説明

超音波探触子および超音波診断装置

【課題】故障の原因となり易い圧電素子、特に有機圧電素子のみを交換できるようにし、低コストで故障から回復可能な超音波探触子、および超音波診断装置を提供する。
【解決手段】少なくとも前記音響レンズと、複数の受信用圧電素子とが一体となってユニット化され、ユニットが交換可能なように超音波探触子を構成し、超音波診断装置に、受信用圧電素子の性能を計測するための計測用圧電素子、または累積使用時間を計測するカウンタと、ユニットの交換時期を使用者に知らせる通知を実施する通知手段とを設け、制御手段は、受信用圧電素子の性能が所定基準に以下に劣化した場合、または累積使用時間が所定時間を経過した時に、通知を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内に超音波信号を送信し、反射波を受信する超音波探触子と、超音波探触子が変換した電気信号に基づいて被検体内部の超音波画像を生成する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波は、通常、16000Hz以上の音波をいい、非破壊、無害および略リアルタイムでその内部を調べることが可能なことから、欠陥の検査や疾患の診断等の様々な分野に応用されている。その一つに、被検体内を超音波で走査し、被検体内から来た超音波の反射波から生成した受信信号に基づいて該被検体内の内部状態を画像化する超音波診断装置がある。この超音波診断装置は、医療用では、他の医療用画像装置に較べて小型で安価であり、そしてX線等の放射線被爆が無く安全性が高いこと、また、ドップラ効果を応用した血流表示が可能であること等の様々な特長を有している。このため、超音波診断装置は、循環器系(例えば心臓の冠動脈等)、消化器系(例えば胃腸等)、内科系(例えば肝臓、膵臓および脾臓等)、泌尿器系(例えば腎臓および膀胱等)および産婦人科系等で広く利用されている。
【0003】
超音波診断装置には、被検体に対して超音波(超音波信号)を送受信する超音波探触子が用いられている。超音波探触子は、圧電現象を利用することによって、送信の電気信号に基づいて機械振動して超音波(超音波信号)を発生し、被検体内部で音響インピーダンスの不整合によって生じる超音波(超音波信号)の反射波を受けて電気信号である受信信号を生成する複数の圧電素子を備え、これら複数の圧電素子が例えばアレイ状に2次元配列されて構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
従来、超音波探触子の長期間使用等により、超音波探触子が故障した場合には、超音波探触子自体の交換が実施されていた。しかし、超音波探触子の故障原因は、超音波探触子の筐体の中身の部品等にあることが殆どであった。そこで、超音波探触子自体を交換せず、超音波探触子の筐体の中に備えられた圧電素子や、圧電素子周辺の部品等の殆どの部品を一括して交換する技術が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−088056号公報
【特許文献2】特開2008−188174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
超音波探触子の故障の原因は、内部に備えられた圧電素子の故障によるものが殆どであり、特に、有機圧電材料を用いた圧電素子は、無機圧電材料を用いた圧電素子に比べて劣化し易く、故障の原因となる場合が多い。そのため、超音波探触子の筐体の中身の全てを一括して交換すると、本来は未だ使用可能な部品をも交換することになり、コスト高を免れない。
【0007】
本発明は、故障の原因となり易い圧電素子、特に有機圧電素子を交換可能とし、低コストで故障から回復可能な超音波探触子および超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的は、下記に記載する発明により達成される。
【0009】
1.被検体内に第1超音波信号を送信する複数の送信用圧電素子と、
前記第1超音波信号が前記被検体内において反射されて生成された第2超音波信号を受信して電気信号に変換し、有機圧電材料で構成される複数の受信用圧電素子と、
前記電気信号を外部へ出力する出力手段と、
該複数の受信用圧電素子と前記被検体との間に配置される音響レンズと、を備え、
少なくとも前記音響レンズと、前記複数の受信用圧電素子とが一体となってユニット化され、該ユニットが交換可能に構成されていることを特徴とする超音波探触子。
【0010】
2.前記有機圧電材料は、フッ化ビニリデンの重合体、または、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンの共重合体であることを特徴とする前記1に記載の超音波探触子。
【0011】
3.前記複数の送信用圧電素子は無機圧電素子で構成されていることを特徴とする前記1または2に記載の超音波探触子。
【0012】
4.前記複数の受信用圧電素子は、前記複数の送信用圧電素子が前記被検体に前記第1超音波信号を送信する方向に、前記複数の送信用圧電素子上に積層されていることを特徴とする前記1から3の何れか1項に記載の超音波探触子。
【0013】
5.前記1から4の何れか1項に記載の超音波探触子と、
前記超音波探触子が出力する電気信号に含まれ、前記第1超音波信号の少なくとも基本周波数、または高調波周波数に相当する周波数を有する電気信号から、前記被検体内の超音波画像を生成する画像処理部と、
前記超音波画像を表示する表示部と、
前記受信用圧電素子の性能を計測するために超音波信号を送信する計測用圧電素子と、
前記ユニットの交換時期を使用者に知らせる通知を実施する通知手段と、
少なくとも前記通知手段と前記計測用圧電素子とを制御する制御手段を有し、
前記制御手段は、前記性能が所定基準以下に劣化した場合に、前記通知を実施することを特徴とする超音波診断装置。
【0014】
6.前記計測用圧電素子は、前記複数の送信用圧電素子の中の少なくとも一つの送信用圧電素子であることを特徴とする前記5に記載の超音波診断装置。
