説明

超音波プローブ

【課題】SCWモードにおいて、広いダイナミックレンジを確保しつつプローブケーブル内の信号線の本数が低減する。
【解決手段】超音波を送信し、同じ前記超音波振動子で前記超音波エコーを受信する第2のモードのときに、前記超音波エコーを受信した前記超音波振動子それぞれからの出力を受けて、それぞれの位相を整える複数のビームフォーマと、複数の超音波振動子を前記超音波を送信する群と、前記超音波エコーを受信する群とに分けて動作する第1のモードのときに、前記超音波エコーを受信した前記超音波振動子それぞれからの出力を受けて、同じ位相の前記出力どうしを選択して出力するマトリックススイッチと、前記第2のモードのときに、前記ビームフォーマそれぞれにより同位相にグループごとに加算して出力し、前記第1のモードのときに、前記マトリックススイッチの出力を、同じ位相ごとにグループにまとめて加算して出力する複数の加算器とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に接続され、被検体に超音波を送受信する超音波プローブに関し、特に電子回路の性能の制約に制限されることなく、広いダイナミックレンジを確保しながらプローブケーブル内の信号線の本数を低減する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、超音波2次元(2D)アレイプローブ等においては、プローブヘッドに電子回路を内蔵し、送信波形の生成、受信エコー(受信信号)の増幅・部分的ビームフォーミングを行うようになってきている。こうした超音波2Dアレイプローブを用いた超音波診断装置は、例えば下記特許文献1に記載されている。
【0003】
一方、こうした超音波プローブがプローブコネクタを介して接続される超音波診断装置本体では、本体プリアンプ群で受信遅延加算処理が施された超音波エコー信号が増幅される。増幅された超音波エコー信号は、受信遅延加算回路でタイミングが合わされ、信号処理部で検波されてエンベロープが取り出され、画像処理部で座標変換され、画像表示に適した処理が施されて表示部に表示される。これにより、リアルタイムで被観測体内の形態情報が表示される。
【0004】
従来の超音波2Dアレイプローブ及び超音波診断装置の構成について、図9及び図10を参照しながら説明する。図9は一般的な超音波診断装置の構成を示した機能ブロック図である。図10は従来の超音波2Dアレイプローブにおけるチャネル制御回路のブロック図である。
【0005】
超音波振動子群102は、例えば、N×Mのアレイ状に配列されて成るもので、被観測体O(例えば心臓)に対して超音波を送受信する。パルサー群101は、超音波振動子群102に接続されるもので、プローブハンドル内制御回路100で生成された異なるタイミングに従って超音波振動子群102を駆動して、所定の指向性を有する超音波ビームを発生させるためのものである。これにより、パルサー群101からの電気信号に従って、超音波振動子群102から被観測体Oに向けて超音波ビームが照射される。
【0006】
超音波振動子群102から送信された超音波ビームは、被観測体O内の構造物の境界等の音響インピーダンスの異なる界面で、当該被観測体O内の構造・動き等に対応して反射する。プリアンプ群103は、超音波振動子群102で受信される微弱な超音波エコー信号を良好に伝送するために、低雑音増幅またはバッファリング等の処理を行う。チャネル制御回路104は、内蔵されるサブアレイ受信ビームフォーマ群1041(図10を参照)により、上述した複数のプリアンプ群103からの出力信号を1グループとして遅延時間を与えて、内蔵される加算器1042(図10を参照)により加算して超音波診断装置本体に出力する。これにより、当該超音波プローブ1からの出力信号線の数を減少させることができる。つまり、プローブケーブル11の本数を減少させている。
【0007】
プローブハンドル内制御回路100は、上述したパルサー群101、プリアンプ群103及びチャネル制御回路104の動作を制御するためのものである。このプローブハンドル内制御回路100からの制御信号により、プリアンプ群103はバイアス電流等の動作条件を個々に設定できるように構成されている。
【0008】
プローブハンドル10とプローブコネクタ12は、上述したようにプローブケーブル11により接続されている。プローブコネクタ12内は、複数の電子回路から成る電子回路群121と、プローブコネクタ内制御回路120とにより構成されている。上記電子回路群121は、必要に応じて増幅、バッファリング、帯域調整等の超音波エコー信号の追加処理を行う。また、プローブコネクタ内制御回路120は、上記電子回路群121の動作を制御すると共に、後述する超音波診断装置本体2より伝送される制御信号を基にして、プローブハンドル内制御回路100に伝送する制御信号を生成するものである。
【0009】
超音波診断装置本体2は、本体プリアンプ群240と、本体受信遅延加算回路241と、信号処理部25と、画像処理部26と、表示部27と、本体送信遅延回路220と、本体パルサー群221と、本体制御回路21と、操作パネル20とにより構成される。
【0010】
本体プリアンプ群240では、超音波プローブ1にて数チャネルのグループで最初の受信遅延加算処理が施された超音波エコー信号が増幅される。これらの増幅された超音波エコー信号は、本体受信遅延加算回路241にてタイミングが合わせられる。そして、上記超音波信号は、信号処理部25にて検波されてエンベロープが抽出される。更に、この抽出されたエンベロープは、画像処理部26にて被観測体Oの断面に合わせて座標変換されたり、画像表示に適した階調処理等が施されたりした後、表示部27に表示される。これにより、図11に示されるように、リアルタイムで被観測体内の形態情報が、表示部27に表示される。
【0011】
また、本体制御回路21は、超音波診断装置本体2内の各処理部の動作を制御すると共に、プローブコネクタ12のプローブコネクタ内制御回路120に制御情報を伝送するためのものである。操作パネル20は、動作モードとして、ビームステアリングが可能な連続波ドプラモードを行う場合等、操作者が情報を入力あるいは選択するための操作を行うための入力手段である。
【0012】
尚、本体送信遅延回路220と本体パルサー群221は、超音波プローブが電子回路を内蔵しない場合、すなわち超音波振動子群102を超音波診断装置本体2が駆動する通常のプローブを接続する場合に動作させるものであり、通常、超音波診断装置本体2に内蔵されて構成されるが無くともよい。
【0013】
上述した、超音波診断装置の動作モードとして、血流速度の測定等に用いられる連続波ドプラ(以下「SCW」と呼ぶ)モードが知られている。SCWモードでは、N×Mのアレイ状に配列された超音波振動子群を、図10に示すように、超音波を送信する領域Bと、超音波を受信する領域Aとに分けて動作し、これにより超音波を連続的に送受信することが可能となる。
