超音波信号処理装置及び方法
【課題】被検体内での超音波の減衰率を簡便に求めること。
【解決手段】被検体に向けて超音波を送信するとともに、被検体からの超音波エコーを受信して、該超音波エコーを示す受信信号を生成する超音波探触子20と、前記受信信号から前記超音波エコーの位相を示す位相情報を取得する直交検波部41および位相情報演算部43と、被検体の深さ方向における前記超音波エコーの位相の変化から被検体内での超音波の減衰率を導出する減衰率導出部44を備えた。
【解決手段】被検体に向けて超音波を送信するとともに、被検体からの超音波エコーを受信して、該超音波エコーを示す受信信号を生成する超音波探触子20と、前記受信信号から前記超音波エコーの位相を示す位相情報を取得する直交検波部41および位相情報演算部43と、被検体の深さ方向における前記超音波エコーの位相の変化から被検体内での超音波の減衰率を導出する減衰率導出部44を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に向けて超音波を送信するとともに、被検体内からの超音波エコーを受信して、被検体内での超音波の減衰率を導出する超音波信号処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、超音波エコーの受信信号を複数個の帯域フィルタにより帯域分割し、個別に検波した受信信号を重み付け加算するか色相加算することにより、生体内の超音波伝搬にともなう減衰情報を付加することによって、微小なコントラストの差の視認性を大幅に向上させるようにした構成が開示されている。
【特許文献1】特開平7−51270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、中心周波数が異なる複数の帯域フィルタと、帯域ごとに個別に検波および対数圧縮を行う信号処理回路が必要となる。すなわち、ハードウエア構成が複雑となり、装置コストの低減が困難となる。
【0004】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、被検体内での超音波の減衰率を簡便に求めることができる超音波信号処理装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明は、被検体に向けて超音波を送信するとともに、前記被検体内からの超音波エコーを受信して、該超音波エコーを示す受信信号を生成する超音波送受信手段と、前記受信信号から、前記超音波エコーの位相を示す位相情報を取得する位相情報取得手段と、前記被検体の深さ方向における前記超音波エコーの位相の変化から、前記被検体内での超音波の減衰率を導出する減衰率導出手段と、を備えたことを特徴とする超音波信号処理装置を提供する。 この構成により、被検体の深さ方向における超音波エコーの位相の変化から被検体内での超音波の減衰率が導出されるので、簡便に減衰率を求めることができることになる。したがって、中心周波数が異なる複数の帯域フィルタや、帯域ごとに個別に検波および対数圧縮を行う信号処理回路などが不要となる。
【0006】
本発明にて、前記減衰率導出手段は、前記被検体の深さ方向における前記超音波エコーの位相の2次微分値を求めることにより、前記減衰率を導出する態様が、好ましい。
【0007】
この構成により、適切かつ容易に減衰率を導出できる。
【0008】
本発明にて、前記減衰率導出手段は、スペックル成分を除いた位相変化から、前記減衰率を導出する態様が、好ましい。
【0009】
この構成により、被検体の組織性状に対応する正確な減衰率を導出できることになる。
【0010】
例えば、前記減衰率導出手段は、前記被検体の断層面の注目領域にて度数が最大である位相差を前記注目領域の代表値とし、該代表値を前記深さ方向にて微分することにより、前記減衰率を導出する。
【0011】
例えば、前記減衰率導出手段は、前記被検体の断層面をスペックル領域と非スペックル領域とに分け、各注目領域ごとに前記非スペックル領域に属する位相差の平均値を求め、該平均値を前記注目領域の代表値とし、該代表値を前記深さ方向にて微分することにより、前記減衰率を導出する。
【0012】
例えば、前記減衰率導出手段は、前記被検体の断層面をスペックル領域と非スペックル領域とに分け、前記非スペックル領域に属する前記超音波エコーの位相の2次微分値を求めることにより、前記減衰率を導出する。
【0013】
本発明にて、前記超音波送受信手段は、ガウシアンパルスを送信することが、好ましい。
【0014】
本発明にて、前記位相情報取得手段は、前記超音波送受信手段の素子の配列方向における位相の分解能が前記素子の間隔以上であるデータを利用する。
【0015】
本発明にて、前記超音波送受信手段は、1回の超音波送信で前記超音波送受信手段の素子の配列方向にて2音線以上の前記受信データを生成可能であり、前記位相情報取得手段は、前記超音波送受信手段にて生成される2音線以上の前記受信データを利用する。 本発明にて、前記減衰率導出手段にて導出される前記減衰率に基づいて、前記被検体の断層面における減衰率の分布を示す減衰率断層像を生成する減衰率断層像生成手段を備えた態様が、好ましい。
【0016】
この構成により、被検体の断層面における減衰率の分布を見ることで、適切な診断が可能となる。
【0017】
本発明にて、記超音波エコーの受信信号から前記超音波エコーの振幅を示す振幅情報を取得する振幅情報取得手段と、前記振幅情報取得手段にて取得される前記振幅情報に基づいて振幅断層像を生成する振幅断層像生成手段と、前記減衰率断層像と前記振幅断層像とを重畳する画像合成手段と、を備えた態様が好ましい。
【0018】
この構成により、振幅断層像と減衰率断層像とが重畳されることで、適切な診断が可能となる。
【0019】
例えば、前記画像合成手段は、前記減衰率断層像によって前記振幅断層像の輝度または色を変調する。
【0020】
本発明にて、前記超音波エコーの受信信号から前記超音波エコーの振幅を示す振幅情報を取得する振幅情報取得手段と、前記振幅情報取得手段にて取得される前記振幅情報に基づいて振幅断層像を生成する振幅断層像生成手段と、画像を表示可能な表示部と、前記減衰率断層像と前記振幅断層像とを並べて前記表示部に表示させる制御を行う表示制御手段と、を備えた態様が好ましい。
【0021】
この構成により、振幅断層像と減衰率断層像とを容易に対応づけて見ることができ、適切な診断が可能となる。
【0022】
本発明にて、前記減衰率断層像を出力するモードと前記減衰率断層像を出力しないモードとを切り替えるモード切替手段を備えた態様が好ましい。
【0023】
本発明にて、前記減衰率断層像と前記振幅断層像とを合成するモードと前記振幅断層像を合成しないモードとを切り替えるモード切替手段を備えた構成が好ましい。
【0024】
また、本発明は、被検体に向けて超音波を送信するとともに、前記被検体からの超音波エコーを受信し、前記超音波エコーを示す受信信号から、前記超音波エコーの位相を示す位相情報を取得し、前記被検体の深さ方向における前記超音波エコーの位相の変化から、前記被検体内での超音波の減衰率を導出することを特徴とする超音波信号処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、被検体内での超音波の減衰率を簡便に求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付図面に従って、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0027】
<本発明の原理>
まず、本発明の原理を説明する。
【0028】
図1にて、超音波探触子20は、被検体90に向けて超音波を送信するとともに、被検体90内からの反射波(超音波エコー)を受信して、超音波エコーを示す受信信号を生成する複数の超音波送受信素子が配列されている。
【0029】
以下では、被検体90の深さ方向を、「距離方向」ということもある。また、超音波送受信素子が配列されている方向(素子配列方向)を、「スキャン方向」ということもある。
【0030】
なお、以下では、説明の便宜上、1次元配列された超音波送受信素子を有する超音波探触子20を例に説明するが、本発明は、超音波送受信素子が2次元配列されている場合にも適用できる。
【0031】
図2(A)は、水201及び寒天202からなる被検体での振幅断層像であり、図2(B)は、その被検体での位相差断層像である。図2(C)は、図2(A)に示した被検体よりも水201の層が厚い被検体での振幅断層像であり、図2(D)は、その被検体での位相差断層像である。図3は、図2(B)に示した位相差断層像での注目領域(深さ30mmおよびその周辺)における位相差の度数分布301、および、図2(D)に示した位相差断層像での注目領域(深さ50mmおよびその周辺)における位相差の度数分布302を示す。また、図4(A)は、エタノール203及び寒天202からなる被検体での振幅断層像であり、図4(B)は、その被検体での位相差断層像である。図4(C)は、図4(A)に示した被検体よりもエタノール203の層が厚い被検体での振幅断層像であり、図4(D)は、その被検体での位相差断層像である。図5は、図4(B)に示した位相差断層像での注目領域(深さ30mmおよびその周辺)における位相差の度数分布501、および、図4(D)に示した位相差断層像での注目領域(深さ50mmおよびその周辺)における位相差の度数分布502を示す。
【0032】
ここで、振幅断層像は、超音波探触子20から出力される受信信号の振幅に基づいて作成される。具体的には、超音波のパルスを送信してから超音波エコーのパルスを受信するまでの時間(伝搬時間)が反射位置の深さにより異なるので、伝搬時間を被検体内の反射位置の深さに対応付けるとともに、振幅の値を画素の濃度(または色)に対応付けることで、振幅断層像が生成される。また、位相差断層像は、超音波探触子20から出力される受信信号の位相差に基づいて作成される。具体的には、伝搬時間を被検体内の反射位置の深さに対応付けるとともに、位相差の値を画素の濃度(または色)に対応付けることで、位相差断層像が生成される。また、位相差の度数分布は、位相差断層像中の所定の位置およびサイズの注目領域における位相差ごとの頻度(度数)を示す。例えば、位相差断層像を構成する画素の数を、位相差に対応する画素の値ごとにカウントすることで、位相差の度数分布が得られる。
【0033】