【0015】
7.前記所定基準は、前記受信用圧電素子が変換した電気信号が、所定値以上であることを特徴とする前記5または6に記載の超音波診断装置。
【0016】
8.前記1から4の何れか1項に記載の超音波探触子と、
前記超音波探触子が出力する電気信号に含まれ、前記第1超音波信号の少なくとも基本周波数、または高調波周波数に相当する周波数を有する電気信号から、前記被検体内の超音波画像を生成する画像処理部と、
前記超音波画像を表示する表示部と、
前記受信用圧電素子若しくは前記送信用圧電素子の使用時間を累積した累積使用時間を計測するカウンタと、
前記ユニットの交換時期を使用者に知らせる通知を実施する通知手段と、
少なくとも前記通知手段と前記カウンタとを制御する制御手段を有し、
前記制御手段は、前記累積使用時間が所定時間を経過した場合に、前記通知を実施することを特徴とする超音波診断装置。
【発明の効果】
【0017】
故障の原因となり易い圧電素子、特に有機圧電素子のみを交換できるようにし、低コストで故障から回復可能な超音波探触子および超音波診断装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態における超音波診断装置S外観構成を示す図である。
【図2】実施形態における超音波診断装置Sの電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態における超音波診断装置Sにおける超音波探触子2の構成を示す図である。
【図4】実施形態における超音波探触子2の部品構成を、無機圧電素子を有する第1圧電部221と、有機圧電素子を有する第2圧電部223に分離した状態の概要図である。
【図5】実施形態における超音波探触子2の部品構成を、第1圧電部221と、第2圧電部223とが離れるように分離し、斜めから見た概要斜視図である。
【図6】実施形態における超音波探触子2の筐体の斜視図である。
【図7】ユニット71を分離した状態の超音波探触子2の概要斜視図である。
【図8】実施形態におけるユニット71の破断斜視図である。
【図9】実施形態における信号線34とソケット73の嵌め込み方法を表す模式図である。
【図10】実施形態における超音波探触子2の部品構成の斜視図である。
【図11】実施形態における超音波探触子筐体本体112から蓋装部111を分離可能な構成とした超音波探触子2において、蓋装部111が分離された状態を示す概要図である。
【図12】実施形態における有機圧電素子21の累積使用時間をカウントするフローチャート図である。
【図13】実施形態における有機圧電素子21の性能を電気信号への変換能力で計測するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態を図面により説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に限られるものではない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0020】
図1は、実施形態における超音波診断装置の外観構成を示す図である。図2は、実施形態における超音波診断装置の電気的な構成を示すブロック図である。図3は、実施形態の超音波診断装置における超音波探触子の部品構成を示す図である。
【0021】
超音波診断装置Sは、図1および図2に示すように、図略の生体等の被検体Hに対して超音波(以後、第1超音波信号とも称す)を送信すると共に、被検体Hで反射した超音波の反射波(以後、第2超音波信号とも称す)を受信する超音波探触子2と、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2へケーブル3を介して電気信号の送信信号を送信することによって超音波探触子2に被検体Hに対して第1超音波信号を送信させると共に、超音波探触子2で受信された被検体H内からの第2超音波信号に応じて超音波探触子2で生成された電気信号の受信信号に基づいて被検体H内の内部状態を超音波画像として画像化する超音波診断装置本体1とを備えて構成される。
【0022】
超音波診断装置本体1は、例えば、図2に示すように、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、信号処理部14と、画像処理部15と、表示部16と、制御部17と、通知灯駆動部18、記憶部20とを備えて構成されている。
【0023】
操作入力部11は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体Hの個人情報等のデータを入力するものであり、複数の入力スイッチを備えた操作パネルやキーボード等である。
【0024】
送信部12は、制御部17の制御に従って、超音波探触子2へケーブル3を介して電気信号の送信信号を供給して超音波探触子2に第1超音波信号を発生させる回路である。送信部12は、例えば、高電圧のパルスを生成する高圧パルス発生器等を備えて構成される。受信部13は、制御部17の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号の受信信号を受信する回路であり、この受信信号を信号処理部14へ出力する。受信部13は、例えば、受信信号を予め設定された所定の増幅率で増幅する増幅器、および、この増幅器で増幅された受信信号をアナログ信号からディジタル信号へ変換するアナログ−ディジタル変換器等を備えて構成される。
【0025】
信号処理部14は、制御部17の制御に従って、所定の信号を処理する回路であり、その信号処理した反射受信信号を画像処理部15へ出力する。反射受信信号は、第2超音波信号を受信することによって生成された信号である。
【0026】
