超音波映像装置および超音波映像処理方法
【課題】本発明の超音波映像装置は、対象体から反射される超音波信号のI/Q信号から信号特性値を算出して、その算出された信号特性値の比較によって、前記I/Q信号からクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別するロジックを提供する。これにより、この超音波映像装置は、対象体の血流分布を従来より正確に映像化してユーザに提供することができる。
【解決手段】超音波信号を対象体に送出して、前記対象体から反射される超音波信号を受信し、前記受信した超音波信号を超音波映像内の各映像のピクセルに対応するI/Q信号に変換する信号変換部と、前記I/Q信号を周波数領域の信号に変換して、前記変換されたI/Q信号に対する複数の信号特性値により、前記I/Q信号からクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別する制御部とを備える超音波映像装置。
【解決手段】超音波信号を対象体に送出して、前記対象体から反射される超音波信号を受信し、前記受信した超音波信号を超音波映像内の各映像のピクセルに対応するI/Q信号に変換する信号変換部と、前記I/Q信号を周波数領域の信号に変換して、前記変換されたI/Q信号に対する複数の信号特性値により、前記I/Q信号からクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別する制御部とを備える超音波映像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適応的クラッタフィルタリングを実行する超音波映像装置および超音波映像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波映像装置は、人体に超音波を発射し、血流から反射される超音波エコー信号のドップラシフト(doppler shift)周波数を測定することによって、血流の分布をリアルタイムで検出して表示する装置である。
【0003】
かかる装置では、発射される超音波を血流にフォーカシングして集中させても、一部は望まない方向に伝播してしまう。その結果、エコー信号には、血流からの反射信号だけでなく血流以外の組織からの不要な信号も一緒に混ざって戻ってくる。この時、一般的に血流から戻ってくるエコー信号をドップラ信号、その他の組織から戻ってくる望まない信号をクラッタ信号(clutter signal)という。
【0004】
一般に、超音波をフォーカシングすれば、焦点(focal point)に大部分のエネルギーが伝達され、その外側に漏れる超音波信号のエネルギーは極僅かである。しかしながら、対象体が血流の場合、血流の超音波反射率(reflectivity)が周辺組織(血管壁、筋肉など)に比べて極めて小さいため、血流からのドップラ信号よりもクラッタ信号の方がより大きくなる場合が多い。
【0005】
したがって、従来の超音波システムでは、カラードップラモードを実行する際にクラッタ信号を効果的に除去するため、数々のクラッタフィルタリング方法を用いている。
【0006】
このようなクラッタフィルタリング方法には、カットオフ(cutoff)特性が予め設定されたIIR(infinite impulse response)タイプのハイパスフィルタを用いる方法、DMDおよび各ピクセルの信号特性に応じて最適カットオフを選択する適応的フィルタリング方法、各ピクセル当りのアンサンブルデータ(ensemble data)自体の成分を分解(decomposition)して、クラッタ信号を除去する方法などがある。
【0007】
しかしながら、これらの方法では、大部分がクラッタフィルタリングを適用する前の信号についての分散(variance)、平均周波数(mean frequency)およびパワー(power)を用いるか、あるいは、分解された信号の分散、平均周波数およびパワーを用いている。
【0008】
本発明では、I/Q信号を周波数領域の信号に変換した後、その変換されたI/Q信号の特性に応じてクラッタ成分を除去するためのクラッタフィルタの決定を行うロジック(decision logic)について述べる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明では、周波数領域の信号に変換されたI/Q信号の信号特性値を算出し、それらの大きさを比較してクラッタフィルタリングを適応的に実行する超音波映像装置および超音波映像処理方法を提供する。
【0010】
また、本発明では、周波数領域の信号に変換されたI/Q信号の特異値分解された複数のサブ行列のうち、前記I/Q信号の信号特性値に基づいてクラッタフィルタリングが必要でないサブ行列を選別して、超音波映像のカラーフロー映像を形成する超音波映像装置および超音波映像処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面によれば、超音波映像装置は、超音波信号を対象体に送出して、前記対象体から反射される超音波信号を受信し、前記受信した超音波信号を超音波映像内の各映像のピクセルに対応するI/Q信号に変換する信号変換部と、前記I/Q信号を周波数領域(frequency domain)の信号に変換して、前記変換されたI/Q信号に対する複数の信号特性値に基づいて、前記I/Q信号からクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別する制御部とを備えている。
【0012】
また、前記制御部は、前記信号変換部によって変換されたI/Q信号を特異値分解して複数のサブ行列を生成し、前記複数のサブ行列のそれぞれに対する複数の信号特性値に基づいて、前記複数のサブ行列のうち、クラッタフィルタリングが必要でないサブ行列を選択して、前記選択されたサブ行列を用いて、前記超音波映像のカラーフロー映像を形成する。
【0013】
本発明の他の側面によれば、超音波信号を対象体に送出して、前記対象体から反射される超音波信号をI/Q信号に変換するステップと、前記I/Q信号を周波数領域の信号に変換して、前記変換されたI/Q信号の複数の信号特性値を算出するステップと、前記複数の信号特性値を比較して、前記I/Q信号からクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別(決定)するステップと、前記判別(決定)により、前記I/Q信号にクラッタフィルタリングを適用するステップとを含む超音波映像処理方法を提供することができる。
【0014】
本発明の更なる他の側面によれば、超音波信号を対象体に送出して、前記対象体から反射される超音波信号をI/Q信号に変換するステップと、前記I/Q信号を特異値分解して、複数のサブ行列を生成するステップと、前記複数のサブ行列のそれぞれを周波数領域のサブ行列に変換して、前記変換された複数のサブ行列のそれぞれに対し複数の信号特性値を算出するステップと、前記複数の信号特性値の比較によって、前記複数のサブ行列のうち、クラッタ成分を除去する必要がないサブ行列を選択するステップと、前記選択されたサブ行列を用いて、超音波映像のカラーフロー映像を形成するステップとを含む超音波映像処理方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態によれば、対象体から反射して戻ってきた超音波エコー信号の信号特性値に基づいて、I/Q信号をクラッタフィルタリングするか、または、I/Q信号のサブ行列を選別することによって、ユーザにより正確な超音波信号のカラーフロー映像を提供することができる。
【0016】
また、本発明の実施形態には、レガシーフィルタリング方法、特異値分解方法、固有値(eigen)分解方法の全て適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る超音波映像装置の構成を示す図である。
【図2a】本発明の一実施形態に係る超音波映像装置において、周波数領域の信号に変換されたI/Q信号を示すグラフである。
【図2b】本発明の一実施形態に係る超音波映像装置で算出された信号特性値の比較条件を示す表である。
【図3】図1に示した制御部の構成の実施形態を示す図である。
【図4a】本発明の一実施形態に係る超音波映像装置において周波数領域の信号に変換された異なるI/Q信号を説明するための図である。
【図4b】本発明の一実施形態に係る超音波映像装置において周波数領域の信号に変換されたI/Q信号を説明するための図である。
【図5】図1に示した制御部の構成の他の実施形態を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る超音波映像装置において周波数領域の信号に変換された他のI/Q信号を示すグラフである。
