説明

超音波プローブ及び超音波診断装置

【課題】診断や治療に係る手技の効率を向上させることができる超音波プローブを提供すること。
【解決手段】実施の形態の超音波プローブにおいては、第1の超音波トランスデューサアレイは、第1の走査面を走査する。第2の超音波トランスデューサアレイは、第1の超音波トランスデューサアレイと係合し、且つ第1の超音波トランスデューサアレイと交差して設けられ、第1の走査面とは異なる第2の走査面を走査する。プローブ本体は、第1の超音波トランスデューサアレイと前記第2の超音波トランスデューサアレイとが設けられ、各超音波トランスデューサアレイが交差する位置に開口部を有し、当該開口部に通じる貫通孔を有する。第1及び第2の超音波トランスデューサアレイを係合する係合部は、第1の超音波トランスデューサアレイと第2の超音波トランスデューサアレイとが交差する角度を変更可能に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、超音波プローブ及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブに設けられた振動素子から発生する超音波パルスを被検体内に放射し、被検体組織の音響インピーダンスの差異によって生ずる超音波反射波を前記振動素子により受信して生体情報を収集するものである。また、超音波診断装置は、超音波プローブを接触させるだけの簡単な操作で超音波画像データのリアルタイム表示が可能となるため、各種臓器の形態診断や機能診断などに広く用いられている。
【0003】
例えば、超音波診断装置は、生体組織検査やラジオ波焼灼治療(RFA:Radio Frequency Ablation)などの穿刺が行なわれる場合に多く用いられる。生体組織検査のために組織採取を行う場合には、医師は、ターゲットとなる病変をリアルタイムで超音波画像により確認しながら、穿刺針を体内に刺し、組織採取を行う。また、RFAを行う場合には、医師は、ターゲットとなる病変をリアルタイムで超音波画像により確認しながら、RFA針を病変部位まで刺し、その後、RFA針からラジオ波を照射する。
【0004】
例えば、このような超音波診断装置を用いた手技では、穿刺針やRFA針を正確に把握するために、アタッチメントにより穿刺針の進入範囲を限定したり、2Dアレイプローブ(two dimensional array probe)や、メカニカル4Dプローブ(mechanical four dimensional probe)を用いて収集した3次元データを用いて穿刺針及びターゲット部位の位置を特定したりする。しかしながら、上述した従来技術においては、診断や治療に係る手技の効率が低下する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−323669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、診断や治療に係る手技の効率を向上させることができる超音波プローブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態の超音波プローブは、第1の超音波トランスデューサアレイと、第2の超音波トランスデューサアレイと、プローブ本体とを備える。第1の超音波トランスデューサアレイは、第1の走査面を走査する。第2の超音波トランスデューサアレイは、前記第1の超音波トランスデューサアレイと係合し、且つ前記第1の超音波トランスデューサアレイと交差して設けられ、前記第1の走査面とは異なる第2の走査面を走査する。プローブ本体は、前記第1の超音波トランスデューサアレイと前記第2の超音波トランスデューサアレイとが設けられ、各超音波トランスデューサアレイが交差する位置に開口部を有し、当該開口部に通じる貫通孔を有する。前記第1及び第2の超音波トランスデューサアレイを係合する係合部は、前記第1の超音波トランスデューサアレイと前記第2の超音波トランスデューサアレイとが交差する角度を変更可能に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本実施形態に係る超音波プローブの外観を示す図である。
【図2A】図2Aは、図1に示す超音波プローブの水平方向における断面図を示す図である。
【図2B】図2Bは、図2Aに示すa―b間の断面図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る超音波プローブに対する穿刺針の装着の一例を示す図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る超音波プローブを用いて穿刺を行った場合に観察される画像を示す図である。
【図5】図5は、本実施例に係る振動機構の一例を示す図である。
【図6A】図6Aは、本実施形態に係る超音波トランスデューサアレイ間の角度変更を説明するための図である。
【図6B】図6Bは、本実施形態に係る角度検出を説明するための図である。
【図6C】図6Cは、本実施形態に係る角度情報の表示例を示す図である。
【図7】図7は、本実施形態に係る医療デバイスの利用の一例を説明するための図である。
【図8】図8は、本実施形態に係る組み立て式超音波プローブの一例を示す図である。
【図9A】図9Aは、本実施形態に係る組み立て式超音波プローブの変形例を示す図である。
【図9B】図9Bは、本実施形態に係る組み立て式超音波プローブの変形例を示す図である。
【図10A】図10Aは、本実施形態に係る超音波プローブの角度制御の一例を説明するための図である。
【図10B】図10Bは、本実施形態に係る超音波プローブの角度制御の一例を説明するための図である。
【図10C】図10Cは、図10A及び図10Bに示す角度でスキャンされた場合のそれぞれの画像の一例を示す図である。
【図11】図11は、本実施形態に係る超音波プローブによってスキャンされた画像の表示例を示す図である。
【図12】図12は、本実施例に係る超音波診断装置の全体構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
図1を用いて、本実施形態に係る超音波プローブ1の外観を説明する。図1は、本実施形態に係る超音波プローブ1の外観を示す図である。本実施形態に係る超音波プローブ1は、図1に示すように、プローブ本体11と、ケーブル12とを有する。
【0010】
ケーブル12は、超音波プローブ1と超音波診断装置との間で電気信号を送受信する。プローブ本体11は、第1の超音波トランスデューサアレイと第2の超音波トランスデューサアレイとが設けられ、各超音波トランスデューサアレイが交差する位置に開口部を有し、当該開口部に通じる貫通孔を有する。例えば、図1に示すように、プローブ本体11は、第1の超音波トランスデューサアレイ13aと第2の超音波トランスデューサアレイ13bとが設けられ、各超音波トランスデューサアレイが交差する位置に開口部14bを有し、当該開口部14bに通じる貫通孔を有する。すなわち、プローブ本体11は、開口部14aから開口部14bに通じる貫通孔を有する。
【0011】
