、このトランスデューサ・アセンブリ14は、複数のトランスデューサ・エレメント22から成るトランスデューサ・エレメント集合を備えている。トランスデューサ・エレメント22は、バッキング材料24を芯にして、その周囲に、円筒形状の配列形態で支持されている。ただし、トランスデューサ・デバイスの分野の当業者であれば、本明細書の記載と慣用技術とに基づいて、これ以外のトランスデューサ・エレメントの配列形態にも想到することであろう。
【0037】
更に図1を参照して説明を続けると、バルーン1は画像形成デバイス10に近接して位置しており、このバルーン1のカテーテル・シャフト16及びルーメン3と夫々に結合している両端部を一般的な方式で気密封止して、このバルーン1の内部を外部環境から隔絶させている。封止材8の中には細管26を埋め込んであり、この細管26は、バルーン1の内部とバルーン膨張源との間で流体を流通させるためのものである。バルーン1の膨張可能な部分の中に、ルーメン3に取付けたX線不透過性のマーカー・バンド27が収容されており、このマーカー・バンド27によって、X線蛍光透視装置上でのカテーテルの位置確認を容易にしている。
【0038】
複数本の内側導線と複数本の外側導線とを1本にまとめたケーブル28によって、複数のIC18と制御ステーションのコンピュータとの間で、データ信号や制御信号等の電気信号を伝達するようにしている。ケーブル28の中の内側導線は、その各々が、絶縁被膜で保護された単線の導体で形成されている。一方、外側導線はケーブル28の周囲に螺旋状に巻回されており、ケーブル28の内側導線が伝達している信号を遮蔽している。このケーブルは絶縁材料で被覆したものとすることが好ましい。
【0039】
次に図2について説明する。同図は、別々に構成した電子回路ボディ12とトランスデューサ・アセンブリ14との間の信号経路を接続する以前の、途中まで組立てた状態にある診断用画像形成カテーテル10の先端部を示しており、この状態を図示したのは、トランスデューサ・アセンブリ14と電子回路ボディ12とから成る画像形成デバイス10の明確に分離した第1部分と第2部分とを明示すためである。同図では、画像形成デバイス10の説明を分かり易くするために画像形成デバイス10を覆う基端部スリーブ19とエポキシ材料製の封止材8とを除去して、複数個の集積回路チップ18とそれらに付随する電子回路配線部分とを露出させてある。ノーズコーン25は、超音波画像形成カテーテルの先端部を丸みの付いた形状にして、この超音波画像形成カテーテルを血管内に入れて行くときに、血管を傷つけないようにするためのものである。
【0040】
X線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4は、X線蛍光透視装置を使用することによって、患者の体内における位置を視認することができるため、カテーテルの位置の確認を助ける。このX線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4は更に、電子回路ボディ12とトランスデューサ・アセンブリ14との両方を支持している。X線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4の外径は約0.5mmである。X線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4は更に別の機能も果たしており、それは、電子回路ボディ12とトランスデューサ・アセンブリ14とを精密に位置合せするためのガイド部材としての機能であり、それらを精密な位置合せする必要があるのは、図3に示したように、電子回路ボディ12上に取付けた複数のIC18からの64本の導体ライン30の夫々をトランスデューサ・アセンブリ14に設けた64個のトランスデューサ接点32の夫々に位置合せするためである。X線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4によって、画像形成デバイス10の構成要素である電子回路ボディ12とトランスデューサ・アセンブリ14との間の位置合せが容易にできるようにするためには、X線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4と、担持部材20及びバッキング材料24との、いずれとの間の間隙も、約25ミクロン以下にしておかねばならない。それらとの間の間隙をこの程度に小さくしておけば、複数本の導体ライン30と複数個のトランスデューサ接点32との間の、半径方向における適切な位置合せが確実に行なわれる。
【0041】
IC18を担持部材20上に物理的に取付けるために、それら4個のIC18を半導体チップの製造の分野の当業者には周知の反転形チップ構造にして、担持部材20上に形成されている複数の導電用パッド34から成る導電用パッド集合にボンディングするようにしてある。それら導電用パッド34は、互いに近接している複数個のICチップ18を、それらICチップどうしの間で相互接続すると共に、それらIC18とケーブル28との間を接続する機能も果たしており、ケーブル28はそれらIC18を、患者の体外に設置されている信号処理装置に信号伝達可能に接続している。導電用パッド34は更に、複数のIC18を前述の複数本の導体ライン30に接続している。それら導体ライン30は複数のIC18を、トランスデューサ・アセンブリ14の中のトランスデューサ・エレメントを画成している64個の電極から成る電極集合に結合している。
【0042】
4個のIC18は各々が16本ずつのチャネルを備えており、それら16本のチャネルは、トランスデューサ・アセンブリ14の中の16個のトランスデューサ電極によって画成されている16個のトランスデューサ・エレメントに対応している。4個のIC18は、その各々が、導体ライン30によってトランスデューサ・アセンブリ14の中の対応するトランスデューサ・エレメントに結合されているそのICの16本のチャネルのうちの1本ないし複数本のチャネル上に、超音波周波数領域の電気信号をシーケンシャルに送信及び受信する機能を備えている。また、4個のIC18は、信号処理装置が送出する励振パルスを1個ないし複数個のトランスデューサ・エレメントへ分配するマルチプレクシングの機能も備えている。いかなる時点でも、各IC18の16本のチャネルのうちの1本ないし複数本のチャネルが、励振信号で励振することができるか、または、IC18に格納されている起動制御信号を使用することによって反射波即ちエコーを受信することができる状態におかれている。アクティブなトランスデューサ・エレメントへ入射した反射波から生成された電気信号は、増幅された後に伝送ケーブル28の中の電線を介して外部の信号処理装置へ送信される。
【0043】
次に図3について説明する。同図は、図1のカテーテルの画像形成部の詳細な側面断面図であり、画像形成デバイス10の構造と材料とを示すために描いた図である。同図には、電子回路ボディ12及びトランスデューサ・アセンブリ14を、それらを組合せた状態で図示してあり、これは、それらが画像形成カテーテルの完成した構造の中で存在している状態に他ならない。トランスデューサ・アセンブリの夫々の層は、図3にも詳細に示してあるが、ただし、トランスデューサ・アセンブリ14の円環状の層について説明している間は、図2の4−4線に沿ったトランスデューサ・アセンブリの断面図である図4を参照するのが良いであろう。
【0044】
担持部材20は、接着剤層36によってX線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4に接着されており、この接着剤層36には、市販の様々な医療用シアノアクリレートエポキシのうちの任意のものを使用することができる。電子回路ボディ12が充分に固定できさえすれば、接着剤層36に替えて、任意の固定材料ないし固定構造を採用しても構わない。既述の如く、接着剤層36が充填されているX線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4と担持部材20との間の間隙は、X線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4が、電子回路ボディ12とトランスデューサ・アセンブリ14との間の電気的接点を位置合せするのを補助することができるように、非常に小さくしておく必要がある。
【0045】
本発明の好適実施例における担持部材20は、熱膨張率が小さく剛性と強度が大きい材料で形成されている。担持部材20は200℃以上の温度に耐える耐熱性を備えている必要があり、この200℃という温度は、複数個のIC18から成るIC一式を担持部材20に接続するボンディング工程において電子回路ボディ12に加わる温度である。更に、超音波カテーテルの操作時にIC18それ自体が発生する熱によって担持部材20が膨張するおそれもある。このときの担持部材20の熱膨張量が余りに大きいと、担持部材20から導電用パッド34に加わる剪断力のためにIC18の接点と導体ライン30との間の電気接続に障害が発生するおそれが無視できない。酸化アルミニウム(Al2O3 )は、以上に述べた、担持部材20のための材料に求められる望ましい特性を備えている。ただし、ハイブリッド回路の分野の当業者であれば、酸化アルミニウムに替わるその他の様々な適当な材料にも想到することであろう。酸化アルミニウムは更に、音響インピーダンス非常に大きく(約40MRayls)、損失が比較的小さいという特性を有する。以下に説明するように、酸化アルミニウムは、これらの音響学的特性を有するため、高感度トランスデューサ・エレメントに関連して使用するトランスデューサ・バッキング材料の候補としては、良いものではない。
【0046】
封止材8を電子回路ボディ12の外周表面に被着してあるのは、カテーテル・アセンブリの形状をより円筒形に近くすることと、電子回路を絶縁することとを目的としたものである。封止材8には、一般的に、市販の様々な医用紫外線硬化性アクリル樹脂のうちの任意のものを使用することができる。血液による汚染や万一の電気ショックからの保護のために、電子回路ボディ12の表面を保護層で覆うようにしても良い。保護層の材料には、例えばパリレーン(parylene)等を用いることができる。超音波カテーテルをはじめとする、体内に挿入する医用機器の分野の当業者ならば、この保護層に用いるのに適当なその他の様々な材料にも想到することであろう。保護層は、図1に示したバルーン血管形成術用カテーテルでは基端部スリーブ19で構成されており、また、図6に示したような診断用画像形成カテーテルの場合には鞘体38で構成すれば良い。
【0047】
次に、トランスデューサ・アセンブリ14とそれに関連した構造部分とについて説明する。トランスデューサ・アセンブリ14のバッキング材料24は、音響インピーダンスが比較的小さく(<10MRayls)、損失係数が大きい(約20〜40dB/mm )という特性を有する材料で形成することが好ましい。これらの特性が必要とされるのは、トランスデューサ材料40としてPZT組成物等の高感度トランスデューサ材料を使用した場合であり、この場合には、バッキング材料に音響インピーダンスが大きく損失の少ない材料を使用したならば、それによって発生するリンギング現象のために、そのトランスデューサ材料のせっかくの優れた信号感度が台無しになってしまう。この理由から、酸化アルミニウムはトランスデューサ・アセンブリ14のバッキング材料24には不適当な材料である。そのため本発明の超音波カテーテルでは、バッキング材料24を別体の部材とし、異なった材料を使用している。バッキング材料24の好適な材料には、例えば、ゴム粒子または微小ガラス球体を混練したエポキシ樹脂がある。この種の樹脂の具体例としては、米国、コネチカット州、トーリントンに所在の Dymax Corp.社の「"light-weld" 183-M」がある。超音波画像形成の分野の当業者であれば、音響インピーダンスが小さく損失が大きい、その他の様々な適当な材料にも想到することであろう。空気も理想的なバッキング材料ではあるが、実際問題として、空気バッキング方式のトランスデューサ・アセンブリは製作が困難である。
【0048】
従って、本発明の超音波カテーテルの特徴の1つは、画像形成デバイス10を構成している担持部材とバッキング材料とを別体の部材とし、担持部材の材料とバッキング材料とに、互いに非常に対照的な特性を有する、異なった材質の材料を使用していることにある。2種類の明らかに異なった材料を用いることによって、電子回路ボディ12の必要条件とトランスデューサ・アセンブリ14の必要条件という、互いに異なった必要条件を共に満足する、構造上及び音響上の望ましい特性が得られている。
【0049】
トランスデューサ・アセンブリ14を製作するための好適な方法について説明すると、先ず、トランスデューサ・アセンブリ14の複数の外層を夫々個別に、平らなシートとして製造する。それらの層には、64個の導電用電極42から成る第1導電用電極集合と、トランスデューサ材料40と、連続した1枚の層である導電用電極44と、整合層46とが含まれている。それらの層を個別に製作したならば、続いて、複数のトランスデューサ・エレメント22を形成した平らなシートをバッキング材料24の周囲に巻き付けて、接着剤層48で接着する。トランスデューサ・アセンブリ14の機械的及び音響的な特性によっては、複数のトランスデューサ・エレメント22を物理的に分離させておくことが望まれる場合がある。この場合、複数のトランスデューサ・エレメント22の各々が均一に配置されていることが望ましいため、バッキング材料24を、その外径寸法が非常に小さな公差の中に収まるように製造することによって、複数のトランスデューサ・エレメント22を形成した平らなシートをそのバッキング材料24の外周に巻き付けて両端を合わせて円筒形状にしたときに、そのシートの両端縁の間の間隙または重なり部ができる限り小さくなるようにする必要がある。或いは別法として、平面形状のトランスデューサ・アセンブリ14を丸めて正確な外径寸法を有する円筒形状にし、これをX線不透過性ルーメン4に対して同心となるように保持した上で、そのルーメン4とトランスデューサ・アセンブリ14との間の間隙にバッキング材料24を充填するという方法を用いても良い。この方法を用いれば、巻き付けて円筒形にする平らなシートの両端のトランスデューサ・アレイ・エレメントどうしの間の間隔を確実にその他のトランスデューサ・アレイ・エレメントどうしの間の間隔と同一に揃えることができる。このトランスデューサ・シートをルーメン4の周囲に巻き付けたときの円周方向の寸法誤差は±8ミクロン以下にすべきであろう。更に、電子回路ボディ12とトランスデューサ・アセンブリ14との間で、それらの電気接点どうしの位置合せを容易にするためには、バッキング材料24の内径寸法を、X線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4の外径寸法に非常に近くしておく必要がある。トランスデューサ・アセンブリ14の、以上に説明した複数の層から成る同心環状構造を、図1の4−4線に沿ったトランスデューサの断面を示した図4に模式的に示した。
