説明

超音波探傷センサおよび超音波探傷方法

【課題】超音波探傷において、集束範囲の広く高感度な集束型超音波探傷センサを提供する。
【解決手段】超音波素子5の曲率を素子の中心から外周にかけて大きく又は小さくなるように変化させる。曲率は超音波素子5の中心からの距離とともに連続的に変化させる。また、超音波素子5を複数の領域に分けて、領域ごとに変化させてもよい。超音波素子5を分割し、分割した超音波素子のうち探傷位置と集束距離が合致する素子を用いて超音波を発振させる。また、超音波を発振する際に、分割した各超音波素子から探傷距離に同時に超音波が届くよう、各分割素子間の超音波発振開始時間差を制御してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波探傷センサおよびその超音波探傷センサを用いた超音波探傷方法に係り、超音波探傷の高感度に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波探傷(以下、UTと記す)とは、超音波探傷センサ1(以下、センサと記す)から検査対象2内に超音波を送信し、検査対象内の欠陥で反射される超音波3をセンサで受信して欠陥の有無を判断する検査手法である。図15(a)に示すように健全部では欠陥4からセンサへの反射波は発生しないが、図15(b)に示すように欠陥がある場合に反射波が生じる。
【0003】
小さな欠陥を検出する場合や超音波の伝播距離が長くなって欠陥に入射する超音波強度が低下する場合、感度を向上する必要がある。
【0004】
感度向上策として、非特許文献1に記載のように、超音波素子を湾曲させて曲面の中心部へ超音波を集束させるセンサが知られている。
【0005】
また、図16に示したように特許文献1では、感度向上のために曲面により構成される超音波素子と、超音波素子と異なる曲率をもつ音響レンズ10を用いてセンサを構成している。このセンサは、超音波素子と音響レンズそれぞれの曲面の中心に超音波が集束される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−24464号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Japan Probe製品カタログ Ver.8,p.13 http://www.jp-probe.com/catalog_pdf/jp_catalog.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1の超音波センサを構成する超音波素子の曲率は一定に保たれているため、曲面の中心付近にある集束範囲の音圧は上昇するが、集束範囲からずれた距離の音圧は低下する。このため、高感度で検出できる距離が限定されるという問題があった。
【0009】
特許文献1においては超音波素子と曲率の異なる音響レンズを組み合わせ、超音波素子と音響レンズのそれぞれの焦点へ超音波を集束させることで超音波の集束範囲を拡張している。この構成のセンサは、検査対象へ音響レンズを密着させる必要があるため、生体等の柔軟な組織のUTには適用可能であるが、金属やセラミック等のUTには適用できなかった。
【0010】
本発明は、金属やセラミック等においても焦点距離の範囲を拡張した集束型センサ及びそのセンサを用いたUT方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
超音波素子の曲率を素子の中心から外周にかけて大きくなるように変化させる。曲率は超音波素子の中心からの距離とともに連続的に変化させる。また、超音波素子を複数の領域に分けて、領域ごとに変化させてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属やセラミック等のUTにおいても集束型センサの集束範囲を拡張できる。また、焦点距離の範囲を拡張した集束型センサの空間分解能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態における超音波素子の形状とセンサ構造を示す図。
【図2】超音波集束範囲の素子曲率依存性。
【図3】必要センサ面積の探傷距離依存性。
【図4】超音波素子曲率の超音波素子の半径方向距離依存性。
【図5】第2の実施の形態における超音波素子の形状を示す図。
【図6】第2の実施の形態における超音波素子の曲率決定方法の説明図。
【図7】第2の実施の形態における超音波探傷方法を示す図。
【図8】遅延時間の解析例。
【図9】空間分解能低下機構の説明図。
【図10】空間分解能向上方法の説明図。