【図7】本発明の一実施形態に係る超音波映像処理方法を説明するための図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る超音波映像処理方法を説明するための図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る超音波映像処理方法を説明するための図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る超音波映像処理方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を添付する図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る超音波映像装置の構成を示す図である。
【0020】
図1を参照すると、超音波映像装置は、信号変換部100、メモリ110、制御部120、ユーザ入力部130および表示部140を備えている。
【0021】
信号変換部100は、超音波信号を対象体に送出して、対象体から反射される超音波信号(すなわち、超音波エコー信号)を受信し、その受信した超音波信号を超音波映像内の各映像のピクセルに対応するI/Q信号(in−phase/quadrature−phase signal)に変換して出力する。この時、I/Q信号には、ドップラ成分だけでなくクラッタ成分も含まれている。
【0022】
信号変換部100は、アンサンブルナンバ(ensemble number)にしたがって、順番にかつ繰り返し送信信号の形成を行って複数の送信信号を生成する。次に、信号変換部100は、この生成された送信信号を超音波信号に変換して対象体に送信する。そして、信号変換部100は、対象体から反射して戻ってきた超音波エコー信号を受信すると、その超音波エコー信号をデジタル信号に変換し、更に、超音波映像内の各映像のピクセルに対応するI/Q信号に変換する。
【0023】
メモリ110は、本発明の一実施形態に係る超音波映像システムの実行手順を格納している。このメモリ110は、通常のハードディスク、RAMおよびROMのうちの1つ以上によって実現することができる。
【0024】
制御部120は、信号変換部100によって変換および出力されたI/Q信号を周波数領域の信号に変換し、その変換されたI/Q信号に対する複数の信号特性値に基づいて、I/Q信号のクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別する。
【0025】
この信号特性値には、周波数領域の信号に変換されたI/Q信号の平均値(mean)、中央値(median)および最頻値(mode)のうちの1つ以上が含まれる。
【0026】
制御部120は、変換されたI/Q信号の各周波数成分の大きさ(x軸が周波数を示し、y軸が大きさ(Magnitude)を示す。)を求めて、その値から周波数の平均値、中間値および最頻値を算出する。
【0027】
ここで、最頻値は、アンサンブルデータをフーリエ変換(FFT変換)して得た周波数データのうち、y軸での大きさが最大になる点の周波数をいう。
【0028】
図2aは、周波数領域の信号に変換されたI/Q信号およびその信号特性値を示す図である。
【0029】
図2aを参照すると、曲線Aは、任意のアンサンブルナンバのI/Q信号を周波数領域の信号に変換したものである。この曲線Aで、aは平均値を、bは中央値を、cは、最頻値(頻度が最も高い数、すなわち、ヒストグラムで最も尖った所)を表す。
【0030】
制御部120は、上記のような信号特性値の大きさを比較して、I/Q信号からクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別する。
【0031】
図2bは、上記の判別に必要な比較条件を羅列して示す表である。
【0032】
図2bで、制御部120は、複数の信号特性値の大きさを比較し、その結果が、[最頻値<中央値<平均値]、[最頻値<平均値<中央値]および[中央値<最頻値<平均値]のうちのいずれか1つの条件(以下、「第1条件」と称する。)を満たす場合には、I/Q信号からクラッタ成分を除去する必要があると判断する。
【0033】
これに対して、制御部120は、大きさを比較した結果が、[平均値<中央値<最頻値]、[中央値<平均値<最頻値]および[平均値<最頻値<中央値]のうちのいずれか1つの条件(以下、「第2条件」と称する。)を満たす場合には、I/Q信号からクラッタ成分を除去する必要はないと判断する。
【0034】
一方、制御部120は、このような信号特性値を用いてI/Q信号の偏重分布形態を推定する。すなわち、制御部120は、複数の信号特性値の比較によって、変換されたI/Q信号の周波数領域内の曲線の偏重分布形態を推定し、その推定された偏重分布形態の偏重方向(例えば、右側)によって、I/Q信号からクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別することができる。
【0035】
制御部120は、I/Q信号からクラッタ成分を除去するために、レガシークラッタフィルタ(Legacy Clutter Filter)、または、ハンケル特異値分解(Hankel Singular Value Decomposition、Hankel SVD)を用いることができる。
【0036】
図3は、図1の制御部120がレガシークラッタフィルタを用いる場合の構成の実施形態を示す図である。
【0037】
図3の場合、メモリ110は、複数のクラッタフィルタリングの手順を格納するとともに、その複数の各クラッタフィルタリングに対応するインデックスおよびカットオフも格納している。また、インデックスは、カットオフの大きさによって順序付けを行なう。
【0038】
図3において、制御部121は、周波数領域変換部121a、特性値算出部121b、フィルタリング処理部121cおよび映像形成部121dを備えている。
【0039】
周波数領域変換部121aは、信号変換部100によって出力されたI/Q信号のうち、任意のアンサンブルデータに対するI/Q信号に対して高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier transform)を行い、周波数領域の信号に変換する。
【0040】
特性値算出部121bは、周波数領域の信号に変換されたI/Q信号に基づいて、複数の信号特性値を算出する。
【0041】
言い換えれば、特性値算出部121bは、自己相関(Autocorrelation)を用いて、周波数領域の信号に変換されたI/Q信号から平均周波数および分散を算出する。また、特性値算出部121bは、算出された平均周波数、分散およびフーリエ変換次数(FFT order)を用いて、周波数領域の信号に変換されたI/Q信号の信号特性値を算出する。
【0042】
図4aおよび図4bは、周波数領域の信号に変換されたI/Q信号およびその信号特性値を説明するための図である。
【0043】
特に、図4aは、超音波システムで広く用いられている自己相関方法を用いて計算されたデータを、また、図4bは、図4aのようなアンサンブルデータに対して高速フーリエ変換(FFT)を行った結果を示す。
【0044】
中央値は、図4aのグラフに対して高速フーリエ変換(FFT)を行って得た図4bのグラフにおいて、x軸(周波数領域)上の中央点の値を用いる。また、最頻値は、y軸(縦軸)で最も大きい値を有するx軸(周波数領域)の値を用いる。
【0045】
図4bを参照すると、変換されたアンサンブルナンバのI/Q信号は、a1の周波数で平均値を、b1の周波数で中央値を、c1の周波数で最頻値を有することが分かる。
【0046】
特に、x軸(周波数領域)の最大値は0.47であるため、中央値は0.235(0.47/2)となる。最大値は、図4bで最大値(頂点)を有するx軸(周波数領域)の値であり、同図において、実際値は0.0625となる。また、平均値は、上の特性を有するIおよびQデータを自己相関して得た平均値であり、本実施形態では0.0473となる。
【0047】
従って、信号特性値(a1、b1、c1)は、第1条件の[最頻値<平均値<中央値]に該当することが分かる。
【0048】
フィルタリング処理部121cは、特性値算出部121bによって算出された複数の信号特性値を用いて、I/Q信号からクラッタ成分を除去するか否かを判断し、クラッタ成分の除去が必要な場合、メモリ110に格納された複数のクラッタフィルタリングをI/Q信号に適用する。
【0049】
この時、フィルタリング処理部121cは、複数の信号特性値の大きさを比較して、比較結果が第1条件を満たす場合、I/Q信号にクラッタ成分の除去を行う必要があると判断する。
【0050】
このようにしてクラッタ成分の除去が必要であると判断されれば、フィルタリング処理部121cは、予め設定されたインデックス、または、予め設定されたカットオフのクラッタフィルタリングをI/Q信号に適用する。この時、I/Q信号に予め設定されたインデックスのクラッタフィルタリングが既に適用されていた場合、フィルタリング処理部121cは、次の(以前に使用したものとは別の)インデックスのクラッタフィルタリングをI/Q信号に適用する。