図6は、被検体内の反射位置の深さと位相差の関係を示す。図6にて、符号601を付した直線は、水201を伝搬した超音波について深さ方向における位相差の変化を示す。また、符号602を付した直線は、エタノール203を伝搬した超音波について深さ方向における位相差の変化を示す。具体的には、図3に示す度数分布301、302にて度数が最大となる位相差(中心値)を図6にてプロットすることにより、符号601の直線が得られる。また、図5に示す度数分布501、502にて度数が最大となる位相差(中心値)を図6にてプロットすることにより、符号602の直線が得られる。これらの直線601、602の傾きは、それぞれ、被検体を構成する水の減衰率およびエタノールの減衰率に比例している。すなわち、被検体の深さ方向における超音波エコーの位相の2次微分値は、被検体を構成する物質における超音波の減衰率に比例している。
【0034】
本発明では、被検体の深さ方向における超音波エコーの位相の2次微分値を求めることにより、被検体内での超音波の減衰率を導出する。要するに、被検体の深さ方向における超音波エコーの位相の変化から、被検体内での超音波の減衰率を導出する。
【0035】
次に、超音波としてガウシアンパルス(以下「ガウシアン波形」ともいう)を超音波探触子20から送信する場合について、具体的に説明する。
【0036】
送信されるガウシアンパルスの周波数スペクトルは、数1で与えられる。
【0037】
[数1]
A×exp(−(((f−f0)/Δw)2))
ここで、fは周波数、f0は中心周波数、Δwは帯域幅、Aは振幅である。
【0038】
また、深さxにおける減衰は、数2で与えられる。
【0039】
[数2]
T(x)×exp(−αfx)
ここで、T(x)は、拡散による減衰である。exp(−αfx)は、吸収や散乱による減衰であり、周波数に依存する。αは、減衰率である。
【0040】
例えば、超音波の往復を考慮した深さx/2におけるガウシアンパルスの周波数スペクトルは、数1および数2より、数3で与えられる。
【0041】
[数3]
A×T(x)×exp(−αfx)×exp(−(((f−f0)/Δw)2))
深さx/2からのガウシアンパルスの反射波の中心周波数は、f0ではなく、f0−(α×Δw2×x/2)にシフトする。すなわち、反射波は、送信波よりも中心周波数が低くなる。
【0042】
深さxからのガウシアンパルスの反射波は、数4で与えられる。
【0043】
[数4]
u(t)×cos(2π×f(x)×t+φi(t))
=u(t)×cos(2π×fd×t+2π(f(x)−fd)×t+φi(t))
ここで、u(t)は振幅、φi(t)は位相、f(x)は深さxからの反射波の中心周波数、fdは直交検波の周波数である。φi(t)には反射波同士の干渉によって生ずる位相変化、つまりスペックル位相変化成分が含まれている。
【0044】
f(x)は、数3より、数5で表される。但し、t=2x/vであり、vは音速である。
【0045】
[数5]
f(x)=f0−(α×Δw2×x) =f0−(α×Δw2×v×t/2)
周波数fdで直交検波後の位相φ(t)は、数4より2π(f(x)−fd)×t+φi(t)で表され、更に数5のf(x)を代入することにより、数6で示される。
【0046】
[数6]
φ(t)=2π(f0−α×Δw2×v×t/2−fd)×t+φi(t)
数6をtで微分すると、すなわち位相を深さ方向にて微分すると、数7が得られる。
【0047】
[数7]
dφ(t)/dt=
2π(f0−fd−α×Δw2×v×t)+dφi(t) /dt
数7からdφi(t)/dtを除くこと、すなわちスペックル成分(干渉成分)を除くことを考える。例えば、位相差(dφ(t)/dt)として断層面の注目領域における中心値を採用する事、または、断層面をスペックル領域と非スペックル領域とに分けて、スペックル領域の位相差を除き非スペックル領域の位相差を平均化する事で、dφi(t)/dtを除く事ができる。
【0048】
数7に示した位相差(dφ(t)/dt)を、更にtで微分すると、すなわち深さ方向にて更に微分すると、数8が得られる。
【0049】
[数8]
d2φ/dt2=−2πα×Δw2×v
数8において、帯域幅Δwは既知である事から、単位時間当たりの減衰(α×v)が得られる。従って、音速vを別の方法で得れば、単位距離当たりの減衰、すなわち減衰率αが得られる。
【0050】
以上説明したように、送信波形がガウシアンパルスである場合、スペックル成分を除いた位相差の深さ方向(距離方向)における微分値が、減衰率に比例する。すなわち、超音波探触子20から被検体に向けてガウシアンパルスを送信するとともに、超音波探触子20から出力される受信信号を直交検波して、超音波エコーの位相を示す位相φ(t)を取得し、スペックル成分を取り除いた2次微分値(d2φ/dt2)を求めることにより、減衰率αを容易かつ適切に導出することができる。
【0051】
なお、本発明の原理を簡便に説明するために、ガウシアンパルスを送信し、かつ、位相差にてスペックル成分を除いた場合を例に説明したが、本発明は、このような場合に特に限定されるものではない。2次位相差にてスペックル成分を除くようにしてもよい。ガウシアンパルス以外の超音波を被検体に向けて送信することも可能である。
【0052】
以下では、本発明を実施するための具体的な実施形態について、説明する。
【0053】
<超音波診断装置>
図7は、本発明に係る超音波信号処理装置を含む超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
【0054】
図7において、超音波診断装置10は、主に、操作部12、表示部14、超音波探触子20、送受信部30、信号処理部40、画像処理部50、モード切替部62、および、表示制御部64を含んで構成されている。
【0055】
操作部12は、ユーザの指示が入力される指示入力デバイスである。例えば、キーボード、マウスなどによって構成されている。
【0056】
表示部14は、画像を表示可能な表示デバイスである。例えば、LCD(液晶ディスプレイ)などによって構成されている。
【0057】
超音波探触子20は、被検体に向けて超音波を送信するとともに、被検体内で反射されてくる超音波エコーを受信するものである。超音波探触子20は、例えば1次元の超音波トランスデューサアレイを構成する複数の超音波トランスデューサを備えており、各超音波トランスデューサは、例えばPZT等の圧電素子の両端に電極を形成した振動子によって構成されている。超音波探触子20を2次元の超音波トランスデューサアレイによって構成してもよい。
【0058】
送受信部30は、ガウシアンパルスなどの超音波送信信号を超音波探触子20に与え、超音波探触子20に超音波を発生させる。また、被検体内で反射されてくる超音波エコーが超音波探触子20によって受信されると、超音波エコーを示す受信信号を超音波探触子20が出力するので、送受信部30は、その受信信号を増幅及びA(アナログ)/D(デジタル)変換した後、受信フォーカスを施し信号処理部40に入力する。受信フォーカスにより、1回の超音波送信で素子配列方向にて2音線以上の受信データ(音線データ)が生成される。例えば、特開2008―167985号公報に記載のように受信フォーカスを行えばよい。
【0059】
信号処理部40は、受信信号から超音波診断に有用な情報を取得する処理を行う。
【0060】
本例の信号処理部40は、直交検波部41、振幅情報演算部42、位相情報演算部43及び減衰率導出部44を含んで構成されている。
【0061】
直交検波部41は、超音波エコーを示す受信信号に対して直交検波を行う。
【0062】
受信信号y(t)は、数9で表される。
【0063】
[数9]
y(t)=u(t) ×cos(ωt+φ(t))
ここで、u(t)は振幅を示し、φ(t)は位相を示す。
【0064】
受信信号y(t)は、直交検波によって、数10に示すように、実数成分(cos成分)と虚数成分(sin成分)とに分離される。実数成分はI成分、虚数成分はQ成分とも呼ばれる。
【0065】
[数10]
I=u(t)cos(φ(t))
Q=u(t)sin(φ(t))
振幅情報演算部42は、直交検波部41にて得られるI成分及びQ成分に基づいて、振幅u(t)を、数11により算出する。
【0066】
[数11]
u(t)=√(I2+Q2)
位相情報演算部43は、直交検波部41にて得られるI成分及びQ成分に基づいて、位相φ(t)を、数12により算出する。
【0067】
[数12]
φ(t)=tan-1I/Q
直交検波部41および振幅情報演算部42によって、超音波エコーの振幅に対応する振幅情報としてのu(t)を取得する振幅情報取得手段が構成されている。また、直交検波部41および位相情報演算部43によって、超音波エコーの位相に対応する位相情報としてのφ(t)を取得する位相情報取得手段が構成されている。
【0068】
減衰率導出部44は、位相情報演算部43にて得られる位相φ(t)の変化、被検体内での深さ方向における超音波の減衰率を導出する。すなわち、減衰率導出部44は、被検体の深さ方向における超音波エコーの位相の変化から、減衰率を導出する。
【0069】
画像処理部50は、信号処理部40により取得される情報に基づいて画像を生成する処理を行う。
【0070】
本例の画像処理部50は、振幅断層像生成部51、位相差断層像生成部52、減衰率断層像生成部53及び画像合成部54を含んで構成されている。
【0071】
振幅断層像生成部51は、振幅情報演算部42にて算出される振幅u(t)を、被検体の断層面(診断部位断面)における各反射位置に対応する振幅情報に変換するとともに、対数増幅処理や超音波の反射位置の各深さに対応した減衰の補正等を行って、被検体の断層面における各反射位置からの超音波エコーの振幅を示す振幅画像として、振幅断層像(Bモード断層像)を生成する。
【0072】
位相差断層像生成部52は、位相情報演算部43にて算出される位相φ(t)を、被検体の断層面(診断部位断面)における各反射位置に対応する位相差情報に変換して、被検体の断層面における各反射位置からの超音波エコーの位相差を示す位相差画像として、位相差断層像を生成する。
【0073】
減衰率断層像生成部53は、減衰率導出部44によって導出される減衰率を、被検体の断層面(診断部位断面)における各反射位置に対応する減衰率情報に変換して、被検体の断層面における各反射位置での超音波の減衰率を示す減衰率画像として、減衰率断層像を生成する。
【0074】