画像処理部15は、制御部17の制御に従って、信号処理部14で信号処理された反射受信信号に基づいて例えばハーモニックイメージング技術等を用いて被検体H内の内部状態の超音波画像を生成する回路である。第2超音波信号に含まれる高調波周波数成分を受信してハーモニックイメージング技術を用いれば、基本周波数成分を用いて生成した超音波画像よりも高精細な超音波画像を得ることができる。本実施形態では、高調波周波数成分または基本周波数成分のどちらを採用してもよい。高調波周波数成分を用いる場合には3次以上の高調波を用いることで、より高精細な超音波画像を生成することができる。
【0027】
表示部16は、制御部17の制御に従って、画像処理部15で生成された被検体H内の内部状態の画像を表示する装置である。表示部16は、例えば、CRTディスプレイ、LCD、ELディスプレイおよびプラズマディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。
【0028】
通知灯駆動部18は、後述するように、第2超音波信号を受信する受信用圧電素子の寿命が到来した際に、使用者に通知する通知灯19を駆動する機能を有する。
【0029】
記憶部20は、制御部17で実施される制御の手順に関するプログラム、定数、画像処理部15で得られた結果等を記憶させる。
【0030】
制御部17は、例えば、マイクロプロセッサ、記憶素子およびその周辺回路等を備えて構成され、これら操作入力部11、送信部12、受信部13、信号処理部14、画像処理部15、表示部16、通知灯駆動部18および記憶部20を当該機能に応じてそれぞれ制御することによって超音波診断装置Sの全体制御を行う回路である。
【0031】
超音波探触子2は、通知灯19、入出力端子4を備える。通知灯19は、第2超音波信号を受信する受信用圧電素子の寿命が到来する前に、発光することで使用者に受信用圧電素子の寿命の到来が近づきつつあることを知らせ、受信用圧電素子の交換を促す。
【0032】
入出力端子4は、後述するように圧電部22が第2超音波信号を変換した電気信号を外部に出力する出力手段である。本実施形態では、送信部12からの信号を超音波探触子2に伝える入力手段としての機能を併せ持つ。入出力端子4は、ケーブル3の一端と着脱可能になるように構成されている。
【0033】
超音波探触子2の部品構造は、通知灯19の他に、図3に示すように、音響制動部材26と、音響整合層31と、圧電部22と、音響整合層23と、音響レンズ24とを備えて構成される。
【0034】
音響制動部材26は、超音波を吸収する材料から構成された平板状の部材であり、圧電部22から音響制動部材26方向へ放射される超音波を吸収するものである。
【0035】
圧電部22は、圧電材料を備えて成り、圧電現象を利用することによって電気信号と超音波信号との間で相互に信号を変換するものである。圧電部22は、超音波診断装置本体1の送信部12からケーブル3を介して入力された送信の電気信号を第1超音波信号へ変換してこの第1超音波信号を送信すると共に、受信した第2超音波信号を電気信号へ変換してこの電気信号(受信信号)をケーブル3を介して超音波診断装置本体1の受信部13へ出力する。超音波探触子2が被検体Hに当接されることによって圧電部22で生成された第1超音波信号が被検体H内へ送信され、被検体H内からの第2超音波信号が圧電部22で受信される。
【0036】
圧電部22は、例えば、本実施形態では、圧電材料を備えて成り、圧電現象を利用することによって電気信号と超音波信号との間で相互に信号を変換することができる第1および第2圧電部221、223を備え、第1および第2圧電部221、223は、互いに積層されている。
【0037】
本実施形態では、第1および第2圧電部221、223は、中間層222を介して互いに積層されている。この中間層222は、第1圧電部221と第2圧電部223とを積層するための部材であり、第1圧電部221と第2圧電部223との音響インピーダンスを整合させるものである。
【0038】
このように圧電部22が2層の第1および第2圧電部221、223を備える。第1圧電部221は第1超音波信号を送信する複数の送信用圧電素子からなる。第2圧電部223は第2超音波信号を受信する複数の受信用圧電素子からなる。
【0039】
このため、第1圧電部221を送信用により適したものとすることができると共に、第2圧電部223を受信用により適したものとすることができる。従って、第1および第2圧電部221、223がそれぞれ第1超音波信号の送信用圧電素子、および第2超音波信号の受信用圧電素子として最適化が可能となり、より高精度な画像を得ることが可能となる。さらに、第1および第2圧電部221、223が積層されているので、小型化が可能となる。
【0040】
第1圧電部221は、例えば複数の無機圧電素子を備えた無機圧電素子アレイを有する。第2圧電部223は、例えば複数の有機圧電素子を備えた有機圧電素子アレイを有する。
【0041】
無機圧電素子アレイは、複数の無機圧電素子30と、無機圧電素子30同士の隙間に音響分離材を充填して作製される音響分離部32と、無機圧電素子30上に積層された共通接地電極25とを有す。
【0042】
音響整合層31は、音響制動部材26と無機圧電素子30の各々の音響インピーダンスの中間の音響インピーダンスを有し、音響制動部材26と無機圧電素子30の音響インピーダンスの整合を図る。
【0043】
各無機圧電素子30は、無機圧電材料から構成される圧電素子101における互いに対向する両面にそれぞれ電極102、103を備えて構成される。複数の無機圧電素子30は、互いに所定の間隔を空けて平面視にて1次元状(または2次元状)に配列され、音響制動部材26上に配置されている。
【0044】
複数の無機圧電素子30は、超音波を送信するように構成されている。より具体的には、複数の無機圧電素子30には、送信部12からケーブル3と図示しない信号線33を介して電気信号が入力される。電気信号は、無機圧電素子30の電極102と電極103との間に入力される。複数の無機圧電素子30は、この電気信号を超音波信号に変換することによって第1超音波信号を送信する。
【0045】
