説明

超音波接合方法

【課題】接合部材の穴あきや接合部位の亀裂を有意に防止する超音波接合方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、第1被接合部材の接合部位と第2被接合部材の接合部位とをホーンとアンビルとの間に挟み込み、前記ホーンを加振させることによって接合部位同士を超音波接合する超音波接合方法であって、超音波接合に先立って、前記ホーンが接触する側の前記第1被接合部材の接合部位および前記ホーンの先端を、エッチング溶液が収容されてなるエッチング槽に浸漬し、前記ホーンを加振させて前記エッチング溶液を超音波振動させることによって、前記第1被接合部材の接合部位を超音波エッチングして新生面を露出させる工程を含む、超音波接合方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波接合方法および超音波接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波接合方法は、重ね合わせられた2枚の金属板(同種または異種)を、表面に突起が設けられたアンビルおよびホーンと呼ばれる接合工具で挟み、所定の加圧力を与えながら、ホーンを超音波振動により往復直線運動させて接合するものである。超音波接合が施される際には、2枚の金属板の接触面が擦られることにより、酸化皮膜等の不純物が除去されて、金属の綺麗な面(新生面)同士が相互に接触させられ、発生する摩擦熱により固相接合が行われる。
【0003】
ところで、超音波溶接法は、アルミニウムのような低強度材を溶接する場合には疲労クラックが生じ接合部位の強度が低いという問題があった。
【0004】
かかる問題を解決する方策として、超音波接合する前加工として、プレス加工によって被接合部材を塑性変形させ、接合部位の引張強度を増大させた後に超音波接合を行う方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7−24942号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1によっても、接合部材の穴あきや接合部位の亀裂を防止できないことがあった。
【0007】
よって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、接合部材の穴あきや接合部位の亀裂を有意に防止する超音波接合方法および超音波接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、超音波接合に先立って、ホーンが接触する側の被接合部材の接合部位およびホーンの先端を、エッチング槽に浸漬し、ホーンが接触する側の被接合部材の接合部位を超音波エッチングすることによって前記課題を解決する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、超音波接合に先立って、ホーンが接触する側の被接合部材の接合部位およびホーンの先端が、エッチング槽に浸漬され、前記ホーンが加振しエッチング溶液を超音波振動させる。すると、前記ホーンが接触する側の被接合部材の接合部位が超音波エッチングされ、接合部位の新生面が露出する。接合部位の新生面が露出されることによって、超音波接合における接合時間を短縮することができ、ひいては、接合部材の穴あきや接合部位の亀裂を有意に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、超音波接合装置を概略的に示した図である。
【図2】図2は、超音波接合方法(超音波接合装置)を適用する単電池の斜視図である。
【図3】図3は、超音波接合方法(超音波接合装置)を適用する電池(組電池)を示す図である。
【図4】図4は、ホーン先端の突起が目詰まりを起こしている形態を概略的に示した図である。
【図5】図5は、超音波接合装置のエッチング槽がセットされる前の待機状態を概略的に示す図である。
【図6】図6は、超音波接合装置においてエッチング槽と、負極タブと、正極タブとが所定の位置にセットされた形態を概略的に示す図である。
【図7】図7は、負極タブおよびホーンの先端を、エッチング溶液が収容されてなるエッチング槽に浸漬し、ホーンを加振させてエッチング溶液を超音波振動させている形態を概略的に示した図である。
