説明

超音波探触子及び超音波探傷方法

【課題】高放射線場においても被検査体の超音波探傷が可能で、接触媒質を繰返し使用でき、かつ検査前後の作業が容易な超音波探触子を提供する。
【解決手段】超音波探触子1Aを、超音波信号の送受信を行う超音波振動子2と、超音波振動子2の超音波送受波面3とは反対側の面に設けられるダンパー4と、これら超音波振動子2及びダンパー4を保持する絶縁性の保持体6と、保持体6を収納する金属製のケース5と、ケース5の上端部に設けられたコネクタ9と、超音波振動子2に備えられた図示しない上部電極及び下部電極とコネクタ9とを接続するリード線7,8と、ケース5の下端部に設けられた筒状のカップリング11と、カップリング11内に充填されたベントナイト10とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力施設における高放射線場を有する鋼構造物やコンクリート構造物などの被検査体の内部欠陥を超音波の反射波を用いて探傷する超音波探触子と、これを用いた被検査体の超音波探傷方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼構造物やコンクリート構造物の内部欠陥を非破壊的に検査する超音波探傷装置の主要機器として、超音波探触子が利用されている。この超音波探触子は、超音波を被検査体中に伝播させ、欠陥部に衝突して反射する欠陥部反射波を検出することにより、被検査体内部のひび割れやボイド等の欠陥部を検出するものである。
【0003】
このような超音波探傷を実施する場合、超音波探触子から送信される超音波を被検査体の内部に効率よく透過させるために、被検査体の表面に超音波探触子を密着させる必要がある。このため、被検査体の表面と超音波探触子との間に、超音波を伝播させる液状のグリセリンや油等の粘性を有する接触媒質を介在させることが不可欠である。
【0004】
従来、一般産業用の超音波探触子として、軟質ゲル状物質などの接触媒質を超音波探触子と一体に設けた一体型構造の超音波探触子が提案されているが(例えば、特許文献1,2,3参照。)、従来提案されている接触媒質はいずれも耐放射線性を有せず、高放射線場においては短時間で放射線分解を起こし、その機能が喪失されやすい。
【0005】
なお、医療用の超音波診断方法としては、検査用のコロイドクレイとしてベントナイトを使用する方法が従来提案されているが(例えば、特許文献4参照。)、この方法は、検査時に、ベントナイトを直接人体器官内に手作業で挿入し、検査時のコントラストを上げるものであるので、高放射線場での使用には到底適用し得ない。
【0006】
また、従来の超音波探触子は、例えば超音波振動子とケースとの接合にエポキシ樹脂系の接着剤を使用しており、エポキシ樹脂の耐放射線性は約100Gy程度と低いため、100Gy/hのような高放射線環境下のガラス固化施設等においては、数時間で接着剤層に亀裂が生じ、使用が不可能になる。
【0007】
さらに、ダンパーとして音響インピーダンスが高い金属粉と音響インピーダンスが低いエポキシ系樹脂やポリウレタン系樹脂を用いて成形したものが従来知られているが(例えば、特許文献4参照。)、この種のダンパーを用いた超音波探触子は、高放射線場で使用すると、短時間のうちにダンパーが破壊されて、使用が不可能になる。
【0008】
本発明において、超音波探傷用の接触媒質として使用するベントナイトは、チクソトロピー性を有する材料であり、チクソトロピー性とは、力が作用すると粘性が可逆的に減少する現象である(例えば、非特許文献1参照。)。つまり、このベントナイトを接触媒質として利用すると、静止時は粘性が高いが、圧力負荷時は粘性が低くなるため、超音波探触子と被検査体との密着性が増し、超音波の伝播特性が増加する。特に、コンクリートや岩石のような表面粗さが大きい材料の超音波探傷に適用すれば、表面の凹部内に接触媒質であるベントナイトが充填され、効率よく超音波探傷性能を増すことが期待できる。
【0009】
ベントナイトは、放射性廃棄物の地層処分に使用される人口バリアの候補材であり、廃棄体パッケージから放射される表面線量率4×10Gy/y程度の放射線場でも実績がある(例えば、非特許文献2参照。)。
