説明

超音波処理装置

【課題】機械方向へ走行するウエブに対してその幅方向に超音波処理を施すための簡単な構造の超音波処理装置の提供。
【解決手段】超音波処理装置50では、上流側搬送手段51と下流側搬送手段52とよってウエブ31を機械方向MDへ連続的に走行させる。手段51,52の間では、装置50の固定要素である第1機械要素の作用面が機械方向MDと斜めに交差する方向へ延びる。ウエブ31は、作用面64の上方を機械方向MDへ走行する。装置50では、作用面64に対向していて、機械方向と斜めに交差する方向へ移動する第2機械要素を設ける。第1機械要素の作用面と第2機械要素とが協働してウエブ31に超音波処理を施す。第1機械要素には、超音波ホーン63とアンビル68とのうちの一方が使用され、第2機械要素には、超音波ホーン63とアンビル68のうちのもう一方が使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、機械方向へ連続的に走行しているウエブに対して超音波処理を施すための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性合成繊維を含む不織布や熱可塑性合成樹脂で形成されたフィルムをウエブとして機械方向へ走行させ、その走行させる過程においてウエブに対して超音波処理を施すための装置は、公知でもありまた周知でもある。
【0003】
たとえば、実開昭58−39836号公報(特許文献1)に記載の超音波加工機は、超音波振動が付与される加工用ホーンと、加工用ホーンと協働する押えローラとを有する。加工用ホーンと押えローラとは、それぞれが回転しながら被加工物に超音波処理を施してその被加工物を連続的に溶着する。
【0004】
また、特表平10−513128号公報(特許文献2)に記載の回転シールシステムは、ウエブである加工物の走行方向に向かって回転するドラムと、ドラムの周面に取り付けられていてドラムの回転方向に対しての交差方向へ延びる第1の熱エネルギー付与装置と、ドラムとともに回転しながら前記交差方向へ動くようにドラムに取り付けられている第2の熱エネルギー付与装置とを有し、第1のエネルギー付与装置と第2のエネルギー付与装置との間に加工物を位置させる。第2の熱エネルギー付与装置は、第1の熱エネルギー付与装置と組み合わされて前記交差方向へ移動して、ドラムの回転中に加工物に熱エネルギーを付与し、熱エネルギーの付与が終了すると第1の熱エネルギー付与装置から離間して移動する前の位置へ戻る。第1,第2の熱エネルギー付与装置の一方は超音波振動するホーンであり、もう一方はアンビルである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭58−39836号公報
【特許文献2】特表平10−513128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の装置では、ウエブに形成される超音波処理部分が機械方向と平行になり、機械方向と交差する方向へ延びる態様の超音波処理部分を得ることができない。
【0007】
特許文献2に記載の回転シールシステムでは、機械方向へ走行する加工物に対して、機械方向と交差する方向へ延びる態様のシール部である超音波処理部を得ることができる。この回転シールシステムでは、ドラムの外側に設けられた第2の熱エネルギー付与装置がドラムの回転方向に対する交差方向へ移動する間にウエブに対して熱エネルギーを付与するのであるが、熱エネルギーを付与するその作業は、ドラムに巻き付いたウエブの巻き付き角度の範囲内で完了しなければならない。換言すると、ウエブがドラムに巻き付き始め、その後ドラムから離脱するまでの間にその作業を終了しなければならない。ウエブが高速で走行するときに、このような作業を短いインタバルで反復するには、ドラムに対して複数の、たとえば3〜4組またはそれ以上の第1、第2熱エネルギー付与装置を取り付けることが必要になり、そのことが装置の複雑化や装置制作費の高額化、保守管理の複雑化を生じさせる原因になる。
【0008】
この発明は、ウエブの幅方向へ超音波処理を施す際に、従来技術におけるこのような問題の発生を回避できるような超音波処理装置の提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためのこの発明が対象とするのは、超音波発信器につながるホーンと前記ホーンに対向するアンビルとの間にウエブを介在させて前記ウエブに超音波処理を施すための装置である。
