説明

超音波探傷装置

【課題】装置コストを抑えつつも、被検体中の欠陥の長さ及び向きを検出する。
【解決手段】被検体1に対して超音波を送信する送信探触子11と、送信探触子が送信して被検体を透過してきた超音波を受信する受信探触子12とを有する3つの探触子ユニット10a,10b,10cと、各探触子ユニットが超音波探傷を実行する探傷断面P1,P2.P3が互いに異なる方向を向いて交わるよう、各探触子ユニットを相互に連結する連結支持機構20と、各探触子ユニットのそれぞれで受信された超音波の強度の変化から定まる各見掛け上の欠陥長さを用いて、探傷断面に垂直な仮想面内方向の欠陥4の向き及び長さを求めるコントローラ40と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に対して超音波を送信して、被検体中の欠陥を検出する超音波探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体中の欠陥を非破壊検査する装置として、例えば、超音波探傷装置がある。この超音波探傷装置は、被検体に超音波を送信し、送信された超音波を被検体から受信して、この超音波を解析することで、被検体中の欠陥を検出する装置である。
【0003】
このような超音波探傷装置としては、例えば、以下の特許文献1に記載のものがある。
【0004】
この超音波探傷装置は、2つの傾斜探触子と1つの垂直探触子との合計3つの探触子で検知された欠陥データを用いて、演算装置が三次元内の欠陥の向き及び長さを求めるものである。
【0005】
3つの探触子は、いずれも反射型フェーズドアレイである。3つの探触子は、走査方向に垂直な探傷断面内で互いに異なる向きに超音波を出力できるように配置されている。演算装置は、3つの探触子で検知された欠陥データを合成することで、探傷断面内での欠陥の長さ及び向きを求めている。そして、3つの探触子を目的の走査方向に移動させることで、この走査方向の各位置での探傷断面の欠陥の長さ及び向きから、三次元内での欠陥の向き及び長さを求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−46913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の技術は、確かに、被検体中の欠陥の長さ及び向きを求めることができるものの、3つのフェーズドアレイを必要とするため、装置コストがかさむという問題点がある。
【0008】
そこで、本発明は、装置コストを抑えつつも、被検体中の欠陥の長さ及び向きを検出することができる超音波探傷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するための発明に係る超音波探傷装置は、
被検体に対して超音波を送信する送信探触子と、該送信探触子が送信して該被検体を透過してきた超音波を受信する受信探触子とを有する探触子ユニットを備えた超音波探傷装置において、前記探触子ユニットの前記送信探触子から前記被検体を介して前記受信探触子が受信する前記超音波の伝播経路を通る前記被検体内の面を探傷断面とし、該探触子ユニットを有すると共に、該探触子ユニットで、互いに異なる方向を向いて交わっている3以上の該探傷断面での超音波探傷を実行する多方向探傷手段と、前記多方向探傷手段により、前記3以上の探傷断面での超音波探傷のそれぞれで欠陥が検出された場合に、各探傷断面での超音波探傷のそれぞれで受信された超音波の強度及び該超音波の強度の変化から定まる見掛け上の欠陥長さを用いて、前記3以上の探傷断面のいずれにも垂直な仮想面内方向の該欠陥の向き及び長さを求める演算手段と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
当該超音波探傷装置では、探触子ユニットを構成する送信探触子及び受信探触子のいずれもが、フェーズドアレイではなく、1振動子型超音波探触子であっても、3以上の探傷断面での超音波探傷結果から、3以上の探傷断面のいずれにも垂直な仮想面内方向の欠陥の向き及び長さを求めることができる。よって、当該超音波探傷装置では、装置コストを抑えることができる。
【0011】
ここで、前記超音波探傷装置において、前記多方向探傷手段は、3以上の前記探触子ユニットと、各探触子ユニットが超音波探傷を実行する前記探傷断面が互いに異なる方向を向いて交わるよう、3以上の該探触子ユニットを相互に連結する連結支持機構と、を有し、前記演算手段は、前記3以上の探触子ユニットのそれぞれで欠陥が検出された場合、各探触子ユニットのそれぞれで受信された超音波の強度の変化から定まる各見掛け上の欠陥長さを用いて、前記仮想面内方向の前記欠陥の向き及び長さを求めてもよい。