【図11】第2の実施の形態のセンサを用いた超音波探傷方法のステップ。
【図12】第2の実施の形態の超音波探傷における信号伝達のフロー図。
【図13】空間分解能向低下に伴う感度向上機構の説明図。
【図14】空間分解能と感度の相関図。
【図15】超音波探傷方法を示す概念図。
【図16】特許文献1のセンサの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施例について、以下図面を用いて説明する。
(1)超音波素子の曲率を素子の中心から外周にかけて大きく又は小さくなるように変化させる。曲率は超音波素子の中心からの距離とともに連続的に変化させる。また、超音波素子を複数の領域に分けて、領域ごとに変化させてもよい。
(2)曲率が一定でない超音波素子では素子の部位ごとに超音波が集束する距離が変化するため、素子の一部は探傷位置に集束しない。そこで、超音波素子を分割し、分割した超音波素子のうち探傷位置と集束距離が合致する素子を用いて超音波を発振させる。また、超音波を発振する際に、分割した各超音波素子から探傷距離に同時に超音波が届くよう、各分割素子間の超音波発振開始時間差を制御してもよい。
(3)(2)の構造のセンサでUTを行う場合に、空間分解能を目標範囲とする超音波素子を使用し、(2)に対して超音波強度を向上する。また、超音波を発振する際に、分割した各超音波素子から探傷距離に同時に超音波が届くよう、各分割素子間の超音波発振開始時間差を制御してもよい。
【実施例1】
【0015】
図1〜図4及び数式(1)〜(9)を用いて本発明の第1の実施形態について説明する。
【0016】
図1(a)は第1の実施形態の超音波探傷センサ1に用いる超音波素子5の外形で、円形の超音波素子を用い、超音波素子の曲率を中心から外周に向けて連続的に大きくなるように変化させている。超音波素子の材料としては、PZT(圧電セラミック:(Pb(Zr,Ti)O3)),LiNbO2,PVDF(高分子圧電素子:Polyvinylidene Fluoride)等の圧電素子を使用する。図1(b)は図1(a)の素子を用いたセンサの構造図で、超音波素子の両端に電極6を設けて電圧を印加する構造としている。また、超音波素子の背面に超音波発振時の残振を吸収するためのバッキング材7を設置している。電極はAuを蒸着して形成する。バッキング材としては樹脂にWやTa等の重金属を混合したものを用いる。電極を超音波探傷装置8と接続し、電圧を印加することで超音波を発信し、反射波の振動を超音波素子で電圧に変換して超音波探傷装置で測定する。
【0017】
図2に集束範囲の素子曲率依存性を示す。ハッチングした部分が音圧が高い集束範囲となる。曲率が大きくなると集束距離が長くなる。集束範囲の音圧は高いが、集束範囲外の音圧は低下する。このため、従来の曲率一定の集束型センサで60〜150mmの距離を探傷しようとした場合、この距離範囲を集束範囲とする曲率は無いため、感度が低下する距離が発生する。しかし、超音波素子の曲率を220〜260mmの曲率を含むように変化させることにより、60〜150mmの距離を1つのセンサの集束範囲とすることが可能となる。このように超音波素子内で曲率を変化させることで、集束型センサの集束範囲を拡張することができる。
【0018】
図3に必要素子面積の焦点距離依存性を示す。焦点距離の2乗に比例して欠陥に入射する超音波強度が低下するため、欠陥に入射する超音波強度を一定とするための素子面積S[mm2]と焦点距離f[m]の関係は数式(1)で記述される。
〔数1〕
S=S02 …(1)
【0019】
ここで、S0は基準距離の欠陥を検出するために必要なセンサ面積を表す。図3は焦点距離60mmにおける必要センサ面積が10mmの場合の、必要素子面積の焦点距離依存性を示した図で、数式(1)で記述されるように焦点距離が長くなるほど必要面積が増加する。本実施の形態に示す円形の素子の場合、直径増加に対する面積の増加率は円外周ほど大きいため、素子外周の超音波素子の曲率を大きくし、素子中心の超音波素子の曲率を最小とすることにより、超音波素子が小型化される。
【0020】
数式(1)〜(7)と図4を用いて焦点距離60〜150mm、使用超音波素子曲率260〜280mmとした場合を例にとり、超音波素子の半径の決定方法について説明する。
【0021】
超音波素子の半径がR[mm]からR+ΔR[mm]に増加したときの面積増加量ΔS[mm2]は数式(2)で記述される。
〔数2〕
ΔS=2・π・R・ΔR …(2)
【0022】
焦点距離150mmを含む素子曲率範囲は260〜280mmとなるので、曲率を260〜280mmの範囲で増加させる素子外周における半径増加量は数式(3)となる。
〔数3〕