【0014】
SCWモードでの動作時には、被観測体内の血流に対して中心周波数f0の超音波の送受信が行われると、超音波ビームの周波数は流動する血球により、血流速度に比例するドプラ偏移周波数fdを受けて、f0+fdの周波数の超音波エコーが受信される。したがって、そのドプラ偏移周波数fdを検出し、時間的な変化を表示することで、図12に示すようにドプラ画像として血流速度情報を表示することができる。
【0015】
またその際、検出されたドプラ偏移周波数fdを2次元にマッピングし、適切なカラー変換を行って先の超音波画像に重ね合わせて表示することにより、血流速度情報を含む被観測体内の画像をリアルタイムでカラードプラ画像(図示しない)として表示することができる。
【0016】
近年、超音波プローブに超音波2Dアレイ振動子が用いられるようになり、振動子数が数千に増加し、個々の大きさが極めて小さくなってきている。この場合、超音波診断装置にプローブを直接接続すると、ケーブル本数が非常に多く必要であるためにケーブル全体が太くなり、操作に支障をきたすと共に、微小な振動子で受信される超音波エコーを高品位で伝送することが困難である。
【0017】
このため、超音波2Dアレイ等の場合は超音波プローブに、送信回路及び受信回路等の電子回路を実装し、受信された微弱な超音波エコーを効率よく増幅するすると共に、数個単位の振動子毎に部分的な受信ビームフォーミングを行って加算することにより、超音波診断装置に入力する信号線の本数を低減することがしばしば行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2007−167445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
SCWモードでは、超音波ビーム上に検出される振幅の大きいクラッタ(例えば心臓壁からの反射波)に重畳した極めて微弱なドプラ信号を増幅するために、通常のBモード画像を得る場合に比べて広いダイナミックレンジが要求される。
【0020】
しなしながら、超音波プローブに内蔵されたビームフォーマは供給電力の制約などにより、ダイナミックレンジを広くとることができない。これは、十分なダイナミックを確保するためにビームフォーマに高い電力を供給する必要がある反面、電力を高くすることにより発熱を伴うためである。超音波プローブは被検体に接触させて使用されることから、この発熱を抑える必要があり、高い電力を供給できない。
【0021】
そのため、従来の超音波プローブは、前述したビームフォーマの制約によりSCWの微弱な信号成分を忠実に増幅することができず、SCWモードで動作する場合は、数個単位の超音波振動子振動子毎に出力信号を加算して超音波診断装置本体に出力することができない。これにより、従来の超音波プローブは、超音波プローブと超音波診断装置本体をつなぐプローブケーブル内の信号線の本数が低減できず、該プローブケーブルを太くせざるを得なかった。
【0022】
本発明は上記問題を解決するものであり、SCWモードのように超音波振動子群を、送信を行う領域と受信を行う領域に分けて使用する動作モードにおいても、広いダイナミックレンジを確保し、かつ、数個単位の超音波振動子毎に同じ位相の受信信号を加算して超音波診断装置本体に送信することで、プローブケーブル内の信号線の本数を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、この発明の第1の形態は、超音波を送信し、被検体内で反射される超音波エコーを受信する二次元に配列された複数の超音波振動子を有し、前記複数の超音波振動子を、前記超音波を送信する群と前記超音波エコーを受信する群とに分けて動作する第1のモードと、前記超音波を送信し、同じ前記超音波振動子で前記超音波エコーを受信する第2のモードとで動作する超音波プローブであって、前記第2のモードで動作するときに、前記超音波エコーを受信した前記超音波振動子それぞれからの出力を受けて、それぞれの位相をそろえる複数のビームフォーマと、前記第1のモードで動作するときに、前記超音波エコーを受信した前記超音波振動子それぞれからの出力を受けて、同じ位相の前記出力同士を選択して出力するマトリックススイッチと、前記第2のモードで動作するときに、前記ビームフォーマそれぞれの出力を、前記ビームフォーマそれぞれにより同じ位相にそろえられたグループごとに加算して出力し、前記第1のモードで動作するときに、前記マトリックススイッチの出力を、同じ位相のグループにまとめて加算して出力する複数の加算器とを備えることを特徴とする超音波プローブである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、プリアンプ群等の電子回路を内蔵した超音波2Dアレイプローブを使用する超音波診断装置において、プローブに内蔵される電子回路の性能の制約に制限されることなく広いダイナミックレンジを確保することが可能となり、SCWモード等における受信性能を確保することが可能となる。
【0025】
また、SCWモード等のように広いダイナミックレンジが要求される場合においても、数個単位の振動子毎に受信信号を加算して超音波診断装置本体に送信することが可能となるため、プローブケーブル内の信号線の本数を低減させることが可能となり、従来よりもプローブケーブルを細くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施形態に係る超音波プローブにおけるチャネル制御回路のブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係るチャネル制御回路の動作を説明するための図である。
【図3】本発明に係る超音波プローブの動作を示すフローチャートである。
【図4】変形例1に係る超音波プローブにおけるチャネル制御回路のブロック図である。
【図5】変形例1に係るチャネル制御回路の動作を説明するための図である。
【図6】変形例2に係る超音波プローブにおけるチャネル制御回路のブロック図である。
【図7】変形例2に係るチャネル制御回路の動作を説明するための図である。
【図8】本発明に係るチャネル制御回路の回路構成の例である。
【図9】一般的な超音波診断装置の構成を示した機能ブロック図である。
【図10】従来の超音波プローブにおけるチャネル制御回路のブロック図である。
【図11】Bモードで動作させた場合の超音波断層像の出力例である。