【0051】
一方、比較結果が第1条件を満たさない場合は、フィルタリング処理部121cは、I/Q信号からクラッタを除去する必要がないものと判断し、I/Q信号にクラッタフィルタリングを適用しない。
【0052】
すなわち、比較結果が第1条件を満たさない場合には、I/Q信号に最小限のクラッタ成分の除去が必要であると判断し、フィルタリング処理部121cは、最も低いカットオフのクラッタフィルタリングを適用する。
【0053】
映像形成部121dは、フィルタリング処理部121cによって最終フィルタリングされたI/Q信号を用いて、超音波映像のカラーフロー映像を形成し、その映像を表示部140に転送する。
【0054】
一方、制御部120は、ハンケル特異値分解(Hankel Singular Value Decomposition:Hankel SVD)を用いて、I/Q信号のクラッタフィルタリングを実行することもできる。
【0055】
図5は、図1の制御部がハンケル特異値分解を用いる場合の実施形態を示す図である。
この場合、制御部122は、信号変換部100によって変換されたI/Q信号を特異値分解して複数のサブ行列を生成し、その複数のサブ行列のそれぞれに対する複数の信号特性値に基づいて、複数のサブ行列のうち、クラッタフィルタリングが必要でないサブ行列を選択して、選択されたサブ行列を用いて、超音波映像のカラーフロー映像を形成する。
【0056】
この制御部122は、図5に示すように、特異値分解処理部122a、特性値算出部122b、行列選択部122cおよび映像形成部122dを備えている。
【0057】
特異値分解処理部122aは、信号変換部100によって変換されたI/Q信号を特異値分解し、その分解されたI/Q信号に対する複数のサブ行列を生成する。
【0058】
特性値算出部122bは、特異値分解処理部122aによって生成された複数のサブ行列のそれぞれに対して高速フーリエ変換(FFT)を行って、それぞれの変換されたデータを用いて、各サブ行列に対応する複数の信号特性値を算出する。
【0059】
図6は、任意のサブ行列が周波数領域のサブ行列に変換されたグラフおよびその信号特性値を示す。
【0060】
図6を参照すると、周波数領域のサブ行列(データ)に変換されたサブ行列に対する基準周波数(Norm.Freq)および大きさ(Magnitude)(dB)が示されている。ここで、サブ行列は、周波数において平均値がa2、中央値がb2、最頻値がc2の信号特性値を有する。この図から信号特性値(a2、b2、c2)は、第2条件の[中央値<平均値<最頻値]を満たすことが分かる。
【0061】
行列選択部122cは、特性値算出部122bによって算出された複数の信号特性値(a2、b2、c2)および第2条件に基づいて、複数のサブ行列のうちクラッタフィルタリングを適用する必要がないサブ行列を選択する。
【0062】
すなわち、行列選択部122cは、複数のサブ行列のそれぞれに対する複数の信号特性値の大きさを比較して、比較結果が第2条件に該当するか否かを判別し、複数のサブ行列のうち、クラッタフィルタリングを適用する必要がないサブ行列を選択する。
【0063】
映像形成部122dは、行列選択部122cによって選択されたサブ行列を用いて、超音波映像のカラーフロー映像を形成し、その形成されたカラーフロー映像を表示部140に転送する。
【0064】
また、ユーザ入力部130は、ユーザの入力情報を受信するインタフェースを提供する。本実施形態において、インタフェースは、対象体のBモード(brightness mode)映像に設定される関心領域(すなわち、カラーボックス)の領域および位置情報をユーザが選択できるようにする。ユーザ入力部130は、コントロールパネル(control panel)、マウス(mouse)、キーボード(keyboard)等を備えている。
【0065】
表示部140は、制御部120によって形成されたカラーフロー映像を表示する。
【0066】
以上説明したように、I/Q信号にクラッタフィルタリングを何度も繰り返し行ってカラーフロー映像を形成する(図3の場合)か、または、クラッタフィルタリングを適用する必要がないサブ行列によってカラーフロー映像を形成する(図5の場合)ことにより、より正確な超音波映像をユーザに提供することができる。
【0067】
図7は、本発明の一実施形態に係る超音波映像処理方法を示す図である。この場合、超音波映像処理を行う装置の制御部は、レガシークラッタフィルタを用いている。また、装置のメモリには、複数のクラッタフィルタリングの手順と、複数の各クラッタフィルタリングに対応するインデックスおよびそれぞれのカットオフとが格納されている。
【0068】
図7において、ステップS700では、超音波信号を対象体に送出して、対象体から反射される超音波信号をI/Q信号に変換する。また、ステップS700では、変換されたI/Q信号で任意のアンサンブルデータに対するI/Q信号に対して高速フーリエ変換を行って、周波数領域の信号(周波数領域のI/Q信号)に変換する。
【0069】
ステップS710では、ステップS700で変換されたI/Q信号から複数の信号特性値を算出する。この信号特性値は、I/Q信号の平均値、中央値および最頻値を含む。
【0070】
ステップS720では、ステップS710で算出された信号特性値に基づいて、I/Q信号のクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別し、クラッタ成分の除去が必要な場合は、I/Q信号にクラッタフィルタリングを適用する。
【0071】
この時、ステップS720では、図8に示すような複数の操作を実行する。
【0072】
図8に示すように、ステップS721では、ステップS710で算出された複数の信号特性値の大きさを比較する。
【0073】
ステップS722では、ステップS721の比較結果が予め設定された第1条件のいずれを満たすのかを判断する。ここで、第1条件は[最頻値<中央値<平均値]、[最頻値<平均値<中央値]および[中央値<最頻値<平均値]のうちのいずれか1つの条件を意味する。
【0074】
ステップS722での判断の結果、比較結果が第1条件を満たす場合、ステップS723では、予め設定されたインデックスのクラッタフィルタリングをI/Q信号に適用する。
【0075】
ステップS724では、ステップS723でフィルタリングされたI/Q信号を高速フーリエ変換して周波数領域の信号に変換し、複数の信号特性値を再計算する。
【0076】
ステップS725では、ステップS724で再計算された複数の信号特性値の大きさを比較する。また、ステップS726では、ステップS725の比較結果が第1条件を満たすか否かを判別する。
【0077】
ステップS726での判断の結果、ステップS725の比較結果が第1条件を満たす場合、ステップS727では、既にクラッタフィルタリングされたI/Q信号に、次の(別の)インデックスを有するフィルタリングを再び適用する。
【0078】
一方、ステップS722での判断において、比較結果が第1条件を満たさない場合には、ステップS728では、I/Q信号に最小限のクラッタ成分の除去を行う必要があると判断し、最も低いカットオフのクラッタフィルタリングを適用する。
【0079】
このようにして、ステップS721からステップS728までの操作を通してステップS700で周波数領域の信号に変換されたI/Q信号が予め設定された第1条件を満たすようになるまで、クラッタフィルタリングを繰り返し行う。
【0080】
一方、ステップS730では、ステップS720で最終フィルタリングされたI/Q信号を用いて、超音波映像のカラーフロー映像を形成し、その形成されたカラーフロー映像を表示する。
【0081】
これにより、ステップS730で表示されるカラーフロー映像は、1回またはそれ以上繰り返し行われたクラッタフィルタリングによって、クラッタ成分が除去された信号によって形成される。このため、本方法を用いた超音波映像装置は、従来より正確な超音波映像をユーザに提供することができる。
【0082】
図9は、本発明の他の実施形態に係る超音波映像処理方法を示すフローチャートである。この方法では、ハンケル特異値分解を用いて、I/Q信号からクラッタ成分を除去する。
【0083】
図9を参照すると、ステップS900では、超音波信号を対象体に送出して、対象体から反射される超音波信号をI/Q信号に変換し、その変換されたI/Q信号を特異値分解する。
【0084】
ステップS910では、前述のように、特異値分解されたI/Q信号から複数のサブ行列を生成する。
【0085】
次に、ステップS920では、ステップS910で生成された複数のサブ行列に対して、それぞれ信号特性値を算出し、その複数の信号特性値に基づいて、複数のサブ行列のうち、クラッタフィルタリングを適用する必要がないサブ行列を選択する。
