説明

超音波探傷方法及び超音波探触装置

【課題】欠陥の検出精度を高めることができる超音波探傷装置を提供する。
【解決手段】超音波探傷装置は、配管の周方向に取り付けられる軌道、軌道上を移動する周方向移動装置、及び周方向移動装置に設置されたシャフトに沿って配管の軸方向に移動する軸方向移動装置を有する。超音波探触子8を保持する探触子ホルダー9が軸方向移動装置に取り付けられる。探触子ホルダー9は、筺体10にモータ12及び探触子装着部材11を設置する。探触子装着部材11は筐体10に設けられた3つの回転体と接触している。モータ12の回転力は1つの回転体を介して探触子装着部材11に伝えられ、探触子装着部材11が回転する。探触子装着部材11の回転によって、超音波探触子8が、超音波探触子8の配管と対向する端面に垂直な探触子装着部材11の回転中心軸に垂直な平面内で回転される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波探傷方法及び超音波探傷装置に係り、特に、探触子ホルダーを用いた超音波探傷方法及び超音波探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な超音波探傷による検査において、超音波の特性上、超音波の入射ビームの向きと検出すべき欠陥が直交するときに欠陥の検出感度が最大となり、その入射ビームの向きと欠陥のなす角度が直角よりも小さくなるに伴って欠陥の検出感度が減少することが分かっている。
【0003】
自動超音波探傷装置を用いた従来の超音波探傷では、溶接部のように、欠陥が発生する位置及び進展方向が予想できる欠陥の探傷を主としている。このため、走査方向及び入射ビームの向きが限定された超音波探傷でも、十分に欠陥を検出することができた。例えば、超音波斜角探触子を有する自動超音波探傷装置を用いた配管の超音波探傷では、超音波斜角探触子から送信された入射ビームの向きが配管の軸方向および円周方向になるように、超音波探触子を前後に走査して4方向の走査を行っている(例えば、特開2007―187593号公報参照)。しかし、仮に、欠陥の位置及びその進展方向が予測できない欠陥の探傷を行う場合には、現状、被検査体に非常に多くのケガキ線を書いて、手動で全方位の探傷を行うことになる。
【0004】
特開平6―3340号公報に記載された超音波探傷装置は、ジンバルに超音波探触子を二軸方向にそれぞれ回転できるようにジンバルに取り付け、このジンバルに取り付けられたラックをピニオンの回転によって上記の二軸方向と直交する方向に移動できるように構成されている。ピニオンはスキャナに取り付けられたモータによって駆動される。
【0005】
【特許文献1】特開2007―187593号公報
【特許文献2】特開平6―3340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した各公知例では、被検査体に生じた欠陥の進展方向が予測できない箇所に対して超音波探傷を行う場合で、超音波の入射ビームの向きと検出すべき欠陥が平行となるときには、超音波探傷検査の特性上、欠陥の検出割合が著しく低下する。このため、欠陥が検出できなくなることが懸念される。
【0007】
本発明の目的は、欠陥の検出精度を高めることができる超音波探傷方法及び超音波探傷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、移動装置に設けられた探触子ホルダーに保持された超音波探触子を、超音波探触子の被検査体と対向する端面を通る回転中心軸を中心に回転させ、超音波探触子を移動装置によって被検査体の表面に沿って移動させることにある。
【0009】