【0010】
また、耐放射線性の樹脂材料に関しては、Nomex(デュポン社の商品名)やConex(テイジン社の商品名)で代表されるアラミド樹脂等のポリアミド系樹脂が、エポキシ系樹脂に比較して優れていることが知られている(例えば、非特許文献3参照。)。
【0011】
その他、最近脚光を浴びている耐放射線性材料としては、高分子材料内部への酸素透過を抑制することで、耐放射線性を向上させたシリカ系の薄膜を利用した材料が一部実用化されている(例えば、非特許文献4参照。)。
【特許文献1】特開2005−241337号公報
【特許文献2】特開平5−277104号公報
【特許文献3】特開平3−296658号公報
【特許文献4】特表2005−524711号公報
【特許文献5】特開平8−105870号公報
【非特許文献1】加藤祐哉:チクソトロピー性状を示すグラウトの性状に関する研究、第57回年次学術講演会講演概要集、土木学会、pp.773−774−1408(2002)
【非特許文献2】原子力委員会 長半減期低発熱放射性廃棄物処分技術検討会(第4回)議事録 平成18年2月20日(月)10:00〜11:57 4P
【非特許文献3】樋口忠男:耐放射線有機材料、放射線と産業、(66)、5(1995)
【非特許文献4】小林慶規:シリカ膜による高分子の耐放射線性の向上、産総研TODAY 2006−01 pp.24−25 (2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように、従来型の超音波探触子は、被検査体の表面に超音波探触子を密着させるための接触媒質としてグリセリンや油等を用いるので、耐放射線性に劣り、短時間のうちに使用が不可能になる。また、超音波振動子とケースとの接合などにエポキシ樹脂系の接着剤を使用すると共に、ダンパーの構成材料としてエポキシ樹脂を用いているので、この点からも耐放射線性に劣り、短時間のうちに使用が不可能になる。さらに、従来型の超音波探触子は、検査毎に被検査体の表面にグリセリンや油などの接触媒質を塗るので、検査の準備作業に多大の労力を要すると共に、試験後においては被検査体の表面に塗布されたグリセリンや油などを除去しなくてはならないので、検査後の被検査体の清掃作業に多大の労力を要するという問題もある。
【0013】
本発明は、上記従来技術の問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、高放射線場においても被検査体の超音波探傷が可能で、接触媒質を繰返し使用でき、かつ検査前後の作業が容易な超音波探触子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するため、超音波探触子に関しては、第1に、超音波信号の送受信を行う超音波振動子と、該超音波振動子の超音波送受波面とは反対側の面に設けられるダンパーと、これら超音波振動子及びダンパーを保持する絶縁性の保持体と、上記保持体を収納する金属製のケースと、該ケースに設けられた筒状のカップリングとを備え、上記カップリング内に上記超音波振動子の超音波送受波面と被検査体との間に介在される超音波探傷用の接触媒質としてベントナイトを充填するという構成にした。
【0015】
ベントナイトは、チクソトロピー性を有するので、超音波振動子から送信される超音波を受けて粘性が減少し、超音波振動子と被検査体の間を埋める接触媒質として機能する。また、ベントナイトは、耐放射線性及び音響インピーダンスが高い材料であるので、これを接触媒質として用いることにより、超音波探触子の耐放射線性及び検出信号のSN比を高めることができる。さらに、ベントナイトは、水で容易に洗浄できるので、検査後の被検査体の清掃作業を容易化することができる。加えて、ベントナイトをカップリング内に充填すると、検査毎に被検査体の表面に接触媒質を塗布する必要がないので、検査前の準備作業を容易化することができる。
【0016】
また本発明は、超音波探触子に関して第2に、上記第1の構成の超音波探触子において、上記超音波振動子と上記ダンパー、上記超音波振動子と上記保持体、及び上記保持体と上記ケースを、耐放射線性の接着剤を用いて接着するという構成にした。
