説明

超音波プローブ、超音波診断装置、及び超音波プローブ出力制御方法

【課題】超音波診断装置本体に接続したときの出力信号の信号レベルの変化に合わせ、超音波プローブのゲインを所定の値に自動調整する超音波プローブを提供する。
【解決手段】超音波診断装置本体200側に設けられた送信手段からの信号を受けて超音波ビームを被検体に送出し、被検体で反射した超音波エコーを受信する複数の振動子102を備えた超音波プローブであって、振動子102に対応した、振動子102からの出力信号の大きさを変更して、超音波診断装置本体200側に設けられた受信手段へ供給するレベル可変手段103と、レベル可変手段103からの出力信号の大きさを検出するレベル検出手段104と、所定の大きさの基準値を発生する基準値発生手段106と、レベル検出手段104からの出力と基準値とを比較し、それらが一致するようにレベル可変手段103の利得の制御を行う制御手段109とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波ビームより生体を走査してその超音波エコーを取得する超音波プローブ、その超音波プローブの出力を制御する超音波プローブ出力制御方法、及び、その超音波プローブを接続して得られた超音波エコーより生体内の超音波断層像を得る超音波診断装置に関する。さらに詳しくは、超音波エコーを増幅する可変ゲイン型のアンプを備えた超音波プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波ビームを被検体に照射し、反射された超音波エコーを受信してリアルタイムの超音波断層像を生成する超音波診断装置では、反射された超音波エコーが微弱であるため、超音波プローブに前置増幅器(プリアンプ)を設けて超音波診断装置へ出力する信号を増幅することが行われている(例えば、特許文献1参照)。このような超音波診断装置の構成を図6を参照して説明する。ここで図6は従来の超音波プローブを含む超音波診断装置の構成の図である。
【0003】
超音波診断装置本体200は送受信回路210、超音波診断装置側コネクタ201、信号処理部202、画像処理部203、制御回路204、及びユーザインタフェースである表示部205及び操作パネル206で構成されている。
【0004】
送受信回路210は、送信遅延回路211、パルサー212、プリアンプ213、送受信切替スイッチ214、及び受信遅延加算回路215を備える。そして、送受信回路210は、超音波診断装置側コネクタ201及びプローブコネクタ120を介して超音波プローブ100に接続される。
【0005】
送信遅延回路211は、振動子102毎にタイミングの異なる駆動信号を発生する。パルサー212は、送信遅延回路211から駆動信号を受けて所定レベルの電気的パルスを発生する。送受信切換えスイッチ205は、超音波プローブ100への送信側にスイッチを切換えて、パルサー212が発生させた電気的パルスを超音波プローブ100側へ通過させる。さらに、送受信切換えスイッチ205は、プリアンプ213側にスイッチを切換えて、振動子102から送られてきた超音波エコーをプリアンプ213側に通過させる。ここで、送受信切換えスイッチ205は、半導体ダイオードなどの非線形素子で構成され、パルサー212から出力される振幅の大きい送信用波形を超音波プローブ100側に通過させ、振動子102から送られてくる微弱なエコーはプリアンプ213側に通過させる機能を有する。プリアンプ213は、受信した超音波エコーを増幅し、送受信遅延加算回路215に送信する。受信遅延加算回路215は、増幅された超音波エコーのタイミングを振動子102毎に揃え信号処理部202に送信する。
【0006】
超音波プローブ100は、1列のアレイ状に配列された複数の振動子群102をそなえる。振動子群102は、送受信回路210から電気的パルスを受けて、指定の指定方向性を持つ超音波ビームを被検体に放射する。超音波ビームは、被検体内の構造物の境界などの音響インピーダンスの異なる界面において反射され、超音波エコーとして振動子群102に戻ってくる。振動子群102は、振動子毎にそれぞれ超音波エコーを受信し、送信遅延回路211に送る。
【0007】
信号処理部202は、検波処理により超音波エコーのエンベロープを取り出し、画像処理部203へ送信する。
【0008】
画像処理部203は、受信したエンベロープを被検体の断面に合わせて座標変換し、画像表示に適した階調処理などを施して表示部205に表示させる。
【0009】