探触子ホルダーに保持された超音波探触子を、超音波探触子の被検査体と対向する端面を通る回転中心軸を中心に回転させるので、超音波探触子から被検査体内に入射した超音波ビームを被検査体内の欠陥に対してより直角に近い状態で当てることができる。このため、欠陥から反射された超音波反射波の検出感度を向上させることができ、欠陥の検出精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被検査体内に欠陥が存在する場合に超音波ビームをより直角に近い状態でその欠陥に当てることができ、欠陥の検出精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の好適な一実施例である超音波探傷装置を、図1〜図4を用いて説明する。本実施例の超音波探傷装置1は、図4に示すように、軌道2、周方向移動装置4、ボールネジ5、シャフト6、軸方向移動装置7、超音波探触子(例えば、斜角超音波探触子)8及び探触子ホルダー9を備えている。軌道2は、被検査体である配管32に着脱自在に取り付けられ、ラック3を表面に形成している。周方向移動装置4は、ラック3と噛み合うピニオン(図示せず)及びピニオンに連結された第1モータ(図示せず)を有し、軌道2に沿って配管32の周囲を移動する。ボールネジ5及びシャフト6は、周方向移動装置4に取り付けられ、軌道2と直交する方向に伸びている。ボールネジ5及びシャフト6は、互いに平行に配置され、先端部が結合されている。シャフト6は周方向移動装置4に固定されており、ボールネジ5は周方向移動装置4に設けられた第2モータ(図示せず)に連結され、この第2モータによって回転される。軸方向移動装置7は、シャフト6に移動可能に取り付けられており、ボールネジ5と噛み合っている。超音波探触子8が取り付けられる探触子ホルダー9が、軸方向移動装置7に取り付けられている。
【0012】
探触子ホルダー9を、図1〜図3を用いて詳細に説明する。探触子ホルダー9は、筺体10、探触子装着部材11、第3モータ12、回転体14,15及び17を有する。超音波探触子8が探触子装着部材11に取り付けられている。探触子装着部材11は、回転体であり、筺体10に回転可能に取り付けられる。回転体14が取り付けられた回転軸13は、筺体10に設置された第3モータ12の回転軸に連結されている。回転体15が取り付けられた回転軸16は筺体10に回転可能に取り付けられる。回転体17が取り付けられた回転軸18も筺体10に回転可能に取り付けられる。探触子装着部材11及び回転体14,15及び17の外周面には、それぞれ、ギアが周方向に形成されている。回転体14,15及び17は、図2に示すように、三方向から探触子装着部材11に接触するように配置されている。探触子装着部材11に形成されたギアは、回転体14,15及び17に形成されたそれぞれのギアと噛み合っている。回転体14,15及び17と噛み合う探触子装着部材11の中心軸は、探触子装着部材11の回転中心であり、筺体10の軸心とも一致している。探触子装着部材11の中心軸は、超音波探触子8の被検査体(配管32)と対向する端面に垂直な、超音波探触子8の回転中心軸とも一致する。筺体10の上面で探触子装着部材11に接する位置に、15°ピッチで、印24が付けられている。探触子装着部材11の上面で筺体10に接する位置に、一箇所に印25が付けられている。印25は、超音波探触子8から超音波ビームが送信される方向に付けられている。探触子装着部材11は、探触子装着部材11の回転によって印25が印24のいずれかと一致するように、回転される。
【0013】
筺体10は、リング部材19の内側に配置され、180°反対方向にそれぞれ取り付けられた一対のピン20によってリング部材19に回転可能に取り付けられる。リング部材19は、リング部材21の内側に配置され、180°反対方向にそれぞれ取り付けられた一対のピン22によってリング部材19に回転可能に取り付けられる。4つの取り付け部材23が、90°置きにリング部材21に設置される。筺体10は、リング部材19とピン20の組み合せ及びリング部材21とピン22の組み合せによって、2自由度の回転動作が可能になり、超音波探触子8が被検査体(配管)の表面の緩やかな形状変化に対応することができる。
【0014】
