説明

超音波探傷装置

【課題】探傷領域外部の不要エコーを低減すること、および内部エコーの強度を強めることができ超音波探傷装置を提供する。
【解決手段】周りに接触媒質を施した探傷対象物の前記接触媒質の周囲に配置され、超音波ビームを接触媒質を介して探傷対象物へ照射する少なくとも1つの送信アレー探触子と、前記接触媒質の周囲に配置され、前記超音波ビームの音響的不連続部での反射波エコーを接触媒質を介して受信する少なくとも1つの受信アレー探触子と、前記送信アレー探触子及び受信アレー探触子に、送信アレー探触子を励振し受信アレー探触子からの反射波エコーを示す信号を受ける送受信制御を行うと共に、送信メインローブと受信メインローブが探傷対象物内部で重なり探傷対象物外部で重ならないように前記送信アレー探触子および前記受信アレー探触子の少なくとも一方にビーム制御を行う探傷制御器と含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、丸棒等に生じた傷を被破壊で検査する超音波探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の超音波探傷装置として、例えば下記特許文献1に、丸棒を探傷対象物としたものが開示されている。
【0003】
図8は従来の一般的な超音波探傷装置を説明するための図である。図8では、アレー探触子100、探索領域として断面で示された探傷対象物である丸棒200、および丸棒200の周りに施された接触媒質300が図示されている。
【0004】
丸棒200の探傷は、図8に示されるように、アレー探触子100から接触媒質300を介して、丸棒200内部に超音波ビームを入射することで、丸棒200内部の探傷を行う。このとき、丸棒200内部に音響的不連続部(傷など)が存在する場合には、音響的不連続部からのエコー(以下、内部エコー)が送信で用いたものと同一のアレー探触子100で観測され、傷等音響的不連続部の存在が検出される。
【0005】
図8に示されている接触媒質300は、インピーダンスの不整合を緩和し、丸棒内部に入射できる音波強度を大きくするために設置されているものでる。一般的には水や油などの液体が用いられる。
【0006】
このような超音波探傷装置では、照射超音波ビームに対するエコー源としては丸棒200内部の音響的不連続部、および丸棒200の両端面のみであるのが望ましい。しかし実際には、丸棒200周囲の接触媒質300中にごみ・気泡等の不要反射源が存在するため、それら不要反射源からのエコー(以下、不要エコー)もアレー探触子100で観測されてしまう。
【0007】
図9は丸棒200の超音波探傷時の受信時刻に対する、受信信号の様子を説明するための図であり、横軸が受信時刻、縦軸が音波の受信強度を表している。
【0008】
図9では、丸棒200の一方の端面エコーと丸棒200の他方の端面エコーの間の探傷領域に対応した受信時刻の領域に、気泡エコー等の不要エコーと内部エコーが混在している。音波の場合は、例えば図8の接触媒質300は水、丸棒200が鉄製であるとし、縦波の伝搬を考えた場合であれば、丸棒200内部での音波伝搬速度は接触媒質300中の音波伝搬速度のおよそ4倍である。このため、図9に示したように、伝搬距離の短い不要エコーと伝搬距離の長い内部エコーが、同じ時間領域に混在してしまう。このとき、接触媒質300中の不要エコーと、丸棒200内部の内部エコーの判別ができないため,不要エコーを丸棒200内部の内部エコーと誤認する誤警報が発生する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−145114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように超音波探傷装置において、不要エコーを内部エコーと誤認する誤警報の問題に対処するため、不要エコーの受信強度を低減すること、および内部エコーの強度を強めることが求められている。
