説明

超音波プローブ、及び、超音波診断システム

【課題】体腔内に挿入する棒状の挿入部への超音波の送受信を行う振動子の配置を容易にするとともに、挿入部がより細径化された場合の診断画像の画質を向上することが可能な超音波プローブ及び超音波診断システムを提供すること。
【解決手段】超音波プローブ1が、被検体の体腔内に挿入可能な棒状の挿入部10を備え、挿入部はその内側に、その周方向に沿って、振動子が直線状に配列された振動子列101を含む直方体部材100が多角形を形成するように連設されて備えられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波プローブ及び超音波診断システムに関し、特に、体腔内に挿入して用いる超音波プローブ及びその超音波プローブを備える超音波診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生体内に超音波プローブの振動子から超音波パルスを送出し、音響インピーダンスの不整合により生体組織の境界で反射して生じる反射波をエコー信号として振動子で受信し、受信したエコー信号に基づいて再構成された生体内の断層画像を用いて診断を行うための超音波診断システムがある。
【0003】
上述のような超音波診断システムで用いられる超音波プローブの中には、例えば、直腸、膣または食道などの体腔内に挿入して診断を行うために、棒状の挿入部を有し、その挿入部の先端に複数の振動子が配列された超音波プローブがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
図11に従来の超音波プローブの一例を示す。超音波プローブ5は、操作者が把持するための略円筒状のグリップ部13が設けられ、グリップ部13の一端側にはケーブル15が接続され、他端側には、グリップ部13の軸方向と同一方向に棒状の挿入部10が延設されている。また、図12に従来の先端部12の挿入部10における軸方向の断面図を示す。図12に示すように挿入部10の先端部12には、超音波の送信および受信を行う振動子が列状に複数配置された振動子列201を備える。また、振動子列201の超音波送出面側には、音響インピーダンスが互いに異なる生体と振動子との間で超音波を効率よく伝播させる整合層202が設けられ、さらにその外側には、超音波を収束させる音響レンズ203を備える。また、振動子列201の超音波送出面側の反対側には、バッキング材205が設けられ後方への超音波を吸収し、余分な振動を抑えている。
【0005】
また、図13に従来の超音波プローブの製造方法を示す。図13に示すように、従来の超音波プローブ5は、整合層202、振動子列201及びバッキング材205が積層され、板状に形成された積層体200を基台210の円弧状の曲面に沿わせて貼付することにより作成される。このようにして貼付された振動子列201の様子を示す図を図14に示す。図14に示すように、振動子列201は曲面に沿わせて貼付されるため各振動子211は、外側に向かって広がることになる。つまり、振動子211の根元のピッチ(カッティングピッチ)をC、振動子211の先端のピッチ(エレメントピッチ)をEとすれば、図14に示すように、C<Eとなり、エレメントピッチEが大きくなる。
【0006】
このような構成により、走査線(超音波ビーム)を発生させて超音波による走査を行い、各振動子211で反射波をエコー信号として受信することにより、断層画像が再構成される。このとき、走査線は、各振動子211の正面方向に向かい生成されるので、扇状に走査される。すなわち、振動子列201からの距離が離れると各走査線の距離は広がることになる。
【0007】
【特許文献1】特表2001−178728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、このような体腔内に挿入して用いられる超音波プローブ5では、挿入による患者への負担を軽減することが求められるため、挿入部10がより細径化されていることが望まれ、一方、視野角は広いことが望まれる。そのために、先端部12の円弧の径を小さくすることにより、走査線により形成される扇の中心角を大きくするようにして視野角を広くすることがなされる。円弧の径を小さくすることにより、各振動子211は、さらに外側に向かって広がることになり、各走査線の距離は、振動子列201からの距離が離れるとさらに広がることになる。つまり、振動子列201からの距離が離れると走査線がさらに粗くなり、その結果、画像が粗くなってしまうことがあった。
【0009】