【0012】
当該超音波探傷装置では、3以上の探触子ユニットで被検体を一回走査することで、探傷断面に垂直な仮想面内方向の欠陥の向き及び長さを得ることができる。
【0013】
また、前記超音波探傷装置において、前記多方向探傷手段は、前記探触子ユニットと、該探触子ユニットにとっての前記探傷断面に沿い且つ前記送信探触子と前記受信探触子との間の中間を通る回転軸回りに該探触子ユニットを回転可能に支持する支持機構と、を有し、前記演算手段は、前記探触子ユニットを回転させて、各回転角のそれぞれで欠陥が検出された場合、各回転角で受信された超音波の強度のうちで最小の強度の回転角を用いて、前記仮想面内方向の前記欠陥の向きを求め、該最小の欠陥長さの回転角と異なる回転角で受信された超音波の強度の変化から定まる見掛け上の欠陥長さと該欠陥の向きとを用いて、前記仮想面内方向の前記欠陥の長さを求めてもよい。
【0014】
当該超音波探傷装置では、1つの探触子ユニットで、しかもこの探触子ユニットを構成する送信探触子及び受信探触子のいずれもが、フェーズドアレイではなく、1振動子型超音波探触子であっても、探傷断面に垂直な仮想面内方向の欠陥の向き及び長さを求めることができる。よって、当該超音波探傷装置では、より装置コストを抑えることができる。
【0015】
さらに、当該超音波探傷装置では、探触子ユニットの回転角から欠陥の向きを得ているので、欠陥の向きを求めるための演算負荷を軽減することができる。
【0016】
また、前記超音波探傷装置において、前記探触子ユニットの前記回転軸回りの回転角を検知する回転角センサを備え、前記演算手段は、前記探触子ユニットにより受信された各回転角での超音波の強度を該回転角と対応付けて記憶する記憶部と、該記憶部から該記憶部に記憶されている超音波の強度のうちで最小の強度に対応付けられている回転角を抽出してもよい。
【0017】
当該超音波探傷装置では、欠陥の向きに対応する探傷子ユニットの回転角を自動的に取得することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、探触子ユニットを構成する送信探触子及び受信探触子のいずれもが、フェーズドアレイではなく、1振動子型超音波探触子であっても、3以上の探傷断面での超音波探傷結果から、3以上の探傷断面のいずれにも垂直な仮想面内方向の欠陥の向き及び長さを求めることができる。
【0019】
よって、本発明によれば、装置コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る第一実施形態における超音波探傷装置の構成を示す説明図である。
【図2】図1におけるII−II線断面図である。
【図3】本発明に係る第一実施形態における各探触子ユニットからの出力と被検体中の欠陥との関係を示す説明図である。
【図4】本発明に係る第一実施形態における各探触子ユニットからの出力で認識される見掛け上の欠陥長さと、探傷断面に垂直な仮想面内での欠陥の向き及び長さとの関係を示す説明図である。
【図5】本発明に係る第二実施形態における超音波探傷装置の構成を示す説明図である。
【図6】図5におけるVI−VI線断面図である。
【図7】本発明に係る第二実施形態における超音波探傷装置の回転中の探触子ユニットを示す説明図である。
【図8】本発明に係る第二実施形態における探触子ユニットからの出力で認識される見掛け上の欠陥長さと、探傷断面に垂直な仮想面内での欠陥の向き及び長さとの関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る超音波探傷装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
「第一実施形態」
まず、図1〜図4を参照して、超音波探傷装置の第一実施形態について説明する。
【0023】
本実施形態の超音波探傷装置は、図2に示すように、被検体1に対して超音波Uを送信する送信探触子11と、送信探触子11が送信して被検体1を透過してきた超音波Uを受信する受信探触子12とを有する探触子ユニット10a,10b,10cを備えている。これら送信探触子11及び受信探触子12は、いずれも、フェーズドアレイではなく、1振動子型超音波探触子である。
【0024】
送信探触子11及び受信探触子12は、いずれも、探触子本体13と、探触子本体13と被検体1との間に配置されるシュー14と、を有している。シュー14は、その側面形状が例えば直角三角形状を成し、被検体1の表面に対して探触子本体13の表面を傾斜させて、探触子本体13による超音波の送受信の向きに対して、被検体1への超音波の入出力の向きを変えている。なお、ここでは、探触子本体13とシュー14とを別体であるが、探触子本体13とシュー14とは一体であってもよい。