【0050】
以上のようにトランスデューサ・エレメントを平らなシートで製作する方法を採用することによって得られる利点の1つは、トランスデューサ材料40と導電用電極42及び44の各々との間にこれまでは存在していた、静電容量を有する接着剤層をなくし得るということにある。ここで説明している超音波カテーテルに、静電容量を有する接着剤層が以前のように存在していたならば、PZT組成物から成るトランスデューサ材料40の、より高い誘電率に起因する大きなキャパシタンスのために、この好適なトランスデューサ材料の優れた信号感度が損なわれてしまう。
【0051】
このシート方式のトランスデューサ・アレイ製作方法には更に幾つかの利点がある。製作を平らな表面上で行なうことは、湾曲した円筒表面上で行なうより容易である。このことが特に重要であるのは、連続した1枚の導電用電極44の上に、連続したシートの形状ではない、互いに独立した複数のエレメントとしてトランスデューサ材料を形成するために、トランスデューサ材料40を分割しておく必要がある(または切断する必要がある)トランスデューサ・アセンブリの場合である。トランスデューサ材料40を個々に独立した複数のエレメントとして製作できるということは、エレメントどうしの分離を必要とすることのある、クロストークを小さくする(−30dB以下にする)ことが求められている場合に、特定の製作方法を選択する際の重要な要因になる。複数のトランスデューサ・エレメントを形成した平らなシートを製造することのできる会社のうちの幾つかを挙げるならば、次のとおりである。米国、カリフォルニア州、フレモントに所在の Precision Acoustic Devices 社。米国、アリゾナ州、フェニックスに所在の Acoustic Imaging 社。米国、ペンシルベニア州、ルイスタウンに所在の Echo Ultrasound社。フランス国、トゥールに所在の Vermon S.A.社。それに、フランス国、ブザンソンに所在の Imasonic社。
【0052】
トランスデューサ・アセンブリ14を形成したのちに、トランスデューサ材料を分極させることが望ましいことがあり、その場合には、約5千ボルト程度の高電圧を、第1導電用電極集合を構成している複数の導電用電極42と、連続した1枚の導電用電極44との間に印加することによって分極させる。従って、この分極処理は、トランスデューサ・アセンブリ14が、電子回路ボディ12から分離して、独立したアセンブリの状態であるうちに実行することが望ましく、なぜならば、もしそのような高電圧がIC18に加わったならば、IC18の電子回路が破壊されてしまうからである。
【0053】
接着剤層48はバッキング材料24を、第1導電用電極集合を構成している複数の導電用電極42に接着しており、それら複数の導電用電極42はバッキング材料24の外周に均一間隔で並んでいる。第1導電用電極集合を構成している複数の導電用電極42は、トランスデューサ・アレイの中の個々のトランスデューサ・エレメントを画成している。第1導電用電極集合を構成している複数の導電用電極集合42は、トランスデューサ接点集合を構成している64個のトランスデューサ接点32に接続している。夫々が1つずつのトランスデューサ・エレメントに対応した複数のトランスデューサ接点32の各々を、接続材料50が、複数本の導体ライン30のうちの対応した1本の導電ラインに電気的に接続しており、これによって、トランスデューサ・エレメント22とIC18との間の電気信号経路が画成されている。接続材料50には、銀または金を含有したエポキシ・ドロップレット、はんだバンプ、金バンプ、はんだテープ等をはじめとする、幾つもの公知の適当な導体材料のうちの任意のものを使用することができる。
【0054】
複数の導電用電極42を複数本の導体ライン30に接続するための接続方法には、以上の他にも幾つかの方法がある。図5A及び図5Bは、トランスデューサ・アセンブリ14の銅製の複数本の導電用電極42を、バッキング材料24及びトランスデューサ材料40から突出させた、別実施例の超音波カテーテルを模式的に示している。1本の導電用電極42のうちの、バッキング材料24から突出している部分は、トランスデューサ・アセンブリ14を電子回路ボディ12に接続したときに対応する導体ライン30の上に重なるため、公知のギャップ・ウェルダを用いて個々の導体ライン30を夫々に対応する導電用電極42に融着することができる。
【0055】
図5Aは、途中まで組み立てた状態の超音波カテーテルの断面図であり、上述の接続方法を説明するための図である。ギャップ・ウェルダを用いることによって、図3に示したはんだ材料の個々のドロップレット50を形成する必要をなくすことができる。はんだドロップレットが不要になれば、電子回路部品担持部材20の構造を簡単化し得る可能性があり、なぜならば、はんだドロップレットを形成する場合には、導体ライン30とトランスデューサ接点32とを融着するためのドロップレットを適切に形成できるように、担持部材20のトランスデューサ・アセンブリ14側の端面に放射状の溝を形成することが必要になるかも知れないからである。この接続方式のその他の利点としては、導体の接続状態が良好になること、組立方法が簡単化されること、それに、機械的安定性が向上することなどがある。
【0056】
図5A及び図5Bに示した接続方式の更に別の利点として、導電用電極42を導体ライン30に結合するボンディング工程を自動化し得ることがある。その場合には図5Bの途中まで組立てた状態の超音波カテーテル・アセンブリの断面図に示したように、先ず複数本の導体ライン30と複数本の導電用電極42とを位置合せする。続いてギャップ・ウェルダの先端部70を、位置合せした複数組の導体ライン及び導電用電極のうちの1組の上に降ろす。先端部70は導電用電極42aをそれに対応した導体ライン30aの上に押し付ける。先端部70の2つの電極の間に低電圧の大きな電流を流す。この電流によって導電用電極42aが導体ライン30aに融着する。続いて、カテーテル・アセンブリを回転させて、その次の、互いに位置合せされている導電用電極と導体ラインとの組(42b及び30b)を先端部70の直下に位置させて融着操作を再度実行する。この融着操作を次々と連続して行ない、全ての導電用電極と導体ラインとの融着を完了する。
【0057】
次に再び図3の超音波画像形成デバイスについて説明する。メガヘルツの単位の周波数領域で電気エネルギから音響エネルギへの変換、及びその逆の変換を行なうために使用することのできる好適なトランスデューサ材料には様々な種類のものがある。本発明の好適実施例に関しては、結合係数kt の値で表わされるトランスデューサ材料の効率が高く(50%以上)、帯域幅が広くなければならず(中心周波数の50%以上)、複数のトランスデューサ・エレメントが互いに良好に整合していなければならず、挿入損失が小さくなければならず(−40dB以下)、更に、中心周波数が略々20MHz の付近になければならない。そのため、本発明の好適実施例では、トランスデューサ材料24に、公知の様々な適当なPZT組成物のうちの任意のものを使用するようにしている。PZT組成物の物性についての要約が、「Acoustic Waves: Devices, Imaging, and Analog Signal Processing, by Professor Gordon S. Kino, Prentice-Hall, Inc., 1987」という文献の第554〜第555頁に掲載されている。一般的にこの種の組成物は、75℃以上の温度にさらされると損なわれるおそれがあり、従って、IC18を担持部材20に接続するボンディング工程を実行する時点では、その場に存在していないようにすべきである。
【0058】
トランスデューサ層40の径方向の厚さは、超音波カテーテルの指定の中心動作周波数の波長の2分の1(半波長)の厚さか、或いは、半波長の奇数倍の厚さにすることが好ましい。「Biomedical Ultrasonics」という文献の第53頁に説明されているように、そのような厚さとすることによって、そのトランスデューサを超音波カテーテルの中心動作周波数に共振させることが可能になる。本発明の好適実施例では、トランスデューサ材料24の径方向の厚さを約0.1mmにしている。
【0059】
PZT組成物を用いることによって得られる、トランスデューサの優れた信号感度を充分に利用するためには、バッキング材料24の音響インピーダンスが小さくなければならない。従って、音響インピーダンスが大きい酸化アルミニウムで形成されている担持部材20は、バッキング材料24として使用すべきではない。そこで、従来そうであった、電子回路ボディ12とトランスデューサ・アセンブリ14とを共に支持する単一部材として形成した担持部材に替えて、担持部材のセクション20と、バッキング材料のセクション24とを分離した構造を採用している。
【0060】
トランスデューサ材料40の外周表面を覆っている連続した1枚の導電用電極44をトランスデューサ・エレメント22にとってのグラウンド面にしてある。この導電用電極44は、整合層46の表面にスパッタリングによって金を被着して形成した層とすることが好ましい。ただし、トランスデューサ製造の分野の当業者であれば、その他の適当な導体材料及び導体の被着形成方法にも想到することであろう。また、この超音波カテーテルを適切に動作させるために不可欠というのではないが、連続導電用電極44は、ケーブル28が提供しているグラウンド線に公知の方法で接続しておくことが好ましい。このグラウンド線は、電子回路部品担持部材20に沿って延在させておき、電子回路ボディ12とトランスデューサ・アセンブリ14とを連結した後に、連続導電用電極44に接続すれば良い。グラウンド線を接続するための考えられる方法の1つが、故 Proudian 他の米国特許第4917097号の図2に示されている。
【0061】
複数のトランスデューサ・エレメント22は、整合層46によって覆われている。「Biomedical Ultrasonics, by P.N.T. Wells, Academic Press 1977」という文献の第54頁に説明されているように、負荷の中への伝送の効率は、4分の1波長の厚さのインピーダンス整合層を用いることによって、向上させることができる。現時点で好適と考えられている実施例においては、整合層46を、厚さが約0.06mmの、充填剤を混練したエポキシから成る層にしている。超音波画像形成の分野の当業者であれば、これ以外の適当な整合層の材料やそのその厚さにも容易に想到することであろう。
【0062】
電子回路ボディ12とトランスデューサ・アセンブリ14とを別々に組立てたならば、続いて接着剤層52でそれらを互いに接着し、そして先に説明した方法で、それら電子回路ボディ12とトランスデューサ・アセンブリ14との間の電気的接続を行なう。更に、超音波カテーテルのための信号処理装置(これについては既に Proudian et al.の米国特許第4917097号に記載されている)に接続しているリード線を包含しているケーブル28を、公知の方法を用いて担持部材20上の導電用パッド34に接続する。
【0063】
図6は、バルーン1を備えていない診断用画像形成カテーテルの中に画像形成デバイス10を装備した本発明の別実施例を示している。同図は、診断用画像形成カテーテルの幾つかの部分を除去して、ケーブル28とルーメン2とが見えるように描いてある。この図6に示した画像形成カテーテルはバルーン1を備えていないため、バルーンの内部へ流体を出し入れするための細管26は言うまでもなく装備されていない。ただし、この画像形成カテーテルにはノーズコーン25を嵌装してある。ノーズコーン25は、この超音波画像形成カテーテルの先端部を丸みの付いたものにして、このカテーテルを体腔内に挿入するときに、体腔の内壁を傷付けることがないようにしている。鞘体38がエポキシ樹脂8を覆っており、これによって、患者の血液による汚染や万一の電気ショックから防護している。鞘体38はパリレーン等の材料で製作することが好ましいが、体腔内に挿入する医用機器の分野の当業者であればパリレーンに替わるその他の適当な材料にも容易に想到することであろう。図6に示した画像形成カテーテルの構造は、以上に述べた以外の部分については、図1のバルーン血管形成術用超音波画像形成カテーテルの構造と変わるところはない。
【0064】
先に説明した本発明の好適実施例に備えたトランスデューサ・アレイの配列形態は、円筒形状のコアの周囲に円筒形状に配列したものであったが、本発明を実施する超音波カテーテルにおける配列形態には、これ以外にも多くの配列形態がある。それら配列形態の具体的な例を図7及び図8に示した。ただし当業者であれば、本明細書中の本発明の説明に基づいて、超音波カテーテルのトランスデューサ・アレイの更に別の配列形態にも想到することであろう。
【0065】
図7A及び図7Bは、側方視型のリニア・アレイを用いた画像形成カテーテルの断面側面図及び横断面図である。この画像形成カテーテルの構成では、複数のトランスデューサ・エレメント22を1つの平面上に並べ、画像形成カテーテルの挿入方向に対して直角な方向に並べて配列してある。この配列形態によれば、体腔の長手方向に沿った画像が得られる。本発明のこの別実施例でもIC18とケーブル28との間の接続は、本発明の先に説明した実施例と同様にしてある。更に、本発明に従って、IC18を電子回路部品担持部材20に搭載してあり、この電子回路部品担持部材20は、図1に示した本発明の好適実施例に関連して先に説明したものと同タイプのものである。IC18は導体ライン30を介してトランスデューサ・エレメント22に電気的に結合されている。この実施例では封止材8がトランスデューサ・エレメント22のためのバッキング材料を兼ねている。
【0066】
図8A、図8B、及び図8Cは、図1に示した前方視型の「先端発射形」画像形成カテーテルの断面側面図、断面正面図、及び断面平面図である。これらの、図8A、図8B、及び図8Cは、トランスデューサ22のためのバッキング材料を兼ねている封止材8を部分的に除去して、電子回路の部分の配設位置と姿勢とが見えるように描いてある。トランスデューサ・エレメント22は、その配列形態をプレーナ・アレイ(平面状アレイ)として、カテーテルの正面に取付けてある。また、ガイド・ワイヤ・ルーメン4を、超音波画像形成デバイス10に隣接させて取付けてある。このガイド・ワイヤ・ルーメン4の直径は約0.3mmであり、これはこの画像形成カテーテルの直径の約3分の1である。
【0067】