第1の超音波トランスデューサアレイ13aは、第1の走査面を走査する。具体的には、第1の超音波トランスデューサアレイ13aは、電気信号を超音波に変換し、変換した超音波を被検体に対して送波する。また、第1の超音波トランスデューサアレイ13aは、反射波を受波し、受波した超音波を電気信号に変換する。ここで、第1の超音波トランスデューサアレイ13aは、図1に示す超音波プローブ1の水平方向に配列されたコンベックストランスデューサアレイ(convex transducer array)である。
【0012】
第2の超音波トランスデューサアレイ13bは、第1の超音波トランスデューサアレイ13aと交差して設けられ、第1の走査面とは異なる第2の走査面を走査する。具体的には、第2の超音波トランスデューサアレイ13bは、電気信号を超音波に変換し、変換した超音波を被検体に対して送波する。また、第2の超音波トランスデューサアレイ13bは、反射波を受波し、受波した超音波を電気信号に変換する。ここで、第2の超音波トランスデューサアレイ13bは、図1に示す超音波プローブ1の垂直方向に配列されたコンベックストランスデューサアレイである。すなわち、第1の実施形態に係る超音波プローブ1は、異なる走査面を走査するための2つの超音波トランスデューサアレイが配置されたバイプレーンプローブ(biplane probe)である。
【0013】
ここで、プローブ本体11は、貫通孔を介して開口部から進出する医療デバイスの進行方向を決定する。図2Aは、図1に示す超音波プローブ1の水平方向における断面図を示す図である。図2Aに示すように、プローブ本体11は、開口部14aから開口部14bにかけて、貫通孔を備える。プローブ本体11は、貫通孔により医療デバイスが装着される。具体的には、プローブ本体11は、穿刺針や、RFA針などが装着される。
【0014】
ここで、プローブ本体11に設けられた貫通孔においては、図2Aに示すように、開口部14a側の貫通孔16は、直径が大きく、開口部14b側の貫通孔17は、直径が小さい。貫通孔16は、開口部14aから穿刺針や、RFA針などが挿入されたり、後述する振動装置などが設置されたりするために直径が大きく設計される。一方、貫通孔17は、開口部14aから挿入される針に適合する直径を有し、針の左右方向のブレを抑止することで、針の進行方向を限定する。また、第1の超音波トランスデューサアレイ13aであるコンベックストランスデューサアレイ15aを貫通する貫通孔は直径の小さい貫通孔17である。これは、コンベックストランスデューサアレイ15aにて走査される超音波に対する貫通孔の影響を少なくするためである。
【0015】
例えば、コンベックストランスデューサアレイ15aにおいては、音響レンズと、音響整合層と、FPC(Flexible Printed Circuits)と、圧電振動子と、背面材(バッキング材)とが備えられている。音響レンズは、超音波を収束させる。音響整合層は、圧電振動子と被検体との間の音響インピーダンスの不整合を緩和する。FPCは、圧電振動子と電気信号を送受信する。
【0016】
圧電振動子は、装置本体から供給される送信信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を受信して受信信号を生成する。圧電振動子は、複数の圧電振動子から構成されており、圧電振動子それぞれが、超音波を発生し、受信信号を生成する。背面材は、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止する。
【0017】
図2Bは、図2Aに示すa―b間の断面図である。図2Bに示すように、本実施形態に係るプローブ本体11においては、コンベックストランスデューサアレイ15a及び15bが交差し、それらに対して貫通孔17が形成されるため、貫通孔の影響を少なくすることが重要である。
【0018】
例えば、貫通孔17を穿刺針の直径と同程度にすることで、超音波トランスデューサアレイに対する影響を少なくすることができる。なお、貫通孔が形成された領域で発生するはずであった超音波に関しては、周囲の圧電素子により補完することが可能である。
【0019】
図3は、本実施形態に係る超音波プローブ1に対する穿刺針の装着の一例を示す図である。例えば、図3に示すように、本実施形態に係る超音波プローブ1においては、穿刺針18は、開口部14aから挿入され、開口部14bから進出される。すなわち、本実施形態に係る超音波プローブ1においては、穿刺針18が超音波トランスデューサアレイ13a及び超音波トランスデューサアレイ13bの両方に対して直交するように進行する。
【0020】
ここで、従来技術における課題について説明する。上述したように、従来技術においては、穿刺針やRFA針を正確に把握するために、アタッチメントにより穿刺針の進入範囲を限定したり、2Dアレイプローブや、メカニカル4Dプローブを用いて収集した3次元データを用いて穿刺針及びターゲット部位の位置を特定したりする。
【0021】
アタッチメントは、プローブの観察断面の位置と合わせて、針の刺し口の口径、長さ、方向などで針の進路を限定する。それにより、針の状態を常にひとつの断面像上に描出させることが可能となる。しかしながら、アタッチメントをプローブに装着することは、プローブの操作に影響を及ぼすこととなる。
【0022】
さらに、アタッチメントを装着して、メカニカル4Dプローブ、或いは、2Dアレイプローブにより穿刺領域を含む三次元データを取得し、針の位置を算出する方法においては、以下のような問題がある。すなわち、ひとつの断面像(例えば、A面)は、アタッチメントを装着することにより特定することが可能であるが、もうひとつの断面像(例えば、B面)を取得するために、自動調整、或いは、手動調整を行うこととなる。自動調整や、手動調整を行う場合には、装置性能により針進路のリアルタイム観察に、遅延及びフレームレートの低下が生じる場合がある。
【0023】
さらに、操作者の手動調整よりB面を直接取得することが可能であるが、操作者の手技に依存することとなる。プローブと針の位置関係によっては、面像を補間で生成することも可能であるが、画像が荒くなって、A面と比較して画質低下になることもある。そのうえ、プローブとそれを支える診断装置も高価で、一般のクリニックの導入は困難である。
【0024】
また、既存の穿刺においては、穿刺針が超音波プローブの方向に対して斜めに進行するため、針の性質によっては、後方散乱などの現象を起こすこととなり、超音波画像の画質が低下する。このように、プローブの方向と穿刺の方向とが一致しない場合の操作には、操作者に高い手技能力が求められる。状況によっては、プローブの操作と穿刺の操作とを複数の操作者が協力して行う場合もあるが、超音波プローブ及び穿刺の操作はタイミングを合わせて行なう必要があるため、これらの医療行為に従事する操作者には大きな肉体的ストレス及び精神的ストレスが発生する。上述したように、従来技術においては、診断や治療に係る手技の効率が低下する場合があった。
【0025】
