説明

超音波モータ

【課題】 超音波モータに位相の異なる交流信号を与えて、長期間、連続駆動させたところ、1秒間に何十回もの振動の影響により、該超音波モータの構成部品の中でも特に強度が弱い部分である電極板および電極板に半田付けされた導線(リード線)が疲労破壊する問題が発生した。
【解決手段】 圧電素子を備えたランジュバン型の2個の超音波振動子を所定の角度で保持する保持部材と、略V字型の形状を有し、その頂点部で被駆動体と接し、その端部で2個の超音波振動子と接続された接触部材を具備する超音波モータにて、圧電素子の電極板の電極板厚みを0.05mm〜0.3mmとし、首部から先端までの長さを10mm以上とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波モータに関し、より詳しくは、超音波モータを駆動することによってX−Yステージ等の被駆動体を高速で移動させ、高精度に位置決めさせる位置決め装置等の電子機器に使用される超音波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、二つの超音波振動子を組み込んだ駆動子を複数設けることによって可動子としてのロータを回転させる超音波モータがある。駆動子の固有振動モードとしては、横振動モードと縦振動モードとがある。この二つの振動モードの共振周波数を一致させることによって、二つの振動モードは縮退する。よって、このような縮退を生じる共振周波数で、各超音波振動子に異なる位相の電圧をかけると、二つの超音波振動子の変位を合成する駆動子の先端部は、楕円運動を行う。そして、このような複数の駆動子はロータの外周部に当接可能に配置されており、各駆動子の楕円運動による駆動力がロータに伝達されてロータが回転する。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−152671号公報
【0004】
ここで、特許文献1に記載の超音波モータの構成を図1に示す。図1において、10は駆動子であり、駆動子10は所定角度(例えば、90度)に開いた二つの超音波振動子のそれぞれに圧電素子からなる圧電振動子5が配設され、且つこの二つの超音波振動子が結合する頂点部である接触部材7が被駆動体(図示せず)と接触するように配設し、前記一対の駆動源のそれぞれには位相の異なる交流信号を与えることで超音波振動の合成がなされ、被駆動体を移動させる。二つの超音波振動子は所定の角度で保持する保持部材で結合している。又、駆動子10は電極板2を有する2枚の圧電振動子5がボルト6とナット1によって保持部材4を挟んで締め付けられる。電極板2には導線(リード線)3が半田付けされ、この導線(リード線)3を介して交流信号が入力される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この超音波モータに位相の異なる交流信号を与えて、長期間、連続して共振駆動させたところ、1秒間に何十回もの屈曲振動により超音波モータの構成部品の中でも特に強度が弱い部分である電極板2および電極板2に半田付けされた導線(リード線)が疲労破壊する問題が発生した。具体的には図2に示される電極板2が、図2(a)のように
電極板の先端部分で導線(リード線)3と半田付けされているが、A−A線(点線)のような半田付け箇所近辺にて電極板が千切れてしまったり、図2(b)のように電極板2と半田付けされた導線(リード線)3がB−B線(点線)のような半田付け箇所近辺で被覆されていない箇所にて断線してしまった。
【0006】
更に図2(a)のようにA−A線(点線)にて電極板が千切れてしまった場合、疲労破壊している段階である電極板2が千切れる前の過程で、電極板2と導線(リード線)3の接触等により異音が発生した。
【0007】
本発明は、このような考察に基づいてなされたものであり、超音波モータの共振振動により導線(リード線)の断線を起こさず、且つ異音の発生を抑えることが可能となる超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、圧電素子を備えたランジュバン型の2個の超音波振動子と、前記2個の超音波振動子を所定の角度で保持する保持部材と、略V字型の形状を有し、その頂点部で前記被駆動体と接し、その端部で前記2個の超音波振動子と接続された接触部材と、を具備する超音波モータにおいて、前記圧電素子は複数の圧電体と電極板にて構成され、前記電極板の厚さが0.05mm以上0.3mm以下であり、かつ、前記電極板の首部から前記電極板の先端までの長さが10mm以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電極板と導線(リード線)との半田箇所を最も振動する圧電振動子の近傍から遠ざけることにより、半田箇所付近の振動を軽減して共振振動による電極板或いは導線(リード線)の断線が起こる可能性を無くすことが出来る。
