説明

超音波探触子及び管状対象物の周長測定方法

【課題】管状対象物の管径変化に影響されず、時間軸校正、感度調整、及び温度変化に伴う表面波の速度補正が可能な超音波探触子及び管状対象物の周長測定方法を提供する。
【解決手段】超音波を発信する送信用振動子11と、超音波を受信する受信用振動子12と、送信用振動子11及び受信用振動子12をそれぞれ固定し、送信用振動子11から送信された超音波を表面波に変えて管状対象物13に伝搬する送信口14、及び管状対象物13を一周して伝搬する表面波を受信して受信用振動子12に伝搬する受信口15を底部17に備えるブロック体16とを有し、しかも、送信口14及び受信口15は、管状対象物13に対して円周方向の同一角度位置に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面波を利用して管状対象物の周長測定を行う超音波探触子及びそれを使用した管状対象物の周長測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図4(A)、(B)に示すように、管100の周長測定においては、縦波が表面波に変わる入射角度で送信用超音波探触子101の送信口102から管100の外周面に縦波を入射させ、管100を伝搬する表面波を送信口102とは異なる位置に設けた受信用超音波探触子103の受信口104から入射させて、図4(C)に示すように、送信口102から受信口104まで、即ち、送信用超音波探触子101の入射点から受信用超音波探触子103の入射点まで表面波が到達するのに要する表面波伝搬時間Tを求め、得られた表面波伝搬時間Tと表面波の速度Vを用いて管100の周長を測定している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−315722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の周長測定方法では、管100の外周面に対向させて設けられた送信口102と受信口104との間の遠回り距離は、表面波の速度Vと表面波伝搬時間Tとの積(VT)として求まるので、管100の外周面に沿った送信口102と受信口104との間の距離(送信用超音波探触子101の入射点から受信用超音波探触子103の入射点との間の入射点間距離)をLとすると、管100の周長は、VTとLの和として求まる。ここで、符号105は送信用超音波探触子101の送信用振動子、符号106は受信用超音波探触子103の受信用振動子である。このため、管100の周長測定に関して次のような問題が生じる。
【0005】
(1)距離VTを求めるための表面波伝搬時間Tを測定する測定器の時間軸の校正には、入射点間距離L、表面波の速度V、及び表面波が伝搬を開始する時間原点0の校正が必要であるという問題。
(2)測定対象物である管100の管径が変化すると、入射点間距離Lが幾何学的に変化し、入射点間距離Lの校正が難しいという問題。
(3)測定環境や管100の温度が変化すると、送信用超音波探触子101の送信用振動子105で発生した縦波を送信口102まで伝達するクサビ状の超音波媒体107と、受信口104に到達した表面波を縦波に変えて受信用超音波探触子103の送信用振動子106まで伝達するクサビ状の超音波媒体108の温度も変化し、超音波媒体107、108内の縦波の速度が変化すると共に、送信用超音波探触子101と受信用超音波探触子103の感度もそれぞれ変化し、管100の周長測定において誤差が生じるという問題。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、管状対象物の管径変化に影響されず表面波が管状対象物を一周する表面波伝搬時間の測定、感度調整、及び温度変化に伴う表面波の速度補正が可能な超音波探触子及び管状対象物の周長測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る超音波探触子は、1)超音波を発信する送信用振動子と、2)超音波を受信する受信用振動子と、3)前記送信用振動子及び前記受信用振動子をそれぞれ固定し、前記送信用振動子から送信された超音波を表面波に変えて管状対象物に伝搬する送信口、及び前記管状対象物を一周して伝搬する表面波を受信して前記受信用振動子に伝搬する受信口を底部に備えるブロック体とを有し、しかも、前記送信口及び前記受信口は、前記管状対象物に対して円周方向の同一角度位置に設けられている。
【0008】
本発明に係る超音波探触子において、前記送信口及び前記受信口は、前記管状対象部に対して軸方向にずれて、しかも重ね代部を有することが好ましい。
