説明

超音波ドップラー・カラーフロー・イメージングのための運動適応型フレーム平均化

【課題】運動に因るカラー画素の遅延及びスミアリング・エイリアスを克服するために超音波カラーフロー画像の運動適応型フレーム平均化を実行する方法及び装置を提供する。
【解決手段】一実施形態では、動いている組織に応答してカラーフロー・イメージングを生成する超音波装置がフロントエンドと少なくとも1つのプロセッサとを含む。フロントエンドは、動いている組織の中へ超音波を送り込んで、該組織から後方散乱された超音波に応答して受信信号を発生する。プロセッサは、受信信号に応答して、少なくとも1つの現在のBモード・フレームを少なくとも1つの以前のBモード・フレームと比較することによって運動係数を計算し、少なくとも運動係数を使用して運動量を決定し、運動係数が第1の所定の閾値よりも小さい場合はフレーム平均化のレベルを増大させ、また運動係数が第2の所定の閾値よりも大きい場合はフレーム平均化のレベルを減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に云えば超音波に関するものである。具体的には、本発明は、超音波機器におけるカラーフロー・イメージングのための運動適応型フレーム平均化(motion adaptive frame averaging) に関するものである。
【背景技術】
【0002】
幾つかの既知の診断用超音波イメージング・モードには、(内部の物理的構造をイメージング(画像化)するために使用される)Bモード及びMモード、ドップラー、並びに(主に、例えば、血管内の流れ特性をイメージングするために使用される)カラーフローが含まれる。超音波カラーフロー・モードは典型的には、例えば、本質的にドップラー・モードで使用されるのと同じ技術を利用して、トランスデューサへ向かう及び/又はトランスデューサから遠ざかる向きの血液の流れの速度を検出するために使用される。ドップラー・モードのイメージングでは単一の選択されたサンプル・ボリュームについて速度対時間を表示するのに対して、超音波カラーフロー・モードのイメージングでは数百の隣接するサンプル・ボリュームを同時に表示し、それらの全てはBモード画像に重ねて配置されて、各サンプル・ボリュームの速度を表すようにカラー符号化される。
【0003】
例えば、心臓及び血管内の血流を測定するためにドップラー効果を使用することは知られている。反射波の振幅を用いて動いている組織の黒白画像を生成することができるのに対して、後方散乱波の周波数偏移を使用して組織又は血液内の後方散乱体の速度を測定することができる。後方散乱周波数の変化又は偏移は血液がトランスデューサへ向かって流れているときに増大し、血液がトランスデューサから遠ざかる向きに流れているときに減少する。
【0004】
カラーフロー超音波イメージングは血流及び基本的な解剖学的構造の両方の鮮やかな表示を提供することができる。カラーフロー画像は、グレースケールのBモード画像の上に、動いている物質(例えば、組織又は血液)の流速についてのカラー画像を重畳することによって生成することができる。カラー画素は動いている物質の流速を表す。信号対ノイズ比(「SNR」とも呼ばれる)及び持続性を改善するためにカラー画素表示にフレーム平均化を適用することができる。フレーム平均化は、新しく取得したカラー・フレームと一連の以前に取得したカラー・フレームとを使用して、最終ユーザに表示すべき現在のカラー・フレームを決定する。一連の相次ぐカラー・フレームを適時に使用して表示用カラー・フレームを生成するために、様々な無限インパルス応答(「IIR」とも呼ばれる)及び有限インパルス応答(「FIR」とも呼ばれる)フィルタ技術を適用することができる。算術平均演算が簡単で一般に使用されるFIRフィルタ技術であり、これは取得された一連のフレームから表示用フレームを計算するために使用することができる。
【特許文献1】米国特許第6490475号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カラーフロー超音波イメージングにおけるフレーム平均化に関連した1つの制約は、それが運動に起因してかなりの量の遅延及びスミアリング(smearing)を生じさせることであり、該運動はプローブ又は組織の動きによって引き起こされることがある。カラー画素のこのような遅延及びスミアリングは、それがしばしばBモード表示からのグレースケールの静止した背景に重なり合うので、ユーザに対して非常に目立つものになる。最終ユーザはしばしば、このような遅延及びスミアリング・エイリアスを避けるためにフレーム平均化のレベルを低減することを選択する。しかしながら、フレーム平均化のレベルを低減する際、最終ユーザは、フレーム平均化によって得られる一層高いSNR及び持続性に関連したいずれの利点も失うことがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