画像合成部54は、振幅断層像生成部51により生成される振幅断層像、位相差断層像生成部52により生成される位相差断層像、および、減衰率断層像生成部53により生成される減衰率断層像のうちから、モード切替部62の指示に従って必要な画像を選択して合成する。画像合成部54は、例えば、位相差断層像によって振幅断層像の輝度または色を変調することにより、振幅断層像と位相差断層像とを重畳する。また、例えば、減衰率断層像によって振幅断層像の輝度または色を変調することにより、振幅断層像と減衰率断層像とを重畳する。振幅断層像と位相差断層像と減衰率断層像とを重畳してもよい。画像合成部54にて合成された画像は、映像信号として、表示制御部64を介して表示部14に入力される。
【0075】
表示制御部64は、振幅断層像、位相差断層像、減衰率断層像、および、画像合成部54により合成された画像のうちから、モード切替部62の指示に従って任意の画像を選択し、拡縮処理やレイアウト処理を行って、表示部14に入力する。表示する画像の組み合わせは各種ある。例えば、振幅断層像と減衰率断層像とを並べて、表示部14に表示させる。振幅断層像とともに、振幅断層像と減衰率断層像との合成画像を並べて、表示させてもよい。減衰率断層像のみ、または、合成された画像のみを、表示させてもよい。
【0076】
モード切替部62は、画像表示のモードを切り替える。例えば、減衰率断層像を表示するモード(減衰率断層像表示モード)と、減衰率断層像を表示しないモード(減衰率断層像非表示モード)とを、切り替える。また、例えば、振幅断層像と減衰率断層像とを重畳して表示するモード(重畳表示モード)と、振幅断層像と減衰率断層像とを重畳することなく並べて表示するモード(並列表示モード)とを切り替える。
【0077】
本例にて、超音波探触子20の素子の配列方向における位相の分解能は、超音波探触子20の素子の間隔以上である。すなわち、位相情報演算部43にて算出される位相情報の素子配列方向における解像度は、超音波探触子20の素子(例えば超音波トランスデューサ)の間隔以上である。
【0078】
信号処理部40、画像処理部50、モード切替部62および表示制御部64は、例えばCPU(Central Processing Unit)によって構成される。これらの一部が回路によって構成されていてもよい。
【0079】
図8は、本発明に係る超音波信号処理の一例の概略フローである。
【0080】
ステップS1にて、超音波エコーの受信信号から、被検体の深さ方向における超音波エコーの位相を示す位相情報を取得する。具体的には、超音波探触子20から被検体に向けて超音波を送信し、被検体内からの超音波エコーを超音波探触子20が受信すると、送受信部30から超音波エコーを示す受信信号y(t)が出力されるので、直交検波部41および位相情報演算部43によって、受信信号y(t)から位相φ(t)を取得する。
【0081】
ステップS2にて、被検体の深さ方向における超音波エコーの位相の変化から、被検体内での超音波の減衰率αを導出する。すなわち、減衰率導出部44にて、位相φ(t)の2次微分値(d2φ/dt2)を求めることにより、減衰率αを導出する。この減衰率導出処理の具体例については、後に詳説する。
【0082】
ステップS3にて、各種の断層像を生成する。具体的には、振幅情報演算部42にて算出された振幅u(t)に基づいて、振幅断層像生成部51にて振幅断層像を生成する。また、位相情報演算部43にて算出された位相φ(t)に基づいて、位相差断層像生成部52にて位相差断層像を生成する。また、減衰率導出部44にて導出された減衰率に基づいて、減衰率断層像生成部53にて減衰率断層像を生成する。また、画像合成部54にて合成画像を生成する。
【0083】
ステップS4にて、各種の断層像を出力する。具体的には、モード切替部62により切り替えられた表示モードに従って、表示制御部64により表示部14に各種の断層像を出力する。
【0084】
<減衰率導出部および減衰率導出処理>
以下では、減衰率導出部44および減衰率導出処理について、各種の実施形態に分けて説明する。
【0085】
図9は、第1実施形態における減衰率導出部44の構成を示すブロック図である。
【0086】
本実施形態の減衰率導出部44は、超音波エコーを示す受信信号の位相φ(t)をtにて微分することにより、すなわち被検体の深さ方向にて位相を微分することにより、被検体内の各反射位置に対応する超音波エコーの位相差(位相の1次微分値)を算出する位相差算出部71と、被検体内の各反射位置を中心とした各注目領域における位相差の中心値(代表値)を算出する位相差中心値算出部72と、位相差中心値算出部72にて算出される位相差の中心値をtにて微分することにより、すなわち被検体内の深さ方向にて位相差の中心値を微分することにより、被検体内の各反射位置に対応する超音波エコーの2次位相差(位相の2次微分値)を算出する2次位相差算出部73と、2次位相差算出部73にて算出される2次位相差を減衰率に換算する減衰率換算部74を備える。
【0087】
図10は、第1実施形態における減衰率導出処理の流れの一例を示すフローチャートである。本処理は、減衰率導出部44を構成するCPUにより、プログラムに従って、実行される。
【0088】
ステップS11にて、位相差算出部71により、被検体の深さ方向(距離方向)における各反射位置に対応する超音波エコーの位相差を算出する。
【0089】
本例では、位相情報演算部(図7の43)にて算出された位相φ(t)をtで微分することにより、すなわち被検体の深さ方向にて位相を微分することにより、被検体内の各反射位置に対応する超音波エコーの位相差(dφ(t)/dt)を算出する。
【0090】
なお、位相差断層像生成部(図7の52)では、被検体内の断層面での各反射位置に対応する位相差を示す位相差断層像が生成される。
【0091】
ステップS12にて、位相差中心値算出部72により、所定サイズのカーネルで、各注目領域にて度数最大である位相差(位相差の中心値)を、各注目領域における位相差の代表値として求める。
【0092】
例えば、まず、図11(A)に示すように、位相差断層像111を構成する各画素112(ピクセル)に順次注目し、注目した画素112を中心としたN×M画素(例えば5×5ピクセル)からなる領域を注目領域113とする。次に、図11(B)に示すように、各注目領域113にて位相差の頻度(度数)を検出して、最大頻度となる位相差114を、各注目領域における位相差の代表値として求める。具体的には、画素値が位相差に対応しているので、各画素値ごとに画素の数をカウントする。このようにして、位相差断層像111内の各画素112に対応する各注目領域113ごとに、位相差の代表値114を求める。これにより、各画素112にそれぞれ対応した代表値114からなる位相差断層像(図11(C)の115)が生成される。
【0093】
ステップS13にて、2次位相差算出部73により、被検体の深さ方向(距離方向)における各反射位置に対応する位相差の代表値の微分値(2次位相差)を求める。
【0094】
本例では、被検体の深さ方向にて隣り合う位相差の代表値間で差分を求めることにより、すなわち2次位相差算出部73にて算出された位相差の代表値を被検体の深さ方向にて微分することにより、各反射位置に対応する2次位相差(d2φ/dt2)を算出する。
【0095】
ステップS14にて、減衰率換算部74により、2次位相差算出部73にて算出された2次位相差を減衰率に換算する。本例では、被検体内の各反射位置に対応する減衰率が得られる。
【0096】
なお、減衰率断層像生成部(図7の53)では、被検体内の断層面での各反射位置に対応する減衰率を示す減衰率断層像が生成される。
【0097】
2次位相差を減衰率に換算する方法は、換算テーブルを用いてもよいし、ガウシアンパルスの場合には減衰率が2次位相差に比例するので前述した数8を用いて算出してもよい。また、ガウシアンパルスの場合には減衰率が2次位相差に比例しているので、減衰率に換算することなく2次位相差をそのまま用いることも可能である。
【0098】
なお、各注目領域にて度数最大である位相差を代表値とした場合を例に説明したが、各注目領域内での位相差の平均値を、各注目領域の位相差の代表値としてもよい。この場合、各注目領域内で非スペックル領域のみの位相差の平均値を各注目領域の位相差の代表値としてもよい。非スペックル領域は、例えば振幅値が閾値を超える領域としても良いし、振幅値が注目領域内の平均値の所定比又は所定量だけ差分をとった値に比べ大きい領域としても良い。位相差に基いて、非スペックル領域を判別しても良い。
【0099】
本実施形態では、位相差(位相の1次微分値)を求め、スペックル成分を除いた後、2次位相差(位相の2次微分値)を求めたが、位相φ(t)から直接的に2次位相差を求めてもよい。
【0100】
図12は、第2実施形態における減衰率導出部44の構成を示すブロック図である。
【0101】
本実施形態の減衰率導出部44は、超音波エコーを示す受信信号の位相φ(t)をtにて2回微分することにより、すなわち被検体の深さ方向にて位相を2回微分することにより、被検体内の各反射位置に対応する超音波エコーの2次位相差(位相の2次微分値)を算出する2次位相差算出部81と、被検体の断層面をスペックル領域と非スペック領域とに分離する領域分離部82と、被検体内の各反射位置を中心とした各注目領域において非スペックル領域に属する画素のみの2次位相差平均値を算出する2次位相差平均値算出部83と、2次位相差平均値算出部83にて算出される2次位相差の平均値を減衰率に換算する減衰率換算部84を備える。
【0102】
図13は、第2実施形態における減衰率導出処理の流れの一例を示すフローチャートである。本処理は、減衰率導出部44を構成するCPUにより、プログラムに従って、実行される。
【0103】
ステップS21にて、2次位相差算出部81により、被検体の深さ方向(距離方向)における各反射位置に対応する超音波エコーの2次位相差を算出する。
【0104】
本例では、位相情報演算部(図7の43)にて算出された位相φ(t)をtにて2回微分することにより、すなわち被検体の深さ方向にて位相を2回微分することにより、被検体内の各反射位置に対応する超音波エコーの2次位相差(位相の2次微分値)を算出する。
【0105】
ステップS22にて、領域分離部82により、被検体の断層面をスペックル領域と非スペック領域とに分離する。
【0106】
本例では、振幅情報演算部(図7の42)にて算出される振幅u(t)に基づいて、領域分離を行う。例えば、振幅断層像生成部(図7の51)にて生成される振幅断層像を構成する各画素(ピクセル)に順次注目し、注目した画素における振幅値が予め決められた閾値よりも大きい場合には、注目画素が非スペックル領域に属していると判別し、閾値以下である場合には、注目画素がスペックル領域に属していると判別する。これにより、被検体の断層面の各反射位置についてスペックル領域に属しているか非スペックル領域に属しているかを判別する。