【0025】
被検体1は、2つの被接合部材2を突き合わせ溶接したもので、本実施形態の超音波探傷装置は、この被検体1中の溶接部3の欠陥4を有無、欠陥4の向き及び長さを検出する。
【0026】
本実施形態の超音波探傷装置は、図1及び図2に示すように、3つの探触子ユニット10a,10b,10cと、3つの探触子ユニット10a,10b,10cを相互に連結する連結支持機構20と、各探触子ユニット10a,10b,10cを駆動制御すると共に各探触子ユニット10a,10b,10cの受信探触子12が受信した超音波を解析して欠陥4の有無、欠陥4の向き及び長さを検出するコントローラ40と、を備えている。
【0027】
連結支持機構20は、探触子ユニット10a,10b,10cを構成する送信探触子11と受信探触子12とを連結するための連結ロッド21と、送信探触子11及び受信探触子12を連結ロッド21に取り付けるための取付具24と、探触子ユニット10a,10b,10c毎の連結ロッド21相互を連結する連結軸28と、探触子ユニット10a,10b,10c毎の連結ロッド21が固定される支持枠30と、を有している。
【0028】
3つの探触子ユニット10a,10b,10c毎の連結ロッド21、つまり3つの連結ロッド21は、それぞれの長手方向の中央で互いに重なって連結軸28で連結されている。3つの連結ロッド21のうち、第一連結ロッド21aに対して第二連結ロッド21bが時計回り方向に45°の角度を成し、第一連結ロッド21aに対して第三連結ロッド21cが時計回り方向に90°の角度を成すよう、支持枠30に固定されている。第一連結ロッド21aに対して、反時計回り方向に45°の角度を成す方向は、本実施形態の超音波探傷装置にとっての走査方向Sを成す。本実施形態では、この走査方向Sを基準した場合、時計回り方向に、第一連結ロッド21aが45°の角度を成し、第二連結ロッド21bが90°の角度を成し、第三連結ロッドが21cは135°の角度を成している。なお、以下では、第一連結ロッド21aに取り付けられている探触子ユニット10aを第一探触子ユニット、第二連結ロッド21bに取り付けられている探触子ユニット10bを第二探触子ユニット、第三連結ロッド21cに取り付けられている探触子ユニット10cを第三探触子ユニットとする。
【0029】
各連結ロッド21の両端部側には、連結軸28が延びる方向に貫通し且つ連結ロッド21の長手方向に延びる長孔22が形成されている。
【0030】
取付具24(図2)は、送信探触子11及び受信探触子12の探触子本体13に固定されている取付座25と、取付座25に取り付けられている連結ピン26と、連結ピン26の端部に捻じ込まれている留めボルト27と、を有している。連結ピン26は、連結ロッド21の長孔22に挿通されている。送信探触子11及び受信探触子12は、連結ロッド21に対して、連結ピン26と共に連結ロッド21の長孔22が延びている方向に相対移動させることができる。一方で、送信探触子11及び受信探触子12、さらに連結ピン26は、留めボルト27が連結ピン26に捻じ込まれると、連結ロッド21に対する相対移動が拘束される。このため、各探触子ユニット10a,10b,10cの送信探触子11及び受信探触子12を連結ロッド21に対して移動させることで、送信探触子11と受信探触子12との間の間隔を変えることができると共に、送信探触子11と受信探触子12とを目的の間隔で連結ロッド21に固定することができる。
【0031】
本実施形態では、送信探触子11から被検体1を介して受信探触子12が受信する超音波の伝播経路を通る被検体1内の面を探傷断面Pとし、3つの探触子ユニット10a,10b,10c毎に超音波探傷装置にとっての探傷断面P1,P2,P3が設定されている。3つの探触子ユニット10a,10b,10c毎の探傷断面Pは、互いに異なる方向を向いて交わっており、各探触子ユニット10a,10b,10cの探傷断面P1,P2,P3は、各探触子ユニット10a,10b,10cが取り付けられている連結ロッド21a,21b,21cが延びている方向に平行である。このため、第一探触子ユニット10aにとっての探傷断面P1は、走査方向Sに対して時計回り方向に45°の角度を成し、第二探触子ユニット10bにとっての探傷断面P2は、走査方向Sに対して時計回り方向に90°を成し、第三探触子ユニット10cにとっての探傷断面P3は、走査方向Sに対して時計回り方向に135°の角度を成している。