【図8】図8は、負極タブおよびホーンの先端を引き上げた形態を概略的に示した図である。
【図9】図9は、超音波接合装置の洗浄槽がセットされる前の待機状態を概略的に示す図である。
【図10】図10は、超音波接合装置において洗浄槽と、新生面の露出を終えた正極タブと、負極タブとが所定の位置にセットされた形態を概略的に示す図である。
【図11】図11は、新生面が露出した負極タブおよびホーンの先端を、洗浄液が収容されてなる洗浄槽に浸漬し、ホーンを再度加振させて洗浄液を超音波振動させている形態を概略的に示した図である。
【図12】図12は、負極タブおよびホーンの先端を引き上げた形態を概略的に示した図である。
【図13】図13は、新生面が露出した負極タブと正極タブとをホーンとアンビルとの間に挟み込み、ホーンを加振させることによって接合部位同士を超音波接合する形態を概略的に示した図である。
【図14】図14は、超音波接合装置を2つ用いて組電池を製造する製造ラインの一部を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者は、接合部材の穴あきや接合部位の亀裂を有意に防止する超音波接合方法を提供することを目的として鋭意研究を行った。その過程の中で、超音波接合において生じうる接合部材の穴あきや接合部位の亀裂の原因の追究を行った。
【0012】
まず、接合を行う接合部材の材料やその厚さが既に決定している場合、材料自体を変更したり、その厚さを調節したりすることによって、上記問題を解決することができない。そのため、かような場合では、抜本的な改良が要求される。ここで、発明者は、接合を行う際に接合時間が長くなる場合に上記の問題が生じやすくなる傾向があることに着目し、接合時間が長いことが、上記の原因として捉えて、接合時間を短縮することを中心に研究を行った。そこで、発明者は、超音波接合方法の原理に着目した。超音波接合方法の原理は、2枚(複数)の金属板の接触面が擦られることにより、酸化皮膜等の不純物が除去される。そのことによって露出した新生面同士が、摩擦熱によって、固相状態で接合される。つまり、超音波接合においては、摩擦熱によって被接合部材を接合する際に、被接合部材に潜在的に存在する酸化皮膜等の不純物を取り除く工程が内在的に含まれている。
【0013】
よって、この超音波接合において内在的に含まれている「酸化皮膜等の不純物を取り除く工程」を独立的に切り離し、超音波接合する工程においては「接合のみ」行わせることによって、接合時間を短縮することができることを見出した。すなわち、従来の超音波接合方法における「接合部材に潜在的に存在する酸化皮膜等の不純物の除去」を独立的に切り離す必要がないという固定概念を打破することによって、本発明の完成に至った。
【0014】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一具体例に過ぎないため、かかる具体例に本発明が限定されないのは言うまでもない。また、各図面は説明の便宜上誇張されて表現されており、各図面における各構成要素の寸法比率が実際とは異なる場合がある。
【0015】
まず、本発明の超音波接合装置の一実施形態について説明を行う。
【0016】
本発明の実施形態の超音波接合装置について概説を行うと、図1に示すように、超音波接合装置30は、第1被接合部材の接合部位22と第2被接合部材の接合部位24とをホーン11とアンビル12との間に挟み込み、ホーン11を加振させることによって接合部位同士を超音波接合する超音波接合装置であって、エッチング溶液が収容されてなるエッチング槽14と、ホーンを加振させる駆動部16aと、駆動部16aの作動を制御する制御部16と、洗浄液が収容されてなる洗浄槽19とを有する。
【0017】
超音波接合装置30は、異種金属の接合に特に適している。よって、例えば、アルミニウムから構成されてなる負極タブ22および銅から構成されてなる正極タブ24を有する電池20のタブ同士の接合には、超音波接合方法を用いることが好適である。
【0018】
そうであるため、本発明の実施形態においては、電池20のタブ(22、24)同士を接合する超音波接合装置であって、負極タブ22としての第1被接合部材の接合部位22と、正極タブ24としての第2被接合部材の接合部位24を接合する超音波接合装置30についての説明を行う。
【0019】