【0107】
また、注目した画素を中心としたN×M画素(例えば5×5ピクセル)からなる領域を注目領域とし、注目した画素における振幅値が注目領域内の平均値の所定比、又は所定量だけ差分をとった値に比べ小さい場合は、注目画素がスペックル領域に属していると判別し大きい場合は注目画素が非スペックル領域に属していると判別しても良い。
【0108】
非スペックル領域とスペックル領域の分離結果の例を図14に示す。
【0109】
ステップS23にて各画素を中心とした所定サイズの注目領域内で非スペックル領域のみの2次位相差の平均値を各画素における2次位相差として求める。
【0110】
ステップS24にて、減衰率換算部84により、2次位相差を減衰率に換算する。
【0111】
本例では、2次位相差平均値算出部83にて算出された各画素における2次位相差に基づいて、被検体の断層面における各画素に対応する減衰率が得られる。
【0112】
本実施形態では、被検体内の複数の反射体からの超音波エコー(反射波)のランダムな干渉(スペックル)によって生ずる低エコー領域(スペックル領域)を除外して、減衰率を求める。スペックルは、打消しあう干渉によって低エコーとなるので、振幅情報に基づいてスペックル領域を判別し、そのスペックル領域を除外して減衰率を求めることで、干渉による位相変化成分を除外して正確な減衰率を求めることができる。
【0113】
なお、ユーザがスペックル領域と非スペックル領域を分離しても良い。。つまり、表示制御部64により表示部14に断層像(振幅断層像、位相差断層像、合成画像等)を表示させて、操作部12によりユーザに非スペックル領域(またはスペックル領域)を指定させてもよい。
【0114】
位相差に基づいて領域分離を行う例について概説する。スペックルは超音波エコーのランダムな干渉により生ずるので、スペックルが生じると受信信号における位相差が大きくなる。そこで、受信信号から取得された位相φ(t)に基づいて、各反射位置(または注目領域)に対応する位相差を求め、位相差が閾値よりも大きな場合、その反射位置(または注目領域)はスペックル領域に属していると判定する。領域分離のための位相差は、被検体の深さ方向および素子配列方向の両方向にて算出することが、好ましい。
【0115】
本発明は各画素毎に減衰率を求める例のみ述べたが、振幅断層像において組織毎に領域分離して、各領域において平均の減衰率を求めても良い。組織毎の領域分離はユーザが指定しても良いし、振幅の平均や分散の差、またスキャン方向における周波数スペクトルの
違いから分離しても良い。また、スペックル密度に基いて分離しても良い。
【0116】
最近のソフトウエアベースの超音波装置は受信信号をデジタルデータとして持ち、例えば同じ送信(1回の送信)から得られた受信信号を利用して方位方向に2音線以上のRFデータ(受信フォーカスされた受信データ)を生成することが可能となってきている。また、アナログベースでも高性能な回路構成により同様のことが可能となってきている。本装置構成によって、高速に隣接する音線データ、または、フレームのRFデータを得る事ができるため、高精度に位相情報を算出する事ができる。
なお、本発明は、本明細書において説明した例や図面に図示された例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の設計変更や改良を行ってよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】超音波探触子と被検体との位置関係の説明に用いる説明図
【図2】(A)は水及び寒天からなる被検体の振幅断層像、(B)はその被検体の位相差断層像、(C)は(A)に示した被検体よりも水の層が厚い被検体の振幅断層像、(D)はその被検体の位相差断層像
【図3】図2(B)および(D)に示した位相差断層像での注目領域における位相差の度数分布図
【図4】(A)はエタノール及び寒天からなる被検体の振幅断層像、(B)はその被検体の位相差断層像、(C)は(A)に示した被検体よりもエタノールの層が厚い被検体の振幅断層像、(D)はその被検体の位相差断層像
【図5】図4(B)および(D)に示した位相差断層像での注目領域における位相差の度数分布図
【図6】被検体内の反射位置の深さと位相差との関係を示す図
【図7】本発明に係る超音波信号処理装置を含む超音波診断装置の構成例を示すブロック図
【図8】本発明に係る超音波信号処理の一例の概略フロー
【図9】第1実施形態における減衰率導出部の構成例を示すブロック図
【図10】第1実施形態における減衰率導出処理の流れの一例を示すフローチャート
【図11】(A)は注目領域の説明に用いる説明図、(B)は注目領域における度数最大の位相差を注目領域の代表値として求めることの説明に用いる説明図、(C)は各注目領域の代表値からなる位相差代表値断層像の説明に用いる説明図
【図12】第2実施形態における減衰率導出部の構成例を示すブロック図
【図13】第2実施形態における減衰率導出処理の流れの一例を示すフローチャート
【図14】非スペックルと非スペックル領域の分離結果を示す説明図
【符号の説明】
【0118】
10…超音波診断装置、12…操作部、14…表示部、20…超音波探触子、30…送受信部、40…信号処理部、41…直交検波部、42…振幅情報演算部、43…位相情報演算部、44…減衰率導出部、50…画像処理部、51…振幅断層像生成部、52…位相差断層像生成部、53…減衰率断層像生成部、54…画像合成部、62…モード切替部、64…表示制御部、71…位相差算出部、72…位相差中心値算出部、73…2次位相差算出部、74…減衰率換算部、81…2次位相差算出部、82…領域分離部、83…2次位相差平均値算出部、84…減衰率換算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に向けて超音波を送信するとともに、被検体内からの超音波エコーを受信して、被検体内での超音波の減衰率を導出する超音波信号処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、超音波エコーの受信信号を複数個の帯域フィルタにより帯域分割し、個別に検波した受信信号を重み付け加算するか色相加算することにより、生体内の超音波伝搬にともなう減衰情報を付加することによって、微小なコントラストの差の視認性を大幅に向上させるようにした構成が開示されている。
【特許文献1】特開平7−51270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、中心周波数が異なる複数の帯域フィルタと、帯域ごとに個別に検波および対数圧縮を行う信号処理回路が必要となる。すなわち、ハードウエア構成が複雑となり、装置コストの低減が困難となる。
【0004】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、被検体内での超音波の減衰率を簡便に求めることができる超音波信号処理装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明は、被検体に向けて超音波を送信するとともに、前記被検体内からの超音波エコーを受信して、該超音波エコーを示す受信信号を生成する超音波送受信手段と、前記受信信号から、前記超音波エコーの位相を示す位相情報を取得する位相情報取得手段と、前記被検体の深さ方向における前記超音波エコーの位相の変化から、前記被検体内での超音波の減衰率を導出する減衰率導出手段と、を備えたことを特徴とする超音波信号処理装置を提供する。 この構成により、被検体の深さ方向における超音波エコーの位相の変化から被検体内での超音波の減衰率が導出されるので、簡便に減衰率を求めることができることになる。したがって、中心周波数が異なる複数の帯域フィルタや、帯域ごとに個別に検波および対数圧縮を行う信号処理回路などが不要となる。
【0006】
本発明にて、前記減衰率導出手段は、前記被検体の深さ方向における前記超音波エコーの位相の2次微分値を求めることにより、前記減衰率を導出する態様が、好ましい。
【0007】
この構成により、適切かつ容易に減衰率を導出できる。
【0008】
本発明にて、前記減衰率導出手段は、スペックル成分を除いた位相変化から、前記減衰率を導出する態様が、好ましい。
【0009】
この構成により、被検体の組織性状に対応する正確な減衰率を導出できることになる。
【0010】
例えば、前記減衰率導出手段は、前記被検体の断層面の注目領域にて度数が最大である位相差を前記注目領域の代表値とし、該代表値を前記深さ方向にて微分することにより、前記減衰率を導出する。
【0011】
例えば、前記減衰率導出手段は、前記被検体の断層面をスペックル領域と非スペックル領域とに分け、各注目領域ごとに前記非スペックル領域に属する位相差の平均値を求め、該平均値を前記注目領域の代表値とし、該代表値を前記深さ方向にて微分することにより、前記減衰率を導出する。
【0012】
例えば、前記減衰率導出手段は、前記被検体の断層面をスペックル領域と非スペックル領域とに分け、前記非スペックル領域に属する前記超音波エコーの位相の2次微分値を求めることにより、前記減衰率を導出する。
【0013】
本発明にて、前記超音波送受信手段は、ガウシアンパルスを送信することが、好ましい。
【0014】
本発明にて、前記位相情報取得手段は、前記超音波送受信手段の素子の配列方向における位相の分解能が前記素子の間隔以上であるデータを利用する。
【0015】
本発明にて、前記超音波送受信手段は、1回の超音波送信で前記超音波送受信手段の素子の配列方向にて2音線以上の前記受信データを生成可能であり、前記位相情報取得手段は、前記超音波送受信手段にて生成される2音線以上の前記受信データを利用する。 本発明にて、前記減衰率導出手段にて導出される前記減衰率に基づいて、前記被検体の断層面における減衰率の分布を示す減衰率断層像を生成する減衰率断層像生成手段を備えた態様が、好ましい。
【0016】
この構成により、被検体の断層面における減衰率の分布を見ることで、適切な診断が可能となる。
【0017】
本発明にて、記超音波エコーの受信信号から前記超音波エコーの振幅を示す振幅情報を取得する振幅情報取得手段と、前記振幅情報取得手段にて取得される前記振幅情報に基づいて振幅断層像を生成する振幅断層像生成手段と、前記減衰率断層像と前記振幅断層像とを重畳する画像合成手段と、を備えた態様が好ましい。
【0018】
この構成により、振幅断層像と減衰率断層像とが重畳されることで、適切な診断が可能となる。
【0019】