【図12】SCWモードで動作させた場合の超音波画像の出力例である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る超音波プローブの構成について図1を参照しながら説明する。プローブコネクタ12から超音波診断装置本体2までの構成は、図9に示した従来の超音波診断装置の構成と同様となっている。ここでは、本願発明の特徴である超音波プローブ1の構成について詳細に説明する。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係るチャネル制御回路104aは、サブアレイ受信ビームフォーマ群1041と加算器1042に加え、バイパススイッチ1043及びマトリックススイッチ1044を更に備えていることを特徴とする。そのため本説明では、従来の超音波プローブと構成の異なるプローブハンドル10内の構成と、本発明に係る超音波プローブからの送信信号を処理する超音波診断装置本体2内の本体受信遅延加算回路241、及び、装置全体の動作を制御する本体制御回路21に着目して説明する。なお、図10と同様の添え字が付された構成要素は、図10で該添え字を付された構成要素と同様の構成を示す。
【0029】
まず本体制御回路21は、操作パネル20から操作者による超音波診断装置が動作するモード(以下「動作モード」と呼ぶ)の指定を受け、超音波振動子群102を構成する各超音波振動子の動作を決定する。
【0030】
具体的には、SCWモードのように、超音波を送信する複数の超音波振動子と超音波を受信する複数の超音波振動子とに分けて超音波を送受信するモード(以下「第1のモード」と呼ぶ)の場合、本体制御回路21は、超音波振動子群102を、超音波を送信する領域Bと超音波を受信する領域Aとに分ける。
【0031】
また、Bモード等のように同じ超音波振動子で超音波の送受信の双方を行うモード(以下「第2のモード」と呼ぶ)の場合、本体制御回路21は、超音波振動子群102を構成する各超音波振動子が、それぞれ超音波の送信及び受信を行うように設定する。
【0032】
本体制御回路21は、上述した超音波振動子の割当に関する制御を、領域制御信号として超音波プローブ1に送信し指示する。
【0033】
次に本体制御回路21は、操作パネル20から操作者による観測点の設定を受け、超音波振動子群102を構成する各超音波振動子と該観測点との距離から、各超音波振動子の送信遅延時間及び受信遅延時間を算出する。このとき、第1のモードで動作する場合は、送信遅延時間は超音波を送信する領域Bの各超音波振動子に対応し、受信遅延時間は超音波を受信する領域Aの各超音波振動子に対応することになる。
【0034】
次に、本体制御回路21は、本体プリアンプ群240の各プリアンプに受信遅延時間を対応付け、該プリアンプからの出力信号それぞれに対する遅延処理を本体受信遅延加算回路241に指示する。例えば、まず本体制御回路21は、本体プリアンプ群240のプリアンプ(以下「本体のプリアンプ」と呼ぶ)Ch1から出力する信号には遅延時間td1を、本体のプリアンプCh3から出力される信号には遅延時間td3を対応付ける。次に本体制御回路21は、該対応付けに従いそれぞれに遅延処理を施すように本体受信遅延加算回路241に指示する(本体受信遅延加算回路241については後述する)。
【0035】
また、本体制御回路21は、本体プリアンプ群240のプリアンプ(例えばプリアンプCh1〜Ch3)それぞれに、対応付けた遅延時間を持つ信号が入力されるように超音波プローブ1に含まれるマトリックススイッチ1044を制御するマトリックススイッチ切替信号を作成する(マトリックススイッチ1044については後述する)。
【0036】
本体制御回路21は、算出した送信遅延時間及び受信遅延時間と、動作モードと、領域制御信号、及び、マトリックススイッチ切替信号とを、プローブ制御データとして、プローブコネクタ内制御回路120を介しプローブハンドル内制御回路100aに送信する(プローブハンドル内制御回路100aについては後述する)。
【0037】
本実施形態に係るチャネル制御回路104aは、図1に示すように、サブアレイ受信ビームフォーマ群1041と、バイパススイッチ1043と、マトリックススイッチ1044と、加算器1042とで構成されている。
【0038】
サブアレイ受信ビームフォーマ群1041は、プリアンプ群103に含まれる複数のプリアンプを1グループとして、該グループに含まれるプリアンプからの出力信号の位相差をそろえるように遅延処理を施し出力する遅延回路である。
【0039】
本実施形態に係る超音波プローブ1では、サブアレイ受信ビームフォーマ群1041の入力側から引き出され、サブアレイ受信ビームフォーマ群1041をバイパスする信号線(以下「バイパス信号線」と呼ぶ)が設けられている。プリアンプ群103からの出力信号は、バイパススイッチ1043により、サブアレイ受信ビームフォーマ群1041とバイパス信号線のいずれかを通過するように切替えられる。
【0040】
バイパススイッチ1043は、サブアレイ受信ビームフォーマ群1041の出力側に設けられ、サブアレイ受信ビームフォーマ群1041の出力側に設けられた第1の接点と、バイパス信号線側に設けられた第2の接点とのいずれかに切替可能に構成されている。
【0041】
バイパススイッチ1043は、切替制御手段1001により、超音波診断装置が動作するモード(以下「動作モード」と呼ぶ)により切替えられる(切替制御手段1001については後述する)。このバイパススイッチ1043が切替手段に相当する。
【0042】
具体的には、SCWモードのように、超音波を送信する複数の超音波振動子と超音波を受信する複数の超音波振動子とに分けて超音波を送受信するモード(以下「第1のモード」と呼ぶ)の場合は第2の接点に切替えられ、プリアンプ群103からの出力信号にはサブアレイ受信ビームフォーマ群1041による遅延処理は行われない。
【0043】
また、Bモード等のように同じ超音波振動子で超音波の送受信の双方を行うモード(以下「第2のモード」と呼ぶ)の場合は第1の接点に切替えられ、従来通り、プリアンプ群103からの出力信号はサブアレイ受信ビームフォーマ群1041に入力され遅延処理が施される。
【0044】
加算器1042は、複数のバイパススイッチ1043から出力される信号を加算し出力することで、超音波プローブ1からの出力信号線の数を減少させる。加算器1042は、例えば、複数の超音波振動子で構成された所定のサブアレイ(例えばサブアレイ102a1)からプリアンプ群103の各プリアンプ及びバイパススイッチ1043を介して出力される信号(以下「サブアレイから出力される信号」と呼ぶ場合がある)を加算するように設けられている。
【0045】
加算器1042から出力された信号は、プローブケーブル11及び電子回路群121を介し、本体プリアンプ群240に入力される。加算器1042と本体プリアンプ群240の各プリアンプは1対1で対応しており、所定の加算器1042(例えば加算器1042a1)から出力された信号は、所定のプリアンプ(例えば本体プリアンプ群240のプリアンプCh1)に入力される。