図4は、本実施形態に係る超音波プローブ1を用いて穿刺を行った場合に観察される画像を示す図である。図3において示したように、本実施形態に係る超音波プローブ1においては、穿刺針が超音波トランスデューサアレイ13a及び超音波トランスデューサアレイ13bの両方に対して直交するように進行する。従って、本実施形態に係る超音波プローブ1を用いて穿刺を行った場合には、図4に示すように、2枚の画像(A面及びB面)に確実に穿刺針を描出させることができ、診断や治療に係る手技の効率を向上させることを可能にする。なお、本実施形態においては、2つの超音波トランスデューサアレイを備える場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、任意の数の超音波トランスデューサアレイを備える場合であってよい。例えば、3つ以上の超音波トランスデューサアレイを備える場合であってもよい。
【0026】
また、本実施形態に係る超音波プローブ1は、貫通孔に挿入された医療デバイスを貫通孔に沿った方向に振動させる振動機構をさらに備える。図5は、本実施例に係る振動機構の一例を示す図である。例えば、プローブ本体11は、図5に示すように、貫通孔16に振動装置19aと、固定部19bと、スイッチ19cと、制御部19dとを有する。
【0027】
振動装置19aは、後述する制御部19dの制御のもと、任意の振動周波数で貫通孔に沿った方向に固定部19bを振動させる。固定部19bは、医療デバイスを固定するとともに、振動装置19aによって発生された振動を医療デバイスに伝える。スイッチ19cは、操作者によって操作される振動のON、OFFを切替えるための入力装置である。制御部19dは、操作者によってスイッチがONにされると、任意の振動周波数で振動するように振動装置19aを制御する。また、制御部19dは、操作者によってスイッチがOFFにされると、振動を停止するように振動装置19aを制御する。
【0028】
例えば、図5の下図に示すように、固定部19bが穿刺針18を固定した状態で、操作者がスイッチをONにすると、制御部19dが、振動装置を任意の振動周波数で振動させると、穿刺針18は、貫通孔に沿った方向に振動することとなる。例えば、穿刺針が進行し難い組織に対して穿刺を行っている際に、上述した振動機能を利用することで、組織に大きなダメージを与えることなく、ターゲット部位まで穿刺針を進行させることができる。なお、振動周波数は、操作者によって任意に設定することができ、例えば、スイッチ19cとともに、振動周波数を細かく設定するためのダイヤルを超音波プローブ1に配置することで、操作者は、所望の振動周波数で医療デバイスを振動させることが可能である。上述した振動装置は、あくまでも一例であり、医療デバイスを貫通孔の方向に振動させることができるものであればどのようなものが用いられる場合であってもよい。
【0029】
また、本実施形態に係る超音波プローブ1おいては、第1の超音波トランスデューサアレイ13aと第2の超音波トランスデューサアレイ13bとが、交差する角度を変更可能に設けられる。図6Aは、本実施形態に係る超音波トランスデューサアレイ間の角度変更を説明するための図である。例えば、超音波プローブ1は、図6Aに示す第1の超音波トランスデューサアレイ13aと第2の超音波トランスデューサアレイ13bとが交差する角度を、貫通孔を軸に任意に変更することが可能である。
【0030】
ここで、本実施形態に係る超音波プローブ1においては、超音波トランスデューサアレイ13aと第2の超音波トランスデューサアレイ13bとが交差する角度を検出させるようにすることも可能である。例えば、図6Aに示すように、プローブ本体11において、第1の超音波トランスデューサアレイ13a及び第2の超音波トランスデューサアレイ13bが、それぞれ発光部が組み込まれた位置センサー20aと、受光部を有する受信器20bを備える。図6Bは、本実施形態に係る角度検出を説明するための図である。ここで、図6Bにおいては、貫通孔に直交する断面図を示す。
【0031】
例えば、図6Bに示すように、位置センサー20aに組み込まれた発光部によって発光された赤外線を、受信器20bにて受光する位置検出センサー20aを用いて、第1の超音波トランスデューサアレイ13aと第2の超音波トランスデューサアレイ13bとの距離を検出し、検出した距離に基づいて、第1の超音波トランスデューサアレイ13aと第2の超音波トランスデューサアレイ13bとが交差する角度を検出する。なお、距離と角度との対応関係は、予め設定される。また、位置センサー20aと受信器20bとは、プローブ本体11に備えられた制御部19dに接続される。そして、制御部19dは、上述した処理により第1の超音波トランスデューサアレイ13aと第2の超音波トランスデューサアレイ13bとが交差する角度を検出する。
【0032】
上述した実施形態では、赤外線による位置センサーを用いる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、磁気式、超音波式及び光学式などの位置センサーを用いる場合であってもよい。
【0033】
上述した実施形態では、位置センサーを用いて、第1の超音波トランスデューサアレイ13aと第2の超音波トランスデューサアレイ13bとが交差する角度を検出する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、角度が検出できる方法であればどのような方法を用いる場合であってもよい。
【0034】
図6Cは、本実施形態に係る角度情報の表示例を示す図である。例えば、図6Cに示すように、制御部19dによって検出された角度を、超音波画像とともに表示させるようにしてもよい。
【0035】
また、本実施形態に係る超音波プローブ1は、貫通孔を介して医療用の液体を流通させ、開口部14bから流出させる。例えば、操作者が、開口部14aから超音波検査に用いられるゼリーや、外用治療薬などを流入させることで、開口部14bからゼリーや、外用治療薬などを流出させる。
【0036】
また、本実施形態に係る超音波プローブ1に形成された貫通孔においては、Fibroscanなどの身体検診装置を挿入させることも可能である。図7は、本実施形態に係る医療デバイスの利用の一例を説明するための図である。図7においては、Fibroscanによって得られた情報を超音波画像上に表示させた状態を示す。
【0037】
例えば、図7に示すように、Fibroscanによって内蔵脂肪率が取得された位置を、超音波画像上に矢印で示すことが可能である。かかる場合には、超音波画像の特徴と、脂肪率との関係を容易に分析することを可能にする。
【0038】
また、本実施形態に係る超音波プローブ1は、第1の超音波トランスデューサアレイと第2の超音波トランスデューサアレイとは、分離可能に設けられており、分離された状態で、それぞれ独立した超音波トランスデューサとして機能する。具体的には、本実施形態に係る超音波プローブ1は、独立して機能する2つの超音波プローブを組み合わせることで実現することも可能である。
【0039】
図8は、本実施形態に係る組み立て式超音波プローブの一例を示す図である。図8においては、2つのコンベックス型の超音波プローブを組み合わせる場合について示す。例えば、図8に示すように、一方の超音波プローブに貫通孔を形成させる。そして、他方の超音波プローブは、図8に示すように、プローブ本体の中心から2つに分割可能に形成される。ここで、それぞれの超音波プローブには、組み合わせ可能となるように結合部が設けられる。図8に示す例では、図8の左側の超音波プローブの上面に、右側の超音波プローブの上部が結合され、左側の超音波プローブの下面に、右側の超音波プローブの下部が結合される。なお、右側の超音波プローブにおいては、結合された場合に、上部と下部とにより間の超音波が補完される。また、右側の超音波プローブは、単独で用いられる場合には、上部と下部が結合される。