音響分離部32は、無機圧電素子30の音響インピーダンスに比して値が大きく異なる低音響インピーダンス樹脂から構成され、音響インピーダンスが大きく異なることにより、音響分離材として働き、これら複数の無機圧電素子30の相互干渉を低減する機能を有する。音響分離部32によって各無機圧電素子30間におけるクロストークの低減が可能となる。
【0046】
共通接地電極25は、導電性の材料から構成され、図略の配線によって接地されており、そして、複数の無機圧電素子30上にまたがって直線状に積層されることによってこれら無機圧電素子30における各電極103を電気的に接地している。
【0047】
音響整合層23は、第2圧電部223の音響インピーダンスと音響レンズ24の音響インピーダンスとの整合をとる部材である。
【0048】
有機圧電素子21は、所定の厚さを持った平板状の有機圧電材料から成る圧電素子105と、圧電素子105の一方主面に形成された互いに分離した複数の電極106と、圧電素子105の他方主面に略全面に亘って一様に形成された電極107とを備えて構成されている。圧電素子105は一つのシート状の圧電素子である。
【0049】
複数の電極106が圧電素子105の一方主面に形成されることによって、有機圧電素子アレイ4は、1個の電極107と圧電素子105と電極106とから成る有機圧電素子21を2次元状に備えおり、各圧電素子が個別に動作する。
【0050】
有機圧電素子アレイ4における複数の有機圧電素子21は、個別に機能させるために無機圧電素子22のように個々に分離する必要がなく、一体的なシート状で構成することが可能である。
【0051】
図3では、21で示される部分のように、電極107と圧電素子105と電極106とで形成される部分を一つの各々有機圧電素子、すなわち有機圧電素子21とみなすことができる。
【0052】
無機圧電素子の厚さは、例えば、送信すべき超音波の周波数や無機圧電材料の種類等によって適宜に設定される。無機圧電材料は、例えば、いわゆるPZT、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、ニオブ酸タンタル酸カリウム(K(Ta,Nb)O)、チタン酸バリウム(BaTiO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)およびチタン酸ストロンチウム(SrTiO)等である。本実施形態では、このように送信パワーを大きくすることが可能な無機圧電素子が第1圧電部221に用いられている。
【0053】
そして、本実施形態における有機圧電素子の厚さは、例えば、受信すべき超音波の周波数や有機圧電材料の種類等によって適宜に設定されるが、例えば、中心周波数8MHzの超音波を受信する場合では、この有機圧電素子の厚さは、約50μmである。
【0054】
有機圧電材料には、例えば、フッ化ビニリデンの重合体や、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンの共重合体を用いることができる。フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンの共重合体の場合、共重合比によって厚み方向の電気機械結合定数(圧電効果)が変化するので、例えば、前者の共重合比が60〜99モル%が好ましいが、無機圧電素子と有機圧電素子を重ねる時に使用する有機結合剤の使用方法にもよるので、その最適値は変化する。最も好ましい前者の共重合比の範囲は85〜99モル%である。フッ化ビニリデンを85〜99モル%にして、パーフルオロアルキルビニルエーテル、パーフルオロアルコキシエチレン、パーフルオロヘキサエチレン等を1〜15モル%にしたポリマーは、送信用無機圧電素子と受信用有機圧電素子との組み合わせにおいて、送信における基本周波波を抑制して、高調波周波数成分(例えば3次高調波周波数成分)の受信の感度を高めることができる。
【0055】
フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンの共重合体は、薄膜化、大面積化等の加工性に比較的優れ、任意の形状、形態の物が作ることができ、弾性率が低い、誘電率が低い等の特徴を持つため、超音波信号を受信する圧電素子としての使用に際しては、高感度な検出を可能とする特徴を持っている。また、これらの有機圧電材料は、高周波特性、広帯域特性を必要とするハーモニックイメージング技術における圧電材料として適している。
【0056】
この他、例えば、ポリシアノビニリデン、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)のようなジイソシアネート化合物と4,4′−ジアミノジフェニルメタン(MDA)のようなジアミン化合物よりつくるウレイン基から構成されるポリウレア樹脂等の有機圧電材料も好適である。
【0057】
また、上述したように本実施形態では、圧電部22の第1圧電部221は、超音波診断装置本体1の送信部12からケーブル3を介して電気信号が入力され、この電気信号を第1超音波信号へ変換し、この変換した第1超音波信号を中間層222、第2圧電部223、音響整合層23および音響レンズ24を介して被検体Hへ送信する。そして、圧電部22の第2圧電部223は、第2超音波信号が音響レンズ24および音響整合層23を介して被検体Hから受信され、この受信された第2超音波信号を電気信号へ変換し、この変換した電気信号を受信信号としてケーブル3を介して超音波診断装置本体1の受信部13へ出力する。本実施形態では、上述したように第1圧電部221が無機圧電素子であり、送信パワーを比較的簡単な構造で大きくすることが可能となるため、このような圧電部22を備えた超音波探触子2は、高調波の反射波を得るために比較的大きなパワーで基本波の第1超音波信号を送信することが必要なハーモニックイメージング技術に好適であり、より高精度な超音波画像の提供が可能となる。そして、本実施形態では、上述したように第2圧電部223が有機圧電素子であり、周波数帯域を比較的簡単な構造で広帯域にすることが可能となるため、このような圧電部22を備えた超音波探触子2は、高調波の第2超音波信号を受信することが必要なハーモニックイメージング技術に好適であり、より高精度な超音波画像の提供が可能となる。