【0010】
かかる装置において、この発明が特徴とするところは以下のとおりである。すなわち、前記装置は、前記ウエブを機械方向へ連続的に走行させる上流側搬送手段と下流側搬送手段とを含む。前記上流側搬送手段と前記下流側搬送手段との間には前記ホーンと前記アンビルとのうちの一方である第1機械要素ともう一方である第2機械要素とを前記ウエブを挟むように対向配置する。前記第1機械要素は、前記第2機械要素に対向する作用面を有するとともに前記機械方向と前記機械方向に対する前記交差方向とに動くことのない前記装置においての固定要素である。前記第2機械要素は、前記交差方向において回転しつつ、前記機械方向と前記交差方向との間において前記ウエブを横切るように前進後退運動を反復する可動要素であって、前記前進運動するときには前記機械方向へ走行している前記ウエブに接触しながら前記第1機械要素の前記作用面と協働して前記ウエブに前記超音波処理を施し、前記後退運動するときには前記ウエブから離間する。
【0011】
この発明の実施態様の一つにおいて、前記第1機械要素の前記作用面は、前記第2機械要素が前記前進後退運動を反復する方向に平行して延びている。
【0012】
この発明の実施態様の他の一つにおいて、前記第1機械要素がホーンであり、前記第2機械要素がローラー状アンビルである。
【0013】
この発明の実施態様の他の一つにおいて、前記第1機械要素がアンビルであり、前記第2機械要素がローラー状のホーンである。
【0014】
この発明の実施態様の他の一つにおいて、前記ウエブが前記第1機械要素と前記第2機械要素との間に介在する複数枚のウエブであって、前記第1機械要素と前記第2機械要素とが前記複数枚のウエブを溶着するためのものである。
【0015】
この発明の実施態様の他の一つにおいて、前記第1機械要素と前記第2機械要素とは、前記第2機械要素が前記前進後退運動を反復する方向において前記ウエブの一部分を溶融しかつ切断する。
【0016】
この発明の実施態様のさらに他の一つにおいて、前記アンビルが加熱可能な態様および冷却可能な態様のうちの少なくとも一方の態様にある。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る超音波処理装置では、上流側搬送手段と下流側搬送手段とによってウエブを機械方向へ連続的に走行させる。これら両手段の間には、この装置においての固定要素である第1機械要素の作用面が機械方向と斜めに交差する方向へ延びている。機械方向へ走行するウエブは、その作用面の上方を機械方向へ走行する過程において、作用面に対向しており機械方向と斜めに交差する方向へ移動する第2機械要素と作用面との協働によって超音波処理が施される。このような超音波処理装置では、第1機械要素が固定されたものであり、第2機械要素が機械方向と斜めに交差する方向において往復運動を反復するだけのものであるから、この超音波処理装置は構造が簡単で、製作費を低く抑えたり、保守管理を簡単にしたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】使い捨ておむつの斜視図。
【図2】(a)は図1の使い捨ておむつの連続体を示す図、(b)は(a)の連続体を得るためのウエブを示す図。
【図3】超音波処理装置の斜視図。
【図4】図3の装置についてのIV−IV線矢視図。
【図5】図4のV−V線矢視図。
【図6】図5のVI−VI線矢視図。
【図7】アンビルの周面状態の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付の図面を参照してこの発明に係る超音波処理装置の詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0020】
図1は、超音波処理装置を使用して製造された使い捨てのパンツ型おむつ1の斜視図である。おむつ1は、前胴回り域2と後胴回り域3と、股下域4とを有し、前胴回り域2と後胴回り域3の側縁部6,7が合掌状に重なり合い、接合域8において互いに接合して、おむつ1には胴回り開口11と、脚回り開口12とが形成されている。胴回り開口11と脚回り開口12のそれぞれでは、周縁部分に弾性部材(図示せず)が伸長状態で取り付けられていて、その周縁部分が弾性的に伸長・収縮する。前胴回り域2と後胴回り域3と股下域4とは、おむつ1の着用者の肌に当接する内面シート13が熱可塑性合成繊維からなり透液性を有する不織布で形成され、着用者の着衣に当接する外面シート14が熱可塑性合成樹脂からなり不透液性を有するフィルムと、熱可塑性合成繊維からなりフィルムの外面に接合している不織布とのラミネートシートで形成されている。おむつ1は、これら内面シート13と外面シート14との間に介在する周知の吸収体を含むものであるが、その吸収体は図示されていない。