まず、電池についての説明を行う。図2に示すように、電池20は、扁平型に形成された電池である。電池20は、正極層、負極層およびこれらの電極層間に電解質層を積層した発電要素(図示せず)を内包する扁平型電池本体を内部に複数含んでいる。電池20は、たとえば、リチウムイオン二次電池などの二次電池である。電池20は、扁平型電池本体から延びる正極タブ24および負極タブ22を有し、発電要素の積層方向と同じ方向に積層される。そして、図3に示すように、複数の電池20は、正極タブ24および負極タブ22が積層方向に交互となるように、扁平型電池本体に両面テープまたは接着剤等が付けられることによって相互に固定され、組電池として積層される。このように組電池は、隣接する電池20同士の正極タブ24と負極タブ22とを順に直列して接合することによって組み立てられ、この際に、本実施形態の超音波接合装置30が使用される。なお、正極タブ24の厚さは、1〜2mm程度であるとよい。
【0020】
以下、超音波接合装置30の各構成要素について具体的に説明を行う。
【0021】
(第1被接合部材の接合部位22および第2被接合部材の接合部位24)
図5に示すように、超音波接合装置30においては、負極タブ22と正極タブ24とをホーン11とアンビル12との間に挟み込み、ホーン11を加振させることによって接合部位同士を超音波接合する。ホーン11を加振させる駆動部16aは、例えば、超音波発振器、振動子などから構成してある。
【0022】
(ホーン11・アンビル12)
図5に示すように、超音波接合装置30は、ホーン11およびアンビル12を有する。
【0023】
ホーン11は、アンビル12に対して、相対的な位置に適宜調整することが可能であり、その先端には複数の突起11aが形成されている。負極タブ22と接触するホーン11の先端面積にも、電池の性能を有意に向上させる大きさであれば特に制限はない。
【0024】
アンビル12は、負極タブ22と、正極タブ24とを載置する台座としての機能を有し、その先端にも、複数の突起12aが形成されている。なお、アンビルの突起12aは、ホーンの突起11aよりも粗く形成されている。ホーンの突起11aの方が、アンビルの突起12aよりも細かいのは、超音波振動に追従して負極タブ22に十分に食い込ませる必要があるからである。アンビル12の大きさも上記と同様に電池の性能を有意に向上させる大きさであれば特に制限はない。
【0025】
(エッチング槽14)
図5に示すように、超音波接合装置30は、ホーン11が接触する側の負極タブ22およびホーン11の先端が浸漬される、エッチング溶液が収容されてなるエッチング槽14を有する。エッチング槽14は、箱型形状であり、ホーン11が接触する側の負極タブ22およびホーン11の先端が挿入されるための開口部を有している。なお、開口部には、拭取部18が備えられている。拭取部18の材料としては、エッチング溶液13に耐性のあるものであることが好ましい。かような拭取部が備えられていると、引き上げる際に、負極タブ22およびホーン11に残存しうるエッチング溶液の量を減らすことができる。なお、拭取部は脱着可能であるため、必要に応じ適宜交換をすることができる。
【0026】
また、エッチング槽14は、伸縮可能な連結棒15aを有していて、連結棒15aは、エッチング槽14を所定の位置にセットする機能を有する。また、エッチング槽14は、エッチング溶液13の温度を調節するためのチラー17を有している。チラー17を経由した循環機構によって、エッチング溶液の温度を一定に保つことができる。
【0027】
(洗浄槽19)
図9に示すように、超音波接合装置30は、ホーン11が接触する側の負極タブ22およびホーン11の先端が浸漬される、洗浄液19aが収容されてなる洗浄槽19をさらに有する。洗浄槽19は、箱型形状であり、ホーン11が接触する側の負極タブ22およびホーン11の先端が挿入されるための開口部を有している。なお、開口部には、拭取部18が備えられている。拭取部18の材料としては、エッチング溶液に耐性のあるものであることが好ましい。かような拭取部18が備えられていると、引き上げる際に負極タブ22およびホーン11に残存しうるエッチング溶液が含まれる洗浄液の量をさらに減らすことができる。なお、拭取部は脱着可能であるため、必要に応じ適宜交換をすることができる。
【0028】
