説明

超音波プローブ及び超音波診断装置

【課題】生体表面付近の明瞭な画像を得ることが可能な超音波プローブを提供する。
【解決手段】音響レンズ5上に低減衰媒体6を設置し、低減衰媒体6が先端となるように低減衰媒体6をプローブ筐体7の内部に格納する。超音波振動子部3から送信された超音波は音響レンズ5でスライス方向に集束され、低減衰媒体6を介して超音波プローブ1の外部に照射される。低減衰媒体6を設置したことで、音響レンズ5から先端部1aまでの距離が長くなるため、先端部1a(生体接触面)付近で安定した均一な音場が得られる。これにより、生体表面の明瞭な画像が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検体内に超音波を送信し、被検体内からの反射波を受信する超音波プローブ、及びその超音波プローブを備え、被検体内の診断情報を取得する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体内を超音波で走査し、被検体内からの反射波に基づいて被検体の内部状態を映像化する超音波診断装置が知られている。このような超音波診断装置は、超音波振動子を備えた超音波プローブにより被検体内に超音波を送信し、被検体内部で音響インピーダンスの不整合によって生じる反射波を超音波プローブで受信することで画像を生成する。
【0003】
超音波プローブは、走査方向に配置された複数の超音波振動子を備えている。超音波振動子は、送信信号に基づいて振動して超音波を発生し、反射波を受けて受信信号を生成する。このように超音波振動子によって超音波の送受信がなされるが、超音波振動子と被検体とでは音響インピーダンスが大きく異なり、そのまま超音波を被検体内に送信しても反射が大きくなってしまう。そこで、超音波振動子と被検体との間に音響整合層を設け、その音響整合層によって音響インピーダンスを徐々に変化させて音響整合を良好にしている。さらに、平板の超音波振動子から発生した超音波は平面波として伝達するが、そのままでは超音波は拡散してしまうため、音響レンズを用いてある深さの焦点に超音波を集束させている(特許文献1及び特許文献2)。
【0004】
ここで、従来技術に係る超音波プローブについて図18を参照して説明する。図18は、従来技術に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す斜視図である。超音波プローブはヘッド側とケーブル側とからなり、図18には超音波プローブのヘッド側のみが示されている。
【0005】
図18に示すように、従来技術に係る超音波プローブは、背面材2の上に超音波振動子部3が設けられ、その超音波振動子部3の上に音響整合層4が設けられている。ここでは、音響整合層4は、第1の音響整合層4aと第2の音響整合層4bとで構成されている。さらに、音響整合層4の上には音響レンズ5が設けられている。そして、超音波振動子部3と音響整合層4は、走査方向に複数に分割されて配列されている。
【0006】
ところで、注射針などの穿刺針を生体内に刺入して、腫瘍などの組織の採取や薬剤の局所投与などを行う穿刺術が行われている。このような穿刺術は、目的である腫瘍などの組織を確実に穿刺するために、超音波画像取得装置によって取得される断層像を観察しながら行われている。
【0007】
以上のような穿刺針を生体内に刺入するために、穿刺用アダプタが用いられている。穿刺用アダプタとして、超音波プローブの送受信面(先端部)に取り付けて用いられる外付け用の音響カプラが知られている。この外付け用の音響カプラには、目的箇所へ穿刺針を刺入させるための穿刺針ガイド部が設けられており、その穿刺針ガイド部を通して穿刺針を生体に刺入させることになる(特許文献3及び特許文献4)。
【0008】
また、超音波振動子の一部に切欠き部を設け、その切欠き部に、穿刺針を生体に刺入するための穿刺針ガイド部を設けて、切欠き部から生体内に穿刺針を刺入する手法が知られている。
【0009】
以上のように、外付け用の音響カプラを用い、又は、超音波振動子の一部に切欠き部を設けて、超音波プローブの送受信面の中央付近から穿刺針を生体に刺入することで、断層像の中央付近に穿刺針が描画される。これにより、体表近くから穿刺針を確認しながら、刺入針を生体に刺入することができる。
【0010】
【特許文献1】特開2000−201929号公報
【特許文献2】特開平3−128048号公報
【特許文献3】特開2005−144028号公報
【特許文献4】特公平1−17693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の構成を有する従来技術に係る超音波プローブでは、音響レンズ5から被検体(生体)に伝達された直後の超音波は十分に集束されておらず、不安定な音場となってしまう。不安定な音場に基づいて得られた画像は、超音波が集束している領域の画像と比べて不明瞭な画像となってしまう。
【0012】
ここで、超音波プローブによって形成される音場について図19を参照して説明する。図19は、従来技術に係る超音波プローブにより送信又は受信される超音波の音場分布を示す図である。図19(a)は、従来技術に係る超音波プローブの表面から放射された超音波の音場分布を示しており、音圧の強度を濃淡で表している。図19(a)中、濃い部分ほど超音波の音圧が高く、薄い部分ほど音圧が低くなっている。また、図19(b)は、従来技術に係る超音波プローブの表面からの距離xにおける超音波の音圧を示すグラフである。なお、図19に示す音場分布は円板(直径a)の超音波振動子により形成される音場分布であり、医用超音波機器ハンドブック(社団法人日本電子機器工業会編)より抜粋した音場分布である。
【0013】
超音波プローブの表面からの距離xが距離D未満の範囲においては、近距離音場と称され、距離D以降は遠距離音場と称されている。距離Dの位置は、スライス方向(走査方向に直交する方向)における超音波のフォーカス位置に対応する。つまり、距離Dの位置は、スライス方向において超音波ビームが絞れている位置に対応する。超音波のビームパターンの幅が超音波画像の分解能に関係し、幅が狭いほど高分解能になる。
【0014】
従来技術に係る超音波プローブによると、図19(a)に示すように、超音波プローブの表面近傍(音響レンズ5の表面近傍)における超音波の音場分布は、複雑な強弱の縞状音場分布となっている。この縞状の音場分布になっている領域から得られる信号に基づいて生成された超音波画像は、明瞭な画像にならない。従来技術においては、音響レンズ5の表面が被検体(生体)に対する接触面となっているため、被検体(生体)の表面付近では音圧分布は均一ではなく、生体表面付近では明瞭な画像が得られなかった。
【0015】
なお、図19に示す音場分布は、円形の超音波振動子によって形成される分布であるが、矩形状の超音波振動子であっても、分布の形状が多少異なるが、図19に示す分布と同様の特性を示す。
【0016】
また、被検体(生体)内に送信された超音波は被検体内部で減衰される。特に、被検体の深部からの反射波はその減衰も大きくなるため、反射波の強度が小さくなってしまう。従って、より深部からの反射波をその強度を保って受信するためには、超音波振動子を大きくする必要がある。しかしながら、超音波振動子を大きくした分、超音波プローブの先端部(被検体との接触面)が大きくなるため、超音波プローブの操作性が損なわれてしまう。超音波プローブの操作性を向上させるためには、超音波プローブの生体接触面を小さくする必要があるが、そのためには、超音波振動子を小さくする必要がある。ところが、超音波振動子を小さくした分、感度が低下してしまい、明瞭な画像が得られなくなる。
【0017】
超音波振動子を大きくすると、走査方向に直交する方向の厚さが厚くなるため、その方向からの不要な反射波を受信してしまう。そのことにより、超音波画像の画質を悪化させてしまうことになる。
【0018】
また、従来技術に係る外付け用の音響カプラを用いた場合、体表に穿刺針が刺入される前の段階から断層像によって穿刺針を視認することができる。しかしながら、外付け用の音響カプラを取り外した状態で超音波プローブを使用することが前提となるため、外付け用の音響カプラを取り外した状態で超音波プローブの駆動条件を設定する必要がある。この駆動条件には、超音波振動子に印加する駆動電圧や、超音波のフォーカス位置などの条件が含まれる。
【0019】
以上のように、外付け用の音響カプラを取り外した状態で超音波プローブの駆動条件を設定した場合であって、外付け用の音響カプラを超音波プローブに取り付けて撮影を行う場合、外付け用の音響カプラを取り付けた状態では駆動条件が適切とならない問題がある。例えば、外付け用の音響カプラを取り外した状態で超音波プローブが適切に駆動するように駆動電圧や超音波のフォーカス位置を設定すると、外付け用の音響カプラを取り付けた状態では駆動電圧が低すぎたり、フォーカス位置が所望する位置と異なったりする問題がある。
【0020】
一方、外付け用の音響カプラを取り付けた状態で超音波プローブの駆動条件を設定した場合であって、外付け用の音響カプラを超音波プローブから取り外して撮影を行う場合も、外付け用の音響カプラを取り外した状態では駆動条件が適切とならない問題がある。例えば、外付け用の音響カプラを取り付けた状態で超音波プローブが適切に駆動するように駆動電圧や超音波のフォーカス位置を設定すると、外付け用の音響カプラを取り外した状態では駆動電圧が高すぎたり、フォーカス位置が所望する位置と異なったりする問題がある。
【0021】
また、上述したように、音響レンズから外部に伝達された直後の超音波は十分に収束されておらず、不安定な音場になってしまう。不安定な音場から得られた超音波画像は、超音波が収束している領域の超音波画像と比べて不明瞭となってしまう。外付け用の音響カプラを取り外した状態の超音波プローブにおいては、音響レンズの表面が体表に対する生体接触面となっているため、体表付近では音場分布は均一ではなく、生体表面付近では明瞭な画像が得られない。
【0022】
また、超音波の発生源である超音波振動子の一部に切欠き部を設けた場合、その切欠き部の感度が下がってしまうため、断層像の輝度が一定にならない問題がある。
【0023】
この発明は上記の問題を解決するものであり、生体表面付近における明瞭な画像を得ることが可能な超音波プローブ、及びその超音波プローブを備えた超音波診断装置を提供することを目的とする。
【0024】
また、この発明は、生体表面付近における明瞭な画像を得ることができ、さらに、体表に穿刺針を刺入する前の段階から超音波画像によって穿刺針を確認することが可能な超音波プローブ、及びその超音波プローブを備えた超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
請求項1に記載の発明は、複数の超音波振動子が配置されて、超音波を被検体に対して送信し、前記被検体からの反射波を受信する超音波振動子部と、低減衰媒体と、前記低減衰媒体を前記被検体との接触面側にして、前記低減衰媒体と前記超音波振動子部を内部に格納するプローブ筐体と、を備え、前記超音波振動子部は、前記低減衰媒体を介して前記被検体に対して超音波を送信し、前記被検体からの反射波を受信することを特徴とする超音波プローブである。
【0026】
請求項19に記載の発明は、複数の超音波振動子が走査方向に列設されて、超音波を被検体に対して送信し、前記被検体からの反射波を受信する超音波振動子部と、前記送信及び受信される超音波を前記走査方向に直交するスライス方向に集束させる集束手段と、前記被検体との接触面側に向かって先細り状に形成された固体状の低減衰媒体と、前記低減衰媒体を前記被検体との接触面側にして、前記低減衰媒体、前記集束手段、及び前記超音波振動子部の順番で配置して、それらを内部に格納するプローブ筐体と、を備え、前記超音波振動子部は、前記低減衰媒体を介して前記被検体に対して超音波を送信し、前記被検体からの反射波を受信し、前記被検体との接触面側の先端の位置は、超音波のフォーカス位置とほぼ等しいことを特徴とする超音波プローブである。
