説明

超音波探傷方法及び超音波探傷装置

【課題】 帯状の被検査体の全面について透過法で欠陥検出するに際し、設備費の高騰を抑制しつつ、能率良く全面探傷を行うことのできる超音波探傷方法及び超音波探傷装置を提供する。
【解決手段】 超音波を送信し被検査体を透過した後に受信する探傷ユニット1を用いて被検査体中の欠陥検出を行う超音波探傷方法において、2以上の探傷ユニット1を配列し、一の探傷ユニット1aから発射した超音波8aを同じ探傷ユニット1aによって受信するとともに、一の探傷ユニット1aから発射した超音波8xを隣接する別の探傷ユニット1bによっても受信することを特徴とする超音波探傷方法及び超音波探傷装置である。探傷ユニット1a、1bそれぞれ単独使用時の有効探傷幅23a、23bに、有効探傷幅23xが加わり、探傷ユニット配置間隔25が有効探傷幅23より広くても検査漏れのない探傷が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体を透過する超音波を利用して被検査体内部に存在する欠陥を検出するための超音波探傷方法及び超音波探傷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波を利用して被検査体内部に存在する欠陥を検出するための超音波探傷方法には、反射法、透過法、共振法などがある。
【0003】
透過法では、図7(a)に示すように、被検査体6の一方の側に配置した送信探触子3から発射した超音波が経路を通って被検査体6を透過し、被検査体6の他方の側に配置した受信探触子4に受信する。図8には、被検査体6の内部に欠陥7が存在する場合において、欠陥7付近において超音波エコー強度がどのように変化するのかを模式的に示している。被検査体6内部の超音波の進路に欠陥7が存在すると、透過する超音波が欠陥7によって減衰するので、図8に示すように欠陥7の位置において超音波エコーの減衰が大きくなる。このように、透過法によると超音波の減衰を利用して被検査体内部に存在する欠陥を検出することができる。ここでは、1組の送信探触子と受信探触子の組み合わせを探傷ユニットと呼ぶ。
【0004】
また、特許文献1、特許文献2には、図7(c)に示すように、透過法を用いた超音波探傷方法として、被検査体6の一方の側に配置した探触子2から発射した超音波が被検査体6を透過し、被検査体の他方の側に配置した反射板5で反射し、被検査体6を再度透過して探触子2に到達する超音波エコー強度から被検査体中の欠陥検出を行う超音波探傷方法が記載されている。この方法においては、探傷ユニットは超音波送信と受信を兼ねるひとつの探触子から構成される。
【0005】
透過法には連続波およびパルス波が使用可能であるが、最近はパルス波が多用されている。透過法では、探触子と被検査体間での超音波の安定な伝達が重要であり、被検査体表面が特に良好な場合を除いて、水浸法が用いられることが多い。
【0006】
透過法における1コの探傷ユニットによって欠陥を検出できる領域の広さ(以下「有効探傷幅23」ともいう。)は、所定の狭い範囲に限定される。従って、有効探傷幅よりも広い幅を有する板状の被検査体について超音波探傷を行う際には、欠陥の検出もれを発生させずに幅方向全体の欠陥検出を行うため、種々の工夫がなされる。
【0007】
特許文献2に記載の従来方法では、被検査体の幅方向に複数の探触子を一列に並べる。隣り合った探触子の間隔は、探触子の有効探傷幅よりも広いので、被検査体の長手方向に直線状に走査したのでは、欠陥の検出もれが発生することとなる。特許文献2においては、探触子の走査を正弦波軌跡となるように移動させ、正弦波の波長を欠陥の最小長さよりも短くし、検出もれの発生を防ぐ方法が記載されている。
【0008】
特許文献3に記載されているように、従来の鋼板の自動超音波探傷においては、多数の探触子を、通板最大幅鋼板の中央部探傷領域の全範囲にわたって千鳥状に2列配置し、1回の通板で全面探傷をする方法が知られている。千鳥状に2列配置する理由は、探触子の外形寸法は有効探傷幅よりも幅が広いため、探触子を一列に配置したのでは探傷領域を連続させることができないからである。また、多数の探触子をその有効探傷幅の2倍のピッチで配置し、数回の通板で全面探傷をする方法が知られている。
【0009】
【特許文献1】特開平1−250056号公報
【特許文献2】特開昭60−33048号公報