【0021】
このようなおむつ1における接合域8は、前胴回り域2の側縁部6と後胴回り域3の側縁部7とを重ね合せて後記する超音波処理装置で処理することにより、換言すると、前胴回り域2を形成している内面シート13と外面シート14および後胴回り域3を形成している内面シート13と外面シート14を重ね合せて超音波処理装置で処理することにより形成されている。
図2の(a)は、図1のおむつ1の複数が幅方向において連続した状態にあるおむつ連続体21の部分斜視図であり、(b)はおむつ連続体21を製造するために使用されるウエブ31の部分斜視図である。
【0022】
図2の(a)のおむつ連続体21では、縦方向へ延びる複数の切断予定線22が横方向で等ピッチの態様にある。切断予定線22の両側には、図1に示された接合域8が互いに接し合う状態で形成されている。図1のおむつ1は、このようなおむつ連続体21を切断予定線22で切断することにより得ることができる。図2の(b)におけるウエブ31には、(a)における切断予定線22のみが示されていて、接合域8が未だ形成されていない。かようなウエブ31は、それが後記する超音波処理装置で処理されることにより、接合域8が形成され、図2の(a)のおむつ連続体21となる。
【0023】
図3は、図2の(b)に示されたウエブ31に超音波処理を施して、図2の(a)に示されたおむつ連続体21を得るための超音波処理装置の部分斜視図であって、機械方向がMDで示され、機械方向MDに直交する交差方向がCDで示されている。超音波処理装置は、機械方向MDの上流側に設けられた搬送手段である一対の第1ニップロール51と、下流側に設けられた搬送手段である一対の第2ニップロール52と、第1,第2ニップロール51と52との間に設けられた超音波処理部53とを含んでいる。ウエブ31は、第1ニップロール51から第2ニップロール52に向かって機械方向へ連続的に走行し、走行している間に超音波処理部53を通過する。
【0024】
超音波処理部53は、第1ニップロール51と第2ニップロール52との間にセットされている平坦なテーブル54と、テーブル54を挟むようにセットされる超音波処理機55とを有する。超音波処理機55は、テーブル54の上方および下方のうちの一方にあって機械方向MDにも移動することのないように固定された機械要素である第1機械要素61と、テーブル54の上方および下方のうちのもう一方にあって機械方向MDと斜めに交差して移動可能な機械要素である第2機械要素62とを含み、ウエブ31がテーブル54の上方を走行する。図示例においての第1機械要素61は、テーブル54の下側に設置された超音波ホーン63であり、超音波ホーン63の作用面64がテーブル54に形成されている透孔56の内側に見えている。透孔56と作用面64とは、機械方向MDと斜めに交差するように延びている。図示例においての第2機械要素62は、テーブル54の上側に設置されたアンビル部66である。アンビル部66は、スチールベルト69によって駆動され、超音波ホーン63の作用面64に平行して延びるリニアスライド67に対して摺動しながら機械方向MDと斜めに交差する態様で往復運動する。図3において明らかなように、機械方向MDに直交する交差方向CDは、ウエブ31の幅方向WDに一致している。それゆえ、アンビル部66は、静止した状態で見たときのウエブ31を斜めに横切るように往復運動するものである。
【0025】
往復運動するアンビル部66は、矢印Eで示される前進方向への運動では、アンビル部66のうちのローラー状アンビル68がその直下において対向している超音波ホーン63の作用面64と協働して、ローラー状アンビル68と作用面64との間に位置するウエブ31に超音波処理を施すことができる。
【0026】
図4は、図3におけるIV−IV線矢視図であって、交差方向CDから見たときの超音波処理部53が示されているが、スチールベルト70の図示が省略されている。超音波処理部53におけるテーブル54では、透孔56の位置が仮想線で示されている。ウエブ31は、機械方向MDの上流側から下流側