【0027】
請求項21に記載の発明は、複数の超音波振動子が配置されて、超音波を被検体に対して送信し、前記被検体からの反射波を受信する超音波振動子部と、低減衰媒体と、前記低減衰媒体を前記被検体との接触面側にして、前記低減衰媒体と前記超音波振動子部を内部に格納するプローブ筐体と、を備え、前記超音波振動子部は、前記低減衰媒体を介して前記被検体に対して超音波を送信し、前記被検体からの反射波を受信する超音波プローブと、前記超音波プローブに超音波を送信させて、前記超音波プローブが受信した反射波を受信する送受信部と、前記送受信部からの出力に基づいて超音波画像データを生成する画像データ生成部と、を有することを特徴とする超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0028】
この発明によると、プローブ筐体内に格納した低減衰媒体を介して超音波を送受信することにより、被検体との接触面付近であっても均一で安定した音場分布が得られるため、被検体との接触面における明瞭な超音波画像が得られる。さらに、この発明によると、低減衰媒体を設置することにより、生体接触面の温度を低くすることが可能となる。これにより、従来技術に係る超音波プローブよりも、高出力で超音波を送信することが可能となる。
【0029】
また、この発明によると、低減衰媒体を介して超音波を送受信することにより、その低減衰媒体内を案内される穿刺針を超音波画像に描画することができるため、体表に穿刺針を刺入する前の段階から超音波画像によって穿刺針を確認することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
[第1の実施の形態]
(構成)
この発明の第1実施形態に係る超音波プローブについて、図1、図2、及び図3を参照して説明する。第1実施形態では、複数の超音波振動子が走査方向に1列に配列された、所謂1次元超音波プローブについて説明する。
【0031】
この発明の第1実施形態に係る超音波プローブの構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、この発明の第1実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は側面図である。図1(a)は、スライス方向(走査方向に直交する方向)から超音波プローブ1を見た図である。図1(b)は、走査方向から超音波プローブ1を見た図である。図1において、一部は内蔵されている各部を表す図である。図2は、この発明の第1実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す斜視図である。図1及び図2には超音波プローブのヘッド側が示されている。
【0032】
図1及び図2に示すように、第1実施形態に係る超音波プローブ1は、背面材2の上に超音波振動子部3が設けられ、その超音波振動子部3の上に音響整合層4が設けられている。さらに、音響整合層4の上には音響レンズ5が設けられている。そして、超音波振動子部3と音響整合層4は、走査方向に複数に分割されて配列されている。さらに、第1実施形態に係る超音波プローブ1では、音響レンズ5上に低減衰媒体6が設けられている。
【0033】
背面材2は、超音波振動子部3から発振された超音波振動や受信時の超音波振動のうち、超音波画像取得装置の画像抽出にとって必要でない超音波振動成分を減衰吸収する。背面材2には、一般的には、フェライトゴム、エポキシ樹脂又はウレタンゴムなどにマイクロバルーンなどを混入した材料が用いられる。
【0034】
超音波振動子部3は、走査方向に分割された複数の超音波振動子が並んで設置されている。このように、複数の超音波振動子が走査方向に1列に配列されることで、1次元超音波プローブを構成している。超音波振動子部3は、例えばチタン酸ジリコン酸鉛Pb(Zr、Ti)O、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、チタン酸バリウム(BaTiO)又はチタン酸鉛(PbTiO)などのセラミック材料からなる。また、超音波振動子部3の上下面に電極(図示しない)が設置されている。
【0035】
音響整合層4には、エポキシ樹脂やプラスチック材料などが用いられる。音響整合層4は、超音波振動子部3の音響インピーダンスと被検体の音響インピーダンスとの音響整合を良好にするために設けられる。音響整合層は1層だけであっても良く、2層以上設けても良い。第1実施形態に係る超音波プローブ1では、2層の音響整合層を設けている。この場合、第2の音響整合層4bの音響インピーダンスが、第1の音響整合層4aの音響インピーダンスよりも小さくなるように設計されている。音響整合層を複数の層構造にすることにより、徐々にインピーダンス整合を図ることで、被検体の体表と超音波振動子部3との直接結合による音響インピーダンスの差分による信号損失の発生を抑えている。
【0036】
集束手段の1例としての音響レンズ5は、超音波振動子部3による超音波の送受信の仲介を行う。この音響レンズ5によって、体表から所定の深さで、超音波はスライス方向(走査方向に直交する方向)における音響的な焦点を結ぶ。また、走査方向における超音波の音響的な焦点は、複数の超音波振動子の送信と受信のタイミングを切り替えることによって結ばれる。なお、図1及び図2に示された音響レンズ5の形状は、1例であり、この形状に限定されることはない。超音波をスライス方向に集束されるものであれば、音響レンズ5の形状は問わない。
【0037】
そして、図1に示すように、背面材2、超音波振動子部3、音響整合層4、音響レンズ5、及び低減衰媒体6は、プローブ筐体7(ケース)内に格納されている。このとき、低減衰媒体6は超音波プローブ1の先端部1a側、つまり被検体との接触面側に設置されるようにプローブ筐体7内に格納されている。
【0038】
上記の構成とすることで、超音波振動子部3から送信された超音波は音響レンズ5によりスライス方向(走査方向に直交する方向)に集束され、さらに低減衰媒体6を介して超音波プローブ1の外部に照射される。そして、被検体からの反射波は、低減衰媒体6を介して超音波プローブ1内に入射し、その後、音響レンズ5を介して超音波振動子部3にて受信される。
【0039】
ここで、低減衰媒体6の形状について説明する。図2の斜視図に示すように、音響レンズ5の表面(低減衰媒体6と接する面)は凸型の曲面形状を有している。低減衰媒体6は、音響レンズ5と接する面(以下、「第1の面」と称する場合がある)が、その音響レンズ5の凸型の曲面と嵌合するように、凹面状に形成されている。そして、低減衰媒体6は先細り状に形成されて、音響レンズ5から離れる方向(送受信方向)に向かって、低減衰媒体6のスライス方向の幅が徐々に狭くなるように形成されている。換言すると、低減衰媒体6において送受信方向に直交する断面の面積は、音響レンズ5から離れる方向(送受信方向)に向かって、徐々に小さくなるように形成されている。そして、第1の面の反対側の面(超音波プローブ1の先端部1a側の面、以下、「第2の面」と称する場合がある)の面積が最も小さくなるように形成されている。
【0040】
また、低減衰媒体6の送受信方向における厚さは、超音波振動子部3の音場分布の特性に基づいて決定することが望ましい。例えば、矩形状の超音波振動子から送信される超音波の音場分布は、図19に示す音場分布と同様の特性を示す。従って、ここでは便宜的ではあるが、図19に示す音場分布を参照して低減衰媒体6の厚さについて説明する。また、ここでは、低減衰媒体6の送受信方向における厚さであって、スライス方向の中心における厚さを「厚さd」とする。
【0041】
例えば、先端部1a(被検体との接触面)の位置が、超音波のフォーカス位置とほぼ一致するように、低減衰媒体6の厚さを決めることが望ましい。具体的には、低減衰媒体6の厚さdを、図2Bに示す、超音波の音場が安定する距離D以上の厚さにすることが望ましく、さらに、距離D以下の厚さにすることが望ましい。
【0042】
低減衰媒体6が設置されていない従来技術に係る超音波プローブの場合、図19(b)に示すように、超音波プローブの表面からの距離xが距離D以上の範囲で音場は安定した分布となる。従って、音響レンズ5上に設置された低減衰媒体6の厚さdを距離D以上とすることで、音響レンズ5の表面から先端部1aまでの距離を距離D以上とすることができる。そのことにより、超音波プローブ1の先端部1a付近における音場分布を、図19(b)に示す距離D以上に形成される安定した音場分布とすることができる。このように音響レンズ5上に低減衰媒体6を設置して、低減衰媒体6を介して超音波を送信することにより、先端部1a(被検体との接触面)付近で安定した均一な音場分布が形成されるため、被検体の表面付近に安定した均一な音場を形成することができ、生体表面の明瞭な画像が得られる。
【0043】
なお、超音波プローブの表面からの距離Dについては、超音波プローブ1に要求される特性、超音波振動子の形状や寸法などによって一概に規定することができないが、送信される超音波の音場分布が安定する位置までの距離とすることが好ましい。
【0044】
また、低減衰媒体6が設置されていない従来技術に係る超音波プローブの場合、図19に示すように、距離D付近が、スライス方向(走査方向に直交する方向)における超音波のフォーカス位置に対応している。つまり、距離D付近が、スライス方向において超音波ビームが絞れている位置となる。
【0045】
従って、低減衰媒体6の厚さdを距離D以下の厚さとすることで、超音波のスライス方向におけるフォーカス位置を、超音波プローブ1の外部に形成することができる。そのことにより、超音波のスライス方向におけるフォーカス位置を、被検体内に形成することが可能となり、被検体内の明瞭な画像を得ることが可能となる。
【0046】
また、図1に示すように、超音波プローブ1の先端部1a(被検体との接触面)に薄い保護膜8を設けても良い。この保護膜8は、被検体の安全性及び低減衰媒体6の耐久性を確保するために設置される。
【0047】
次に、低減衰媒体6の材料について説明する。低減衰媒体6には、超音波の減衰が小さい材料が用いられ、さらに、音響インピーダンスの値が被検体(生体)の音響インピーダンスと近似している材料を用いることが望ましい。そのために、低減衰媒体6には例えば樹脂が用いられ、より具体的には、ブタジエン系ゴム、ブタジエン系ゴムとシリコーン(silicone)との混合物(特開平8−615号公報参照)、ブタジエン系ゴムと酸化亜鉛との混合物などが用いられる。被検体(生体)の音響インピーダンスの値が約1.5[Mrayl]であるため、例えば、音響インピーダンスの値が1.4〜1.6[Mrayl]の樹脂を低減衰媒体6に用いることで、被検体(生体)との音響整合を良好にすることが可能となる。
【0048】
また、上記混合物に含まれるシリコーンや酸化亜鉛などの含有量を調整することで、低減衰媒体6の特性(音響インピーダンスや超音波の減衰量)を調整することが可能である。混合物の割合によっては超音波の減衰量が変化するため、被検体(生体)における診断部位の音響インピーダンスの違いや減衰量に合わせて、混合物の割合を調整する必要がある。
【0049】
さらに、低減衰媒体6による超音波の減衰の割合は、0.2[dB/mm・MHz]以下であることが望ましい。なお、超音波の減衰量が0.2[dB/mm・MHz]より大きくなると、取得される超音波画像の画質に影響を与えてしまう可能性がある。また、超音波の減衰は限りなく小さい方が好ましく、混合物の割合を調整することによって、超音波の減衰の割合を0.05[dB/mm・MHz]以下とすることも可能である。このように、低減衰媒体6の混合物の割合を調整することで超音波の減衰量を低減することもできるが、低減衰媒体6の音響インピーダンスと生体の音響インピーダンス(=約1.5[Mrayl])との差が大きくなってしまうことから、音響レンズや被検体(生体)との間での反射が大きくなる可能性がある。従って、関心領域の音響インピーダンスを考慮して低減衰媒体6の混合の割合を決定することが好ましい。