【0017】
かかる構成によると、接着部の耐放射線性を高めることができるので、高放射線場で使用可能な超音波探触子とすることができる。
【0018】
また本発明は、超音波探触子に関して第3に、上記第1の構成の超音波探触子において、上記ダンパーの外面を耐放射線性のコーティング膜で覆うという構成にした。
【0019】
かかる構成によると、ダンパーの耐放射線性を高めることができるので、高放射線場で使用可能な超音波探触子とすることができる。
【0020】
また本発明は、超音波探触子に関して第4に、上記第1の構成の超音波探触子において、上記ケースに対して上記カップリングを着脱可能に取り付けるという構成にした。
【0021】
かかる構成によると、カップリング内へのベントナイトの充填が容易になるので、被検査体の材質等に応じて含水比が異なるベントナイトを容易にカップリング内に充填でき、多用途への超音波探触子の適用が容易になる。
【0022】
一方、本発明は、超音波探傷方法に関して、第1に、超音波信号の送受信を行う超音波振動子と、該超音波振動子の超音波送受波面とは反対側の面に設けられるダンパーと、これら超音波振動子及びダンパーを保持する絶縁性の保持体と、上記保持体を収納する金属製のケースと、該ケースに設けられた筒状のカップリングとを備え、上記カップリング内に上記超音波振動子の超音波送受波面と被検査体との間に介在される超音波探傷用の接触媒質としてベントナイトを充填した超音波探触子を用い、上記カップリングの先端部を上記被検査体の表面に接触させた状態で上記超音波振動子の超音波送受波面からベントナイトに超音波を送信し、上記ベントナイトの粘性を低下させて上記被検査体内部の探傷を行うという構成にした。
【0023】
かかる構成によると、カップリング内に超音波探傷用の接触媒質としてベントナイトが充填された超音波探触子を用いるので、超音波探触子の耐放射線性及びSN比が高められると共に、検査前の準備作業及び検査後の被検査体の清掃作業を容易化することができる。
【0024】
また本発明は、超音波探傷方法に関して第2に、上記第1の構成の超音波探傷方法において、上記被検査体の表面粗さが大きい場合には上記ベントナイトの含水比を高くし、上記被検査体の表面粗さが小さい場合には上記ベントナイトの含水比を低くするという構成にした。
【0025】
かかる構成によると、被検査体の表面粗さが大きい場合には、ベントナイトの粘性を小さくして、被検査体表面へのベントナイトの密着性を高めることができる。また、被検査体の表面粗さが小さい場合には、ベントナイトの粘性を大きくして、ベントナイトの流れ出しによる消費を抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の超音波探触子は、カップリング内に超音波探傷用の接触媒質としてベントナイトを充填してなるので、超音波探触子の耐放射線性及びSN比が高められると共に、検査前の準備作業及び検査後の被検査体の清掃作業を容易化することができる。
【0027】
また、本発明の超音波探傷方法は、カップリング内に超音波探傷用の接触媒質としてベントナイトが充填された超音波探触子を用いるので、超音波探触子の耐放射線性及びSN比が高められると共に、検査前の準備作業及び検査後の被検査体の清掃作業を容易化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の第1実施形態を、図1及び図2を用いて説明する。図1は第1実施形態に係る超音波探触子の使用状態の断面図、図2はベントナイトの音響インピーダンスを他の主要な接触媒質の音響インピーダンスと比較して示すグラフ図である。
【0029】
図1に示すように、第1実施形態に係る超音波探触子1Aは、超音波信号の送受信を行う超音波振動子2と、該超音波振動子2の超音波送受波面3とは反対側の面に設けられるダンパー4と、これら超音波振動子2及びダンパー4を保持する絶縁性の保持体6と、該保持体6を収納する金属製のケース5と、該ケース5の上端部(ダンパー4が配置される側の端部)に設けられたコネクタ9と、上記超音波振動子2に備えられた図示しない上部電極及び下部電極と上記コネクタ9とを接続するリード線7,8と、上記ケース5の下端部(超音波送受波面3が配置される側の端部)に設けられた筒状のカップリング11と、該カップリング11内に充填されたベントナイト10とからなる。