【0011】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、送信・受信のアレー探触子を別々に配置し、それぞれの超音波ビームの指向方向を制御することで従来と同様に探傷領域内の探傷を行いつつ、探傷領域外部の不要エコーを低減すること、および内部エコーの強度を強めることが可能な超音波探傷装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、周りに接触媒質を施した探傷対象物の前記接触媒質の周囲に配置され、超音波ビームを接触媒質を介して探傷対象物へ照射する少なくとも1つの送信アレー探触子と、前記接触媒質の周囲に配置され、前記超音波ビームの音響的不連続部での反射波エコーを接触媒質を介して受信する少なくとも1つの受信アレー探触子と、前記送信アレー探触子および前記受信アレー探触子に、前記送信アレー探触子を励振し前記受信アレー探触子からの反射波エコーを示す信号を受ける送受信制御を行うと共に、送信メインローブと受信メインローブが探傷対象物内部で重なり探傷対象物外部で重ならないように前記送信アレー探触子および前記受信アレー探触子の少なくとも一方にビーム制御を行う探傷制御器と、を備えたことを特徴とする超音波探傷装置にある。
【発明の効果】
【0013】
この発明では、探傷領域外部の不要エコーを低減すること、および内部エコーの強度を強めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1に係る超音波探傷装置の構成の一例を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1における不要エコー(気泡エコー等)の受信強度低減効果を説明するための図である。
【図3】この発明の実施の形態1における送受アレー探触子の位置ずれを大きくした場合の効果を説明するための図である。
【図4】探傷対象物を変えた場合のこの発明の実施の形態1に係る超音波探傷装置の構成の一例を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る超音波探傷装置の構成の一例を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る超音波探傷装置の構成の別の例を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態3に係る超音波探傷装置の構成の一例を示す図である。
【図8】従来の一般的な超音波探傷装置を説明するための図である。
【図9】図8における丸棒の超音波探傷時の受信時刻に対する受信信号の様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明による超音波探傷装置を各実施の形態に従って図面を用いて説明する。なお、各実施の形態において、同一もしくは相当部分は同一符号で示し、重複する説明は省略する。
【0016】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る超音波探傷装置の構成の一例を示す図である。超音波探傷装置は送受信器6、送信アレー探触子4および受信アレー探触子5からなる。送信アレー探触子4および受信アレー探触子5は、周りに接触媒質3が施された、探索領域として示された探傷対象物である例えば丸棒2の上記接触媒質3の周囲に配置されている。丸棒2は紙面に垂直な方向に延び、円形の断面で示されている。実際には接触媒質3が満たされた容器(図示省略)内に丸棒2およびアレー探触子4,5を入れて、接触媒質3内で超音波探傷が行われる。
【0017】
送受信器6は送信アレー探触子4を励振し、受信アレー探触子5からの電気信号を受信する。送信アレー探触子4は、送受信器6によって励振され、接触媒質3を介して丸棒2内部に超音波ビームを照射する。受信アレー探触子5は、送信アレー探触子4の照射した超音波ビームによる、丸棒2内部の音響的不連続部からの超音波エコーを、接触媒質3を介して受信し、電気信号に変換する。
【0018】
なお、送受信器6は超音波探傷全体を制御、実行する探傷制御器でありうるが、以下では送信アレー探触子と受信アレー探触子との間の超音波ビームとその反射波エコーの送受信の動作を中心に説明する。
【0019】
次に、この発明の実施の形態1の不要エコーの受信強度低減効果について説明を行う。図2はこの発明の実施の形態1における不要エコー(気泡エコー等)の受信強度低減効果を説明するための図である。図2では送受信器6の図示は省略されている。
【0020】
図2では、送信アレー探触子4の送信メインローブおよび、受信アレー探触子5の受信メインローブの例が図示されている。送信および受信はこのメインローブの範囲内に対して、照射音波強度および受信音波強度が強くなる。