探触子ホルダー9の軸方向移動装置7への取り付け構造を、図5及び図6を用いて説明する。探触子ホルダー9は、支持装置26によって軸方向移動装置7に取り付けられ、軸方向移動装置7よりも被検査体である配管32の外面側に位置する。支持装置26は、4本の支持棒27、及びそれぞれの支持棒27に取り付けられるバネ部材29及びナット30を有している。各々の支持棒27は、軸方向移動装置7の一部である保持部材31、及び探触子ホルダー9の取り付け部材23を貫通し、ナット30の締め付けによりそれぞれに取り付けられる。ストッパー部材28が4本の支持棒27の上端部に取り付けられる。2本の支持棒27が1つのストッパー部材28に取り付けられる。各ストッパー部材28は、保持部材31に保持され、各支持棒27の落下を防止している。コイルバネであるバネ部材29は、探触子ホルダー9と保持部材31の間に配置され、各支持棒27に装着されている。各支持棒27の、ストッパー部材28が取り付けられた端部とは反対側の端部に、それぞれナット30が噛み合わされる。探触子ホルダー9は、これらのナット30を締め付けることによって、各支持棒27を介して軸方向移動装置7に取り付けられる。
【0015】
本実施例の超音波探傷装置1を用いた配管32の超音波探傷について説明する。まず、超音波探傷装置1の軌道2が、被検査体である配管32の周囲を取り囲むように、配管32に取り付けられる。この状態では、ボールネジ5及びシャフト6が配管32の軸方向に向かって伸びている。超音波探触子8の配管32と対向する端面に垂直な探触子装着部材11の回転中心軸が、配管32の半径方向に位置している。
【0016】
超音波探傷装置1の配管32への取り付けが完了した後、オペレータが操作する操作盤から出力された第1制御指令が周方向移動装置4に設けられた第1モータに伝えられ、第1モータが駆動する。第1モータの駆動によって周方向移動装置4が軌道2に沿って配管32の周方向に移動する。操作盤から出力された第2制御指令が周方向移動装置4に設けられた第2モータに伝えられ、第2モータが駆動する。第2モータの駆動によってボールネジ5が回転し、軸方向移動装置7がシャフト6に沿って配管32の軸方向に移動する。第2モータの正回転によって軸方向移動装置7は周方向移動装置4から離れる方向に移動し、第2モータの逆回転によって軸方向移動装置7は周方向移動装置4に近づく方向に移動する。
【0017】
周方向移動装置4及び軸方向移動装置7の移動によって超音波探触子8が配管32の外面上の検査開始位置に対向した位置に合わせられた後、操作盤から出力された第3制御指令が第3モータ12に伝えられ、第3モータ12が回転する。このとき、周方向移動装置4及び軸方向移動装置7の移動は停止されている。第3モータ12の回転力が、回転軸13及び回転体14に伝えられ、探触子装着部材11が回転する。回転体15,17も探触子装着部材11の回転によって回転する。探触子装着部材11は、120°間隔で存在する、ギアの三箇所で、回転体14,15,17と噛み合っているので、回転軸が設けられていなくても安定した回転が可能になる。超音波探触子8は、超音波探触子8の配管32と対向する端面に垂直な探触子装着部材11の回転中心軸に垂直な平面内で、探触子装着部材11と共に回転される。すなわち、探触子装着部材11に保持された超音波探触子8は、超音波探触子8の配管32の外面と対向する端面を通る回転中心軸を中心に回転される。
【0018】
第3モータ12の回転によって探触子装着部材11が15°回転され、印25が15°ずれた1つの印(第1印という)24と一致する。印25が第1印24と一致したところで、第3モータ12の回転が停止される。その後、超音波送信指令が操作盤から超音波探触子8に伝えられたとき、超音波探触子8から超音波ビームが送信され、この超音波ビームが配管32に入射される。送信された超音波ビームの入射方向は、印25が一致した第1印24の方向である。超音波ビームが送信された状態で、第2モータの駆動が開始され、軸方向移動装置7が配管32の軸方向で周方向移動装置4から遠ざかる方向に移動される。配管32に入射された超音波ビームの反射波が超音波探触子8で受信される。受信された反射波信号は超音波探傷装置1の超音波探傷器(図示せず)に伝えられる。超音波探傷器は、この反射波信号に基づいて配管32内における欠陥の有無を判定する。印25が第1印24と一致した状態において、軸方向移動装置7の移動により超音波探触子8が配管32の軸方向での超音波探傷範囲内の移動が終了したとき、軸方向移動装置7の移動が停止される。
【0019】