また、先端部12の円弧の径を小さくしたときに、エレメントピッチEが大きくなり、振動子211の音場効果、すなわち反射波を受信する性能が悪くなる。断層画像は、複数の振動子211で受信した信号の足し合わせにより生成されるが、音場効果が悪くなることにより、画像が不鮮明になる。また、反射波は、走査線から離れた位置の振動子211に対しては斜めに入射し、音場効果が低下する。特に、上述のように、先端部12の円弧の径を小さくしたときにより斜めに入射することになり、振動子211の音場効果が悪くなり、同様に画像が不鮮明になる。
【0010】
また、板状に形成された積層体200の基台210への貼付は、曲面に対して行うものである。したがって、貼付するときの力の入れ具合等で貼付状態が変化するため、歩留まりが悪かった。
【0011】
また、さらに挿入部10を有する超音波プローブの中には、挿入部10の円周方向の断層画像を表示させるために、振動子を挿入部10の周に沿って配置したものがある。図15に挿入部10における軸方向に直交する断面図を示す。このような超音波プローブでは、視野角を360度とすることが望まれる。ところが、図15に示すように、積層体200を基台210に対し貼付する場合に、貼付時の力の入れ具合等により端部が合わず、重なりやギャップを生じ易い。したがって、重なりやギャップを生じないように貼付して360度の視野角を実現することは、非常に難しかった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、棒状の挿入部への超音波の送受信を行う振動子の配置を容易にするとともに、挿入部がより細径化された場合の診断画像の画質を向上することが可能な超音波プローブ及びその超音波プローブを備える超音波診断システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために請求項1記載の超音波プローブは、被検体に挿入可能な棒状の挿入部を備え、前記挿入部はその内側に、その周方向に沿って、振動子が直線状に配列された振動子列を含む直方体部材が多角形を形成するように連設されて備えられていることを特徴としている。
【0014】
また、請求項4記載の超音波プローブは、被検体に挿入可能で先端が円弧状に形成された棒状の挿入部を備え、前記挿入部はその内側に、前記円弧状に沿って、振動子が直線状に配列された振動子列を含む直方体部材が折れ線状に連設されて備えられていることを特徴としている。
【0015】
また、請求項7記載の超音波診断システムは、被検体に挿入可能な棒状の挿入部を備え、前記挿入部はその内側に、その周方向に沿って、振動子が直線状に配列された振動子列を含む直方体部材が多角形を形成するように連設されて備えられている超音波プローブと、各前記振動子から前記周方向に沿って順次移動させながら送出される超音波ビームが放射状に送出するように前記振動子を制御する制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0016】
また、請求項8記載の超音波診断システムは、被検体に挿入可能で先端が円弧状に形成された棒状の挿入部を備え、前記挿入部はその内側に、前記円弧状に沿って、振動子が直線状に配列された振動子列を含む直方体部材が折れ線状に連設されて備えられている超音波プローブと、各前記振動子から前記円弧状に沿って順次移動させながら送出される超音波ビームが、放射状に送出するように前記振動子を制御する制御手段と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る超音波プローブ及び超音波診断システムによれば、直線状に配列された振動子列を連設することにより、棒状の挿入部の周または円弧に沿って振動子を容易に配置でき、振動子が直線状に配置されているため、挿入部がより細径化された場合であってもエレメントピッチが変化せず音場効果が低下しないので、画質を向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る超音波プローブ1の様々な実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0019】
[第1の実施の形態]
(全体構成)
図1は、本実施の形態における超音波プローブ1を備える超音波診断システムの概略を示す外観図である。図1に示すように、超音波診断システムは、超音波を送受信し超音波画像を作成するための超音波処理装置2と、超音波処理装置2にコネクタ及びケーブル15を介して接続される超音波プローブ1と、操作パネル3と、表示手段としてのモニタ手段4とを具備する。
【0020】
超音波プローブ1は、患者等の生体に超音波を送出し、生体組織の境界で反射される反射波をエコー信号として受信し、エコー信号を超音波処理装置2に送信するもので、図1に示すように、操作者が把持するための略円筒状のグリップ部13が設けられ、グリップ部13の一端側にはケーブル15が接続され、他端側には、グリップ部13の軸方向と同一方向に棒状の挿入部10が延設されている。また、挿入部10の先端部12は、超音波の発振および受信を行う複数の振動子111(図1には図示せず)が円周方向に配置された探触子部11を有する。