【0009】
本発明に係る超音波探触子において、前記重ね代部は、前記送信口又は前記受信口の5〜40%の範囲にあることが好ましい。
【0010】
前記目的に沿う本発明に係る管状対象物の管周長測定方法は、本発明に係る超音波探触子を用いた管状対象物の周長測定方法であって、
前記送信用振動子より送信され、前記重ね代部で反射して前記受信用振動子で受信されるまでの超音波伝搬時間t1と、前記送信用振動子より送信されて前記管状対象物内を表面波として伝搬し、前記重ね代部で入射して前記受信用振動子で受信されるまでの超音波伝搬時間t2とを求め、前記超音波伝搬時間t2と前記超音波伝搬時間t1の差から、表面波が前記管状対象物を一周する表面波伝搬時間を求める。
【0011】
本発明に係る管状対象物の周長測定方法において、前記超音波伝搬時間t1の変化から温度変化に伴う表面波の速度補正を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る超音波探触子においては、超音波を表面波に変えて管状対象物に伝搬する送信口及び管状対象物を一周して伝搬する表面波を受信して受信用振動子に伝搬する受信口が、管状対象物に対して円周方向の同一角度位置に設けられているので、従来のように、送信用超音波探触子の入射点から受信用超音波探触子の入射点との間の入射点間距離を測定することが不要になると共に、管状対象物の管径が変化することに伴う入射点間距離の校正も不要となり、管の周長測定が容易になる。
【0013】
本発明に係る超音波探触子において、送信口及び受信口が、管状対象部に対して軸方向にずれて、しかも重ね代部を有する場合、送信用振動子から発射され送信口で反射した超音波の一部が受信口から受信用振動子に到達することになって、受信用振動子が受信する超音波の強度を下げることができる。これによって、受信信号が飽和することなく画面上に波形全体を表示することができる。
【0014】
本発明に係る超音波探触子において、重ね代部が、送信口又は受信口の5〜40%の範囲にある場合、受信用振動子が受信する受信信号のピーク位置を容易に検出することができる。
【0015】
本発明に係る管状対象物の管周長測定方法においては、送信用振動子より送信され、重ね代部で反射して受信用振動子で受信されるまでの超音波伝搬時間t1と、送信用振動子より送信されて管状対象物内を表面波として伝搬し、重ね代部で入射して受信用振動子で受信されるまでの超音波伝搬時間t2とを求め、超音波伝搬時間t2と超音波伝搬時間t1の差から、表面波が管状対象物を一周する表面波伝搬時間を求めるので、管状対象物の管径変化に影響されずに表面波伝搬時間が直接得られる。
【0016】
本発明に係る管状対象物の周長測定方法において、超音波伝搬時間t1の変化から温度変化に伴う表面波の速度補正を行う場合、測定環境や管状対象物の温度が変化しても、管状対象物の周長を正確に測定することができ、温度変化に伴う測定誤差の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る超音波探触子の断面図、平断面図である。
【図2】同超音波探触子を使用した管状対象物の周長測定方法の説明図である。
【図3】同超音波探触子で得られた受信信号の説明図である。
【図4】(A)、(B)は、従来の管状対象物の周長測定方法の説明図、(C)は従来の管周長の測定方法で得られた受信信号の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)、(B)に示すように、本発明の一実施の形態に係る超音波探触子10は、縦波の超音波を発信する送信用振動子11と、縦波の超音波を受信する受信用振動子12と、送信用振動子11及び受信用振動子12をそれぞれ固定し、送信用振動子11から送信された縦波の超音波を表面波に変えて管状対象物の一例である鋼管13に伝搬する送信口14、及び鋼管13を一周して伝搬する表面波を受信し縦波の超音波に変えて受信用振動子12に伝搬する受信口15を底部17に備えるブロック体16とを有し、しかも、送信口14及び受信口15は、鋼管13に対して円周方向の同一角度位置に設けられている。以下、詳細に説明する。
【0019】
送信用振動子11は電気信号が加えられると厚み方向に振動して縦波の超音波を発信する、平面視して矩形状の圧電素子からなる。また、受信用振動子12は、縦波の超音波が加えられて厚み方向に振動した際に電気信号を出力する、平面視して矩形状の圧電素子からなる。そして、送信用振動子11、受信用振動子12が振動する際の周波数範囲は1〜5MHz、例えば2MHzである。
【0020】