以上のような処理により、超音波診断装置は、図7に示すような被検体内の形態情報としての超音波断層像をリアルタイムで表示することができる。図7は超音波ビームがパルス状に放射される通常モードにおいて得られる超音波断層像(Bモード画像)の模式図である。
【0010】
また、送受信回路210が、被検体内の血流に対して中心周波数f0の超音波パルスの送受信を行うと、超音波ビームの周波数は流動する血球により、血流速度に比例するドプラ偏移fdを受けてf0+fdの周波数の超音波エコーが受信される。信号処理部202がそのドプラ偏移周波数fdを検出し、画像処理部203がそのドプラ偏移周波数fdの時間的な変化を表示することで、PWドプラ画像(図示しない)として表示部205に血流速度情報を表示させることができる。また、画像処理部203は、ドプラ偏移周波数fdを2次元にマッピングし適切なカラー変換の後、図7の超音波断層像に重ね合わせることにより、カラードプラ画像(図示しない)を表示部205に表示させることができる。
【0011】
以上のようなリアルタイムの超音波断層像を表示する超音波診断装置に用いられる超音波プローブにおいて、従来は超音波プローブに配備される振動子の数は100〜200個であった。これに対し近年、より精細な超音波断層像を作成することを目的として、配備される振動子の数を1000〜2000個に増やした超音波プローブが提供されている。しかし、超音波プローブの大きさは変わらないため、このように振動子を増やした場合、振動子が小さくなってしまい、一つの振動子が受信するエコー信号も微弱なものになってしまう。そこで、この微弱なエコーを良好に伝送するために、接続する超音波診断装置本体に整合したプリアンプやバッファーなどの電子回路を内蔵した超音波プローブが用いられるようになった。また、このような超音波プローブの場合、超音波診断装置本体から供給される大振幅の送信パルスを、超音波プローブに内蔵されたこれらの電子回路に障害を与えないように振動子に伝送するために、プローブヘッド内にも送受信切換えスイッチも内蔵されている。
【0012】
【特許文献1】特開2006−116018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように大きな電子回路を内蔵し各チャネル(各振動子からの出力系統)について微弱な超音波エコーを低雑音増幅またはバッファリングなどの処理を行って送受信回路に出力する形式の超音波プローブの場合、プローブ本体における発熱や消費電力を軽減するために負荷抵抗群を超音波診断装置本体側に設け、超音波プローブからは電流を出力し、超音波診断装置本体の入力部で信号電圧に変換する、電流出力型の構成を用いることが通常行われる。送受信回路のプリアンプの入力インピーダンスをそのまま用いることにより、負荷抵抗を別途必要としない構成にすることもできるが、入力インピーダンスは超音波診断装置本体により異なり、また同じ超音波診断装置本体でもチャネル毎によって大きさがばらつく。
【0014】
このため、この形式の超音波プローブを超音波診断装置本体に接続すると、超音波診断装置の違いにより信号レベルが変化しレベル差が生じる。また、チャネル間の入力インピーダンスの偏差により、チャネル間の信号にもレベル差が生じる。このような信号レベルの差により、信号レベルが低下した場合にはノイズの影響を受け易くなったり、信号レベルが過大となった場合には信号が飽和して歪を引き起こしたりする。
【0015】
また、チャネル間でのレベル差は超音波ビームの形成が不均一となり、感度低下の要因となるとともに、空間分解能、コントラスト分解能を低下させ、画質に悪影響を与える。
【0016】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、超音波診断装置本体に接続したときの出力信号の信号レベルの変化に係わらず、超音波プローブのゲインを所定の値に自動調整する超音波プローブを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の超音波プローブは、超音波診断装置本体側に設けられた送信手段からの信号を受けて超音波ビームを被検体に送出し、被検体で反射した超音波エコーを受信する複数の振動子を備えた超音波プローブであって、前記振動子に対応した、前記振動子からの出力信号の大きさを変更して、前記超音波診断装置本体側に設けられた受信手段へ供給するレベル可変手段と、前記レベル可変手段からの出力信号の大きさを検出するレベル検出手段と、所定の大きさの基準値を発生する基準値発生手段と、前記レベル検出手段からの出力と前記基準値とを比較し、それらが一致するように前記レベル可変手段の利得の制御を行う制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0018】