【特許文献3】特開平2−194355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2に記載の方法では、探触子の走査速度を速くするほど正弦波運動の周期を短くすることが必要となり、機構部にがたつきを生じやすく、走査速度を十分に速くすることができないという欠点がある。
【0011】
また特許文献3に記載の方法のうち、探触子をその有効探傷幅に等しいピッチで千鳥状に2列配置する方法では、多数の探触子を用いることが必要となり、探傷装置の設置費用および維持費用が高額となる。また、探触子をその有効探傷幅の2倍のピッチで配置し、数回の通板で全面探傷をする方法では、1回の通板で全面探傷することができないので、検査能力を十分に上げることができない。
【0012】
本発明は、帯状の被検査体の全面について透過法で欠陥検出するに際し、設備費の高騰を抑制しつつ、能率良く全面探傷を行うことのできる超音波探傷方法及び超音波探傷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
即ち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)超音波を送信し被検査体を透過してきた超音波を受信する探傷ユニット1を用いて被検査体中の欠陥検出を行う超音波探傷方法において、2以上の探傷ユニット1を配列し、一の探傷ユニット1aから発射した超音波を同じ探傷ユニット1aによって受信するとともに、一の探傷ユニット1aから発射した超音波を隣接する別の探傷ユニット1bによっても受信することを特徴とする超音波探傷方法。
(2)各探傷ユニット1は超音波の送信と受信を行う探触子2であり、被検査体6の一方の側に配置した探触子2から超音波を送信及び受信し、被検査体6の反対側に配置した反射板5で超音波を反射することを特徴とする上記(1)に記載の超音波探傷方法。
(3)各探傷ユニット1は、被検査体6の一方の側に超音波を発射する送信探触子3を配置し、被検査体6の他方の側に超音波を受信する受信探触子4を配置してなることを特徴とする上記(1)に記載の超音波探傷方法。
(4)一の探傷ユニット1から発射した超音波を、同一の探傷ユニット1a及び隣接する別の探傷ユニット1bによって同時期に受信することを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の超音波探傷方法。
(5)超音波を送信し被検査体を透過した後に受信する探傷ユニット1を用いて被検査体中の欠陥検出を行う超音波探傷装置であって、2以上の探傷ユニット1を配列し、一の探傷ユニット1aから発射した超音波を同じ探傷ユニット1aによって受信するとともに、一の探傷ユニット1aから発射した超音波を隣接する別の探傷ユニット1bによっても受信することを特徴とする超音波探傷装置。
(6)各探傷ユニット1は超音波の送信と受信を行う探触子2であり、被検査体6の一方の側に探傷ユニット1を配置し、被検査体6の反対側に反射板5を配置し、探触子2から超音波を送信及び受信し、反射板5で超音波を反射することを特徴とする上記(5)に記載の超音波探傷装置。
(7)各探傷ユニット1は、被検査体6の一方の側に配置し超音波を発射する送信探触子3と、被検査体6の他方の側に配置し超音波を受信する受信探触子4とからなることを特徴とする上記(5)に記載の超音波探傷装置。
(8)一の探傷ユニット1aから発射した超音波を、同一の探傷ユニット1a及び隣接する別の探傷ユニット1bによって同時期に受信することを特徴とする上記(5)乃至(7)のいずれかに記載の超音波探傷装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、超音波を送信し被検査体を透過した後に受信する探傷ユニットを用いて被検査体中の欠陥検出を行う超音波探傷方法において、2以上の探傷ユニットを配列し、一の探傷ユニットから発射した超音波を同じ探傷ユニットによって受信するとともに、一の探傷ユニットから発射した超音波を隣接する別の探傷ユニットによっても受信することによって、探傷ユニットの数を増やすことなく、1回の走査で検出もれのない全面の探傷を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