に向かってテーブル54の上方を連続的に走行している。透孔56は、そのウエブ31と斜めに交差して、ウエブ31の両側縁部31a,31bの外側にまで延びるように形成されている(図3参照)。
【0027】
テーブル54の下側に設置されたホーン63は、超音波ブースター71を介して超音波コンバータ72と超音波発振器(図示せず)とに接続され、超音波発振器からの高周波電力によって図の上下方向へ超音波振動する。
【0028】
テーブル54の上側に設置された第2機械要素62には、アンビル部66と、アンビル部66におけるローラー状アンビル68を回転させるベベルギア69と、ローラー状アンビル68をホーン63に対して離間接近するように上下動させるためのエアシリンダ73と、これら各部66,69,73が取り付けられていてリニアスライドレール67に対して矢印E方向(図3参照)とその反対方向とに摺動するスライドベース74とが含まれている。エアシリンダ73の作用によって下降したローラー状アンビル68がホーン63の作用面64と協働してウエブ31を挟んでいる状態では、作用面64の超音波振動の作用によってウエブ31に含まれている熱可塑性合成樹脂が溶融し、ウエブ31において重なり合うシートどうしが溶着する。
【0029】
スライドベース74は、後記するサーボモータ76の作用によってリニアスライドレール67を摺動して矢印E方向への前進とその反対方向への後退とが可能であって、前進するときにはウエブ31に対する溶着が続いて、図2の(a)における接合域8を形成する。スライドベース74が所要の距離だけ前進すると接合域8の形成が終わる。すると、エアシリンダ73の作用によってローラー状アンビル68が上昇してホーン63から離間し、ローラー状アンビル68とホーン63との協働の作業が解ける。上昇したローラー状アンビル68は、スライドベース74とともに所要の位置まで後退する。その後退が終了すると、ローラー状アンビル68はエアシリンダ73の作用によって再び下降して、ホーン63との協働の作業を再開する。
【0030】
このように作用するローラー状アンビル68は、シャフト77とともに機械方向MDに直交する交差方向CD(図3参照)へ回転するもので、そのシャフト77は機械方向MDへ延びていて一対のベベルギア69の一方69aに接続されている。ベベルギア69は、後記するようにアンビル部66が取り付けられているスライドベース74の前進・後退運動を利用して回転するように形成されている。
【0031】
図5は、図4のV−V線矢視図であるが、リニアスライドレール67が水平に延びるように超音波処理装置の向きが変えてある。図5にはまた、ウエブ31が仮想線で示され、図4において省略されていたスチールベルト70も仮想線で示されている。エアシリンダ73(図4参照)を介してアンビル部66が取り付けられているスライドベース74は、基盤80に取り付けられている一対の平行なリニアスライドレール67に摺動可能に当接している。リニアスライドレール67は、機械方向MDと斜めに交差して、ウエブ31を斜めに横切るように延びており、リニアスライドレール67の機械方向MDに対する交差角度αは0〜90°の間にある。一対のリニアスライドレール67の間には、雄のボールねじ81がリニアスライドレール67に平行に延びていて、ボールねじ81の一方の端部81aがカップリング82を介してサーボモータ76に接続され、もう一方の端部81bが基盤80に取り付けられた軸受83に回転可能に支持されている。仮想線Cは、ボールネジ81の回転中心を示している。仮想線で示されたスチールベルト70は、リニアスライドレール67と平行に延びていて、両端部が支柱84のそれぞれに固定され、その支柱84が基盤80に固定されている。
【0032】
図5におけるスライドベース74では、ローラー状アンビル68のシャフト77が一対のベベルギア69の一方69aに接続され、ベベルギア69のもう一方69bがマグネット入りプーリ86を有し、そのプーリ86がスチールベル70に接触している。スチールベルト70は、それに押えプーリ87が圧接することにより緊張状態にある。シャフト77は、一対の支持板88に回転可能に支えられている。図5においてサーボモータ76が回転すると、ローラー状アンビル68はスライドベース74とともに仮想線で示されたローラー状アンビル68の位置に到達して超音波処理作業を終了することが可能である。図5に仮想線で一部分のみが示されているフレーム構造体90は、超音波処理装置を固定するために使用するものである。超音波処理装置を構成する図4に例示の各部材は、フレーム構造体90に取り付けて使用することができる。