この構成によれば、体腔内の前方視野が画像として得られる。その視野の大きさは、アレイの大きさと、エレメントの個数と、個々のエレメントの寸法と、周波数とによって決まる。本発明のこの別実施例でもIC18とケーブル28との間の接続は、本発明の先に説明した実施例と同様にしてある。更に、本発明に従って、IC18を担持部材20に搭載してあり、この担持部材20は、図1に示した本発明の好適実施例に関連して先に説明したものと同タイプのものである。IC18は導体ライン30を介してトランスデューサ・エレメント22に電気的に結合されている。封止材8がトランスデューサ・エレメント22のためのバッキング材料を兼ねるようにしても良い。
【0068】
当業者には容易に理解されるように、以上の好適実施例に対しては、その様々な点に変更を加えることが可能である。本発明は、添付の請求項に明確に記載した通りのものである。本発明の概念並びに範囲は、本願の教示を知悉した当業者が想到し得るであろう好適実施例に対する変更ないし改変をも包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施例に係るバルーン血管形成術用超音波画像形成カテーテルの電子部品ボディ、トランスデューサ・アセンブリ、及びバルーン・セクションを示した、カテーテルの先端部の断面側面図である。
【図2】互いに分離した電子回路ボディとトランスデューサ・アセンブリとの間の信号経路を接続する以前の、途中まで組み立てた状態の診断用画像形成カテーテルの先端部の斜視図である。
【図3】画像形成デバイスの構成を示した、カテーテルのうちの画像形成デバイス部分の詳細な断面側面図である。
【図4】図1の4−4線に沿ったトランスデューサ・アセンブリの横断面図である。
【図5A】トランスデューサ・アセンブリの複数の導電用電極をバッキング材料及びトランスデューサ材料から突出させた別実施例に係る超音波カテーテルを模式的に示した図である。
【図5B】トランスデューサ・アセンブリの複数の導電用電極をバッキング材料及びトランスデューサ材料から突出させた別実施例に係る超音波カテーテルを模式的に示した図である。
【図6】本発明の実施例に係る超音波診断用画像形成カテーテルの電子回路ボディ、トランスデューサ・アセンブリ、及びノーズ・アセンブリを示した、カテーテルの先端部の断面側面図である。
【図7A】トランスデューサ・アレイの配列態様を「側方視型」の視野が得られる配列態様にした本発明の別実施例の横断面図である。
【図7B】トランスデューサ・アレイの配列態様を「側方視型」の視野が得られる配列態様にした本発明の別実施例の断面側面図である。
【図8A】トランスデューサ・アレイの配列態様を「前方視型」の視野が得られる配列態様にした本発明の別実施例の断面側面図である。
【図8B】トランスデューサ・アレイの配列態様を「前方視型」の視野が得られる配列態様にした本発明の別実施例の断面正面図である。
【図8C】トランスデューサ・アレイの配列態様を「前方視型」の視野が得られる配列態様にした本発明の別実施例の断面平面図である。
【符号の説明】
【0070】
12 電子回路ボディ
14 トランスデューサ・アセンブリ
18 IC
20 担持部材
22 トランスデューサ・エレメント
24 バッキング材料
42 導電用電極
44 導電用電極
46 整合層
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは超音波画像形成の分野に関し、より詳しくは、比較的小さな体腔並びにその周囲の体液ないし体組織の様々な特性を判定するための超音波画像形成に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、米国特許第4917097号(Proudian et al. )「Apparatus and Method for Imaging Small Cavities (小腔の画像形成のための装置及び方法)」の記載と、米国特許第5167233号(Eberle et al. )「Dilating and Imaging Apparatus(拡張術及び画像形成のための装置)」の記載とを、この言及をもって本開示に組み入れるものである。
【0003】
専門医が心臓発作の防止のために特に力を入れているのは、完全なまたは部分的な遮断が生じている心臓動脈の診断及び治療である。冠動脈の血管壁にプラクが蓄積することによって生じる動脈遮断を原因とする心臓発作の発生を防止するために、外科医は経皮経管冠動脈形成術(PTCAと呼ばれるが、「バルーン血管形成術」という呼び名の方が一般的である)を行なっており、それによって良好な結果を得ている。バルーン血管形成術を行なうには、動脈の障害発生部位にカテーテルを注意深く挿通する必要がある。外科医は、バルーンが動脈内の適切な位置に入ったことを確認したならば、動脈壁にプラクが蓄積したために遮断ないし狭窄が発生している血管内通路を拡張するために、そのカテーテルの膨張可能な部分を膨張させる。
【0004】
画像形成デバイスを使用して、ヒトの血管等の狭い囲繞領域の画像を治療及び診断に使用可能な画質で診断用画像ディスプレイ装置上に表示できるようにすることが望まれていることはいうまでもない。カテーテルの先端に超小型の超音波画像形成デバイスを搭載したものを使用して、冠動脈の内壁のリアルタイム画像を表示させるということが、既に公知になっている。このような装置を、ここでは超音波カテーテルと呼ぶことにする。
【0005】
【特許文献1】米国特許第4917097号明細書
【特許文献2】米国特許第5167233号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
公知の超音波カテーテルでは、電子回路部品一式が搭載される電子回路部品担持部材とトランスデューサ・アセンブリのバッキング材料とに、同一の材料が使用されている。この公知の超音波カテーテルに付随する欠点は、電子回路部品の担持部材として好適に使用できる材料に求められる物理的及び音響的特質と、高感度トランスデューサ材料を用いたトランスデューサ・アセンブリのためのバッキング材料として好適に使用できる材料に求められる物理的及び音響的特質とを、共に提供することのできる、担持部材とバッキング材料とに兼用できる材料を見つけることが困難だということにある。
【0007】
上述の公知の超音波カテーテルの構造によれば構造及び組立が簡単になるという利点が得られるが、その構造にはある欠点が付随しており、その欠点は、バッキング材料としての必要条件と電子回路部品の担持部材としての必要条件とが、特殊でしかも互いに相容れないことに原因している。電子回路ボディを構成するための電子回路部品担持部材は、剛性が大きく、電子回路部品が発生する高温に耐えられるだけの耐熱性を有するものであることが求められている。ところが、電子回路ボディの必要条件を満足することのできる公知の電子回路部品担持部材の材料は、高感度が得られるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)組成物を用いた、現時点で好適であると考えられているトランスデューサ・アセンブリのためのバッキング材料としては不適当である。
【0008】
この新しい、より高い感度が得られるPZT組成物をトランスデューサ材料として使用し、一方、公知の電子回路部品担持部材の材料を、そのトランスデューサのためのバッキング材料として使用した場合には、カテーテルが音響信号を受信ないし送信したときに、トランスデューサ・アセンブリに不都合なリンギングが発生する。このリンギングによって発生する信号のために、トランスデューサ・アセンブリが送出する信号の品質が劣化し、ひいては、より高感度のトランスデューサ材料を超音波カテーテルに用いたことによって期待できる利点までもが限られてしまう。また、リンギングに起因するこの信号品質の劣化によって、超音波カテーテルが提供する画像の画質も制約される。そして、その画質が制約されるための、医療用及び診断用の画像形成のための超音波カテーテルの有用性そのものまでもが制約されてしまう。
【0009】
公知の超音波カテーテルでは、トランスデューサ電極が、静電容量を有する接着剤層を介してトランスデューサ層に結合されていた。先に言及したPZT組成物は、音響信号に対するより高い感度が得られるものであるため、それ以前に使用されていたより低い感度しか得られない強誘電体ポリマーのトランスデューサ材料に取って代わるものであると考えられている。PZT組成物は強誘電体コポリマーと比較して優れた感度を有するが、誘電率が大きいという性質も持っている。新材料であるPZT組成物にはインピーダンスが小さい(即ち、静電容量が大きい)という性質があるため、PZT組成物から成るトランスデューサ層を、静電容量を有する接着剤層を介してトランスデューサ電極に結合すると、PZT組成物を用いたことによって得られるはずであった信号感度の向上が無に帰してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の超音波カテーテル・プローブは、超音波を発射し、その発射した超音波の超音波エコーから変換された電気信号を提供する、脈管内へ挿入して使用する超音波カテーテル・プローブにおいて、トランスデューサ・アレイと集積回路とを別々に支持する互いに材質の異なった複数のセクションを有するマルチセクション形ボディであって、トランスデューサのバッキングとして機能し第2セクションと比べて大きな音響エネルギ吸収率を有する第1材料から成る第1セクションと、集積回路を支持するための第2材料から成る第2セクションと、を含んでいるマルチセクション形ボディと、前記マルチセクション形ボディの前記第1セクションに取付けられたトランスデューサ・アセンブリであって、前記トランスデューサ・アレイを含んでおり、該トランスデューサ・アレイは、脈管内へ超音波を送信して、その送信した超音波の超音波エコーに応じて第1電気信号を生成するものである、トランスデューサ・アセンブリと、前記マルチセクション形ボディの前記第2セクションに取付けられた信号変換用集積回路であって、前記トランスデューサ・アセンブリから前記第1電気信号を受け取り、該第1電気信号を第2電気信号に変換し、そして、該第2電気信号を、該第2電気信号を伝送するための少なくとも1本の信号チャネルを含んでいるケーブルを介して、脈管の外部の環境へ送出する、信号変換用集積回路と、前記第1電気信号を前記トランスデューサ・アレイから前記信号変換用集積回路へ伝達する、前記トランスデューサ・アレイと前記信号変換用集積回路との間の複数の電気伝送経路と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記第1セクションと前記第2セクションとを互いに隣接させてガイド・ワイヤ・ルーメン上に取付けてある。
また好ましくは、前記第1材料が前記第2材料と比較して小さな音響インピーダンスを有する。
【0012】
また好ましくは、前記第2材料が前記第1材料と比べて小さな熱膨張係数を有する。
また好ましくは、前記トランスデューサ・アセンブリが、トランスデューサ層に直接に結合した複数の導電用電極を含んでいる。
【0013】
また好ましくは、前記トランスデューサ・アセンブリが、トランスデューサ層に直接に結合した連続した1つの層から成る導電用電極を含んでいる。
また好ましくは、前記トランスデューサ・アセンブリが、円筒面状の配列形態としたトランスデューサ・アレイを含んでいる。
【0014】
また好ましくは、前記トランスデューサ・アセンブリが、平面状の配列形態としたトランスデューサ・アレイを含んでいる。
また好ましくは、前記トランスデューサ・アレイを、脈管内の側方視野を提供するために前記マルチセクション形ボディの一側に配設してある。
【0015】
また好ましくは、前記トランスデューサ・アレイを、脈管内の前方視野を提供するために前記マルチセクション形ボディの正面に配設してある。
また好ましくは、前記マルチセクション形ボディに近接した位置に配設したバルーン・セクションを含んでいる。
【0016】
また好ましくは、前記バルーンを、前記マルチセクション形ボディに先んじて挿入されるカテーテルの一部分に配設してある。
また好ましくは、前記複数の電気伝送経路が、複数のトランスデューサ接点から成るトランスデューサ接点集合を含んでおり、それら複数のトランスデューサ接点は、前記トランスデューサ・アレイの複数の導電用電極に結合していると共に前記トランスデューサ・アレイから横方向へ突出しており、それによって、前記複数の導電用電極を、前記第2セクション上に配設され前記信号変換用集積回路に電気的に結合した複数本の導体ラインに接続することを容易にしてある。
【0017】
また好ましくは、前記複数のトランスデューサ接点が前記複数本の導体ラインと重なり合うようにしてあり、それによって、ギャップ・ウェルダを用いて前記複数のトランスデューサ接点の各々を前記複数の導体ラインのうちの対応する1本のずつの導体ラインに接続することを容易にしてある。
【0018】
また、上記課題を解決するための本発明の超音波画像形成カテーテルは、超音波を発射し、その発射した超音波の超音波エコーから変換された電気信号を提供する、脈管内へ挿入して使用する超音波画像形成カテーテルにおいて、少なくとも1本のルーメンを内蔵しているシャフトと、前記シャフトに取付けた超音波プローブと、を備えており、前記超音波プローブが、トランスデューサ・アレイと集積回路とを別々に支持する互いに材質の異なった複数のセクションを有するマルチセクション形ボディであって、トランスデューサのバッキングとして機能し第2セクションと比べて比較的大きな音響エネルギ吸収率を有する第1材料から成る第1セクションと、集積回路を支持するための第2材料から成る第2セクションとを含んでいるマルチセクション形ボディと、前記マルチセクション形ボディの前記第1セクションに取付けられたトランスデューサ・アセンブリであって、前記トランスデューサ・アレイを含んでおり、該トランスデューサ・アレイは、脈管内へ超音波を送信して、その送信した超音波の超音波エコーに応じて第1電気信号を生成するものである、トランスデューサ・アセンブリと、前記マルチセクション形ボディの前記第2セクションに取付けられた信号変換用集積回路であって、前記トランスデューサ・アセンブリから前記第1電気信号を受け取り、該第1電気信号を第2電気信号に変換し、そして、該第2電気信号を、該第2電気信号を伝送するための少なくとも1本の信号チャネルを含んでいるケーブルを介して、脈管の外部の環境へ送出する、信号変換用集積回路と、前記第1電気信号を前記トランスデューサ・アレイから前記信号変換用集積回路へ伝達する、前記トランスデューサ・アレイと前記信号変換用集積回路との間の複数の電気伝送経路と、を備えた画像形成デバイスである、ことを特徴とする。
【0019】