透過法による超音波探傷装置の超音波経路に配置した被検査体内に欠陥が存在する場合、透過する超音波の強度が減衰するために欠陥の存在を検出することができる。超音波の経路は広がりを有しているため、欠陥が超音波経路の中心から外れた位置にあっても超音波の減衰は生じるが、その減衰の程度は、超音波経路中心から外れるほど少なくなる。
【0016】
透過法による超音波探傷において、欠陥として検出できる減衰強度レベルが、検出閾値22として定められる。減衰量が少ないレベルに検出閾値を定めると、欠陥ではない場合を検出と誤認する頻度が増え、逆に大きな減衰レベルに検出閾値を定めると、欠陥の検出が困難となるため、最適な検出閾値22が定められる。
【0017】
欠陥の存在位置が超音波経路中心から外れた位置に存在する場合、欠陥による超音波の減衰の程度が少なくなるため、減衰量が検出閾値を超えることができず、欠陥検出ができなくなる。所定の大きさを有する人工欠陥の検出を行ったとき、検出閾値22を超える減衰が得られる範囲を、ここでは有効探傷幅23と称する。
【0018】
超音波送受信を兼ねる探触子2からなる探傷ユニット1を用い、人工欠陥を検出する際における人工欠陥の位置と超音波透過エコー強度21との関係を調査した結果を図2に示す。
【0019】
図2(a)に示すように、探傷ユニット1の探触子2として、周波数20MHz、振動子幅8mm、焦点距離200mmのラインフォーカス型探触子を用い、被検査体6を挟んで探触子2の反対側に反射板5を設け、探触子2から送信した超音波は被検査体6を透過して反射板5で反射し、再度被検査体6を透過した後に探触子2に戻って受信される。被検査体6として板厚3.2mmで内部に幅5mmの人工欠陥を有する鋼板を用いた。検出閾値22は−10dBである。
【0020】
人工欠陥の位置(超音波経路中心からの距離)を横軸に、透過エコー強度21を縦軸にとってグラフ化したのが図2(b)である。欠陥が超音波経路中心に位置しているとき(x=0)は透過エコー強度の減衰量は−20dBを超えているが、欠陥位置が超音波経路中心から外れるほど減衰量は減少し、欠陥位置が超音波経路中心から約2.5mm離れたところ(x=±2.5mm)で検出閾値22を満たさなくなる。即ち、この場合、有効探傷幅23は2.5mmの2倍で約5mmであるということがわかる。
【0021】
鋼板等の幅広い被検査体6について、その全面の欠陥有無を探傷しようとする際、被検査体の幅方向全長に探傷ユニット1を並べ、鋼板を長手方向に走行させてその全面を探傷することができる。この際、1回の直線的走行で全面の探傷を終えるためには、被検査体の幅方向には、探傷ユニット1をその有効探傷幅以下の間隔で並べることが必要となる。
【0022】
透過法の探傷ユニット1を狭い間隔で並べようとした場合、探傷ユニット1の外形によって最小間隔が定まる。そして最小の探傷ユニット配置間隔25は、その探傷ユニット1の有効探傷幅23よりも大きい。図3(a)に示すように、探傷ユニット1を可能な限り狭い間隔で一列に並べて探触を行うと、図3(b)に示すように隣接する探傷ユニットの各有効探傷幅23は重ならず、欠陥を検出することのできない不感帯24が生じることになる。そのため、探傷ユニット1を有効探傷幅以下の間隔で並べようとすると、特許文献3に記載のように、探傷ユニットを2列にして千鳥に並べることが必須となる。
【0023】
このように多数の探傷ユニット1を配列することとすると、例えば有効探傷幅が5mmの探傷ユニットを並べ、最大幅2000mmの鋼板の探傷を行おうとすると、探傷ユニット1を400個配列することが必要となり、設備費用及び維持費用は膨大なものとなる。
【0024】
ところで、探触子2から送信された超音波は、ある程度の広がり角度をもって伝搬する。非集束型の探触子を用いた場合、超音波の広がり角度は1.3度程度となる。探触子2の対向面に反射板5を置き、反射板5で反射した超音波は、送信された超音波の広がりに応じて広い範囲に返ってくる。ところが、送信したのと同じ探触子2で受信するため、受信できる超音波の範囲は探触子2の受信幅に制限され、欠陥を検出できる範囲も上記のとおりの有効探傷幅範囲内に制限されている。
【0025】