【0032】
コントローラ40は、探触子ユニット10a,10b,10cを駆動制御するための駆動制御回路41と、この駆動制御回路41に対して指示を与えると共に、探触子ユニット10a,10b,10cの受信探触子12が受信した超音波を解析して欠陥4の有無、欠陥4の向き及び長さを検出するCPU42と、各種データ等を表示するディスプレイ43と、メモリ44とを有している。メモリ44には、受信探触子12が受信した超音波を解析して欠陥4の有無を検出するためや、欠陥4の向き及び長さを検出するためのプログラムが予め記憶されている。
【0033】
なお、本実施形態において、多方向探傷手段は、3つの探触子ユニット10a,10b,10cと、これらを相互に連結する連結支持機構20とを有して構成されている。また、演算手段は、このプログラムが記憶されているメモリ44と、このプログラムを実行するCPU42とを有して構成されている。
【0034】
次に、以上で説明した本実施形態の超音波探傷装置の取扱い方及び動作について説明する。
【0035】
まず、被検体1の厚さを考慮して、各探触子ユニット10a,10b,10cの送信探触子11から被検体1へ送信された超音波が被検体1の裏面で反射して受信探触子12で受信されるよう、各探触子ユニット10a,10b,10cの送信探触子11と受信探触子12との間隔を調整する。なお、各探触子ユニット10a,10b,10cの送信探触子11と受信探触子12との間隔は、探触子ユニット10a,10b,10c相互で同じである。
【0036】
次に、被検体1の表面上に、3つの探触子ユニット10a,10b,10c及びこの3つの探触子ユニット10a,10b,10cを相互に連結する連結支持機構20を置く。この際、図1に示すように、連結支持機構20の連結軸28が被検体1の溶接部3上に位置し、超音波探傷装置にとっての走査方向Sが溶接部3の長手方向に平行になるよう、3つの探触子ユニット10a,10b,10c及び連結支持機構20を被検体1の表面上にセットする。
【0037】
次に、コントローラ40により各探触子ユニット10a,10b,10cを駆動してから、3つの探触子ユニット10a,10b,10c及び連結支持機構20を走査方向Sに移動させる、つまり被検体1の溶接部3に沿って移動させる。
【0038】
3つの探触子ユニット10a,10b,10cの移動により、コントローラ40のCPU42は、駆動制御回路41を介して、各探触子ユニット10a,10b,10cから図3に示す出力を受け付ける。なお、図3中のグラフで横軸は走査方向Sでの探触子ユニット10a,10b,10cの位置を示し、縦軸は探触子ユニット10a,10b,10cの受信探触子12が受信した超音波エコーの信号強度を示す。超音波エコーの信号強度は、欠損がある場合に低下する。このため、演算手段を構成するCPU42は、各探触子ユニット10a,10b,10cからの当該探触子ユニットの位置に応じた超音波エコーの信号強度を解析して、信号強度が低くなり始めた探触子ユニットの位置から信号強度が再び元のレベルに戻った探触子ユニットの位置までの長さを、当該探触子ユニットにより検知された見掛け上の欠陥長さであると認識する。
【0039】
ここで、仮に、探触子ユニットが第一探触子ユニット10aと第二探触子ユニット10bの2つのみであるとする。この場合、図3に示すように、第一探触子ユニット10aの出力中で信号強度が低下している区間S1と第二探触子ユニット10bの出力中で信号強度が低下している区間S2とが重なり合う領域A中に欠陥4が存在することになる。しかしながら、この領域Aにより特定される欠陥4は、第一探触子ユニット10aからの出力で信号強度が低くなり始めた位置に対応する欠陥4の端が、(−)走査方向S側の欠陥の端e1である可能性と(+)走査方向S側の欠陥の端e2である可能性とがあり、欠陥4の向きを特定できない。このため、本実施形態では、欠陥4の向きを特定するために3つの探触子ユニット10a,10b,10cを設けている。
【0040】
演算手段を構成するCPU42は、各探触子ユニット10a,10b,10cからの出力を受け付けると、まず、前述したように、各探触子ユニット10a,10b,10cの出力から、探触子ユニット10a,10b,10cの出力毎の見掛け上の欠陥長さを認識する。
【0041】
次に、CPU42は、第一探触子ユニット10aの出力から認識された欠陥4の見掛け上の長さL1と第三探触子ユニット10cの出力から認識された欠陥4の見掛け上の長さL3との大小関係を比較し、L1>L3であると判断した場合、この欠陥4は、(+)走査方向S側の欠陥4の端が送信探触子11側(図3及び4中の上側)に位置する向きを向いているとして、図4に示すように、走査方向Sに平行な仮想線を基準にして半時計回り方向の角度θを用いて欠陥4の向きを定める。
