説明

超音波検査装置及び超音波検査方法

【課題】検査データ及び検査結果のトレーサビリティが可能となる超音波検査装置を提供することを目的とする。
【解決手段】超音波探傷を行う超音波探傷機構2と、超音波探傷機構2の移動駆動及びこの移動駆動の制御を行う駆動制御機構3と、超音波探傷の条件を示すデータが記録された条件ファイルを作成するとともに、超音波探傷機構2から取得した超音波データ及び駆動制御機構3から取得した位置データの検査データをデータファイルに収録するデータ収録機構4と、データ収録機構4において収録された検査データをデータ解析するとともに、このデータ解析から得られた検査結果に基づいて検査報告書を作成して出力するデータ解析機構6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて探傷検査を行うための超音波検査装置及び超音波検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所における超音波を用いた非破壊検査において、検査データの収録日時、検査箇所、検査結果を正確に記録することは重要である。加えて、検査における評価の客観性や、検査結果のトレーサビリティは近年重要度を増してきている。
【0003】
一般的に発電所の機器の健全性を評価するため、定期検査毎に対象となる検査機器に対して、目視検査(VT)や超音波検査(UT)等を行う。この検査の際、各手法の取扱資格を有した人間が、規定された試験要領に従い検査を行う。特にUTにおいては、国際標準化機構(ISO)の国際規格ISO9712や日本非破壊検査協会規格NDIS0601に基づいて行われる検査資格があり、これらの資格を有した検査員があらかじめ定められた試験要領に従い機器毎に適した検査を行う。
【0004】
UTにおいては手動検査に加え、最近では自動機で検査データの収録を行い、検査員が評価を行う方法も一般的になってきている。検査員が行った検査結果は、事務所に戻った後、例えば“JIS Z 3060”で規定されている報告書に記載すべき事項に従って報告書を作成する。
【0005】
ここで、規定内容のうち「施工業者又は製造業業者」や「工事または製品名」等の一般事項以外に、検査箇所毎に必要となる「試験年月日」や「試験番号又は記号」、「探傷範囲」、「探傷データ」、「合否とその基準」等を検査院がそれぞれ検査箇所毎に纏め、検査員本人が署名をした上で検査報告書として検査依頼者に報告・提出する。
【0006】
この時、特に自動機にて検査データを収録した場合は、検査を行った現場で収録した検査データを解析せずに一旦事務所に戻り、その後解析を行った上で手動検査における手順と同様に検査報告書を作成し、報告・提出することもある。
【0007】
なお、報告書に記載すべき内容は、使用する検査技術や検査対象により“JIS Z 3060”以外にもASME規格や別途規定された確認性能試験に寄る場合もある。
【0008】
現場で収録した検査データを解析せずに一旦事務所に戻って解析を行う検査方法においては、例えば記録が要求されている「探傷範囲」を検査箇所毎に検査員が記録し、検査報告書を作成する際に検査員が「探傷データ」と「探傷範囲」やその他多くの記載事項を纏め報告書を作成することは、多くの労力が必要になるなどの課題があった。
【0009】
そこで、検査対象の欠陥の大きさをその「探傷位置」と共に収録する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0010】
検査対象の欠陥の大きさをその「探傷位置」と共に収録する方法により、検査現場で「探傷位置」情報やその結果を記録し、後に報告書に纏めるという手順に対して検査結果とそのときの「探傷位置」等の情報が自動的に記録されるため、検査員が報告書を作成する際の労力が大きく低減される。
【0011】
また、通信システムを用いて検査現場から解析用コンピュータに検査データを転送する手法も提案されている(特許文献2参照)。
【0012】
通信システムを用いた手法によれば、検査員が検査現場に行かずに検査判定することができる。
【特許文献1】特開平6−265372号公報
【特許文献2】特開2002−296256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1及び2には、検査データの記録方法に関して詳細に記載されていないが、膨大な検査データを記録する場合には、検査データのトレーサビリティという観点から、検査後に検査データを解析したり、数年後に検査データを見直したりするためには、検査データに対して検査日時、検査対象の部位、探傷範囲等が正確に記録されている必要がある。また、検査データや検査報告書の改ざんが防止されている必要がある。
【0014】