そこで本発明においては、配列して並べられた2以上の探傷ユニット1を複合的に使用することとした。即ち、図1に示すように、一の探傷ユニット1aから発射した超音波8aを同じ探傷ユニット1aによって受信するとともに、一の探傷ユニット1aから発射した超音波8xを隣接する別の探傷ユニット1bによっても受信することとした。一の探触子1aから発射した超音波は、上記のようにある程度の広がり角度をもって伝搬するので、隣接する別の探触子1bに到達する成分が存在する。隣接する別の探触子1bに到達した超音波8xを検出することとすれば、その超音波経路に欠陥が存在した場合には、透過エコー強度の減衰として欠陥の存在を検出することが可能となるのである。
【0026】
前記図2の場合と同様に周波数20MHz、振動子幅8mm、焦点距離200mmのラインフォーカス型探触子を有する探傷ユニット1を用い、図1(a)に示すように、2個の探傷ユニット1を8.1mmの間隔で並べた。第1の探傷ユニット1aの探触子2aから送信した超音波8xを、探傷ユニットと対向して配置した反射板5で反射し、第2の探傷ユニット1bの探触子2bによって受信した。探傷ユニット1と反射板5との間に、被検査体6として板厚3.2mmで内部に幅5mmの人工欠陥を有する鋼板を配置し、人工欠陥の位置と超音波透過エコー強度21xとの関係を図1(b)に実線で示した。図1(b)には併せて、第1の探傷ユニット1aの探触子2aから送信した超音波8aを同じ探触子2aで受信した場合の透過エコー強度21aの状況を破線で示し、第2の探傷ユニット1bの探触子2bから送信した超音波8bを同じ探触子2bで受信した場合の透過エコー強度21bの状況を一点鎖線で示している。
【0027】
図1から明らかなように、第1の探傷ユニット1aから超音波を送信して第2の探傷ユニット1bで受信した超音波8xの透過エコー強度21xについては、第1と第2の探傷ユニットの中間位置について検出閾値22より大きな減衰が得られ、十分な検出感度を有する有効探傷幅23xが実現していることが明らかである。そしてこの有効探傷幅23xは、第1の探傷ユニット単独を用いた場合の有効探傷幅23aと、第2の探傷ユニット単独を用いた場合の有効探傷幅23bとの間を十分にカバーしており、不感帯24が解消していることがわかる。
【0028】
即ち本発明では、2以上の探傷ユニット1を配列し、1つの探傷ユニット1aから発射した超音波を同じ探傷ユニット1aによって受信するとともに、1つの探傷ユニット1aから発射した超音波を隣接する別の探傷ユニット1bによっても受信することにより、探傷ユニット1の有効探傷幅23よりも広い間隔で探傷ユニットを配置しても、被検査体の幅方向全幅を一度にカバーする探傷範囲を実現することができる。そのため、配置する探傷ユニット1の個数をほぼ半数まで削減することが可能となり、探傷ユニット1を2列の千鳥配列とする必要がなくなる。
【0029】
また、ここまでは探傷ユニット1aから発射した超音波を同じ探傷ユニット1aによって受信するとともに、1つの探傷ユニット1aから発射した超音波を隣接する別の探傷ユニット1bによっても受信する場合について説明したが、受信する探傷ユニットが送信探傷ユニットの超音波の広がり内であれば、受信する探傷ユニットは複数であってもかまわない。
【0030】
本発明で用いる探傷ユニット1としては、上記のように被検査体の一方の側に配置した探触子2から超音波を送信及び受信し、被検査体の反対側に配置した反射板5で超音波を反射する形態のみならず、図4に示すように、被検査体の一方の側に超音波を発射する送信探触子3を配置し、被検査体の他方の側に超音波を受信する受信探触子4を配置した形態のものについても適用することができる。第1の探傷ユニット1aの送信探触子3aから超音波8aを発射し、第1の探傷ユニット1aの受信探触子4aによって受信すると共に、第1の探傷ユニット1aの送信探触子3aから発射した超音波8xを第2の探傷ユニット1bの受信探触子4bによっても受信する。
【0031】
本発明において、図5(a)(b)に示すように、一の探傷ユニット1aから発射した超音波を同一の探傷ユニット1aで受信するタイミング(図5(a))と、同じ探傷ユニット1aから発射した超音波を隣接する別の探傷ユニット1bで受信するタイミング(図5(b))とを別々のタイミングとすることができる。このような実施の形態を採用することにより、超音波を受信して透過エコーの減衰状況を評価するための信号処理装置15の台数が1台のみであっても、超音波探触を行うことができる。この場合、第1の探傷ユニット1aで送信と受信を共に行うタイミング、第1の探傷ユニット1aで送信し第2の探傷ユニット1bで受信するタイミング、第2の探傷ユニット1bで送信と受信を共に行うタイミング、第2の探傷ユニット1bで送信し第3の探触ニット1cで受信するタイミング、と次々に処理を行うこととなる。