ブロック体16は、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、又はアクリル樹脂等の音響伝達媒体から形成されている多面体(図1(A)、(B)では8面体)形状であって、超音波探触子10の使用時に鋼管13の外周面に接触する、例えば矩形状の底部17と、底部17の上方に底部17と平行に配置される天井部18とを有している。また、ブロック体16は、天井部18の前後方向両側にそれぞれ設けられ、天井部18の前側端に連接し外側に下り傾斜となって送信用振動子11が固定される送信用振動子固定部19と、上端が送信用振動子固定部19の外側端に連接し下端が底部17の前側端に連接する前側部20と、天井部18の後側端に連接し外側に下り傾斜となって受信用振動子12が固定される受信用振動子固定部21と、上端が受信用振動子固定部21の外側端に連接し下端が底部17の後側端に連接する後側部22とを有している。更に、ブロック体16は、底部17、天井部18、送信用振動子固定部19、前側部20、受信用振動子固定部21、及び後側部22の左右方向両側にそれぞれ連接して設けられた左側部23と、右側部24とを有している。
【0021】
ここで、送信口14は、送信用振動子固定部19に固定された送信用振動子11を、送信用振動子固定部19の法線方向から底部17に投影して形成される投影部分を中心部とする底部17上に存在し、受信口15は受信用振動子固定部21に固定された受信用振動子12を、受信用振動子固定部21の法線方向から底部17に投影して形成される投影部分を中心部とする底部17上に存在する。このため、送信口14の中心部と受信口15の中心部が、底部17上の前後方向の同一位置に設けられるように(底面17上で中心部同士が重なるように)、底部17の前後方向長さに対して、天井部18の前後方向長さを決めると共に、送信用振動子固定部19に固定する送信用振動子11と受信用振動子固定部21に固定する受信用振動子12は互いに前後方向にずらして配置されている。
なお、図1(B)では、送信用振動子11は送信用振動子固定部19上において左端に寄せて、受信用振動子12は受信用振動子固定部21上において右端に寄せて、それぞれ固定されている。
【0022】
以上の構成とすることによって、超音波探触子10のブロック体16の左右方向が鋼管13の軸方向に沿うようにして、ブロック体16の底部17を鋼管13の外周面に接触させると(超音波探触子10を鋼管13の外周面上に配置すると)、送信口14及び受信口15が、鋼管13に対して円周方向の同一角度位置に設けられることになる。そして、送信口14と受信口15は、鋼管13に対して軸方向にずれて配置され、しかも重ね代部25を有することになる。
【0023】
重ね代部25を有することで、送信用振動子11から発射され送信口14で反射した縦波の超音波の一部が、重ね代部25(受信口15)から受信用振動子12に到達することになって、受信用振動子12が受信する縦波の超音波波形全体を飽和させることなく表示画面上に表示することが可能になる。
ここで、重ね代部25の左右方向幅は、送信口14又は受信口15の左右方向幅に対して、5〜40%、好ましくは10〜30%の範囲にする。重ね代部25が5%未満では、重ね代部25(受信口15)に入射する表面波が少なくなって、受信用振動子12から出力される受信信号強度が過少となり、好ましくない。一方、重ね代部25が40%を超えると、重ね代部25に入射する表面波が多くなって、受信用振動子12から出力される受信信号が過大となりすぎて波形が飽和してしまい、受信信号のピーク位置を正確に検出することが困難になって好ましくない。
【0024】
なお、符号26は、送信用振動子11、受信用振動子12が固定されたブロック体16を収納するケーシング、符号27は送信用振動子11に振動駆動用の電気信号を加える入力線、符号28は受信用振動子12で発生した電気信号を取出す出力線である。そして、ブロック体16とケーシング26の間には、送信用振動子11、受信用振動子12の振動を吸収するダンピング材(図示せず)が設けられている
【0025】
ブロック体16を、例えばアクリル樹脂で形成する場合、底部17と送信用振動子固定部19のなす角度αは55〜64度の範囲とする。これによって、送信用振動子11が厚み方向に振動して発生した縦波の超音波がブロック体16内を伝搬して送信口14に達すると、縦波の超音波の鋼管13の外周面に対する入射角度はαとなって、縦波の超音波の一部は表面波となって鋼管13に伝搬する。そして、鋼管13を一周して送信口14の一部かつ受信口15の一部である重ね代部25に入射した表面波の一部は、屈折角αの縦波の超音波に変わってブロック体16内を進行して受信用振動子12に到達し受信信号に変換されて出力される。