【0042】
この際、CPU42は、第一探触子ユニット10aの出力から認識された欠陥4の見掛け上の長さL1と第二探触子ユニット10bの出力から認識された欠陥4の見掛け上の長さL2とを、以下の(数1)に代入して、欠陥4の向きθを求める。
tanθ=(L1−L2)/L2 ・・・・・・・・・・・(数1)
【0043】
次に、CPU42は、欠陥4の向きθと第二探触子ユニット10bの出力から認識された欠陥4の見掛け上の長さL2とを、以下の(数2)に代入して、欠陥4の長さL0を求める。
L0=L2/cosθ ・・・・・・・・・・・・・・・・(数2)
【0044】
そして、CPU42は、求めた欠陥4の向きθ及び長さL0をディスプレイ43に出力させる。なお、ここで求められ欠陥4の向きθ及び長さL0は、いずれも、3つの探傷断面P1,P2,P3に対して垂直な仮想面、つまり被検体1の表面に平行な面内での欠陥4の向き及び長さである。
【0045】
また、CPU42は、第一探触子ユニット10aの出力から認識された欠陥4の見掛け上の長さL1と第三探触子ユニット10cの出力から認識された欠陥4の見掛け上の長さL3との大小関係を比較した結果、L1≦L3であると判断した場合、この欠陥4は、(−)走査方向S側の欠陥4の端が送信探触子11側(図4中の上側)に位置する向きを向いているとして、走査方向Sに平行な仮想線を基準にして時計回り方向の角度θ’を用いて欠陥4の向きを定める。
【0046】
この際、CPU42は、第一探触子ユニット10aの出力から認識された欠陥4の見掛け上の長さL1と第二探触子ユニット10bの出力から認識された欠陥4の見掛け上の長さL2とを、以下の(数1a)に代入して欠陥4の向きθ’を求める。
tanθ’=(L1−L2)/L2 ・・・・・・・・・・・(数1a)
【0047】
次に、CPU42は、欠陥4の向きθ’と第二探触子ユニット10bの出力から認識された欠陥4の見掛け上の長さL2とを、以下の(数2a)に代入して、欠陥4の長さL0を求める。
L0=L2/cosθ’ ・・・・・・・・・・・・・・・・(数2a)
【0048】
そして、CPU42は、求めた欠陥4の向きθ’及び長さL0をディスプレイ43に出力させる。
【0049】
以上にように、本実施形態では、被検体1中の欠陥4の向き及び長さを検出することができる。しかも、本実施形態では、3つの探触子ユニット10a,10b,10cを用いているものの、各探触子ユニット10a,10b,10cを構成する送信探触子11及び受信探触子12は、いずれも、フェーズドアレイではなく、1振動子型超音波探触子であるため、装置コストを抑えることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、探触子ユニット10a,10b,10c毎の連結ロッド21と、取付具24と、各連結ロッド21相互を連結する連結軸28と、各連結ロッド21が固定される支持枠30とを有して、連結支持機構20を構成しているが、連結支持機構20は、探触子ユニット10a,10b,10c毎の探傷断面P1,P2,P3が互いに異なる方向を向いて交わるよう、3つの探触子ユニット10a,10b,10cを相互に連結することができれば、如何なる機構であってもよい。
【0051】
「第二実施形態」
次に、図5〜図8を参照して、超音波探傷装置の第二実施形態について説明する。
【0052】
本実施形態の超音波探傷装置は、図5及び図6に示すように、1つの探触子ユニット10と、この探触子ユニット10にとっての探傷断面Pに沿い且つ送信探触子11と受信探触子12との間の中間を通る回転軸回りに探触子ユニット10を回転可能に支持する支持機構20aと、探触子ユニット10の回転角を検知する回転角センサ39と、コントローラ40aとを備えている。
【0053】
本実施形態の探触子ユニット10は、第一実施形態の探触子ユニットと同じである。
【0054】
支持機構20aは、探触子ユニット10を構成する送信探触子11と受信探触子12とを連結するための連結ロッド29と、送信探触子11及び受信探触子12を連結ロッド29の取り付けるための取付具24と、探触子ユニット10の回転中心となる回転軸28aと、連結ロッド29、回転軸28a及び回転角センサ39を支持する支持枠30と、を有している。
【0055】
連結ロッド29の長手方向の中心には、回転軸28aが設けられている。また、連結ロッド29の長手方向の両端部側には、第一実施形態の連結ロッド21と同様、回転軸28aが伸びている方向に貫通し且つ連結ロッド29の長手方向に延びる長孔22が形成されている。