【0032】
一方、一の探傷ユニット1aから発射した超音波を、図5(c)に示すように、同一の探傷ユニット1a及び隣接する別の探傷ユニット1bによって同時期に受信することとするとより好ましい。この場合には、超音波を受信して透過エコーの減衰状況を評価するための信号処理装置15の台数を少なくとも2台準備することが必要となるが、幅方向に配列した一連の探傷ユニットを用いた処理を行うにあたって、必要なタイミングの回数を半分に減らすことができる。これにより、被検査体の全幅を検出するのに要する時間を半減することが可能となり、被検査体を長手方向に走行させる走査速度を倍増することができる。
【実施例】
【0033】
反射板5を用いた透過法によって鋼板の欠陥を検出する超音波探傷装置において、本発明を適用した。探傷ユニット1として図1(a)に示すものを用いた。
【0034】
探傷ユニット1の探触子2として、周波数20MHz、振動子幅8mm、焦点距離200mmのラインフォーカス型探触子を用い、被検査体5を挟んで探触子2の反対側に反射板5を設け、探触子2から送信した超音波は被検査体6を透過して反射板5で反射し、再度被検査体6を透過した後に探触子2に戻って受信される。探傷ユニット1を8.1mmの等間隔で16組配列した。探傷ユニットを含めた全体の接続状況の概要を図6に示す。
【0035】
受信した超音波信号から欠陥を検出するための信号処理装置15は、2台1組として2組配置している。同期制御部10からは、周期1m秒の間隔で同期信号が発信される。同期制御部10と各探傷ユニット1の送信部13との間はマルチプレクサ11で接続され、一度に2組の探傷ユニットに信号が送られ、超音波が発信される。図6においては、第1の探傷ユニット1aと第9の探傷ユニット1iに接続されている。また、1組2台の信号処理装置(15a、15b)はマルチプレクサ12によってそれぞれ探傷ユニット1の受信部14に接続される。図6においては、第1組の2台の信号処理装置(15a、15b)はそれぞれ第1、第2の探傷ユニット(1a、1b)に接続され、第2組の2台の信号処理装置(15c、15d)はそれぞれ第9、第10の探傷ユニット(1i、1j)に接続されている。各信号処理装置15はパーソナルコンピュータによって構成されるデータ処理部16に接続されている。各信号処理装置15で検出された結果は、データ処理部16に送られ集計され、鋼板における欠陥の発生部位と検出された欠陥の性質とが記録される。
【0036】
同期制御部10からの同期信号が発せられると、マルチプレクサ11を通じて第1、第9の探傷ユニット(1a、1i)に信号が到達し、両探傷ユニットから同時に超音波パルスが発射される。第1の探傷ユニット1aから発射された超音波は、被検査体6を通過し、反射板5で反射し、再度被検査体5を通過した後、第1と第2の探傷ユニット(1a、1b)で受信され、それぞれマルチプレクサ12を通じて2台の信号処理装置(15a、15b)に送られ、透過エコー強度21の解析から欠陥の有無が検出される。第9の探傷ユニット1iからの超音波も同様に処理される。
【0037】
第1と第9の探傷ユニット(1a、1i)からの発信が完了すると、送信側マルチプレクサ11は第2、第10の探傷ユニット(1b、1j)に接続を組み替え、受信側マルチプレクサ12は第2、3、第10、11の探傷ユニット(1b、1c、1j、1k)に接続を組み替える。このようにして次々と超音波送信を繰り返し、8m秒の時間内に8回の送信を完了すると、鋼板の全幅についての一連の処理が完了することとなる。即ち、全幅の探傷を行うための探傷周期は8m秒である。
【0038】
探傷を行いつつ、鋼板をその長手方向に走行させる。走行速度は3m/sとした。これにより、欠陥の鋼板長手方向における長さが24mmまでの大きさの欠陥を検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明を説明する図であり、(a)は2台の探傷ユニットの配置を示す図、(b)は人工欠陥による透過エコーの減衰状況を示す図である。