フレーム平均に対する運動の悪影響が他のイメージング・モダリティ(例えば、X線蛍光透視法)において知られていることを理解されたい。しかしながら、本発明の1つ以上の実施形態では、(例えば、超音波機械又は機器を使用する)カラーフロー・イメージングにおいて運動を検出するためにBモード・データを使用する。より詳しく述べると、本発明の1つ以上の実施形態では、運動を定量化するために少なくともBモード超音波データを使用して運動係数(motion factor) を決定し、次いで運動係数を使用してフレーム平均化を調節する。運動係数はBモード・グレースケール画像の変化を決定又は測定すると考えられる。このような変化は、以前に述べられているように、プローブ又は組織の動きの良好な推定値である。少なくとも1つの実施形態では、更新の繰返し速度がBモード・フレーム速度、例えば、約10Hz〜約20Hzと同じであるので、フレーム平均化の調節は動的に且つ実時間で実行することができる。
【0007】
本発明の一実施形態は、少なくとも1つのカラーフロー画像を生成する機器においてフレーム平均化を実行するための方法を含む。この実施形態では、少なくともBモード・データを使用して運動係数を計算し、次いで少なくとも運動係数を使用して運動量を決定する。本方法の少なくとも1つの実施形態では、少なくとも1つの現在のBモード・フレームを少なくとも1つの以前のBモード・フレームと比較することによって、Bモード画像フレームから運動係数を計算することを含む。少なくとも1つの実施形態では、現在のBモード・フレームが(例えば、方程式を使用して)2つ以上の以前のBモード・フレームと比較される。本方法は更に、少なくとも運動係数を使用してフレーム平均化を調節することを含む。少なくとも1つの実施形態では、このようなフレーム平均化を実行するためのアルゴリズム又は方程式を使用することができる。本発明の様々な実施形態は、カラー表示のためにフレーム平均レベルを調節するために運動係数を使用することを含む。1つ以上の実施形態では、運動係数が所定の閾値よりも大きいか又は小さいかを判定することを含む。より詳しく述べると、実施形態では、運動係数が第1の所定の閾値(例えば、低閾値)よりも小さいかどうか判定することを含む。運動係数が第1の所定の閾値よりも小さい場合、フレーム平均化のレベルを増大させることができる。運動係数が第1の所定の閾値よりも小さくない場合、実施形態では、運動係数が第2の所定の閾値(例えば、高閾値)よりも大きいかどうか判定することを含む。運動係数が第2の所定の閾値よりも大きい場合、フレーム平均化のレベルを減少させて、少なくともプローブ又は組織の運動によって惹起される遅延及びカラー・エイリアスを避けることができる。更に、運動係数が第2の所定の閾値以下である場合、フレーム平均化のレベルは変更又は改変しなくてよい(すなわち、フレーム平均化は同じレベルに維持される)と考えられる。
【0008】
また、運動係数が少なくとも1つの所定の閾値よりも特定の所定量以上大きい場合(すなわち、運動係数が第2の所定の閾値よりも特定量以上大きい場合)、フレーム平均化を停止させるようにする実施形態も考えられる。フレーム平均化の停止は、強い運動が存在するときに遅延及びスミアリングを除くことができる。
【0009】
本発明の別の実施形態は、カラーフロー・イメージングを実行する超音波機器においてフレーム平均化を実行するための方法を含む。この実施形態では、少なくとも1つの現在のBモード・フレームを少なくとも1つの以前のBモード・フレームと比較することによって運動係数を計算し、次いで少なくとも運動係数を使用して運動量を決定する。本方法は更に、運動係数が第1の所定の閾値よりも小さい場合、フレーム平均化のレベルを増大させ、また運動係数が第1の所定の閾値よりも大きい場合、フレーム平均化のレベルを減少させることを含む。
【0010】