その後、第3モータ12が駆動されて、印25が探触子装着部材11の回転方向で第1印24の隣りの印(第2印という)24に一致するまで、探触子装着部材11が回転される。探触子装着部材11が15°回転されて印25が第2印24に一致したとき、第3モータ12の回転が停止される。超音波ビームを送信している超音波探触子8が軸方向移動装置7により超音波探傷範囲内で逆方向(配管32の軸方向で周方向移動装置4に近づく方向)に移動される。
【0020】
以上のように、15°ずつ超音波探触子8を回転させて配管32の軸方向における超音波探触子8の前進と後進を交互に繰り返して、周方向移動装置4が配管32の周方向の1つの位置に存在する状態での超音波探傷を実行する。探触子装着部材11、すなわち、超音波探触子8が15°ずつ回転して一回転して印25が基準となる印(基準印という)24に一致したとき、第3モータ12の回転が停止され、周方向移動装置4を駆動して超音波探触子8を配管32の周方向の別の位置まで移動させる。この周方向の位置で、前述したように、探触子装着部材11を15°ずつ回転させて配管32の軸方向の超音波探傷を実施する。周方向移動装置4を配管32の周方向に所定間隔で移動しながら、配管32の軸方向の超音波探傷が行われる。配管32の全ての超音波探傷範囲において超音波探傷を実施することができる。
【0021】
超音波探傷器に入力される超音波反射波信号、及び超音波探傷器でその反射波信号を処理することによって得られた欠陥情報が、表示装置(図示せず)に表示される。オペレータは、表示装置に表示された情報を見ることによって配管32における欠陥の有無及び欠陥の位置を認識することができる。
【0022】
発明者らは、被検査体に欠陥が存在する場合で、被検査体内での欠陥の位置及びその進展方向の予測がつかないときにおいても、超音波探触子8の被検査体と対向する端面に垂直な探触子装着部材11の回転中心軸に垂直な平面内で、超音波探触子を15°ピッチで回転させることによって、欠陥の見落としのない、すなわち、欠陥の検出精度を向上できる超音波探傷が実現できることを見出した。この超音波探傷を見出した試験結果について説明する。
【0023】
この試験は、被検査体内に存在する欠陥に対して超音波ビームを当てる角度によってどの程度の欠陥検出感度が得られるかを検証することを目的とし、図7に示すように19mmの厚みの鋼板にスリット(スリット深さ1mm)34を付与して得られた試験片33を用いて行った。図8に示すように、試験片33のスリットが形成された面と反対側の面に、スリットと同じ長さの罫書き線36を入れる。スリットが形成された面と反対側の面内で、罫書き線36に対して垂直な線(基準線)37を罫書く。罫書き線36に対する基準線37の傾斜角は0°である。基準線37と罫書き線36の交点を中心にして、基準線37から15°まで2.5°刻みで傾斜させたそれぞれの線38を、スリットが形成された面と反対側の面内に罫書いた。その後、基準線37に沿って超音波探触子8を走査して超音波探触子8から基準線37に向って超音波ビーム35を送信し、スリット34で反射された反射波の受信感度が超音波探傷器の表示装置の表示画面上で80%になるように調整する。この調整は超音波探傷器の調整機能を用いて行われる。さらに、基準線37から15°まで2.5°刻みで傾斜させた7本の線38に沿って、基準線37の場合と同様に、超音波ビーム35を送信している超音波探触子8を走査した。それぞれの線38、すなわち、それぞれの傾斜角度における反射波の受信感度(dB値)の低下の度合いを求めた。この結果、スリット34に対する各傾斜角での受信感度は、図9に示すように変化することが分かった。
【0024】
スリット34に対して7.5°傾斜させた線38に沿って超音波ビームを送信した場合における超音波反射波の受信感度は、基準線37に沿って超音波を送信した場合におけるその受信感度から12dB低下した。これは、超音波探傷器の表示装置の表示画面上では20%の低下となる。ここで、JEAG4207に従った超音波探傷方法では受信感度16%以上の超音波反射波を記録の対象としていることを踏まえると、超音波の入射角がスリット34に対して7.5°傾斜しているときにおける超音波反射波の受信感度は、欠陥検出のためには十分なものである。
【0025】