また、洗浄槽19は、伸縮可能な連結棒15aを有していて、連結棒15aは、洗浄槽19を所定の位置にセットする機能を有する。また、洗浄槽19は、洗浄液の温度を調節するためのチラー17aを有している。チラー17aを経由した循環機構によって、洗浄液の温度を一定に保つことができる。
【0029】
(制御部)
図5、9に示すように、本実施形態における超音波接合装置30は、駆動部16aの作動を制御する制御部16を有する。制御部16は、CPUやメモリを主体に構成してある。
【0030】
制御部16は、ホーン11の先端が負極タブ22とともにエッチング槽14に浸漬しているときに、駆動部16aを制御してホーン11を加振させ、エッチング溶液を超音波振動させることによって、負極タブ22を超音波エッチングして新生面を露出させる。
【0031】
また、制御部16は、ホーン11の先端が負極タブ22とともに洗浄槽19に浸漬しているときに、駆動部16aを制御してホーン11を加振させ、洗浄液を超音波振動させることによって、新生面が露出した負極タブ22に残存するエッチング溶液を除去する。
【0032】
なお、制御部16は、上記の制御の他に、超音波接合装置30における各構成要素の動作を総合的に操作することができる。
【0033】
次に、本実施形態における接合手順について説明する。
【0034】
超音波接合手順について概説を行うと、超音波接合に先立って、ホーン11が接触する側の負極タブ22およびホーン11の先端を、エッチング溶液が収容されてなるエッチング槽14に浸漬し、ホーン11を加振させてエッチング溶液を超音波振動させることによって、負極タブ22を超音波エッチングして新生面を露出させる工程を含む。また、本実施形態の超音波接合方法は、新生面が露出した負極タブ22およびホーン11の先端を、洗浄液が収容されてなる洗浄槽19に浸漬し、ホーン11を再度加振させて洗浄液を超音波振動させることによって、新生面が露出した負極タブ22に残存するエッチング溶液を除去する工程をさらに含む。
【0035】
次に各工程についての説明を行う。
【0036】
(新生面を露出させる工程)
本実施形態の超音波接合方法における新生面を露出させる工程は、大きく(1)〜(3)の工程に分けられる。
【0037】
具体的に、本実施形態の新生面を露出させる工程は、(1)待機状態から、エッチング槽14と、負極タブ22と、正極タブ24とを所定の位置にセットする工程と、(2)負極タブ22およびホーン11の先端を、エッチング溶液が収容されてなるエッチング槽14に浸漬し、ホーン11を加振させてエッチング溶液を超音波振動させる工程と、(3)負極タブ22およびホーン11の先端を引き上げる工程と、を含む。
【0038】
(1)〜(3)の工程について詳説する。
【0039】
(1)まず、図5に示す待機状態から、図6に示す所定の位置にセットされた形態とするためには、負極タブ22および正極タブ24については、アーム15bで把持してセットする。なお、正極タブ24と負極タブ22とは、同じタイミングでセットしてもよいし、負極タブ22および正極タブ24を接合する直前にセットしてもよい。
【0040】
エッチング槽14については、エッチング槽14を所定の位置となるように調節できる伸縮可能な連結棒15aを用いてセットする。
【0041】
(2)続いて、図7に示すように、ホーン11が接触する側の負極タブ22およびホーン11の先端を、エッチング溶液13が収容されてなるエッチング槽14に浸漬する。
【0042】
負極タブ22については、所定の位置にセットされたエッチング槽14に、アーム15bで把持して浸漬する。ホーン11については、そのままアンビルに向かって下げる。なお、この際、負極タブ22およびホーン11の先端のいずれを先に浸漬させてもよい。
【0043】
そして、制御部16は、ホーン11の先端が負極タブ22とともにエッチング槽14に浸漬しているときに、駆動部16aを制御してホーン11を加振させ、エッチング溶液13を超音波振動させることによって、負極タブ22を超音波エッチングして新生面を露出させる。
【0044】
(3)最後に、図8に示すように、負極タブ22およびホーン11の先端を引き上げる。
【0045】