【0026】
ここで、受信口15で表面波が変わった縦波の超音波は、屈折角αでブロック体16内に進入するため、底部17と受信用振動子固定部21のなす角度βを角度αにすると、受信口15からブロック体16内に進入した縦波の超音波の進行方向に対向させて受信用振動子12(受信用振動子12の受信面)を配置することができ、受信口15から進入した縦波の超音波を効率的に受信することができる。図1(A)、図2では、送信用振動子固定部19と底部17とのなす角度αと、受信用振動子固定部21と底部17とのなす角度βは同一角度としている。
【0027】
続いて、本発明の一実施の形態に係る超音波探触子10を用いた鋼管13の周長測定方法について説明する。
図1(A)、(B)に示すように、超音波探触子10に設けられたブロック体16の底部17に設けられた送信口14と受信口15が、鋼管13に対して軸方向にずれるようにして、ブロック体16の底部17を鋼管13の外周面に当接させる。そして、図2に示すように、入力線27から電気信号を送信用振動子11に加えて、送信用振動子11を厚み方向に振動させて縦波の超音波a(以下、単に縦波aという)を発生させ、ブロック体16内を底部17の送信口14に向けて伝搬させる。
【0028】
送信口14に入射角αの角度で縦波aが入射すると、縦波aの一部は、送信口14で反射角αで反射して反射縦波bとなるが、送信口14の一部かつ受信口15の一部である重ね代部25に入射し反射角αで反射した反射縦波bは重ね代部25(受信口15)からブロック体16内を受信用振動子12に向けて伝搬する。そして、反射縦波bが受信用振動子12に到達して受信用振動子12を厚み方向に振動させると受信用振動子12に受信信号P(電気信号)が発生し(図3参照)、受信信号Pは出力線28を介して出力される。
【0029】
また、送信口14を介して鋼管13の外表面に入射角αの角度で入射した縦波aの一部は、表面波cに変化して鋼管13を伝搬する。そして、鋼管13を一周して送信口14の一部かつ受信口15の一部である重ね代部25に到達した表面波cの一部は、屈折角αでブロック体16内に進入する屈折縦波dに変わってブロック体16内を受信用振動子12に向けて伝搬する。屈折縦波dが受信用振動子12に到達して受信用振動子12を厚み方向に振動させると、受信用振動子12に受信信号Qが発生し(図3参照)出力線28を介して外部に出力される。
なお、受信用振動子12から出力される受信信号を横軸を時間軸として表示すると、図3に示すように、縦波aの送信信号Tに対して近接した位置(超音波伝搬時間t1の位置)に反射縦波bの受信信号P、離れた位置(超音波伝搬時間t2の位置)に屈折縦波dの受信信号Qがそれぞれ現れる。
【0030】
そして、超音波伝搬時間t1は、送信用振動子11で発生した縦波aがブロック体16内を送信口14に向けて伝搬して送信口14に到達するまでの時間taと、送信口14と受信口15の重ね代部25で縦波aが反射した反射縦波bが重ね代部25からブロック体16内を受信用振動子12向けて伝搬して受信用振動子12に到達するまでの時間tbとの和となる。
一方、超音波伝搬時間t2は、送信用振動子11で発生した縦波aがブロック体16内を送信口14に向けて伝搬して送信口14に到達するまでの時間taと、送信口14を介して鋼管13の外表面に入射角αの角度で入射した縦波aの一部が表面波cに変化して伝搬を開始し、鋼管13を一周して送信口14に戻るまでの表面波伝搬時間tcと、送信口14と受信口15の重ね代部25に到達した表面波cの一部が屈折角αでブロック体16内に屈折縦波dとなって進入し重ね代部25からブロック体16内を受信用振動子12に向けて伝搬して受信用振動子12に到達するまでの時間tdの和となる。
【0031】
ここで、反射縦波bと屈折縦波dのブロック体16内での速度は等しいので、反射縦波bが重ね代部25からブロック体16内を受信用振動子12向けて伝搬して受信用振動子12に到達するまでの時間tbと屈折縦波dが重ね代部25からブロック体16内を受信用振動子12に向けて伝搬して受信用振動子12に到達するまでの時間tdは等しくなる。このため、超音波伝搬時間t2はta+tc+tbと表せ、超音波伝搬時間t2と超音波伝搬時間t1の差t2−t1を求めると、t2−t1=(ta+tc+tb)−(ta+tb)となって、t2−t1=tcとなる。
【0032】