【0033】
図6は、図5のVI−VI線矢視図である。図6において、水平に延びる基盤80の下方では、同じく水平に延びる雄のボールねじ81に雌のボールねじ91が組み付けられている。雌のボールねじ91は、取付部材92を介してスライドベース74に取り付けられている。また、スライドベース74では、その四隅に配置されたスライド駒93が、リニアスライドレール67のそれぞれに下方から嵌合している(図4参照)。それゆえ、サーボモータ76の回転方向を切り替えることによって、スライドベース74とローラー状アンビル68とを後退位置Sと前進位置Sとの間で往復運動させることができる。後退位置Sと前進位置Sとはリニアスライドレール67に並設されるリミットスイッチ(図示せず)によって設定することができ、そのリミットスイッチからの電気信号によってサーボモータ76の回転方向を切り替えることができる。また、リミットスイッチの信号によってエアシリンダ73を作動させることができるから、スライドベース74が後退位置Sにあるときには、エアシリンダ73によってローラー状アンビル68を下降させて、ウエブ31をローラー状アンビル68と超音波振動しているホーン63の作用面64とに密着させることができる。ウエブ31では、ローラー状アンビル68と作用面64とに接触している部位に超音波処理が施される。スライドベース74が前進位置Sにあるときには、エアシリンダ73がローラー状アンビル68を上昇させて、作用面64から離間させ、ウエブ31に対するローラー状アンビル68と作用面64との作用を終了させることができる。
【0034】
このようにスライドベース74が前進または後退するときには、ベベルギア69bに付属しているマグネット入りプーリ86がスチールベルト70に接触して回転する。マグネット入りプーリ86の回転は、ベベルギア69bから69aに伝わってシャフト77を回転させ、さらにローラー状アンビル68を矢印F(図5,6参照)方向へ回転させる。したがって、ローラー状アンビル68は、矢印F方向へ回転しつつ矢印E方向へ前進して、ウエブ31に接合域8を形成する。
【0035】
このように形成されている超音波処理装置では、機械方向MDへ一定の走行速度で連続的に走行しているウエブ31に対して、そのウエブ31を横切るように、たとえば図3に例示されているように機械方向MDに直交する態様で直線的に延びる接合域8を形成するときに、直線的に一定の速度で前進するローラー状アンビル68の前進する方向Eとウエブ31が走行する機械方向MDとの間の交差角度、すなわち図5におけるリニアスライドレール67の機械方向MDに対する交差角度αは、ローラー状アンビル68の前進速度とウエブ31の走行速度とに基づいて決められる。
【0036】
この発明に係る超音波処理装置において、ホーン63によって例示された第1機械要素はその位置が固定されたものであり、アンビル68によって例示された第2機械要素は交差角度αで機械方向MDと斜めに交差する方向において往復運動を反復するものであるから、この超音波処理装置は構造が簡単で、超音波処理装置の製作費を低く抑えることが可能になり、保守点検が容易になる。
【0037】
図7は、この発明に係る超音波処理装置において使用可能なローラー状アンビル68の周面の一態様を示す図である。図示例の如く、ローラー状アンビル68の周面に周方向で凹凸を繰り返す凹部68aと凸部68bとを形成しておくと、その凹部68aと凸部68bとが反転された状態の図柄を接合域8に形成することができる。その周面における凹部68aは接合域8における凸部となってあらわれ、周面における凸部68bは接合域8における凹部となってあらわれる。周面の幅方向中央部分に形成されている凹部68aは、図2の(a)、(b)における切断予定線22に一致させる部位である。仮想線Cは、アンビル68の回転中心を示している。
【0038】
この発明に係る超音波処理装置ではまた、第1機械要素としてアンビルを使用し、第2機械要素としてホーンを使用することもできる。そのときのアンビルは、ウエブ31を斜めに横切る板状のものにし、ホーンはローラー状のものにして、ホーンを回転させつつウエブ31を斜めに横断するように前進させることが好ましい。
【0039】