【0021】
(超音波プローブの探触子部の構成)
ここで、本実施の形態における超音波プローブ1の探触子部11の構成について説明する。図2は、探触子部11の断面を示す図であり、挿入部10の軸方向と垂直な断面である。図2に示すように、探触子部11は、整合層102(音響整合層)、振動子列101及びバッキング材105が積層されて形成された複数の積層体100a、100b、・・・、100f(以下、単に積層体100ということがある)が、バッキング材105を挿入部10の内側に向けて、挿入部10の周の内側に、周に沿うような多角形を構成するように連設されて配置されている。また、整合層102の外側に、超音波を収束させる音響レンズ103を備える。また、図2には、一例として6角形を示したがこれに限られず、挿入部10の周に沿った多角形であればよい。
【0022】
図3は、積層体100の構成を詳細に示す図である。この積層体100は、本発明の直方体部材である。積層体100は、上述のように整合層102、振動子列101及びバッキング材105が積層されて形成されている。振動子列101には、超音波の発振および受信を行う振動子111が複数、ピッチpで長手方向に直線状に配列されている。整合層102は、音響インピーダンスが互いに異なる生体と振動子との間で超音波を効率よく伝播させるものであり、振動子111の超音波送出面側に設けられる。バッキング材105は、振動子111の超音波送出面側の反対側に設けられ、超音波を吸収し、余分な振動を抑える。
【0023】
ここで、探触子部11には、図2に示すように断面が6角形の外形の柱状または筒状の基台110が、その軸を挿入部10の軸と一致させるようにして、外形が挿入部10の周に沿って設けられている。基台110の外形を構成する6角形の辺の長さと、積層体100の長手方向の長さは略一致するようになされ、その各辺110a、110b、・・・、110fのそれぞれに各積層体100a、100b、・・・、100fが、バッキング材105を基台110側にして、長手方向(すなわち、振動子111の配列方向)を挿入部10の周方向に合わせて貼付されている。これにより、積層体100は、多角形を構成するように配置される。
【0024】
また、振動子111のそれぞれは、図示しないフレキシブル基板(Flexible−PC板)を介して、図示しない信号線に接続され、信号線はケーブル15内に収容されている。
【0025】
以上のような構成によれば、積層体100の貼付は平面に対して行えばよいので、位置を合わせるだけで容易に貼付することができる。また、各辺に貼付することによって、挿入部10の周方向の全周に亘って、振動子111を配置することができる。
【0026】
(制御構成)
図4は、本実施の形態に係る第1の実施の形態としての超音波診断システムの電気的構成を示すブロック図である。
【0027】
超音波処理装置2は、超音波プローブ1に接続され、制御部21(制御手段)、超音波送受信部22、エコー信号処理部23、DSC(デジタルスキャンコンバータ)24、データ合成手段26、及び、フレームメモリ25を含んで構成され、モニタ手段4及び操作パネル3が接続されている。
【0028】
超音波送受信部22は、図示しないが、遅延回路およびパルサ回路といった送信回路と、A/D変換器、加算器といった受信回路からなり、制御部21に制御されて振動子111に超音波を送出させ、振動子111が受信したエコー信号を検査結果として受信する。
【0029】
エコー信号処理部23は、超音波送受信部22に接続され、超音波送受信部22によって受信されたエコー信号に、エコー信号対数増幅、包絡線検波処理等を施し、信号強度が明るさを示す輝度データで表現される画像データを生成する。
【0030】
DSC24は、エコー信号処理部23で生成された画像データを超音波走査から標準TV走査にデジタル的にスキャン変更し、フレーム像データとして出力する。
【0031】
データ合成手段26は、DSC24から出力されるフレーム像データと各種のデータ(例えば、グラフィックデータ,キャラクタデータなど)とを1枚のフレーム像データにデジタル的に合成し、その合成されたフレーム像を超音波断層像としてモニタ手段4にほぼリアルタイムで表示さする。
【0032】
フレームメモリ25は、DSC24から出力されるフレーム像データを逐一記憶する。記憶されたフレーム像データはフリーズ像形成などに利用される。
【0033】
モニタ手段4は、CRT(cathode ray tube)やLCD(liquid crystal display)などにより構成される。
【0034】