【0050】
(作用)
上記の構成を有する超音波プローブ1によると、以下に示す好適な作用及び効果を奏することが可能となる。第1実施形態に係る超音波プローブ1の作用及び効果について、図1、図2及び図3を参照して説明する。図3は、この発明の第1実施形態に係る超音波プローブにより送信又は受信される超音波の音場分布を示す図であり、走査方向から超音波プローブを見た図である。図3において、一部は内蔵されている各部を表す図である。
【0051】
第1実施形態に係る超音波プローブ1によると、(1)生体表面付近において明瞭な画像が得られる。(2)超音波プローブ1の先端部1a(被検体との接触面)の面積を小さくすることができ、その結果、超音波プローブ1の操作性を向上させることができる。(3)超音波プローブ1の感度を増加させることが可能となる。(4)生体表面付近からも高調波成分(ハーモニック周波数成分)を含む超音波を受信することができ、その結果、生体表面付近において分解能が高い高精細な画像が得られる。(5)超音波の送信出力レベルを従来技術に係る超音波プローブと等しくした場合、従来技術と比べて超音波プローブ1の先端部1aの温度を低くすることができる。これにより、被検体との接触面の温度を、従来技術に係る超音波プローブにおける接触面の温度以下、又は同程度の温度に維持しつつ、超音波の送信出力レベルを高めることが可能となる。そのことにより、被検体(生体)において、より深部まで超音波を送信することが可能となる。以下、(1)から(5)の作用及び効果について説明する。
【0052】
まず、(1)生体表面付近において明瞭な画像が得られる効果について説明する。音響レンズ5上に低減衰媒体6を設置することで、音響レンズ5から超音波プローブ1の先端部1aまでの距離が長くなるため、超音波プローブ1の先端部1a(被検体との接触面)であっても安定した均一な音場が形成される。そのため、被検体(生体)の表面であっても安定した均一な音場を形成することができ、被検体(生体)の表面においても明瞭な画像が得られる。
【0053】
例えば、低減衰媒体6の厚さdを、図19(b)に示す距離D以上の長さにすることで、超音波プローブ1の先端部1a(被検体との接触面)における音場分布を、均一な安定した音場分布とすることができる。その結果、生体表面付近に安定した均一な音場を形成することができ、被検体(生体)の表面においても明瞭な画像が得られる。
【0054】
さらに、低減衰媒体6の厚さdを、図19(b)に示す距離D以下の長さにすることで、超音波のスライス方向におけるフォーカス位置を、図3の側面図に示すように、超音波プローブ1の外部に形成することができる。そのことにより、被検体(生体)内に超音波のフォーカス位置を形成することができ、被検体(生体)内の明瞭な画像が得られる。
【0055】
次に、(2)生体接触面を小さくできる効果について説明する。超音波プローブ1によると、超音波プローブ1の先端部1a(被検体との接触面)の面積を小さくすることができる。図3の側面図に示すように、超音波振動子部3から送信された超音波は音響レンズ5によって集束される。このとき、音響レンズ5上に低減衰媒体6を設置することで、低減衰媒体6の厚さdだけ、音響レンズ5の表面から超音波プローブ1の先端部1aまでの距離を長くすることができる。そして、超音波は低減衰媒体6を通過している間に絞れるため、超音波は低減衰媒体6の厚さdに応じて絞れた状態で超音波プローブ1の先端部1aから外部に照射されることになる。つまり、音響レンズ5を通過した直後の超音波よりも低減衰媒体6を通過した超音波の方が、ビームが絞れていることになる。そのため、音響レンズ5の表面を被検体との接触面とする従来技術に係る超音波プローブと比較して、超音波プローブ1の先端部1a(被検体との接触面)における超音波の通過幅を狭くすることが可能となる。換言すると、従来技術に係る超音波プローブと比較して、超音波プローブ1の先端部1a(被検体との接触面)の面積を小さくすることが可能となる。このように、超音波プローブ1の先端部1aを小さくすることができるため、超音波プローブ1の操作性を向上させることが可能となる。
【0056】
次に、(3)感度を増加させることができる効果について説明する。上記(2)で説明したように、従来技術と比べて、超音波プローブ1の先端部1a(被検体との接触面)の面積を小さくすることができるため、例えば、先端部1aの面積を従来技術に係る超音波プローブの先端部の面積と等しくした場合、超音波振動子部3の大きさを従来技術よりも大きくすることが可能となる。つまり、超音波振動子部3を大きくした場合であっても音響レンズ5上に低減衰媒体6を設置することで、低減衰媒体6の長さに対応して超音波プローブ1の先端部1aでは超音波が絞れるため、先端部1aを大きくする必要がない。これに対して、従来においては、音響レンズ5が被検体との接触面となり、その接触面では超音波が十分に絞られていないため、超音波振動子部3を大きくした分、超音波プローブの先端部を大きくする必要がある。
【0057】
以上のように、超音波プローブ1によれば超音波振動子部3を大きくした場合であっても、先端部1a(被検体との接触面)を小さくすることができるため、先端部1aの大きさを従来技術に係る超音波プローブと等しくした場合、従来よりも超音波振動子部3を大きくすることが可能となる。これにより、超音波プローブ1の先端部1aの大きさを変えずに超音波プローブ1の感度を増加させることが可能となり、従来技術よりも明瞭な画像を得ることが可能となる。
【0058】
次に、(4)高調波成分(ハーモニック周波数成分)について説明する。送信周波数の高調波成分(ハーモニック周波数成分)を持つ超音波を受信して、その高調波成分に基づいて映像化することにより、分解能が高い高精細な画像を得る手法がある(ハーモニック映像法)。従来においては、音響レンズ5の表面が超音波プローブの先端部(被検体との接触面)となるため、超音波振動子部3から被検体(生体)の表面までの距離が短く、生体表面付近では十分な非線形効果が得られなかった。そのため、生体表面付近においては分解能が高い高精細な画像が得られなかった。
【0059】
第1実施形態に係る超音波プローブ1によると、音響レンズ5上に低減衰媒体6を設置しているため、超音波振動子部3から被検体(生体)の表面までの距離が長くなる。そのことにより、生体表面付近で十分な非線形効果が得られるようになるため、生体表面付近から高調波成分(ハーモニック周波数成分)を含む超音波を受信することが可能となる。これにより、生体表面付近についても分解能が高い高精細な画像を得ることが可能となる。
【0060】
次に、(5)生体接触面の温度及び超音波の送信出力レベルについて説明する。例えば、低減衰媒体6に樹脂を用いることで低減衰媒体6の熱伝導率が低くなるため、音響レンズ5上に低減衰媒体6を設置することで、超音波振動子部3で発生した熱が被検体(生体)に伝わり難くなる。従って、従来技術に係る超音波プローブと比較して、超音波の送信出力レベルが同じであれば、超音波プローブ1の先端部1a(被検体との接触面)の温度を低く維持することが可能となる。その結果、従来技術と比べて、第1実施形態に係る超音波プローブ1では、超音波の送信出力レベルを高レベルに設定することが可能となる。つまり、超音波の送信出力レベルを高レベルに設定しても、従来技術と比較して、超音波プローブ1の先端部1aの温度を低く又は同程度に維持することが可能となる。このように超音波の送信出力レベルを従来技術よりも高レベルに設定することができるため、被検体(生体)において、より深部まで超音波を送信することができ、観察可能な領域を広げることが可能となる。
【0061】
ところで、超音波プローブを設計するときに考慮しなければならないこととして、超音波プローブの先端部1a(被検体との接触面)の温度がある。超音波の送受信を行っている状態で、被検体との接触面の温度が規格(IEC60601−2−37)に規定されている温度の範囲内となるように、超音波プローブを設計する必要がある。つまり、被検体との接触面の温度が、規格(IEC60601−2−37)に規定されている温度の範囲内に収まるように、超音波の送信出力レベルを設定する必要がある。
【0062】
従来技術に係る超音波プローブの場合、音響レンズ5の表面が被検体との接触面となるため、音響レンズ5の表面の温度が、上記規格に規定されている温度の範囲内となるように、超音波の送信出力レベルを設定する必要がある。
【0063】
一方、第1実施形態に係る超音波プローブ1の場合、音響レンズ5上に低減衰媒体6が設置されている状態で、先端部1aの温度が、上記規格に規定されている温度の範囲内となるように、超音波の送信出力レベルを設定すれば良い。
【0064】
上述したように超音波の送信出力レベルが同じであれば、第1実施形態に係る超音波プローブ1の先端部1a(被検体との接触面)の温度は、従来技術に係る超音波プローブの先端部の温度よりも低くなる。このように超音波プローブ1によると、同じ送信出力レベルで超音波を送信した場合に先端部1aの温度を従来技術よりも低くすることができるため、従来技術に係る超音波プローブよりも超音波の送信出力レベルを高レベルにすることができる。つまり、第1実施形態に係る超音波プローブ1によると、超音波の送信出力を高レベルにしても先端部1aの温度はあまり上昇せず、先端部1aを上記規格に規定されている温度の範囲内に維持することが可能となる。
【0065】
なお、規格(IEC60601−2−37)に従って、超音波を送信した場合に、被検体との接触面が所定の温度を超えないようにする必要がある。第1実施形態に係る超音波プローブ1によると、従来技術に係る超音波プローブよりも超音波の送信出力レベルを高レベルにしても、被検体との接触面の温度を上記規格に従った範囲内に維持することが可能となる。なお、第1実施形態においては、被検体である生体に対して熱による害や不快感を与えないために、被検体との接触面の温度を、例えば30〜50℃の範囲内に抑えるものとする。
【0066】
また、従来技術として、プローブ筐体(ケース)の外部に音響カプラを設けた超音波プローブがある。この従来技術に係る超音波プローブの場合、その外付け用の音響カプラは取り付け及び取り外しが可能となっており、外付け用の音響カプラを取り外した状態においても使用可能としている。そのため、外付け用の音響カプラを取り外した状態で、超音波プローブの先端部(被検体との接触面)の温度を上記規格に従った範囲内に維持するように、超音波の送信出力レベルを設定する必要がある。従って、外付け用の音響カプラを取り付けた場合であっても、外付け用の音響カプラを外した状態で設定した送信出力レベルで超音波を送信することになる。
【0067】
これに対して、第1実施形態に係る超音波プローブ1では、低減衰媒体6をプローブ筐体7の内部に設置しているため、低減衰媒体6を取り付けた状態で超音波の送信出力レベルを設定することになる。このとき超音波の送信出力レベルは、外付け用の音響カプラを取り外した状態の従来技術に係る超音波プローブよりも、高レベルに設定することができる。上述したように、低減衰媒体6を設置したことにより、超音波振動子部3で発生した熱が超音波プローブ1の先端部1a(被検体との接触面)に伝わり難くなり、従来技術と比べて被検体との接触面の温度を低く維持することができるからである。
【0068】
その結果、第1実施形態に係る超音波プローブ1では、上記外付け用の音響カプラを取り付けた超音波プローブよりも超音波の送信出力レベルを高レベルに設定することが可能となる。そのことにより、外付け用の音響カプラを取り付けた従来技術に係る超音波プローブよりも、被検体(生体)内部において、より深部まで超音波を送信することができ、観察可能な領域を広げることが可能となる。