請求項5に記載の超音波診断装置は、超音波プローブと、前記超音波プローブを介して被検体を超音波で走査し、受信する送受信手段と、前記送受信手段が受信したデータに基づいて超音波画像を生成し表示手段に表示させる画像生成手段とを備える超音波診断装置であって、前記超音波プローブは、超音波診断装置本体側に設けられた送信手段からの信号を受けて超音波ビームを被検体に送出し、被検体で反射した超音波エコーを受信する複数の振動子を備え、前記振動子に対応した、前記振動子からの出力信号の大きさを可変して、前記超音波診断装置本体側に設けられた受信手段へ供給するレベル可変手段と、前記レベル可変手段からの出力信号の大きさを検出するレベル検出手段と、所定の大きさの基準値を発生する基準値発生手段と、前記レベル検出手段からの出力と前記基準値とを比較し、それらが一致するように前記レベル可変手段の利得の制御を行う制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0019】
請求項6に記載の超音波プローブ出力制御方法は、前記可変レベル手段の出力を校正する校正モードに切り替える段階と、超音波診断装置本体側に設けられた送信手段からの信号を受けて複数の振動子から超音波ビームを被検体に送出する段階と、前記被検体で反射した超音波エコーを前記複数の振動子で受信する段階と、レベル可変手段により、前記振動子からの出力信号の大きさを変更して、前記超音波診断装置本体側に設けられた受信手段へ供給するレベル変更段階と、レベル検出手段により前記レベル可変手段からの出力信号の大きさを検出するレベル検出段階と、前記レベル検出手段からの出力と予め発生している所定の大きさの基準値とを比較し、それらが一致するように前記レベル可変手段の利得の制御を行う制御段階と、前記校正モードで前記レベル検出手段からの出力が前記基準値に一致したときに前記レベル可変手段を制御している制御信号の大きさをホールド手段に維持する段階と、可変レベル手段から前記受信手段へ超音波断層像作成のための出力を行う使用モードに切り替える段階と、ホールド手段に維持されている制御信号の大きさを基に前記レベル可変手段を制御する段階とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の超音波プローブ、請求項6に記載の超音波診断装置、及び請求項7に記載の超音波プローブ出力制御方法によると、出力信号のレベルを基準値に一致する大きさに自動的に調整することができる。これにより、超音波診断装置本体における入力インピーダンスのばらつきを抑え、信号レベルの低下によるノイズの影響の増大及び、信号レベルの増加による信号波形の歪みを軽減することができ、S/N比を改善することができる。また、受信チャネルごとの入力インピーダンスのばらつきを抑え、各信号レベルを均一とすることで、超音波画像を精度良く生成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
〔第1の実施形態〕
本実施形態における超音波プローブ100は、図6に示す背景技術に記載した従来の超音波診断装置と同様、本体側プローブコネクタ210及びプローブコネクタ120を介して超音波診断装置本体200と接続して用いられるものである。また、本実施形態に係る超音波プローブ100は、使用モードと校正モードという2つのモードを有する。そして、超音波診断装置本体200側には、図示はしないが使用モードと構成モードの切り替えを行う切替手段を有し、この切替手段の指示で、超音波プローブは使用モードと構成モードに切り替えられて動作する。この切替手段は電源投入時や異なる超音波診断装置本体200に超音波プローブ100に接続を変更したときなど、予め決められた超音波診断装置本体200の入力インピーダンスが変わった可能性がある場合に、校正モードへの切り替えを行う。さらに、校正モードにおける超音波プローブ100の校正が終了すると、切替手段は使用モードへの切り替えを行う。
【0022】