引き上げのタイミングに関しては、酸化被膜が除去され新生面が露出するに過不足なければ(不足であれば、まだ新生面が露出されていないし、過足であれば、負極タブ22が溶解してしまう)、いずれかを先に引き上げてもよいし、同時に引き上げてもよい。ここで、負極タブ22を先に引き上げる具体例としては、負極タブ22の新生面が露出されたが、ホーン11の先端に固着したアルミニウムがまだ残存するような場合である。その場合は、先に負極タブ22のみを引き上げ、残存アルミニウム22aを十分除去してホーン11の先端を引き上げる。これらの引き上げのタイミングの調節も、当業者であれば容易に行うことができる。
【0046】
負極タブ22およびホーン11の先端が引き上げられる際、エッチング槽14の開口部に備えられている拭取部18が、負極タブ22およびホーン11の先端に残存するエッチング溶液13を拭き取る。そうであるため、後の工程においてより効率的にエッチング溶液13を除去することができる。
【0047】
(エッチング溶液を除去する工程)
本実施形態の超音波接合方法における新生面を露出させる工程は、大きく(A)〜(C)の工程に分けられる。
【0048】
具体的に、本実施形態のエッチング溶液13を除去する工程は、(A)待機状態から、洗浄槽19と、新生面の露出を終えた負極タブ22と、正極タブ24とを所定の位置にセットする工程と、(B)新生面が露出した負極タブ22およびホーン11の先端を、洗浄液19aが収容されてなる洗浄槽19に浸漬し、ホーン11を再度加振させて洗浄液19aを超音波振動させる工程と、(C)負極タブ22およびホーンの先端を引き上げる工程とを含む。
【0049】
(A)〜(C)の工程について詳説する。
【0050】
(A)まず、図9に示す待機状態から、図10に示す、所定の位置のセットされた形態とするためには、負極タブ22および正極タブ24については、アーム15bで把持してセットする。また、洗浄槽19については、洗浄槽19が所定の位置となるように調節できる伸縮可能な連結棒15aを用いて、スライドしてセットする。
【0051】
(B)続いて、図11に示すように、負極タブ22およびホーン11の先端を、洗浄液19aが収容されてなる洗浄槽19に浸漬する。
【0052】
負極タブ22については、所定の位置にセットされた洗浄槽19に、アーム15bで把持して浸漬する。ホーン11については、そのままアンビルに向かって下げる。なお、この際、負極タブ22およびホーン11の先端のいずれを先に浸漬させてもよい。
【0053】
そして、制御部16は、ホーンの先端11が負極タブ22とともに洗浄槽19に浸漬しているときに、駆動部16aを制御してホーン11を加振させ、洗浄液19aを超音波振動させることによって、新生面が露出した負極タブ22に残存するエッチング溶液13を除去する。
【0054】
(C)最後に、図12に示すように、負極タブ22およびホーン11の先端を引き上げる。
【0055】
引き上げのタイミングに関しても、エッチング溶液13を除去するに過不足なければ、いずれかを先に引き上げてもよいし、同時に引き上げてもよい。上記の通り、これらの引き上げのタイミングの調節も、当業者であれば容易に行うことができる。
【0056】
負極タブ22およびホーン11の先端が引き上げられる際、洗浄槽19に開口部に備えられている拭取部18によって、負極タブ22およびホーン11の先端に残存する洗浄液19aを拭き取る。
【0057】
続いて、上記の工程を経て準備された負極タブ22と、正極タブ24とを超音波接合方法によって接合する方法についての説明を行う。
【0058】
図13に示すように、新生面が露出した負極タブ22と正極タブ24とをホーン11とアンビル12との間に挟み込み、ホーン11を加振させることによって接合部位同士を超音波接合する。
【0059】
ホーン11がアンビル12に載置された負極タブ22と正極タブ24とを一定の圧力で加圧しながら、超音波振動する。超音波接合装置30は、ホーン11による超音波振動で負極タブ22と正極タブ24とに往復直線運動を生じさせ、接合部位の接触面が擦り合わされることによって、その際に発生する摩擦熱により、負極タブ22と正極タブ24とを固相接合する。
【0060】
上記の通り、接合の際、接合部位の酸化皮膜等の不純物を除去して綺麗な金属面(新生面)を露出させる必要がないので、接合時間を短縮して両者を接合することができないため、接合部材の穴あきや接合部位の亀裂を有意に防止することができる。
【0061】
続いて、図14を参照して、超音波接合装置30を用いた組電池の製造ラインの好ましい形態を説明する。
【0062】