したがって、欠陥の検出感度が最も高い、欠陥と超音波ビームの送信方向とのなす角が90°の位置(基準線37上の位置)から、最大±7.5°傾斜していたとしても、被検査体内の欠陥の検出には問題が生じないことが分かった。全方位の超音波探傷を行う際には、超音波探触子の回転角度は最大15°ピッチで設定すればよいことになる。これにより、被検査体表面への多数の罫書き線の書き入れ、及び不要な超音波探傷を行う必要がなくなるため、超音波探傷に要する時間が大幅に削減され、作業員の負担も大幅に減少する。
【0026】
前述した本実施例は、超音波探触子8の被検査体(例えば、配管32)と対向する端面に垂直な探触子装着部材11の回転中心軸に垂直な平面内で、超音波探触子8を回転させるので、被検査体内に欠陥が存在する場合、超音波探触子8から送信された超音波ビームをこの欠陥に対して垂直に近い状態でも入射することができる。したがって、その欠陥からの超音波反射波の検出感度が向上し、欠陥の検出精度を高めることができる。
【0027】
本実施例は、探触子ホルダー11に保持された超音波探触子8を、超音波探触子8の配管(被検査体)32と対向する端面を通る回転中心軸を中心に回転させている。このような本実施例は、超音波探触子8の走査方向(配管32の軸方向)に対して傾斜している欠陥に対して、超音波探触子8から配管32に入射した超音波ビームをいずれかの回転角度によってはより直角に近い状態で当てることができる。このため、欠陥から反射された超音波反射波の検出感度を向上させることができ、欠陥の検出精度を高めることができる。本実施例は、超音波探触子8を超音波探触子8の配管(被検査体)32と対向する端面を通る回転中心軸を中心に回転させているので、超音波探触子8の走査方向を一定にしたままで、全方位の探傷が可能となる。つまり、配管32に形成された、進展方向の予測がつかない欠陥で超音波探触子8の走査方向に対して傾斜している欠陥も、確実に短時間で検出することができる。
【0028】
本実施例は、探触子装着部材11が回転軸ではなく3つの回転体14,15及び17によって保持されるので、超音波探触子8と超音波探傷器を接続する信号伝送線が絡まって探触子装着部材11の回転が阻害されることを防止できる。もし、回転体14,15及び17ではなく探触子装着部材11に回転軸を設け、この回転軸を軸受け及び支持部材により筐体10に取り付けた場合には、探触子装着部材11の回転時に超音波探触子8に接続された信号伝送線がその支持部材に絡まってしまい、探触子装着部材11の回転が阻害されてしまう。3つの回転体14,15及び17によって探触子装着部材11を保持して探触子装着部材11の回転中心を特定している本実施例は、そのような問題を解消することができる。
【0029】
さらに、本実施例は、0°<α≦15°の範囲内にある回転角度αのピッチで探触子装着部材11、すなわち、超音波探触子8を回転させるので、超音波反射波の受信感度をより高めることができる。回転角度αが0°に近くなると、超音波探傷に要する時間が長くなるので、その時間を短縮するためには回転角度αを10°≦α≦15°の範囲内に設定することが望ましい。
【0030】
探触子装着部材11の表面に1つの印25が付され、探触子装着部材11が取り付けられる筐体10の表面に複数の印24が付されているので、作業員は、印25が一致している印24を確認することによって、超音波探触子8の回転角度、すなわち、超音波の入射方向を容易に把握することができる。
【0031】
本実施例は、ピン20及び22を中心としたそれぞれの回転、及び超音波探触子8の配管32と対向する端面を通る回転中心軸を中心に回転により、超音波探触子8を3自由度で回転させることができる。これにより、配管等の曲率がある被検査体に対して超音波探傷を行う場合、超音波探触子8をその曲率に合せて追従させることができ、安定した超音波探傷が可能になる。第3モータ12により探触子装着部材11を回転させる1自由度は、超音波探触子8の、被検査体と対向する端面を通る回転中心軸を中心に超音波探触子8を回転させるものである。この1自由度での回転が可能になることにより、探触子ホルダー9の走査方向自体は変えずに、前方位の超音波探傷を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図4に示す探触子ホルダーの詳細構成図である。