本発明の更に別の実施形態は、動いている組織に応答してカラーフロー・イメージングを生成するための超音波機械を含む。この実施形態では、フロントエンドと、少なくとも1つのプロセッサとを含む。フロントエンドは、動いている組織の中へ超音波を送り込んで、動いている組織から後方散乱された超音波に応答して受信信号を発生する。受信信号に応答する少なくとも1つのプロセッサが、少なくとも1つの現在のBモード・フレームを少なくとも1つの以前のBモード・フレームと比較することによって運動係数を計算し、次いで少なくとも運動係数を使用して運動量を決定し、更に、運動係数が所定の閾値よりも小さい場合はフレーム平均化のレベルを増大させ、また運動係数が所定の閾値よりも大きい場合はフレーム平均化のレベルを減少させる。動いている組織に応答してカラーフロー・イメージングを生成するための超音波機械が、組織の中へ超音波を送り込んで、前記組織から後方散乱された超音波に応答して受信信号を発生するように構成されているフロントエンドを含むようにした本発明の実施形態が考えられる。更に、超音波システムは、方程式を使用して運動係数を計算するように構成されている少なくとも1つのプロセッサを含むことができる。
【0011】
上記の説明、並びに本発明の特定の実施形態についての以下の詳しい説明は、添付の図面と共に読むとき一層良く理解されよう。本発明を例示する目的で、特定の実施形態を図面に示している。しかしながら、本発明は添付の図面に示された配置構成や手段に制限されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の少なくとも1つの実施形態では、運動によって惹起されたカラー画素の遅延及びスミアリング・エイリアスを克服するために、超音波カラーフロー画像の運動適応型フレーム平均化を使用することができる。フレーム平均に対する運動の悪影響が他のイメージング・モダリティ(例えば、X線蛍光透視法)において知られていることを理解されたい。しかしながら、本発明の1つ以上の実施形態では、(例えば、超音波機械又は機器を使用する)カラーフロー・イメージングにおいて運動を検出するためにBモード・データを使用する。より詳しく述べると、本発明の1つ以上の実施形態では、運動を定量化するために少なくともBモード超音波データを使用して運動係数を決定し、次いで運動係数を使用してフレーム平均化を調節する。少なくとも1つの実施形態では、更新の繰返し速度がBモード・フレーム速度、例えば、約10Hz〜約20Hzと同じであるので、フレーム平均化の調節は動的に且つ実時間で実行することができる。
【0013】
例示の目的のためにだけ、以下の詳しい説明では、超音波機械、装置又は機器の特定の実施形態について述べる。しかしながら、本発明の1つ以上の実施形態が他の機器又はイメージング・システムに使用することができることは勿論である。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に従って超音波機械5の一実施形態を例示する。(例えば、プローブを含む)トランスデューサ10が、電気アナログ信号を超音波エネルギに変換することによって被検体の中へ超音波を送り込み、次いで超音波エネルギを電気アナログ信号に変換することによって被検体から後方散乱された超音波を受信する。フロントエンド20が、一実施形態では、受信器、送信器及びビームフォーマを含む。フロントエンド20は、必要な送信波形、ビーム・パターン、受信器フィルタ処理手法、及び様々なイメージング・モードのために使用される復調方式を生成するために使用することができる。フロントエンド20はこのような機能を実行し、ディジタル・データをアナログ・データに変換し、またその逆の変換も行う。フロントエンド20は、アナログ・インターフェース15を使用してトランスデューサ10に接続されると共に、母線(例えば、ディジタル母線)70を介して非ドップラー・プロセッサ30、ドップラー・プロセッサ40及び制御プロセッサ50に接続される。母線70は幾つかの小母線を含み、各々の小母線がそれ自身の独自の構成を持っていて、超音波機械5の様々な部分に対するディジタル・データ・インターフェースを提供するようにすることができる。
【0015】
非ドップラー・プロセッサ30は、一実施形態では、Bモード、Mモード及び高調波イメージングのようなイメージング・モードのために使用される振幅検出機能及びデータ圧縮機能を持つように構成される。ドップラー・プロセッサ40は、一実施形態では、組織速度イメージング(TVI)、歪み速度イメージング(SRI)、並びにカラーMモード及びBモードのようなイメージング・モードのために使用されるクラッター・フィルタ処理機能及び運動パラメータ推定機能を持つように構成される。一実施形態では、2つのプロセッサ30及び40は、フロントエンド20からディジタル信号データを受け取り、該ディジタル信号データを処理してパラメータ値を推定し、これらの推定パラメータ値をディジタル母線70を介してプロセッサ50及び表示装置75へ送る。推定パラメータ値は、送信信号の基本周波数、高調波周波数又は低調波周波数を中心とした周波数帯域内の受信信号を使用して生成することができる。