S(150)=ΔS=2・π・R・ΔR …(3)
【0023】
ここで、S(150)は数式(1)で与えられる焦点距離150mmを探傷するために必要な素子面積である。数式(3)を変形してΔR[mm]は
〔数4〕
ΔR=S(150)÷(2・π・R) …(4)
と求められる。
【0024】
また、曲率280mmの素子の集束範囲は焦点距離73〜150mmを含むこと、必要なセンサ面積は焦点距離が長くなるほど大きくなり焦点距離150mmを探傷する超音波素子の外周の面積は焦点距離73〜150mmを探傷するために必要な面積よりも大きいことから、素子外周で焦点距離73〜150mmを探傷可能である。
【0025】
次に、焦点距離60mmを探傷する素子中心部の半径R0を決定する。中心部の素子面積が数式(1)で記述される焦点距離60mmを探傷するために必要な素子面積S(60)と等しいとおくことにより、R0[mm]は数式(5)で記述される。
〔数5〕
R0=√(S(60)÷π) …(5)
【0026】
素子中心から半径R0内で曲率を200mmから220mmに増加させる。
【0027】
R0からΔR′半径が増加したときの素子面積で探傷可能な焦点距離f[m]は数式(1)で記述される焦点距離fを探傷するために必要なセンサ面積と素子面積は等しくなるため数式(6)の関係を満たす。
〔数6〕
π(R0+ΔR′)2=S02 …(6)
【0028】
焦点距離fを与える曲率rは数式(7)で記述されるため、数式(6)から求められるfを代入して、直径増加に伴う曲率増加を決定する。
〔数7〕
f=−125+36・log(r) …(7)
【0029】
図4に数式(1)〜(7)を用いて決定した超音波素子曲率の素子半径方向距離依存性を示す。この図の関係を満たすように素子半径と素子曲率を増加させていくことにより、1つの収束型センサで焦点距離60〜150mmの範囲が探傷可能となる。
【0030】
このように本発明は超音波素子の曲率を変化させることにより、集束距離を拡張しているため、超音波送信面を検査対象に対向させるとともにセンサの外周を検査対象に接触させて、センサと検査対象間にグリセリン等の超音波の伝播物質を充填することにより、生体のような柔軟な組織に限られずに、セラミックや金属等の固体でもUTが可能である。また、集束型超音波素子の曲率をセンサの中心から外周にかけて大きなものとしているため、センサが小型化される。
【0031】
上述した実施例では、集束型超音波素子の曲率をセンサの中心から外周にかけて大きなものとして説明したが、その逆の中心から外周にかけて曲率が小さなセンサとしても良い。
【実施例2】
【0032】
次に図5〜図14,数式(1)および数式(8)〜数式(14)を用いて本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0033】
図5に第2の実施の形態のセンサに用いる超音波素子の構成を示す。本実施形態においては長方形の超音波素子を縦方向にm個、横方向にn個に分割した構成とし、分割した各超音波素子ごとに曲率を変化させるとともに、中心から横方向に超音波素子の曲率を大きくするものとする。
【0034】
図6を用いて焦点距離を60〜150mmの範囲とする超音波素子の幅の決定方法について説明する。この焦点距離においては図6の斜線部分の曲率220〜260mmを探傷に使用する。図6に示すように、この斜線部分の曲率をn−1個に分割し、中心からi番目の素子の曲率R(i)[mm]を数式(8)のように決定する。
〔数8〕
R(i)=220+(260−220)×(i−1)÷(n−1) …(8)
【0035】
数式(8)で決定したn番目の素子の曲率は260mmとなる。なおこの分割は例示的なものであり、分割間隔を不等間隔としても良い。焦点距離150mmを集束範囲とする素子はn番目の素子のみなので、この素子の幅w(n)[mm]は、
〔数9〕
w(n)=S(n)÷(2・m・h) …(9)
となる。ここで、S(n)[mm2]は数式(1)で与えられる焦点距離150mmを探傷するために必要なセンサ面積、h[mm]は超音波素子の縦方向の長さを表す。また、焦点距離70〜150mmは曲率260mmの素子の集束範囲であること、必要なセンサ面積は焦点距離が長くなるほど大きくなることから、n番目の素子で焦点距離70〜150mmを探傷可能である。そこで、焦点距離60〜70mmのセンサ面積が必要面積以上となるよう1〜i−1番目の素子の幅を決定していく。
【0036】
1番目の素子の曲率は220mmで、焦点距離60mmを集束範囲とする素子はこの素子のみとなる、この素子の幅w(1)[mm]は、
〔数10〕
w(1)=S(1)÷(2・m・h) …(10)