さらに、上記課題を解決するための本発明の超音波脈管内カテーテル・プローブの組立方法は、トランスデューサ・アレイと集積回路とを別々に支持するためのマルチセクション形ボディを備え、該マルチセクション形ボディがトランスデューサのバッキングで構成された第1セクションと集積回路を支持するための第2セクションとを有する、超音波脈管内カテーテル・プローブの組立方法において、前記トランスデューサ・アレイを含んでいるトランスデューサ・アセンブリを前記マルチセクション形ボディの前記第1セクションに取付けるトランスデューサ・アセンブリ取付ステップであって、前記トランスデューサ・アレイは、脈管内へ超音波を送信して、その送信した超音波の超音波エコーに応じて第1電気信号を生成するものであり、該トランスデューサ・アセンブリは、複数のトランスデューサ接点から成るトランスデューサ接点集合を含んでおり、それら複数のトランスデューサ接点は、前記トランスデューサ・アレイの複数の導電用電極に結合していると共に前記トランスデューサ・アレイから横方向へ突出している、トランスデューサ・アセンブリ取付ステップと、信号変換用集積回路を前記マルチセクション形ボディの前記第2セクションに取付ける信号変換用集積回路取付ステップであって、該信号変換用集積回路は、前記トランスデューサ・アレイから前記第1電気信号を受け取って該第1電気信号を第2電気信号に変換し、該第2電気信号がケーブルを介して伝送されるようにしてあり、該ケーブルは前記マルチセクション形ボディを脈管の外部の環境へ接続しており前記第2電気信号を伝送するための少なくとも1本の信号チャネルを備えている、信号変換用集積回路取付ステップと、前記第1セクションと前記第2セクションとを隣接した位置に配置して、前記複数のトランスデューサ接点の各々が、前記信号変換用集積回路に信号伝達可能に接続された複数の導体ラインのうちの対応する1本ずつの導体ラインと重なり合うようにするセクション配置ステップと、互いに重なり合ったトランスデューサ接点と導体ラインとの組に局所的電流を供給してその組のトランスデューサ接点と導体ラインとを融着させる局所的電流供給ステップと、を含んでいることを特徴とする。
【0020】
好ましくは、前記局所的電流供給ステップが、互いに重なり合ったトランスデューサ接点と導体ラインの各組にギャップ・ウェルダを用いて局所的電流を供給するステップを含んでいる。
【0021】
[本発明の目的(効果)]
本発明の目的は、従来例によってこれまで得ることのできた超音波画像より優れた、実質的にリアルタイムの、比較的小さな体腔及びその周囲の体組織の超音波画像を提供することにある。
【0022】
本発明の更なる目的は、画像の解像度を向上させるために、体腔の内壁からの反射信号に対する感度を向上させることにある。
本発明の更なる目的は、その他の目的を満たしつつ更に、リンギングをはじめとする、トランスデューサ・アセンブリが送受信する信号中のノイズの発生原因を現レベルに維持し、或いは現レベルより低下させることによって、より鮮鋭な体腔の画像を提供することにある。
【0023】
本発明の更なる目的は、超音波カテーテルのトランスデューサ・アセンブリに用いられる非常に小さなトランスデューサ・エレメントを、より容易に製造する手段を提供することにある。
【0024】
本発明の更なる目的は、超音波カテーテルに用いられる非常に小さなトランスデューサ・エレメントを、非常に小さな公差で形成する手段を提供することにある。
本発明の更なる目的は、超音波カテーテルの電子回路ボディとトランスデューサ・アセンブリとに用いられる、好適な担持部材材料/バッキング材料を提供することにある。
【0025】
本発明の更なる目的は、超音波カテーテルの別々に製作したセクションである集積回路を包含しているセクションとトランスデューサ・アセンブリを包含しているセクションとの間の信号経路を提供するために、電子回路ボディの複数本の導体ラインをトランスデューサ・アセンブリの複数の導電用電極へ接続する手段を提供することにある。
【0026】
以上の様々な目的が本発明のカテーテル・プローブ・アセンブリによって達成される。本発明のカテーテル・プローブ・アセンブリは、体腔へ挿入するマルチセクション形ボディを備えている。このマルチセクション形ボディは、互いから分離し互いに材質が異なった、電子回路ボディとトランスデューサ・アセンブリとの夫々のための担持部材材料/バッキング材料を用いたことを特徴とする。本発明は、米国特許第4917097号(故 Proudian 他)や、米国特許第5167233号(Eberle et al. )に記載されているものと略々同タイプの超音波カテーテルに用いて実質的にリアルタイムの小体腔及びその周囲の体組織の画像を発生するための、プローブ・アセンブリを含むものである。
【0027】
トランスデューサ・アセンブリは、複数のトランスデューサから成るトランスデューサ・アレイを備えており、マルチセクション形ボディの第1セクションに取付けられている。トランスデューサ・アレイは、体腔内へ超音波を送信し、複数のトランスデューサが受信した反射超音波に応答して電気信号を発生する。
【0028】
トランスデューサ・アセンブリのためのバッキング材料には、音響インピーダンスが小さく吸収率が大きいという特性を有する材料を特に選択している。音響インピーダンスの小さなバッキング材料は、そのバッキング材料の中へ結合された信号を吸収し、トランスデューサ・アセンブリに発生するリンギングの存続時間を短縮する。更に加えて、複数のトランスデューサ電極から成るトランスデューサ電極集合を、トランスデューサ材料に直接に結合してあり、それによって、以前はトランスデューサ回路に用いられていた静電容量を有する接着剤層をなくしている。
【0029】
複数の集積回路が、マルチセクション形ボディの第2セクションに取付けられている。第2セクションは、第1セクションから音響的に絶縁されており、熱膨張係数の小さな担持部材材料から成る。それら集積回路は、トランスデューサ・アセンブリの複数の電極とそれら集積回路の複数のパッドとを接続している複数本の導体を介して、トランスデューサ・アレイから、複数の電気信号から成る第1電気信号集合を受け取る。それら複数本の導体は、集積回路からトランスデューサ・アセンブリへ励振信号を送出するためにも使用される。集積回路は、受け取った第1電気信号集合を、複数の電気信号から成る第2電気信号集合に変換する。続いて集積回路は、その第2電気信号集合を、ケーブルを介して、体腔環境の外部に設置されている信号処理装置へ送出する。
【0030】
この独特の、マルチセクション形のプローブ・アセンブリ構造を採用すれば、プローブ・アセンブリの設計者は、集積回路チップの担持部材に適した構造上及び音響上の特性を有する材料と、トランスデューサ・エレメントのバッキング材料に適した構造上及び音響上の特性を有する材料とを、個別に選択することができる。
【0031】
トランスデューサ・アセンブリと電子回路ボディとの、両方の部分の構成部品を損傷から保護するために、超音波カテーテル・プローブ・アセンブリのそれら2つの部分を別々に製造した上で、この超音波カテーテルの最終製造段階でそれら2つの部分を連結するようにしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明それ自体、その目的、及びその利点は、以下の詳細な説明を添付図面と共に参照することによって最も良く理解することができよう。
これより本発明を、血管形成術に用いるカテーテルに関連させて説明して行くが、ただし、本発明がその用途に限定されるものではないことは明らかである。むしろ、本発明は、小体腔内での画像形成が必要になり得る全ての用途を網羅するものである。その種の別用途の具体例は、バルーンなしのカテーテルに本発明を用いるというものである。この場合には、そのカテーテルは診断用またはモニタ用の装置として機能する。本発明の更に別の具体的な用途例は、本発明を組み合わせたドプラ型音像形成を利用して血流計測を行なうというものである。本発明は更に、体内の様々な管の内部画像を提供するという用途にも用いることができ、例えば胆管の中の胆石をモニタしたり、泌尿器科や婦人科の分野における検査ないし治療の目的に使用することができる。本発明の用途のその他の具体例としては、レーザ治療の施術中や、血管形成術を行なって血管の管壁からプラクを除去しているときなどに、血管その他の管の画像を提供するために、超音波カテーテルを使用するという用途がある。
【0033】
更に、当業者であれば、本明細書に含まれている本発明の説明並びにそれに付随する本発明の様々な実施例の説明に基づいて想到し得る、その他の種類のトランスデューサ・アレイ配列形態にも、本発明は適用可能である。
【0034】
本発明は、電子回路ボディ及びトランスデューサ・アセンブリのための担持部材/バッキング材料の構造と、トランスデューサ・アセンブリの物理層に対する改良とに関するものであるが、ただし本発明は、大体において、米国特許第4917097号(故 Proudian 他)に記載されている種類の超音波カテーテル画像形成システムの中に組み込むことを意図したものであり、同米国特許の教示は先の言及によって本明細書に組み込まれている。
【0035】
図1には本発明の実施例に係るカテーテルの断面図を模式的に示した。バルーン1を装備した図1に示したカテーテルは血管形成術に広く使用されるタイプのものであるが、ただし本発明は、様々な構造のカテーテルに組み合せて使用し得るものであり、例えば、図6、図7、ないし図8に例示したような種類のカテーテル等と組み合せることによって、小さな体腔の診断用画像を提供し、或いは摘出処置を可能にするものである。一般的な構造のガイド・ワイヤ・ルーメン2及び3を、X線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4の外周に嵌合させて接続してあり、このX線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4は、通常のカテーテル挿入操作の実行中にカテーテル・ガイド・ワイヤを挿通しておくための中央孔6を形成している。エポキシ材料製の封止材8が、電子回路ボディ12とトランスデューサ・アセンブリ14とから成る画像形成デバイス10を、カテーテル・シャフト16の端部に固定している。本発明に係る画像形成デバイス10はマルチセクション型ボディを備えており、このマルチセクション型ボディは、互いに分離した、そして互いに異なった材質の、担持部材20のための材料と、トランスデューサ・バッキング材料24として使用するための材料とで構成されている。封止材8は担持部材20に搭載された複数の集積回路(IC)18から成る集積回路一式を保護して絶縁している。本発明の好適実施例に係る図示のバルーン血管形成術用の装置では、画像形成デバイス10は、バルーン1の基端部スリーブ19の中に配設されている。
【0036】
トランスデューサ・アセンブリ14については後に図3を参照しつつ更に詳細に説明するが、ここでその概要を説明しておくと、このトランスデューサ・アセンブリ14は、複数のトランスデューサ・エレメント22から成るトランスデューサ・エレメント集合を備えている。トランスデューサ・エレメント22は、バッキング材料24を芯にして、その周囲に、円筒形状の配列形態で支持されている。ただし、トランスデューサ・デバイスの分野の当業者であれば、本明細書の記載と慣用技術とに基づいて、これ以外のトランスデューサ・エレメントの配列形態にも想到することであろう。
【0037】
更に図1を参照して説明を続けると、バルーン1は画像形成デバイス10に近接して位置しており、このバルーン1のカテーテル・シャフト16及びルーメン3と夫々に結合している両端部を一般的な方式で気密封止して、このバルーン1の内部を外部環境から隔絶させている。封止材8の中には細管26を埋め込んであり、この細管26は、バルーン1の内部とバルーン膨張源との間で流体を流通させるためのものである。バルーン1の膨張可能な部分の中に、ルーメン3に取付けたX線不透過性のマーカー・バンド27が収容されており、このマーカー・バンド27によって、X線蛍光透視装置上でのカテーテルの位置確認を容易にしている。
【0038】
複数本の内側導線と複数本の外側導線とを1本にまとめたケーブル28によって、複数のIC18と制御ステーションのコンピュータとの間で、データ信号や制御信号等の電気信号を伝達するようにしている。ケーブル28の中の内側導線は、その各々が、絶縁被膜で保護された単線の導体で形成されている。一方、外側導線はケーブル28の周囲に螺旋状に巻回されており、ケーブル28の内側導線が伝達している信号を遮蔽している。このケーブルは絶縁材料で被覆したものとすることが好ましい。
【0039】
次に図2について説明する。同図は、別々に構成した電子回路ボディ12とトランスデューサ・アセンブリ14との間の信号経路を接続する以前の、途中まで組立てた状態にある診断用画像形成カテーテル10の先端部を示しており、この状態を図示したのは、トランスデューサ・アセンブリ14と電子回路ボディ12とから成る画像形成デバイス10の明確に分離した第1部分と第2部分とを明示すためである。同図では、画像形成デバイス10の説明を分かり易くするために画像形成デバイス10を覆う基端部スリーブ19とエポキシ材料製の封止材8とを除去して、複数個の集積回路チップ18とそれらに付随する電子回路配線部分とを露出させてある。ノーズコーン25は、超音波画像形成カテーテルの先端部を丸みの付いた形状にして、この超音波画像形成カテーテルを血管内に入れて行くときに、血管を傷つけないようにするためのものである。
【0040】
X線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4は、X線蛍光透視装置を使用することによって、患者の体内における位置を視認することができるため、カテーテルの位置の確認を助ける。このX線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4は更に、電子回路ボディ12とトランスデューサ・アセンブリ14との両方を支持している。X線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4の外径は約0.5mmである。X線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4は更に別の機能も果たしており、それは、電子回路ボディ12とトランスデューサ・アセンブリ14とを精密に位置合せするためのガイド部材としての機能であり、それらを精密な位置合せする必要があるのは、図3に示したように、電子回路ボディ12上に取付けた複数のIC18からの64本の導体ライン30の夫々をトランスデューサ・アセンブリ14に設けた64個のトランスデューサ接点32の夫々に位置合せするためである。X線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4によって、画像形成デバイス10の構成要素である電子回路ボディ12とトランスデューサ・アセンブリ14との間の位置合せが容易にできるようにするためには、X線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4と、担持部材20及びバッキング材料24との、いずれとの間の間隙も、約25ミクロン以下にしておかねばならない。それらとの間の間隙をこの程度に小さくしておけば、複数本の導体ライン30と複数個のトランスデューサ接点32との間の、半径方向における適切な位置合せが確実に行なわれる。