【0069】
第1実施形態に係る超音波プローブ1と、外付け用の音響カプラを取り付けた従来技術に係る超音波プローブとの差についてまとめる。従来技術に係る超音波プローブでは、外付け用の音響カプラを取り外した状態で、超音波プローブの先端部(被検体との接触面)の温度が上記規格で規定されている温度の範囲内に収まるように、超音波の送信出力レベルを設定する必要がある。そのため、外付け用の音響カプラを取り付けた状態であっても、取り外した状態で設定した出力レベルの範囲内で超音波を送信する必要がある。
【0070】
これに対して第1実施形態に係る超音波プローブ1では、プローブ筐体7内に低減衰媒体6を設置したことで、外付け用の音響カプラを取り外した状態の従来技術に係る超音波プローブよりも、超音波の送信出力レベルを高レベルに設定することができる。
【0071】
従って、第1実施形態に係る超音波プローブ1と、外付け用の音響カプラを取り付けた状態の従来技術に係る超音波プローブとを比較した場合、第1実施形態に係る超音波プローブ1の方が、超音波の送信出力レベルを高レベルに設定することが可能となる。その結果、送信される超音波の出力レベルが高くなるため、感度が高く、より深部まで超音波を送信することが可能となる。
【0072】
[第2の実施の形態]
次に、この発明の第2実施形態に係る超音波プローブの構成について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、この発明の第2実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す図であり、図4(a)は正面図、図4(b)は側面図である。図4(a)は、スライス方向(走査方向に直交する方向)から超音波プローブ10を見た図である。図4(b)は、走査方向から超音波プローブ10を見た図である。図4において、一部は内蔵されている各部を表す図である。図5は、この発明の第2実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す斜視図である。図4及び図5には超音波プローブのヘッド側が示されている。第2実施形態では、第1実施形態と同様に、複数の超音波振動子が走査方向に1列に配列された、所謂1次元超音波プローブについて説明する。
【0073】
図5に示すように、第2実施形態に係る超音波プローブ10は、背面材2、超音波振動子部3、音響整合層4、及び音響レンズ5を備えて構成されている。さらに、第2実施形態に係る超音波プローブ10は、図4及び図5に示すように、音響レンズ5上に低減衰媒体6が設置されている。
【0074】
そして、図4に示すように、背面材2、超音波振動子部3、音響整合層4、音響レンズ5、及び低減衰媒体6は、プローブ筐体7(ケース)内に格納されている。このとき、低減衰媒体6は超音波プローブ10の先端部10a側、つまり被検体との接触面側に設置されるようにプローブ筐体7内に格納されている。
【0075】
上記の構成とすることで、超音波振動子部3から送信された超音波は音響レンズ5によりスライス方向(走査方向に直交する方向)に集束され、さらに低減衰媒体6を介して超音波プローブ10の外部(送受信方向)に照射される。そして、被検体からの反射波は、低減衰媒体6を介して超音波プローブ10内に入射し、音響レンズ5を介して超音波振動子部3にて受信される。
【0076】
ここで、低減衰媒体6の構成について説明する。図5の斜視図に示すように、音響レンズ5の表面(低減衰媒体6と接する面)は凸型の曲面形状を有している。低減衰媒体6は、音響レンズ5と接する面(第1の面)が、その音響レンズ5の凸型の曲面と嵌合するように、凹面状に形成されている。そして、低減衰媒体6は先細り状に形成されて、音響レンズ5から離れる方向(送受信方向)に向かって、低減衰媒体6のスライス方向の幅が徐々に狭くなるように形成されている。換言すると、低減衰媒体6の送受信方向に直交する断面積は、音響レンズ5から離れる方向(送受信方向)に向かって、徐々に小さくなるように形成され、第1の面の反対側の面(超音波プローブ1の先端部1a側の面(第2の面))の面積が最も小さくなるように形成されている。
【0077】
さらに、低減衰媒体6には、穿刺針を被検体(生体)に案内するための穿刺針ガイド部9が設置されている。この穿刺針ガイド部9は両端部が開口して筒状の形状を有し、貫通孔として被検体(生体)に穿刺針を案内する。この穿刺針ガイド部9は所定の曲率を持って曲げられており、低減衰媒体6の走査方向に沿った側面から、先端部10a側の面(第2の面)にかけて設けられている。
【0078】
穿刺針ガイド部9の入口9a(他端)は、低減衰媒体6の側面であって、走査方向(超音波振動子の配列方向)に沿った面に形成されている。また、入口9aはスライス方向を向いており、入口9aの向きは、超音波が送受信される方向(送受信方向)と超音波振動子が配列している方向(走査方向)とを含む面(断層像が形成される面)に交差している。なお、プローブ筐体7には、穿刺針ガイド部9の入口9aの位置に対応する位置に開口部(図示しない)が形成され、その開口部から穿刺針を出し入れすることが可能となっている。この第2実施形態では、プローブ筐体7の側面であって、走査方向に沿った側面に開口部(図示しない)が形成されている。
【0079】
また、穿刺針ガイド部9の出口9b(一端)は、低減衰媒体6の先端部10a側の面(第2の面)に形成されている。これにより、入口9aから導入された穿刺針は、穿刺針ガイド部9内を通って出口9bから超音波プローブ10の外部に案内される。また、穿刺針ガイド部9の出口9bは、超音波が送受信される方向(送受信方向)と超音波振動子が配列している方向(走査方向)とを含む面(断層像が形成される面)に平行な方向を向いている。このように、出口9bの向きが、送受信方向と走査方向とを含む面(断層像が形成される面)に平行になっているため、断層像が形成される面に沿って穿刺針を生体内に刺入することが可能となる。
【0080】
また、この第2実施形態では、穿刺針ガイド部9の出口9bの向きは、超音波プローブ10の先端部10aに対して直交している。つまり、出口9bの向きは、走査方向及びスライス方向に直交している。これにより、穿刺針を穿刺針ガイド部9の出口9bからほぼ垂直な状態で外部に案内することができ、その結果、穿刺針を被検体(生体)の体表に対してほぼ垂直な状態で刺入することが可能となる。
【0081】
なお、この第2実施形態では、穿刺針ガイド部9の出口9bの向きを、先端部10aに対して直交させているが、送受信方向と走査方向とを含む面(断層像が形成される面)に平行であれば、先端部10aに対して斜めに形成されていても良い。この場合であっても、断層像が形成される面に沿って穿刺針を生体内に刺入することができる。
【0082】
なお、穿刺針ガイド部9の出口9bは、超音波プローブ10の先端部10aにおいて、スライス方向の中心付近に形成されていることが好ましい。音響レンズ5によって絞られた超音波のビームのほぼ中心に穿刺針を導き出すことができるからである。
【0083】
また、穿刺針ガイド部9の出口9bは、超音波プローブ10の先端部10aにおいて、走査方向の中心付近に形成されていることが好ましい。超音波の送受信によって取得される断層像のほぼ中心に穿刺針を導き出すことができ、断層像のほぼ中心に穿刺針を描画することができるからである。
【0084】
なお、穿刺針ガイド部9は、金属又は樹脂によって形成されている。
【0085】
また、穿刺針ガイド部9の径の大きさを変えることにより、太さが異なる複数種類の穿刺針を用いることができる。
【0086】
また、低減衰媒体6の送受信方向における厚さdは、第1実施形態と同様に、超音波振動子部3の音場分布の特性に基づいて決定することが望ましい。第1実施形態と同様に、低減衰媒体6の厚さdを、超音波の音場が安定する距離以上の厚さにすることが望ましい。
【0087】
また、第1実施形態と同様に、低減衰媒体6の厚さdを調整することで、超音波のスライス方向におけるフォーカス位置を、超音波プローブ10の外部に形成することができる。そのことにより、超音波のスライス方向におけるフォーカス位置を、被検体(生体)内に形成することが可能となり、被検体(生体)内の明瞭な画像を得ることが可能となる。
【0088】
また、第1実施形態と同様に、超音波プローブ10の先端部10a(生体接触面)に薄い保護膜8を設けても良い。この保護膜8は、被検体の安全性、及び低減衰媒体6の耐久性を確保するために設置される。
【0089】
(作用)
上記の構成を有する超音波プローブ10によると、第1実施形態に係る超音波プローブ1と同じ作用及び効果を奏することが可能となる。つまり、(1)生体表面付近において明瞭な画像が得られる。(2)超音波プローブ10の先端部10a(被検体との接触面)の面積を小さくすることができ、その結果、超音波プローブ10の操作性を向上させることができる。(3)超音波プローブ10の感度を増加させることが可能となる。(4)生体表面付近からも高調波成分を含む超音波を受信することができ、その結果、生体表面付近において分解能が高い高精細な画像が得られる。(5)超音波の送信出力レベルを従来技術に係る超音波プローブと等しくした場合、従来技術と比べて超音波プローブ10の先端部10aの温度を低くすることができる。これにより、被検体との接触面の温度を、従来技術に係る超音波プローブにおける接触面の温度以下、又は同程度の温度に維持しつつ、超音波の送信出力レベルを高めることが可能となる。そのことにより、被検体(生体)において、より深部まで超音波を送信することが可能となる。
【0090】
さらに、第2実施形態に係る超音波プローブ10によると、(6)体表に穿刺針を刺入する前の段階から穿刺針を超音波画像によって認識することができ、安全な穿刺術を施すことが可能となる。
【0091】
音響レンズ5上に低減衰媒体6を設けることで、低減衰媒体6の断層像を描画することができる。そして、穿刺針ガイド部9をその低減衰媒体6に設けたことにより、低減衰媒体6内を案内されて被検体(生体)内に刺入される穿刺針を断層像に描画することができ、生体内に穿刺針を刺入する前の段階から穿刺針を断層像で確認することが可能となる。さらに、穿刺針ガイド部9の出口9bが、送受信方向と走査方向とを含む面(断層像が形成される面)に平行な方向を向いているため、穿刺針を断層像が形成される面に沿って生体内に刺入することができる。このように、生体内に刺入する前の段階から断層像にて穿刺針の位置を確認できるため、安全な穿刺術を施すことが可能となる。
【0092】
また、第2実施形態に係る超音波プローブ10によると、従来技術のように超音波振動子部の一部に切欠き部を形成する必要がないため、切欠け部に起因する輝度ムラがない超音波画像が得られる。
【0093】
なお、第2実施形態に係る超音波プローブ10は、低減衰媒体6の走査方向の幅が一定であるため、リニア型のスキャンに適しているが、超音波振動子部3の端部に設置されている超音波振動子を駆動せずに、コンベックス型のスキャンを実施しても良い。
【0094】
[第3の実施の形態]
次に、この発明の第3実施形態に係る超音波プローブの構成について、図6及び図7を参照して説明する。図6は、この発明の第3実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す正面図である。図6において、一部は内蔵されている各部を表す図である。図7は、この発明の第3実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す斜視図である。第3実施形態では、第1実施形態と同様に、複数の超音波振動子が走査方向に1列に配列された、所謂1次元超音波プローブについて説明する。上述した第2実施形態に係る超音波プローブ10においては、穿刺針ガイド部9を低減衰媒体6に直接形成したが、第3実施形態に係る超音波プローブ20では、その穿刺針ガイド部9を低減衰媒体6から取り外せるようにした。