例えば、前記画像合成手段は、前記減衰率断層像によって前記振幅断層像の輝度または色を変調する。
【0020】
本発明にて、前記超音波エコーの受信信号から前記超音波エコーの振幅を示す振幅情報を取得する振幅情報取得手段と、前記振幅情報取得手段にて取得される前記振幅情報に基づいて振幅断層像を生成する振幅断層像生成手段と、画像を表示可能な表示部と、前記減衰率断層像と前記振幅断層像とを並べて前記表示部に表示させる制御を行う表示制御手段と、を備えた態様が好ましい。
【0021】
この構成により、振幅断層像と減衰率断層像とを容易に対応づけて見ることができ、適切な診断が可能となる。
【0022】
本発明にて、前記減衰率断層像を出力するモードと前記減衰率断層像を出力しないモードとを切り替えるモード切替手段を備えた態様が好ましい。
【0023】
本発明にて、前記減衰率断層像と前記振幅断層像とを合成するモードと前記振幅断層像を合成しないモードとを切り替えるモード切替手段を備えた構成が好ましい。
【0024】
また、本発明は、被検体に向けて超音波を送信するとともに、前記被検体からの超音波エコーを受信し、前記超音波エコーを示す受信信号から、前記超音波エコーの位相を示す位相情報を取得し、前記被検体の深さ方向における前記超音波エコーの位相の変化から、前記被検体内での超音波の減衰率を導出することを特徴とする超音波信号処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、被検体内での超音波の減衰率を簡便に求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付図面に従って、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0027】
<本発明の原理>
まず、本発明の原理を説明する。
【0028】
図1にて、超音波探触子20は、被検体90に向けて超音波を送信するとともに、被検体90内からの反射波(超音波エコー)を受信して、超音波エコーを示す受信信号を生成する複数の超音波送受信素子が配列されている。
【0029】
以下では、被検体90の深さ方向を、「距離方向」ということもある。また、超音波送受信素子が配列されている方向(素子配列方向)を、「スキャン方向」ということもある。
【0030】
なお、以下では、説明の便宜上、1次元配列された超音波送受信素子を有する超音波探触子20を例に説明するが、本発明は、超音波送受信素子が2次元配列されている場合にも適用できる。
【0031】
図2(A)は、水201及び寒天202からなる被検体での振幅断層像であり、図2(B)は、その被検体での位相差断層像である。図2(C)は、図2(A)に示した被検体よりも水201の層が厚い被検体での振幅断層像であり、図2(D)は、その被検体での位相差断層像である。図3は、図2(B)に示した位相差断層像での注目領域(深さ30mmおよびその周辺)における位相差の度数分布301、および、図2(D)に示した位相差断層像での注目領域(深さ50mmおよびその周辺)における位相差の度数分布302を示す。また、図4(A)は、エタノール203及び寒天202からなる被検体での振幅断層像であり、図4(B)は、その被検体での位相差断層像である。図4(C)は、図4(A)に示した被検体よりもエタノール203の層が厚い被検体での振幅断層像であり、図4(D)は、その被検体での位相差断層像である。図5は、図4(B)に示した位相差断層像での注目領域(深さ30mmおよびその周辺)における位相差の度数分布501、および、図4(D)に示した位相差断層像での注目領域(深さ50mmおよびその周辺)における位相差の度数分布502を示す。
【0032】
ここで、振幅断層像は、超音波探触子20から出力される受信信号の振幅に基づいて作成される。具体的には、超音波のパルスを送信してから超音波エコーのパルスを受信するまでの時間(伝搬時間)が反射位置の深さにより異なるので、伝搬時間を被検体内の反射位置の深さに対応付けるとともに、振幅の値を画素の濃度(または色)に対応付けることで、振幅断層像が生成される。また、位相差断層像は、超音波探触子20から出力される受信信号の位相差に基づいて作成される。具体的には、伝搬時間を被検体内の反射位置の深さに対応付けるとともに、位相差の値を画素の濃度(または色)に対応付けることで、位相差断層像が生成される。また、位相差の度数分布は、位相差断層像中の所定の位置およびサイズの注目領域における位相差ごとの頻度(度数)を示す。例えば、位相差断層像を構成する画素の数を、位相差に対応する画素の値ごとにカウントすることで、位相差の度数分布が得られる。
【0033】
図6は、被検体内の反射位置の深さと位相差の関係を示す。図6にて、符号601を付した直線は、水201を伝搬した超音波について深さ方向における位相差の変化を示す。また、符号602を付した直線は、エタノール203を伝搬した超音波について深さ方向における位相差の変化を示す。具体的には、図3に示す度数分布301、302にて度数が最大となる位相差(中心値)を図6にてプロットすることにより、符号601の直線が得られる。また、図5に示す度数分布501、502にて度数が最大となる位相差(中心値)を図6にてプロットすることにより、符号602の直線が得られる。これらの直線601、602の傾きは、それぞれ、被検体を構成する水の減衰率およびエタノールの減衰率に比例している。すなわち、被検体の深さ方向における超音波エコーの位相の2次微分値は、被検体を構成する物質における超音波の減衰率に比例している。
【0034】
本発明では、被検体の深さ方向における超音波エコーの位相の2次微分値を求めることにより、被検体内での超音波の減衰率を導出する。要するに、被検体の深さ方向における超音波エコーの位相の変化から、被検体内での超音波の減衰率を導出する。
【0035】
次に、超音波としてガウシアンパルス(以下「ガウシアン波形」ともいう)を超音波探触子20から送信する場合について、具体的に説明する。
【0036】
送信されるガウシアンパルスの周波数スペクトルは、数1で与えられる。
【0037】
[数1]
A×exp(−(((f−f0)/Δw)2))
ここで、fは周波数、f0は中心周波数、Δwは帯域幅、Aは振幅である。
【0038】
また、深さxにおける減衰は、数2で与えられる。
【0039】
[数2]
T(x)×exp(−αfx)
ここで、T(x)は、拡散による減衰である。exp(−αfx)は、吸収や散乱による減衰であり、周波数に依存する。αは、減衰率である。
【0040】
例えば、超音波の往復を考慮した深さx/2におけるガウシアンパルスの周波数スペクトルは、数1および数2より、数3で与えられる。
【0041】
[数3]
A×T(x)×exp(−αfx)×exp(−(((f−f0)/Δw)2))
深さx/2からのガウシアンパルスの反射波の中心周波数は、f0ではなく、f0−(α×Δw2×x/2)にシフトする。すなわち、反射波は、送信波よりも中心周波数が低くなる。
【0042】
深さxからのガウシアンパルスの反射波は、数4で与えられる。
【0043】
[数4]
u(t)×cos(2π×f(x)×t+φi(t))
=u(t)×cos(2π×fd×t+2π(f(x)−fd)×t+φi(t))
ここで、u(t)は振幅、φi(t)は位相、f(x)は深さxからの反射波の中心周波数、fdは直交検波の周波数である。φi(t)には反射波同士の干渉によって生ずる位相変化、つまりスペックル位相変化成分が含まれている。
【0044】
f(x)は、数3より、数5で表される。但し、t=2x/vであり、vは音速である。
【0045】
[数5]
f(x)=f0−(α×Δw2×x) =f0−(α×Δw2×v×t/2)
周波数fdで直交検波後の位相φ(t)は、数4より2π(f(x)−fd)×t+φi(t)で表され、更に数5のf(x)を代入することにより、数6で示される。
【0046】
[数6]
φ(t)=2π(f0−α×Δw2×v×t/2−fd)×t+φi(t)
数6をtで微分すると、すなわち位相を深さ方向にて微分すると、数7が得られる。
【0047】
[数7]
dφ(t)/dt=
2π(f0−fd−α×Δw2×v×t)+dφi(t) /dt
数7からdφi(t)/dtを除くこと、すなわちスペックル成分(干渉成分)を除くことを考える。例えば、位相差(dφ(t)/dt)として断層面の注目領域における中心値を採用する事、または、断層面をスペックル領域と非スペックル領域とに分けて、スペックル領域の位相差を除き非スペックル領域の位相差を平均化する事で、dφi(t)/dtを除く事ができる。
【0048】
数7に示した位相差(dφ(t)/dt)を、更にtで微分すると、すなわち深さ方向にて更に微分すると、数8が得られる。
【0049】
[数8]
d2φ/dt2=−2πα×Δw2×v
数8において、帯域幅Δwは既知である事から、単位時間当たりの減衰(α×v)が得られる。従って、音速vを別の方法で得れば、単位距離当たりの減衰、すなわち減衰率αが得られる。
【0050】
以上説明したように、送信波形がガウシアンパルスである場合、スペックル成分を除いた位相差の深さ方向(距離方向)における微分値が、減衰率に比例する。すなわち、超音波探触子20から被検体に向けてガウシアンパルスを送信するとともに、超音波探触子20から出力される受信信号を直交検波して、超音波エコーの位相を示す位相φ(t)を取得し、スペックル成分を取り除いた2次微分値(d2φ/dt2)を求めることにより、減衰率αを容易かつ適切に導出することができる。
【0051】
なお、本発明の原理を簡便に説明するために、ガウシアンパルスを送信し、かつ、位相差にてスペックル成分を除いた場合を例に説明したが、本発明は、このような場合に特に限定されるものではない。2次位相差にてスペックル成分を除くようにしてもよい。ガウシアンパルス以外の超音波を被検体に向けて送信することも可能である。
【0052】
以下では、本発明を実施するための具体的な実施形態について、説明する。
【0053】
<超音波診断装置>
図7は、本発明に係る超音波信号処理装置を含む超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
【0054】
図7において、超音波診断装置10は、主に、操作部12、表示部14、超音波探触子20、送受信部30、信号処理部40、画像処理部50、モード切替部62、および、表示制御部64を含んで構成されている。
【0055】
操作部12は、ユーザの指示が入力される指示入力デバイスである。例えば、キーボード、マウスなどによって構成されている。