【0058】
そして、本実施形態では、圧電部22における第1および第2圧電部221、223は、第1圧電部221が被検体Hの方向へ第1超音波信号を送信する方向に、第2圧電部223が第1圧電部221上に積層されている。より具体的には、第1圧電部221上に中間層222を介して第2圧電部223が積層されている。このように、第1圧電部221上に第2圧電部223が積層されて一体化することで、小型の超音波探触子2を構成することができる。
【0059】
このような、超音波診断装置Sにおいては、経年変化等により、超音波探触子2が故障する場合がある。超音波探触子の故障の原因は、内部に備えられた圧電素子の故障によるものが殆どである。特に、有機圧電材料を用いた圧電素子は、無機圧電材料を用いた圧電素子に比べて、劣化により、性能が許容レベルを示す所定基準以下になり易く、故障の原因となる場合が多い。
【0060】
そこで、本実施形態では、故障の原因となり易い圧電素子、特に有機圧電素子を交換できるようにし、低コストで故障から回復可能な超音波診断装置を提供する。
【0061】
故障は機能劣化により発生するので、性能が所定基準以下に劣化したと判断される時に有機圧電素子を交換する。
【0062】
最初に有機圧電素子が交換可能な超音波探触子2の部品構成について説明する。
【0063】
図4は、超音波探触子2の部品構成を、無機圧電素子を有する第1圧電部221と、有機圧電素子を有する第2圧電部223に分離した状態の概要図である。
【0064】
超音波探触子2の部品構成は、上記のように、音響制動部材26と、音響整合層31と、圧電部22と、音響整合層23と、音響レンズ24とを備えて構成される。圧電部22における第2圧電部223が有機圧電素子を有し、第1圧電部221が無機圧電素子を有す。使用者は、有機圧電素子を有する第2圧電部223を、図4に示すように第1圧電部221から切り離して交換する。図4では、第2圧電部223と第1圧電部221との間にある中間層222が第2圧電部223側に備えられるように示したが、第1第2圧電部223、第2圧電部223のどちらに備えられるようにしてもよい。また、同じ音響インピーダンスの中間層222を二つ設けて、第1圧電部221、第2圧電部223の各々に備えられるように分離してもよい。
【0065】
図5は、超音波探触子2の部品構成を、第1圧電部221と、第2圧電部223とが離れるように分離し、斜めから見た概要斜視図である。本超音波探触子2の部品構成においては、圧電素子が1次元に配列された圧電素子アレイを例に説明するが、2次元に配列された圧電素子アレイであってもよい。
【0066】
無機圧電素子30における電極103には外部から電圧を印加するための信号線33が接続されている。信号線33は、無機圧電素子30の各々に外部からの信号を伝達する導線の集合体である。
【0067】
有機圧電素子21における電極106には外部から電圧を印加するための信号線34が接続されている。信号線34は、有機圧電素子21の各々に外部からの信号を伝達する導線の集合体である。
【0068】
次に超音波探触子2の筐体について説明する。図6は超音波探触子2の筐体の斜視図である。超音波探触子2の上部には音響レンズ24の上面が露出しており、超音波探触子2を被検体Hに当接すると音響レンズ24の上面が被検体Hに接するようになっており、第1超音波信号が空気を介さずに被検体H内に伝播する。超音波探触子2には後述するように、有機圧電素子21の性能が所定基準以下に劣化したことを使用者に通知するためにLED(不図示)が備えられ、LED窓61を通してLEDの発光が使用者に目視できるようになっている。
【0069】
超音波探触子2において、前述のように、無機圧電素子を有する第1圧電部221と、有機圧電素子を有する第2圧電部223に分離可能に構成するには、例えば、図7に示すように、超音波探触子2を超音波探触子筐体本体72と交換部であるユニット71とに分離できるように構成する。図7は、ユニット71を分離した状態の超音波探触子2の概要斜視図である。超音波探触子筐体本体72とユニット71との取り外しは、使用者が簡単にできるように、図示しないネジ穴を超音波探触子筐体本体72とユニット71の接触部分に空け、ユニット71側から図示しないネジを締めることで固定する機構など、公知の固定機構を採用できる。また、超音波探触子筐体本体72とユニット71の接触面にOリング用の溝74を形成し、Oリングを嵌め込むことで、超音波探触子筐体本体72とユニット71とが密着性よく固定でき、防水性能も確保することができる。ユニット71側には有機圧電素子を有する第2圧電部223が備えられている。
【0070】
図8は、ユニット71の破断斜視図である。ユニット71の中には前述のように、第2圧電部223等が備えられており、図示しない機構を用いて、ユニット71の筐体と固定されている。ユニット71を超音波探触子筐体本体72に装荷し固定することで、分離されていた無機圧電素子を有する第1圧電部221と、有機圧電素子を有する第2圧電部223とが負荷なく接触するように設計する。ユニット71を超音波探触子筐体本体72に装荷する際には、ユニット71にある第2圧電部223に備えられた信号線34を、超音波探触子筐体本体72側に設けたソケット73に嵌め込む。こうすることで、被検体Hからの反射してきた第2超音波信号を、第2圧電部223における有機圧電素子21の各々が受信して電気信号に変換し、ケーブル3を介して超音波診断装置本体1に備えられた受信部13へ伝達される。
【0071】
信号線34をソケット73に嵌め込む概要を、図9を用いて説明する。図9は、信号線34とソケット73の嵌め込み方法を表す模式図である。図9(a)に示すように、ソケット73は雌の端子であり、信号線34は雄の端子である。信号線34は、各有機圧電素子21に接続する導線91と、当該導線を束ねる筐体からなる。ソケット73には、各有機圧電素子21と導通する導通部92が並列されている。図9(b)に示すように、ソケット73から離れた位置にある信号線34を、図(c)、(d)に示すように嵌め込むと、各導線91と、導通部92とが接触し導通するようになっている。