そこで、本実施形態に係る超音波プローブ100の特徴である出力の制御について説明する。図1は本実施形態に係る超音波プローブ100の一部を取り出したブロック図である。また、図2は本発明に係る超音波プローブの実際の物理構成の概略を示す図である。実際の超音波プローブでは、図1に示す振動子102は図2に示すように複数個あり、また、レベル可変手段103及びレベル検出手段104は図2に示すように振動子102と同数設けられている。さらに、本実施形態に係る超音波プローブ100の負荷は超音波診断装置本体200の負荷220に基づく入力インピーダンスによって決定される。そして、負荷220へ電流で信号が供給される。また、図2では小型化のためプローブコネクタ120の中に、送受信切替スイッチ101、レベル可変手段103、レベル検出手段104、基準値発生手段106、及び制御手段109が配置されているが、これは、プローブコネクタの外部に配置してもよい。
【0023】
(校正モードの場合)
本実施形態に係る超音波プローブ100は、超音波診断装置本体200に設けられた送受信回路210から送られてきた電気的パルスを受ける。ここで、送受信回路210は、図示はしないが、超音波プローブ100に信号を送信する送信手段及び、超音波プローブ100からの信号を受信する受信手段を有する。
【0024】
送受信切替スイッチ101は、振動子102側と超音波診断装置200側に切替可能なスイッチを備えている。信号が超音波診断装置本体200から送られてきた場合、送受信切替スイッチ101は、振動子102側にスイッチを切り替えて振動子102に該信号を通過させる。また、送受信切替スイッチ101は、レベル可変手段103から信号が送られてきた場合、超音波診断装置本体200側にスイッチを切り替えて超音波診断装置本体200に該信号を通過させる。
【0025】
プローブヘッド110は、複数の振動子102を備える。振動子102は、電極とその電極に挟まれる圧電素子で構成されている。振動子102は、受信した信号を超音波ビームに変換し、その超音波ビームをダミーの被検体に向けて送出する。そして、振動子102は、ダミーの被検体で反射された超音波エコーを受信し、受信した超音波エコーを出力信号に変換する。そして、振動子102は出力信号をレベル可変手段103に送る。
【0026】
ここで、図2に示すように、実際にはプローブヘッド110内にも、ヘッド内切替スイッチ121及びヘッド内増幅器122が配置されている。そして、ヘッド内切替スイッチ121は送受信切替スイッチ101から送られてきた信号を振動子102側に通過させる。また、振動子102から送られてきた出力信号はヘッド内増幅器122で増幅され、ヘッド内切替スイッチ121の切り替えによってレベル可変手段103側に通過させられる。
【0027】
本実施形態では、超音波プローブの動作のチェックも行うために、超音波診断装置本体200からの信号を使用しダミーの被検体を走査することでレベル可変手段103の校正用の信号を作り出しているが、受信側の経路のチェックを必要としない場合などは、プローブヘッド110からの出力信号と等価のダミー信号をレベル可変手段103に直接送信する構成でもよい。
【0028】
レベル可変手段103は、図3に示すような可変増幅手段(可変ゲインアンプ)で構成される。ただし、レベル可変手段103は、この構成に限定されるものではなく、レベル可変手段103における利得を変更できる構成であればよく、増幅手段及び可変減衰手段で構成されるものでもよい。また、図3に示す可変増幅手段の例はコントローラによって電圧を変えることでバイアス電流IEを変更し、出力信号の大きさを変更する構成である。ただし、この可変増幅手段はこの構成に限定されるものではなく、出力信号の大きさを変更できる構成であればよく、例えば、抵抗を切り替えることで出力信号の大きさを変更するような構成でもよい。
【0029】
レベル可変手段103における可変増幅手段は、バイアス電流の変更による利得率の変更に基づいて、プローブヘッド110から送られてきた出力信号のレベルを変更する。校正モードの場合、レベル可変手段103は変更した出力信号をレベル検出手段104に送信する。
【0030】
レベル検出手段104は、例えばダイオードで構成され、レベル可変手段103から受けた出力信号を直流電圧に変換することによって、出力信号の大きさを検出する。
【0031】
基準値発生手段106は、超音波診断装置本体200からカラー画像表示やモノクロ画像表示などの動作モードの情報を受けて、その動作モードに対応して予め決められた大きさを有する直流電圧を発生する。ここで、本実施形態では基準値を得るため直流電圧を発生しているが、これは基準値が得られる構成ならば特に限定はなく、例えば、予め決められた直流電圧の大きさの値を比較手段105に送る構成でもよい。