【0016】
表示装置75は、一実施形態では、操作変換機能、カラー・マッピング機能及び組織/流れ調停機能を持つように構成され、これらは表示プロセッサ80によって実行される。表示プロセッサ80は、プロセッサ30、40及び50からのディジタル・パラメータ値を受け取り、表示のためにディジタル・データを処理しマッピングし及び書式設定し、ディジタル表示データをアナログ表示信号に変換し、これらのアナログ表示信号をモニタ90へ伝送する。モニタ90は表示プロセッサ80からアナログ表示信号を受け取って、その結果の画像を表示する。
【0017】
ユーザ・インターフェース60は、オペレータが制御プロセッサ50を介して超音波機械5へユーザ命令を入力できるようにする。ユーザ・インターフェース60は、キーボード、マウス、スイッチ、ノブ、トラックボール、フットペダル、音声命令を入力するためのマイクロフォン、及び画面上メニューなどを含むことができる。
【0018】
タイミング事象源65が、被検体の心臓波形を表す心臓タイミング事象信号66を発生する。心臓タイミング事象信号66は制御プロセッサ50を介して超音波機械5に入力される。
【0019】
一実施形態では、制御プロセッサ50は超音波機械5の主要な中央プロセッサを含み、ディジタル母線70を介して超音波機械5の様々な他の部分へ接続される。制御プロセッサ50は様々なイメージング及び診断モードのための様々なデータ・アルゴリズム及び機能を実行する。ディジタル・データ及び命令は制御プロセッサ50と超音波機械5の様々な他の部分との間で伝送することができる。代替例として、制御プロセッサ50によって実行される機能は、複数のプロセッサによって実行してもよく、又はプロセッサ30、40又は80に組み入れてもよく、或いはこれらの任意の組合せにしてもよい。別の代替例として、プロセッサ30、40、50及び80の機能は単一のPCバックエンドに組み入れてもよい。
【0020】
図2は、本発明の特定の実施形態に従ってカラーフロー・イメージングを実行するように構成されている(図1に示されたものと同様な)超音波機械又は機器において適応型フレーム平均化を実行するための方法200を示す高レベルの流れ図である。この方法200の少なくとも1つの実施形態では、段階210において、少なくともBモード・データ(例えば、1つのBモード画像フレーム)を使用して運動係数を計算することを含む。段階220において、少なくとも運動係数を使用して(プローブ又は組織の)運動量を決定することを含む。段階230において、少なくとも運動係数を使用してカラー表示のフレーム平均化レベルを調節することを含む。
【0021】
本発明の少なくとも1つの実施形態では、運動によって生じたカラーの遅延及びスミアリング・エイリアスを克服するために、カラーフロー画像のための運動適応型フレーム平均化を使用することができる。図3は、本発明の特定の実施形態に従ってカラーフロー・イメージングを実行するように構成されている(図1に示されたものと同様な)超音波機械又は機器においてこのような運動適応型フレーム平均化を実行するための方法300を示す流れ図である。一実施形態では、このようなフレーム平均化を実行するためのアルゴリズム又は方程式を使用することができる。
【0022】
方法300の少なくとも1つの実施形態では、段階310において、少なくとも1つの現在のBモード・フレームを少なくとも1つの以前のBモード・フレームと比較することによって、Bモード画像フレームから運動係数を計算することを含む。少なくとも1つの実施形態では、現在のBモード・フレームが(例えば、方程式を使用して)2つ以上の以前のBモード・フレームと比較される。
【0023】
段階320において、少なくとも運動係数を使用してプローブ及び/又は組織の運動量を決定することを含む。少なくとも1つの実施形態では、運動係数は現在のフレームと1つ以上の以前のフレームとの間のBモード・グレースケール画像の変化を決定又は測定すると考えられる。このような変化は、プローブ又は組織の動きの良好な推定値である。特に、運動係数はカラーフローの関心のある領域(これは「ROI」とも称される)から計算することができる。
【0024】