【0046】
マトリックススイッチ1044は、バイパススイッチ1043と加算器1042との間に介在し、バイパススイッチ1043から入力された信号を、加算器1042に出力する。このときマトリックススイッチ1044は、動作モード(第1のモード又は第2のモード)に応じて、バイパススイッチ1043から入力された信号ごとに出力する加算器を切替えるように切替制御手段1001により制御される(切替制御手段1001については後述する)。
【0047】
各マトリックススイッチ1044間では、入力された信号を転送可能に構成されている。これにより、所定のマトリックススイッチ(例えばマトリックススイッチ1044a1とする)に入力された信号を、異なるマトリックススイッチ(例えばマトリックススイッチ1044b1とする)の出力側に設けられた加算器(例えば加算器1042b1とする)に出力することが可能となる。なお、この動作は切替制御手段1001により制御される。
【0048】
超音波プローブ1が第2のモードで動作する場合には、マトリックススイッチ1044は、バイパススイッチ1043から入力された信号を出力側に配置された加算器1042に出力するように、切替制御手段1001に制御される。また、超音波プローブ1が第1のモードで動作する場合には、マトリックススイッチ1044は、入力された信号を、その位相ごとに所定の加算器1042に出力するように、切替制御手段1001により制御される。本制御については、切替制御手段1001の動作と合わせて後述する。
【0049】
本発明に係るプローブハンドル内制御回路100aは、切替制御手段1001を備えている。プローブハンドル内制御回路100aは、本体制御回路21から受信したプローブ制御データに含まれる送信遅延時間を基に、超音波を送信する超音波振動子(例えば第1のモードの場合は領域Bに含まれる超音波振動子)に対応するパルサー群101に超音波の送信を指示する。また、プローブハンドル内制御回路100aは、本体制御回路21から受信したプローブ制御データに含まれる動作モード、受信遅延時間、及び、マトリックススイッチ切替信号を切替制御手段1001に送信し、バイパススイッチ1043及びマトリックススイッチ1044の切替を指示する。
【0050】
切替制御手段1001は、受信した動作モードに応じてバイパススイッチ1043を切替える。また、切替制御手段1001は、受信した各超音波振動子それぞれの受信遅延時間及びマトリックススイッチ切替信号を基に、サブアレイ受信ビームフォーマ群1041及びマトリックススイッチ1044を制御する。切替制御手段1001によるサブアレイ受信ビームフォーマ群1041、バイパススイッチ1043及びマトリックススイッチ1044の制御について、図1及び図2を参照しながら動作モードごとに具体的に説明する。
【0051】
まず、超音波プローブ1が第2のモード(例えばBモード)で動作する場合の動作について、図2(a)を参照しながら説明する。図2(a)は超音波プローブ1が第2のモードで動作する場合におけるチャネル制御回路104aの動作を説明するための図である。
【0052】
切替制御手段1001は、第2のモードでの動作する場合、プリアンプ群103の各プリアンプからの信号がサブアレイ受信ビームフォーマ群1041を通過するようにバイパススイッチ1043を第1の接点に切替える。このとき、あわせて切替制御手段1001は、サブアレイ受信ビームフォーマ群1041を構成する各サブアレイ受信ビームフォーマに入力される信号の出力元である超音波振動子に対応した受信遅延時間を、サブアレイ受信ビームフォーマそれぞれに送信し遅延処理を指示する。これにより、例えばサブアレイ102a1のα1列、β1列、及び、γ1列に対応する超音波振動子からの信号の位相が、遅延時間td1の信号にそろえられる。
【0053】
次に、切替制御手段1001は、受信遅延時間及びマトリックススイッチ切替信号を基に、サブアレイ受信ビームフォーマ群1041から出力されバイパススイッチ1043を経てマトリックススイッチ1044に入力された信号が、該マトリックススイッチ1044の出力側に設けられた加算器1042に出力されるように、マトリックススイッチ1044を制御する。
【0054】
具体的には切替制御手段1001は、図2(a)に示すように、例えば、サブアレイ102a1のα1列、β1列、及び、γ1列に対応する超音波振動子からの信号を、該サブアレイ102a1に対応する加算器1042a1に出力するように、マトリックススイッチ1044を制御する。同様に、サブアレイ102a3のα3列、β3列、及び、γ3列に対応する超音波振動子からの信号は、該サブアレイ102a3に対応する加算器1042a3に出力されることになる。
【0055】
したがって、超音波プローブ1が第2のモードで動作する場合、チャネル制御回路104aは、図10に示す従来のチャネル制御回路104と同じ動作を行う構成となる。
【0056】
次に、超音波プローブ1が第1のモード(例えばSCWモード)で動作する場合の動作について、図2(b)を参照しながら説明する。図2(b)は超音波プローブ1が第1のモードで動作する場合におけるチャネル制御回路104aの動作を説明するための図である。
【0057】
切替制御手段1001は、第1のモードで動作する場合、プリアンプ群103の各プリアンプからの信号がバイパス信号線を通過するようにバイパススイッチ1043を第2の接点に切替える。これにより、第1のモードで動作する場合、サブアレイ受信ビームフォーマ群1041はバイパスされ各超音波振動子からの信号に対して遅延処理は実行されないことになる。
【0058】
次に、切替制御手段1001は、受信遅延時間及びマトリックススイッチ切替信号を基に、各超音波振動子からプリアンプ群103を経て出力される信号のうち、所定の位相の信号(例えば遅延時間td1の信号)が所定の加算器1042(例えば加算器1042a1)に出力されるようにマトリックススイッチ1044を制御する。
【0059】
例えば、図2(b)において、サブアレイ102a1のα1列、サブアレイ102a2のα2列、及び、サブアレイ102a3のα3列に対応する超音波振動子からの信号が同じ位相(遅延時間td1)を示しているものとする。同様に、β1列、β2列、及び、β3列に対応する超音波振動子からの信号が同じ位相(遅延時間td2)を示し、γ1列、γ2列、及び、γ3列に対応する超音波振動子からの信号が同じ位相(遅延時間td3)を示しているものとする。
【0060】