【0040】
上述した実施形態では、2つのコンベックス型の超音波プローブが組み合わせられる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、コンベックス型とリニア型が組み合わされる場合であってもよい。また、2つ以上の超音波プローブが組み合わされる場合であってもよい。
【0041】
また、例えば、セクタ型の超音波プローブが組み合わされる場合であってもよい。かかる場合には、貫通孔部分に圧電振動子が備えられていない状態でプローブが構成されることにより、近距離にフォーカスをあてたスキャンをより正確に行うことを可能にする。すなわち、上記した構成の超音波プローブでは、貫通孔部分(超音波トランスデューサアレイの中心付近)から超音波が送信されることがなく、音場を超音波トランスデューサアレイの両側からの超音波のみで形成することができる。各振動子から送波される超音波を球面波として考えると、焦点の直上にある振動子から送信される球面波は、方位方向に対してほぼ垂直に広がっていることがわかる。一方焦点から方位方向に対して離れた位置にある振動子から送信される球面波は、焦点に対して斜め方向に広がっていることがわかる。ここで、方位方向に対してより収束された音場を形成するためには、方位方向に対して垂直に広がる球面波を除くことが有用である。従って、貫通孔部分からは送波が行われない構成により、全ての振動子から送波する場合に比べ、方位方向に対してよりビーム幅の狭いビームを形成することができる。従って、上記した構成の超音波プローブでは、超音波トランスデューサアレイの両側に配置された圧電振動子群それぞれが駆動するタイミングを制御することで、近距離にフォーカスをあてたスキャンをより正確に行うことができる。
【0042】
また、上記した構成の超音波プローブでは、遠距離にフォーカスをあてたスキャンを実行する場合においても、ノイズ成分の出やすい近距離音場からの受信信号を抑制することができ、例えば、遠距離の穿刺針をノイズの低い信号で映像化することができる。このように、セクタ型の超音波プローブを組み合わせた構成の超音波プローブは、近距離及び遠距離のスキャンをより正確に行うことができる。例えば、上記したセクタ型の超音波プローブを用いて穿刺術を行う場合に、穿刺針の侵入深さを検出して、フォーカスの深さをダイナミックに変更する制御が行われてもよい。
【0043】
また、上述した実施形態では、組み立て式の超音波プローブの一例として、図8に示す例について説明した。しかしながら、組み立て式の超音波プローブは、図8に示す例に限定されるものではなく、例えば、図9A及び図9Bに示すような超音波プローブであってもよい。図9A及び図9Bは、本実施形態に係る組み立て式超音波プローブの変形例を示す図である。ここで、図9A及び図9Bにおいては、2つの超音波トランスデューサアレイによって形成される角度を自動で制御することが可能な組み立て式の超音波プローブについて示す。
【0044】
例えば、図9Aの上図に示すように、変形例に係る超音波プローブ3は、第1の超音波プローブ31と、第2の超音波プローブ32とを備える。そして、第1の超音波プローブ31及び第2の超音波プローブ32は、第1の超音波トランスデューサアレイ311及び第2の超音波トランスデューサアレイ321をそれぞれ備える。ここで、第1の超音波トランスデューサアレイ311と前記第2の超音波トランスデューサアレイ321とが交差する角度が変更可能となるように係合部が設けられる。
【0045】
例えば、図9Aの上図に示すように、係合部は、ギア状の係合凸部312及び係合凹部322であり、第1の超音波トランスデューサアレイ311及び第2の超音波トランスデューサアレイ321の中心軸上に係合凸部312及び係合凹部322がそれぞれ配置される。そして、図9Aの下図に示すように、ギア状の係合凸部312及び係合凹部322が係合した状態で駆動されることにより、第1の超音波トランスデューサアレイ311と第2の超音波トランスデューサアレイ321とが交差する角度が変更される。
【0046】
例えば、係合凸部312は、第1の超音波プローブ31の上部で周方向に回転可能に配置され、モーターが内蔵される。そして、係合凸部312は、図示しない制御部によってモーターが制御されることにより回転する。ここで、係合凹部322が係合凸部312と係合した状態で係合凸部312が回転すると、第2の超音波プローブ32が第1の超音波プローブ31との交差角度を変更するように動くこととなる。
【0047】
ここで、例えば、ギア状の係合凸部312及び係合凹部322においては、図9Aに示すように、角度検知用凸部313及び角度検知用凹部323が備えられる。例えば、角度検知用凹部323は、図9Aに示すように、第2の超音波プローブ32の長手方向に先端が向くように配置される。これにより、角度検知用凸部313の先端が第1の超音波プローブ31の短手方向を向いた場合、第1の超音波プローブ31と第2の超音波プローブとが90度で交差することとなる。
【0048】
上述した図示しない制御部は、角度検知用凸部313の先端の向きを検出することにより、第1の超音波プローブ31と第2の超音波プローブとの交差する角度を検出して、角度制御を実行する。なお、モーター及び角度の制御を実行する図示しない制御部は、超音波プローブ3に内蔵されてもよく、或いは、独立した制御装置として備えられる場合、さらには、超音波診断装置に備えられる場合であってもよい。なお、上述した例では、第1の超音波プローブ31と第2の超音波プローブとの角度制御に角度検知用凸部313及び角度検知用凹部323を用いる場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、モーターの回転数と係合凸部312が回転する角度との関係を予め算出しておき、モーターの回転数を用いて第1の超音波プローブ31と第2の超音波プローブとの角度制御を実行する場合であってもよい。
【0049】
また、第1の超音波プローブ31と第2の超音波プローブとの角度制御は、その他種々の方法を用いることが可能である。以下、その他の変形例について、図9Bを用いて説明する。ここで、図9Bにおいては、図9Aに示す超音波プローブ3において、角度検知用凸部313及び角度検知用凹部323を省略し、代わりに、位置センサー315と位置センサー325とを備える場合について示す。例えば、図9Bに示す超音波プローブ3は、図示しないトランスミッターによって発生された磁場内で用いられ、磁場における位置センサー315及び位置センサー325の位置関係に基づいて、第1の超音波プローブ31と第2の超音波プローブとの角度が検出されて制御される。すなわち、図9Bに示す超音波プローブ3は、位置センサー315と位置センサー325との距離の変化によって角度制御が実行される。なお、図9A及び図9Bに示す例では、例えば、貫通孔314が係合凸部312に設けられる。ここで、貫通孔314は、モーターの動力を係合凸部312に伝えるシャフトの中心に設けられる。