【0041】
IC18を担持部材20上に物理的に取付けるために、それら4個のIC18を半導体チップの製造の分野の当業者には周知の反転形チップ構造にして、担持部材20上に形成されている複数の導電用パッド34から成る導電用パッド集合にボンディングするようにしてある。それら導電用パッド34は、互いに近接している複数個のICチップ18を、それらICチップどうしの間で相互接続すると共に、それらIC18とケーブル28との間を接続する機能も果たしており、ケーブル28はそれらIC18を、患者の体外に設置されている信号処理装置に信号伝達可能に接続している。導電用パッド34は更に、複数のIC18を前述の複数本の導体ライン30に接続している。それら導体ライン30は複数のIC18を、トランスデューサ・アセンブリ14の中のトランスデューサ・エレメントを画成している64個の電極から成る電極集合に結合している。
【0042】
4個のIC18は各々が16本ずつのチャネルを備えており、それら16本のチャネルは、トランスデューサ・アセンブリ14の中の16個のトランスデューサ電極によって画成されている16個のトランスデューサ・エレメントに対応している。4個のIC18は、その各々が、導体ライン30によってトランスデューサ・アセンブリ14の中の対応するトランスデューサ・エレメントに結合されているそのICの16本のチャネルのうちの1本ないし複数本のチャネル上に、超音波周波数領域の電気信号をシーケンシャルに送信及び受信する機能を備えている。また、4個のIC18は、信号処理装置が送出する励振パルスを1個ないし複数個のトランスデューサ・エレメントへ分配するマルチプレクシングの機能も備えている。いかなる時点でも、各IC18の16本のチャネルのうちの1本ないし複数本のチャネルが、励振信号で励振することができるか、または、IC18に格納されている起動制御信号を使用することによって反射波即ちエコーを受信することができる状態におかれている。アクティブなトランスデューサ・エレメントへ入射した反射波から生成された電気信号は、増幅された後に伝送ケーブル28の中の電線を介して外部の信号処理装置へ送信される。
【0043】
次に図3について説明する。同図は、図1のカテーテルの画像形成部の詳細な側面断面図であり、画像形成デバイス10の構造と材料とを示すために描いた図である。同図には、電子回路ボディ12及びトランスデューサ・アセンブリ14を、それらを組合せた状態で図示してあり、これは、それらが画像形成カテーテルの完成した構造の中で存在している状態に他ならない。トランスデューサ・アセンブリの夫々の層は、図3にも詳細に示してあるが、ただし、トランスデューサ・アセンブリ14の円環状の層について説明している間は、図2の4−4線に沿ったトランスデューサ・アセンブリの断面図である図4を参照するのが良いであろう。
【0044】
担持部材20は、接着剤層36によってX線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4に接着されており、この接着剤層36には、市販の様々な医療用シアノアクリレートエポキシのうちの任意のものを使用することができる。電子回路ボディ12が充分に固定できさえすれば、接着剤層36に替えて、任意の固定材料ないし固定構造を採用しても構わない。既述の如く、接着剤層36が充填されているX線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4と担持部材20との間の間隙は、X線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4が、電子回路ボディ12とトランスデューサ・アセンブリ14との間の電気的接点を位置合せするのを補助することができるように、非常に小さくしておく必要がある。
【0045】
本発明の好適実施例における担持部材20は、熱膨張率が小さく剛性と強度が大きい材料で形成されている。担持部材20は200℃以上の温度に耐える耐熱性を備えている必要があり、この200℃という温度は、複数個のIC18から成るIC一式を担持部材20に接続するボンディング工程において電子回路ボディ12に加わる温度である。更に、超音波カテーテルの操作時にIC18それ自体が発生する熱によって担持部材20が膨張するおそれもある。このときの担持部材20の熱膨張量が余りに大きいと、担持部材20から導電用パッド34に加わる剪断力のためにIC18の接点と導体ライン30との間の電気接続に障害が発生するおそれが無視できない。酸化アルミニウム(Al2O3 )は、以上に述べた、担持部材20のための材料に求められる望ましい特性を備えている。ただし、ハイブリッド回路の分野の当業者であれば、酸化アルミニウムに替わるその他の様々な適当な材料にも想到することであろう。酸化アルミニウムは更に、音響インピーダンス非常に大きく(約40MRayls)、損失が比較的小さいという特性を有する。以下に説明するように、酸化アルミニウムは、これらの音響学的特性を有するため、高感度トランスデューサ・エレメントに関連して使用するトランスデューサ・バッキング材料の候補としては、良いものではない。
【0046】
封止材8を電子回路ボディ12の外周表面に被着してあるのは、カテーテル・アセンブリの形状をより円筒形に近くすることと、電子回路を絶縁することとを目的としたものである。封止材8には、一般的に、市販の様々な医用紫外線硬化性アクリル樹脂のうちの任意のものを使用することができる。血液による汚染や万一の電気ショックからの保護のために、電子回路ボディ12の表面を保護層で覆うようにしても良い。保護層の材料には、例えばパリレーン(parylene)等を用いることができる。超音波カテーテルをはじめとする、体内に挿入する医用機器の分野の当業者ならば、この保護層に用いるのに適当なその他の様々な材料にも想到することであろう。保護層は、図1に示したバルーン血管形成術用カテーテルでは基端部スリーブ19で構成されており、また、図6に示したような診断用画像形成カテーテルの場合には鞘体38で構成すれば良い。
【0047】
次に、トランスデューサ・アセンブリ14とそれに関連した構造部分とについて説明する。トランスデューサ・アセンブリ14のバッキング材料24は、音響インピーダンスが比較的小さく(<10MRayls)、損失係数が大きい(約20〜40dB/mm )という特性を有する材料で形成することが好ましい。これらの特性が必要とされるのは、トランスデューサ材料40としてPZT組成物等の高感度トランスデューサ材料を使用した場合であり、この場合には、バッキング材料に音響インピーダンスが大きく損失の少ない材料を使用したならば、それによって発生するリンギング現象のために、そのトランスデューサ材料のせっかくの優れた信号感度が台無しになってしまう。この理由から、酸化アルミニウムはトランスデューサ・アセンブリ14のバッキング材料24には不適当な材料である。そのため本発明の超音波カテーテルでは、バッキング材料24を別体の部材とし、異なった材料を使用している。バッキング材料24の好適な材料には、例えば、ゴム粒子または微小ガラス球体を混練したエポキシ樹脂がある。この種の樹脂の具体例としては、米国、コネチカット州、トーリントンに所在の Dymax Corp.社の「"light-weld" 183-M」がある。超音波画像形成の分野の当業者であれば、音響インピーダンスが小さく損失が大きい、その他の様々な適当な材料にも想到することであろう。空気も理想的なバッキング材料ではあるが、実際問題として、空気バッキング方式のトランスデューサ・アセンブリは製作が困難である。
【0048】
従って、本発明の超音波カテーテルの特徴の1つは、画像形成デバイス10を構成している担持部材とバッキング材料とを別体の部材とし、担持部材の材料とバッキング材料とに、互いに非常に対照的な特性を有する、異なった材質の材料を使用していることにある。2種類の明らかに異なった材料を用いることによって、電子回路ボディ12の必要条件とトランスデューサ・アセンブリ14の必要条件という、互いに異なった必要条件を共に満足する、構造上及び音響上の望ましい特性が得られている。
【0049】
トランスデューサ・アセンブリ14を製作するための好適な方法について説明すると、先ず、トランスデューサ・アセンブリ14の複数の外層を夫々個別に、平らなシートとして製造する。それらの層には、64個の導電用電極42から成る第1導電用電極集合と、トランスデューサ材料40と、連続した1枚の層である導電用電極44と、整合層46とが含まれている。それらの層を個別に製作したならば、続いて、複数のトランスデューサ・エレメント22を形成した平らなシートをバッキング材料24の周囲に巻き付けて、接着剤層48で接着する。トランスデューサ・アセンブリ14の機械的及び音響的な特性によっては、複数のトランスデューサ・エレメント22を物理的に分離させておくことが望まれる場合がある。この場合、複数のトランスデューサ・エレメント22の各々が均一に配置されていることが望ましいため、バッキング材料24を、その外径寸法が非常に小さな公差の中に収まるように製造することによって、複数のトランスデューサ・エレメント22を形成した平らなシートをそのバッキング材料24の外周に巻き付けて両端を合わせて円筒形状にしたときに、そのシートの両端縁の間の間隙または重なり部ができる限り小さくなるようにする必要がある。或いは別法として、平面形状のトランスデューサ・アセンブリ14を丸めて正確な外径寸法を有する円筒形状にし、これをX線不透過性ルーメン4に対して同心となるように保持した上で、そのルーメン4とトランスデューサ・アセンブリ14との間の間隙にバッキング材料24を充填するという方法を用いても良い。この方法を用いれば、巻き付けて円筒形にする平らなシートの両端のトランスデューサ・アレイ・エレメントどうしの間の間隔を確実にその他のトランスデューサ・アレイ・エレメントどうしの間の間隔と同一に揃えることができる。このトランスデューサ・シートをルーメン4の周囲に巻き付けたときの円周方向の寸法誤差は±8ミクロン以下にすべきであろう。更に、電子回路ボディ12とトランスデューサ・アセンブリ14との間で、それらの電気接点どうしの位置合せを容易にするためには、バッキング材料24の内径寸法を、X線不透過性ガイド・ワイヤ・ルーメン4の外径寸法に非常に近くしておく必要がある。トランスデューサ・アセンブリ14の、以上に説明した複数の層から成る同心環状構造を、図1の4−4線に沿ったトランスデューサの断面を示した図4に模式的に示した。
【0050】
以上のようにトランスデューサ・エレメントを平らなシートで製作する方法を採用することによって得られる利点の1つは、トランスデューサ材料40と導電用電極42及び44の各々との間にこれまでは存在していた、静電容量を有する接着剤層をなくし得るということにある。ここで説明している超音波カテーテルに、静電容量を有する接着剤層が以前のように存在していたならば、PZT組成物から成るトランスデューサ材料40の、より高い誘電率に起因する大きなキャパシタンスのために、この好適なトランスデューサ材料の優れた信号感度が損なわれてしまう。
【0051】
このシート方式のトランスデューサ・アレイ製作方法には更に幾つかの利点がある。製作を平らな表面上で行なうことは、湾曲した円筒表面上で行なうより容易である。このことが特に重要であるのは、連続した1枚の導電用電極44の上に、連続したシートの形状ではない、互いに独立した複数のエレメントとしてトランスデューサ材料を形成するために、トランスデューサ材料40を分割しておく必要がある(または切断する必要がある)トランスデューサ・アセンブリの場合である。トランスデューサ材料40を個々に独立した複数のエレメントとして製作できるということは、エレメントどうしの分離を必要とすることのある、クロストークを小さくする(−30dB以下にする)ことが求められている場合に、特定の製作方法を選択する際の重要な要因になる。複数のトランスデューサ・エレメントを形成した平らなシートを製造することのできる会社のうちの幾つかを挙げるならば、次のとおりである。米国、カリフォルニア州、フレモントに所在の Precision Acoustic Devices 社。米国、アリゾナ州、フェニックスに所在の Acoustic Imaging 社。米国、ペンシルベニア州、ルイスタウンに所在の Echo Ultrasound社。フランス国、トゥールに所在の Vermon S.A.社。それに、フランス国、ブザンソンに所在の Imasonic社。
【0052】
トランスデューサ・アセンブリ14を形成したのちに、トランスデューサ材料を分極させることが望ましいことがあり、その場合には、約5千ボルト程度の高電圧を、第1導電用電極集合を構成している複数の導電用電極42と、連続した1枚の導電用電極44との間に印加することによって分極させる。従って、この分極処理は、トランスデューサ・アセンブリ14が、電子回路ボディ12から分離して、独立したアセンブリの状態であるうちに実行することが望ましく、なぜならば、もしそのような高電圧がIC18に加わったならば、IC18の電子回路が破壊されてしまうからである。
【0053】
接着剤層48はバッキング材料24を、第1導電用電極集合を構成している複数の導電用電極42に接着しており、それら複数の導電用電極42はバッキング材料24の外周に均一間隔で並んでいる。第1導電用電極集合を構成している複数の導電用電極42は、トランスデューサ・アレイの中の個々のトランスデューサ・エレメントを画成している。第1導電用電極集合を構成している複数の導電用電極集合42は、トランスデューサ接点集合を構成している64個のトランスデューサ接点32に接続している。夫々が1つずつのトランスデューサ・エレメントに対応した複数のトランスデューサ接点32の各々を、接続材料50が、複数本の導体ライン30のうちの対応した1本の導電ラインに電気的に接続しており、これによって、トランスデューサ・エレメント22とIC18との間の電気信号経路が画成されている。接続材料50には、銀または金を含有したエポキシ・ドロップレット、はんだバンプ、金バンプ、はんだテープ等をはじめとする、幾つもの公知の適当な導体材料のうちの任意のものを使用することができる。
【0054】