操作パネル3は、入力手段であり、超音波処理装置2に接続されかつ操作者からの指示情報、パスワードなどの各種情報を入力するためのもので、図示しないが各種キー(アルファベットキーやテンキー等)、マウスやトラックボールなどが接続あるいは設置されている。
【0035】
制御部21は、操作パネル3からの入力を受け付け、その入力または予め記憶されている制御プログラムに基づいて、超音波診断システムの各部の駆動制御を行う。また、制御部21は、その機能を実現するために、CPU(図示せず)と、各種のプログラム及びそのプログラムを実行するときに必要な各種データ及びテーブルを記憶すると共に、各種のプログラムを実行するときのワークエリアを構成するシステムメモリ(図示せず)と、を含んで構成される。
【0036】
制御部21は、超音波送受信部22を制御して各振動子111から超音波を送出させ、超音波ビームを送出させる。具体的には、探触子部11に配列された振動子111の中の所定の範囲(この任意の範囲を開口という)内の各振動子111を、超音波送受信部22により、形成する超音波ビームの位置及び方向と各振動子の位置情報とに基づいて遅延回路でタイミングをずらして駆動し、それぞれの振動子111から超音波を送出させる。これにより、送出された各超音波の波面が合成され超音波ビームが形成される。
【0037】
図5に、本実施の形態の超音波診断システムに用いられる超音波プローブ1により形成される超音波ビームを説明するための図を示す。図5に示すように、超音波ビームBは、例えば超音波ビームB1から順次時計回りに移動させて形成することにより、超音波ビームBによる走査を行う。走査方向は、図5に示す時計回りの矢印方向になる。また、各超音波ビームBは、図5に示すように放射状に360度に亘り送出されるように形成される。そのために制御部21は、各振動子111を、超音波送受信部22により、遅延回路でタイミングをずらして駆動する。
【0038】
ここで、図6に開口内の振動子を制御するための遅延時間のテーブルを示す。例えば、超音波ビームB1は、積層体100a及び100bに亘る開口内の振動子111を図6(a)に示すような遅延時間をもって、すなわち、積層体100a側では右端の振動子111を最も遅らせるように駆動し、積層体100b側では左端の振動子111を積層体100aの右端の振動子111と同じ遅延時間で遅らせるように駆動することにより、図5に示すように積層体100a、100b、・・・、100fによる6角形の中心を通る対角線の延長方向に形成される。中心を通る他の対角線の延長方向の超音波ビームも同様に形成される。
【0039】
また、超音波ビームBcは、積層体100bの中央の振動子111を中心とする開口内の振動子111を図6(b)に示すような遅延時間をもって、すなわち積層体100bの中央の振動子111を最も遅らせるように駆動することにより、図5に示すように積層体100bに対し直角方向に形成される。他の積層体100の中央の振動子111を中心とする開口による、積層体100に直角な超音波ビームも同様に形成される。
【0040】
また、超音波ビームB1と超音波ビームBcの間の超音波ビームBkは、開口内の振動子111を図6(c)に示すような遅延時間をもって、すなわち開口の中央の振動子111に対し左右非対称の遅延時間をもって駆動することにより、図5に示すように積層体100bに対し斜め方向(非直角)に形成される。また、そのときの最大の遅延時間の位置及び大きさを変えることにより、超音波ビームの斜めとなる方向及び斜めの度合いを変化させることができる。このようにして、6角形の対角線の延長方向に形成される超音波ビームと上記積層体100に直角な超音波ビームの間の超音波ビームは形成される。
【0041】
上述のように振動子111を駆動することにより図5に示すように放射状に形成することができる。上記の超音波ビームの形成について、図2に示したような積層体を6角形に配置した場合を例に説明したが、他の多角形の場合においても、振動子111を、形成する超音波ビームの位置及び方向と各振動子の位置情報とに基づいて遅延回路でタイミングをずらして駆動するように制御することにより、同様に超音波ビームを放射状に形成することができる。
【0042】
そして、超音波プローブ1の振動子111は、送出した超音波ビームの反射波をエコー信号として受信し、エコー信号は、ケーブル15等を介して超音波送受信部22に受信される。このとき、エコー信号は、複数の振動子111で受信され、超音波送受信部22は、各エコー信号を、超音波ビームの位置及び方向と各振動子の位置情報とに基づいて遅延を掛けて加算する。通常、超音波ビームの形成のときの開口より広い範囲の振動子111により受信されたエコー信号が加算される。エコー信号処理部23は、この加算されたエコー信号にエコー信号対数増幅、包絡線検波処理等を施し、信号強度が明るさを示し、輝度データとする。これは、超音波ビームを走査線とするデータとなる。これを、各超音波ビームについて行い、さらに走査線間を補間し、画像データとして生成される。例えば、図7に示すハッチング部のような画像として、モニタ手段4に表示される。