【0086】
この時、ステップS920では、図10に示すような複数のステップを実行する。
【0087】
図10を参照すると、ステップS921において、複数のサブ行列のそれぞれを、高速フーリエ変換によって周波数領域のサブ行列(信号)に変換する。
【0088】
次に、ステップS922では、ステップS921で変換された各サブ行列から複数の信号特性値を算出する。ここで、複数の信号特性値は、各サブ行列に対する平均値、中央値および最頻値を含む。
【0089】
ステップS923では、ステップS922で算出された複数の信号特性値の大きさを互いに比較する。そして、次のステップS924において、ステップS923での比較結果が予め設定された第2条件を満たすか否かを判断する。ここで、第2条件とは、[平均値<中央値<最頻値]、[中央値<平均値<最頻値]および[平均値<最頻値<中央値]のうちのいずれか1つの条件を満たすことを意味する。
【0090】
ステップS924で比較結果が第2条件を満たす場合、次のステップS925では、その条件に該当するサブ行列を、クラッタフィルタリングを適用する必要がないサブ行列として選択する。これに対して、比較結果が第2条件を満たさない場合は、ステップS925では、第2条件を満たさない比較結果に該当するサブ行列を選択しない。
【0091】
ステップS925では、ステップS923で全てのサブ行列の信号特性値が比較および処理されたか否かを判断し、全てのサブ行列が処理されなかった場合、ステップS923が再度実行される。再度実行されたステップS923では、次のサブ行列の信号特性値の大きさを比較する。
【0092】
その結果、ステップS921〜ステップS925を通して、複数のサブ行列のそれぞれに対する複数の信号特性値に基づいて、複数のサブ行列のうち、クラッタフィルタリングを適用する必要がないサブ行列を選別する。
【0093】
一方、ステップS930では、ステップS920で選択されたサブ行列を用いて、超音波映像のカラーフロー映像を形成して表示する。
【0094】
これによって、ステップS930で表示されたカラーフロー映像は、I/Q信号の複数のサブ行列のうち、クラッタフィルタリングを適用する必要がないサブ行列によって形成される。このため、この方法で処理された超音波映像装置はより正確な超音波映像をユーザに提供することができる。
【0095】
なお、本発明の実施形態は、多様なコンピュータ手段によって実現することのできるプログラム命令形態によって実現され、コンピュータ読み出し可能媒体に記録される。コンピュータ読み出し可能媒体は、プログラム命令、データファイル、データ構造などを単独でまたは組み合わせて備えることもできる。媒体に記録されるプログラム命令は、本発明のために特別に設計して構成されたものであっても、あるいはコンピュータソフトウェアの当業者に公知されている使用可能なものであってもよい。
【0096】
上述したように、本発明では、具体的な構成要素などの特定事項と限定される実施形態および図面によって説明したが、これは本発明のより全般的な理解を助けるために提供したものに過ぎない。したがって、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、その概念に基づいて多様な修正および変形が可能である。したがって、本発明の思想は、上記実施形態に限定して解釈されてはならず、その範疇には、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形のある全てのものが属するといえる。
【符号の説明】
【0097】
100 :信号変換部
110 :メモリ
120 :制御部
121 :制御部
121a:周波数領域変換部
121b:特性値算出部
121c:フィルタリング処理部
121d:映像形成部
122 :制御部
122a:特異値分解処理部
122b:特性値算出部
122c:行列選択部
122d:映像形成部
130 :ユーザ入力部
140 :表示部
S700、S710、S720〜S726、S730:ステップ
S900、S910、S920〜S926、S930:ステップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、適応的クラッタフィルタリングを実行する超音波映像装置および超音波映像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波映像装置は、人体に超音波を発射し、血流から反射される超音波エコー信号のドップラシフト(doppler shift)周波数を測定することによって、血流の分布をリアルタイムで検出して表示する装置である。
【0003】
かかる装置では、発射される超音波を血流にフォーカシングして集中させても、一部は望まない方向に伝播してしまう。その結果、エコー信号には、血流からの反射信号だけでなく血流以外の組織からの不要な信号も一緒に混ざって戻ってくる。この時、一般的に血流から戻ってくるエコー信号をドップラ信号、その他の組織から戻ってくる望まない信号をクラッタ信号(clutter signal)という。
【0004】
一般に、超音波をフォーカシングすれば、焦点(focal point)に大部分のエネルギーが伝達され、その外側に漏れる超音波信号のエネルギーは極僅かである。しかしながら、対象体が血流の場合、血流の超音波反射率(reflectivity)が周辺組織(血管壁、筋肉など)に比べて極めて小さいため、血流からのドップラ信号よりもクラッタ信号の方がより大きくなる場合が多い。
【0005】
したがって、従来の超音波システムでは、カラードップラモードを実行する際にクラッタ信号を効果的に除去するため、数々のクラッタフィルタリング方法を用いている。
【0006】
このようなクラッタフィルタリング方法には、カットオフ(cutoff)特性が予め設定されたIIR(infinite impulse response)タイプのハイパスフィルタを用いる方法、DMDおよび各ピクセルの信号特性に応じて最適カットオフを選択する適応的フィルタリング方法、各ピクセル当りのアンサンブルデータ(ensemble data)自体の成分を分解(decomposition)して、クラッタ信号を除去する方法などがある。
【0007】
しかしながら、これらの方法では、大部分がクラッタフィルタリングを適用する前の信号についての分散(variance)、平均周波数(mean frequency)およびパワー(power)を用いるか、あるいは、分解された信号の分散、平均周波数およびパワーを用いている。
【0008】
本発明では、I/Q信号を周波数領域の信号に変換した後、その変換されたI/Q信号の特性に応じてクラッタ成分を除去するためのクラッタフィルタの決定を行うロジック(decision logic)について述べる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明では、周波数領域の信号に変換されたI/Q信号の信号特性値を算出し、それらの大きさを比較してクラッタフィルタリングを適応的に実行する超音波映像装置および超音波映像処理方法を提供する。
【0010】
また、本発明では、周波数領域の信号に変換されたI/Q信号の特異値分解された複数のサブ行列のうち、前記I/Q信号の信号特性値に基づいてクラッタフィルタリングが必要でないサブ行列を選別して、超音波映像のカラーフロー映像を形成する超音波映像装置および超音波映像処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面によれば、超音波映像装置は、超音波信号を対象体に送出して、前記対象体から反射される超音波信号を受信し、前記受信した超音波信号を超音波映像内の各映像のピクセルに対応するI/Q信号に変換する信号変換部と、前記I/Q信号を周波数領域(frequency domain)の信号に変換して、前記変換されたI/Q信号に対する複数の信号特性値に基づいて、前記I/Q信号からクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別する制御部とを備えている。
【0012】
また、前記制御部は、前記信号変換部によって変換されたI/Q信号を特異値分解して複数のサブ行列を生成し、前記複数のサブ行列のそれぞれに対する複数の信号特性値に基づいて、前記複数のサブ行列のうち、クラッタフィルタリングが必要でないサブ行列を選択して、前記選択されたサブ行列を用いて、前記超音波映像のカラーフロー映像を形成する。
【0013】
本発明の他の側面によれば、超音波信号を対象体に送出して、前記対象体から反射される超音波信号をI/Q信号に変換するステップと、前記I/Q信号を周波数領域の信号に変換して、前記変換されたI/Q信号の複数の信号特性値を算出するステップと、前記複数の信号特性値を比較して、前記I/Q信号からクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別(決定)するステップと、前記判別(決定)により、前記I/Q信号にクラッタフィルタリングを適用するステップとを含む超音波映像処理方法を提供することができる。