【0072】
なお、第1圧電部221における無機圧電素子30へは、超音波診断装置本体1に備えられた送信部12からケーブル3と信号線33を介して電気信号が供給される。
【0073】
このように、超音波探触子2において、無機圧電素子を有する第1圧電部221と、有機圧電素子21を有する第2圧電部223に分離できるよう構成する。
【0074】
第1圧電部221と第2圧電部223との間には中間層222が存在するので、有機圧電素子21を交換する際には、中間層222を分離することになる。
【0075】
ところで、無機圧電素子30は有機圧電素子21より、性能が所定基準以下に劣化して超音波診断の使用に耐えなくなる時間、すなわち寿命が長いとは言え、無機圧電素子30にも寿命が存在する。そのため、無機圧電素子30を交換したいという要求がある。無機圧電素子30は有機圧電素子21の筐体本体側に存在するので、無機圧電素子30のみを交換するより、有機圧電素子21と供に交換することが構造として簡単であり、コストの面でも望ましい。そこで、上記のように有機圧電素子21を無機圧電素子30と分離して交換する場合以外にも、超音波探触子2自体を一つのユニットと看做して超音波探触子筐体本体から交換可能としてもよい。このように、有機圧電素子21と供にする無機圧電素子30の交換について以下に説明する。図10は超音波探触子2の部品構成の斜視図である。この超音波探触子2の部品構成全体を一体として交換する。
【0076】
図11は超音波探触子筐体本体112から蓋装部111を分離可能な構成とした超音波探触子2において、蓋装部111が分離された状態を示す概要図である。
【0077】
超音波探触子2は超音波探触子筐体本体112と蓋装部111とからなる。超音波探触子2の部品構成は超音波探触子筐体本体112側に据え付けられるよう、超音波探触子筐体本体112と超音波探触子2に図示しない着脱機構が搭載されている。超音波探触子2における信号線33、34は各々ソケット73、113に嵌め込む。
【0078】
超音波探触子筐体本体112と蓋装部111との取り外しや固定機構は図7で説明した取り外しや固定機構と同様である。また、超音波探触子筐体本体112と蓋装部111の接触面にOリング用の溝114を形成し、Oリングを嵌め込むことで、防水性能等を確保することも同様である。
【0079】
以上のような交換可能なユニットは、上記のように、有機圧電素子21や無機圧電素子30が故障した場合に交換される。特に有機圧電素子21は、無機圧電素子30に比べて性能の劣化の進み具合が早い。また、有機圧電素子21の性能が所定基準以下に劣化したこと、または、所定基準以下に劣化しそうな状態であることを使用者が知ることができれば、超音波診断装置Sに故障が発生することを未然に防ぐことができる。そこで、本実施形態では、有機圧電素子1の性能が所定基準以下に劣化したことを使用者に通知するフロー(以下、通知フローとも称する)を採用する。具体的には、有機圧電素子21の性能をオンデマンドで計測して判断する方法を採用する(以下、通知フロー1とも称す)。
【0080】
また、実際に有機圧電素子21の性能を計測しなくとも、予め、有機圧電素子21の性能が所定時間を下回る累積使用時間を求めておき、超音波診断において有機圧電素子21の使用時間をカウントして性能が所定基準を下回る累積使用時間に到達したか否かを判断するという方法でもよい(以下、通知フロー2とも称す)。ここで、累積使用時間とは、受信用圧電素子としての有機圧電素子21の使用時間である。本通知フロー2は送信用圧電素子としての無機圧電素子30にも適用できる。
【0081】
最初に、通知フロー1について説明する。通知フロー1は、所定の計測用圧電素子に所定の超音波信号を送信させ、有機圧電素子21が変換した電気信号をオンデマンドで計測し、有機圧電素子21の性能、すなわち電気信号(電圧値)に変換する能力が、所定基準以下に劣化しているか判断するというものである。
【0082】
所定の超音波信号を発生させる圧電素子である計測用圧電素子は、別途設けてもよいし、既に超音波探触子2に備えられた圧電素子を用いてもよい。例えば、無機圧電素子30を用いても良いし、有機圧電素子21の一部の圧電素子を用いても良い。例として、無機圧電素子30を用いて超音波信号を送信し、送信された超音波信号を直接に有機圧電素子21で受信して有機圧電素子21の性能を計測するフローについて図13を用いて説明する。図13は、有機圧電素子21の性能を電気信号への変換能力で計測するフローチャート図である。
【0083】
以下のフローは超音波診断を実施する直前に行っても良いし、超音波診断を実施している間に行っても良い。例えば、制御部17が本フローを所定の時期に自動的に行うように予め制御部17にプログラムしておいてもよい。また、例えば、使用者が超音波診断を実施するために超音波診断装置Sの電源を投入した後に、制御部17が本フローを行うようにプログラムしておいてもよい。以下のフローでは、最初に、使用者が超音波診断を実施するために超音波診断装置Sの電源を投入した後に、実施されることとする。最初に使用者は超音波診断装置Sに設けられた電源スイッチをONにし、電源を投入する(ステップS1)。すると制御部17は所定の時間経過後に、無機圧電素子30に所定の振幅値を有する超音波信号を送信させる(ステップS2)。この時、超音波探触子2は被検体Hに当接されていないことが望ましい。被検体Hに当接されていると、被検体Hから反射してくる超音波信号を受信することになり、好ましくない。表示部16に、超音波探触子2を被検体Hに当接させないような通知を表示させてもよい。
【0084】