【0043】
本実施の形態によれば、挿入部10の周方向の全周360度に亘って振動子111を配置することができ、超音波ビームを360度に亘り放射状に形成できるため、360度の視野角を確保することができる。また、積層体は平面に貼付されているため、振動子111のバッキング材側105のピッチ(カッティングピッチ)と、振動子111の整合層102のピッチ(エレメントピッチ)は同じで、振動子間のピッチが広がることがないので、振動子の音場効果の低下がなく画像が不鮮明となることがない。また、振動子の配置が円弧状ではないので、反射波を受信するときの端の振動子に対する入射角が他の振動子の入射角に比べ非常に小さくなるということがない。したがって、画質が不鮮明になることが無い。
【0044】
ただし、図2に示すように、各積層体100の隣接部分では、振動子列101が不連続になる。不連続部分には振動子111が存在しないため、この不連続部分近傍の画質は悪くなる場合がある。しかしながら、図2にも示すように外側には、音響レンズ103が存在するため、また、さらにバルーンなどで覆われて使用されることが多く、この不連続部分近傍の画像は診断にはほとんど用いられることがない。したがって、不連続部分近傍の画質の劣化はほとんど問題とはならない。
【0045】
[第2の実施の形態]
次に、図面を参照して本発明の第2の実施の形態を説明する。なお、本実施の形態は、第1の実施の形態の超音波診断システムの超音波プローブにおいて、挿入部の先端側が円弧状の凸をなすように形成され、振動子を先端側の円弧状に沿うように配置したものである。
【0046】
(超音波プローブの探触子部の構成)
ここで、本実施の形態における超音波プローブ1の探触子部16の構成について説明する。図8は、挿入部10における軸方向の断面を示す図であり、挿入部10の先端側における断面である。図8に示すように、探触子部16は、複数の積層体100g、100h及び100i(以下、単に積層体100ということがある)を、バッキング材105を挿入部10の内側に向けて、挿入部10の先端側の円弧の内側に円弧に沿うように折れ線状に連設されている。また、整合層102の外側に、超音波を収束させる音響レンズ103を備える。また、図8には、一例として3つの積層体100を配置したが、3つに限らず複数を折れ線状に連設して用いることが可能である。
【0047】
また、探触子部16には、図8に示すように断面が矩形の基台112が、挿入部10の円弧の内側に、挿入部10の先端側に向けて設けられている。本例においては、この矩形が本発明の折れ線状に相当する。基台112の矩形を構成する各平面112g、112h及び112iのそれぞれに各積層体100g、110h及び110iを、バッキング材105を基台112側にして貼付されている。これにより、積層体100は、折れ線状に配置される。
【0048】
図9に、本実施の形態の超音波診断システムに用いられる超音波プローブ1により形成される超音波ビームを説明するための図を示す。図9に示すように、超音波ビームBは、例えば超音波ビームB1から順次時計回りに移動させて形成することにより、超音波ビームBによる走査を行う。走査方向は、図9に示す時計回りの矢印方向になる。また、各超音波ビームBは、図9に示すように挿入部10の先端側から放射状に送出されるように形成される。また、第1の実施の形態と同様に制御部21が、各振動子111を、超音波送受信部22により、遅延回路でタイミングをずらして駆動する。そして、エコー信号に基づいて、例えば、図10に示すハッチング部のような画像として、モニタ手段4に表示される。
【0049】
以上のような構成によれば、積層体100は平面に対して貼付すればよいので、位置を合わせるだけで容易に貼付することができる。また、各辺に貼付することによって、円弧状にそって振動子111を配置することができる。また、振動子を挿入部10の先端側の円弧状に沿うように配置する場合に、第1の実施の形態と同様に積層体は平面に貼付されているため、振動子の音場効果の低下がなく画像が不鮮明となることがない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の超音波診断システムの構成を示す斜視図である。
【図2】第1の実施の形態の超音波プローブの探触子部の断面図である。
【図3】探触子部の積層体を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る第1の実施の形態の超音波診断システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図5】第1の実施の形態の超音波プローブにより形成される超音波ビームを示す図である。