このとき、切替制御手段1001は、図2(b)に示すように、同じ位相(遅延時間td1)を示すサブアレイ102a1のα1列、サブアレイ102a2のα2列、及び、サブアレイ102a3のα3列に対応する超音波振動子からの信号が、マトリックススイッチ切替信号により遅延時間td1に対応付けられた加算器1042a1に出力されるようにマトリックススイッチ1044を制御する。同様に、切替制御手段1001は、β1列、β2列、及び、β3列に対応する超音波振動子からの信号は遅延時間td2に対応付けられた加算器1042a2に、γ1列、γ2列、及び、γ3列に対応する超音波振動子からの信号は遅延時間td3に対応付けられた加算器1042a3に出力されるようにマトリックススイッチ1044を制御する。
【0061】
なお上述では、マトリックススイッチ1044は、図1に示すように、所定のサブアレイ(例えばサブアレイ102a1)から出力される信号を加算する加算器1042ごとに設けられているものとして説明したが、複数の加算器1042に対して1つのマトリックススイッチ1044が設けられていても良い。
【0062】
加算器1042から出力された信号は、プローブケーブル11及び電子回路群121を介し、本体プリアンプ群240で増幅される。図2(a)及び図2(b)に示すように、超音波プローブ1内の各加算器1042と本体プリアンプ群240の各プリアンプは、マトリックススイッチ切替信号により1対1で対応付けられている。これにより、例えば加算器1042a1から出力された信号は本体のプリアンプCh1に、加算器1042a3から出力された信号は本体のプリアンプCh3に出力される。
【0063】
以上により、超音波プローブ1内の各加算器(例えば加算器1042a1〜1042a3)と、本体プリアンプ群240の各プリアンプ(例えばプリアンプCh1〜Ch3)それぞれとが対応付けられる。
【0064】
本体プリアンプ群240で増幅され出力された信号は、本体受信遅延加算回路241に入力され遅延処理が施され加算されたうえで信号処理部25に出力される。このとき本体受信遅延加算回路241は、本体制御回路21からの制御に従い、本体プリアンプ群240に含まれるプリアンプそれぞれからから入力された信号それぞれに対し遅延処理を施す(本体制御回路21については後述する)。
【0065】
具体的には、マトリックススイッチ切替信号を基にしたマトリックススイッチ1044の制御により、本体プリアンプ群240に含まれるプリアンプそれぞれから所定の位相の信号が入力されるため、該プリアンプごとに該位相に対応する遅延時間を施す。例えば図2(b)に示すように、本体プリアンプ群240のプリアンプCh1には加算器1042a1からの信号が入力される。そのため、プリアンプCh1からの信号には、サブアレイ102a1のα1列、サブアレイ102a2のα2列、及び、サブアレイ102a3のα3列に対応する超音波振動子に対する受信遅延時間を基に遅延処理を施すことになる。
【0066】
(処理)
次に本実施形態に係る超音波プローブ1の第1のモードでの動作について、図3を参照しながら説明する。図3は、本発明に係る超音波プローブの動作を示すフローチャートである。
【0067】
(ステップS1)
まず、本体制御回路21は、操作パネル20からの操作者による指定を受け、超音波診断装置の動作モードをSCWモードに変更する。このとき、超音波振動子群102を、超音波を受信する領域Aと超音波を送信する領域Bとに分ける領域制御信号もあわせて作成する。
【0068】
(ステップS2)
次に、本体制御回路21は、操作パネル20からの操作者による観測点の指定を受け、超音波振動子群102を構成する各超音波振動子と該観測点との距離から、超音波を送信する領域Bの各超音波振動子に対応する送信遅延時間と超音波を受信する領域Aの各超音波振動子に対応する受信遅延時間を算出する。
【0069】
(ステップS3)
超音波を受信する領域Aの各超音波振動子に対応する受信遅延時間を算出したら、本体制御回路21は、本体プリアンプ群240の各プリアンプ(例えばプリアンプCh1〜Ch3)に受信遅延時間(例えばtd1〜td3)を対応付け、本体プリアンプ群240のプリアンプそれぞれに、対応付けた遅延時間を持つ信号が入力されるように超音波プローブ1に含まれるマトリックススイッチ1044を制御するマトリックススイッチ切替信号を作成する。
【0070】
(ステップS4)
次に、本体制御回路21は、算出した送信遅延時間及び受信遅延時間と、領域制御信号と、動作モード、及び、マトリックススイッチ切替信号とを、プローブ制御データとして、プローブコネクタ内制御回路120を介しプローブハンドル内制御回路100aに送信する。プローブハンドル内制御回路100aは、本体制御回路21からプローブ制御データを受信すると、まずプローブ制御データ内の領域制御信号を基に、超音波振動子群102を、超音波を受信する領域Aと超音波を送信する領域Bとに分ける。
【0071】
(ステップS51)
次に、プローブハンドル内制御回路100aは、プローブ制御データ内の送信遅延時間を基に送信タイミングパルスを生成し、パルサー群101に送信する。
【0072】
(ステップS61)
パルサー群101は、プローブハンドル内制御回路100aから受信した送信タイミングパルスを基に、送信パルスを超音波振動子群102の各超音波振動子に送信し、送信ビームを生成する。なお、ステップS51及びステップS61に係る処理は、従来技術と同様である。
【0073】
(ステップS52)
プローブハンドル内制御回路100aは、ステップS51及びステップS61に係る処理とあわせて、プローブ制御データ内の動作モードを基に、バイパススイッチ1043の切替えを切替制御手段1001に指示する。切替制御手段1001は、動作モード(この場合は第1の動作モードとなる)を基にバイパススイッチ1043をバイパス信号線側に切替える。
【0074】
(ステップS62)
また、プローブハンドル内制御回路100aは、プローブ制御データ内の受信遅延時間及びマトリックススイッチ切替信号を基に、マトリックススイッチ1044の切替えを切替制御手段1001に指示する。切替制御手段1001は、受信遅延時間及びマトリックススイッチ切替信号を基に、各超音波振動子からプリアンプ群103を経て出力される信号のうち、同じ位相を示す信号が所定の加算器1042に出力されるようにマトリックススイッチ1044を切替える。
【0075】
(ステップS7)
次に、超音波を送信する領域Bの各超音波振動子から送信ビームが送信され、その反射波が超音波を受信する領域Aの対応する超音波振動子で受信される。領域Aの超音波振動子で受信された超音波エコー信号は、プリアンプ群103で増幅され、バイパススイッチ1043の切替によりバイパス信号線側を通過し、マトリックススイッチ1044に入力される。
【0076】