無機圧電素子30が送信した超音波信号は被検体を介さずに有機圧電素子21で直接受信される(ステップS3)。有機圧電素子21は複数用意されており、その中の少なくとも一つの有機圧電素子21を用いて、無機圧電素子30が送信した超音波信号を受信させる。選択した有機圧電素子21は、無機圧電素子30が送信した超音波信号を電気信号、具体的には電圧に変換する。有機圧電素子21の性能は、変換された電圧値が所定の電圧値以上であるかどうかで判断する。従って、変換された電気信号の電圧値が所定の電圧値以上であれば(ステップS4のYes)、制御部17は有機圧電素子21を交換する必要はないと判断し、フローは終了する。変換された電気信号の電圧値が所定の電圧値より小さければ(ステップS4のNo)、制御部17は有機圧電素子21を交換する必要があると判断し、制御部17は通知灯駆動部18に命じて超音波探触子2に備え付けた通知灯19を点灯させて使用者に有機圧電素子21の交換時期であることを通知して(ステップS5)、フローを終了する。
【0085】
各々の有機圧電素子21の性能が劣化する早さに差は少ないので、少なくとも一つの有機圧電素子21の性能を計測することで、全ての有機圧電素子21の性能を凡そ計測できる。計測する有機圧電素子21の数を増やして各々が変換した電気信号を計測し、例えば、その平均値を使って、所定の電圧値と比較してやれば、有機圧電素子21の性能を、より実際に即して判断できるので望ましい。
【0086】
理想的には、全ての有機圧電素子21が変換する電気信号を基に、有機圧電素子21の性能を計測することが望ましい。アレイ状に並べられた無機圧電素子30が送信する超音波信号は、アレイの中程では、アレイの周辺部より超音波信号の振幅値が大きいと予想される。従って、無機圧電素子アレイに積層された有機圧電素子アレイにおいては、有機圧電素子アレイの中程のほうが、周辺部より大きな振幅値の超音波信号を受信する。
【0087】
そこで、全ての有機圧電素子21が変換する電気信号を計測する場合には、有機圧電素子アレイの中程と周辺部等の位置の違いに即して、各々の有機圧電素子21の性能を判断できるよう、有機圧電素子アレイの中程の有機圧電素子21が変換した電気信号を比較する所定の電圧値は高めに設定することが望ましい。
【0088】
以上のように、本フローでは、無機圧電素子30が計測用圧電素子に相当し、有機圧電素子21の性能を計測するための超音波信号を送信し、有機圧電素子21が変換した電気信号から有機圧電素子21の性能を計測することができる。
【0089】
なお、無機圧電素子30を用いて超音波信号を送信し、送信された超音波信号を直接に有機圧電素子21で受信するのではなく、送信された超音波信号が被検体の基準物(例えば、KYOTO KAGAKU社製、商品名乳房超音波精度管理ファントム)から反射して戻ってきた超音波信号を受信して、有機圧電素子21の性能を計測してもよい。
【0090】
次に、通知フロー2について図12を用いて説明する。図12は、有機圧電素子21の性能を累積使用時間で計測するフローチャート図である。
【0091】
まず、使用者は超音波診断装置Sにおける操作入力部11において被検体Hに対する超音波診断を実施するため、第1超音波信号の送信指示を入力する。使用者の入力指示を受け、制御部17は送信部12に命じて第1超音波信号の送信が開始される(ステップS11)。第1超音波信号の送信と同時に、制御部17は、例えば制御部17内に設けられている図示しないクロックカウンタを用いて送信時間をカウントする(ステップS12)。使用者の超音波診断が終了すると、使用者は、同じく操作入力部11において、第1超音波信号の送信を終了する操作を実施する(ステップS13)。制御部17は送信部12に命じて第1超音波信号の送信を終了させ、クロックカウンタを用いた送信時間のカウントを終了する(ステップS14)。制御部17が送信部12に第1超音波信号を送信させている時間は、第1超音波信号の送信が終了する毎にそれまでに第1超音波信号の累積使用時間に累積加算し、記録部20に記録する(ステップS15)。
【0092】
制御部17は、第1超音波信号の累積使用時間と、記録部20に予め記録させておいた有機圧電素子21を交換すべき規定交換時間を記録部20からアクセスして取り出す。そして、第1超音波信号の累積使用時間が規定交換時間以上であると判断した場合には(ステップS16のYes)、制御部17は通知灯駆動部18に命じて超音波探触子2に備え付けた通知灯19を点灯させて使用者に有機圧電素子21の交換時期であることを通知して(ステップS17)、フローを終了する。
【0093】
第1超音波信号の累積使用時間が規定交換時間より小さいと判断した場合には(ステップS16のNo)、継続して有機圧電素子21は使用可能であるのでフローは終了する。
【0094】
規定交換時間は、有機圧電素子21の性能が所定基準以下に劣化する時間であり、予め実験等により確認しておく。規定交換時間は、有機圧電素子21の性能が所定基準に達する少し前の時間に設定してもよい。有機圧電素子21の性能が所定基準に達して故障が発生する前に、余裕のある交換時間を設定することができる。
【0095】
また、第1超音波信号の累積使用時間と規定交換時間との比較は、第1超音波信号が送信されている間に行っても良い。より現実的に有機圧電素子21の交換時期を使用者に通知することができる。
【0096】
以上のように本実施形態に係る超音波診断装置においては、受信用圧電素子の性能を計測するために超音波信号を送信する計測用圧電素子、または、受信用圧電素子の累積使用時間を計測するカウンタと、ユニットの交換時期を使用者に知らせる通知を実施する通知手段と、制御手段を有し、性能が所定基準に以下に劣化した場合、または累積使用時間が所定時間を経過した時に、使用者に通知を実施することで、使用者に受信用圧電素子の寿命の到来が近づきつつあることを知らせ、受信用圧電素子の交換を促すことができ、超音波診断中に寿命が到来することで診断に支障を来すことを未然に防止することができる。故障の原因となり易い圧電素子、特に有機圧電素子のみを交換できるようにし、低コストで故障から回復可能な超音波探触子および超音波診断装置を提供できる。
【0097】