少なくとも1つの実施形態では、この運動係数はカラー表示のためにフレーム平均レベルを調節するために使用することができる。段階330において、調節が必要であるかどうか判定することを含む。例示した実施形態では、このような調節の判定は少なくとも1つの閾値に関してなされる。より詳しく述べると、少なくとも1つの実施形態では、このような調節は、運動係数が少なくとも1つの所定の閾値よりも大きいか又は小さいかを判定することによって、行うことができる。段階340において、少なくとも部分的に、このような判定に基づいてフレーム平均化を調節することを含む。少なくとも1つの実施形態では、このような調節は、フレーム平均化のレベルを増大させるか又は減少させること、或いはフレーム平均化のレベルを調節しないことを含むことができる。更に、少なくとも1つの実施形態では、運動係数が特定のレベルである場合(すなわち、運動係数が第1の所定の閾値とは異なる第2の所定の閾値以上である場合)、フレーム平均化を停止させるように、少なくとも1つの所定の閾値を設定することも考えられる。フレーム平均化の停止は、強い運動が存在するときに遅延及びスミアリングを除く。
【0025】
本発明の少なくとも1つの実施形態では、少なくとも運動によって生じたカラーの遅延及びスミアリング・エイリアスを克服するために、カラーフロー画像のための運動適応型フレーム平均化を使用することができる。図4は、本発明の特定の実施形態に従ってカラーフロー・イメージングを実行するように構成されている(図1に示されたものと同様な)超音波機械又は機器においてこのような運動適応型フレーム平均化を実行するための方法400を示す流れ図である。少なくとも1つの実施形態では、このようなフレーム平均化を実行するためのアルゴリズム又は方程式を使用することができる。
【0026】
方法400の少なくとも1つの実施形態では、段階410において、少なくとも1つの現在のBモード・フレームを少なくとも1つの以前のBモード・フレームと比較することによって、Bモード画像フレームから運動係数を計算することを含む。少なくとも1つの実施形態では、現在のBモード・フレームが(例えば、方程式を使用して)2つ以上の以前のBモード・フレームと比較される。
【0027】
段階420において、少なくとも運動係数を使用してプローブ及び/又は組織の運動量を決定することを含む。少なくとも1つの実施形態では、前に述べたように、運動係数は現在のフレームと1つ以上の以前のフレームとの間のBモード・グレースケール画像の変化を決定又は測定すると考えられる。このような変化は、前に述べたように、プローブや組織の動きの良好な推定値である。特に、運動係数はカラーフローのROIから計算することができる。
【0028】
運動係数はカラー表示のためにフレーム平均レベルを調節するために使用することができる。段階430において、運動係数が所定の閾値よりも大きいか又は小さいかを判定することを含む。より詳しく述べると、少なくとも1つの実施形態では、段階430において、運動係数が第1の所定の閾値(例えば、低閾値)よりも小さいかどうか判定することを含む。運動係数が第1の所定の閾値よりも小さい場合(すなわち、運動係数が小さい場合)、段階440において、フレーム平均化のレベルを増大させることを含む。
【0029】
運動係数が第1の所定の閾値よりも小さくない場合、段階450において、運動係数が第2の所定の閾値(例えば、高閾値)よりも大きいかどうか判定することを含む。運動係数が第2の所定の閾値よりも大きい場合(すなわち、運動係数が大きい場合)、段階460において、少なくともプローブ又は組織の運動によって惹起される遅延及びカラー・エイリアスを避けるために、フレーム平均化のレベルを減少させることを含む。少なくとも1つの実施形態では、運動係数が第2の閾値よりも大きくない場合、方法400では、フレーム平均化のレベルを変更又は改変しない(すなわち、フレーム平均化が同じレベルに維持される)ことを含む。
【0030】
更に、少なくとも1つの実施形態では、運動係数が第2の所定の閾値よりも特定量だけ大きい場合(すなわち、運動係数が第2の所定の閾値よりも特定量以上大きい場合)、フレーム平均化を停止させるように、少なくとも1つ(両方でない場合)の所定の閾値を設定することが考えられる。フレーム平均化の停止は、強い運動が存在するときに遅延及びスミアリングを除くことができる。
【0031】
本発明の少なくとも1つの実施形態では、少なくとも運動によって生じるカラーの遅延及びスミアリング・エイリアスを克服するために、カラーフロー画像のための運動適応型フレーム平均化を使用することができる。図5は、例えば、本発明の特定の実施形態に従ってカラーフロー・イメージングを実行するように構成されている(図1に示されたものと同様な)超音波機械又は機器においてこのような運動適応型フレーム平均化を実行するための方法500を示す詳しい流れ図である。少なくとも1つの実施形態では、このようなフレーム平均化を実行するためのアルゴリズム又は方程式を使用することができる。