この発明に係る超音波処理装置ではさらにまた、第1機械要素または第2機械要素としてのアンビルを加熱状態で使用したり、冷却状態で使用したりすることができる。加熱状態で使用するときのアンビルは、その温度をたとえば70〜80℃に設定しておき、ウエブ31に含まれた熱可塑性合成樹脂が超音波処理によって溶融し、その熱可塑性合成樹脂の一部分が小塊となってアンビルに付着したとしても、その小塊が冷却固化した状態でアンビルに付着して残るという問題の発生を防ぐことができる。加熱状態にあるアンビルはまた、ウエブ31の溶着に要する時間を短縮するように作用する場合がある。また、冷却状態で使用するときのアンビルは、その温度をたとえば0〜−5℃に設定して、ウエブ31の超音波処理によって熱可塑性合成樹脂の小塊が生じたとしても、その小塊を速やかに固化させて、アンビルに付着しにくくすることができる。
【0040】
図示例において、超音波処理装置はウエブ31に接合域8を形成するために使用されているが、超音波処理装置の用途は、これだけに限られるものではない。この発明に係る超音波処理装置は、ホーン63および/またはアンビル68を溶断刃として使用し、ウエブ31を特定の部位において切断するとともに、その部位の周縁において熱可塑性合成繊維どうしや熱可塑性合成樹脂で形成されたフィルムどうしを溶着したり、それら繊維とフィルムとを溶着したりするために使用することもできる。
【符号の説明】
【0041】
31 ウエブ
51 上流側搬送手段(ニップロール)
52 下流側搬送手段(ニップロール)
63 ホーン
64 作用面
68 アンビル
MD 機械方向
CD 交差方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波発信器につながるホーンと前記ホーンに対向するアンビルとの間にウエブを介在させて前記ウエブに超音波処理を施すための装置であって、
前記ウエブを機械方向へ連続的に走行させる上流側搬送手段と下流側搬送手段とを含み、
前記上流側搬送手段と前記下流側搬送手段との間には前記ホーンと前記アンビルとのうちの一方である第1機械要素ともう一方である第2機械要素とを前記ウエブを挟むように対向配置し、
前記第1機械要素は、前記第2要素に対向する作用面を有するとともに前記機械方向と前記機械方向に対する前記交差方向とに動くことのない前記装置においての固定要素であり、
前記第2機械要素は、前記交差方向において回転しつつ、前記機械方向と前記交差方向との間において前記ウエブを横切るように前進後退運動を反復する可動要素であって、前記前進運動するときには前記機械方向へ走行している前記ウエブに接触しながら前記第1機械要素の前記作用面と協働して前記ウエブに前記超音波処理を施し、前記後退運動するときには前記ウエブから離間することを特徴とする前記装置。
【請求項2】
前記第1機械要素の前記作用面は、前記第2機械要素が前記前進後退運動を反復する方向に平行して延びている請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記第1機械要素がホーンであり、前記第2機械要素がローラー状アンビルである請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記第1機械要素がアンビルであり、前記第2機械要素がローラー状のホーンである請求項1または2記載の装置。
【請求項5】
前記ウエブが前記第1機械要素と前記第2機械要素との間に介在する複数枚のウエブであって、前記第1機械要素と前記第2機械要素とが前記複数枚のウエブを溶着するためのものである請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記第1機械要素と前記第2機械要素とは、前記第2機械要素が前記前進後退運動を反復する方向において前記ウエブの一部分を溶融しかつ切断する請求項1〜5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記アンビルが加熱可能な態様および冷却可能な態様のうちの少なくとも一方の態様にある請求項1〜6のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−76342(P2012−76342A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223074(P2010−223074)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】