【図2】1台の探傷ユニットによる透過エコーの状況を示す図であり、(a)は探傷ユニットの配置を示す図、(b)は人工欠陥による透過エコーの減衰状況を示す図である。
【図3】2台の探傷ユニットによる透過エコーの状況を示す図であり、(a)は各探傷ユニットの配置を示す図、(b)は人工欠陥による透過エコーの減衰状況を示す図である。
【図4】本発明の2台の探傷ユニットの配置を示す図である。
【図5】本発明の2台の探傷ユニットを用いて透過エコーを検出する状況を示す図である。
【図6】本発明の超音波探傷装置の接続状況を示す図である。
【図7】透過型超音波探傷装置の原理を説明する図である。
【図8】透過型超音波探傷装置において欠陥によって超音波が減衰する状況を説明する図である。
【符号の説明】
【0040】
1 探傷ユニット
2 送受信探触子
3 送信探触子
4 受信探触子
5 反射板
6 被検査体
7 欠陥
8 超音波
10 同期制御部
11 マルチプレクサ
12 マルチプレクサ
13 送信部
14 受信部
15 信号処理装置
16 データ処理部
21 透過エコー強度
22 検出閾値
23 有効探傷幅
24 不感帯
25 探傷ユニット配置間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送信し被検査体を透過した後に受信する探傷ユニットを用いて被検査体中の欠陥検出を行う超音波探傷方法において、2以上の探傷ユニットを配列し、一の探傷ユニットから発射した超音波を同じ探傷ユニットによって受信するとともに、一の探傷ユニットから発射した超音波を隣接する別の探傷ユニットによっても受信することを特徴とする超音波探傷方法。
【請求項2】
前記各探傷ユニットは超音波の送信と受信を行う探触子であり、被検査体の一方の側に配置した探触子から超音波を送信及び受信し、被検査体の反対側に配置した反射板で超音波を反射することを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷方法。
【請求項3】
前記各探傷ユニットは、被検査体の一方の側に超音波を発射する送信探触子を配置し、被検査体の他方の側に超音波を受信する受信探触子を配置してなることを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷方法。
【請求項4】
一の探傷ユニットから発射した超音波を、同一の探傷ユニット及び隣接する別の探傷ユニットによって同時期に受信することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の超音波探傷方法。
【請求項5】
超音波を送信し被検査体を透過した後に受信する探傷ユニットを用いて被検査体中の欠陥検出を行う超音波探傷装置であって、2以上の探傷ユニットを配列し、一の探傷ユニットから発射した超音波を同じ探傷ユニットによって受信するとともに、一の探傷ユニットから発射した超音波を隣接する別の探傷ユニットによっても受信することを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項6】
前記各探傷ユニットは超音波の送信と受信を行う探触子であり、被検査体の一方の側に探傷ユニットを配置し、被検査体の反対側に反射板を配置し、探触子から超音波を送信及び受信し、反射板で超音波を反射することを特徴とする請求項5に記載の超音波探傷装置。
【請求項7】
前記各探傷ユニットは、被検査体の一方の側に配置し超音波を発射する送信探触子と、被検査体の他方の側に配置し超音波を受信する受信探触子とからなることを特徴とする請求項5に記載の超音波探傷装置。
【請求項8】
一の探傷ユニットから発射した超音波を、同一の探傷ユニット及び隣接する別の探傷ユニットによって同時期に受信することを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の超音波探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−220488(P2006−220488A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33166(P2005−33166)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】