【0014】
本発明の更なる他の側面によれば、超音波信号を対象体に送出して、前記対象体から反射される超音波信号をI/Q信号に変換するステップと、前記I/Q信号を特異値分解して、複数のサブ行列を生成するステップと、前記複数のサブ行列のそれぞれを周波数領域のサブ行列に変換して、前記変換された複数のサブ行列のそれぞれに対し複数の信号特性値を算出するステップと、前記複数の信号特性値の比較によって、前記複数のサブ行列のうち、クラッタ成分を除去する必要がないサブ行列を選択するステップと、前記選択されたサブ行列を用いて、超音波映像のカラーフロー映像を形成するステップとを含む超音波映像処理方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態によれば、対象体から反射して戻ってきた超音波エコー信号の信号特性値に基づいて、I/Q信号をクラッタフィルタリングするか、または、I/Q信号のサブ行列を選別することによって、ユーザにより正確な超音波信号のカラーフロー映像を提供することができる。
【0016】
また、本発明の実施形態には、レガシーフィルタリング方法、特異値分解方法、固有値(eigen)分解方法の全て適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る超音波映像装置の構成を示す図である。
【図2a】本発明の一実施形態に係る超音波映像装置において、周波数領域の信号に変換されたI/Q信号を示すグラフである。
【図2b】本発明の一実施形態に係る超音波映像装置で算出された信号特性値の比較条件を示す表である。
【図3】図1に示した制御部の構成の実施形態を示す図である。
【図4a】本発明の一実施形態に係る超音波映像装置において周波数領域の信号に変換された異なるI/Q信号を説明するための図である。
【図4b】本発明の一実施形態に係る超音波映像装置において周波数領域の信号に変換されたI/Q信号を説明するための図である。
【図5】図1に示した制御部の構成の他の実施形態を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る超音波映像装置において周波数領域の信号に変換された他のI/Q信号を示すグラフである。
【図7】本発明の一実施形態に係る超音波映像処理方法を説明するための図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る超音波映像処理方法を説明するための図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る超音波映像処理方法を説明するための図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る超音波映像処理方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を添付する図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る超音波映像装置の構成を示す図である。
【0020】
図1を参照すると、超音波映像装置は、信号変換部100、メモリ110、制御部120、ユーザ入力部130および表示部140を備えている。
【0021】
信号変換部100は、超音波信号を対象体に送出して、対象体から反射される超音波信号(すなわち、超音波エコー信号)を受信し、その受信した超音波信号を超音波映像内の各映像のピクセルに対応するI/Q信号(in−phase/quadrature−phase signal)に変換して出力する。この時、I/Q信号には、ドップラ成分だけでなくクラッタ成分も含まれている。
【0022】
信号変換部100は、アンサンブルナンバ(ensemble number)にしたがって、順番にかつ繰り返し送信信号の形成を行って複数の送信信号を生成する。次に、信号変換部100は、この生成された送信信号を超音波信号に変換して対象体に送信する。そして、信号変換部100は、対象体から反射して戻ってきた超音波エコー信号を受信すると、その超音波エコー信号をデジタル信号に変換し、更に、超音波映像内の各映像のピクセルに対応するI/Q信号に変換する。
【0023】
メモリ110は、本発明の一実施形態に係る超音波映像システムの実行手順を格納している。このメモリ110は、通常のハードディスク、RAMおよびROMのうちの1つ以上によって実現することができる。
【0024】
制御部120は、信号変換部100によって変換および出力されたI/Q信号を周波数領域の信号に変換し、その変換されたI/Q信号に対する複数の信号特性値に基づいて、I/Q信号のクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別する。
【0025】
この信号特性値には、周波数領域の信号に変換されたI/Q信号の平均値(mean)、中央値(median)および最頻値(mode)のうちの1つ以上が含まれる。
【0026】
制御部120は、変換されたI/Q信号の各周波数成分の大きさ(x軸が周波数を示し、y軸が大きさ(Magnitude)を示す。)を求めて、その値から周波数の平均値、中間値および最頻値を算出する。
【0027】
ここで、最頻値は、アンサンブルデータをフーリエ変換(FFT変換)して得た周波数データのうち、y軸での大きさが最大になる点の周波数をいう。
【0028】
図2aは、周波数領域の信号に変換されたI/Q信号およびその信号特性値を示す図である。
【0029】
図2aを参照すると、曲線Aは、任意のアンサンブルナンバのI/Q信号を周波数領域の信号に変換したものである。この曲線Aで、aは平均値を、bは中央値を、cは、最頻値(頻度が最も高い数、すなわち、ヒストグラムで最も尖った所)を表す。
【0030】
制御部120は、上記のような信号特性値の大きさを比較して、I/Q信号からクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別する。
【0031】
図2bは、上記の判別に必要な比較条件を羅列して示す表である。
【0032】
図2bで、制御部120は、複数の信号特性値の大きさを比較し、その結果が、[最頻値<中央値<平均値]、[最頻値<平均値<中央値]および[中央値<最頻値<平均値]のうちのいずれか1つの条件(以下、「第1条件」と称する。)を満たす場合には、I/Q信号からクラッタ成分を除去する必要があると判断する。
【0033】
これに対して、制御部120は、大きさを比較した結果が、[平均値<中央値<最頻値]、[中央値<平均値<最頻値]および[平均値<最頻値<中央値]のうちのいずれか1つの条件(以下、「第2条件」と称する。)を満たす場合には、I/Q信号からクラッタ成分を除去する必要はないと判断する。
【0034】
一方、制御部120は、このような信号特性値を用いてI/Q信号の偏重分布形態を推定する。すなわち、制御部120は、複数の信号特性値の比較によって、変換されたI/Q信号の周波数領域内の曲線の偏重分布形態を推定し、その推定された偏重分布形態の偏重方向(例えば、右側)によって、I/Q信号からクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別することができる。
【0035】
制御部120は、I/Q信号からクラッタ成分を除去するために、レガシークラッタフィルタ(Legacy Clutter Filter)、または、ハンケル特異値分解(Hankel Singular Value Decomposition、Hankel SVD)を用いることができる。
【0036】
図3は、図1の制御部120がレガシークラッタフィルタを用いる場合の構成の実施形態を示す図である。
【0037】
図3の場合、メモリ110は、複数のクラッタフィルタリングの手順を格納するとともに、その複数の各クラッタフィルタリングに対応するインデックスおよびカットオフも格納している。また、インデックスは、カットオフの大きさによって順序付けを行なう。
【0038】
図3において、制御部121は、周波数領域変換部121a、特性値算出部121b、フィルタリング処理部121cおよび映像形成部121dを備えている。
【0039】
周波数領域変換部121aは、信号変換部100によって出力されたI/Q信号のうち、任意のアンサンブルデータに対するI/Q信号に対して高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier transform)を行い、周波数領域の信号に変換する。
【0040】
特性値算出部121bは、周波数領域の信号に変換されたI/Q信号に基づいて、複数の信号特性値を算出する。
【0041】