超音波接合装置30を用いて電池20を接合して組電池を製造する場合、効率を考慮すると、2以上の装置を用いた方が好ましい。2つの装置(超音波接合装置Aおよび超音波接合装置B)において接合を行う利点を以下に示す。
【0063】
図14に示すように、同一の超音波接合装置Aおよび超音波接合装置Bは、矢印のように搬送されてきた電池20をアーム15bで把持し、接合を行う。接合完了後、また製造ラインに戻す。ここで、超音波装置Aにおいて新生面を露出させる工程と、エッチング溶液13を除去する工程とを行っている際、超音波装置Bにおいては、負極タブ22と、正極タブ24(図示せず)とを接合する。その後(図示はしないが)、超音波装置Bにおいて接合が完了した電池20は、再び製造ラインに戻される。そして、超音波装置Bは、前の工程から搬送されてきた電池20の負極タブ22に、新生面を露出させる工程と、エッチング溶液13とを除去する工程を行う。その際、超音波装置Aにおいては、既に新生面の露出・エッチング溶液13の除去が終わっているので、負極タブ22と、正極タブ24とを接合することができる。このように2つ(必要に応じ3つ以上)の装置を製造ラインにおいて用いることによって、電池の製造を効率よく進めることができる点で好ましい。
【0064】
上記の通り、一実施形態の超音波接合装置30は、エッチング溶液13が収容されてなるエッチング槽14と、ホーン11を加振させる駆動部16aと、駆動部16aの作動を制御する制御部16とを有する。そして、一実施形態の超音波接合方法は、超音波接合に先立って、負極タブ22およびホーン11の先端をエッチング槽14に浸漬し、ホーン11を加振させて新生面を露出させる工程を含む。
【0065】
上述の通り、アルミニウムのような低強度材を溶接する場合には疲労クラックが生じ接合部位の強度が低いという問題があったため、特許文献1のような技術が提案されている。しかしながら、例えば、電池(組電池)としての性能(容量などの観点)を向上させるためには、板厚0.6mm以下などの非常に薄い負極タブを用いることが好ましい場合がある。このような場合、特許文献1の技術を直接適用すると、プレス加工によって負極タブがさらに薄くなってしまうことになる。このさらに薄くなった負極タブに超音波振動を加えると、ホーンおよびアンビルにある突起が負極タブに食い込むことによって、負極タブに穴あきが発生することがある。また、超音波振動によって、負極タブ周辺が変形することもあり、その結果として負極タブに亀裂が生じることがある。
【0066】
上記構成によれば、超音波接合における接合時間を短縮することができ、負極タブ22の材料や厚さの条件に左右されず、負極タブ22の穴あきや亀裂を有意に防止することができる。また、わざわざホーン11を取り外してメンテナンスを行うことがないため、アンビル12との噛み合わせの調節の困難なホーン11の設定に時間をかけないで効率よく超音波接合を行うことができる。
【0067】
また一方で、従来の超音波接合装置においては、アルミニウムなどの低強度材の連続接合を繰り返すと(例えば、数千打点以上)、ホーン先端の突起に残存アルミニウムが形成され、それが固着し、最終的にホーン先端の突起は目詰まりを起こしてしまう。目詰まりを起こすと、ホーン先端の突起が、被接合部材に食い込みにくくなる。すると、ホーン先端の突起が滑ってしまい、ホーンの超音波振動を被接合部材に効率よく伝えることができなくなってしまう。そこで、滑りを防止するために、例えば、ホーンの加圧力を上げたり、接合時間を長くしたりするなどの方策を取らざるを得ないが、そうすると、また被接合部材に亀裂が生じやすい条件となってしまう。
【0068】
上記構成によれば、被接合部材(負極タブ22)が超音波エッチングされ新生面が露出すると同時に、ホーン先端の突起に固着した残存アルミニウム22aもが除去される。よって、ホーン先端の突起における目詰まりが有意に防止され、負極タブ22への食い込みがよくなるため、ホーン先端の突起の滑りが防止され、ホーン11の超音波振動が負極タブ22に効率的に伝わり、接合時間が短縮され、ひいては、負極タブ22の穴あきや負極タブ22の亀裂が有意に防止される。
【0069】
また一方で、ホーン先端は高精度に加工された無数の突起が加工されており、非常に高価なため、ホーンの高寿命化は生産コストに大きく影響するが、ホーン先端の突起が目詰まりを起こしてしまうと、ホーンの寿命が短くなってしまう。
【0070】