【0056】
取付具24は、第一実施形態の取付具24と同様、送信探触子11及び受信探触子12の探触子本体13に固定されている取付座25と、取付座25に取り付けられている連結ピン26と、連結ピン26の端部に捻じ込まれている留めボルト27と、を有している。
【0057】
支持枠30aは、矩形状の枠本体31と、枠本体31で互いに向かい合っている一対の枠梁相互を連結する連結梁32とを有している。連結ロッド29の中心に設けられている回転軸28aは、この連結梁32の長手方向の中心に回転可能に取り付けられている。回転角センサ39は、この連結梁32上であって回転軸28aと対向する位置に固定されている。
【0058】
コントローラ40aは、第一実施形態と同様、駆動制御回路41とCPU42とディスプレイ43とメモリ44とを有している。本実施形態の駆動制御回路41は、探触子ユニット10の送信探触子11及び受信探触子12を駆動制御すると共に、回転角センサ39を駆動制御する。また、本実施形態のメモリ44には、受信探触子12が受信した超音波を解析して欠陥4の有無を検出するためや、欠陥4の向き及び長さを検出するためのプログラムが予め記憶されている。本実施形態は、第一実施形態と異なり、回転角センサ39からの出力及び1つの探触子ユニット10からの出力に基づいて被検体1中の欠陥4の有無や、欠陥4の向き及び長さを検出するものであるため、このプログラムは、第一実施形態のプログラムと異なっている。
【0059】
なお、本実施形態において、多方向探傷手段は、1つの探触子ユニット10と、これを回転可能に支持する支持機構20aとを有して構成されている。また、演算手段は、このプログラムが記憶されているメモリ44と、このプログラムを実行するCPU42とを有して構成されている。
【0060】
次に、以上で説明した本実施形態の超音波探傷装置の取扱い方及び動作について説明する。
【0061】
本実施形態においても、まず、探触子ユニット10の送信探触子11から被検体1へ送信された超音波が被検体1の裏面で反射して受信探触子12で受信されるよう、探触子ユニット10の送信探触子11と受信探触子12との間隔を調整する。
【0062】
次に、被検体1の表面上に、探触子ユニット10及びこの探触子ユニット10を支持する支持機構20aを置く。この際、図5に示すように、支持機構20aの回転軸28aが被検体1の溶接部3上に位置し、探触子ユニット10にとっての探傷断面Pが溶接部3の長手方向に対して例えば垂直になるよう、言い換えると、探触子ユニット10を構成する送信探触子11と受信探触子12とを結ぶ線分が溶接部3の長手方向に対して例えば垂直になるよう、探触子ユニット10及び支持機構20aを被検体1の表面上にセットする。
【0063】
次に、コントローラ40aにより探触子ユニット10を駆動してから、探触子ユニット10及び支持機構20aを被検体1の溶接部3に沿って移動させる。本実施形態では、この移動方向が被検体1に対する超音波探傷装置の走査方向Sである。
【0064】
コントローラ40aのCPU42は、探触子ユニット10の移動過程で、駆動制御回路41を介して、探触子ユニット10の出力を受け付ける。CPU42は、探触子ユニット10からの出力を受け付けると、超音波エコーの信号強度が低下している区間があるか否かを判断し、超音波エコーの信号強度が低下している区間がある場合には、被検体1中に欠陥4が存在する旨と共に、走査方向Sでの欠陥4が存在している位置、つまり走査方向Sでの超音波エコーの信号強度が低下している区間をディスプレイ43に表示させる。なお、ここでは、被検体1中に欠陥4が存在する旨及び欠陥4が存在している位置をディスプレイ43に表示させているが、単に、探触子ユニット10からの出力をそのままディスプレイ43に表示されるようにしてもよい。この場合、この超音波探傷装置を扱っている取扱者がディスプレイ43の表示内容から、被検体1中に欠陥4が存在するか否か、欠陥4が存在する場合にはこの欠陥4が存在している位置を把握する必要がある。
【0065】
次に、図7に示すように、支持機構20aの回転軸28aが被検体1の溶接部3上であって、ディスプレイ43に表示された欠陥4が存在している位置に位置するよう、探触子ユニット10及び支持機構20aを被検体1の表面上に改めてセットする。
【0066】