【0050】
位置センサーを用いる角度制御は、上記した例に限定されるものではなく、例えば、図6A及び図6Bに示すように、発光部を備えた位置センサーと、受光部を備えた受信部とが、第1の超音波プローブ31及び第2の超音波プローブ32の側面にそれぞれ設置され、それにより角度制御される場合であってもよい。
【0051】
本実施形態に係る超音波プローブは、上述したように第1の超音波トランスデューサアレイ311と第2の超音波トランスデューサアレイ321とが任意の角度で交差するように自動で角度制御される。ここで、本実施形態に係る超音波プローブは、穿刺術が実行される場合に、有効な画像を提供することができるように角度制御される。以下、図10A〜図10Cを用いて、角度制御の例を説明する。図10A及び図10Bは、本実施形態に係る超音波プローブの角度制御の一例を説明するための図である。
【0052】
例えば、本実施形態に係る超音波プローブにおいては、係合部は、第1の超音波トランスデューサアレイ又は第2の超音波トランスデューサアレイによって穿刺対象領域が最長となる断面がスキャンされるように駆動される。例えば、図10Aに示すように、第2の超音波トランスデューサアレイによるスキャン断面42が穿刺対象領域50の最長の断面となるように、超音波プローブの角度制御が実行される。かかる場合には、例えば、超音波プローブは、第1の超音波トランスデューサアレイと第2の超音波トランスデューサアレイとの角度を所定の速度で変化させながら、スキャンを実行する。そして、図示しない制御部が各角度でスキャンされた画像データから穿刺対象領域50が最長となる断面を抽出する。超音波プローブは、抽出された断面をスキャンした角度でロックされるように制御される。
【0053】
また、例えば、本実施形態に係る超音波プローブにおいては、係合部は、第1の超音波トランスデューサアレイ又は第2の超音波トランスデューサアレイによって穿刺対象領域と血管との距離が最短となる断面がスキャンされるように駆動される。例えば、図10Bに示すように、第2の超音波トランスデューサアレイによるスキャン断面42が穿刺対象領域50と血管51との距離60が最短の断面となるように、超音波プローブの角度制御が実行される。かかる場合には、例えば、超音波プローブは、第1の超音波トランスデューサアレイと第2の超音波トランスデューサアレイとの角度を所定の速度で変化させながら、スキャンを実行する。そして、図示しない制御部が各角度でスキャンされた画像データから穿刺対象領域50と血管51との距離60が最短となる断面を抽出する。超音波プローブは、抽出された断面をスキャンした角度でロックされるように制御される。
【0054】
なお、上述した図示しない制御部は、超音波プローブに内蔵される場合であってもよいし、或いは、独立した制御装置を備える場合、さらには、超音波診断装置が備える場合であってもよい。また、図10A及び図10Bに示す平面41は、第1の超音波トランスデューサアレイによるスキャン断面を示す。
【0055】
図10Cは、図10A及び図10Bに示す角度でスキャンされた場合のそれぞれの画像の一例を示す。図10Cにおいては、図10Aに示す角度でスキャンされた場合の画像を左側に示し、図10Bに示す角度でスキャンされた場合の画像を右側に示す。例えば、図10Aに示す角度でスキャンされた場合、図10Cの左側の図に示すように、穿刺対象領域50が最長となる断面が表示される。これにより、例えば、RFA針70を用いて焼灼治療が行われる場合、RFA針の先端から放射状に焼灼されるが、対象領域が焼灼されずに残ってしまうことを抑止することができる。すなわち、画像に描出された穿刺対象領域50を焼灼することにより、領域すべてを焼灼することとなり、対象領域が焼灼されずに残ってしまうことを抑止することができる。また、穿刺対象領域50は操作者によって3次元的に描画された領域であってもよいし、輝度値、血流の流速、血流パワー、造影剤の造影強度、造影剤の滞在時間などの差異に基づいて検出された領域であってもよい。
【0056】
また、例えば、図10Bに示す角度でスキャンされた場合、図10Cの右側の図に示すように、穿刺対象領域50と血管51との距離60が最短となる断面が表示される。これにより、例えば、焼灼治療が行われる場合、血管に損傷を与えることを抑止することができる。また、例えば、図10Bに示す角度でスキャンされた場合、図10Cの右側の図に示すように、距離60の数値を「Dis.:a mm」(aには計測結果に基づいて算出された数値が入る)として画像と同時に表示するようにしてもよい。これにより、例えば、焼灼治療が行われる場合、血管に損傷を与えることをより抑止することができる。
【0057】
上述したように、本実施形態に係る超音波プローブは、第1の超音波トランスデューサアレイ及び第2の超音波トランスデューサアレイの2軸によってスキャンが実行される。すなわち、本実施形態の超音波プローブは、第1の超音波トランスデューサアレイ及び第2の超音波トランスデューサアレイによって各超音波トランスデューサアレイの間の領域からの反射波信号を受信することで、3次元領域をスキャンすることができる。また、本実施形態に係る超音波プローブは、第1の超音波トランスデューサアレイと第2の超音波トランスデューサアレイとの交差角度を変更することで、フォーカス形状を変化させることができる。すなわち、本実施形態に係る超音波プローブは、交差角度を90度から変化させることで交差角度の狭い軸のフォーカスサイズを小さくして、映像の解像度を高めることが可能である。なお、2軸のうちどちら側の解像度を高めるかは、観察者が交差角度を変化させることにより任意に選択することができる。一例を挙げると、血管の走行方向、或いは、血管の走行方向に直交する腫瘍の方向のどちらかの解像度を高めてスキャンすることが可能である。
【0058】
図11は、本実施形態に係る超音波プローブによってスキャンされた画像の表示例を示す図である。例えば、本実施形態に係る超音波プローブを用いることで、図11に示すように、A面、B面に加えて、VR(Volume Rendering)画像を表示部200に表示させることが可能である。
【0059】
次に、本実施例に係る超音波プローブを備えた超音波診断装置について説明する。図12は、本実施例に係る超音波診断装置1000の全体構成の一例を示す図である。図12に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1000は、超音波プローブ1と、入力装置300と、モニタ200と、装置本体100とを有する。
【0060】
超音波プローブ1は、上述した本実施形態に係る超音波プローブである。そして、超音波プローブ1は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体100が有する送受信部110から供給される駆動信号に基づき超音波を発生し、さらに、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材などを有する。
【0061】
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。なお、本実施形態に係る超音波プローブ1は、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブである。