本発明は、上記課題を考慮してなされたもので、検査データ及び検査結果のトレーサビリティが可能な超音波検査装置及び超音波検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係る超音波検査装置は、請求項1に記載したように、超音波探傷を行う超音波探傷機構と、前記超音波探傷機構を移動駆動させ、且つこの移動駆動の制御を行う駆動制御機構と、超音波探傷の条件を示すデータが記録された条件ファイルを作成するとともに、前記超音波探傷機構から取得した超音波データ及び前記駆動制御機構から取得した位置データの検査データをデータファイルに収録するデータ収録機構と、このデータ収録機構において収録された検査データをデータ解析するとともに、このデータ解析から得られた検査結果に基づいて検査報告書を作成して出力するデータ解析機構と、前記データ収録機構及びデータ解析機構間で検査データを転送するためのデータ伝送機構とを備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る超音波検査方法は、請求項9に記載したように、超音波探傷の条件を示すデータが記録された条件ファイルを作成し、超音波探傷を行う超音波探傷機構の移動を制御するとともに、前記超音波探傷機構から取得した超音波データの検査データをデータファイルに収録し、前記検査データをデータ解析するとともに、このデータ解析から得られた検査結果に基づいて検査報告書を作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る超音波検査装置及び超音波検査方法によると、超音波探傷検査の際に検査データ及び検査結果のトレーサビリティが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る超音波検査装置の実施形態について、添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る超音波検査装置の第1実施形態を示す構成図である。
【0020】
図1に示すように、この超音波検査装置1は、被検査体Aの超音波探傷を行う超音波トランスジューサ(図示せず)を備えた超音波探傷機構2と、超音波探傷機構1の走査のための移動駆動やこの移動駆動の制御を行う駆動制御機構3と、超音波探傷機構2で得られた超音波データや位置データ等の検査データを収録し、且つ駆動制御機構3から送られる探傷位置情報や探傷速度、探傷状態信号等の各種データを収録するデータ収録機構4と、データ収録機構4で収録された検査データを伝送するためのデータ伝送機構5と、データ伝送機構5により伝送された検査データを解析するためのデータ解析機構6と、駆動制御機構3やデータ収録機構4を遠隔操作するための遠隔操作機構7とを備える。
【0021】
超音波探傷機構2は、被検査体Aの内部や表面を超音波により探傷する。超音波探傷機構2において、例えば圧電素子を用いて超音波の送受信を行っても、圧電素子をベースとした集束型超音波探傷法やフェイズドアレイ法等により超音波の送受信を行ってもよい。
【0022】
また、超音波探傷機構2として、超音波の送受信に電磁超音波法を使用する方法やレーザ超音波法を用いてもよい。ここでレーザ超音波法とは、パルスレーザ光を材料に照射した際に発生する弾性領域の歪みを利用して超音波を送信し、別途材料に照射した受信用のレーザ光の干渉効果を用いて、その超音波を振動信号として計測するものである。このように送受信された超音波は、通常の接触型の素子で送受信した超音波と同じように、種々の亀裂検査や材料計測に用いることができる。
【0023】
駆動制御機構3は、超音波探傷機構2の移動駆動やこの移動駆動の制御を行う。駆動制御機構3は、被検査体Aを所定の検査要領に従って被検査体Aの検査部位に対して指定された検査範囲を1次元若しくは複数次元で走査させるプログラム及び走査機構(図示せず)を有する。
【0024】
駆動制御機構3による超音波検査の際、被検査体Aの検査部位に対する検査範囲や検査速度を予め設定しておき、被検査体Aの検査部位を選択することで駆動条件が設定されるようにするとよい。
【0025】
また、駆動制御機構3は、データ収録機構4と接続された通信機能(図示せず)により、例えばLANやDIOやRS−232C、USB、IEEE1394等の通信規格に従って、検査データをデータ収録機構4に送信する。
【0026】
データ収録機構4は、超音波探傷装置2から受信した超音波データや駆動制御機構3から受信した位置データ等の検査データの収録し、検査条件を記録する条件ファイル、検査データを記録するデータファイルを作成する。
【0027】