【0021】
丸棒2内部では、送信のメインローブと受信メインローブが重なっている領域が存在している。この領域では従来の送受同一のアレー探触子を用いる場合と同様の音波強度での観測を行うことができる。
【0022】
丸棒2外部では丸棒2内部と異なり、送信メインローブと受信メインローブが重なる領域が存在しないことがわかる。このため、この発明の実施の形態1の図2の場合には、丸棒2外部の領域では送受を合わせた音波強度が最も大きくなる場合でも、送受どちらか一方のメインローブにしか入らないことがわかる。
【0023】
これに対して従来の超音波探傷装置である図8の場合には、送信と受信のアレー探触子が同一であるため、丸棒2内部で送信メインローブと受信メインローブの重なる領域を作った場合、丸棒2外部でも送信メインローブと受信メインローブが重なってしまう。
【0024】
このことから、この発明の実施の形態1では、不要反射源が存在する丸棒2外部の領域において、送信メインローブと受信メインローブが重ならないため、従来の超音波探傷装置と比較して、不要反射源が存在する丸棒2外部の領域での音波強度が弱くなり、不要エコーが低減される。
【0025】
このとき、丸棒2内部の任意の位置について探傷を行うためには、送信超音波ビーム、受信超音波ビームのどちらか、あるいはその両方についてビーム指向方向の制御や任意位置で焦点を結ぶように、制御することにより、任意の領域で送信メインローブと受信メインローブが重なるようにする必要がある。
【0026】
超音波ビームの制御を行う方法としては、アレー探触子の各素子に実時間遅延を与える方法が考えられる。
【0027】
別の超音波ビーム制御を行う方法としては、アレー探触子の各素子の位相を制御する方法が考えられる。
【0028】
ただし、上記のビーム制御を行う際には、丸棒2の内外境界上での超音波ビームの屈折を考慮する必要がある。この屈折の影響はフェルマーの原理(光学的距離が最短になるというもの。スネルの法則と同義)に基づいて計算することが可能である。すなわち、任意の方向に超音波ビームが指向する、あるいは任意の位置で超音波ビームが焦点を結ぶ場合の各探触子の伝播時間を、光学的距離最小の条件に基づき計算し、そこから各探触子に与える実時間遅延や位相制御量を決定することで、任意のビーム制御を実現するという手法などが考えられる。
【0029】
また、図1の場合であれば、送信アレー探触子4と受信アレー探触子5は丸棒2の中心を基準と考えた相対角度で60°程ずれた位置に設置されているが、この位置ずれすなわち相対角度をより大きくするとより不要エコーの低減効果は大きくなる。その様子を、図3を参照しながら説明する。
【0030】
図3は、送受のアレー探触子の位置ずれを大きくした場合の効果を説明するための図であり、図1の受信アレー探触子5をより送信アレー探触子4から遠ざけた受信アレー探触子5Aが設置されている。
【0031】
位置ずれを大きくした図3の場合でも、送信アレー探触子4から受信アレー探触子5Aに不要エコー(気泡エコー)の超音波が到達しないわけではない。しかし、送信アレー探触子4と受信アレー探触子5Aの位置ずれが大きくなると、不要エコーに対応した超音波の伝搬経路が長くなる。前述のように、水などの液体である接触媒質3中では、丸棒2中より音波の伝搬速度が遅いため、内部エコーに対して不要エコーの伝搬時間が長くなる。そのため、図9のように内部エコーが存在する時間領域で、不要エコーが受信される確率自体が低下していく。
【0032】
このように、この発明の実施の形態1では、送信アレー探触子4と受信アレー探触子5Aの位置ずれを大きくすることで、不要エコーの音波強度を低減するのみではなく、不要エコーが丸棒2の内部エコーと同一の時間領域で観測される確率自体を低下させる効果もある。
【0033】
ここまで図1および図2を用いて、丸棒2内部を探傷領域とした場合の、この発明の実施の形態1による不要エコー低減について説明を行ってきた。しかし、この発明の適用範囲は丸棒のみではない。この発明の実施の形態1において、六角棒の内部を探傷領域とする場合を図4に示す。
【0034】
図4において、この発明の実施の形態1に係る超音波探傷装置は、図1の丸棒2が六角棒2Aになったものである。図1の丸棒2と同様に、図4の六角棒2Aは紙面の手前および奥方向に長さを持っており、断面図が六角形になっている。