【0062】
入力装置300は、超音波診断装置1000の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体100に対して受け付けた各種設定要求を転送する。入力装置300は、例えば、トラックボール、スイッチ、ボタン、タッチコマンドスクリーン、キーボード、マウスなどである。
【0063】
モニタ200は、超音波診断装置1000の操作者が入力装置300を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体100において生成された超音波画像などを表示したりする。
【0064】
装置本体100は、超音波プローブ1が受信した反射波に基づいて超音波画像を生成する装置であり、図12に示すように、送受信部110と、Bモード処理部120と、ドプラ処理部130と、画像データ生成部140と、画像データ制御部150と、画像メモリ160と、制御部170と、内部記憶部180とを有する。
【0065】
送受信部110は、トリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路などを有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルサ回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、遅延回路は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルサ回路が発生する各レートパルスに対し与える。また、トリガ発生回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向を任意に調整する。
【0066】
また、送受信部110は、アンプ回路、A/D変換器、加算器などを有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行ない、A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換して受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、加算器は、A/D変換器によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0067】
このように、送受信部110は、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。なお、送受信部110は、後述する制御部170の制御により、遅延情報、送信周波数、送信駆動電圧、開口素子数などを瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更においては、瞬時に値を切り替えることが可能であるリニアアンプ型の発振回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。また、送受信部110は、1フレームもしくはレートごとに、異なる波形を送信して受信することも可能である。
【0068】
Bモード処理部120は、送受信部110からゲイン補正処理、A/D変換処理および加算処理が行なわれた処理済み反射波信号である反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理などを行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0069】
ここで、Bモード処理部120は、検波周波数を変化させることで、映像化する周波数帯域を変えることができる。また、Bモード処理部120は、1つの受信データに対して、2つの検波周波数による検波処理を並列して行うことができる。
【0070】
このBモード処理部120の機能を用いることにより、超音波造影剤が注入された被検体Pの関心領域における1つの受信データから、関心領域を流動する超音波造影剤(微小気泡、バブル)を反射源とする反射波データと、関心領域に存在する組織を反射源とする反射波データとを分離することができ、後述する画像データ生成部140は、流動するバブルを高感度に映像化した造影像および形態を観察するために組織を映像化した組織像を生成することができる。
【0071】
ドプラ処理部130は、送受信部110から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワーなどの移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0072】
画像データ生成部140は、Bモード処理部120が生成したBモードデータや、ドプラ処理部130が生成したドプラデータから、時系列に連続した超音波画像を生成する。そして、画像データ生成部140は、生成した超音波画像を画像メモリ160に格納する。
【0073】
画像データ制御部150は、画像データ生成部140によって生成された超音波画像を時系列に順次取得する。そして、画像データ制御部150は、取得した超音波画像を表示用画像に順次変換して、画像メモリ160に格納する。具体的には、画像データ制御部150は、画像データ生成部140によって生成された超音波画像を画像メモリ160から読み出し、テレビなどに代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)することで、表示用画像(Bモード画像やドプラ画像)を生成し、生成した表示用画像を画像メモリ160に再度格納する。なお、画像データ制御部150は、画像データの収集に関する制御も実行する。第1に実施形態に係る画像データ制御部150による画像データの収集に関しては、後に詳述する。
【0074】
画像メモリ160は、Bモード処理部120及びドプラ処理部130によって生成されたRawデータ(Bモードデータ及びドプラデータ)、画像データ生成部140によって生成された超音波画像及び画像データ制御部150によって生成された表示用画像を記憶する。また、画像メモリ160は、画像データ制御部150による処理結果を記憶する。さらに、画像メモリ160は、送受信部110を経た直後の出力信号(RF:Radio Frequency)や画像の輝度信号、種々の生データなどを必要に応じて記憶する。
【0075】
制御部170は、超音波診断装置1における処理全体を制御する。具体的には、制御部170は、送受信部110、Bモード処理部120、ドプラ処理部130、画像データ生成部140及び画像データ制御部150の各種処理を制御する。例えば、制御部170は、入力装置300を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部180から読込んだ各種制御プログラムおよび各種設定情報や、後述する画像データ制御部150から受信した各種設定情報に基づき、各種処理を制御したり、画像メモリ160が記憶する表示用画像をモニタ200にて表示するように制御したりする。
【0076】