となる。ここで、S(1)[mm2]は数式(1)で与えられる焦点距離60mmを探傷するために必要なセンサ面積をあらわす。
【0037】
焦点距離60〜70mmにおいては、i−1番目の素子はi番目の素子の焦点距離を収束範囲に含むため、i番目の素子の必要面積は数式(11)となる。
〔数11〕
(S(i)−ΣS(i−1)) …(11)
【0038】
ここで、ΣS(i−1)は、1番目からi−1番目の素子の面積の和を表す。従って、i番目の素子の幅w(i)[m]は数式(12)で記述される。
〔数12〕
w(i)=(S(i)−ΣS(i−1))÷(2・m・h) …(12)
【0039】
図7に図5の構成の超音波素子を用いたセンサの超音波探傷方法の概念図を示す。この図に示すように、超音波探傷を行う際には、センサ内に平行配置した複数の超音波素子から焦点に同時に超音波が届くように、各超音波素子における超音波発振開始時間を調整する。
【0040】
ここで、超音波素子と焦点との最大距離をmax(L)[m]、図中左からi番目の超音波素子と焦点との距離をLi[m]、超音波の伝搬速度(音速)をV[m/s]、i番目の超音波素子のX座標をxi[m]、i番目の超音波素子のY座標をyi[m]、焦点のX座標をxf[m]、焦点のY座標をyf[m]とする。
【0041】
このとき、i番目の超音波素子と焦点との距離Li[m]、及び各超音波素子の超音波発振開始時間差dt[s](以下、超音波発振開始時間差を遅延時間と記す)は、次式(13),(14)で表される。
〔数13〕
Li=((xi−xf)2+(yi−yf)21/2[m] …(13)
〔数14〕
dt=(max(L)−Li)/V[s] …(14)
【0042】
図8は、横軸に超音波探傷用センサの各素子の位置をとり、縦軸に遅延時間dt[s]を示した図である。この図の例では、8個の素子から構成される素子列を、3列設置した例であり、V=5780[m/s]、xi=(0.5i−0.25)×10-3[mm]、yi=0[m]、xf=0[m]、yf=3×10-2[m]のときの遅延時間dt[s]を示している。この図のとおり、焦点から遠い超音波素子を早く発振させると、各素子から焦点への超音波到達時間が揃うので信号強度を強くすることができる。
【0043】
図9(a)に本実施例の集束型センサで近距離を探傷する場合の更なる改良点を示す。この条件における探傷では、曲率が大きな超音波素子は焦点に集束しないため、集束点の幅が広いものとなる。また、本実施例の集束型センサで長距離を探傷する場合、図9(b)に示すように曲率が小さな超音波素子は焦点に集束しないため、集束点の幅が広いものとなる。このため空間分解能が低下する。そこで、図10(a)に示すとおり、焦点距離が短い場合には曲率が小さく近距離で焦点が合う素子を発信させて超音波探傷する。また、図10(b)に示すとおり、焦点距離が長い場合には曲率が大きく遠距離で焦点が合う素子を用いて超音波探傷する。図11に示した探傷ステップと図12の超音波探傷装置の信号伝達のフロー図を用いてこの超音波探傷方法の手順を示す。
【0044】
ステップ101:超音波素子形状及び検査条件入力ステップ
パソコン9のキーボード26,記録メディア27のうち1つ以上の入力装置を用いて、超音波の集束位置と超音波素子の形状を入力する。入力された情報は、パソコンのI/Oポート25を介してCPU21に伝達され、ハードディスクドライブ22(以下、HDDと記す。)、ランダムアクセスメモリ23(以下、RAMと記す。)のうち1つ以上の記憶装置に記憶される。
【0045】
ステップ102:使用超音波素子決定ステップ
ステップ101で入力した超音波素子の曲率と、リードオンリーメモリ24(以下、ROMと記す。),HDDのうち1つ以上の記憶装置に記憶させてある図2の集束範囲の超音波素子曲率依存性から、CPUで探傷距離を集束範囲に含む超音波素子を同定し、探傷に使用する素子として決定する。
【0046】
ステップ103:遅延時間解析ステップ
CPUで、ROMとHDDのうち1つ以上の記憶装置に記録した数式(1)と数式(2)に、ステップ102で決定した使用超音波素子の位置とステップ101で入力した焦点位置を代入して遅延時間を解析する。
【0047】
ステップ104:超音波探傷ステップ
遅延時間解析後、パソコンのI/Oポート,超音波探傷機のI/Oポート,D/Aコンバータ30を介して超音波素子に電圧を印加し、検査対象内で反射される超音波をセンサで受信して、A/Dコンバータ29,超音波探傷機のI/Oポート,パソコンのI/Oポートを介してCPUに伝達する。CPUでは探傷結果をHDD,RAMのうち1つ以上の記憶装置に記録するとともに、I/Oポートを介してモニタ28に探傷結果を表示する。