データ伝送機構5は、データ収録機構4とデータ解析機構6とを接続する通信機構であり、例えば、有線LANや無線LAN、PHSや携帯電話等を利用したデータ通信機能、ISDNやDSL等の電話回線を利用した通信機能を備えている。
【0028】
また、データ伝送機構5は、USBメモリやHDD等のストレージ装置や、MOやCD、DVD等のストレージメディアであってもよい。
【0029】
データ解析機構6は、データ収録機構4で収録されデータ伝送機構5により伝送された検査データに対して、データ解析を行う。
【0030】
データ解析機構6は、解析を行うデータファイルが選択された後、検査箇所毎に予め決められた解析手法がプログラムされている解析プログラムを実行することでデータ解析を開始し、データ解析が終了すると解析結果を表示する。
【0031】
ここで、解析プログラムは、例えばデジタルフィルタ(信号の中から特定の成分を取り出したり除去したりするフィルタ)のパラメータが調整されて解析パラメータが決定されると、自動的に解析結果が導出されるようなものである。
【0032】
遠隔操作機構7は、駆動制御装置3やデータ収録機構4に通信機能(図示せず)により接続されていて、例えばLANやDIOやRS−232C、USB、IEEE1394等の通信規格に従って、駆動制御装置3やデータ収録機構4を遠隔で操作する。
【0033】
第1実施形態の超音波検査装置1において、データ収録機構4が検査データを収録する手順を、図2に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0034】
データ収録機構4は、駆動制御機構3から超音波検査を開始する準備が整ったことを示す施工開始準備信号を受信するまで待機しているが、施工開始準備信号を受信すると(S101)、検査データ等の一連のデータを格納するためのデータフォルダを作成する(S102)。
【0035】
ここで、作成されるデータフォルダのフォルダ名は、検査対象と日付とからなるものや、検査対象部位と日付とからなるもの等、任意に設定される。
【0036】
また、データ収録機構4は、データフォルダを作成した後に超音波検査の際の検査条件を記録するための条件ファイルを作成する(S103)。作成される条件ファイルのファイル名は、「検査対象部位」、「検査年月日及び時間」、「使用探傷方法」、「探傷回数」、「検査員名」、「対応校正記録」、「探傷範囲」、「速度速度」、「探傷ピッチ」、「使用装置名」、及び「使用要領書名」等を組み合わせて構成され、ファイル名から検査の日時、検査部位等が判断可能であることが望ましい。
【0037】
例えば、検査対象部位が炉内計装筒(BMI)の計装筒番号5番であり、レーザ超音波法(LUT)を使用し、2005年2月15日の14時30分25秒に施工準備信号を受け取った場合には、条件ファイルのファイル名を、「条件_BMI_05_LUT_20050215_143025_1.[拡張子]」とする。
【0038】
データ収録機構4は、作成した条件ファイルに、駆動制御機構3で設定された「検査対象部位」に関する情報や、「探傷範囲」、「使用探傷法」、「初期位置」、「駆動速度」、「駆動制御機構のPC名」等の施工初期情報を、例えばCSV(Comma Separated Values)、XML(eXtensible Markup Language)、テキスト等の任意のデータ形式で記録する(S104)。
【0039】
駆動制御機構3が探傷検査を開始するための施工開始信号を発信すると、データ収録機構4はこの施工開始信号を受信し(S105)、条件ファイルで使用した条件でデータファイルを作成する(S106)。例えば上記例だと「BMI_05_LUT_20050215_143025_1.[拡張子]」等となる。データファイルのデータ形式は、例えばCSV、XML、テキスト形式等、任意に設定する。
【0040】
データファイルが作成されると、データ収録機構4は、データファイルに、超音波探傷機構2で得られた検査データと駆動制御機構3で得られた位置データ等とを、超音波データ採取周期毎に収録する(S107)。
【0041】
なお、超音波探傷機構2でレーザ超音波法を使用する場合には、被検査体Aの表面へ照射する受信レーザ光のエネルギー量や、表面から反射して戻ってくる光の量を計測し、データファイルに追加収録してもよい。
【0042】
所定の探傷範囲の超音波検査が終了すると、駆動制御機構3が超音波検査が終了したことを示す施工終了信号を発信する(S108)とともに、データ収録機構4はこの施工終了信号を受信して、先述の条件データファイルに「データファイル名」の情報や、「探傷終了位置」、「収録データ点数」等の施工終了情報を書き込み(S109)、該当探傷部位の施工を終了する。
【0043】
次に、第1実施形態の超音波検査装置1において、データ解析機構6がデータ解析を行う手順を、図3に示したフローチャートに基づいて説明する。