【0035】
図4のような探傷対象物が六角棒2Aの場合でも、図1の丸棒2の場合と同様にメインローブが重ならないことによる不要エコー低減効果が得られる。ただし、送信アレー探触子4および受信アレー探触子5のビーム制御を行うための、実時間遅延量や位相制御量を計算する際には、六角棒2Aに合わせた計算を行う必要がある。
【0036】
図1では丸棒2、図4では六角棒2Aを探傷対象物としたが、この発明の実施の形態1の探傷対象物はこれらに限定されるものではない。柱状の試験体(探傷対象物)や、パイプ、平板などにも適用可能である。すなわち、超音波探傷装置において、接触媒質内での不要エコーが問題となる場合に、一般的に適用可能である。
【0037】
また、この発明の実施の形態1では、液体の接触媒質3中の気泡や、丸棒2表面に付着している鉄粉、その他のゴミ等、接触媒質3中に存在する、超音波探傷において不要な様々なエコー源に対して、エコー強度を低減することができる。このように、この発明は、接触媒質中のあらゆる不要なエコー源に対処可能である。
【0038】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2に係る超音波探傷装置の構成の一例を示す図である。図5においてこの発明の実施の形態2は、送受信器6と、丸棒2の周りに施された接触媒質3の周囲に設置された送信アレー探触子4、受信アレー探触子5B、受信アレー探触子5Cで構成されている。
【0039】
送受信器6は送信アレー探触子4を励振し、受信アレー探触子5Bおよび受信アレー探触子5Cからの電気信号を受信する。送信アレー探触子4は送受信器6によって励振され、接触媒質3を介して丸棒2内部に超音波ビームを照射する。受信アレー探触子5Bおよび受信アレー探触子5Cは、送信アレー探触子4の照射した超音波ビームによる、丸棒2内部の音響的不連続部からの超音波エコーを、接触媒質3を介して受信し、電気信号に変換する。
【0040】
この発明の実施の形態2の図5において、丸棒2内部では、送信アレー探触子4のメインローブと、受信アレー探触子5B、受信アレー探触子5Cのメインローブが重なる領域が存在する。それに対し丸棒2外部では、送信アレー探触子4のメインローブと、受信アレー探触子5B、受信アレー探触子5Cのメインローブは重ならない。
【0041】
このことから、この発明の実施の形態2では、複数のアレー探触子を分散配置にし、各アレー探触子のメインローブが丸棒2内部では重なり、丸棒2外部では重ならないようにすることで、丸棒2外部の不要エコーの強度を低減する。
【0042】
このとき、丸棒2内部について探傷を行うため、実施の形態1と同様に、丸棒2内部の任意の領域で、送信メインローブと複数の受信メインローブが重なるようにする必要がある。
【0043】
さらに、受信アレー探触子5Bと受信アレー探触子5Cで、丸棒2内の任意の同一の位置について、同時に観測を行うように受信超音波ビームの制御を行うことで、その任意の位置に音響的不連続部が存在した場合には、両受信アレー探触子5B,5Cで内部エコーが観測され、その信号を足し合わせることで、内部エコーの強度を強めることが可能である。
【0044】
上記の同一の位置についての観測を行う場合には、例えば受信アレー探触子5Bと受信アレー探触子5Cが、任意の同一の位置で焦点を結ぶようにビーム制御を行う方法がある。この焦点位置を変化させることで、丸棒2内のいろいろな位置について内部エコーの強度を強めることができる。
【0045】
このとき、丸棒2内部の任意の位置については、内部エコーの強めあいが起こるが、丸棒2外部については、各受信アレー探触子5B,5Cで受信される不要エコーの相関は低いため、不要エコーの強めあいは起こらない。
【0046】
また、この発明の実施の形態2の図5では、受信アレー探触子5Bと受信アレー探触子5Cの2つを設置しているが、この受信アレー探触子の数はより多くてもよい。
【0047】
この発明の実施の形態2は、図5に示したように受信アレー探触子が複数の場合に限らない。図6を参照しながら、送信アレー探触子が複数設置された場合を説明する。
【0048】
図6は、この発明の実施の形態2において、送信アレー探触子が複数設置された場合を説明するための図である。図6においてこの発明の実施の形態2は、送受信器6と、丸棒2の周りに施された接触媒質3の周囲に設置された送信アレー探触子4Aと送信アレー探触子4B、受信アレー探触子5で構成されている。