したがって、超音波伝搬時間t2と超音波伝搬時間t1の差t2−t1が表面波cが鋼管13を1周する表面波伝搬時間tcとなり、別途求めておいた鋼管13を伝搬する表面波cの速度Vを用いて、鋼管13の周長は、Vとtcとの積として求めることができる。その結果、従来のように、送信用超音波探触子の入射点から受信用超音波探触子の入射点との間の入射点間距離を測定することが不要になると共に、管状対象物の管径が変化することに伴う入射点間距離の校正も不要となり、管の周長測定が容易になる。
【0033】
鋼管13の周長測定を行う際の測定環境の温度変化に伴って鋼管13の温度が変化したり、鋼管13自体の温度が変化すると、鋼管13を伝搬する表面波の速度Vが変化する。また、測定環境や鋼管13の温度が変化すると、鋼管13にブロック体16を接触させて使用する超音波探触子10の温度も変化して、縦波(縦波a、反射縦波b、屈折縦波d)の速度も変化する。このため、鋼管13の周長測定を行う場合、縦波及び表面波の速度変化を考慮する必要が生じる。
【0034】
本発明では、超音波伝搬時間t2と超音波伝搬時間t1の差として、表面波伝搬時間tcを直接求めることができるので、縦波の速度変化を考慮しなくてもよく、表面波伝搬時間tcに対して、縦波速度変化に伴う補正は不要になる。
【0035】
また、測定環境の温度変化に伴って鋼管13の温度が変化したり、鋼管13自体の温度が変化すると、ブロック体16内を伝搬する縦波の速度が変化して、超音波伝搬時間t1が変化する。このため、超音波探触子10の温度と、超音波伝搬時間t1の関係を予め求めておくと、超音波伝搬時間t1の変化から超音波探触子10の温度を推定することができる。ここで、超音波探触子10の温度は、ブロック体16が接触する鋼管13の温度に等しいと近似できるので、超音波伝搬時間t1の変化から鋼管13の温度が推定できる。
【0036】
そして、温度と鋼管13を伝搬する表面波の速度との関係は実験的に求めることができるので、超音波伝搬時間t1の変化から鋼管13の温度が推定できると、鋼管13を伝搬する表面波の速度を補正することができる。これにより、測定環境や鋼管13の温度が変化しても、鋼管13の周長を正確に測定することができ、温度変化に伴う測定誤差の発生を抑えることができる。
【0037】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
10:超音波探触子、11:送信用振動子、12:受信用振動子、13:鋼管、14:送信口、15:受信口、16:ブロック体、17:底部、18:天井部、19:送信用振動子固定部、20:前側部、21:受信用振動子固定部、22:後側部、23:左側部、24:右側部、25:重ね代部、26:ケーシング、27:入力線、28:出力線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)超音波を発信する送信用振動子と、2)超音波を受信する受信用振動子と、3)前記送信用振動子及び前記受信用振動子をそれぞれ固定し、前記送信用振動子から送信された超音波を表面波に変えて管状対象物に伝搬する送信口、及び前記管状対象物を一周して伝搬する表面波を受信して前記受信用振動子に伝搬する受信口を底部に備えるブロック体とを有し、しかも、前記送信口及び前記受信口は、前記管状対象物に対して円周方向の同一角度位置に設けられていることを特徴とする超音波探触子。
【請求項2】
請求項1記載の超音波探触子において、前記送信口及び前記受信口は、前記管状対象部に対して軸方向にずれて、しかも重ね代部を有することを特徴とする超音波探触子。
【請求項3】
請求項2記載の超音波探触子において、前記重ね代部は、前記送信口又は前記受信口の5〜40%の範囲にあることを特徴とする超音波探触子。
【請求項4】
請求項2又は3記載の超音波探触子を用いた管状対象物の周長測定方法であって、
前記送信用振動子より送信され、前記重ね代部で反射して前記受信用振動子で受信されるまでの超音波伝搬時間t1と、前記送信用振動子より送信されて前記管状対象物内を表面波として伝搬し、前記重ね代部で入射して前記受信用振動子で受信されるまでの超音波伝搬時間t2とを求め、前記超音波伝搬時間t2と前記超音波伝搬時間t1の差から、表面波が前記管状対象物を一周する表面波伝搬時間を求めることを特徴とする管状対象物の周長測定方法。
【請求項5】
請求項4記載の管状対象物の周長測定方法において、前記超音波伝搬時間t1の変化から温度変化に伴う表面波の速度補正を行うことを特徴とする管状対象物の周長測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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