【図2】図1に示す探触子ホルダーの内部構造の構成図である。
【図3】図1のIII−III断面図である。
【図4】本発明の好適な一実施例である超音波探傷装置の構成図である。
【図5】探触子ホルダーの軸方向移動装置への取り付け構造を示し、図4のV部を拡大図である。
【図6】探触子ホルダーの軸方向移動装置への取り付け構造の平面図である。
【図7】試験片上における超音波探触子の走査方向を示す説明図である。
【図8】超音波探触子を欠陥に対して傾斜させて検出感度の測定を行った方法を示す説明図である。
【図9】欠陥に対する超音波探触子傾斜角度と反射波の検出感度との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0033】
1…超音波探傷装置、2…起動、4…周方向移動装置、5…ボールネジ、6…シャフト、7…軸方向移動装置、8…超音波探触子、9…探触子ホルダー、10…筐体、11…探触子装着部材、12…第3モータ、14,15,17…回転体、24,25…印、26…支持装置、27…支持棒、28…ストッパー部材、29…バネ部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動装置に設けられた探触子ホルダーに保持された超音波探触子を、前記超音波探触子の被検査体と対向する端面を通る回転中心軸を中心に回転させ、前記超音波探触子を前記移動装置によって前記被検査体の表面に沿って移動させることを特徴とする超音波探傷方法。
【請求項2】
前記移動装置による前記超音波探触子の移動は、ある回転角度だけ回転された前記超音波探触子を用いて行う請求項1に記載の超音波探傷方法。
【請求項3】
前記回転中心軸を中心にした前記超音波探触子の回転を、0°<α≦15°の範囲内にある回転角度αで断続的に行う請求項1または2に記載の超音波探傷方法。
【請求項4】
前記回転角度αでの前記超音波探触子の回転と前記超音波探触子による超音波探傷を交互に行う請求項3に記載の超音波探傷方法。
【請求項5】
被検査体の表面に沿って移動する移動装置と、前記移動装置に取り付けられた探触子ホルダーと、前記探触子ホルダーに保持された超音波探触子とを備え、
前記探触子ホルダーが、前記移動装置に取り付けられる筐体と、前記筐体に回転可能に取り付けられて前記超音波探触子を保持する探触子装着部材と、前記筐体に取り付けられて前記探触子装着部材を回転させる回転装置とを有し、
前記超音波探触子が、前記超音波探触子の前記被検査体と対向する端面を通る、前記探触子装着部材の回転中心軸を中心にして回転することを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項6】
被検査体の表面に沿って移動する移動装置と、前記移動装置に取り付けられた探触子ホルダーと、前記探触子ホルダーに保持された超音波探触子とを備え、
前記探触子ホルダーが、前記移動装置に取り付けられる筐体と、前記筐体に回転可能に取り付けられて前記超音波探触子を保持する探触子装着部材と、前記筐体に取り付けられて前記探触子装着部材を回転させる回転装置とを有し、
前記超音波探触子の前記被検査体と対向する端面を通る、前記超音波探触子の回転中心軸が、前記探触子装着部材の回転中心軸と一致していることを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項7】
前記回転装置によって回転され、前記探触子装着部材を回転させる第1の回転体、及び前記探触子装着部材に接触する複数の第2の回転体が、前記筐体に回転可能に設けられている請求項5または6に記載の超音波探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−14582(P2010−14582A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175583(P2008−175583)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】