【0030】
超音波振動子2は、上部電極及び下部電極の間に所要の圧電素子を挟み込んだもので、周面が保持体6の内面に接着される。本例の超音波振動子2は、下部電極が超音波送受波面3になっており、図示しない超音波探傷器の本体から出力される送信波により超音波振動子2が励振され、超音波送受波面3から接触媒質10を介して被検査体12中に超音波パルスが送信される。また、被検査体12中の欠陥及び被検査体12の底面にて反射した超音波パルスは、超音波振動子2で受信されて電気信号に変換され、コネクタ9を介して超音波探傷器の本体に送信される。
【0031】
ダンパー4は、超音波振動子2の機械的自由振動を速やかに減少させ、超音波探触子1Aの分解能を向上させる機能を有するものであり、例えば金属ブロックや、音響インピーダンスが高い金属粉を音響インピーダンスが低い樹脂材料に混ぜて成形したものなどが用いられる。ダンパー4は、超音波振動子2の背面、即ち、超音波送受波面とは反対側の面に接着される。
【0032】
ケース5は、例えばアルミニウムなどの金属材料をもって所要の形状及びサイズに形成される。
【0033】
保持体6は、超音波振動子2とケース5との間の絶縁を確保するためのものであって、樹脂材料をもって形成され、ケース5の内面に接着される。超音波振動子2の上部電極及び下部電極とコネクタ9とを接続するリード線7,8は、この保持体の内面に沿って配線される。
【0034】
カップリング11は、ケース5と同様に、アルミニウムなどの金属材料をもって形成され、ケース5に対して着脱可能に取り付けられる。ケース5に対するカップリング11の取付手段としては、締結又は嵌合などを用いることができる。このように、ケース5に対してカップリング11を着脱可能に構成すると、ケース5からカップリング11を取り外すことにより、カップリング11内へのベントナイト10の充填を容易化できるので、超音波探触子1Aの使用を便利にできると共に、被検査体12の材質等に応じて含水比が異なるベントナイトを適宜カップリング11内に充填し直すことができるので、多種の被検査体12への超音波探触子1Aの適用が容易になって、超音波探触子1Aの汎用性を高めることができる。
【0035】
超音波振動子2とダンパー4を接着する接着剤、超音波振動子2と保持体6を接着する接着剤、及び保持体6とケース5を接着する接着剤としては、耐放射線性に優れたNomexやConexで代表されるアラミド樹脂等のポリアミド系樹脂が用いられる。また、ダンパー4を構成する樹脂材料及び保持体6を構成する樹脂材料としても、この種の耐放射線性の樹脂材料が用いられる。これにより、超音波探触子1Aの耐放射線性を高めることができる。即ち、エポキシ樹脂の耐放射線性は約10Gy程度であるのに対して、ポリアミド樹脂は約10Gyであるので、本例の超音波探触子1Aは高放射線場で十分に利用することができる。
【0036】
ベントナイト10は、粘土鉱物モンモリロナイトを主成分とし、石英、α−クリストバライト、オパールなどの珪酸鉱物を副成分とした弱アルカリ性粘土岩の総称であり、音響インピーダンスが高く、チクソトロピー性及び耐放射線性を有し、材料コストが低く、かつ検査終了後における被検査体12の洗浄が容易であることから、高放射線場で行われる超音波探傷用の接触媒質として特に適する。
【0037】
即ち、図2に示すように、ベントナイト10は、超音波探傷用の接触媒質として利用されることがある水の音響インピーダンス(1.5×10g/cm/s)に比べて、約2.7倍の音響インピーダンスを有し、超音波探傷用の接触媒質として利用される他の代表的な物質であるグリセリン、ポリスチレン及びアクリルに比べても高い音響インピーダンスを有している。なお、図2は、水の音響インピーダンスを基準として規格化した各物質の音響インピーダンスを示している。このように音響インピーダンスの高い接触媒質を用いると、超音波探触子1Aから被検査体12への超音波の音響伝播性能が向上し、超音波反射波のSN比が増加するので、精度よく被検査体12の欠陥を検出できる。