このとき図2(b)に示すように、マトリックススイッチ1044の切替えにより、同じ位相を示す信号(例えばα1列、α2列、及び、α3列に対応する超音波振動子から出力される信号)が、所定の位相の信号(例えば遅延時間td1の信号)に対応付けられた加算器1042(例えば加算器1042a1)に出力され、該加算器1042により加算された信号は、電子回路群121を介し、マトリックススイッチ切替信号により該加算器に対応付けられた本体のプリアンプ(例えば本体のプリアンプCh1)に出力される。
【0077】
(ステップS8)
本体プリアンプ群240は、受信信号を増幅し本体受信遅延加算回路241に入力する。このとき、本体制御回路21は、マトリックススイッチ1044の制御に対応して、本体プリアンプ群240の各プリアンプに受信遅延時間を対応させ、本体受信遅延加算回路241に遅延処理を指示する。本体受信遅延加算回路241は、本体制御回路21からの指示に従い、各プリアンプからの信号に対し遅延処理を施し、加算したうえで信号処理部25に出力する。本体受信遅延加算回路241から出力された信号は、信号処理部25で信号処理されたうえで、画像処理部26にて超音波画像に変換され、表示部27に表示される。
【0078】
(ステップS9)
その後、操作パネル20から操作者により観測点の変更が指示された場合(ステップS9、Y)、新たに指定された観測点に対し、送信遅延時間及び受信遅延時間を算出しなおし、新たな観測点に対する処理を実行する。観測点の変更に係る指示が無い場合(ステップS9、N)、処理を終了する。
【0079】
以上、第1の実施形態に係る超音波プローブによれば、プリアンプ群等の電子回路を内蔵した超音波2Dアレイプローブを使用する超音波診断装置において、プローブに内蔵される電子回路(サブアレイ受信ビームフォーマ群1041)の性能の制約に制限されることなく広いダイナミックレンジを確保することが可能となる。これにより、SCWモード等のような第1のモード(超音波を送信する複数の超音波振動子と超音波を受信する複数の超音波振動子とに分けて超音波を送受信するモード)においても、受信性能を確保することが可能となる。
【0080】
また、第1のモードのように広いダイナミックレンジが要求される場合においても、数個単位の振動子毎に受信信号を加算して超音波診断装置本体に送信することが可能となるため、プローブケーブル内の信号線の本数が低減することが可能となり、従来よりもプローブケーブルを細くすることが可能となる。
【0081】
(変形例1)
次に変形例1に係る超音波プローブの構成について、図4及び図5を参照しながら説明する。図4は、変形例1に係る超音波プローブにおけるチャネル制御回路104bのブロック図である。また図5は、変形例1に係るチャネル制御回路104bの動作を説明するための図である。なお、変形例1に係る超音波プローブの説明では、第1の実施形態に係る超音波プローブと異なる切替制御手段1001及びマトリックススイッチ1044の第1のモードでの動作に着目して説明する(第2のモードでの動作は第1の実施形態と同様である)。
【0082】
第1の実施形態に係るマトリックススイッチ1044は、同じ位相を示す信号を超音波振動子群102の領域Aに含まれる超音波振動子全てから抽出し、所定の加算器1042に出力されるように制御する。そのため、各マトリックススイッチが、超音波振動子群102の領域Aに含まれる超音波振動子全てを参照して信号を抽出する必要があり、各マトリックススイッチの処理が複雑になる。
【0083】
変形例1に係る超音波プローブにおいては、図4に示すように、超音波振動子群102を2以上のサブアレイ(例えばサブアレイ102a1〜102a3)で構成されるサブグループ(例えばサブグループ102a及び102b)に分割し、各マトリックススイッチ1044が、対応するサブグループに含まれる超音波振動子から同じ位相を示す信号を抽出する。これにより、各マトリックススイッチ1044は、サブグループに含まれる超音波振動子のみを参照すればよく、各マトリックススイッチ1044の処理を軽減することが可能となる。変形例1に係る超音波プローブについて以下に具体的に説明する。
【0084】
なお、変形例1に係る超音波プローブに関する説明にあたり、図4及び図5の例では、サブアレイ102a1〜102a3がサブグループ102aに、サブアレイ102b1〜102b3がサブグループ102bに含まれているものとする。また、図5の例では、サブアレイ102a1〜102a3のα1列〜α3列及びサブアレイ102b1〜102b3のα4列〜α6列に対応する超音波振動子が同じ位相(遅延時間td1)を示す信号を出力するものとする。同様に、サブアレイ102a1〜102a3のβ1列〜β3列及びサブアレイ102b1〜102b3のβ4列〜β6列に対応する超音波振動子が同じ位相を(遅延時間td2)示し、サブアレイ102a1〜102a3のγ1列〜γ3列及びサブアレイ102b1〜102b3のγ4列〜γ6列に対応する超音波振動子が同じ位相(遅延時間td3)を示すものとする。
【0085】
変形例1に係る切替制御手段1001は、動作モードが第1のモード(例えばSCWモード)の場合、図5に示すように、同一サブグループ内で所定の同じ位相(例えば遅延時間td1)を示す信号(例えば、α1列、α2列、及び、α3列に対応する超音波振動子からの信号)が該サブグループ内の該位相に対応付けられた加算器(例えば加算器1042a1)に入力されるようにマトリックススイッチ1044を制御する。
【0086】
このとき、切替制御手段1001は、異なるサブグループに含まれる加算器1042への信号の転送は行わない。具体的には切替制御手段1001は、図5に示すように、サブグループ102aに含まれる超音波振動子からの信号は、該サブグループ102aに対応付けられた加算器1042a1〜1042a3に入力されるように制御する。このとき、サブグループ102aに含まれる超音波振動子からの信号は、サブグループ102bのような他のサブグループに対応付けられた加算器1042b1〜1042b3には入力されない。
【0087】
つまり、遅延時間td1の信号が出力される、サブアレイ102a1〜102a3のα1列〜α3列及びサブアレイ102b1〜102b3のα4列〜α6列に対応する超音波振動子を例に説明すると、サブアレイ102a1〜102a3のα1列〜α3列に対応する超音波振動子からの信号は加算器1042a1に出力され、サブアレイ102b1〜102b3のα4列〜α6列に対応する超音波振動子からの信号は加算器1042b1に入力されることになる。
【0088】
なお上記では、各サブグループと各加算器の対応付けを切替制御手段1001が行う例を説明したが、各サブグループと各加算器の対応付けを本体制御回路21が行っても良い。この場合、本体制御回路21は、各サブグループと各加算器の対応付けに関する制御情報も含めマトリックススイッチ切替信号として超音波プローブ1に送信する。