【0056】
表示部14は、画像を表示可能な表示デバイスである。例えば、LCD(液晶ディスプレイ)などによって構成されている。
【0057】
超音波探触子20は、被検体に向けて超音波を送信するとともに、被検体内で反射されてくる超音波エコーを受信するものである。超音波探触子20は、例えば1次元の超音波トランスデューサアレイを構成する複数の超音波トランスデューサを備えており、各超音波トランスデューサは、例えばPZT等の圧電素子の両端に電極を形成した振動子によって構成されている。超音波探触子20を2次元の超音波トランスデューサアレイによって構成してもよい。
【0058】
送受信部30は、ガウシアンパルスなどの超音波送信信号を超音波探触子20に与え、超音波探触子20に超音波を発生させる。また、被検体内で反射されてくる超音波エコーが超音波探触子20によって受信されると、超音波エコーを示す受信信号を超音波探触子20が出力するので、送受信部30は、その受信信号を増幅及びA(アナログ)/D(デジタル)変換した後、受信フォーカスを施し信号処理部40に入力する。受信フォーカスにより、1回の超音波送信で素子配列方向にて2音線以上の受信データ(音線データ)が生成される。例えば、特開2008―167985号公報に記載のように受信フォーカスを行えばよい。
【0059】
信号処理部40は、受信信号から超音波診断に有用な情報を取得する処理を行う。
【0060】
本例の信号処理部40は、直交検波部41、振幅情報演算部42、位相情報演算部43及び減衰率導出部44を含んで構成されている。
【0061】
直交検波部41は、超音波エコーを示す受信信号に対して直交検波を行う。
【0062】
受信信号y(t)は、数9で表される。
【0063】
[数9]
y(t)=u(t) ×cos(ωt+φ(t))
ここで、u(t)は振幅を示し、φ(t)は位相を示す。
【0064】
受信信号y(t)は、直交検波によって、数10に示すように、実数成分(cos成分)と虚数成分(sin成分)とに分離される。実数成分はI成分、虚数成分はQ成分とも呼ばれる。
【0065】
[数10]
I=u(t)cos(φ(t))
Q=u(t)sin(φ(t))
振幅情報演算部42は、直交検波部41にて得られるI成分及びQ成分に基づいて、振幅u(t)を、数11により算出する。
【0066】
[数11]
u(t)=√(I2+Q2)
位相情報演算部43は、直交検波部41にて得られるI成分及びQ成分に基づいて、位相φ(t)を、数12により算出する。
【0067】
[数12]
φ(t)=tan-1I/Q
直交検波部41および振幅情報演算部42によって、超音波エコーの振幅に対応する振幅情報としてのu(t)を取得する振幅情報取得手段が構成されている。また、直交検波部41および位相情報演算部43によって、超音波エコーの位相に対応する位相情報としてのφ(t)を取得する位相情報取得手段が構成されている。
【0068】
減衰率導出部44は、位相情報演算部43にて得られる位相φ(t)の変化、被検体内での深さ方向における超音波の減衰率を導出する。すなわち、減衰率導出部44は、被検体の深さ方向における超音波エコーの位相の変化から、減衰率を導出する。
【0069】
画像処理部50は、信号処理部40により取得される情報に基づいて画像を生成する処理を行う。
【0070】
本例の画像処理部50は、振幅断層像生成部51、位相差断層像生成部52、減衰率断層像生成部53及び画像合成部54を含んで構成されている。
【0071】
振幅断層像生成部51は、振幅情報演算部42にて算出される振幅u(t)を、被検体の断層面(診断部位断面)における各反射位置に対応する振幅情報に変換するとともに、対数増幅処理や超音波の反射位置の各深さに対応した減衰の補正等を行って、被検体の断層面における各反射位置からの超音波エコーの振幅を示す振幅画像として、振幅断層像(Bモード断層像)を生成する。
【0072】
位相差断層像生成部52は、位相情報演算部43にて算出される位相φ(t)を、被検体の断層面(診断部位断面)における各反射位置に対応する位相差情報に変換して、被検体の断層面における各反射位置からの超音波エコーの位相差を示す位相差画像として、位相差断層像を生成する。
【0073】
減衰率断層像生成部53は、減衰率導出部44によって導出される減衰率を、被検体の断層面(診断部位断面)における各反射位置に対応する減衰率情報に変換して、被検体の断層面における各反射位置での超音波の減衰率を示す減衰率画像として、減衰率断層像を生成する。
【0074】
画像合成部54は、振幅断層像生成部51により生成される振幅断層像、位相差断層像生成部52により生成される位相差断層像、および、減衰率断層像生成部53により生成される減衰率断層像のうちから、モード切替部62の指示に従って必要な画像を選択して合成する。画像合成部54は、例えば、位相差断層像によって振幅断層像の輝度または色を変調することにより、振幅断層像と位相差断層像とを重畳する。また、例えば、減衰率断層像によって振幅断層像の輝度または色を変調することにより、振幅断層像と減衰率断層像とを重畳する。振幅断層像と位相差断層像と減衰率断層像とを重畳してもよい。画像合成部54にて合成された画像は、映像信号として、表示制御部64を介して表示部14に入力される。
【0075】
表示制御部64は、振幅断層像、位相差断層像、減衰率断層像、および、画像合成部54により合成された画像のうちから、モード切替部62の指示に従って任意の画像を選択し、拡縮処理やレイアウト処理を行って、表示部14に入力する。表示する画像の組み合わせは各種ある。例えば、振幅断層像と減衰率断層像とを並べて、表示部14に表示させる。振幅断層像とともに、振幅断層像と減衰率断層像との合成画像を並べて、表示させてもよい。減衰率断層像のみ、または、合成された画像のみを、表示させてもよい。
【0076】
モード切替部62は、画像表示のモードを切り替える。例えば、減衰率断層像を表示するモード(減衰率断層像表示モード)と、減衰率断層像を表示しないモード(減衰率断層像非表示モード)とを、切り替える。また、例えば、振幅断層像と減衰率断層像とを重畳して表示するモード(重畳表示モード)と、振幅断層像と減衰率断層像とを重畳することなく並べて表示するモード(並列表示モード)とを切り替える。
【0077】
本例にて、超音波探触子20の素子の配列方向における位相の分解能は、超音波探触子20の素子の間隔以上である。すなわち、位相情報演算部43にて算出される位相情報の素子配列方向における解像度は、超音波探触子20の素子(例えば超音波トランスデューサ)の間隔以上である。
【0078】
信号処理部40、画像処理部50、モード切替部62および表示制御部64は、例えばCPU(Central Processing Unit)によって構成される。これらの一部が回路によって構成されていてもよい。
【0079】
図8は、本発明に係る超音波信号処理の一例の概略フローである。
【0080】
ステップS1にて、超音波エコーの受信信号から、被検体の深さ方向における超音波エコーの位相を示す位相情報を取得する。具体的には、超音波探触子20から被検体に向けて超音波を送信し、被検体内からの超音波エコーを超音波探触子20が受信すると、送受信部30から超音波エコーを示す受信信号y(t)が出力されるので、直交検波部41および位相情報演算部43によって、受信信号y(t)から位相φ(t)を取得する。
【0081】
ステップS2にて、被検体の深さ方向における超音波エコーの位相の変化から、被検体内での超音波の減衰率αを導出する。すなわち、減衰率導出部44にて、位相φ(t)の2次微分値(d2φ/dt2)を求めることにより、減衰率αを導出する。この減衰率導出処理の具体例については、後に詳説する。
【0082】
ステップS3にて、各種の断層像を生成する。具体的には、振幅情報演算部42にて算出された振幅u(t)に基づいて、振幅断層像生成部51にて振幅断層像を生成する。また、位相情報演算部43にて算出された位相φ(t)に基づいて、位相差断層像生成部52にて位相差断層像を生成する。また、減衰率導出部44にて導出された減衰率に基づいて、減衰率断層像生成部53にて減衰率断層像を生成する。また、画像合成部54にて合成画像を生成する。
【0083】
ステップS4にて、各種の断層像を出力する。具体的には、モード切替部62により切り替えられた表示モードに従って、表示制御部64により表示部14に各種の断層像を出力する。
【0084】
<減衰率導出部および減衰率導出処理>
以下では、減衰率導出部44および減衰率導出処理について、各種の実施形態に分けて説明する。
【0085】
図9は、第1実施形態における減衰率導出部44の構成を示すブロック図である。
【0086】
本実施形態の減衰率導出部44は、超音波エコーを示す受信信号の位相φ(t)をtにて微分することにより、すなわち被検体の深さ方向にて位相を微分することにより、被検体内の各反射位置に対応する超音波エコーの位相差(位相の1次微分値)を算出する位相差算出部71と、被検体内の各反射位置を中心とした各注目領域における位相差の中心値(代表値)を算出する位相差中心値算出部72と、位相差中心値算出部72にて算出される位相差の中心値をtにて微分することにより、すなわち被検体内の深さ方向にて位相差の中心値を微分することにより、被検体内の各反射位置に対応する超音波エコーの2次位相差(位相の2次微分値)を算出する2次位相差算出部73と、2次位相差算出部73にて算出される2次位相差を減衰率に換算する減衰率換算部74を備える。
【0087】
図10は、第1実施形態における減衰率導出処理の流れの一例を示すフローチャートである。本処理は、減衰率導出部44を構成するCPUにより、プログラムに従って、実行される。
【0088】
ステップS11にて、位相差算出部71により、被検体の深さ方向(距離方向)における各反射位置に対応する超音波エコーの位相差を算出する。
【0089】
本例では、位相情報演算部(図7の43)にて算出された位相φ(t)をtで微分することにより、すなわち被検体の深さ方向にて位相を微分することにより、被検体内の各反射位置に対応する超音波エコーの位相差(dφ(t)/dt)を算出する。
【0090】
なお、位相差断層像生成部(図7の52)では、被検体内の断層面での各反射位置に対応する位相差を示す位相差断層像が生成される。
【0091】
ステップS12にて、位相差中心値算出部72により、所定サイズのカーネルで、各注目領域にて度数最大である位相差(位相差の中心値)を、各注目領域における位相差の代表値として求める。
【0092】