複数の導電用電極42を複数本の導体ライン30に接続するための接続方法には、以上の他にも幾つかの方法がある。図5A及び図5Bは、トランスデューサ・アセンブリ14の銅製の複数本の導電用電極42を、バッキング材料24及びトランスデューサ材料40から突出させた、別実施例の超音波カテーテルを模式的に示している。1本の導電用電極42のうちの、バッキング材料24から突出している部分は、トランスデューサ・アセンブリ14を電子回路ボディ12に接続したときに対応する導体ライン30の上に重なるため、公知のギャップ・ウェルダを用いて個々の導体ライン30を夫々に対応する導電用電極42に融着することができる。
【0055】
図5Aは、途中まで組み立てた状態の超音波カテーテルの断面図であり、上述の接続方法を説明するための図である。ギャップ・ウェルダを用いることによって、図3に示したはんだ材料の個々のドロップレット50を形成する必要をなくすことができる。はんだドロップレットが不要になれば、電子回路部品担持部材20の構造を簡単化し得る可能性があり、なぜならば、はんだドロップレットを形成する場合には、導体ライン30とトランスデューサ接点32とを融着するためのドロップレットを適切に形成できるように、担持部材20のトランスデューサ・アセンブリ14側の端面に放射状の溝を形成することが必要になるかも知れないからである。この接続方式のその他の利点としては、導体の接続状態が良好になること、組立方法が簡単化されること、それに、機械的安定性が向上することなどがある。
【0056】
図5A及び図5Bに示した接続方式の更に別の利点として、導電用電極42を導体ライン30に結合するボンディング工程を自動化し得ることがある。その場合には図5Bの途中まで組立てた状態の超音波カテーテル・アセンブリの断面図に示したように、先ず複数本の導体ライン30と複数本の導電用電極42とを位置合せする。続いてギャップ・ウェルダの先端部70を、位置合せした複数組の導体ライン及び導電用電極のうちの1組の上に降ろす。先端部70は導電用電極42aをそれに対応した導体ライン30aの上に押し付ける。先端部70の2つの電極の間に低電圧の大きな電流を流す。この電流によって導電用電極42aが導体ライン30aに融着する。続いて、カテーテル・アセンブリを回転させて、その次の、互いに位置合せされている導電用電極と導体ラインとの組(42b及び30b)を先端部70の直下に位置させて融着操作を再度実行する。この融着操作を次々と連続して行ない、全ての導電用電極と導体ラインとの融着を完了する。
【0057】
次に再び図3の超音波画像形成デバイスについて説明する。メガヘルツの単位の周波数領域で電気エネルギから音響エネルギへの変換、及びその逆の変換を行なうために使用することのできる好適なトランスデューサ材料には様々な種類のものがある。本発明の好適実施例に関しては、結合係数kt の値で表わされるトランスデューサ材料の効率が高く(50%以上)、帯域幅が広くなければならず(中心周波数の50%以上)、複数のトランスデューサ・エレメントが互いに良好に整合していなければならず、挿入損失が小さくなければならず(−40dB以下)、更に、中心周波数が略々20MHz の付近になければならない。そのため、本発明の好適実施例では、トランスデューサ材料24に、公知の様々な適当なPZT組成物のうちの任意のものを使用するようにしている。PZT組成物の物性についての要約が、「Acoustic Waves: Devices, Imaging, and Analog Signal Processing, by Professor Gordon S. Kino, Prentice-Hall, Inc., 1987」という文献の第554〜第555頁に掲載されている。一般的にこの種の組成物は、75℃以上の温度にさらされると損なわれるおそれがあり、従って、IC18を担持部材20に接続するボンディング工程を実行する時点では、その場に存在していないようにすべきである。
【0058】
トランスデューサ層40の径方向の厚さは、超音波カテーテルの指定の中心動作周波数の波長の2分の1(半波長)の厚さか、或いは、半波長の奇数倍の厚さにすることが好ましい。「Biomedical Ultrasonics」という文献の第53頁に説明されているように、そのような厚さとすることによって、そのトランスデューサを超音波カテーテルの中心動作周波数に共振させることが可能になる。本発明の好適実施例では、トランスデューサ材料24の径方向の厚さを約0.1mmにしている。
【0059】
PZT組成物を用いることによって得られる、トランスデューサの優れた信号感度を充分に利用するためには、バッキング材料24の音響インピーダンスが小さくなければならない。従って、音響インピーダンスが大きい酸化アルミニウムで形成されている担持部材20は、バッキング材料24として使用すべきではない。そこで、従来そうであった、電子回路ボディ12とトランスデューサ・アセンブリ14とを共に支持する単一部材として形成した担持部材に替えて、担持部材のセクション20と、バッキング材料のセクション24とを分離した構造を採用している。
【0060】
トランスデューサ材料40の外周表面を覆っている連続した1枚の導電用電極44をトランスデューサ・エレメント22にとってのグラウンド面にしてある。この導電用電極44は、整合層46の表面にスパッタリングによって金を被着して形成した層とすることが好ましい。ただし、トランスデューサ製造の分野の当業者であれば、その他の適当な導体材料及び導体の被着形成方法にも想到することであろう。また、この超音波カテーテルを適切に動作させるために不可欠というのではないが、連続導電用電極44は、ケーブル28が提供しているグラウンド線に公知の方法で接続しておくことが好ましい。このグラウンド線は、電子回路部品担持部材20に沿って延在させておき、電子回路ボディ12とトランスデューサ・アセンブリ14とを連結した後に、連続導電用電極44に接続すれば良い。グラウンド線を接続するための考えられる方法の1つが、故 Proudian 他の米国特許第4917097号の図2に示されている。
【0061】
複数のトランスデューサ・エレメント22は、整合層46によって覆われている。「Biomedical Ultrasonics, by P.N.T. Wells, Academic Press 1977」という文献の第54頁に説明されているように、負荷の中への伝送の効率は、4分の1波長の厚さのインピーダンス整合層を用いることによって、向上させることができる。現時点で好適と考えられている実施例においては、整合層46を、厚さが約0.06mmの、充填剤を混練したエポキシから成る層にしている。超音波画像形成の分野の当業者であれば、これ以外の適当な整合層の材料やそのその厚さにも容易に想到することであろう。
【0062】
電子回路ボディ12とトランスデューサ・アセンブリ14とを別々に組立てたならば、続いて接着剤層52でそれらを互いに接着し、そして先に説明した方法で、それら電子回路ボディ12とトランスデューサ・アセンブリ14との間の電気的接続を行なう。更に、超音波カテーテルのための信号処理装置(これについては既に Proudian et al.の米国特許第4917097号に記載されている)に接続しているリード線を包含しているケーブル28を、公知の方法を用いて担持部材20上の導電用パッド34に接続する。
【0063】
図6は、バルーン1を備えていない診断用画像形成カテーテルの中に画像形成デバイス10を装備した本発明の別実施例を示している。同図は、診断用画像形成カテーテルの幾つかの部分を除去して、ケーブル28とルーメン2とが見えるように描いてある。この図6に示した画像形成カテーテルはバルーン1を備えていないため、バルーンの内部へ流体を出し入れするための細管26は言うまでもなく装備されていない。ただし、この画像形成カテーテルにはノーズコーン25を嵌装してある。ノーズコーン25は、この超音波画像形成カテーテルの先端部を丸みの付いたものにして、このカテーテルを体腔内に挿入するときに、体腔の内壁を傷付けることがないようにしている。鞘体38がエポキシ樹脂8を覆っており、これによって、患者の血液による汚染や万一の電気ショックから防護している。鞘体38はパリレーン等の材料で製作することが好ましいが、体腔内に挿入する医用機器の分野の当業者であればパリレーンに替わるその他の適当な材料にも容易に想到することであろう。図6に示した画像形成カテーテルの構造は、以上に述べた以外の部分については、図1のバルーン血管形成術用超音波画像形成カテーテルの構造と変わるところはない。
【0064】
先に説明した本発明の好適実施例に備えたトランスデューサ・アレイの配列形態は、円筒形状のコアの周囲に円筒形状に配列したものであったが、本発明を実施する超音波カテーテルにおける配列形態には、これ以外にも多くの配列形態がある。それら配列形態の具体的な例を図7及び図8に示した。ただし当業者であれば、本明細書中の本発明の説明に基づいて、超音波カテーテルのトランスデューサ・アレイの更に別の配列形態にも想到することであろう。
【0065】
図7A及び図7Bは、側方視型のリニア・アレイを用いた画像形成カテーテルの断面側面図及び横断面図である。この画像形成カテーテルの構成では、複数のトランスデューサ・エレメント22を1つの平面上に並べ、画像形成カテーテルの挿入方向に対して直角な方向に並べて配列してある。この配列形態によれば、体腔の長手方向に沿った画像が得られる。本発明のこの別実施例でもIC18とケーブル28との間の接続は、本発明の先に説明した実施例と同様にしてある。更に、本発明に従って、IC18を電子回路部品担持部材20に搭載してあり、この電子回路部品担持部材20は、図1に示した本発明の好適実施例に関連して先に説明したものと同タイプのものである。IC18は導体ライン30を介してトランスデューサ・エレメント22に電気的に結合されている。この実施例では封止材8がトランスデューサ・エレメント22のためのバッキング材料を兼ねている。
【0066】
図8A、図8B、及び図8Cは、図1に示した前方視型の「先端発射形」画像形成カテーテルの断面側面図、断面正面図、及び断面平面図である。これらの、図8A、図8B、及び図8Cは、トランスデューサ22のためのバッキング材料を兼ねている封止材8を部分的に除去して、電子回路の部分の配設位置と姿勢とが見えるように描いてある。トランスデューサ・エレメント22は、その配列形態をプレーナ・アレイ(平面状アレイ)として、カテーテルの正面に取付けてある。また、ガイド・ワイヤ・ルーメン4を、超音波画像形成デバイス10に隣接させて取付けてある。このガイド・ワイヤ・ルーメン4の直径は約0.3mmであり、これはこの画像形成カテーテルの直径の約3分の1である。
【0067】
この構成によれば、体腔内の前方視野が画像として得られる。その視野の大きさは、アレイの大きさと、エレメントの個数と、個々のエレメントの寸法と、周波数とによって決まる。本発明のこの別実施例でもIC18とケーブル28との間の接続は、本発明の先に説明した実施例と同様にしてある。更に、本発明に従って、IC18を担持部材20に搭載してあり、この担持部材20は、図1に示した本発明の好適実施例に関連して先に説明したものと同タイプのものである。IC18は導体ライン30を介してトランスデューサ・エレメント22に電気的に結合されている。封止材8がトランスデューサ・エレメント22のためのバッキング材料を兼ねるようにしても良い。
【0068】
当業者には容易に理解されるように、以上の好適実施例に対しては、その様々な点に変更を加えることが可能である。本発明は、添付の請求項に明確に記載した通りのものである。本発明の概念並びに範囲は、本願の教示を知悉した当業者が想到し得るであろう好適実施例に対する変更ないし改変をも包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施例に係るバルーン血管形成術用超音波画像形成カテーテルの電子部品ボディ、トランスデューサ・アセンブリ、及びバルーン・セクションを示した、カテーテルの先端部の断面側面図である。
【図2】互いに分離した電子回路ボディとトランスデューサ・アセンブリとの間の信号経路を接続する以前の、途中まで組み立てた状態の診断用画像形成カテーテルの先端部の斜視図である。
【図3】画像形成デバイスの構成を示した、カテーテルのうちの画像形成デバイス部分の詳細な断面側面図である。
【図4】図1の4−4線に沿ったトランスデューサ・アセンブリの横断面図である。
【図5A】トランスデューサ・アセンブリの複数の導電用電極をバッキング材料及びトランスデューサ材料から突出させた別実施例に係る超音波カテーテルを模式的に示した図である。
【図5B】トランスデューサ・アセンブリの複数の導電用電極をバッキング材料及びトランスデューサ材料から突出させた別実施例に係る超音波カテーテルを模式的に示した図である。
【図6】本発明の実施例に係る超音波診断用画像形成カテーテルの電子回路ボディ、トランスデューサ・アセンブリ、及びノーズ・アセンブリを示した、カテーテルの先端部の断面側面図である。
【図7A】トランスデューサ・アレイの配列態様を「側方視型」の視野が得られる配列態様にした本発明の別実施例の横断面図である。
【図7B】トランスデューサ・アレイの配列態様を「側方視型」の視野が得られる配列態様にした本発明の別実施例の断面側面図である。
【図8A】トランスデューサ・アレイの配列態様を「前方視型」の視野が得られる配列態様にした本発明の別実施例の断面側面図である。
【図8B】トランスデューサ・アレイの配列態様を「前方視型」の視野が得られる配列態様にした本発明の別実施例の断面正面図である。
【図8C】トランスデューサ・アレイの配列態様を「前方視型」の視野が得られる配列態様にした本発明の別実施例の断面平面図である。
【符号の説明】
【0070】
12 電子回路ボディ
14 トランスデューサ・アセンブリ
18 IC
20 担持部材
22 トランスデューサ・エレメント
24 バッキング材料
42 導電用電極
44 導電用電極
46 整合層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を出射し、その出射した超音波の超音波エコーから生じた変換電気信号を提供する、脈管内へ挿入して使用する超音波カテーテル・プローブにおいて、
トランスデューサ・アレイと集積回路とを別々に支持する、材質が異なる複数のセクションを有するマルチセクション形ボディであって、トランスデューサのバッキングとして機能し第2セクションと比べて大きな音響エネルギ吸収率を有する第1材料から成る第1セクションと、集積電子回路要素を支持するための第2材料から成る第2セクションと、を含んでいるマルチセクション形ボディと、
前記マルチセクション形ボディの前記第1セクションに取付けられたトランスデューサ・アセンブリであって、前記トランスデューサ・アレイを含んでおり、該トランスデューサ・アレイは、脈管内へ超音波を発信して、該超音波の超音波エコーに応じて第1電気信号を生成するものである、トランスデューサ・アセンブリと、