【0010】
また同様に、半田箇所付近の振動を軽減して共振振動による電極板が疲労破壊するようなことがなくなり、この点による信頼性を向上させるのみならず、電極板と導線(リード線)の接触による異音の発生を抑えることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図3は本発明における電極板である。図3(a)は従来から使用されている電極板の模式図であり、図3(b)が本発明にて実施した電極板の模式図である。
【0012】
従来より使用している電極板は図3(a)のように円環状で、中が円環状に刳り抜かれているドーナツ型電極に、細長い長方形型(又は片側を半円形にしたもの)電極をくっつけた形状の電極である。ドーナツ型電極と長方形型電極が合わさっていて、窪んでいる首部9から長方形型電極の先端部(導線と半田付けする箇所)までの長さ8は通常、5mm程度である。又、電極板はリン青銅、ベリリウム銅、ニッケル、等が使用されている。
【0013】
それに対し、実施例として図3(b)のように図3(a)の電極板のドーナツ型電極と長方形型電極が合わさっていて、窪んでいる首部9から長方形型電極の先端部(導線と半田付けする箇所)までの長さ8を長くして、電極板或いは導線(リード線)が疲労破壊するかを確かめた。電極板はリン青銅で厚みは0.03mm、0.05mm、0.15mm、0.3mm、0.5mmとし、超音波モータの圧電振動子に印加する信号は100Vrmsの交流電圧で、周波数30kHzで、走行距離400kmで実施した。
【0014】
窪んでいる首部9から長方形型電極の先端部(導線と半田付けする箇所)までの長さ8を5mm、10mm、20mm、30mm、40mm、50mm、60mmとして、各3ケの電極板を用意し、試験した。すると、電極板厚みが0.05mm、0.15mm、0.3mmの場合、窪んでいる首部9から長方形型電極の先端部(導線と半田付けする箇所)までの長さ8が10mm以上の場合はいずれも走行距離400kmを超えても疲労破壊は生じなかった。それに対して、窪んでいる首部9から長方形型電極の先端部(導線と半田付けする箇所)までの長さ8が5mmの場合は、3ケ共数百m走行で電極板或いは導線(リード線)が疲労破壊した。
【0015】
また、電極板の厚さを0.03mmの場合、窪んでいる首部9ら長方形型電極の先端部(導線と半田付けする箇所)までの長さ8の長さがいずれの場合でも、電極板が圧電素子からはみ出している部分で疲労破壊した。
【0016】
また、電極板の厚さを0.5mmの場合、窪んでいる首部9から長方形型電極の先端部(導線と半田付けする箇所)までの長さ8の長さがいずれの場合でも、リード線の取り回しの際に圧電素子からはみ出した部分で折れ曲がり、そこで疲労破壊した。
【0017】
これらの試験より、電極板厚みが0.05mm〜0.3mmにおいて、窪んでいる首部9から長方形型電極の先端部(導線と半田付けする箇所)までの長さ8を10mm以上にした場合は、疲労破壊を防止できた。また、異音の発生を抑制することが確かめられた。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は2個のランジュバン型の超音波振動子を結合した超音波モータにおける電極板とリード線の接続に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来例の超音波モータの模式図である。
【図2】従来例の電極板の疲労破壊箇所の模式図であり、(a)は電極板の破壊箇所を示す模式図、(b)は導線(リード線)の断線箇所を示す模式図である。
【図3】本発明に係る電極板の模式図であり、(a)は従来から使用されている電極板の模式図であり、図3(b)が本発明にて実施した電極板の模式図である。。
【符号の説明】
【0020】
1:ナット
2:電極板
3:導線(リード線)
4:保持部材
5:圧電振動子
6:ボルト
7:接触部材
8:窪んでいる首部から長方形型電極の先端部までの長さ
9:首部
10:駆動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を備えたランジュバン型の2個の超音波振動子と、前記2個の超音波振動子を所定の角度で保持する保持部材と、略V字型の形状を有し、その頂点部で前記被駆動体と接し、その端部で前記2個の超音波振動子と接続された接触部材と、を具備する超音波モータにおいて、前記圧電素子は複数の圧電体と電極板にて構成され、前記電極板の厚さが0.05mm以上0.3mm以下であり、かつ、前記電極板の首部から前記電極板の先端までの長さが10mm以上であることを特徴とする超音波モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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