例えば、まず、図11(A)に示すように、位相差断層像111を構成する各画素112(ピクセル)に順次注目し、注目した画素112を中心としたN×M画素(例えば5×5ピクセル)からなる領域を注目領域113とする。次に、図11(B)に示すように、各注目領域113にて位相差の頻度(度数)を検出して、最大頻度となる位相差114を、各注目領域における位相差の代表値として求める。具体的には、画素値が位相差に対応しているので、各画素値ごとに画素の数をカウントする。このようにして、位相差断層像111内の各画素112に対応する各注目領域113ごとに、位相差の代表値114を求める。これにより、各画素112にそれぞれ対応した代表値114からなる位相差断層像(図11(C)の115)が生成される。
【0093】
ステップS13にて、2次位相差算出部73により、被検体の深さ方向(距離方向)における各反射位置に対応する位相差の代表値の微分値(2次位相差)を求める。
【0094】
本例では、被検体の深さ方向にて隣り合う位相差の代表値間で差分を求めることにより、すなわち2次位相差算出部73にて算出された位相差の代表値を被検体の深さ方向にて微分することにより、各反射位置に対応する2次位相差(d2φ/dt2)を算出する。
【0095】
ステップS14にて、減衰率換算部74により、2次位相差算出部73にて算出された2次位相差を減衰率に換算する。本例では、被検体内の各反射位置に対応する減衰率が得られる。
【0096】
なお、減衰率断層像生成部(図7の53)では、被検体内の断層面での各反射位置に対応する減衰率を示す減衰率断層像が生成される。
【0097】
2次位相差を減衰率に換算する方法は、換算テーブルを用いてもよいし、ガウシアンパルスの場合には減衰率が2次位相差に比例するので前述した数8を用いて算出してもよい。また、ガウシアンパルスの場合には減衰率が2次位相差に比例しているので、減衰率に換算することなく2次位相差をそのまま用いることも可能である。
【0098】
なお、各注目領域にて度数最大である位相差を代表値とした場合を例に説明したが、各注目領域内での位相差の平均値を、各注目領域の位相差の代表値としてもよい。この場合、各注目領域内で非スペックル領域のみの位相差の平均値を各注目領域の位相差の代表値としてもよい。非スペックル領域は、例えば振幅値が閾値を超える領域としても良いし、振幅値が注目領域内の平均値の所定比又は所定量だけ差分をとった値に比べ大きい領域としても良い。位相差に基いて、非スペックル領域を判別しても良い。
【0099】
本実施形態では、位相差(位相の1次微分値)を求め、スペックル成分を除いた後、2次位相差(位相の2次微分値)を求めたが、位相φ(t)から直接的に2次位相差を求めてもよい。
【0100】
図12は、第2実施形態における減衰率導出部44の構成を示すブロック図である。
【0101】
本実施形態の減衰率導出部44は、超音波エコーを示す受信信号の位相φ(t)をtにて2回微分することにより、すなわち被検体の深さ方向にて位相を2回微分することにより、被検体内の各反射位置に対応する超音波エコーの2次位相差(位相の2次微分値)を算出する2次位相差算出部81と、被検体の断層面をスペックル領域と非スペック領域とに分離する領域分離部82と、被検体内の各反射位置を中心とした各注目領域において非スペックル領域に属する画素のみの2次位相差平均値を算出する2次位相差平均値算出部83と、2次位相差平均値算出部83にて算出される2次位相差の平均値を減衰率に換算する減衰率換算部84を備える。
【0102】
図13は、第2実施形態における減衰率導出処理の流れの一例を示すフローチャートである。本処理は、減衰率導出部44を構成するCPUにより、プログラムに従って、実行される。
【0103】
ステップS21にて、2次位相差算出部81により、被検体の深さ方向(距離方向)における各反射位置に対応する超音波エコーの2次位相差を算出する。
【0104】
本例では、位相情報演算部(図7の43)にて算出された位相φ(t)をtにて2回微分することにより、すなわち被検体の深さ方向にて位相を2回微分することにより、被検体内の各反射位置に対応する超音波エコーの2次位相差(位相の2次微分値)を算出する。
【0105】
ステップS22にて、領域分離部82により、被検体の断層面をスペックル領域と非スペック領域とに分離する。
【0106】
本例では、振幅情報演算部(図7の42)にて算出される振幅u(t)に基づいて、領域分離を行う。例えば、振幅断層像生成部(図7の51)にて生成される振幅断層像を構成する各画素(ピクセル)に順次注目し、注目した画素における振幅値が予め決められた閾値よりも大きい場合には、注目画素が非スペックル領域に属していると判別し、閾値以下である場合には、注目画素がスペックル領域に属していると判別する。これにより、被検体の断層面の各反射位置についてスペックル領域に属しているか非スペックル領域に属しているかを判別する。
【0107】
また、注目した画素を中心としたN×M画素(例えば5×5ピクセル)からなる領域を注目領域とし、注目した画素における振幅値が注目領域内の平均値の所定比、又は所定量だけ差分をとった値に比べ小さい場合は、注目画素がスペックル領域に属していると判別し大きい場合は注目画素が非スペックル領域に属していると判別しても良い。
【0108】
非スペックル領域とスペックル領域の分離結果の例を図14に示す。
【0109】
ステップS23にて各画素を中心とした所定サイズの注目領域内で非スペックル領域のみの2次位相差の平均値を各画素における2次位相差として求める。
【0110】
ステップS24にて、減衰率換算部84により、2次位相差を減衰率に換算する。
【0111】
本例では、2次位相差平均値算出部83にて算出された各画素における2次位相差に基づいて、被検体の断層面における各画素に対応する減衰率が得られる。
【0112】
本実施形態では、被検体内の複数の反射体からの超音波エコー(反射波)のランダムな干渉(スペックル)によって生ずる低エコー領域(スペックル領域)を除外して、減衰率を求める。スペックルは、打消しあう干渉によって低エコーとなるので、振幅情報に基づいてスペックル領域を判別し、そのスペックル領域を除外して減衰率を求めることで、干渉による位相変化成分を除外して正確な減衰率を求めることができる。
【0113】
なお、ユーザがスペックル領域と非スペックル領域を分離しても良い。。つまり、表示制御部64により表示部14に断層像(振幅断層像、位相差断層像、合成画像等)を表示させて、操作部12によりユーザに非スペックル領域(またはスペックル領域)を指定させてもよい。
【0114】
位相差に基づいて領域分離を行う例について概説する。スペックルは超音波エコーのランダムな干渉により生ずるので、スペックルが生じると受信信号における位相差が大きくなる。そこで、受信信号から取得された位相φ(t)に基づいて、各反射位置(または注目領域)に対応する位相差を求め、位相差が閾値よりも大きな場合、その反射位置(または注目領域)はスペックル領域に属していると判定する。領域分離のための位相差は、被検体の深さ方向および素子配列方向の両方向にて算出することが、好ましい。
【0115】
本発明は各画素毎に減衰率を求める例のみ述べたが、振幅断層像において組織毎に領域分離して、各領域において平均の減衰率を求めても良い。組織毎の領域分離はユーザが指定しても良いし、振幅の平均や分散の差、またスキャン方向における周波数スペクトルの
違いから分離しても良い。また、スペックル密度に基いて分離しても良い。
【0116】
最近のソフトウエアベースの超音波装置は受信信号をデジタルデータとして持ち、例えば同じ送信(1回の送信)から得られた受信信号を利用して方位方向に2音線以上のRFデータ(受信フォーカスされた受信データ)を生成することが可能となってきている。また、アナログベースでも高性能な回路構成により同様のことが可能となってきている。本装置構成によって、高速に隣接する音線データ、または、フレームのRFデータを得る事ができるため、高精度に位相情報を算出する事ができる。
なお、本発明は、本明細書において説明した例や図面に図示された例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の設計変更や改良を行ってよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】超音波探触子と被検体との位置関係の説明に用いる説明図
【図2】(A)は水及び寒天からなる被検体の振幅断層像、(B)はその被検体の位相差断層像、(C)は(A)に示した被検体よりも水の層が厚い被検体の振幅断層像、(D)はその被検体の位相差断層像
【図3】図2(B)および(D)に示した位相差断層像での注目領域における位相差の度数分布図
【図4】(A)はエタノール及び寒天からなる被検体の振幅断層像、(B)はその被検体の位相差断層像、(C)は(A)に示した被検体よりもエタノールの層が厚い被検体の振幅断層像、(D)はその被検体の位相差断層像
【図5】図4(B)および(D)に示した位相差断層像での注目領域における位相差の度数分布図
【図6】被検体内の反射位置の深さと位相差との関係を示す図
【図7】本発明に係る超音波信号処理装置を含む超音波診断装置の構成例を示すブロック図
【図8】本発明に係る超音波信号処理の一例の概略フロー
【図9】第1実施形態における減衰率導出部の構成例を示すブロック図
【図10】第1実施形態における減衰率導出処理の流れの一例を示すフローチャート
【図11】(A)は注目領域の説明に用いる説明図、(B)は注目領域における度数最大の位相差を注目領域の代表値として求めることの説明に用いる説明図、(C)は各注目領域の代表値からなる位相差代表値断層像の説明に用いる説明図
【図12】第2実施形態における減衰率導出部の構成例を示すブロック図
【図13】第2実施形態における減衰率導出処理の流れの一例を示すフローチャート
【図14】非スペックルと非スペックル領域の分離結果を示す説明図
【符号の説明】
【0118】
10…超音波診断装置、12…操作部、14…表示部、20…超音波探触子、30…送受信部、40…信号処理部、41…直交検波部、42…振幅情報演算部、43…位相情報演算部、44…減衰率導出部、50…画像処理部、51…振幅断層像生成部、52…位相差断層像生成部、53…減衰率断層像生成部、54…画像合成部、62…モード切替部、64…表示制御部、71…位相差算出部、72…位相差中心値算出部、73…2次位相差算出部、74…減衰率換算部、81…2次位相差算出部、82…領域分離部、83…2次位相差平均値算出部、84…減衰率換算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に向けて超音波を送信するとともに、前記被検体内からの超音波エコーを受信して、該超音波エコーを示す受信信号を生成する超音波送受信手段と、