【0095】
図7に示すように、低減衰媒体6には所定の形状に切り取られた切欠け部23が形成されている。その切欠け部23には、その切欠け部23の形状に合致する嵌合部材21が嵌め込まれて、低減衰媒体6に固定される。
【0096】
嵌合部材21には、上述した第2実施形態に係る超音波プローブ10と同様に、所定の曲率を持って曲げられている穿刺針ガイド部9が設けられている。嵌合部材21が切欠け部23に嵌め込まれることにより、穿刺針ガイド部9は低減衰媒体6の側面から先端部20a側の面(第2の面)にかけて設けられることになる。この穿刺針ガイド部9の形状、入口9a及び出口9bの向きは、上述した第2実施形態に係る超音波プローブ10に設置されている穿刺針ガイド部9と同じである。なお、プローブ筐体7には、上述した第2実施形態と同様に、穿刺針ガイド部9の入口9aの位置に対応する位置に開口部(図示しない)が形成され、その開口部から穿刺針を出し入れすることが可能となっている。この第3実施形態では、プローブ筐体7の側面であって、走査方向に沿った側面に開口部(図示しない)が形成されている。
【0097】
嵌合部材21には、一方の側面に凸部22aが形成され、その側面の反対側の側面には別の凸部22bが形成されている。さらに、低減衰媒体6に形成された切欠け部23には、嵌合部材21の凸部22aが嵌合する凹部24aが形成され、その凹部24aの反対側の面は、嵌合部材21の凸部22bが嵌合する凹部24bが形成されている。そして、嵌合部材21が低減衰媒体6の切欠け部23に嵌め込まれることにより、嵌合部材21の凸部22aと切欠け部23の凹部24aとが嵌合し、嵌合部材21の凸部22bと切欠け部23の凹部24bとが嵌合する。これによって、嵌合部材21は低減衰媒体6に装着されることになる。
【0098】
なお、嵌合部材21には、低減衰媒体6と同じ材料が用いられる。
【0099】
また、穿刺針を用いないで撮影を行う場合は、嵌合部材21の外形の形状が同じで、穿刺針ガイド部9が形成されていないダミー部材を切欠け部23に嵌め込むことで、穿刺針を用いない撮影を行うことが可能となる。
【0100】
また、複数の嵌合部材21を用意しておき、各嵌合部材21によって径が異なる穿刺針ガイド部9を設けることで、嵌合部材21を交換するだけで径の異なる穿刺針ガイド部9を超音波プローブに設置することができる。これにより、太さが異なる穿刺針に対応することが可能となる。
【0101】
(作用)
上記の構成を有する超音波プローブ20によると、上述した第2実施形態に係る超音波プローブ10と同じ作用及び効果を奏することが可能となる。つまり、超音波プローブ20によると、第1実施形態に係る超音波プローブ1と同じ作用及び効果を奏することが可能であり、さらに、体表に穿刺針を刺入する前の段階から穿刺針を超音波画像によって確認することができ、安全な穿刺術を施すことが可能となる。
【0102】
なお、第3実施形態に係る超音波プローブ20では、嵌合部材21に凸部22a、22bを設け、切欠け部23に凹部24a、24bを設けたが、凸部や凹部を設けなくても良い。例えば、切欠け部23に嵌合部材21を嵌めこんで、嵌合部材21と低減衰媒体6との摩擦によって嵌合部材21を切欠け部23に固定しても良い。
【0103】
[第4の実施の形態]
次に、この発明の第4実施形態に係る超音波プローブの構成について、図8から図10を参照して説明する。図8は、この発明の第4実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す正面図である。図8において、一部は内蔵されている各部を表す図である。図9及び図10は、この発明の第4実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す斜視図である。第4実施形態では、第1実施形態と同様に、複数の超音波振動子が走査方向に1列に配列された、所謂1次元超音波プローブについて説明する。
【0104】
図8及び図9に示すように、第4実施形態に係る超音波プローブ30においては、上述した第2実施形態に係る超音波プローブ10に設置された穿刺針ガイド部9の代わりに、低減衰媒体6に直線状の穿刺針ガイド部31が設置されている。この穿刺針ガイド部31は、穿刺針ガイド部9と同様に金属又は樹脂によって形成され、両端部が開口して筒状の形状を有し、貫通孔として被検体(生体)に穿刺針を案内する。また、この第4実施形態では、穿刺針ガイド部31は、送受信方向と走査方向とを含む面(断層像が形成される面)に平行になるように設置されている。
【0105】
図9に示すように、穿刺針ガイド部31は、低減衰媒体6のスライス方向(走査方向に直交する方向)に沿った側面を通過し、低減衰媒体6のスライス方向に沿った側面から、先端部30a側の面(第2の面)にかけて設けられている。これにより、スライス方向に沿った側面に設置された入口31aから導入された穿刺針は、穿刺針ガイド部31内を通って、先端部30a側に設置された出口31bから超音波プローブ30の外部に案内される。また、穿刺針ガイド部31の出口31bは、送受信方向と走査方向とを含む面(断層像が形成される面)に平行な方向を向いている。このように、出口31bの向きが、断層像が形成される面と平行になっているため、断層像が形成される面に沿って穿刺針を生体内に刺入することが可能となる。
【0106】
なお、プローブ筐体7には、上述した第2実施形態と同様に、穿刺針ガイド部31の入口31aの位置に対応する位置に開口部(図示しない)が形成され、その開口部から穿刺針を出し入れすることが可能となっている。この第4実施形態では、プローブ筐体7の側面であって、スライス方向に沿った側面に開口部(図示しない)が形成されている。
【0107】
また、図10に示すように、穿刺針ガイド部32は、所定の曲率を持って曲がっていても良い。この穿刺針ガイド部32も、送受信方向と走査方向とを含む面(断層像が形成される面)に平行になるように設置されている。出口32b付近においては、穿刺針ガイド部32は先端部30aに対して直交するように形成されている。これにより、穿刺針を穿刺針ガイド部32の出口32bからほぼ垂直な状態で外部に導き出すことができ、その結果、穿刺針を被検体(生体)の体表に対してほぼ垂直な状態で刺入することが可能となる。
【0108】
(作用)
上記の構成を有する超音波プローブ30によると、上述した第2実施形態に係る超音波プローブ10と同じ作用及び効果を奏することが可能となる。つまり、超音波プローブ30によると、第1実施形態に係る超音波プローブ1と同じ作用及び効果を奏することが可能であり、さらに、体表に穿刺針を刺入する前の段階から穿刺針を超音波画像によって確認することができ、安全な穿刺術を施すことが可能となる。
【0109】
[第5の実施の形態]
次に、この発明の第5実施形態に係る超音波プローブの構成について、図11を参照して説明する。図11は、この発明の第5実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す正面図である。図11において、一部は内蔵されている各部を表す図である。第5実施形態では、第1実施形態と同様に、複数の超音波振動子が走査方向に1列に配列された、所謂1次元超音波プローブについて説明する。
【0110】
第5実施形態に係る超音波プローブ40は、上述した第2実施形態に係る超音波プローブ10と同様に、プローブ筐体7の内部に、背面材2、超音波振動子部3、音響整合層4、及び音響レンズ5を備えている。また、超音波プローブ40は、第2実施形態に係る低減衰媒体6の代わりに低減衰媒体41をプローブ筐体7の内部に備えている。低減衰媒体41には、第1実施形態における低減衰媒体6と同じ材料が用いられる。
【0111】
低減衰媒体41は、音響レンズ5に接する面が平面状に形成され、音響レンズ5に接する面の反対側の面(超音波プローブ40の先端側40aの面)が凸面となっている。また、低減衰媒体41の走査方向の幅が、音響レンズ5に接する面から先端部40a側に向けて徐々に広くなっている。これにより、低減衰媒体41はコンベックス状に形成されていることになり、超音波によるスキャンの形状を台形状とすることで、コンベックススキャンを可能としている。
【0112】
低減衰媒体41には、直線状の穿刺針ガイド部42が設置されている。この穿刺針ガイド部42は、第2実施形態の穿刺針ガイド部9と同様に金属又は樹脂によって形成され、両端部が開口して筒状の形状を有し、貫通孔として被検体(生体)に穿刺針を導入する。また、穿刺針ガイド部42は、送受信方向と走査方向とを含む面(断層像が形成される面)に平行になるように設置されている。
【0113】
穿刺針ガイド部42は、低減衰媒体41のスライス方向に沿った側面を通過し、低減衰媒体41のスライス方向に沿った側面から、先端部40a側の面(第2の面)にかけて設けられている。これにより、スライス方向に沿った側面に設置された入口42aから導入された穿刺針は、穿刺針ガイド部42内を通って、先端部40a側に設置された出口42bから超音波プローブ40の外部に案内される。また、穿刺針ガイド部42の出口42bは、送受信方向と走査方向とを含む面(断層像が形成される面)に平行な方向を向いている。このように、出口42bの向きが、断層像が形成される面と平行になっているため、断層像が形成される面に沿って穿刺針を生体内に刺入することが可能となる。
【0114】
なお、プローブ筐体7には、上述した第2実施形態と同様に、穿刺針ガイド部42の入口42aの位置に対応する位置に開口部(図示しない)が形成され、その開口部から穿刺針を出し入れすることが可能となっている。この第5実施形態では、プローブ筐体7の側面であって、スライス方向に沿った側面に開口部(図示しない)が形成されている。
【0115】
また、穿刺針ガイド部42は、所定の曲率を持って曲がっていても良い。この場合、出口42b付近においては、穿刺針ガイド部42は先端部40aに対して直交するように形成されている。これにより、穿刺針を穿刺針ガイド部42の出口42bからほぼ垂直な状態で外部に導き出すことができ、その結果、穿刺針を被検体(生体)の体表に対してほぼ垂直な状態で刺入することが可能となる。
【0116】
(作用)
上記の構成を有する超音波プローブ40によると、上述した第2実施形態に係る超音波プローブ10と同じ作用及び効果を奏することが可能となる。つまり、超音波プローブ40によると、第1実施形態に係る超音波プローブ1と同じ作用及び効果を奏することが可能であり、さらに、体表に穿刺針を刺入する前の段階から穿刺針を超音波画像によって確認することができ、安全な穿刺術を施すことが可能となる。
【0117】
また、低減衰媒体41に穿刺ガイド部42を設置しなくてもよい。この場合、超音波プローブ40によって取得される画像には、被検体との接触面から生体側が表される。
【0118】
[第6の実施の形態]
次に、この発明の第6実施形態に係る超音波プローブの構成について、図12を参照して説明する。図12は、この発明の第6実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す正面図である。図12において、一部は内蔵されている各部を表す図である。第6実施形態では、第1実施形態と同様に、複数の超音波振動子が走査方向に1列に配列された、所謂1次元超音波プローブについて説明する。
【0119】