【0032】
方法500の少なくとも1つの実施形態では、段階510において、少なくとも1つの現在のBモード・フレームを少なくとも1つの以前のBモード・フレームと比較することによって、Bモード画像フレームから運動係数を計算することを含む。少なくとも1つの実施形態では、現在のBモード・フレームが(例えば、方程式を使用して)2つ以上の以前のBモード・フレームと比較される。
【0033】
段階520において、少なくとも運動係数を使用してプローブ及び/又は組織の運動量を決定することを含む。少なくとも1つの実施形態では、前に述べたように、運動係数は現在のフレームと1つ以上の以前のフレームとの間のBモード・グレースケール画像の変化を決定又は測定すると考えられる。特に、運動係数はカラーフローのROIから計算することができる。
【0034】
運動係数はカラー表示のためにフレーム平均レベルを調節するために使用することができる。段階530において、運動係数が所定の閾値よりも大きいか又は小さいかを判定することを含む。より詳しく述べると、少なくとも1つの実施形態では、段階530において、運動係数が第1の所定の閾値(例えば、高閾値)よりも大きいかどうか判定することを含む。運動係数が第1の閾値よりも大きい場合(すなわち、運動係数が大きい場合)、段階540において、フレーム平均化のレベルを減少させることを含む。
【0035】
運動係数が第1の所定の閾値よりも大きくない場合、段階550において、運動係数が第2の所定の閾値(例えば、低閾値)よりも小さいかどうか判定することを含む。運動係数が第2の所定の閾値よりも小さい場合(すなわち、運動係数が小さい場合)、段階560において、少なくともプローブ又は組織の運動によって惹起される遅延及びカラー・エイリアスを避けるために、フレーム平均化のレベルを増大させることを含む。少なくとも1つの実施形態では、運動係数が第2の閾値よりも大きくない場合、方法500では、フレーム平均化のレベルを変更又は改変しない(すなわち、フレーム平均化が同じレベルに維持される)ことを含む。
【0036】
更に、少なくとも1つの実施形態では、運動係数が第1の所定の閾値よりも特定量だけ大きい場合(すなわち、運動係数が第1の所定の閾値よりも特定量以上大きい場合)、フレーム平均化を停止させるように、少なくとも1つ(両方でない場合)の所定の閾値を設定できることが考えられる。フレーム平均化の停止は、強い運動が存在するときに遅延及びスミアリングを除く。
【0037】
本発明の少なくとも1つの実施形態では、フレーム平均化の調節は、少なくとも部分的に、以下に規定するのと同様なフレーム平均化方程式に依存する。例えば、フレーム平均化が単純な算術平均演算として具現される場合、フレーム平均化のレベルの増大は或る数の以前のフレームとの算術平均を計算することによって具現することができる。少なくとも1つの実施形態では、FIR又はIIRのフレーム平均化レベルは、関連するフレームの数を調節する又は変更することであってよい。更に、FIR又はIIRのフレーム平均化レベルはまた、フィルタ係数を単独で、又はフレームの数を調節又は変更することと組み合わせて、変更又は調節することによって、調節又は修正することができると考えられる。
【0038】
少なくとも1つの実施形態では、方程式は運動に敏感で、運動に応答し、Bモード・フレーム速度が通常約10〜約20Hzであるので約1/10〜約1/20秒の応答時間を持つと考えられる。運動係数はスキャナのシステム・メモリに記憶することができる。一実施形態では、運動係数は別個の単独のメモリに、或いはシステム又は機器5の構成部品(例えば、プロセッサ50)の中に又はその上に記憶することができる。
【0039】
一実施形態では、記憶された運動はBモード表示サブシステムを使用して更新されると共に、カラー表示サブシステムによって読み出される。Bモード及びカラー表示サブシステムは、前に述べたものと同様な超音波システム又は機器5の部分であるハードウエア部品、或いはシステム5上で(例えば、プロセッサ50上で)実行するソフトウエアであってよいと考えられる。
【0040】
少なくとも1つの実施形態では、Bモード表示が一般的に組織又はプローブの動きによってのみ変化することを理解されたい。従って、運動係数を計算するためにBモード・データを使用することは、プローブ及び/又は組織の真の運動の良好な推定値を与える。しかしながら、運動係数を計算するために他の方法を使用してもよい。本発明の一実施形態では、カラー・フレーム・データを使用して運動係数を計算することを含む。
【0041】