【0049】
この図6では2つの送信超音波ビームと、1つの受信超音波ビームが存在するが、丸棒2外部ではメインローブが重ならないため、不要エコーの抑圧効果がある。
【0050】
さらに、図5の受信アレー探触子が複数の場合と同様に、送信アレー探触子4Aと送信アレー探触子4Bで、丸棒2内の任意の同一の位置に対して、同時に超音波ビームの照射を行うように送信超音波ビームの制御を行うことで、その任意の位置に音響的不連続部が存在した場合には、受信アレー探触子5で観測される内部エコーの強度を強めることが可能である。
【0051】
このとき、超音波ビームの照射を同時に行う位置を変化させることで、丸棒2内のいろいろな位置について内部エコーの強度を強めることができる。
【0052】
また、この発明の実施の形態2の図6では、送信アレー探触子4Aと送信アレー探触子4Bの2つを設置しているが、この送信アレー探触子の数はより多くてもよい。
【0053】
以上、この発明の実施の形態2について、図5と図6を用いて説明を行ってきたが、この発明の実施の形態2では、送信アレー探触子と受信アレー探触子の両方が複数設置されていてもよい。このとき、複数の送信アレー探触子による、任意の位置に対する同時の超音波ビームの照射を行うとともに、複数の受信アレー探触子による、任意の位置に対する同時観測を行うことで、任意の位置からの内部エコーをより強めることができる。
【0054】
また、ここまでの説明では、各アレー探触子は送信と受信のどちらかのみを担当していたが、この発明の実施の形態2においては、複数のアレー探触子の中に、送受両方を行うアレー探触子が含まれていてもよい。
【0055】
この発明の実施の形態2においても、探傷対象物は丸棒に限定されるものではない。超音波探傷装置において、接触媒質内での不要エコーが問題となる場合に、一般的に適用可能である。
【0056】
この発明の実施の形態2でも、気泡や鉄粉などの接触媒質中のあらゆる不要エコー源に対して適用可能である。
【0057】
実施の形態3.
図7はこの発明の実施の形態3に係る超音波探傷装置の構成の一例を示す図である。この発明の実施の形態3では、送受信器6と、丸棒2の周りに施された接触媒質3の周囲に設置された送信アレー探触子4、可動受信アレー探触子5Dで構成されている。
【0058】
送受信器6は送信アレー探触子4を励振し、可動受信アレー探触子5Dからの電気信号を受信する。送信アレー探触子4は送受信器6によって励振され、接触媒質3を介して丸棒2内部に超音波ビームを照射する。可動受信アレー探触子5Dは、丸棒2周囲を移動しながら、送信アレー探触子4の照射した超音波ビームによる、丸棒2内部の音響的不連続部からの超音波エコーを、接触媒質3を介して複数の位置で受信し、電気信号に変換する。
【0059】
この図7で示される実施の形態3は、実施の形態1と同様に送受が分離したアレー探触子を用いているため、丸棒2外部では送信メインローブと受信メインローブが重ならないため、不要エコーの音波強度の低減効果がある。
【0060】
また、可動受信アレー探触子5Dが複数の位置で超音波ビームの受信を行う。この複数の位置での超音波ビームの観測において、丸棒2内部の任意の同一の位置に対して観測を行うように超音波ビームの制御を行い、それらの受信超音波ビームを足し合わせることで、任意の位置に対する内部エコーの音波強度を強めることができる。
【0061】
このように、この発明の実施の形態3では、送受を分離したアレー探触子を用いることで、不要エコーの低減を行うとともに、可動受信アレー探触子5Dを移動させ、複数の位置で超音波ビームの観測を行うことで、丸棒2内部の任意の位置に対する内部エコーを強める効果がある。
【0062】
この発明の実施の形態3の図7では、受信アレー探触子が移動する(可動受信アレー探触子)としたが、この発明の実施の形態3には、送信アレー探触子が移動(可動送信アレー探触子)する、あるいは送受両方のアレー探触子が移動する(可動受信アレー探触子と可動送信アレー探触子)場合も同様に含まれる。
【0063】
この発明の実施の形態3においても、探傷対象物は丸棒に限定されるものではない。超音波探傷装置において、接触媒質3内での不要エコーが問題となる場合に、一般的に適用可能である。
【0064】
また、丸棒2外部の接触媒質3に存在する様々なエコー源に対して、この発明の実施の形態3は適用可能である。