前記マルチセクション形ボディの前記第2セクションに取付けられた電気信号変換用集積回路要素であって、前記トランスデューサ・アセンブリから前記第1電気信号を受け取り、該第1電気信号を第2電気信号に変換し、そして、該第2電気信号を、該第2電気信号を伝送するための少なくとも1本の信号チャネルを含んでいるケーブルを介して、脈管の外部の環境へ送出する、電気信号変換用集積回路要素と、
前記第1電気信号を前記トランスデューサ・アレイから前記電気信号変換用集積回路要素へ伝達する、前記トランスデューサ・アレイと前記電気信号変換用集積回路要素との間の複数の電気伝送経路と、
を備えたことを特徴とする超音波カテーテル・プローブ。
【請求項2】
前記第1セクションと前記第2セクションとを互いに隣接させてガイド・ワイヤ・ルーメン上に取付けてあることを特徴とする請求項1記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項3】
前記第1材料が前記第2材料と比較して小さな音響インピーダンスを有することを特徴とする請求項1記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項4】
前記第2材料が前記第1材料と比べて小さな熱膨張係数を有することを特徴とする請求項1記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項5】
前記トランスデューサ・アセンブリが、トランスデューサ層に直接に結合した複数の導電用電極を含んでいることを特徴とする請求項1記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項6】
前記トランスデューサ・アセンブリが、トランスデューサ層に直接に結合した連続した1つの層から成る導電用電極を含んでいることを特徴とする請求項1記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項7】
前記トランスデューサ・アセンブリが、円筒面状の配列形態としたトランスデューサ・アレイを含んでいることを特徴とする請求項1記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項8】
前記トランスデューサ・アセンブリが、平面状の配列形態としたトランスデューサ・アレイを含んでいることを特徴とする請求項1記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項9】
前記トランスデューサ・アレイを、脈管内の側方視野を提供するために前記マルチセクション形ボディの一側に配設してあることを特徴とする請求項8記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項10】
前記トランスデューサ・アレイを、脈管内の前方視野を提供するために前記マルチセクション形ボディの正面に配設してあることを特徴とする請求項8記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項11】
前記マルチセクション形ボディに近接した位置に配設したバルーン・セクションを含んでいることを特徴とする請求項1記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項12】
前記バルーンを、前記マルチセクション形ボディに先んじて挿入されるカテーテルの一部分に配設してあることを特徴とする請求項11記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項13】
前記複数の電気伝送経路が、複数のトランスデューサ接点から成るトランスデューサ接点集合を含んでおり、それら複数のトランスデューサ接点は、前記トランスデューサ・アレイの複数の導電用電極に結合していると共に前記トランスデューサ・アレイから横方向へ突出しており、それによって、前記複数の導電用電極を、前記第2セクション上に配設され前記電気信号変換用集積回路要素に電気的に結合した複数本の導体ラインに接続することを容易にしたことを特徴とする請求項1記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項14】
前記複数のトランスデューサ接点が前記複数本の導体ラインと重なり合うようにしてあり、それによって、ギャップ・ウェルダを用いて前記複数のトランスデューサ接点の各々を前記複数の導体ラインのうちの対応する1本のずつの導体ラインに接続することを容易にしたことを特徴とする請求項13記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項15】
超音波を出射し、その出射した超音波の超音波エコーから生じた変換電気信号を提供する、脈管内へ挿入して使用する超音波画像形成カテーテルにおいて、
少なくとも1本のルーメンを内蔵しているシャフトと、
前記シャフトに取付けた超音波プローブと、
を備えており、
前記超音波プローブが、
トランスデューサ・アレイと集積回路とを別々に支持する互いに材質の異なった複数のセクションを有するマルチセクション形ボディであって、トランスデューサのバッキングとして機能し第2セクションと比べて比較的大きな音響エネルギ吸収率を有する第1材料から成る第1セクションと、集積回路を支持するための第2材料から成る第2セクションとを含んでいるマルチセクション形ボディと、
前記マルチセクション形ボディの前記第1セクションに取付けられたトランスデューサ・アセンブリであって、前記トランスデューサ・アレイを含んでおり、該トランスデューサ・アレイは、脈管内へ超音波を送信して、その送信した超音波の超音波エコーに応じて第1電気信号を生成するものである、トランスデューサ・アセンブリと、
前記マルチセクション形ボディの前記第2セクションに取付けられた電気信号変換用集積回路要素であって、前記トランスデューサ・アセンブリから前記第1電気信号を受け取り、該第1電気信号を第2電気信号に変換し、そして、該第2電気信号を、該第2電気信号を伝送するための少なくとも1本の信号チャネルを含んでいるケーブルを介して、脈管の外部の環境へ送出する、電気信号変換用集積回路要素と、
前記第1電気信号を前記トランスデューサ・アレイから前記電気信号変換用集積回路要素へ伝達する、前記トランスデューサ・アレイと前記電気信号変換用集積回路要素との間の複数の電気伝送経路と、
を備えた画像形成デバイスである、
ことを特徴とする超音波画像形成カテーテル。
【請求項16】
トランスデューサ・アレイと集積電子回路要素とを別々に支持するためのマルチセクション形ボディを備え、該マルチセクション形ボディがトランスデューサのバッキングで構成された第1セクションと集積電子回路要素を支持するための第2セクションとを有する、超音波脈管内カテーテル・プローブの組立方法において、
前記トランスデューサ・アレイを含んでいるトランスデューサ・アセンブリを前記マルチセクション形ボディの前記第1セクションに取付けるトランスデューサ・アセンブリ取付ステップであって、前記トランスデューサ・アレイは、脈管内へ超音波を送信して、その送信した超音波の超音波エコーに応じて第1電気信号を生成するものであり、該トランスデューサ・アセンブリは、複数のトランスデューサ接点から成るトランスデューサ接点集合を含んでおり、それら複数のトランスデューサ接点は、前記トランスデューサ・アレイの複数の導電用電極に結合していると共に前記トランスデューサ・アレイから横方向へ突出している、トランスデューサ・アセンブリ取付ステップと、
電気信号変換用集積回路要素を前記マルチセクション形ボディの前記第2セクションに取付ける電気信号変換用集積回路要素取付ステップであって、該電気信号変換用集積回路要素は、前記トランスデューサ・アレイから前記第1電気信号を受け取って該第1電気信号を第2電気信号に変換し、該第2電気信号がケーブルを介して伝送されるようにしてあり、該ケーブルは前記マルチセクション形ボディを脈管の外部の環境へ接続しており前記第2電気信号を伝送するための少なくとも1本の信号チャネルを備えている、電気信号変換用集積回路要素取付ステップと、
前記第1セクションと前記第2セクションとを隣接した位置に配置して、前記複数のトランスデューサ接点の各々が、前記電気信号変換用集積回路要素に信号伝達可能に接続された複数の導体ラインのうちの対応する1本ずつの導体ラインと重なり合うようにするセクション配置ステップと、
互いに重なり合ったトランスデューサ接点と導体ラインとの組に局所的電流を供給してその組のトランスデューサ接点と導体ラインとを融着させる局所的電流供給ステップと、
を含んでいることを特徴とする超音波脈管内カテーテル・プローブの組立方法。
【請求項17】
前記局所的電流供給ステップが、互いに重なり合ったトランスデューサ接点と導体ラインの各組にギャップ・ウェルダを用いて局所的電流を供給するステップを含んでいることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
超音波を出射し、その出射した超音波の超音波エコーから生じた変換電気信号を提供する、脈管内へ挿入して使用する超音波カテーテル・プローブにおいて、
トランスデューサ・アレイと集積電子回路要素とを別々に支持する性質の異なった複数のセクションを有するマルチセクション形ボディであって、トランスデューサのバッキングとして機能し第2セクションと比べて大きな音響エネルギ吸収率を有する第1材料から成る第1セクションと、集積電子回路要素を支持するための第2材料から成る該第2セクションとを含んでいるマルチセクション形ボディと、
前記マルチセクション形ボディの前記第1セクションに支持されたトランスデューサ・アセンブリであって、前記トランスデューサ・アレイを含んでおり、該トランスデューサ・アレイが、脈管内へ超音波を発信して、該超音波の超音波エコーに応じて複数の電気信号を生成する、トランスデューサ・アセンブリと、
前記マルチセクション形ボディの前記第2セクションに支持された集積電子回路要素であって、前記トランスデューサ・アセンブリにより生成された前記電気信号を受信し、該電気信号に応答して前記脈管の外部の環境へ情報を送出する、集積電子回路要素と、
を備えたことを特徴とする超音波カテーテル・プローブ。
【請求項19】
前記第2材料は酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
超音波を出射し、その出射した超音波の超音波エコーから変換された電気信号を提供する、脈管内へ挿入して使用する超音波画像形成カテーテルにおいて、
少なくとも1本のルーメンを内蔵しているシャフトと、前記シャフトに取付けた超音波プローブと、を備えており、
前記超音波プローブが、
トランスデューサ・アレイと集積電子回路要素とを別々に支持する性質の異なった複数のセクションを有するマルチセクション形ボディであって、トランスデューサのバッキングとして機能し第2セクションと比べて大きな音響エネルギ吸収率を有する第1材料から成る第1セクションと、集積電子回路要素を支持するための第2材料から成る第2セクションとを含んでいるマルチセクション形ボディと、
前記マルチセクション形ボディの前記第1セクションに支持されたトランスデューサ・アセンブリであって、前記トランスデューサ・アレイを含んでおり、該トランスデューサ・アレイは、脈管内へ超音波を発信して、該超音波の超音波エコーに応じて電気信号を生成するものである、トランスデューサ・アセンブリと、
前記マルチセクション形ボディの前記第2セクションに支持された集積電子回路要素であって、前記トランスデューサ・アセンブリによって生成された前記電気信号を受信し、該電気信号に応答して前記脈管の外部の環境に情報を送出する集積電子回路要素と、
を備えた画像形成デバイスである、
ことを特徴とする超音波画像形成カテーテル。
【請求項21】
前記第2材料は酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
トランスデューサ・アレイと集積電子回路要素とを別々に支持するためのマルチセクション形ボディを備え、該マルチセクション形ボディがトランスデューサのバッキングで構成された第1セクションと集積電子回路要素を支持するための第2セクションとを有する、超音波脈管内カテーテル・プローブの組立方法において、
前記トランスデューサ・アレイを含んでいるトランスデューサ・アセンブリを前記マルチセクション形ボディの前記第1セクションに取付けるトランスデューサ・アセンブリ取付ステップであって、前記トランスデューサ・アレイは、脈管内へ超音波を発信して、該超音波の超音波エコーに応じて電気信号を生成するものであり、前記トランスデューサ・アセンブリは、複数のトランスデューサ接点から成るトランスデューサ接点集合を含んでおり、それら複数のトランスデューサ接点は、複数の導電用電極に結合していると共に前記トランスデューサ・アレイから横方向へ突出している、トランスデューサ・アセンブリ取付ステップと、
集積電子回路要素を前記マルチセクション形ボディの前記第2セクションに取付ける集積電子回路要素取付ステップであって、該集積電子回路要素は、前記トランスデューサ・アレイによって生成された前記電気信号を受信し、情報を前記脈管の外部の環境へ送出する、集積電子回路要素取付ステップと、
前記第1セクションと前記第2セクションとを隣接した位置に配置して、前記複数のトランスデューサ接点の各々が、前記集積電子回路要素に信号伝達可能に接続された複数の導体ラインのうちの対応する1本ずつの導体ラインと重なり合うようにするセクション配置ステップと、
互いに重なり合ったトランスデューサ接点と導体ラインに局所的電流を供給してトランスデューサ接点と導体ラインとを融着させる局所的電流供給ステップと、
を含んでいることを特徴とする超音波脈管内カテーテル・プローブの組立方法。
【請求項1】
超音波を出射し、その出射した超音波の超音波エコーから生じた変換電気信号を提供する、脈管内へ挿入して使用する超音波カテーテル・プローブにおいて、
トランスデューサ・アレイと集積回路とを別々に支持する、材質が異なる複数のセクションを有するマルチセクション形ボディであって、トランスデューサのバッキングとして機能し第2セクションと比べて大きな音響エネルギ吸収率を有する第1材料から成る第1セクションと、集積電子回路要素を支持するための第2材料から成る第2セクションと、を含んでいるマルチセクション形ボディと、
前記マルチセクション形ボディの前記第1セクションに取付けられたトランスデューサ・アセンブリであって、前記トランスデューサ・アレイを含んでおり、該トランスデューサ・アレイは、脈管内へ超音波を発信して、該超音波の超音波エコーに応じて第1電気信号を生成するものである、トランスデューサ・アセンブリと、