第6実施形態に係る超音波プローブ50は、上述した第5実施形態に係る超音波プローブ40と同様に、コンベックス状に形成された低減衰媒体51を備えている。低減衰媒体51には、第2実施形態の低減衰媒体6と同様に、所定の曲率を持って曲げられている穿刺針ガイド部52が設置されている。そして、穿刺針ガイド部52の入口52a(他端)は、低減衰媒体51の走査方向に沿った面に形成されている。また、貫通孔52の出口52b(一端)は、低減衰媒体51の先端部50a側の面(第2の面)に形成され、送受信方向と走査方向とを含む面(断層像が形成される面)に平行な方向を向いている。このように、出口52bの向きが、断層像が形成される面と平行になっているため、入口52aから導入された穿刺針は、穿刺針ガイド部52内を通って出口52bから超音波プローブ50の外部に案内される。これにより、穿刺針は、断層像が形成される面に沿って生体内に刺入されることになる。
【0120】
プローブ筐体7には、穿刺針ガイド部52の入口52aの位置に対応する位置に開口部(図示しない)が形成され、その開口部から穿刺針を出し入れすることが可能となっている。この第6実施形態では、プローブ筐体7の側面であって、走査方向に沿った側面に開口部(図示しない)が形成されている。
【0121】
なお、低減衰媒体51には、第1実施形態における低減衰媒体6と同じ材料が用いられる。また、穿刺針ガイド部52は、第2実施形態と同様に、金属又は樹脂によって形成されている。
【0122】
(作用)
上記の構成を有する超音波プローブ50によると、上述した第2実施形態に係る超音波プローブ10と同じ作用及び効果を奏することが可能となる。つまり、超音波プローブ50によると、第1実施形態に係る超音波プローブ1と同じ作用及び効果を奏することが可能であり、さらに、体表に穿刺針を刺入する前の段階から穿刺針を超音波画像によって確認することができ、安全な穿刺術を施すことが可能となる。
【0123】
また、上述した第5実施形態に係る超音波プローブ40と同様に、低減衰媒体51がコンベックス状に形成されていることにより、超音波によるスキャンの形状を台形状とすることで、コンベックススキャンを行なうことができる。
【0124】
[第7の実施の形態]
次に、この発明の第7実施形態に係る超音波プローブの構成について、図13を参照して説明する。図13は、この発明の第7実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す斜視図である。図13には、超音波プローブのヘッド側が示されている。
【0125】
上述した第1実施形態から第6実施形態では、複数の超音波振動子が1列に配置された、所謂1次元超音波プローブについて説明した。この第7実施形態では、複数の超音波振動子が2次元的に配置された、所謂2次元超音波プローブについて説明する。
【0126】
第7実施形態に係る超音波プローブ60は、格子状に配置された複数の超音波振動子からなる超音波振動子部62を備えている。個々の超音波振動子の間には、溝部(隙間)が設けられ、複数の超音波振動子はその溝部の間隔をあけて2次元的に配列している。なお、図示しないが、超音波振動子部62の両面には電極が設置されている。また、超音波振動子部62の下面と音響整合層63の上面から信号を引き出してもよい。
【0127】
超音波振動子部62の一方の面には、音響整合層63が設けられ、反対側の面には背面材61が設けられている。音響整合層63は、超音波振動子部62と同様に、溝部によって分割されている。また、1層の音響整合層63が設けられているが、2層以上の音響整合層が設けられていても良い。
【0128】
さらに、第7実施形態に係る超音波プローブ60では、音響整合層63上に低減衰媒体64が設けられている。低減衰媒体64には、第1実施形態における低減衰媒体6と同じ材料が用いられる。
【0129】
そして、背面材61、超音波振動子部62、音響整合層63、及び低減衰媒体64は、プローブ筐体(図示しない)に格納されている。このとき、低減衰媒体64は、超音波プローブ60の先端部側(被検体との接触面側)に配置されるようにプローブ筐体内に格納されている。
【0130】
上記の構成とすることで、超音波振動子部62から送信された超音波は、低減衰媒体64を介して超音波プローブ60の外部に照射される。そして、被検体からの反射波は、低減衰媒体64を介して超音波プローブ60内に入射し、その後、超音波振動子部62にて受信される。
【0131】
低減衰媒体64は、立方体又は直方体の形状を有している。また、低減衰媒体64の送受信方向における厚さは、第1実施形態と同様に、超音波振動子部62の音場分布の特性に基づいて決定することが望ましい。低減衰媒体64の厚さdを、超音波の音場が安定する距離以上の厚さにすることが望ましい。
【0132】
また、第1実施形態と同様に、低減衰媒体64の厚さdを調整することで、超音波のスライス方向におけるフォーカス位置を、超音波プローブ60の外部に形成することができる。そのことにより、超音波のスライス方向におけるフォーカス位置を、被検体(生体)内に形成することが可能となり、被検体(生体)内の明瞭な画像を得ることが可能となる。
【0133】
(作用)
上記の構成を有する超音波プローブ60によると、第1実施形態に係る超音波プローブ1と同様の作用及び効果を奏することが可能となる。つまり、(1)生体表面付近において明瞭な画像が得られる。(2)超音波プローブ60の感度を増加させることが可能となる。(3)生体表面付近からも高調波成分を含む超音波を受信することができ、その結果、生体表面付近において分解能が高い高精細な画像が得られる。(4)超音波の送信出力レベルを従来技術に係る超音波プローブと等しくした場合、従来技術に比べて超音波プローブ60の先端部側(被検体との接触面側)の温度を低くすることができる。これにより、被検体との接触面の温度を、従来技術に係る超音波プローブにおける接触面の温度以下、又は同程度の温度に維持しつつ、超音波の送信出力レベルを高めることが可能となる。そのことにより、被検体(生体)において、より深部まで超音波を送信することが可能となる。
【0134】
[第8の実施の形態]
次に、この発明の第8実施形態に係る超音波プローブの構成について、図14を参照して説明する。図14は、この発明の第8実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す斜視図である。図14には、超音波プローブのヘッド側が示されている。この第8実施形態では、第7実施形態と同様に、複数の超音波振動子が2次元的に配置された、所謂2次元超音波プローブについて説明する。
【0135】
第8実施形態に係る超音波プローブ70は、上述した第7実施形態に係る超音波プローブ60と同様に、複数の超音波振動子が2次元的に配置された超音波振動子部62、背面材61、及び音響整合層63を備えている。そして、音響整合層63の上に低減衰媒体71が設けられている。低減衰媒体71には、第1実施形態における低減衰媒体6と同じ材料が用いられる。
【0136】
そして、背面材61、超音波振動子部62、音響整合層63、及び低減衰媒体71は、プローブ筐体(図示しない)に格納されている。低減衰媒体71は、超音波プローブ70の先端部側(被検体との接触面側)に配置されるようにプローブ筐体内に格納されている。
【0137】
以上の構成とすることで、超音波振動子部62から送信された超音波は、低減衰媒体71を介して超音波プローブ70の外部に照射される。そして、被検体からの反射波は、低減衰媒体71を介して超音波プローブ70内に入射し、その後、超音波振動子部62にて受信される。
【0138】
低減衰媒体71は、超音波プローブ70の先端部側(被検体との接触面側)に向かって徐々に広がった形状を有している。換言すると、低減衰媒体71の送受信方向に直交する断面の面積は、超音波振動子部62から離れる方向(送受信方向)に向かって、徐々に大きくなるように形成されている。そして、低減衰媒体71は、音響整合層63と接する面(第1の面)の面積が最も小さくなるように形成され、送受信方向に向かって徐々に断面積が大きくなり、第1の面の反対側の面(超音波プローブ70の先端部側の面(第2の面))の面積が最も大きくなるように形成されている。
【0139】
また、低減衰媒体71の送受信方向における厚さは、第1実施形態と同様に、超音波振動子部62の音場分布の特性に基づいて決定することが望ましい。低減衰媒体71の厚さdを、超音波の音場が安定する距離以上の厚さにすることが望ましい。
【0140】
また、第1実施形態と同様に、低減衰媒体71の厚さdを調整することで、超音波のスライス方向におけるフォーカス位置を、超音波プローブ70の外部に形成することができる。そのことにより、超音波のスライス方向におけるフォーカス位置を、被検体(生体)内に形成することが可能となり、被検体(生体)内の明瞭な画像を得ることが可能となる。
【0141】
なお、超音波プローブ70の先端部側(被検体との接触面側)が凸型であってもよい。
【0142】
(作用)
上記の構成を有する超音波プローブ70によると、第7実施形態に係る超音波プローブ60と同じ作用及び効果を奏することが可能となる。
【0143】
さらに、第8実施形態に係る超音波プローブ70によると、低減衰媒体71が超音波プローブ70の先端部側(被検体との接触面側)に向かって徐々に広がっているため、送受信される超音波の経路を低減衰媒体71に含ませることが可能となる。
【0144】
[第9の実施の形態]
次に、この発明の第9実施形態に係る超音波プローブの構成について、図15を参照して説明する。図15は、この発明の第9実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す斜視図である。図15には、超音波プローブのヘッド側が示されている。この第9実施形態では、第7実施形態と同様に、複数の超音波振動子が2次元的に配置された、所謂2次元超音波プローブについて説明する。
【0145】
第9実施形態では、第7実施形態に係る超音波プローブ60の低減衰媒体に穿刺針ガイド部を設けた。具体的には、第9実施形態に係る超音波プローブ80は、第7実施形態に係る超音波プローブ60と同様に、背面材61、超音波振動子部62、及び音響整合層63を備えている。また、音響整合層63上に低減衰媒体81が設けられている。
【0146】
そして、背面材61、超音波振動子部62、音響整合層63、及び低減衰媒体81は、プローブ筐体(図示しない)に格納されている。このとき、低減衰媒体81は、超音波プローブ80の先端部側(被検体との接触面側)に配置されるようにプローブ筐体内に格納されている。
【0147】
低減衰媒体81は、立方体又は直方体の形状を有している。また、低減衰媒体81の送受信方向における厚さは、第1実施形態と同様に、超音波振動子部62の音場分布の特性に基づいて決定することが望ましい。低減衰媒体81の厚さdを、超音波の音場が安定する距離以上の厚さにすることが望ましい。
【0148】
さらに、低減衰媒体81には、穿刺針を被検体(生体)に案内するための穿刺針ガイド部82が設置されている。この穿刺針ガイド部82は両端部が開口して筒状の形状を有し、貫通孔として被検体(生体)に穿刺針を案内する。この穿刺針ガイド部82は所定の曲率を持って曲げられており、低減衰媒体81の側面から、超音波プローブ60の先端部側(被検体との接触面側)にかけて設けられている。
【0149】
穿刺ガイド部82の入口82a(他端)は、低減衰媒体81の側面に形成されている。また、穿刺ガイド部82の出口82b(一端)は、低減衰媒体81の先端部側の面に形成されている。これにより、入口82aから導入された穿刺針は、穿刺針ガイド部82内を通って出口82bから超音波プローブ80の外部に案内される。
【0150】
また、この第9実施形態では、穿刺針ガイド部82の出口82bの向きは、超音波プローブ80の先端部に対して直交している。これにより、穿刺針を穿刺針ガイド部82の出口82bからほぼ垂直な状態で外部に案内することができ、その結果、穿刺針を被検体(生体)の体表に対してほぼ垂直な状態で刺入することが可能となる。
【0151】