本発明の少なくとも1つの実施形態では、運動係数は少なくとも1つのBモード・フレーム、より具体的には少なくとも2つのBモード・フレームを使用して計算することができる。本発明の少なくとも1つの実施形態では、絶対差(「SAD」とも称される)の和を計算するために次の方程式が使用される。
【0042】
M=(Σ|X−Xi−1|)/(Σ|X|)
ここで、X,Xi−1 は現在のBモード・フレーム及び以前のBモード・フレームのグレースケール画素値である。
【0043】
この方程式は運動係数を計算するために使用することができ、運動係数はプローブ又は組織の運動によって惹起されるカラー遅延及びスミアリングを低減及び/又は除去するために使用することができる。この方程式を使用して計算された運動係数は、一実施形態ではこの運動係数がBモード・データの各々のフレームについて計算されるので、速い応答速度を持ち、且つ運動に対し敏感である。ここで、Bモード・フレーム速度は約10〜約20Hzである。従って、突発的な運動に対する応答時間は約1/20〜約1/10秒である。何ら運動が検出されないとき、方程式は自動的にフレーム平均のためのレベルを増大させ、従って、SNR及びカラー持続性を更に増大させる。
【0044】
運動係数を決定するために方程式を使用することはまた、運動係数についてのこのような計算が実時間で実施するのに簡単且つ容易であるので、効率がよいことを理解されたい。この方程式は、運動によるBモード画像のぼやけを低減するために使用することができ、従って、運動係数は、一実施形態では、各Bモード・フレームについて一度だけ計算して、カラー及びBモード・フレーム平均の両方について用いることができる。
【0045】
本発明を様々な特定の実施形態について説明したが、当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更を為し且つ等価物と置換することができることが理解されよう。更に、特定の状況及び物質を本発明の範囲から逸脱することなく本発明の教示に適合させるように多くの修正を行うことができる。従って、本発明は開示した特定の実施形態に限定されるのではなく、特許請求の範囲内に入る全ての実施形態を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の特定の実施形態に従ってカラーフロー・イメージングを実行するように構成されている超音波機械又は機器の一実施形態のブロック図である。
【図2】本発明の特定の実施形態に従ってカラーフロー・イメージングを実行するように構成されている(図1に示されたものと同様な)超音波機械又は機器においてフレーム平均化を実行するための方法を示す高レベルの流れ図である。
【図3】本発明の特定の実施形態に従ってカラーフロー・イメージングを実行するように構成されている(図1に示されたものと同様な)超音波機械又は機器においてフレーム平均化を実行するための方法を示す流れ図である。
【図4】本発明の特定の実施形態に従ってカラーフロー・イメージングを実行するように構成されている(図1に示されたものと同様な)超音波機械又は機器においてフレーム平均化を実行するための方法を示す詳しい流れ図である。
【図5】本発明の特定の実施形態に従ってカラーフロー・イメージングを実行するように構成されている(図1に示されたものと同様な)超音波機械又は機器においてフレーム平均化を実行するための方法を示す別の詳しい流れ図である。
【符号の説明】
【0047】
5 超音波機械
15 アナログ・インターフェース
66 心臓タイミング事象信号
70 母線
200、300、400、500 フレーム平均化を実行するための方法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのカラーフロー画像を生成する機器においてフレーム平均化を実行するための方法であって、
少なくともBモード・データを使用して運動係数を計算する段階と、
少なくとも前記運動係数を使用して運動量を決定する段階と、
少なくとも前記運動係数を使用してフレーム平均化を調節する段階と、
を有している方法。
【請求項2】