内部記憶部180は、超音波送受信、画像処理および表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見など)や、診断プロトコルなどの各種データを記憶する。また、内部記憶部180は、必要に応じて、画像メモリ160が記憶する画像の保管などにも使用される。
【0077】
上述したように、本実施形態によれば、第1の超音波トランスデューサアレイ13aが、第1の走査面を走査する。そして、第2の超音波トランスデューサアレイ13bが、前記第1の超音波トランスデューサアレイ13aと交差して設けられ、前記第1の走査面とは異なる第2の走査面を走査する。そして、プローブ本体11が、前記第1の超音波トランスデューサアレイ13aと前記第2の超音波トランスデューサアレイ13bとが設けられ、各超音波トランスデューサアレイが交差する位置に開口部14bを有し、当該開口部14bに通じる貫通孔を有する。従って、本実施形態に係る超音波プローブ1は、2枚以上の超音波画像に確実に医療デバイスを描出させることができ、診断や治療に係る手技の効率を向上させることを可能にする。
【0078】
また、本実施形態によれば、第1の超音波トランスデューサアレイ311が、第1の走査面を走査する。そして、第2の超音波トランスデューサアレイ321が、第1の超音波トランスデューサアレイ311と係合し、且つ第1の超音波トランスデューサアレイ311と交差して設けられ、第1の走査面とは異なる第2の走査面を走査する。そして、プローブ本体3は、第1の超音波トランスデューサアレイ311と第2の超音波トランスデューサアレイ321とが設けられ、各超音波トランスデューサアレイが交差する位置に開口部を有し、当該開口部に通じる貫通孔314を有する。そして、第1及び第2の超音波トランスデューサアレイを係合する係合部が、第1の超音波トランスデューサアレイ311と第2の超音波トランスデューサアレイ321とが交差する角度を変更可能に設けられる。従って、本実施形態に係る超音波プローブ3は、任意の角度でスキャンされた2枚以上の超音波画像に確実に医療デバイスを描出させることができ、診断や治療に係る手技の効率をより向上させることを可能にする。
【0079】
また、本実施形態によれば、係合部は、ギア状の係合凸部312及び係合凹部322であり、第1の超音波トランスデューサアレイ311及び第2の超音波トランスデューサアレイ321の中心軸上に係合凸部312及び係合凹部322がそれぞれ配置され、ギア状の係合凸部312及び係合凹部322が係合した状態で駆動されることにより、第1の超音波トランスデューサアレイ311と第2の超音波トランスデューサアレイ321とが交差する角度が変更される。従って、本実施形態に係る超音波プローブ3は、簡易な設計で任意の角度で2軸をスキャンすることができる超音波プローブを構成することができる。
【0080】
また、本実施形態によれば、係合部(係合凸部312及び係合凹部322)は、第1の超音波トランスデューサアレイ311又は第2の超音波トランスデューサアレイ321によって穿刺対象領域と血管との距離が最短となる断面がスキャンされるように駆動される。従って、本実施形態に係る超音波プローブ3は、血管までの最短距離を表示させることができ、穿刺時に血管に損傷を与えることを抑止することができる。
【0081】
また、本実施形態によれば、係合部(係合凸部312及び係合凹部322)は、第1の超音波トランスデューサアレイ311又は第2の超音波トランスデューサアレイ321によって穿刺対象領域が最長となる断面がスキャンされるように駆動される。従って、本実施形態に係る超音波プローブ3は、穿刺対象領域が最長となる断面を表示させることができ、穿刺対象領域を過不足なく焼灼することを可能にする。
【0082】
また、本実施形態によれば、超音波プローブ3は、第1の超音波トランスデューサアレイ311及び第2の超音波トランスデューサアレイ321によって、第1の断面画像、第2の断面画像及び3次元画像を所定の表示部にて同時に表示するための反射波信号を受信する。従って、本実施形態に係る超音波プローブ3は、第1の断面画像、第2の断面画像及び3次元画像を所定の表示部にて同時に表示することができ、診断効率及び診断精度を向上させることを可能にする。
【0083】
また、本実施形態によれば、第1の超音波トランスデューサアレイ13aと第2の超音波トランスデューサアレイ13bとは、交差する角度を変更可能に設けられる。従って、本実施形態に係る超音波プローブ1は、撮像対象物に応じて、種々の角度の画像を生成することができ、診断や治療に係る手技の効率を向上させることを可能にする。
【0084】
また、本実施形態によれば、第1の超音波トランスデューサアレイ13aと第2の超音波トランスデューサアレイ13bとは、分離可能に設けられており、分離された状態で、それぞれ独立した超音波トランスデューサとして機能する。従って、本実施形態に係る超音波プローブ1は、2本の超音波プローブで種々の手技を行うことを可能にする。
【0085】
また、本実施形態によれば、プローブ本体11は、貫通孔を介して開口部14bから進出する医療デバイスの進行方向を決定する。従って、本実施形態に係る超音波プローブ1は、各超音波トランスデューサアレイに対して、医療デバイスが確実に垂直の状態となることを可能にする。
【0086】
また、本実施形態によれば、貫通孔に挿入された医療デバイスを貫通孔に沿った方向に振動させる振動機構をさらに備える。従って、本実施形態に係る超音波プローブ1は、柔軟な穿刺操作を可能にする。
【0087】
また、本実施形態によれば、プローブ本体11は、貫通孔を介して医療用の液体を流通させ、開口部14bから流出させる。従って、本実施形態に係る超音波プローブ1は、診断や治療に係る手技の効率を向上させることを可能にする。
【0088】
以上説明したとおり、実施形態によれば、本実施形態の超音波プローブ及び超音波診断装置は、診断や治療に係る手技の効率を向上させることを可能にする。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0090】
1 超音波プローブ
11 プローブ本体
13a、311 第1の超音波トランスデューサアレイ
13b、321 第2の超音波トランスデューサアレイ
14a、14b 開口部
16、17 貫通孔
1000 超音波診断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の走査面を走査するための第1の超音波トランスデューサアレイと、
前記第1の超音波トランスデューサアレイと係合し、且つ前記第1の超音波トランスデューサアレイと交差して設けられ、前記第1の走査面とは異なる第2の走査面を走査するための第2の超音波トランスデューサアレイと、
前記第1の超音波トランスデューサアレイと前記第2の超音波トランスデューサアレイとが設けられ、各超音波トランスデューサアレイが交差する位置に開口部を有し、当該開口部に通じる貫通孔を有するプローブ本体と、
を備え、
前記第1及び第2の超音波トランスデューサアレイを係合する係合部は、
前記第1の超音波トランスデューサアレイと前記第2の超音波トランスデューサアレイとが交差する角度を変更可能に設けられることを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