言い換えれば、特性値算出部121bは、自己相関(Autocorrelation)を用いて、周波数領域の信号に変換されたI/Q信号から平均周波数および分散を算出する。また、特性値算出部121bは、算出された平均周波数、分散およびフーリエ変換次数(FFT order)を用いて、周波数領域の信号に変換されたI/Q信号の信号特性値を算出する。
【0042】
図4aおよび図4bは、周波数領域の信号に変換されたI/Q信号およびその信号特性値を説明するための図である。
【0043】
特に、図4aは、超音波システムで広く用いられている自己相関方法を用いて計算されたデータを、また、図4bは、図4aのようなアンサンブルデータに対して高速フーリエ変換(FFT)を行った結果を示す。
【0044】
中央値は、図4aのグラフに対して高速フーリエ変換(FFT)を行って得た図4bのグラフにおいて、x軸(周波数領域)上の中央点の値を用いる。また、最頻値は、y軸(縦軸)で最も大きい値を有するx軸(周波数領域)の値を用いる。
【0045】
図4bを参照すると、変換されたアンサンブルナンバのI/Q信号は、a1の周波数で平均値を、b1の周波数で中央値を、c1の周波数で最頻値を有することが分かる。
【0046】
特に、x軸(周波数領域)の最大値は0.47であるため、中央値は0.235(0.47/2)となる。最大値は、図4bで最大値(頂点)を有するx軸(周波数領域)の値であり、同図において、実際値は0.0625となる。また、平均値は、上の特性を有するIおよびQデータを自己相関して得た平均値であり、本実施形態では0.0473となる。
【0047】
従って、信号特性値(a1、b1、c1)は、第1条件の[最頻値<平均値<中央値]に該当することが分かる。
【0048】
フィルタリング処理部121cは、特性値算出部121bによって算出された複数の信号特性値を用いて、I/Q信号からクラッタ成分を除去するか否かを判断し、クラッタ成分の除去が必要な場合、メモリ110に格納された複数のクラッタフィルタリングをI/Q信号に適用する。
【0049】
この時、フィルタリング処理部121cは、複数の信号特性値の大きさを比較して、比較結果が第1条件を満たす場合、I/Q信号にクラッタ成分の除去を行う必要があると判断する。
【0050】
このようにしてクラッタ成分の除去が必要であると判断されれば、フィルタリング処理部121cは、予め設定されたインデックス、または、予め設定されたカットオフのクラッタフィルタリングをI/Q信号に適用する。この時、I/Q信号に予め設定されたインデックスのクラッタフィルタリングが既に適用されていた場合、フィルタリング処理部121cは、次の(以前に使用したものとは別の)インデックスのクラッタフィルタリングをI/Q信号に適用する。
【0051】
一方、比較結果が第1条件を満たさない場合は、フィルタリング処理部121cは、I/Q信号からクラッタを除去する必要がないものと判断し、I/Q信号にクラッタフィルタリングを適用しない。
【0052】
すなわち、比較結果が第1条件を満たさない場合には、I/Q信号に最小限のクラッタ成分の除去が必要であると判断し、フィルタリング処理部121cは、最も低いカットオフのクラッタフィルタリングを適用する。
【0053】
映像形成部121dは、フィルタリング処理部121cによって最終フィルタリングされたI/Q信号を用いて、超音波映像のカラーフロー映像を形成し、その映像を表示部140に転送する。
【0054】
一方、制御部120は、ハンケル特異値分解(Hankel Singular Value Decomposition:Hankel SVD)を用いて、I/Q信号のクラッタフィルタリングを実行することもできる。
【0055】
図5は、図1の制御部がハンケル特異値分解を用いる場合の実施形態を示す図である。
この場合、制御部122は、信号変換部100によって変換されたI/Q信号を特異値分解して複数のサブ行列を生成し、その複数のサブ行列のそれぞれに対する複数の信号特性値に基づいて、複数のサブ行列のうち、クラッタフィルタリングが必要でないサブ行列を選択して、選択されたサブ行列を用いて、超音波映像のカラーフロー映像を形成する。
【0056】
この制御部122は、図5に示すように、特異値分解処理部122a、特性値算出部122b、行列選択部122cおよび映像形成部122dを備えている。
【0057】
特異値分解処理部122aは、信号変換部100によって変換されたI/Q信号を特異値分解し、その分解されたI/Q信号に対する複数のサブ行列を生成する。
【0058】
特性値算出部122bは、特異値分解処理部122aによって生成された複数のサブ行列のそれぞれに対して高速フーリエ変換(FFT)を行って、それぞれの変換されたデータを用いて、各サブ行列に対応する複数の信号特性値を算出する。
【0059】
図6は、任意のサブ行列が周波数領域のサブ行列に変換されたグラフおよびその信号特性値を示す。
【0060】
図6を参照すると、周波数領域のサブ行列(データ)に変換されたサブ行列に対する基準周波数(Norm.Freq)および大きさ(Magnitude)(dB)が示されている。ここで、サブ行列は、周波数において平均値がa2、中央値がb2、最頻値がc2の信号特性値を有する。この図から信号特性値(a2、b2、c2)は、第2条件の[中央値<平均値<最頻値]を満たすことが分かる。
【0061】
行列選択部122cは、特性値算出部122bによって算出された複数の信号特性値(a2、b2、c2)および第2条件に基づいて、複数のサブ行列のうちクラッタフィルタリングを適用する必要がないサブ行列を選択する。
【0062】
すなわち、行列選択部122cは、複数のサブ行列のそれぞれに対する複数の信号特性値の大きさを比較して、比較結果が第2条件に該当するか否かを判別し、複数のサブ行列のうち、クラッタフィルタリングを適用する必要がないサブ行列を選択する。
【0063】
映像形成部122dは、行列選択部122cによって選択されたサブ行列を用いて、超音波映像のカラーフロー映像を形成し、その形成されたカラーフロー映像を表示部140に転送する。
【0064】
また、ユーザ入力部130は、ユーザの入力情報を受信するインタフェースを提供する。本実施形態において、インタフェースは、対象体のBモード(brightness mode)映像に設定される関心領域(すなわち、カラーボックス)の領域および位置情報をユーザが選択できるようにする。ユーザ入力部130は、コントロールパネル(control panel)、マウス(mouse)、キーボード(keyboard)等を備えている。
【0065】
表示部140は、制御部120によって形成されたカラーフロー映像を表示する。
【0066】
以上説明したように、I/Q信号にクラッタフィルタリングを何度も繰り返し行ってカラーフロー映像を形成する(図3の場合)か、または、クラッタフィルタリングを適用する必要がないサブ行列によってカラーフロー映像を形成する(図5の場合)ことにより、より正確な超音波映像をユーザに提供することができる。
【0067】
図7は、本発明の一実施形態に係る超音波映像処理方法を示す図である。この場合、超音波映像処理を行う装置の制御部は、レガシークラッタフィルタを用いている。また、装置のメモリには、複数のクラッタフィルタリングの手順と、複数の各クラッタフィルタリングに対応するインデックスおよびそれぞれのカットオフとが格納されている。
【0068】
図7において、ステップS700では、超音波信号を対象体に送出して、対象体から反射される超音波信号をI/Q信号に変換する。また、ステップS700では、変換されたI/Q信号で任意のアンサンブルデータに対するI/Q信号に対して高速フーリエ変換を行って、周波数領域の信号(周波数領域のI/Q信号)に変換する。
【0069】
ステップS710では、ステップS700で変換されたI/Q信号から複数の信号特性値を算出する。この信号特性値は、I/Q信号の平均値、中央値および最頻値を含む。
【0070】
ステップS720では、ステップS710で算出された信号特性値に基づいて、I/Q信号のクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別し、クラッタ成分の除去が必要な場合は、I/Q信号にクラッタフィルタリングを適用する。
【0071】
この時、ステップS720では、図8に示すような複数の操作を実行する。
【0072】
図8に示すように、ステップS721では、ステップS710で算出された複数の信号特性値の大きさを比較する。
【0073】
ステップS722では、ステップS721の比較結果が予め設定された第1条件のいずれを満たすのかを判断する。ここで、第1条件は[最頻値<中央値<平均値]、[最頻値<平均値<中央値]および[中央値<最頻値<平均値]のうちのいずれか1つの条件を意味する。
【0074】
ステップS722での判断の結果、比較結果が第1条件を満たす場合、ステップS723では、予め設定されたインデックスのクラッタフィルタリングをI/Q信号に適用する。