この第9実施形態では、穿刺針ガイド部82の出口82bの向きを、超音波プローブ80の先端部に対して直交させているが、先端部に対して斜めに形成されていても良い。
なお、低減衰媒体81には、第1実施形態における低減衰媒体6と同じ材料が用いられる。また、穿刺針ガイド部82は、第2実施形態と同様に、金属又は樹脂によって形成されている。
【0152】
また、第9実施形態では、穿刺針ガイド部82は所定の曲率を持って曲げられているが、直線状に形成さていても良い。
【0153】
(作用)
上記の構成を有する超音波プローブ80によると、第7実施形態に係る超音波プローブ60と同じ作用及び効果を奏することが可能となる。さらに、第9実施形態に係る超音波プローブ80によると、体表に穿刺針を刺入する前の段階から穿刺針を超音波画像によって確認することができ、安全な穿刺術を施すことが可能となる。
【0154】
[第10の実施の形態]
次に、この発明の第10実施形態に係る超音波プローブの構成について、図16を参照して説明する。図16は、この発明の第10実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す斜視図である。図16には、超音波プローブのヘッド側が示されている。この第10実施形態では、第7実施形態と同様に、複数の超音波振動子が2次元的に配置された、所謂2次元超音波プローブについて説明する。
【0155】
第10実施形態では、第8実施形態に係る超音波プローブ70の低減衰媒体に穿刺針ガイド部を設けた。具体的には、第10実施形態に係る超音波プローブ90は、第8実施形態に係る超音波プローブ70と同様に、背面材61、超音波振動子部62、及び音響整合層63を備えている。また、音響整合層63上に低減衰媒体91が設けられている。そして、背面材61、超音波振動子部62、音響整合層63、及び低減衰媒体91は、プローブ筐体(図示しない)に格納されている。このとき、低減衰媒体91は、超音波プローブ90の先端部側(被検体との接触面側)に配置されるようにプローブ筐体内に格納されている。
【0156】
低減衰媒体91は、第8実施形態と同様に、超音波プローブ90の先端部側(被検体との接触面側)に向かって徐々に広がった形状を有している。換言すると、低減衰媒体91の送受信方向に直交する断面積は、超音波振動子部62から離れる方向(送受信方向)に向かって、徐々に大きくなるように形成されている。また、低減衰媒体91の送受信方向における厚さは、第1実施形態と同様に、超音波振動子部62の音場分布の特性に基づいて決定することが望ましい。低減衰媒体91の厚さdを、超音波の音場が安定する距離以上の厚さにすることが望ましい。
【0157】
さらに、低減衰媒体91には、穿刺針を被検体(生体)に案内するための穿刺針ガイド部92が設置されている。この穿刺針ガイド部92は両端部が開口して筒状の形状を有し、貫通孔として被検体(生体)に穿刺針を案内する。この穿刺針ガイド部92は所定の曲率を持って曲げられており、低減衰媒体91の側面から、超音波プローブ90の先端部側(被検体との接触面側)にかけて設けられている。
【0158】
穿刺針ガイド部92の入口92a(他端)は、低減衰媒体91の側面に形成されている。また、穿刺針ガイド部92の出口92b(一端)は、低減衰媒体91の先端部側の面に形成されている。これにより、入口92aから導入された穿刺針は、穿刺針ガイド部92内を通って出口92bから超音波プローブ90の外部に案内される。
【0159】
また、第10実施形態では、穿刺針ガイド部92の出口92bの向きは、超音波プローブ90の先端部に対して直交している。これにより、穿刺針を穿刺針ガイド部92の出口92bからほぼ垂直な状態で外部に案内することができ、その結果、穿刺針を被検体(生体)の体表に対してほぼ垂直な状態で刺入することが可能となる。
【0160】
この第10実施形態では、穿刺針ガイド部92の出口92bの向きを、超音波プローブ90の先端部に対して直交させているが、先端部に対して斜めに形成されていても良い。
【0161】
なお、低減衰媒体91には、第1実施形態における低減衰媒体6と同じ材料が用いられる。また、穿刺針ガイド部92は、第2実施形態と同様に、金属又は樹脂によって形成されている。
【0162】
また、第10実施形態では、穿刺針ガイド部92は所定の曲率を持って曲げられているが、直線状に形成さていても良い。
【0163】
(作用)
上記の構成を有する超音波プローブ90によると、第8実施形態に係る超音波プローブ90と同じ作用及び効果を奏することが可能となる。
【0164】
さらに、体表に穿刺針を刺入する前の段階から穿刺針を超音波画像によって確認することが可能となる。
【0165】
[第11の実施の形態]
(超音波診断装置)
次に、この発明の第11実施形態として、上述した実施形態に係る超音波プローブを備えた超音波診断装置について、図17を参照して説明する。図17は、この発明の第11実施形態に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【0166】
この第11実施形態に係る超音波診断装置100は、主に、超音波プローブ1、送受信部101、信号処理部102、DSC103、画像処理部104、表示部105及び制御部106を備えて構成されている。
【0167】
超音波プローブ1には、上述した低減衰媒体6が設置された超音波プローブが用いられる。ここでは、第1実施形態に係る超音波プローブ1を用いているが、第2実施形態から第10実施形態に係る超音波プローブのいずれかを用いても良い。
【0168】
送受信部101は送信部と受信部を備え、超音波プローブ1に電気信号を供給して超音波を発生させるとともに、超音波プローブ1が受信したエコー信号を受信する。
【0169】
送受信部101の送信部は、図示しないクロック(clock)発生回路、送信遅延回路、及びパルサ(pulsar)回路を備えている。クロック発生回路は、超音波信号の送信タイミング(timing)や送信周波数を決めるクロック信号を発生する回路である。送信遅延回路は、超音波の送信時に遅延を掛けて送信フォーカス(focus)を実施する回路である。パルサ回路は、各超音波振動子に対応した個別経路(チャンネル)(channel)の数のパルサを内蔵し、遅延が掛けられた送信タイミングで駆動パルスを発生し、超音波プローブ1の各超音波振動子に供給するようになっている。
【0170】
送受信部101の受信部は、図示しないプリアンプ(preamplifier)回路、A/D変換回路、及び受信遅延・加算回路を備えている。プリアンプ回路は、超音波プローブ1の各超音波振動子から出力されるエコー信号を受信チャンネルごとに増幅する。A/D変換回路は、増幅されたエコー信号をA/D変換する。受信遅延・加算回路は、A/D変換後のエコー信号に対して受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、加算する。その加算により、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。なお、この送受信部101によって加算処理された信号を「RFデータ」と称する。
【0171】
また、送受信部101は、規格(IEC60601−2−37)に従って、超音波プローブ1の先端部1a(被検体との接触面)の温度が、30℃〜50℃の範囲内となる送信出力レベルで、超音波プローブ1に超音波を送信させることが望ましい。
【0172】
信号処理部102は、公知のBモード処理回路、ドプラ処理回路又はカラーモード処理回路を備えている。送受信部101から出力されたデータはいずれかの処理回路にて所定の処理を施される。Bモード処理回路はエコーの振幅情報の映像化を行い、エコー信号からBモードラスタデータ(B−mode raster data)を生成する。具体的には、Bモード処理回路は、RFデータに対してバンドパスフィルタ(band−pass filter)処理を行い、その後、出力信号の包絡線を検波し、検波されたデータに対して対数変換による圧縮処理を施す。
【0173】
ドプラ処理回路はドプラ偏移周波数成分を取り出し、更にFFT処理等を施して血流情報を有するデータを生成する。
【0174】
カラーモード処理回路は、動いている血流情報の映像化を行い、カラーラスタデータ(color raster data)を生成する。血流情報には、速度、分散、パワー等の情報があり、血流情報は2値化情報として得られる。具体的には、カラーモード処理回路は、位相検波回路、MTIフィルタ(MTI filter)、自己相関器、及び流速・分散演算器を備えている。このカラーモード処理回路は、組織信号と血流信号とを分離するためのハイパスフィルタ(high−pass filter)処理(MTIフィルタ処理)を行い、自己相関処理により血流の移動速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。
【0175】
DSC103(Digital Scan Converter)は、直交座標系で表される画像を得るために、超音波ラスタデータを直交座標で表されるデータに変換する(スキャンコンバージョン処理)。例えば、Bモード処理回路から出力されたデータに対してスキャンコンバージョン処理が施されると、被検体の組織形状を2次元情報として表す断層像データが生成される。また、DSC103は、断層像データをリサンプリング処理することで、ボクセルデータを生成することもできる。
【0176】
画像処理部104は、例えば、ボクセルデータに対してボリュームレンダリング(Volume Rendering)処理やMPR処理(Multi Plannar Reconstruction)などの画像処理を施すことにより、3次元画像データやMPR画像データ(任意断面の画像データ)などの超音波画像データを生成する。
【0177】
表示部105は、CRTや液晶ディスプレイ(display)などのモニタ(monitor)で構成され、そのモニタ画面上に断層像、3次元画像又は血流情報などの超音波画像を表示する。
【0178】
制御部106は、超音波診断装置100の各部を制御する。ROM、RAM、HDDなどの記憶部(図示しない)には、画像データ、各種設定条件及び制御プログラム(program)などが記憶されている。制御部106は超音波診断装置100の各部に接続されて、超音波診断装置100の各部を制御する。制御部106は例えばCPUで構成され、記憶部に記憶されている超音波診断装置の制御プログラムを実行することにより、各部の制御を行なう。
【0179】
また、超音波診断装置100には、超音波の送受信条件などに関する各種設定を入力するための操作部(図示しない)が備えられている。この操作部は、ジョイスティック(joystick)やトラックボール(trackball)などのポインティングデバイス(pointing device)、スイッチ(switch)、各種ボタン(button)、キーボード(keyboard)又はTCS(Touch Command Screen)などで構成されている。この操作部で入力された情報は制御部106に送られ、制御部106はその情報に従って超音波診断装置100の各部の制御を行なう。
【0180】
(作用)
第11実施形態に係る超音波診断装置100によれば、この発明の第1実施形態から第10実施形態のいずれかに係る超音波プローブを備えているため、生体接触面付近において均一で安定した音場を形成することができ、その結果、生体表面付近の明瞭な画像を得ることができる。さらに、穿刺針ガイド部を有する超音波プローブを備えることにより、体表に穿刺針を刺入する前の段階から穿刺針を超音波画像によって認識することができる。その結果、安全な穿刺術を施すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は側面図である。