【0048】
また、本構成の超音波探傷センサは空間分解能を低下させることで、感度を向上できる。図13を用いて空間分解能向低下に伴う感度向上機構を説明する。図13(a)に記載したように焦点距離が探傷距離と一致した素子のみを用いる場合、空間分解能が最も高い。図13(b)は焦点距離と探傷距離の差が小さい素子も使用した場合の超音波の集束状況の概念図で、空間分解能は低下するが探傷距離に入射する超音波の強度は大きくなる。図13(c)は焦点距離と探傷距離の差が大きい素子も使用した場合の超音波の集束状況の概念図で、探傷距離における超音波の広がり範囲が広くなり、空間分解能が大きく低下する。また、超音波が広がっているため、探傷距離における超音波強度増加への寄与は小さなものとなる。図14にこの空間分解能低下と超音波強度増加の相関を示す。焦点距離と探傷距離の差が小さい素子を使用した場合空間分解能低下に対する超音波強度の増加率は、焦点距離と探傷距離の差が大きい素子も使用した場合と比べて大きくなる。従って、焦点距離と探傷距離の差が小さい素子まで使用することにより、少ない空間分解能の低下で超音波強度を向上することが可能となる。
【0049】
図11に示した探傷ステップ101において空間分解能の許容値を入力し、ステップ102で空間分解能が許容範囲となる超音波素子を使用素子として決定することにより、感度を向上することが可能である。
【0050】
本実施例は以上説明したように構成されているため、第1の実施の形態と同様に集束型センサの集束距離の範囲を拡張できる。また、上述した実施例では、集束型超音波素子の曲率をセンサの中心から外周にかけて大きなものとして説明したが、その逆の中心から外周にかけて曲率が小さなセンサとしても良い。また、探傷距離に集束しない曲率を持つ超音波素子を使用せずにUTを実施可能なため、第1の実施の形態と比べて空間分解能が向上される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の集束型超音波探傷センサは検査対象の材質に関係なく、生体のみならずセラミックや金属等の固体においても、超音波集束距離が拡張される。
【符号の説明】
【0052】
1 超音波探傷センサ
2 検査対象
3 超音波
4 欠陥
5 超音波素子
6 電極
7 バッキング材
8 超音波探傷装置
9 パソコン
10 音響レンズ
21 CPU
22 ハードディスクドライブ(HDD)
23 ランダムアクセスメモリ(RAM)
24 リードオンリーメモリ(ROM)
25 I/Oポート
26 キーボード
27 記録メディア
28 モニタ
29 A/Dコンバータ
30 D/Aコンバータ
101 超音波素子形状及び検査条件入力ステップ
102 使用超音波素子決定ステップ
103 遅延時間解析ステップ
104 超音波探傷ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲した円形の集束型超音波素子を用いた超音波探傷センサにおいて、
センサ中心部から外周に向けて超音波素子の曲率を変化させることを特徴とする
超音波探傷センサ。
【請求項2】
請求項1の超音波探傷センサにおいて、前記超音波素子の曲率はセンサ中心部から外周に向けて超音波素子の曲率を大きくすることを特徴とする超音波センサ。
【請求項3】
請求項1の超音波探傷センサにおいて、
超音波素子の曲率を連続変化させることを特徴とする
超音波探傷センサ。
【請求項4】
請求項1の超音波探傷センサにおいて、
超音波素子をn個に分割し、分割した素子間で曲率を変化させることを特徴とする
超音波探傷センサ。
【請求項5】
請求項4の超音波探傷センサを用いた超音波探傷において、
焦点距離が探傷距離に合致した超音波素子を用いることを特徴とする
超音波探傷方法。
【請求項6】
請求項5の超音波探傷方法において、
各超音波素子から探傷位置に同時に超音波が届くよう、素子間の超音波発振開始時間差を制御することを特徴とする
超音波探傷方法。
【請求項7】
請求項4の超音波探傷センサを用いた超音波探傷において、
超音波の広がり範囲が必要な空間分解能以下となる超音波素子を用いることを特徴とする
超音波探傷方法。
【請求項8】
請求項7の超音波探傷方法において、
各超音波素子から探傷位置に同時に超音波が届くよう、素子間の超音波発振開始時間差を制御することを特徴とする
超音波探傷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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