【0075】
ステップS724では、ステップS723でフィルタリングされたI/Q信号を高速フーリエ変換して周波数領域の信号に変換し、複数の信号特性値を再計算する。
【0076】
ステップS725では、ステップS724で再計算された複数の信号特性値の大きさを比較する。また、ステップS726では、ステップS725の比較結果が第1条件を満たすか否かを判別する。
【0077】
ステップS726での判断の結果、ステップS725の比較結果が第1条件を満たす場合、ステップS727では、既にクラッタフィルタリングされたI/Q信号に、次の(別の)インデックスを有するフィルタリングを再び適用する。
【0078】
一方、ステップS722での判断において、比較結果が第1条件を満たさない場合には、ステップS728では、I/Q信号に最小限のクラッタ成分の除去を行う必要があると判断し、最も低いカットオフのクラッタフィルタリングを適用する。
【0079】
このようにして、ステップS721からステップS728までの操作を通してステップS700で周波数領域の信号に変換されたI/Q信号が予め設定された第1条件を満たすようになるまで、クラッタフィルタリングを繰り返し行う。
【0080】
一方、ステップS730では、ステップS720で最終フィルタリングされたI/Q信号を用いて、超音波映像のカラーフロー映像を形成し、その形成されたカラーフロー映像を表示する。
【0081】
これにより、ステップS730で表示されるカラーフロー映像は、1回またはそれ以上繰り返し行われたクラッタフィルタリングによって、クラッタ成分が除去された信号によって形成される。このため、本方法を用いた超音波映像装置は、従来より正確な超音波映像をユーザに提供することができる。
【0082】
図9は、本発明の他の実施形態に係る超音波映像処理方法を示すフローチャートである。この方法では、ハンケル特異値分解を用いて、I/Q信号からクラッタ成分を除去する。
【0083】
図9を参照すると、ステップS900では、超音波信号を対象体に送出して、対象体から反射される超音波信号をI/Q信号に変換し、その変換されたI/Q信号を特異値分解する。
【0084】
ステップS910では、前述のように、特異値分解されたI/Q信号から複数のサブ行列を生成する。
【0085】
次に、ステップS920では、ステップS910で生成された複数のサブ行列に対して、それぞれ信号特性値を算出し、その複数の信号特性値に基づいて、複数のサブ行列のうち、クラッタフィルタリングを適用する必要がないサブ行列を選択する。
【0086】
この時、ステップS920では、図10に示すような複数のステップを実行する。
【0087】
図10を参照すると、ステップS921において、複数のサブ行列のそれぞれを、高速フーリエ変換によって周波数領域のサブ行列(信号)に変換する。
【0088】
次に、ステップS922では、ステップS921で変換された各サブ行列から複数の信号特性値を算出する。ここで、複数の信号特性値は、各サブ行列に対する平均値、中央値および最頻値を含む。
【0089】
ステップS923では、ステップS922で算出された複数の信号特性値の大きさを互いに比較する。そして、次のステップS924において、ステップS923での比較結果が予め設定された第2条件を満たすか否かを判断する。ここで、第2条件とは、[平均値<中央値<最頻値]、[中央値<平均値<最頻値]および[平均値<最頻値<中央値]のうちのいずれか1つの条件を満たすことを意味する。
【0090】
ステップS924で比較結果が第2条件を満たす場合、次のステップS925では、その条件に該当するサブ行列を、クラッタフィルタリングを適用する必要がないサブ行列として選択する。これに対して、比較結果が第2条件を満たさない場合は、ステップS925では、第2条件を満たさない比較結果に該当するサブ行列を選択しない。
【0091】
ステップS925では、ステップS923で全てのサブ行列の信号特性値が比較および処理されたか否かを判断し、全てのサブ行列が処理されなかった場合、ステップS923が再度実行される。再度実行されたステップS923では、次のサブ行列の信号特性値の大きさを比較する。
【0092】
その結果、ステップS921〜ステップS925を通して、複数のサブ行列のそれぞれに対する複数の信号特性値に基づいて、複数のサブ行列のうち、クラッタフィルタリングを適用する必要がないサブ行列を選別する。
【0093】
一方、ステップS930では、ステップS920で選択されたサブ行列を用いて、超音波映像のカラーフロー映像を形成して表示する。
【0094】
これによって、ステップS930で表示されたカラーフロー映像は、I/Q信号の複数のサブ行列のうち、クラッタフィルタリングを適用する必要がないサブ行列によって形成される。このため、この方法で処理された超音波映像装置はより正確な超音波映像をユーザに提供することができる。
【0095】
なお、本発明の実施形態は、多様なコンピュータ手段によって実現することのできるプログラム命令形態によって実現され、コンピュータ読み出し可能媒体に記録される。コンピュータ読み出し可能媒体は、プログラム命令、データファイル、データ構造などを単独でまたは組み合わせて備えることもできる。媒体に記録されるプログラム命令は、本発明のために特別に設計して構成されたものであっても、あるいはコンピュータソフトウェアの当業者に公知されている使用可能なものであってもよい。
【0096】
上述したように、本発明では、具体的な構成要素などの特定事項と限定される実施形態および図面によって説明したが、これは本発明のより全般的な理解を助けるために提供したものに過ぎない。したがって、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、その概念に基づいて多様な修正および変形が可能である。したがって、本発明の思想は、上記実施形態に限定して解釈されてはならず、その範疇には、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形のある全てのものが属するといえる。
【符号の説明】
【0097】
100 :信号変換部
110 :メモリ
120 :制御部
121 :制御部
121a:周波数領域変換部
121b:特性値算出部
121c:フィルタリング処理部
121d:映像形成部
122 :制御部
122a:特異値分解処理部
122b:特性値算出部
122c:行列選択部
122d:映像形成部
130 :ユーザ入力部
140 :表示部
S700、S710、S720〜S726、S730:ステップ
S900、S910、S920〜S926、S930:ステップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波信号を対象体に送出して、前記対象体から反射される超音波信号を受信し、前記受信した超音波信号を超音波映像内の各映像のピクセルに対応するI/Q信号に変換する信号変換部と、
前記I/Q信号を周波数領域の信号に変換して、前記変換されたI/Q信号に対する複数の信号特性値に基づいて、前記I/Q信号からのクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別する制御部と、
を備える超音波映像装置。
【請求項2】
前記複数の信号特性値は、
前記周波数領域の信号に変換されたI/Q信号の平均値、中央値および最頻値のうちのいずれか1つを含む請求項1に記載の超音波映像装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記複数の信号特性値の大きさを互いに比較して、その比較結果に基づいて、前記I/Q信号からクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別する請求項1に記載の超音波映像装置。
【請求項4】
前記複数の信号特性値は、
前記周波数領域の信号に変換されたI/Q信号の平均値、中央値および最頻値を含み、
前記制御部は、前記比較結果が
(a)[最頻値<中央値<平均値]、
(b)[最頻値<平均値<中央値]および
(c)[中央値<最頻値<平均値]
のうちの少なくとも1つの条件を満たす場合、前記I/Q信号から前記クラッタ成分の除去が必要であると判断する請求項3に記載の超音波映像装置。
【請求項5】
さらに、複数のクラッタフィルタリングおよびそれぞれのクラッタフィルタリングのカットオフを格納するメモリを含み、
前記制御部は、