【図6】(a)乃至(c)は、それぞれ振動子を制御するための遅延時間のテーブルを示し、遅延時間を説明するための図である。
【図7】モニタ手段に表示される画像の一例を示す図である。
【図8】第2の実施の形態の超音波プローブの探触子部の断面図である。
【図9】第2の実施の形態の超音波プローブにより形成される超音波ビームを示す図である。
【図10】モニタ手段に表示される画像の一例を示す図である。
【図11】従来の超音波プローブを示す斜視図である。
【図12】従来の超音波プローブの挿入部の先端部の断面図である。
【図13】従来の超音波プローブの製造方法を説明するための図である。
【図14】従来の振動子列の様子を示す図である。
【図15】従来の超音波プローブの挿入部の断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 超音波プローブ
2 超音波処理装置
3 操作パネル
4 モニタ手段
10 挿入部
11 探触子部
12 先端部
13 グリップ部
15 ケーブル
16 探触子部
21 制御部
22 超音波送受信部
23 エコー信号処理部
24 DSC
25 フレームメモリ
26 データ合成手段
100 積層体
101 振動子列
102 整合層
103 音響レンズ
105 バッキング材
110 基台
111 振動子
112 基台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に挿入可能な棒状の挿入部を備え、前記挿入部はその内側に、その周方向に沿って、振動子が直線状に配列された振動子列を含む直方体部材が多角形を形成するように連設されて備えられていることを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
前記挿入部は、前記棒状の軸方向に直行する断面が多角形の外形を有する基台を備え、前記基台の前記多角形を構成する外形の各面に、前記直方体部材が、前記振動子の配列方向が前記周方向となるように取り付けられている請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記直方体部材は、音響整合層、前記振動子列、及び、バッキング材が順に積層されてなる積層体である請求項1または請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
被検体に挿入可能で先端が円弧状に形成された棒状の挿入部を備え、前記挿入部はその内側に、前記円弧状に沿って、振動子が直線状に配列された振動子列を含む直方体部材が折れ線状に連設されて備えられていることを特徴とする超音波プローブ。
【請求項5】
前記挿入部は、前記棒状の軸方向の断面が前記円弧状に沿った折れ線状の外形を有する基台を備え、前記基台の前記折れ線状を構成する外形の各面に、前記直方体部材が、前記振動子の配列方向が前記円弧方向となるように貼付されている請求項4に記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記直方体部材は、音響整合層、前記振動子列、及び、バッキング材が順に積層されてなる積層体である請求項4または請求項5に記載の超音波プローブ。
【請求項7】
被検体に挿入可能な棒状の挿入部を備え、前記挿入部はその内側に、その周方向に沿って、振動子が直線状に配列された振動子列を含む直方体部材が多角形を形成するように連設されて備えられている超音波プローブと、
各前記振動子から前記周方向に沿って順次移動させながら送出される超音波ビームが放射状に送出するように前記振動子を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする超音波診断システム。
【請求項8】
被検体に挿入可能で先端が円弧状に形成された棒状の挿入部を備え、前記挿入部はその内側に、前記円弧状に沿って、振動子が直線状に配列された振動子列を含む直方体部材が折れ線状に連設されて備えられている超音波プローブと、
各前記振動子から前記円弧状に沿って順次移動させながら送出される超音波ビームが放射状に送出するように前記振動子を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする超音波診断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−61809(P2008−61809A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242752(P2006−242752)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】