【0065】
なお、各実施の形態において、例えば送受信器6はコンピュータを含む探傷制御器であり、各アレー探触子を制御することで上述した動作を行わせる。探傷制御器は例えば実行する超音波探傷のためのプログラムに従って、送信アレー探触子の励振制御(例えば励振信号を送る)および受信アレー探触子からの受信超音波ビーム(エコー)の大きさを電気信号に変換した信号の受信を行う送受信制御の他に、送信アレー探触子の送信メインローブ(送信超音波ビーム)の大きさと方向(指向性)の制御(例えば指向性制御信号を送る)、受信アレー探触子の受信メインローブの大きさと方向(指向性)の制御(例えば指向性制御信号を送る)を行うビーム制御を行う。このビーム制御はアレー探触子を構成する複数の探触子の制御となる。また送信、受信の可動アレー探触子の移動制御を行う。すなわち例えば、可動アレー探触子の駆動機構(図示省略)に移動制御信号を送る。また複数の受信アレー探触子からの信号の足し合わせを行う演算も行う。
【0066】
これにより送信アレー探触子は、探傷制御器からの励振信号により励振して超音波ビームを照射し、受信アレー探触子は、反射波エコー(受信超音波ビーム)を受信して電気信号に変換して出力する他に、送信アレー探触子、受信アレー探触子はそれぞれ、指向性制御信号に従って送信メインローブ又は受信メインローブの大きさと方向(指向性)を設定する機能を有する。また送信、受信の可動アレー探触子はさらに、図示しない駆動機構を備え、駆動機構は探傷制御器からの移動制御信号に従ってアレー探触子の位置を移動させる。
【0067】
なおこの発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、これらの可能な組み合わせを全て含むことは云うまでもない。
【符号の説明】
【0068】
2 丸棒(探傷対象物)、2A 六角棒(探傷対象物)、3 接触媒質、4,4A,4B 送信アレー探触子、5,5A,5B,5C 受信アレー探触子、5D 可動受信アレー探触子、6 送受信器(探傷制御器)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周りに接触媒質を施した探傷対象物の前記接触媒質の周囲に配置され、超音波ビームを接触媒質を介して探傷対象物へ照射する少なくとも1つの送信アレー探触子と、
前記接触媒質の周囲に配置され、前記超音波ビームの音響的不連続部での反射波エコーを接触媒質を介して受信する少なくとも1つの受信アレー探触子と、
前記送信アレー探触子および前記受信アレー探触子に、前記送信アレー探触子を励振し前記受信アレー探触子からの反射波エコーを示す信号を受ける送受信制御を行うと共に、送信メインローブと受信メインローブが探傷対象物内部で重なり探傷対象物外部で重ならないように前記送信アレー探触子および前記受信アレー探触子の少なくとも一方にビーム制御を行う探傷制御器と、
を備えたことを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項2】
探傷制御器が、送信アレー探触子のみにビーム制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷装置。
【請求項3】
探傷制御器が、受信アレー探触子のみにビーム制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷装置。
【請求項4】
1つの送信アレー探触子と複数の受信アレー探触子を備え、
探傷制御器が、探傷対象物内部では送信メインローブと受信メインローブは重なるが探傷対象物外部では重ならないように前記送信アレー探触子および前記複数の受信アレー探触子にビーム制御を行うとともに、探傷対象物内部の任意の位置での反射波エコーを強めるように前記複数の受信アレー探触子からの信号の足し合わせを行うことを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷装置。
【請求項5】
複数の送信アレー探触子と1つの受信アレー探触子を備え、
探傷制御器が、探傷対象物内部では送信メインローブと受信メインローブは重なるが探傷対象物外部では重ならないように前記複数の送信アレー探触子および前記受信アレー探触子にビーム制御を行うとともに、前記複数の送信アレー探触子が探傷対象物内部の任意の同一の位置に同時に超音波ビームを照射するようにビーム制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷装置。