【0038】
また、ベントナイト10に含有する元素は、地殻を構成する主要元素Si,Al,Feなどで、一般的な岩石の化学組成と類似しており、水分子を容易に取り込む特質があり、乾燥させれば水分子を放出し、再び水と接触させれば容易に水を取り込む反復性もある。よって、繰り返し再使用することができる。そして、静止時は粘性が高いが、圧力負荷時(約0.1〜0.3MPa)は粘性が低くなるチクソトロピー性を有するため、これを超音波探傷用の接触媒質として用いると、超音波探傷時に超音波探触子1Aと被検査体12との密着性が増し、超音波探触子1Aから被検査体12への超音波の音響伝播性能を向上する。その結果、超音波反射波のSN比が増加するので、精度よく被検査体12の欠陥を検出できる。特に、コンクリートや岩石のように表面粗さが大きな被検査体12についても、ベントナイト10のチクソトロピー性を利用して、超音波探触子1Aと被検査体12との密着性を確保することができるので、良好な条件で超音波探傷を行うことができる。
【0039】
また、ベントナイト10は、放射性廃棄物の地層処分に使用される人口バリアの候補材であり、耐放射線性に優れる。したがって、ベントナイト10を接触媒質として用いることにより、実用的な高放射線場で使用可能な超音波探触子とすることができる。
【0040】
さらに、ベントナイト10は、粘土の一種であり、地球上に豊富に存在しているので、安価であり、その価格は、他の市販の接触媒質と比較して約1/10である。また、ベントナイト10は、粘土の一種であることから、その固体粉末に水を加えて攪拌するだけで用意でき、超音波探傷前の準備作業を容易なものにできると共に、水で容易に洗浄でき、超音波探傷後の洗浄作業を容易なものにできる。よって、超音波探傷コストの低減を図ることもできる。
【0041】
以下、上記のように構成された超音波探触子1Aを用いた超音波探傷方法について説明する。
【0042】
まず、ケース5からカップリング11を取り外し、カップリング11内に含水比が適宜調整されたベントナイト10を充填する。即ち、ベントナイトの含水比は0%から400%の範囲でチクソトロピー性を示し、含水比の大小によって超音波振動子駆動時の粘性が変化するので、被検査体12の種類や表面粗さによって適宜含水比を変更する。例えば、被検査体12の表面粗さが大きい場合には、ベントナイト10の含水比を高くして超音波振動子駆動時のベントナイトの粘性を小さくし、被検査体12表面へのベントナイトの密着性を高める。逆に、被検査体12の表面粗さが小さい場合には、ベントナイト10の含水比を低くして超音波振動子駆動時のベントナイトの粘性を大きくし、ベントナイト10の流れ出しによる消費を抑制する。ベントナイト10の充填後、カップリング11をケース5に取り付ける。
【0043】
次いで、カップリング11の先端部を被検査体12に接触させた後、図示しない超音波探傷器の本体を操作して、コネクタ9及びリード線7,8を介して超音波振動子2の上部電極及び下部電極に励起信号を送信し、超音波振動子2から超音波を送信する。
【0044】
超音波振動子2から送信された超音波は、カップリング11内に充填されたベントナイト10を介して被検査体12の内部に伝搬される。その際、ベントナイト10は、超音波を受けて粘度が低下し、被検査体12の表面に密着される。
【0045】
被検査体12の内部に伝搬された超音波は、被検査体内部の欠陥及び被検査体12の底面で反射される。これらの超音波反射波は、超音波振動子2で受信されて電気信号に変換され、コネクタ9を介して超音波探傷器等の本体に送信される。これにより、欠陥の有無、欠陥の大きさ、及び欠陥の位置などを検出することができる。
【0046】
以下、超音波振動子2から超音波を送信しつつ、超音波探触子1Aを被検査体12の面方向に走査して、必要な範囲の超音波探傷を行う。検査後は、必要に応じて、被検査体12の表面を水洗する。
【0047】
次に、本発明に係る超音波探触子の第2実施形態を、図3を用いて説明する。図3は第2実施形態に係る超音波探触子の使用状態の断面図である。
【0048】