【0032】
制御手段109は、比較手段105、レベル制御手段107、及び、ホールド手段108で構成されている。
【0033】
比較手段105及びレベル制御手段107をアナログで構成して制御を行う場合、比較手段105はレベル可変手段103からの出力信号である直流電圧と基準値発生手段106からの直流電圧の差を取り、その差を増幅する。さらに、比較手段105は、レベル可変手段103からの出力信号の大きさが基準値に一致した場合、ホールド手段108にそのときの出力を維持させる。ここで、ホールド手段108は、各チャネル毎に出力を記憶している。ホールド手段108の例としては、制御手段109がアナログでの制御を行っている場合にはコンデンサである。
【0034】
レベル制御手段107は、レベル可変手段103からの出力信号の大きさを基準値発生手段106が発生した直流電圧の大きさに一致させるよう、増幅された値でレベル可変手段103を制御する。例えば、出力信号のレベルが基準値よりも低い場合には、レベル可変手段103の利得を上げるように負帰還させる。そして、使用モードの場合には、レベル制御手段107は、ホールド手段108に維持されている出力に基づいて制御する。
【0035】
比較手段105及びレベル制御手段107をCPUで構成してしてデジタルで制御を行う場合、比較手段105は、レベル可変手段103からの出力信号である直流電圧と基準値発生手段106からの直流電圧をそれぞれA/D変換し、それらの変換した値を比較する。さらに比較手段105は、レベル可変手段103からの出力信号の大きさが基準値に一致した場合、そのときのレベル可変手段103を制御した制御信号の大きさをホールド手段108に維持させる。ここで、ホールド手段108は、各チャネル毎に該制御信号の大きさを記憶している。ホールド手段108の例としては、制御手段109においてCPUを使用してレベル可変手段103の制御を行っている場合にはメモリである。
【0036】
また、本実施形態では、レベル可変手段103からの出力信号の大きさが基準値に一致したときの比較手段105の出力をホールド手段108に維持させているが、これは、レベル可変手段103からの出力信号の大きさが基準値に一致したときに、レベル制御手段107によってレベル可変手段103が制御された制御信号の大きさを維持させておく構成でもよい。
【0037】
(使用モード)
本実施形態における超音波プローブ100は、図6に示す従来の超音波診断装置と同様、送受信回路210から送られてきた信号(電気的パルス)を受ける。
【0038】
送受信切替スイッチ101は、校正モードと同様、信号が超音波診断装置本体200から送られてきた場合、送受信切替スイッチ101は、送受信回路210からの信号送信時には振動子102側にスイッチを切り替えて振動子102側に該信号を送り、送受信回路210による信号受信時には、超音波診断装置本体200側にスイッチを切り替えて超音波診断装置本体200側にレベル可変手段103から送られてきた信号を送る。
【0039】
振動子102は、図2に示すヘッド内切替スイッチ121を介して受信した信号を超音波ビームに変換し、その超音波ビームを実際の被検体に向けて送出する。そして、振動子102は、該被検体で反射された超音波エコーを受信し、受信した超音波エコーを出力信号に変換する。そして、振動子102は出力信号をレベル可変手段103に送る。この出力信号は、図2に示すヘッド内増幅手段122で増幅した後、ヘッド内切替スイッチ121を介してレベル可変手段103に送られる。
【0040】
レベル制御手段107は、使用モードに切り替わった時点で比較手段105からのラインを切断する。
【0041】
レベル制御手段107は、ホールド手段108に維持されている制御信号の値を取得する。そして、レベル制御手段107は、取得した制御信号の値を基に、校正時にレベル可変手段103からの出力信号の大きさが基準値発生手段106が発生した基準値と一致したときと同じ値で制御する。
【0042】
そして、レベル可変手段103は、レベル制御手段107からの制御信号を受けて出力信号の大きさの変更を行い、超音波診断装置本体200に設けられた送受信回路210に向けて出力する。
【0043】
さらに、本実施形態に係る超音波プローブ100が接続された超音波診断装置は、従来の超音波診断装置と同様、超音波プローブ100から送出された出力信号を、送受信回路210で増幅しタイミングを合わせた後、信号処処理部202及び画像処理部203で画像処理を行い、超音波断層像を表示部205に表示する。