【請求項6】
複数の送信アレー探触子と複数の受信アレー探触子を備え、
探傷制御器が、探傷対象物内部では送信メインローブと受信メインローブは重なるが探傷対象物外部では重ならないように前記複数の送信アレー探触子および前記複数の受信アレー探触子にビーム制御を行うとともに、前記複数の送信アレー探触子が探傷対象物内部の任意の同一の位置に同時に超音波ビームを照射するようにビーム制御を行うとともに、探傷対象物内部の前記任意の同一の位置での反射波エコーを強めるように前記複数の受信アレー探触子からの信号の足し合わせを行うことを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷装置。
【請求項7】
受信アレー探触子が配置位置の移動が可能な可動受信アレー探触子からなり、
探傷制御器が、探傷対象物内部では送信メインローブと受信メインローブは重なるが探傷対象物外部では重ならないように送信アレー探触子および前記可動受信アレー探触子にビーム制御および移動制御を行うとともに、探傷対象物内部の任意の位置での反射波エコーを強めるように各位置での前記可動受信アレー探触子からの信号の足し合わせを行うことを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷装置。
【請求項8】
前記送信アレー探触子が配置位置の移動が可能な可動送信アレー探触子からなり、
探傷制御器が、探傷対象物内部では送信メインローブと受信メインローブは重なるが探傷対象物外部では重ならないように前記可変送信アレー探触子および受信アレー探触子にビーム制御および移動制御を行うとともに、前記可動送信アレー探触子が各位置において探傷対象物内部の任意の同一の位置に超音波ビームを照射するようにビーム制御および移動制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷装置。
【請求項9】
前記送信アレー探触子および受信送信アレー探触子がそれぞれ配置位置の移動が可能な可動送信アレー探触子および可動受信アレー探触子からなり、
探傷制御器が、探傷対象物内部では送信メインローブと受信メインローブは重なるが探傷対象物外部では重ならないように前記可変送信アレー探触子および可変受信アレー探触子にビーム制御および移動制御を行うとともに、前記可動送信アレー探触子が各位置において探傷対象物内部の任意の同一の位置に超音波ビームを照射するようにビーム制御および移動制御を行い、探傷対象物内部の前記任意の同一の位置での反射波エコーを強めるように各位置での前記可動受信アレー探触子からの信号の足し合わせを行うことを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷装置。
【請求項10】
前記ビーム制御として、アレー探触子を構成する各探触子の照射超音波または受信超音波が、任意の位置で焦点を結ぶように各探触子の超音波の制御を行うことを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載の超音波探傷装置。
【請求項11】
前記ビーム制御として、アレー探触子の照射超音波または受信超音波が、任意の方向に指向するようアレー探触子を構成する各探触子の超音波の制御を行うことを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載の超音波探傷装置。
【請求項12】
前記各探触子の超音波の制御として、実時間遅延を用いることを特徴とする請求項10または11に記載の超音波探傷装置。
【請求項13】
前記各探触子の超音波の制御として、位相制御による方法を用いることを特徴とする請求項10または11に記載の超音波探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−88134(P2012−88134A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234141(P2010−234141)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】