前記比較結果がいずれの前記条件も満たさない場合、前記I/Q信号から最小限のクラッタ成分の除去が必要であると判断し、前記カットオフが最も低いクラッタフィルタリングを前記I/Q信号に適用する請求項4に記載の超音波映像装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記複数の信号特性値に基づいて、前記I/Q信号の偏重分布形態を推定して、前記推定された偏重分布形態に基づいて、前記I/Q信号の曲線が右側に偏重しているか否かによって、前記I/Q信号からクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別する請求項1に記載の超音波映像装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記信号変換部によって変換されたI/Q信号を特異値分解して、複数のサブ行列を生成し、前記複数のサブ行列のそれぞれに対する複数の信号特性値に基づいて、前記複数のサブ行列のうち、クラッタフィルタリングが必要でないサブ行列を選択して、前記選択されたサブ行列を用いて、前記超音波映像のカラーフロー映像を形成する請求項1に記載の超音波映像装置。
【請求項8】
前記複数の信号特性値は、
前記複数のサブ行列のそれぞれの平均値、中央値および最頻値を含み、
前記制御部は、
前記複数のサブ行列の前記複数の信号特性値の大きさを互いに比較して、その比較結果が、
(d)[平均値<中央値<最頻値]、
(e)[中央値<平均値<最頻値]および
(f)[平均値<最頻値<中央値]
のうちの少なくとも1つの条件を満たす場合、前記条件を満たすサブ行列を前記クラッタ成分を除去する必要がないサブ行列として選択する請求項7に記載の超音波映像装置。
【請求項9】
超音波信号を対象体に送出して、前記対象体から反射される超音波信号をI/Q信号に変換するステップと、
前記I/Q信号を周波数領域の信号に変換して、前記変換されたI/Q信号の複数の信号特性値を算出するステップと、
前記複数の信号特性値の比較によって、前記I/Q信号からクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別するステップと、
前記判別により、前記I/Q信号にクラッタフィルタリングを行うステップと、
を含む超音波映像処理方法。
【請求項10】
超音波信号を対象体に送出して、前記対象体から反射される超音波信号をI/Q信号に変換するステップと、
前記I/Q信号を特異値分解して、複数のサブ行列を生成するステップと、
前記複数のサブ行列のそれぞれを周波数領域のサブ行列に変換して、前記変換された複数のサブ行列のそれぞれに対し複数の信号特性値を算出するステップと、
前記複数の信号特性値の比較によって、前記複数のサブ行列のうち、クラッタ成分を除去する必要がないサブ行列を選択するステップと、
前記選択されたサブ行列を用いて、超音波映像のカラーフロー映像を形成するステップと、
を含む超音波映像処理方法。
【請求項1】
超音波信号を対象体に送出して、前記対象体から反射される超音波信号を受信し、前記受信した超音波信号を超音波映像内の各映像のピクセルに対応するI/Q信号に変換する信号変換部と、
前記I/Q信号を周波数領域の信号に変換して、前記変換されたI/Q信号に対する複数の信号特性値に基づいて、前記I/Q信号からのクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別する制御部と、
を備える超音波映像装置。
【請求項2】
前記複数の信号特性値は、
前記周波数領域の信号に変換されたI/Q信号の平均値、中央値および最頻値のうちのいずれか1つを含む請求項1に記載の超音波映像装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記複数の信号特性値の大きさを互いに比較して、その比較結果に基づいて、前記I/Q信号からクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別する請求項1に記載の超音波映像装置。
【請求項4】
前記複数の信号特性値は、
前記周波数領域の信号に変換されたI/Q信号の平均値、中央値および最頻値を含み、
前記制御部は、前記比較結果が
(a)[最頻値<中央値<平均値]、
(b)[最頻値<平均値<中央値]および
(c)[中央値<最頻値<平均値]
のうちの少なくとも1つの条件を満たす場合、前記I/Q信号から前記クラッタ成分の除去が必要であると判断する請求項3に記載の超音波映像装置。
【請求項5】
さらに、複数のクラッタフィルタリングおよびそれぞれのクラッタフィルタリングのカットオフを格納するメモリを含み、
前記制御部は、
前記比較結果がいずれの前記条件も満たさない場合、前記I/Q信号から最小限のクラッタ成分の除去が必要であると判断し、前記カットオフが最も低いクラッタフィルタリングを前記I/Q信号に適用する請求項4に記載の超音波映像装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記複数の信号特性値に基づいて、前記I/Q信号の偏重分布形態を推定して、前記推定された偏重分布形態に基づいて、前記I/Q信号の曲線が右側に偏重しているか否かによって、前記I/Q信号からクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別する請求項1に記載の超音波映像装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記信号変換部によって変換されたI/Q信号を特異値分解して、複数のサブ行列を生成し、前記複数のサブ行列のそれぞれに対する複数の信号特性値に基づいて、前記複数のサブ行列のうち、クラッタフィルタリングが必要でないサブ行列を選択して、前記選択されたサブ行列を用いて、前記超音波映像のカラーフロー映像を形成する請求項1に記載の超音波映像装置。
【請求項8】
前記複数の信号特性値は、
前記複数のサブ行列のそれぞれの平均値、中央値および最頻値を含み、
前記制御部は、
前記複数のサブ行列の前記複数の信号特性値の大きさを互いに比較して、その比較結果が、
(d)[平均値<中央値<最頻値]、
(e)[中央値<平均値<最頻値]および
(f)[平均値<最頻値<中央値]
のうちの少なくとも1つの条件を満たす場合、前記条件を満たすサブ行列を前記クラッタ成分を除去する必要がないサブ行列として選択する請求項7に記載の超音波映像装置。
【請求項9】
超音波信号を対象体に送出して、前記対象体から反射される超音波信号をI/Q信号に変換するステップと、
前記I/Q信号を周波数領域の信号に変換して、前記変換されたI/Q信号の複数の信号特性値を算出するステップと、
前記複数の信号特性値の比較によって、前記I/Q信号からクラッタ成分を除去する必要があるか否かを判別するステップと、
前記判別により、前記I/Q信号にクラッタフィルタリングを行うステップと、
を含む超音波映像処理方法。
【請求項10】
超音波信号を対象体に送出して、前記対象体から反射される超音波信号をI/Q信号に変換するステップと、
前記I/Q信号を特異値分解して、複数のサブ行列を生成するステップと、
前記複数のサブ行列のそれぞれを周波数領域のサブ行列に変換して、前記変換された複数のサブ行列のそれぞれに対し複数の信号特性値を算出するステップと、
前記複数の信号特性値の比較によって、前記複数のサブ行列のうち、クラッタ成分を除去する必要がないサブ行列を選択するステップと、
前記選択されたサブ行列を用いて、超音波映像のカラーフロー映像を形成するステップと、
を含む超音波映像処理方法。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−24578(P2012−24578A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156988(P2011−156988)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(597096909)三星メディソン株式会社 (269)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG MEDISON CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】114 Yangdukwon−ri,Nam−myun,Hongchun−gun,Kangwon−do 250−870,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(597096909)三星メディソン株式会社 (269)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG MEDISON CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】114 Yangdukwon−ri,Nam−myun,Hongchun−gun,Kangwon−do 250−870,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
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