【0044】
なお、図4に、データ解析の際に検査員が参照するための解析画面8を示す。解析画面8は、検査箇所毎に決められた解析手法がプログラムされている解析プログラムの実行処理のトリガーである解析開始ボタン9、検査報告書の作成処理のトリガーである検査報告書作成ボタン10、解析結果の情報が表示される解析結果表示部11、欠陥有無の情報が表示される欠陥有無表示部12、及び、必要に応じてデータファイルのファイル名が表示されるデータファイル名表示部13を有する。
【0045】
始めに、データ解析機構6は、検査員にデータファイルの選択を促す(S201)とともに、解析開始ボタン9の押下を促す。データ解析機構6は、解析開始ボタン9の押下を認識する(S202)と、解析プログラムを実行して解析データの解析を行う(S203)。
【0046】
ここで解析プログラムは、例えばデジタルフィルタのパラメータ調整機構などを具有してもよいが、それらの調整機構は一度解析パラメータを決定した後は固定とし、再入力なしに解析の全結果が求められるようにする。
【0047】
また、自動機でデータ収録を行う場合は、往々に、データ量が膨大になり解析時間が多く必要となる場合が多い。そこで、必要に応じて、データ解析機構6は、解析の進捗を示すプログレスバーを表示する(S204)。ただし、解析時間が短い場合や、プログレスバーを表示することで解析処理能力が低下する場合等には、プログレスバーを表示しなくてもよい。
【0048】
データ解析が終了する(S205)と、データ解析機構6は、解析結果表示部11に解析した結果を表示する(S206)。ここで表示する内容として、超音波波形を時間と強度とで示したA−scanや、超音波波形を時間と位置と強度とで示したB−scan、超音波波形を二次元位置と強度とで示したC−scan等がある。表示する数は必要に応じて設定する。また、“JIS Z 3060”で規定されている検査報告書に記載すべき事項のうち、任意の情報を選択して表示してもよい。
【0049】
また、データ解析機構6は、欠陥有無表示部12に欠陥指示を表示させる。
【0050】
検査員が、解析表示画面8の検査報告書作成ボタン10を押下する(S207)と、図5に示すように、“JIS Z 3060”で規定されている検査報告書に記載すべき事項やその他の該当検査部位における検査要領書記載の必要事項表12と解析結果が添付された検査報告書画面14が作成され、表示される(S208)。
【0051】
図5に、検査員が検査報告書を作成するための検査報告書画面14を示す。検査報告書画面14は、検査要領書に必要な事項が表示される必要事項表示部15、検査結果が表示される検査結果表示部16、解析結果が表示される解析結果表示部17、及び、備考が表示される備考表示部18を有する。
【0052】
なお、検査結果表示部16や解析結果表示部17において、動画データを表示させてもよい。動画データとは、例えば、検査データが3次元的に表示することが可能なC−scanデータである。C−scanは、探傷範囲x、yを2次元表示し、その2次元マップ強度を得られた超音波波形の振幅とするが、超音波データの時間軸に対してx、yの2次元マップで動画化したものもある。
【0053】
また、C−scanデータではなく、2次元マップ+時間という形式で得られた情報に対して任意の2次元軸を選択し、残りの1次元軸に対して動画化したものや、1次元データ+時間という2次元データに対して任意の1次元を時間軸として動画化するなど各種検査データに対して動画化したものでもよい。
【0054】
従来用いられている超音波検査の解析画面8においては、検査日時や検査箇所などの“JIS Z 3060”で規定されている検査報告書に記載すべき事項の情報を表示するものは多くある。しかし、解析する検査データが実際に解析しようとしているデータであるという保証はなかった。例えば、多くのデータを解析している場合、検査データを取り違える可能性も否定できなかったが、本発明によりその問題が解決された。
【0055】
第1実施形態では、データファイルのファイル名で検査箇所が特定できるようにしたため、ファイル名を常に表示しておくことでどの検査データの解析が行われているかが容易に判断できる。
【0056】
第1実施形態によると、検査報告書にデータファイルのファイル名を記載することで、後々各検査報告書を作成した際の検査データが明確になることにより、検査データ及び検査結果のトレーサビリティが可能となる。
【0057】
また、第1実施形態によると、超音波検査装置1がデータ収録からデータ解析までの処理を行い、人間が介在する過程を大幅に低減しているため、人間の労力を大幅に低減することが出来るとともに、ヒューマンエラーの発生を低減させることが可能となる。