【0089】
以上により、変形例1に係る超音波プローブによれば、各マトリックススイッチ1044は、対応付けられたサブグループに含まれる超音波振動子のみを参照すればよく、各マトリックススイッチ1044の処理を軽減することが可能となる。
【0090】
(変形例2)
次に変形例2に係る超音波プローブの構成について、図6を参照しながら説明する。図6は、変形例2に係る超音波プローブにおけるチャネル制御回路104cのブロック図である。なお、変形例2に係る超音波プローブの説明では、第1の実施形態及び変形例1に係る超音波プローブと異なるプリアンプ群103及びバイパススイッチ1043の構成と、切替制御手段1001及びマトリックススイッチ1044の第1のモードでの動作に着目して説明する(第2のモードでの動作は第1の実施形態と同様である)。
【0091】
第1の実施形態及び変形例1に係る超音波プローブでは、チャネル制御回路104a及び104bの構成上、超音波を受信する領域Aの各振動子に設定できる位相の種類は、各加算器に入力される信号線の数や、加算器の数により制限される。例えば図2(b)に示した第1の実施形態に係るチャネル制御回路104aの動作のように、サブアレイ102a1〜102a3に含まれる超音波振動子からの信号が、加算器1042a1〜1042a3に入力されるものとして説明する。この場合、設定できる位相の種類は最大で加算器の数である3種類となる。また、各加算器に入力できる信号線の数は最大で9本となるため、同一の位相を示す信号が10以上存在する場合、設定できる位相の種類は加算器の数未満(3種類未満)となる。
【0092】
変形例2に係る超音波プローブにおいては、図6に示すように、プリアンプ群103の各プリアンプにより一部の信号の位相を180度反転させることが可能となる。これにより、例えば信号の波長を2Tとして、td+Tの遅延をもって出力される信号の位相を反転させることで、tdの遅延をもって出力される信号と加算して出力することが可能となり、上述した設定できる位相の種類に関する制約を緩和することが可能となる。変形例2に係る超音波プローブについて以下に具体的に説明する。
【0093】
変形例2に係るプリアンプ群103を構成する各プリアンプは、切替制御手段1001からの指示を受けて、入力された信号の位相を180度反転させて出力可能に構成されている。プリアンプ群103は、位相を反転させない信号を出力する信号線とは異なる信号線(この信号線を「反転信号線」と呼ぶ)を設け、位相を反転させた信号を該反転信号線に出力する。
【0094】
変形例2に係るバイパススイッチ1043は、サブアレイ受信ビームフォーマ群1041の出力側に設けられた第1の接点と、バイパス信号線側に設けられた第2の接点とに加え、前述した反転信号線に設けられた第3の接点とのいずれかに切替可能に構成されている。
【0095】
ここで図7を参照しながら、変形例2に係る切替制御手段1001、及び、マトリックススイッチ1044の動作について説明する。図7は、変形例2に係るチャネル制御回路104cの動作を説明するための図である。
【0096】
なお、変形例2に係る超音波プローブに関する説明にあたり、図6及び図7の例では、サブアレイ102a1〜102a3がサブグループ102aに、サブアレイ102b1〜102b3がサブグループ102bに含まれているものとする。
【0097】
また、図7の例では、サブアレイ102a1のα1列及びサブアレイ102a3のα3列に対応する超音波振動子が同じ位相(遅延時間td1)を示す信号を出力し、サブアレイ102a2のα2’列に対応する超音波振動子が、α1列及びα3列に対応する超音波振動子が出力する信号と180度位相が反転した(遅延時間td1+T)信号を出力するものとする。同様にβ1列及びβ3列に対応する超音波振動子が同じ位相(遅延時間td2)を示す信号を出力し、β2’列に対応する超音波振動子が、β1列及びβ3列に対応する超音波振動子が出力する信号と180度位相が反転した(遅延時間td2+T)信号を出力する(γ1列及びγ3列に対応する超音波振動子からの信号(遅延時間td3)と、γ2’列に対応する超音波振動子からの信号(遅延時間td3+T)の関係も同様である)。
【0098】
変形例2に係る切替制御手段1001は、動作モードが第1のモード(例えばSCWモード)の場合、まず、受信したプローブ制御データ内の受信遅延時間を基に、各超音波振動子から出力される信号の位相の種類と、各位相に対応する超音波振動子の数、及び、加算器1042の数を基に、位相を180度反転させるプリアンプ群103のプリアンプを決定する。
【0099】
例えば図7に示すようにサブグループ102aに含まれるサブアレイ102a1〜102a3の場合、位相の種類が6種類に対し、加算器の数が3となり、位相の種類の数が加算器の数を上回る。このとき、本体制御回路21は、サブアレイ102a2のα2’列、β2’列及びγ2’列に対応する各超音波振動子からの信号の位相を反転するようにプリアンプ群103の各プリアンプを制御し、該プリアンプの出力側に設置されたバイパススイッチ1043を第3の接点に切替え、その他のバイパススイッチ1043を第2の接点に切替える。
【0100】
また、切替制御手段1001は、前述した位相の反転に係る制御を受け、位相を反転した信号も含め、所定の同じ位相を示す信号が所定の加算器に入力されるようにマトリックススイッチ1044を制御する。
【0101】
図7を例に具体的に説明する。例えば図7では、サブアレイ102a1のα1列及びサブアレイ102a3のα3列に対応する超音波振動子からの信号と、位相を反転したサブアレイ102a2のα2’列に対応する超音波振動子からの信号は同一の位相(遅延時間td1)を示しており、該位相に対応付けられた加算器1042a1に入力されることになる。同様に、β1列及びβ3列に対応する超音波振動子からの信号と、位相を反転したβ2’列に対応する超音波振動子からの信号(遅延時間td2)は加算器1042a2に入力され、γ1列及びγ3列に対応する超音波振動子からの信号と、位相を反転したγ2’列に対応する超音波振動子から信号(遅延時間td3)は加算器1042a3に入力される。
【0102】
なお、位相反転に係るプリアンプ群103の制御及びバイパススイッチ1043の第3の接点又は第2の接点への切替えに係る制御は、本体制御回路21が制御する構成としても良い。この場合、本体制御回路21は、バイパススイッチの1043の切替に関する制御信号をマトリックススイッチ制御信号に含めて超音波プローブ1に送信する。また、変形例1と同様に、各サブグループと各加算器の対応付けを本体制御回路21が行っても良い。
【0103】