そして、支持機構20aの回転軸28aを中心として、探触子ユニット10を少なくとも180°回転させる。コントローラ40aのCPU42は、探触子ユニット10の回転過程で、駆動制御回路41を介して、探触子ユニット10からの出力及び回転角センサ39からの出力を受け付け、両出力を対応付けてメモリ44に記憶する。つまり、CPU42は、探触子ユニット10からの出力を探触子ユニット10の回転角と対応付けてメモリ44に記憶する。なお、探触子ユニット10の移動方向である走査方向Sを基準として、探触子ユニット10を時計回り方向に回転させた場合には、走査方向Sを基準として時計回り方向の角度が探触子ユニット10の回転角となり、走査方向Sを基準として、探触子ユニット10を反時計回り方向に回転させた場合には、走査方向Sを基準として反時計回り方向の角度が探触子ユニット10の回転角となる。
【0067】
CPU42は、次に、メモリ44に記憶されている回転角毎の探触子ユニット10からの出力のうちで、超音波エコーの信号強度が最小の出力を定め、この出力に対応付けられている回転角を抽出し、この回転角を欠陥4の向きとしてメモリ44に記憶すると共にディスプレイ43に表示させる。
【0068】
探触子ユニット10にとっての探傷断面Pが欠陥4が延びている方向に沿う方向を向いている場合、このときの探触子ユニット10からの出力が示す超音波エコーの信号強度は最小になる。このため、本実施形態では、超音波エコーの信号強度が最小のときの回転角を欠陥4の向きとしている。なお、ここでは、CPU42が探触子ユニット10からの出力と探触子ユニット10の回転角とを対応付けてメモリ44に記憶し、このメモリ44から超音波エコーの信号強度が最小のときの回転角を抽出し、これを欠陥4の向きとしているが、単に、回転中の探触子ユニット10からの出力をそのままディスプレイ43に表示されるようにしてもよい。この場合、取扱者は、ディスプレイ43の表示内容から、超音波エコーの信号強度が最小のときの回転角を欠陥4の向きとして把握する必要がある。
【0069】
次に、探触子ユニット10の回転角を超音波エコーの信号強度が最小のときの回転角と異なる角度にして、支持機構20aの回転軸28aが被検体1の溶接部3上に位置するよう、探触子ユニット10及び支持機構20aを被検体1の表面上に再びセットする。
【0070】
次に、探触子ユニット10及び支持機構20aを走査方向Sに移動させる。
【0071】
コントローラ40aのCPU42は、この探触子ユニット10の移動により、駆動制御回路41を介して、探触子ユニット10から図8に示す出力及び回転角センサ39からの出力を受け付ける。なお、図8中のグラフで横軸は走査方向Sでの探触子ユニット10の位置を示し、縦軸は探触子ユニット10からの出力である超音波エコーの信号強度を示す。
【0072】
CPU42は、探触子ユニット10からの出力及び回転角センサ39からの出力を受け付けると、この探触子ユニット10の出力から認識された欠陥4の見掛け上の長さL4と、この回転角センサ39からの出力である回転角θ4と、欠陥4の向きθとから、探傷断面Pに対して垂直な仮想面内、つまり被検体1の表面に平行な面内での欠陥4の長さL0を求める。
【0073】
ここで、簡単のため、回転角センサ39からの出力である回転角θ4は90°であるとする。この場合、CPU42は、欠陥4の見掛け上の長さL4及び欠陥4の向きθを、以下の(数3)に代入して、探傷断面Pに対して垂直な仮想面内での欠陥4の長さL0を求める。
L0=L4/cosθ ・・・・・・・・・・・・・・・・(数3)
【0074】
なお、最初の走査のとき探触子ユニット10の回転角が、超音波エコーの信号強度が最小のときの回転角、つまり欠陥4の向きと異なっている場合には、CPU42は、最初の走査のとき探触子ユニット10の回転角と最初の走査で認識された欠陥4の見掛け上の長さとを用いて、欠陥4の向きを求めた段階で、直ちに、欠陥4の長さを求めてもよい。この場合、二回目の走査は不要になる。
【0075】
そして、CPU42は、求めた欠陥4の長さL0をディスプレイ43に出力させる。
【0076】
以上にように、本実施形態では、被検体1中の欠陥4の向き及び長さを検出することができる。また、本実施形態では、探触子ユニット10の数量が1個であり、しかも、探触子ユニット10を構成する送信探触子11及び受信探触が、いずれもフェーズドアレイではなく、1振動子型超音波探触子であるため、第一実施形態よりもさらに装置コストを抑えることができる。
【0077】
また、本実施形態では、被検体1中の欠陥4の向きを検出するために、CPU42による演算処理が不要になるため、第一実施形態よりもCPU42の演算負荷を軽減することができる。
【0078】