前記マルチセクション形ボディの前記第2セクションに取付けられた電気信号変換用集積回路要素であって、前記トランスデューサ・アセンブリから前記第1電気信号を受け取り、該第1電気信号を第2電気信号に変換し、そして、該第2電気信号を、該第2電気信号を伝送するための少なくとも1本の信号チャネルを含んでいるケーブルを介して、脈管の外部の環境へ送出する、電気信号変換用集積回路要素と、
前記第1電気信号を前記トランスデューサ・アレイから前記電気信号変換用集積回路要素へ伝達する、前記トランスデューサ・アレイと前記電気信号変換用集積回路要素との間の複数の電気伝送経路と、
を備えたことを特徴とする超音波カテーテル・プローブ。
【請求項2】
前記第1セクションと前記第2セクションとを互いに隣接させてガイド・ワイヤ・ルーメン上に取付けてあることを特徴とする請求項1記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項3】
前記第1材料が前記第2材料と比較して小さな音響インピーダンスを有することを特徴とする請求項1記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項4】
前記第2材料が前記第1材料と比べて小さな熱膨張係数を有することを特徴とする請求項1記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項5】
前記トランスデューサ・アセンブリが、トランスデューサ層に直接に結合した複数の導電用電極を含んでいることを特徴とする請求項1記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項6】
前記トランスデューサ・アセンブリが、トランスデューサ層に直接に結合した連続した1つの層から成る導電用電極を含んでいることを特徴とする請求項1記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項7】
前記トランスデューサ・アセンブリが、円筒面状の配列形態としたトランスデューサ・アレイを含んでいることを特徴とする請求項1記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項8】
前記トランスデューサ・アセンブリが、平面状の配列形態としたトランスデューサ・アレイを含んでいることを特徴とする請求項1記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項9】
前記トランスデューサ・アレイを、脈管内の側方視野を提供するために前記マルチセクション形ボディの一側に配設してあることを特徴とする請求項8記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項10】
前記トランスデューサ・アレイを、脈管内の前方視野を提供するために前記マルチセクション形ボディの正面に配設してあることを特徴とする請求項8記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項11】
前記マルチセクション形ボディに近接した位置に配設したバルーン・セクションを含んでいることを特徴とする請求項1記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項12】
前記バルーンを、前記マルチセクション形ボディに先んじて挿入されるカテーテルの一部分に配設してあることを特徴とする請求項11記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項13】
前記複数の電気伝送経路が、複数のトランスデューサ接点から成るトランスデューサ接点集合を含んでおり、それら複数のトランスデューサ接点は、前記トランスデューサ・アレイの複数の導電用電極に結合していると共に前記トランスデューサ・アレイから横方向へ突出しており、それによって、前記複数の導電用電極を、前記第2セクション上に配設され前記電気信号変換用集積回路要素に電気的に結合した複数本の導体ラインに接続することを容易にしたことを特徴とする請求項1記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項14】
前記複数のトランスデューサ接点が前記複数本の導体ラインと重なり合うようにしてあり、それによって、ギャップ・ウェルダを用いて前記複数のトランスデューサ接点の各々を前記複数の導体ラインのうちの対応する1本のずつの導体ラインに接続することを容易にしたことを特徴とする請求項13記載の超音波カテーテル・プローブ。
【請求項15】
超音波を出射し、その出射した超音波の超音波エコーから生じた変換電気信号を提供する、脈管内へ挿入して使用する超音波画像形成カテーテルにおいて、
少なくとも1本のルーメンを内蔵しているシャフトと、
前記シャフトに取付けた超音波プローブと、
を備えており、
前記超音波プローブが、
トランスデューサ・アレイと集積回路とを別々に支持する互いに材質の異なった複数のセクションを有するマルチセクション形ボディであって、トランスデューサのバッキングとして機能し第2セクションと比べて比較的大きな音響エネルギ吸収率を有する第1材料から成る第1セクションと、集積回路を支持するための第2材料から成る第2セクションとを含んでいるマルチセクション形ボディと、
前記マルチセクション形ボディの前記第1セクションに取付けられたトランスデューサ・アセンブリであって、前記トランスデューサ・アレイを含んでおり、該トランスデューサ・アレイは、脈管内へ超音波を送信して、その送信した超音波の超音波エコーに応じて第1電気信号を生成するものである、トランスデューサ・アセンブリと、
前記マルチセクション形ボディの前記第2セクションに取付けられた電気信号変換用集積回路要素であって、前記トランスデューサ・アセンブリから前記第1電気信号を受け取り、該第1電気信号を第2電気信号に変換し、そして、該第2電気信号を、該第2電気信号を伝送するための少なくとも1本の信号チャネルを含んでいるケーブルを介して、脈管の外部の環境へ送出する、電気信号変換用集積回路要素と、
前記第1電気信号を前記トランスデューサ・アレイから前記電気信号変換用集積回路要素へ伝達する、前記トランスデューサ・アレイと前記電気信号変換用集積回路要素との間の複数の電気伝送経路と、
を備えた画像形成デバイスである、
ことを特徴とする超音波画像形成カテーテル。
【請求項16】
トランスデューサ・アレイと集積電子回路要素とを別々に支持するためのマルチセクション形ボディを備え、該マルチセクション形ボディがトランスデューサのバッキングで構成された第1セクションと集積電子回路要素を支持するための第2セクションとを有する、超音波脈管内カテーテル・プローブの組立方法において、
前記トランスデューサ・アレイを含んでいるトランスデューサ・アセンブリを前記マルチセクション形ボディの前記第1セクションに取付けるトランスデューサ・アセンブリ取付ステップであって、前記トランスデューサ・アレイは、脈管内へ超音波を送信して、その送信した超音波の超音波エコーに応じて第1電気信号を生成するものであり、該トランスデューサ・アセンブリは、複数のトランスデューサ接点から成るトランスデューサ接点集合を含んでおり、それら複数のトランスデューサ接点は、前記トランスデューサ・アレイの複数の導電用電極に結合していると共に前記トランスデューサ・アレイから横方向へ突出している、トランスデューサ・アセンブリ取付ステップと、
電気信号変換用集積回路要素を前記マルチセクション形ボディの前記第2セクションに取付ける電気信号変換用集積回路要素取付ステップであって、該電気信号変換用集積回路要素は、前記トランスデューサ・アレイから前記第1電気信号を受け取って該第1電気信号を第2電気信号に変換し、該第2電気信号がケーブルを介して伝送されるようにしてあり、該ケーブルは前記マルチセクション形ボディを脈管の外部の環境へ接続しており前記第2電気信号を伝送するための少なくとも1本の信号チャネルを備えている、電気信号変換用集積回路要素取付ステップと、
前記第1セクションと前記第2セクションとを隣接した位置に配置して、前記複数のトランスデューサ接点の各々が、前記電気信号変換用集積回路要素に信号伝達可能に接続された複数の導体ラインのうちの対応する1本ずつの導体ラインと重なり合うようにするセクション配置ステップと、
互いに重なり合ったトランスデューサ接点と導体ラインとの組に局所的電流を供給してその組のトランスデューサ接点と導体ラインとを融着させる局所的電流供給ステップと、
を含んでいることを特徴とする超音波脈管内カテーテル・プローブの組立方法。
【請求項17】
前記局所的電流供給ステップが、互いに重なり合ったトランスデューサ接点と導体ラインの各組にギャップ・ウェルダを用いて局所的電流を供給するステップを含んでいることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
超音波を出射し、その出射した超音波の超音波エコーから生じた変換電気信号を提供する、脈管内へ挿入して使用する超音波カテーテル・プローブにおいて、
トランスデューサ・アレイと集積電子回路要素とを別々に支持する性質の異なった複数のセクションを有するマルチセクション形ボディであって、トランスデューサのバッキングとして機能し第2セクションと比べて大きな音響エネルギ吸収率を有する第1材料から成る第1セクションと、集積電子回路要素を支持するための第2材料から成る該第2セクションとを含んでいるマルチセクション形ボディと、
前記マルチセクション形ボディの前記第1セクションに支持されたトランスデューサ・アセンブリであって、前記トランスデューサ・アレイを含んでおり、該トランスデューサ・アレイが、脈管内へ超音波を発信して、該超音波の超音波エコーに応じて複数の電気信号を生成する、トランスデューサ・アセンブリと、
前記マルチセクション形ボディの前記第2セクションに支持された集積電子回路要素であって、前記トランスデューサ・アセンブリにより生成された前記電気信号を受信し、該電気信号に応答して前記脈管の外部の環境へ情報を送出する、集積電子回路要素と、
を備えたことを特徴とする超音波カテーテル・プローブ。
【請求項19】
前記第2材料は酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
超音波を出射し、その出射した超音波の超音波エコーから変換された電気信号を提供する、脈管内へ挿入して使用する超音波画像形成カテーテルにおいて、
少なくとも1本のルーメンを内蔵しているシャフトと、前記シャフトに取付けた超音波プローブと、を備えており、
前記超音波プローブが、
トランスデューサ・アレイと集積電子回路要素とを別々に支持する性質の異なった複数のセクションを有するマルチセクション形ボディであって、トランスデューサのバッキングとして機能し第2セクションと比べて大きな音響エネルギ吸収率を有する第1材料から成る第1セクションと、集積電子回路要素を支持するための第2材料から成る第2セクションとを含んでいるマルチセクション形ボディと、
前記マルチセクション形ボディの前記第1セクションに支持されたトランスデューサ・アセンブリであって、前記トランスデューサ・アレイを含んでおり、該トランスデューサ・アレイは、脈管内へ超音波を発信して、該超音波の超音波エコーに応じて電気信号を生成するものである、トランスデューサ・アセンブリと、
前記マルチセクション形ボディの前記第2セクションに支持された集積電子回路要素であって、前記トランスデューサ・アセンブリによって生成された前記電気信号を受信し、該電気信号に応答して前記脈管の外部の環境に情報を送出する集積電子回路要素と、
を備えた画像形成デバイスである、
ことを特徴とする超音波画像形成カテーテル。
【請求項21】
前記第2材料は酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
トランスデューサ・アレイと集積電子回路要素とを別々に支持するためのマルチセクション形ボディを備え、該マルチセクション形ボディがトランスデューサのバッキングで構成された第1セクションと集積電子回路要素を支持するための第2セクションとを有する、超音波脈管内カテーテル・プローブの組立方法において、
前記トランスデューサ・アレイを含んでいるトランスデューサ・アセンブリを前記マルチセクション形ボディの前記第1セクションに取付けるトランスデューサ・アセンブリ取付ステップであって、前記トランスデューサ・アレイは、脈管内へ超音波を発信して、該超音波の超音波エコーに応じて電気信号を生成するものであり、前記トランスデューサ・アセンブリは、複数のトランスデューサ接点から成るトランスデューサ接点集合を含んでおり、それら複数のトランスデューサ接点は、複数の導電用電極に結合していると共に前記トランスデューサ・アレイから横方向へ突出している、トランスデューサ・アセンブリ取付ステップと、
集積電子回路要素を前記マルチセクション形ボディの前記第2セクションに取付ける集積電子回路要素取付ステップであって、該集積電子回路要素は、前記トランスデューサ・アレイによって生成された前記電気信号を受信し、情報を前記脈管の外部の環境へ送出する、集積電子回路要素取付ステップと、
前記第1セクションと前記第2セクションとを隣接した位置に配置して、前記複数のトランスデューサ接点の各々が、前記集積電子回路要素に信号伝達可能に接続された複数の導体ラインのうちの対応する1本ずつの導体ラインと重なり合うようにするセクション配置ステップと、
互いに重なり合ったトランスデューサ接点と導体ラインに局所的電流を供給してトランスデューサ接点と導体ラインとを融着させる局所的電流供給ステップと、
を含んでいることを特徴とする超音波脈管内カテーテル・プローブの組立方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【公開番号】特開2006−55649(P2006−55649A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251525(P2005−251525)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【分割の表示】特願平6−518040の分割
【原出願日】平成6年1月14日(1994.1.14)
【出願人】(504237957)ヴォルケイノウ・コーポレーション (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【分割の表示】特願平6−518040の分割
【原出願日】平成6年1月14日(1994.1.14)
【出願人】(504237957)ヴォルケイノウ・コーポレーション (10)
【Fターム(参考)】
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