【0044】
次に、図4を参照して本実施形態に係る超音波プローブの構成モードにおける動作及び使用モードにおける動作を説明する。ここで、図4は超音波プローブの動作のフローチャートの図である。
【0045】
ステップS001:切替手段により校正モードと使用モードの切替が行われる。構成モードの場合ステップS002に進み、使用モードの場合ステップS012に進む。
【0046】
ステップS002:振動子102は、送受信回路210から送られてきた信号を超音波に変換して被検体のダミーを走査する。
【0047】
ステップS003:振動子102は、増幅手段103に出力信号を送信する。
【0048】
ステップS004:レベル可変手段103は、出力信号のレベルを変更しレベル検出手段104に送信する。
【0049】
ステップS005:レベル検出手段104は、受信した出力信号を直流に変換し出力する。
【0050】
ステップS006:基準値発生手段106は、超音波診断装置のモードに合わせた基準値を有する直流電圧を比較手段105に送る。
【0051】
ステップS007:比較手段105は、レベル検出手段104の出力信号及び基準値のそれぞれの大きさを比較する。ここで、CPUによるデジタルでの制御の場合は、レベル検出手段104の出力信号及び基準値をA/D変換した後比較を行う。
【0052】
ステップS008:レベル制御手段107は、出力信号を基準値が一致しているか否かを判断する。一致していな意場合はステップS009に進み、一致している場合はステップS010に進む。
【0053】
ステップS009:レベル制御手段107は、出力信号と基準値の比較に基づいてレベル可変手段103の制御を行い、ステップS002に進む。
【0054】
ステップS010:比較手段105は、出力信号と基準値とが一致したときの出力値をホールド手段108に維持させる。
【0055】
ステップS011:レベル制御手段107は、制御を停止する。
【0056】
ステップS012:レベル制御手段107は、ホールド手段108に維持されている制御信号の値を基に、レベル可変手段103の出力が基準値と一致するように制御する。
【0057】
ステップS013:振動子102は、送受信回路210から送られてきた信号を超音波ビームに変換し実際の被検体を走査する。
【0058】
ステップS014:振動子102は、受けた超音波エコーを信号に変え、レベル可変手段103に向けて出力する。
【0059】
ステップS015:レベル可変手段103は、受けた出力信号のレベルを変更し、送受信切替スイッチ101を介して送受信回路210へ送信する。
【0060】
以上のように、本実施形態に係る超音波プローブ100は、基準値と一致するようにレベル可変手段103を変化させる。これにより、負荷220として使用している超音波診断装置本体200の入力インピーダンスのバラつきによる出力信号のレベルの変化を抑えて、S/N比を改善することができるとともに、受信チャネル毎の各信号レベルを均一とすることで、超音波画像を精度良く生成することが可能となる。
【0061】
〔第2の実施形態〕
本実施形態に係る超音波プローブは、第1の実施形態に係る超音波プローブにおいて、レベル可変手段103に供給される電流の上限及び、レベル可変手段103付近の温度の上限に達した場合に制御を停止し、そのときの制御信号の値を維持する構成である。
【0062】
図5は本実施形態に係る超音波プローブの機能を表すブロック図である。図5に示すように本実施形態における超音波プローブは第1の実施形態に係る超音波プローブに、電流計111、電流比較手段113、温度計測手段114、温度予測手段115、温度比較手段116を備えたものである。そして、使用モードの動作は第1の実施形態と同様であるので、以下では、校正モードの場合のみを説明する。
【0063】
本実施形態に係る超音波プローブにおいても、第1の実施形態の超音波プローブと同様に超音波診断装置本体200から送信された信号を基に、振動子102で被検体のダミーを走査し、超音波エコーを信号に変えてヘッド内増幅手段122で増幅し、レベル可変手段103に出力する。レベル可変手段103は出力信号のレベルを変更し出力する。レベル検出手段104は直流電圧に変換し出力する。比較手段105は、アナログでの制御の場合には基準値発生手段106で発生された基準値を有する直流電圧と、レベル検出手段104の出力をそのまま比較し、CPUによるデジタルでの制御の場合にはA/D変換した後比較する。レベル制御手段107は、レベル可変手段103の出力の大きさが基準値と一致するようにレベル可変手段103を制御する。