以上により、変形例2に係る超音波プローブによれば、一部の超音波振動子からの信号の位相を反転させることで、位相が180度異なる信号を同一の信号として同一の加算器で加算することが可能となる。これにより、図7に示すように、各超音波振動子に対し、第1の実施形態又は変形例1に係る超音波プローブよりも、より細かくかつ柔軟に位相を設定することが可能となる。また、第1の実施形態及び変形例1では、本体受信遅延加算回路241により別々の遅延計算(遅延td及び遅延td+T)を行っていた処理を、同一の遅延計算(遅延td)により処理することが可能となる。
【0104】
なお、上記では第1の動作モードとしてSCWモードを例に説明しているが、SCWモードに限定されるものではない。超音波振動子群102を目的の異なる動作領域に分けて使用するモードについて同様に適用することが可能である。
【0105】
また、本説明では、チャネル制御回路104a〜104cの構成として、プリアンプ群103の出力側にサブアレイ受信ビームフォーマ群1041、バイパススイッチ1043、及び、マトリックススイッチ1044が、この順で設けられた例を説明したが本構成に限定するものではない。
【0106】
図8は、本発明に係るチャネル制御回路の回路構成の例である。例えば、図8(a)に示すように、バイパススイッチ1043が、サブアレイ受信ビームフォーマ群1041の入力側及び出力側の双方に設けられていても良いし、図8(b)及び図8(c)に示すようにサブアレイ受信ビームフォーマ群1041の入力側に設けられていても良い。また、図8(c)及び図8(d)に示すように、サブアレイ受信ビームフォーマ群1041とマトリックススイッチ1044とを並列に設けても良い。上述したように、各超音波振動子からの信号を動作モードに応じて所定の加算器1042に入力できれば、チャネル制御回路104a〜104cの回路構成は限定されない。
【符号の説明】
【0107】
1 超音波プローブ 10 プローブハンドル
100、100a プローブハンドル内制御回路 101 パルサー群
102 超音波振動子群 103、103a プリアンプ群
104、104a、104b、104c チャネル制御回路
1041 サブアレイ受信ビームフォーマ群 1042 加算器
1043 バイパススイッチ 1044 マトリックススイッチ
11 プローブケーブル 12 プローブコネクタ
120 プローブコネクタ内制御回路 121 電子回路群
2 超音波診断装置本体 20 操作パネル 21 本体制御回路
220 本体送信遅延回路 221 本体パルサー群
23 本体側プローブコネクタ
240 本体プリアンプ群 241 本体受信遅延加算回路
25 信号処理部 26 画像処理部 27 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送信し、被検体内で反射される超音波エコーを受信する二次元に配列された複数の超音波振動子を有し、前記複数の超音波振動子を、前記超音波を送信する群と前記超音波エコーを受信する群とに分けて動作する第1のモードと、前記超音波を送信し、同じ前記超音波振動子で前記超音波エコーを受信する第2のモードとで動作する超音波プローブであって、
前記第2のモードで動作するときに、前記超音波エコーを受信した前記超音波振動子それぞれからの出力を受けて、それぞれの位相をそろえる複数のビームフォーマと、
前記第1のモードで動作するときに、前記超音波エコーを受信した前記超音波振動子それぞれからの出力を受けて、同じ位相の前記出力同士を選択して出力するマトリックススイッチと、
前記第2のモードで動作するときに、前記ビームフォーマそれぞれの出力を、前記ビームフォーマそれぞれにより同じ位相にそろえられたグループごとに加算して出力し、前記第1のモードで動作するときに、前記マトリックススイッチの出力を、同じ位相のグループにまとめて加算して出力する複数の加算器とを備えることを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
二次元に配列された複数の超音波振動子により構成された超音波振動子群と、前記超音波振動子群を用いて超音波を送信し、被検体内で反射され受信される超音波エコーを前記超音波振動子ごとに増幅するプリアンプと、前記プリアンプが増幅した超音波エコーに遅延処理を施し、前記超音波振動子群に含まれる複数の前記超音波振動子から出力された前記超音波エコーの位相をそろえるビームフォーマ群とを備え、受信した前記超音波エコーを超音波診断装置に出力する超音波プローブであって、更に、
前記複数の超音波振動子を、超音波を送信する複数の超音波振動子と超音波を受信する複数の超音波振動子とに分けて超音波を送受信する第1のモードで動作する場合に、前記ビームフォーマをバイパスした信号を出力し、同じ超音波振動子で超音波の送受信を行う第2のモードで動作する場合に、前記ビームフォーマからの信号を出力する切替手段と、
複数の前記切替手段から出力される信号を同じ位相のグループにまとめて加算して出力する加算器と、
前記切替手段と前記加算器との間に介在し、前記第1のモードで動作する場合に、前記切替手段からの出力が、同じ位相の種類ごとに、異なる前記加算器に入力されるように制御するマトリックススイッチとを備えることを特徴とする超音波プローブ。
【請求項3】
前記超音波を受信する複数の超音波振動子を、1以上の前記超音波振動子を含む2以上のサブグループに分け、前記サブグループごとに、前記ビームフォーマ群と、前記切替手段と、前記マトリックススイッチと、前記加算器との組み合わせを配置し、
前記第1のモードで動作する場合に、前記マトリックススイッチが、前記サブグループに含まれる前記切替手段からの出力を、同じ位相の種類ごとに、異なる前記加算器に入力されるように制御することを特徴とする請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
更に一部の前記プリアンプが、前記超音波振動から出力される超音波エコーの位相を反転して出力し、
前記切替手段は、前記第1のモードで動作する場合に、前記ビームフォーマをバイパスした信号及び前記プリアンプが前記超音波エコーの位相を反転した信号のいずれかを出力し、
前記マトリックススイッチは、前記第1のモードで動作する場合に、前記切替手段からの前記ビームフォーマをバイパスした出力及び前記プリアンプが前記超音波エコーの位相を反転した出力を、同じ位相の種類ごとに、異なる前記加算器に入力されるように制御することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の超音波プローブ。

【図3】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図12】
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