上記構成によれば、ホーン11の先端もが超音波エッチングされるため、ホーン11の先端に固着したアルミニウム22aが除去されホーン11の寿命が長くなる。
【0071】
また、一実施形態の超音波接合方法は、新生面が露出した負極タブ22およびホーン11の先端を、洗浄槽19に浸漬し、ホーン11を再度加振させて、新生面が露出した負極タブ22に残存するエッチング溶液13を除去する工程をさらに含む。また、一実施形態の超音波接合装置30は、さらに洗浄槽19を有する。
【0072】
かかる構成によれば、負極タブ22の錆が防止され、負極タブ22の穴あきや負極タブ22の亀裂をさらに有意に防止することができる。また、上記の通り、わざわざホーン11を取り外してメンテナンスを行うことがないため、アンビル12との噛み合わせの調節が困難なホーン11の設定に時間をかけないで効率よく超音波接合を行うことができる点でも好適である。
【符号の説明】
【0073】
11 ホーン、
11a ホーンの突起、
12 アンビル、
12a アンビルの突起、
13 エッチング溶液、
14 エッチング槽、
15a 連結棒、
15b アーム、
16 制御部、
16a 駆動部、
17 チラー(エッチング溶液)、
17a チラー(洗浄液)、
18 拭取部、
19 洗浄槽、
19a 洗浄液、
20 電池、
22 第1被接合部材の接合部位(負極タブ)、
22a 残存アルミニウム、
24 第2被接合部材の接合部位(正極タブ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1被接合部材の接合部位と第2被接合部材の接合部位とをホーンとアンビルとの間に挟み込み、前記ホーンを加振させることによって接合部位同士を超音波接合する超音波接合方法であって、
超音波接合に先立って、前記ホーンが接触する側の前記第1被接合部材の接合部位および前記ホーンの先端を、エッチング溶液が収容されてなるエッチング槽に浸漬し、前記ホーンを加振させて前記エッチング溶液を超音波振動させることによって、前記第1被接合部材の接合部位を超音波エッチングして新生面を露出させる工程を含む、超音波接合方法。
【請求項2】
前記新生面が露出した第1被接合部材の接合部位および前記ホーンの先端を、洗浄液が収容されてなる洗浄槽に浸漬し、前記ホーンを再度加振させて前記洗浄液を超音波振動させることによって、前記新生面が露出した第1被接合部材に残存するエッチング溶液を除去する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1被接合部材の接合部位が、アルミニウムから構成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1被接合部材の接合部位と第2被接合部材の接合部位とをホーンとアンビルとの間に挟み込み、前記ホーンを加振させることによって接合部位同士を超音波接合する超音波接合装置であって、
前記ホーンが接触する側の前記第1被接合部材の接合部位および前記ホーンの先端が浸漬される、エッチング溶液が収容されてなるエッチング槽と、
前記ホーンを加振させる駆動部と、
前記駆動部の作動を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記ホーンの先端が前記第1被接合部材の接合部位とともに前記エッチング槽に浸漬しているときに、前記駆動部を制御して前記ホーンを加振させ、前記エッチング溶液を超音波振動させることによって、前記第1被接合部材の接合部位を超音波エッチングして新生面を露出させる、超音波接合装置。
【請求項5】
前記第1被接合部材の接合部位および前記ホーンの先端が浸漬される、洗浄液が収容されてなる洗浄槽をさらに有し、
前記制御部は、前記ホーンの先端が前記第1被接合部材の接合部位とともに前記洗浄槽に浸漬しているときに、前記駆動部を制御して前記ホーンを加振させ、前記洗浄液を超音波振動させることによって、前記新生面が露出した前記第1被接合部材に残存する前記エッチング溶液を除去する、請求項4に記載の超音波接合装置。
【請求項6】
前記第1被接合部材の接合部位が、アルミニウムから構成される、請求項4または5に記載の超音波接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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