【0064】
電源112はレベル可変手段103に電気を供給している。図5に示す太いラインは電源供給ラインである。ここで、図5は模式的に一部を取り出して図示しているが、実際には図2に示すように電源112は複数あるレベル可変手段103全てに電流を供給している。
【0065】
電流計111は、電源112から複数あるレベル可変手段103それぞれに供給されている電源電流を計測し、そのそれぞれのレベル可変手段103に供給されている各電源電流を全て足し合わせることで、電源電流から送られる全ての電流の総和を計測している。
【0066】
電流比較手段113は、予めレベル可変手段103の電流の定格を基に全てのレベル可変手段103に供給可能な上限値を記憶している。そして、電流比較手段113は、電流系111から電流の計測値を受けて、記憶している上限値を供給電流が超えていないか否かを判断する。供給電流が上限値を超えている場合には、電流比較手段113は、レベル制御手段107に信号を送る。
【0067】
温度計測手段114は、レベル可変手段103の付近の温度を計測している。ここで、図5は模式的に一部を取り出して図示しているが、実際には図2に示すように、温度計測手段114は複数あるレベル可変手段103の全てに配置されており、それぞれ付近の温度を計測している。ここで、図5に示す点線はレベル可変手段103付近の温度を計測していることを表わしている。
【0068】
温度予測手段115は、統計的な温度上昇率と一定時間後の温度の関係を記憶している。そして、温度予測手段115は、所定の時間における温度の情報を温度計測手段114から受けて、温度上昇率を算出し、記憶している温度上昇率と一定時間ごの温度の関係から一定時間後のレベル可変手段103付近の温度を予測する。
【0069】
温度比較手段116は、予めレベル可変手段103の温度の上限値を記憶している。そして、温度比較手段1116は、温度予測手段115が予測した温度と上限値を比較する。温度比較手段116は、予測温度が上限値を超えた場合にはレベル制御手段107に信号を送る。
【0070】
レベル制御手段107は、電流比較手段113又は温度比較手段116から信号を受けると、レベル可変手段103の制御を停止しその停止した時点での状態を保持する。この制御の停止は、レベル可変手段103の出力の大きさを基準値に一致させる制御に優先する。
【0071】
レベル制御手段107は、制御を停止した時点における、レベル可変手段103を制御していた制御信号の値をホールド手段108に維持させる。使用モードではレベル制御手段107は、ホールド手段108に維持されている該制御信号の値を基にレベル可変手段103の制御を行う。
【0072】
以上のように、本実施形態にかかる超音波プローブでは、供給電流の上限値又は温度の上限値を超えたときに制御を停止させその時点での状態を保持させることができる。これにより、レベル可変手段103の信号出力の制御により、消費電力や発熱が過大になる状態を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】第1の実施形態に係る超音波プローブのブロック図
【図2】本発明に係る超音波プローブの物理構成の概略を示す図
【図3】レベル可変手段の一例を示す図
【図4】第1の実施形態に係る超音波プローブの動作のフローチャートの図
【図5】第2の実施形態に係る超音波プローブのブロック図
【図6】超音波診断装置の構成の概要を説明するための図
【図7】超音波断層像(Bモード画像)の模式図
【符号の説明】
【0074】
100 超音波プローブ
101 送受信切替スイッチ
102 振動子
103 レベル可変手段
104 レベル検出手段
105 比較手段
106 基準値発生手段
107 レベル制御手段
108 ホールド手段
109 制御手段
110 プローブヘッド
111 電流計
112 電源
113 電流比較手段
114 温度計測手段
115 温度予測手段
116 温度比較手段
120 プローブコネクタ
121 ヘッド内切替スイッチ
122 ヘッド内増幅器
200 超音波診断装置本体
201 超音波診断装置側コネクタ
202 信号処理部
203 画像処理部
204 制御回路
205 表示部
206 操作パネル
210 送受信回路
211 送信遅延回路
212 パルサー