なお、本実施形態では、探触子ユニット10を構成する送信探触子11と受信探触子12とを連結するための連結ロッド29と、取付具24と、探触子ユニット10の回転中心となる回転軸28aと、この回転軸28aを支持する支持枠30aと有して、支持機構20aを構成しているが、支持機構20aは、探触子ユニット10にとっての探傷断面Pに対して垂直な面内で探触子ユニット10を回転可能に支持できるものであれば、如何なる機構であってもよい。
【0079】
また、第一実施形態及び本実施形態では、欠陥長さを演算で求めているが、作図で求めてもよい。この場合、CPU42は、図3や図8に示す図をメモリ44上に展開する。具体的には、CPU42は、探触子ユニットの出力と、この探触子ユニットの出力に関連付けて探触子ユニットの回転角の平行な線分とをメモリ44上に展開すると共に、この線分で特定される欠陥4をメモリ44上展開して、この欠陥4の長さ等を実測して求めることになる。
【符号の説明】
【0080】
10,10a,10b,10c…探触子ユニット、11…送信探触子、12…受信探触子、20…連結支持機構、20a…支持機構、21,29…連結ロッド、28a…回転軸、30、30a…支持枠、39…回転角センサ、40…コントローラ、41…駆動制御回路、42…CPU、43…ディスプレイ、44…メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して超音波を送信する送信探触子と、該送信探触子が送信して該被検体を透過してきた超音波を受信する受信探触子とを有する探触子ユニットを備えた超音波探傷装置において、
前記探触子ユニットの前記送信探触子から前記被検体を介して前記受信探触子が受信する前記超音波の伝播経路を通る前記被検体内の面を探傷断面とし、該探触子ユニットを有すると共に、該探触子ユニットで、互いに異なる方向を向いて交わっている3以上の該探傷断面での超音波探傷を実行する多方向探傷手段と、
前記多方向探傷手段により、前記3以上の探傷断面での超音波探傷のそれぞれで欠陥が検出された場合に、各探傷断面での超音波探傷のそれぞれで受信された超音波の強度及び該超音波の強度の変化から定まる見掛け上の欠陥長さを用いて、前記3以上の探傷断面のいずれにも垂直な仮想面内方向の該欠陥の向き及び長さを求める演算手段と、
を備えていることを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波探傷装置において、
前記多方向探傷手段は、3以上の前記探触子ユニットと、各探触子ユニットが超音波探傷を実行する前記探傷断面が互いに異なる方向を向いて交わるよう、3以上の該探触子ユニットを相互に連結する連結支持機構と、を有し、
前記演算手段は、前記3以上の探触子ユニットのそれぞれで欠陥が検出された場合、各探触子ユニットのそれぞれで受信された超音波の強度の変化から定まる各見掛け上の欠陥長さを用いて、前記仮想面内方向の前記欠陥の向き及び長さを求める、
ことを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波探傷装置において、
前記多方向探傷手段は、前記探触子ユニットと、該探触子ユニットにとっての前記探傷断面に沿い且つ前記送信探触子と前記受信探触子との間の中間を通る回転軸回りに該探触子ユニットを回転可能に支持する支持機構と、を有し、
前記演算手段は、前記探触子ユニットを回転させて、各回転角のそれぞれで欠陥が検出された場合、各回転角で受信された超音波の強度のうちで最小の強度の回転角を用いて、前記仮想面内方向の前記欠陥の向きを求め、該最小の欠陥長さの回転角と異なる回転角で受信された超音波の強度の変化から定まる見掛け上の欠陥長さと該欠陥の向きとを用いて、前記仮想面内方向の前記欠陥の長さを求める、
ことを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波探傷装置において、
前記探触子ユニットの前記回転軸回りの回転角を検知する回転角センサを備え、
前記演算手段は、前記探触子ユニットにより受信された各回転角での超音波の強度を該回転角と対応付けて記憶する記憶部と、該記憶部から該記憶部に記憶されている超音波の強度のうちで最小の強度に対応付けられている回転角を抽出する、
ことを特徴とする超音波探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−202963(P2012−202963A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70768(P2011−70768)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】