図3に示すように、本例の超音波探触子1Bは、ダンパー4の外面を耐放射線性のコーティング膜13で覆ったことを特徴とする。コーティング膜13は、放射線によるダンパー4の放射線劣化を防止するもので、ダンパー4の表面に気体透過バリアを形成して酸素の侵入を防ぐものが用いられる。本例においては、ダンパー4の周囲に厚さ約100nmのシリカ製のコーティング膜13を形成した。このコーティング膜13によれば、非特許文献4に記載されているように、約5.4×10Gyの耐放射線性が期待できる。その他については、第1実施形態に係る超音波探触子1Aと同じであるので、対応する部分に同一の符号を表記して、説明を省略する。
【0049】
本例の超音波探触子1Bは、ダンパー4の外面を耐放射線性のコーティング膜13で覆ったので、超音波探触子の耐放射線性をさらに向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施形態に係る超音波探触子の使用状態の断面図である。
【図2】ベントナイトの音響インピーダンスを他の主要な接触媒質の音響インピーダンスと比較して示すグラフ図である。
【図3】第2実施形態に係る超音波探触子の使用状態の断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1A,1B 超音波探触子
2 超音波振動子
3 超音波送受波面
4 ダンパー
5 ケース
6 保持体
7,8 リード線
9 コネクタ
10 接触媒質
11 カップリング
12 被検査体
13 コーティング膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波信号の送受信を行う超音波振動子と、該超音波振動子の超音波送受波面とは反対側の面に設けられるダンパーと、これら超音波振動子及びダンパーを保持する絶縁性の保持体と、上記保持体を収納する金属製のケースと、該ケースに設けられた筒状のカップリングとを備え、上記カップリング内に上記超音波振動子の超音波送受波面と被検査体との間に介在される超音波探傷用の接触媒質としてベントナイトを充填したことを特徴とする超音波探触子。
【請求項2】
上記超音波振動子と上記ダンパー、上記超音波振動子と上記保持体、及び上記保持体と上記ケースを、耐放射線性の接着剤を用いて接着したことを特徴とする請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項3】
上記ダンパーの外面を耐放射線性のコーティング膜で覆ったことを特徴とする超音波探触子。
【請求項4】
上記ケースに対して上記カップリングを着脱可能に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項5】
超音波信号の送受信を行う超音波振動子と、該超音波振動子の超音波送受波面とは反対側の面に設けられるダンパーと、これら超音波振動子及びダンパーを保持する絶縁性の保持体と、上記保持体を収納する金属製のケースと、該ケースに設けられた筒状のカップリングとを備え、上記カップリング内に上記超音波振動子の超音波送受波面と被検査体との間に介在される超音波探傷用の接触媒質としてベントナイトを充填した超音波探触子を用い、上記カップリングの先端部を上記被検査体の表面に接触させた状態で上記超音波振動子の超音波送受波面からベントナイトに超音波を送信し、上記ベントナイトの粘性を低下させて上記被検査体内部の探傷を行うことを特徴とする超音波探傷方法。
【請求項6】
上記被検査体の表面粗さが大きい場合には上記ベントナイトの含水比を高くし、上記被検査体の表面粗さが小さい場合には上記ベントナイトの含水比を低くすることを特徴とする請求項5に記載の超音波探傷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−309754(P2008−309754A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160448(P2007−160448)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】