213 プリアンプ
214 送受信切替スイッチ
215 受信遅延加算回路
220 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波診断装置本体側に設けられた送信手段からの信号を受けて超音波ビームを被検体に送出し、前記被検体で反射した超音波エコーを受信する複数の振動子を備えた超音波プローブであって、
前記振動子に対応した、
前記振動子からの出力信号の大きさを変更して、前記超音波診断装置本体側に設けられた受信手段へ供給するレベル可変手段と、
前記レベル可変手段からの出力信号の大きさを検出するレベル検出手段と、
所定の大きさの基準値を発生する基準値発生手段と、
前記レベル検出手段からの出力と前記基準値とを比較し、それらが一致するように前記レベル可変手段の利得の制御を行う制御手段と
を備えることを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
複数ある前記レベル可変手段それぞれに供給される電源電流の総和と予め記憶している上限値とを比較する電流比較手段をさらに備え、
前記制御手段は、
前記供給される電流が前記上限値に達したときに制御を停止する
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記レベル可変手段付近の温度を計測する温度計測手段と、
前記計測した温度から温度の上昇を予測する温度予測手段と、
予め記憶している温度の上限値と前記予測された温度を比較する温度比較手段とをさらに備え、
前記制御手段は、
前記レベル可変手段付近の温度が前記温度の上限値に達したときに制御を停止する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記レベル可変手段の負荷は、前記超音波診断装置本体の入力インピーダンスで決定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の超音波プローブ
【請求項5】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを介して被検体を超音波で走査し、受信する送受信手段と、
前記送受信手段が受信したデータに基づいて超音波画像を生成し表示手段に表示させる画像生成手段と
を備える超音波診断装置であって、
前記超音波プローブは、
超音波診断装置本体側に設けられた送信手段からの信号を受けて超音波ビームを被検体に送出し、被検体で反射した超音波エコーを受信する複数の振動子を備え、
前記振動子に対応した、
前記振動子からの出力信号の大きさを可変して、前記超音波診断装置本体側に設けられた受信手段へ供給するレベル可変手段と、
前記レベル可変手段からの出力信号の大きさを検出するレベル検出手段と、
所定の大きさの基準値を発生する基準値発生手段と、
前記レベル検出手段からの出力と前記基準値とを比較し、それらが一致するように前記レベル可変手段の利得の制御を行う制御手段と
を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
前記可変レベル手段の出力を校正する校正モードに切り替える段階と、
超音波診断装置本体側に設けられた送信手段からの信号を受けて複数の振動子から超音波ビームを被検体に送出する段階と、
前記被検体で反射した超音波エコーを前記複数の振動子で受信する段階と、
レベル可変手段により、前記振動子からの出力信号の大きさを変更して、前記超音波診断装置本体側に設けられた受信手段へ供給するレベル変更段階と、
レベル検出手段により前記レベル可変手段からの出力信号の大きさを検出するレベル検出段階と、
前記レベル検出手段からの出力と予め発生している所定の大きさの基準値とを比較し、それらが一致するように前記レベル可変手段の利得の制御を行う制御段階と、
前記校正モードで前記レベル検出手段からの出力が前記基準値に一致したときに前記レベル可変手段を制御している制御信号の大きさをホールド手段に維持する段階と、
前記構成モードから超音波断層像作成のための出力を行う使用モードに切り替える段階と、
ホールド手段に維持されている制御信号の大きさを基に前記レベル可変手段を制御する段階と
を備えることを特徴とする超音波プローブ出力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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