前記受信信号から、前記超音波エコーの位相を示す位相情報を取得する位相情報取得手段と、 前記被検体の深さ方向における前記超音波エコーの位相の変化から、前記被検体内での超音波の減衰率を導出する減衰率導出手段と、
を備えたことを特徴とする超音波信号処理装置。
【請求項2】
前記減衰率導出手段は、前記被検体の深さ方向における前記超音波エコーの位相の2次微分値を求めることにより、前記減衰率を導出することを特徴とする請求項1に記載の超音波信号処理装置。
【請求項3】
前記減衰率導出手段は、スペックル成分を除いた位相変化から、前記減衰率を導出することを特徴とする請求項1または2に記載の超音波信号処理装置。
【請求項4】
前記減衰率導出手段は、前記被検体の断層面の注目領域にて度数が最大である位相差を前記注目領域の代表値とし、該代表値を前記深さ方向にて微分することにより、前記減衰率を導出することを特徴とする請求項3に記載の超音波信号処理装置。
【請求項5】
前記減衰率導出手段は、前記被検体の断層面をスペックル領域と非スペックル領域とに分け、各注目領域ごとに前記非スペックル領域に属する位相差の平均値を求め、該平均値を前記注目領域の代表値とし、該代表値を前記深さ方向にて微分することにより、前記減衰率を導出することを特徴とする請求項3に記載の超音波信号処理装置。
【請求項6】
前記減衰率導出手段は、前記被検体の断層面をスペックル領域と非スペックル領域とに分け、前記非スペックル領域に属する前記超音波エコーの位相の2次微分値を求めることにより、前記減衰率を導出することを特徴とする請求項3に記載の超音波信号処理装置。
【請求項7】
前記超音波送受信手段は、ガウシアンパルスを送信することを特徴とする請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の超音波信号処理装置。
【請求項8】
前記位相情報取得手段は、前記超音波送受信手段の素子の配列方向における位相の分解能が前記素子の間隔以上であるデータを利用することを特徴とする請求項1ないし7のうちいずれか1項に記載の超音波信号処理装置。
【請求項9】
前記超音波送受信手段は、1回の超音波送信で前記超音波送受信手段の素子の配列方向にて2音線以上の前記受信データを生成可能であり、
前記位相情報取得手段は、前記超音波送受信手段にて生成される2音線以上の前記受信データを利用することを特徴とする請求項1ないし8のうちいずれか1項に記載の超音波信号処理装置。
【請求項10】
前記減衰率導出手段にて導出される前記減衰率に基づいて、前記被検体の断層面における減衰率の分布を示す減衰率断層像を生成する減衰率断層像生成手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載の超音波信号処理装置。
【請求項11】
前記超音波エコーの受信信号から前記超音波エコーの振幅を示す振幅情報を取得する振幅情報取得手段と、 前記振幅情報取得手段にて取得される前記振幅情報に基づいて振幅断層像を生成する振幅断層像生成手段と、
前記減衰率断層像と前記振幅断層像とを重畳する画像合成手段と、
を備えたことを特徴とする請求項10に記載の超音波信号処理装置。
【請求項12】
前記画像合成手段は、前記減衰率断層像によって前記振幅断層像の輝度または色を変調することを特徴とする請求項11に記載の超音波信号処理装置。
【請求項13】
前記超音波エコーの受信信号から前記超音波エコーの振幅を示す振幅情報を取得する振幅情報取得手段と、 前記振幅情報取得手段にて取得される前記振幅情報に基づいて振幅断層像を生成する振幅断層像生成手段と、
画像を表示可能な表示部と、
前記減衰率断層像と前記振幅断層像とを並べて前記表示部に表示させる制御を行う表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項10に記載の超音波信号処理装置。
【請求項14】
前記減衰率断層像を出力するモードと前記減衰率断層像を出力しないモードとを切り替えるモード切替手段を備えたことを特徴とする請求項8ないし11のうちいずれか1項に記載の超音波信号処理装置。
【請求項15】
前記減衰率断層像と前記振幅断層像とを合成するモードと前記振幅断層像を合成しないモードとを切り替えるモード切替手段を備えたことを特徴とする請求項11または12に記載の超音波信号処理装置。
【請求項16】
被検体に向けて超音波を送信するとともに、前記被検体からの超音波エコーを受信し、
前記超音波エコーを示す受信信号から、前記超音波エコーの位相を示す位相情報を取得し、
前記被検体の深さ方向における前記超音波エコーの位相の変化から、前記被検体内での超音波の減衰率を導出することを特徴とする超音波信号処理方法。
【請求項1】
被検体に向けて超音波を送信するとともに、前記被検体内からの超音波エコーを受信して、該超音波エコーを示す受信信号を生成する超音波送受信手段と、
前記受信信号から、前記超音波エコーの位相を示す位相情報を取得する位相情報取得手段と、 前記被検体の深さ方向における前記超音波エコーの位相の変化から、前記被検体内での超音波の減衰率を導出する減衰率導出手段と、
を備えたことを特徴とする超音波信号処理装置。
【請求項2】
前記減衰率導出手段は、前記被検体の深さ方向における前記超音波エコーの位相の2次微分値を求めることにより、前記減衰率を導出することを特徴とする請求項1に記載の超音波信号処理装置。
【請求項3】
前記減衰率導出手段は、スペックル成分を除いた位相変化から、前記減衰率を導出することを特徴とする請求項1または2に記載の超音波信号処理装置。
【請求項4】
前記減衰率導出手段は、前記被検体の断層面の注目領域にて度数が最大である位相差を前記注目領域の代表値とし、該代表値を前記深さ方向にて微分することにより、前記減衰率を導出することを特徴とする請求項3に記載の超音波信号処理装置。
【請求項5】
前記減衰率導出手段は、前記被検体の断層面をスペックル領域と非スペックル領域とに分け、各注目領域ごとに前記非スペックル領域に属する位相差の平均値を求め、該平均値を前記注目領域の代表値とし、該代表値を前記深さ方向にて微分することにより、前記減衰率を導出することを特徴とする請求項3に記載の超音波信号処理装置。
【請求項6】
前記減衰率導出手段は、前記被検体の断層面をスペックル領域と非スペックル領域とに分け、前記非スペックル領域に属する前記超音波エコーの位相の2次微分値を求めることにより、前記減衰率を導出することを特徴とする請求項3に記載の超音波信号処理装置。
【請求項7】
前記超音波送受信手段は、ガウシアンパルスを送信することを特徴とする請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の超音波信号処理装置。
【請求項8】
前記位相情報取得手段は、前記超音波送受信手段の素子の配列方向における位相の分解能が前記素子の間隔以上であるデータを利用することを特徴とする請求項1ないし7のうちいずれか1項に記載の超音波信号処理装置。
【請求項9】
前記超音波送受信手段は、1回の超音波送信で前記超音波送受信手段の素子の配列方向にて2音線以上の前記受信データを生成可能であり、
前記位相情報取得手段は、前記超音波送受信手段にて生成される2音線以上の前記受信データを利用することを特徴とする請求項1ないし8のうちいずれか1項に記載の超音波信号処理装置。
【請求項10】
前記減衰率導出手段にて導出される前記減衰率に基づいて、前記被検体の断層面における減衰率の分布を示す減衰率断層像を生成する減衰率断層像生成手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載の超音波信号処理装置。
【請求項11】
前記超音波エコーの受信信号から前記超音波エコーの振幅を示す振幅情報を取得する振幅情報取得手段と、 前記振幅情報取得手段にて取得される前記振幅情報に基づいて振幅断層像を生成する振幅断層像生成手段と、
前記減衰率断層像と前記振幅断層像とを重畳する画像合成手段と、
を備えたことを特徴とする請求項10に記載の超音波信号処理装置。
【請求項12】
前記画像合成手段は、前記減衰率断層像によって前記振幅断層像の輝度または色を変調することを特徴とする請求項11に記載の超音波信号処理装置。
【請求項13】
前記超音波エコーの受信信号から前記超音波エコーの振幅を示す振幅情報を取得する振幅情報取得手段と、 前記振幅情報取得手段にて取得される前記振幅情報に基づいて振幅断層像を生成する振幅断層像生成手段と、
画像を表示可能な表示部と、
前記減衰率断層像と前記振幅断層像とを並べて前記表示部に表示させる制御を行う表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項10に記載の超音波信号処理装置。
【請求項14】
前記減衰率断層像を出力するモードと前記減衰率断層像を出力しないモードとを切り替えるモード切替手段を備えたことを特徴とする請求項8ないし11のうちいずれか1項に記載の超音波信号処理装置。
【請求項15】
前記減衰率断層像と前記振幅断層像とを合成するモードと前記振幅断層像を合成しないモードとを切り替えるモード切替手段を備えたことを特徴とする請求項11または12に記載の超音波信号処理装置。
【請求項16】
被検体に向けて超音波を送信するとともに、前記被検体からの超音波エコーを受信し、
前記超音波エコーを示す受信信号から、前記超音波エコーの位相を示す位相情報を取得し、
前記被検体の深さ方向における前記超音波エコーの位相の変化から、前記被検体内での超音波の減衰率を導出することを特徴とする超音波信号処理方法。
【図1】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図4】
【図14】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図4】
【図14】
【公開番号】特開2010−82230(P2010−82230A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255228(P2008−255228)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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