前記第1の超音波トランスデューサアレイと前記第2の超音波トランスデューサアレイとは、分離可能に設けられており、分離された状態で、それぞれ独立した超音波トランスデューサとして機能することを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記係合部は、ギア状の係合凸部及び係合凹部であり、前記第1の超音波トランスデューサアレイ及び前記第2の超音波トランスデューサアレイの中心軸上に前記係合凸部及び係合凹部がそれぞれ配置され、前記ギア状の係合凸部及び係合凹部が係合した状態で駆動されることにより、前記第1の超音波トランスデューサアレイと前記第2の超音波トランスデューサアレイとが交差する角度が変更されることを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記係合部は、前記第1の超音波トランスデューサアレイ又は前記第2の超音波トランスデューサアレイによって穿刺対象領域と血管との距離が最短となる断面がスキャンされるように駆動されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記係合部は、前記第1の超音波トランスデューサアレイ又は前記第2の超音波トランスデューサアレイによって穿刺対象領域が最長となる断面がスキャンされるように駆動されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記プローブ本体は、前記貫通孔を介して開口部から進出する医療デバイスの進行方向を決定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の超音波プローブ。
【請求項7】
前記貫通孔に挿入された前記医療デバイスを前記貫通孔に沿った方向に振動させる振動機構をさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載の超音波プローブ。
【請求項8】
前記プローブ本体は、前記貫通孔を介して医療用の液体を流通させ、前記開口部から流出させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の超音波プローブ。
【請求項9】
前記プローブ本体は、前記第1の超音波トランスデューサアレイ及び前記第2の超音波トランスデューサアレイによって、第1の断面画像、第2の断面画像及び3次元画像を所定の表示部にて同時に表示するための反射波信号を受信することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の超音波プローブ。
【請求項10】
第1の走査面を走査するための第1の超音波トランスデューサアレイと、
前記第1の超音波トランスデューサアレイと係合し、且つ前記第1の超音波トランスデューサアレイと交差して設けられ、前記第1の走査面とは異なる第2の走査面を走査するための第2の超音波トランスデューサアレイと、
前記第1の超音波トランスデューサアレイと前記第2の超音波トランスデューサアレイとが設けられ、各超音波トランスデューサアレイが交差する位置に開口部を有し、当該開口部に通じる貫通孔を有するプローブ本体と、
を有する超音波プローブと、
前記超音波プローブが受信した反射波信号に基づいて、超音波画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部によって生成された超音波画像を所定の表示部にて表示させる表示制御部と、
を備え、
前記第1及び第2の超音波トランスデューサアレイを係合する係合部は、
前記第1の超音波トランスデューサアレイと前記第2の超音波トランスデューサアレイとが交差する角度を変更可能に設けられることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項11】
前記第1の超音波トランスデューサアレイと前記第2の超音波トランスデューサアレイとは、分離可能に設けられており、分離された状態で、それぞれ独立した超音波トランスデューサとして機能することを特徴とする請求項10に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記係合部は、ギア状の係合凸部及び係合凹部であり、前記第1の超音波トランスデューサアレイ及び前記第2の超音波トランスデューサアレイの中心軸上に前記係合凸部及び係合凹部がそれぞれ配置され、前記ギア状の係合凸部及び係合凹部が係合した状態で駆動されることにより、前記第1の超音波トランスデューサアレイと前記第2の超音波トランスデューサアレイとが交差する角度が変更されることを特徴とする請求項10又は11に記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記係合部は、前記第1の超音波トランスデューサアレイ又は前記第2の超音波トランスデューサアレイによって穿刺対象領域と血管との距離が最短となる断面がスキャンされるように駆動されることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項14】
前記係合部は、前記第1の超音波トランスデューサアレイ又は前記第2の超音波トランスデューサアレイによって穿刺対象領域が最長となる断面がスキャンされるように駆動されることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項15】
前記プローブ本体は、前記貫通孔を介して開口部から進出する医療デバイスの進行方向を決定することを特徴とする請求項10〜14のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項16】
前記貫通孔に挿入された前記医療デバイスを前記貫通孔に沿った方向に振動させる振動機構をさらに備えたことを特徴とする請求項15に記載の超音波診断装置。
【請求項17】
前記プローブ本体は、前記貫通孔を介して医療用の液体を流通させ、前記開口部から流出させることを特徴とする請求項10〜16のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項18】
前記プローブ本体は、前記第1の超音波トランスデューサアレイ及び前記第2の超音波トランスデューサアレイによって、第1の断面画像、第2の断面画像及び3次元画像を前記所定の表示部にて同時に表示するための反射波信号を受信し、
前記画像生成部は、前記プローブ本体が受信した反射波信号に基づいて、前記第1の断面画像、前記第2の断面画像及び前記3次元画像をそれぞれ生成し、
前記表示制御部は、前記第1の断面画像、前記第2の断面画像及び前記3次元画像を前記所定の表示部にて同時に表示させることを特徴とする請求項10〜17のいずれか一つに記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−48900(P2013−48900A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−172267(P2012−172267)
【出願日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】