【図2】この発明の第1の実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す斜視図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係る超音波プローブにより送信又は受信される超音波の音場分布を示す図であり、走査方向から超音波プローブを見た図である。
【図4】この発明の第2の実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す図であり、図4(a)は正面図、図4(b)は側面図である。
【図5】この発明の第2実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す斜視図である。
【図6】この発明の第3実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す正面図である。
【図7】この発明の第3実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す斜視図である。
【図8】この発明の第4実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す正面図である。
【図9】この発明の第4実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す斜視図である。
【図10】この発明の第4実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す斜視図である。
【図11】この発明の第5実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す正面図である。
【図12】この発明の第6実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す正面図である。
【図13】この発明の第7実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す斜視図である。
【図14】この発明の第8実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す斜視図である。
【図15】この発明の第9実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す斜視図である。
【図16】この発明の第10実施形態に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す斜視図である。
【図17】この発明の第11実施形態に係る超音波画像取得装置の概略構成を示すブロック図である。
【図18】従来技術に係る超音波プローブのヘッド側の概略構成を示す斜視図である。
【図19】従来技術に係る超音波プローブにより送信又は受信される超音波の音場分布を示す図である。
【符号の説明】
【0182】
1、10、20、30、40、50、60、70、80、90 超音波プローブ
1a、10a、20a、30a、40a、50a 先端部
2、61 背面材
3、62 超音波振動子部
4、63 音響整合層
5 音響レンズ
6、41、51、64、71、81、91 低減衰媒体(音響カプラ)
7 プローブ筐体(ケース)
8 保護膜
9、31、32、42、52、82、92 穿刺針ガイド部
21 嵌合部材
9a、31a、42a、52a、82a、92a 入口
9b、31b、32b、42b、52b、82b、92b 出口
22a、22b 凸部
23 切欠け部
24a、24b 凹部
100 超音波診断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の超音波振動子が配置されて、超音波を被検体に対して送信し、前記被検体からの反射波を受信する超音波振動子部と、
低減衰媒体と、
前記低減衰媒体を前記被検体との接触面側にして、前記低減衰媒体と前記超音波振動子部を内部に格納するプローブ筐体と、
を備え、
前記超音波振動子部は、前記低減衰媒体を介して前記被検体に対して超音波を送信し、前記被検体からの反射波を受信することを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
超音波を集束させる集束手段を更に有し、
前記超音波振動子部は、前記複数の超音波振動子が走査方向に列設されて、超音波を前記被検体に送信し、前記被検体からの反射波を受信し、
前記集束手段は、前記送信及び受信される超音波を前記走査方向に直交するスライス方向に集束させ、
前記プローブ筐体は、前記低減衰媒体を前記被検体との接触面側にして、前記低減衰媒体、前記集束手段、及び前記超音波振動子部の順番に配置して、それらを内部に格納することを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記低減衰媒体に設けられ、穿刺針を前記被検体内に案内するための穿刺針ガイド部を更に有することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記低減衰媒体に設けられ、穿刺針を前記送信の方向と前記走査方向とを含む面に平行にして前記被検体内に案内するための穿刺針ガイド部を更に有することを特徴とする請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記穿刺針ガイド部は、前記穿刺針が、前記走査方向に直交する方向であって前記スライス方向にも直交する方向に案内されるように設置されていることを特徴とする請求項4に記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記穿刺針ガイド部は、前記低減衰媒体の前記接触面側において、前記スライス方向の略中心の位置に設置されていることを特徴とする請求項4又は請求項5のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項7】
前記穿刺針ガイド部は、前記送信の方向と前記走査方向とを含む面に平行になるように設置されていることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項8】
前記穿刺針ガイド部は、前記低減衰媒体の側面から、前記低減衰媒体の前記接触面側にかけて設置されていることを特徴とする請求項3から請求項7のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項9】
前記低減衰媒体には切欠き状の凹部が形成され、
前記穿刺針ガイド部は、前記凹部と嵌合する嵌合部材に設けられ、
前記嵌合部材が前記凹部と嵌合することで、前記穿刺針ガイド部が前記低減衰媒体に設置されることを特徴とする請求項3から請求項8のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項10】
前記低減衰媒体は、前記接触面側の面が凸面となっており、前記走査方向の幅が前記集束手段と接する面から前記接触面側に向かって徐々に広くなっていることを特徴とする請求項4から請求項9のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項11】
前記低減衰媒体は、前記接触面側の面がコンベックス形状になっていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項12】
前記被検体との接触面側の先端の位置が、超音波のフォーカス位置とほぼ等しいことを特徴とする請求項1から請求項12のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項13】
前記低減衰媒体は前記接触面側に向かって先細り状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項9、又は請求項12のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項14】
前記低減衰媒体は、前記集束手段に向かう第1の面の面積が、前記第1の面の反対側の第2の面の面積より大きいことを特徴とする請求項2から請求項9、又は請求項12のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項15】
前記低減衰媒体は、前記スライス方向の幅が前記接触面側に向かって徐々に狭くなっていることを特徴とする請求項2から請求項9、又は請求項12のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項16】
前記低減衰媒体の超音波の減衰率が、0.2[dB/mm・MHz]以下であることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項17】
前記低減衰媒体は固体であることを特徴とする請求項1から請求項16のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項18】
前記低減衰媒体は樹脂を含んで構成されていることを特徴とする請求項1から請求項17のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項19】
複数の超音波振動子が走査方向に列設されて、超音波を被検体に対して送信し、前記被検体からの反射波を受信する超音波振動子部と、
前記送信及び受信される超音波を前記走査方向に直交するスライス方向に集束させる集束手段と、
前記被検体との接触面側に向かって先細り状に形成された固体状の低減衰媒体と、
前記低減衰媒体を前記被検体との接触面側にして、前記低減衰媒体、前記集束手段、及び前記超音波振動子部の順番で配置して、それらを内部に格納するプローブ筐体と、
を備え、
前記超音波振動子部は、前記低減衰媒体を介して前記被検体に対して超音波を送信し、前記被検体からの反射波を受信し、
前記被検体との接触面側の先端の位置は、超音波のフォーカス位置とほぼ等しいことを特徴とする超音波プローブ。
【請求項20】
前記低減衰媒体に設けられ、穿刺針を前記送信の方向と前記走査方向とを含む面に平行にして前記被検体内に案内するための穿刺針ガイド部を更に有することを特徴とする請求項19に記載の超音波プローブ。
【請求項21】
複数の超音波振動子が配置されて、超音波を被検体に対して送信し、前記被検体からの反射波を受信する超音波振動子部と、低減衰媒体と、前記低減衰媒体を前記被検体との接触面側にして、前記低減衰媒体と前記超音波振動子部を内部に格納するプローブ筐体と、を備え、前記超音波振動子部は、前記低減衰媒体を介して前記被検体に対して超音波を送信し、前記被検体からの反射波を受信する超音波プローブと、
前記超音波プローブに超音波を送信させて、前記超音波プローブが受信した反射波を受信する送受信部と、
前記送受信部からの出力に基づいて超音波画像データを生成する画像データ生成部と、
を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項22】
前記低減衰媒体に設けられ、穿刺針を前記被検体内に案内するための穿刺針ガイド部を更に有することを特徴とする請求項21に記載の超音波診断装置。
【請求項23】
前記送受信部は、前記被検体との接触面側の温度が30℃〜50℃の範囲内となる送信出力レベルで、前記超音波プローブに超音波を送信させることを特徴とする請求項21又は請求項22のいずれかに記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−581(P2008−581A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306374(P2006−306374)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】