また、本実施形態に係る超音波診断装置においては、計測用圧電素子は、複数の送信用圧電素子の中の少なくとも一つの送信用圧電素子が兼用されて構成され、送信用圧電素子に所定出力値の超音波信号を送信させ、受信用圧電素子が超音波信号を直接受信して変換した電気信号から、ユニットの交換時期を所定基準に基づいて判断するので、有機圧電素子21の性能を、オンデマンドで計測でき、少なくとも一つの有機圧電素子21の性能を計測することで、全ての有機圧電素子21の性能を凡そ計測できる。
【0098】
また、本実施の形態によれば、有機圧電材料には、フッ化ビニリデンの重合体や、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンの共重合体を用いることで、第2超音波信号の高感度な検出が可能となり、より鮮明な超音波画像を得ることができる。
【0099】
また、本実施の形態によれば、無機圧電素子を送信用圧電素子に用いることで、送信パワーを大きくすることが可能であり、大きな第2超音波信号を得ることができるので、より高精度な超音波画像の提供が可能となる。
【0100】
また、本実施の形態によれば、複数の受信用圧電素子は、複数の送信用圧電素子が被検体に第1超音波信号を送信する方向に、複数の送信用圧電素子上に積層されていることで、超音波探触子2を小型化することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 超音波診断装置本体
2 超音波探触子
3 ケーブル
11 操作入力部
12 送信部
13 受信部
14 信号処理部
15 画像処理部
16 表示部
17 制御部
18 通知灯駆動部
19 通知灯
20 記憶部
21 有機圧電素子
22 圧電部
23 音響整合層
24 音響レンズ
25 共通接地電極
26 音響制動部材
30 無機圧電素子
31 音響整合層
32 音響分離部
33,34 信号線
61 LED窓
71 ユニット
72 超音波探触子筐体本体
73 ソケット
74 溝
103 電極
106 電極
221 第1圧電部
222 中間層
223 第2圧電部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に第1超音波信号を送信する複数の送信用圧電素子と、
前記第1超音波信号が前記被検体内において反射されて生成された第2超音波信号を受信して電気信号に変換し、有機圧電材料で構成される複数の受信用圧電素子と、
前記電気信号を外部へ出力する出力手段と、
該複数の受信用圧電素子と前記被検体との間に配置される音響レンズと、を備え、
少なくとも前記音響レンズと、前記複数の受信用圧電素子とが一体となってユニット化され、該ユニットが交換可能に構成されていることを特徴とする超音波探触子。
【請求項2】
前記有機圧電材料は、フッ化ビニリデンの重合体、または、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンの共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項3】
前記複数の送信用圧電素子は無機圧電素子で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波探触子。
【請求項4】
前記複数の受信用圧電素子は、前記複数の送信用圧電素子が前記被検体に前記第1超音波信号を送信する方向に、前記複数の送信用圧電素子上に積層されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の超音波探触子。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の超音波探触子と、
前記超音波探触子が出力する電気信号に含まれ、前記第1超音波信号の少なくとも基本周波数、または高調波周波数に相当する周波数を有する電気信号から、前記被検体内の超音波画像を生成する画像処理部と、
前記超音波画像を表示する表示部と、
前記受信用圧電素子の性能を計測するために超音波信号を送信する計測用圧電素子と、
前記ユニットの交換時期を使用者に知らせる通知を実施する通知手段と、
少なくとも前記通知手段と前記計測用圧電素子とを制御する制御手段を有し、
前記制御手段は、前記性能が所定基準以下に劣化した場合に、前記通知を実施することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
前記計測用圧電素子は、前記複数の送信用圧電素子の中の少なくとも一つの送信用圧電素子であることを特徴とする請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記所定基準は、前記受信用圧電素子が変換した電気信号が、所定値以上であることを特徴とする請求項5または6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
請求項1から4の何れか1項に記載の超音波探触子と、
前記超音波探触子が出力する電気信号に含まれ、前記第1超音波信号の少なくとも基本周波数、または高調波周波数に相当する周波数を有する電気信号から、前記被検体内の超音波画像を生成する画像処理部と、
前記超音波画像を表示する表示部と、
前記受信用圧電素子若しくは前記送信用圧電素子の使用時間を累積した累積使用時間を計測するカウンタと、
前記ユニットの交換時期を使用者に知らせる通知を実施する通知手段と、
少なくとも前記通知手段と前記カウンタとを制御する制御手段を有し、
前記制御手段は、前記累積使用時間が所定時間を経過した場合に、前記通知を実施することを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−252839(P2010−252839A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102820(P2009−102820)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】