前記運動係数を計算する前記段階は、少なくとも1つの現在のBモード・フレームを使用することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記運動係数を計算する前記段階は、少なくとも1つの以前のBモード・フレームを使用することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記運動係数を決定するために方程式を使用する段階を含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記方程式は少なくとも2つのBモード・フレームの間の絶対差の和を計算するために使用される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記方程式はM=(Σ|X−Xi−1|)/(Σ|X|) を含み、ここで、X,Xi−1 は現在のBモード・フレーム及び以前のBモード・フレームのグレースケール画素値を含んでいる、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記運動係数は少なくとも1つの関心のある領域について計算される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
フレーム平均を調節する段階は、運動量が所定の閾値よりも小さいかどうか判定することを含んでいる、請求項1記載の方法。
【請求項9】
フレーム平均化のレベルを増大させる段階を含んでいる請求項8記載の方法。
【請求項10】
フレーム平均を調節する段階は、運動係数が所定の閾値よりも大きいかどうか判定することを含んでいる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
フレーム平均化のレベルを減少させる段階を含んでいる請求項10記載の方法。
【請求項12】
カラーフロー・イメージングを実行する超音波機器においてフレーム平均化を実行するための方法であって、
少なくとも1つの現在のBモード・フレームを少なくとも1つの以前のBモード・フレームとを比較することによって運動係数を計算する段階と、
少なくとも前記運動係数を使用して運動量を決定する段階と、
前記運動係数が第1の所定の閾値よりも小さい場合、フレーム平均化のレベルを増大させる段階と、
前記運動係数が前記第1の所定の閾値よりも大きい場合、フレーム平均化のレベルを減少させる段階と、
を有している方法。
【請求項13】
前記運動係数を決定するために方程式を使用する段階を含んでいる請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記方程式は少なくとも2つのBモード・フレームの間の絶対差の和を計算するために使用される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記方程式はM=(Σ|X−Xi−1|)/(Σ|X|) を含み、ここで、X,Xi−1 は現在のBモード・フレーム及び以前のBモード・フレームのグレースケール画素値である、請求項13記載の方法。
【請求項16】
フレーム平均を調節する段階は、前記運動係数が第2の所定の閾値よりも大きいかどうか判定することを含んでいる、請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記フレーム平均化を停止させる段階を含んでいる請求項16記載の方法。
【請求項18】
動いている組織に応答してカラーフロー・イメージングを生成する超音波装置であって、
動いている組織の中へ超音波を送り込んで、前記動いている組織から後方散乱された超音波に応答して受信信号を発生するように配置構成されているフロントエンドと、
受信信号に応答して、少なくとも1つの現在のBモード・フレームを少なくとも1つの以前のBモード・フレームと比較することによって運動係数を計算し、前記運動係数が所定の閾値よりも小さい場合はフレーム平均化のレベルを増大させ、また前記運動係数が前記所定の閾値よりも大きい場合は前記フレーム平均化のレベルを減少させる少なくとも1つのプロセッサと、
を有している超音波装置。
【請求項19】
更に、動いている組織の中へ超音波を送り込んで、前記組織から後方散乱された超音波に応答して受信信号を発生するように構成されているフロントエンドを含んでいる請求項18記載の装置。
【請求項20】
前記少なくとも1つのプロセッサは、方程式を使用して前記運動係数を計算するように構成されている、請求項18記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−504862(P2007−504862A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525549(P2006−525549)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/029609
【国際公開番号】WO2005/023098
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】