【0058】
さらに、第1実施形態によると、検査員が現場に行くことなく検査することが可能になる。すなわち、原子力プラントにおいては検査対象部位が管理区域内であると、入域時間規制が存在する。そのため、特に検査対象箇所は多く残っているのに残り入域時間が少ない場合など、検査員が落ち着いて検査することが出来なくなる可能性がある。
【0059】
よって、第1実施形態によると、検査員の入域時間制限がなくなり、検査員が事務所や他の解析に適した場所で検査することができるため、ヒューマンエラーの発生を低減させることが可能となる。
【実施例1】
【0060】
次に、第1実施形態の超音波検査装置1の実施例1について、図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0061】
図6に示すように、実施例1の超音波データ収録の手順は、図2の超音波データ収録の手順とほぼ同様であるが、データ収録プログラムの動作開始時点からログファイルを作成し、データ収録準備が完了した際や、駆動制御機構から施工開始準備信号や施工開始信号、施工終了信号等を受信した際に、その処理内容と受信時間をログファイルに書き込む点で異なっている。
【0062】
図6のS301〜S305は、図2のS101〜S105と同様の手順である。実施例1では、データ収録機構4は、駆動制御装置3から施工開始信号を受け取る(S305)と、その処理内容と受信時間とをログファイルに記録する(S310)。
【0063】
また、S306〜S308は、図2のS106〜S108と同様の手順であるが、実施例1では、データ収録機構4は、駆動制御装置3から施工終了信号を受け取る(S305)と、その処理内容と受信時間とをログファイルに記録する(S310)。
【0064】
そして、図2の場合と同様に、最後にデータ収録機構4が施工終了情報を条件ファイルに書き込んで終了する(S309)。
【0065】
さらに、データ収録機構4が具備しているAD変換部やデジタル信号入出力部(DIO)にエラーが生じた場合には、随時、そのエラー発生時間とエラー箇所とをログファイルに書き込む。
【0066】
実施例1では、収録データに不具合が生じた場合に不具合に関する情報がログファイル記録され、検査員がこのログファイルをチェックすることで、データ収録の際に不具合が生じていたか否かを確認できる。これにより、データ収録を行うための正しいフローを経て得られたデータであるか否かが後にチェックでき、検査データ及び検査結果のトレーサビリティが可能となる。
【実施例2】
【0067】
次に、本発明に係る超音波検査装置の実施例2を図7〜図10に基づいて説明する。
【0068】
実施例2では、図2及び図3のフローチャートにおけるデータ収録及びデータ解析の手順の最後に、条件ファイル、データファイル等の各ファイルに検査員の電子署名を追加する。
【0069】
または、図2及び図3のフローチャートにおけるデータ収録、データ解析の手順の最後に、各ファイルにデータ改ざん防止処理を行う。
【0070】
図7のS401〜S409は、図2のS101〜S109と同様の手順であるが、実施例2においては、データ収録機構4は、施工終了情報を条件ファイルに書き込んだ(S409)後で、各データファイルに検査員の電子署名を追加する(S410)。
【0071】
また、図9のS601〜S608は、図3のS201〜S208と同様の手順であるが、実施例2においては、データ解析機構6は、施工終了情報を条件ファイルに書き込んだ(S608)後で、検査報告書に検査員の電子署名を追加する(S609)。
【0072】
図8のS501〜S509は、図2のS101〜S109と同様の手順であるが、実施例2においては、データ収録機構4は、施工終了情報を条件ファイルに書き込んだ(S509)後で、各データファイルに改ざん防止の機能を追加する(S510)。
【0073】
また、図10のS701〜S708は、図3のS201〜S208と同様の手順であるが、実施例2においては、データ解析機構6は、施工終了情報を条件ファイルに書き込んだ(S708)後で、検査報告書に改ざん防止の機能を追加する(S709)。
【0074】
実施例2では、検査報告書の作成において、その検査報告書の電子ファイルに対して電子署名することで、印刷した検査報告書にサインすることと同等な意味を持つ電子データの検査報告書を作成することができる。
【0075】
ここで、電子署名する方法として、各検査員が個別に有する公開鍵を利用した公開鍵暗号技術を用いた方法や、指紋や虹彩、声紋、掌形、静脈形状、DNAなどをデジタル的に読み込み認証するバイオメトリック法、実印の変わりに検査員毎に特有のUSBやRC232Cポートに差し込む認証キーやICカードなどを利用する方法などがある。
【0076】
なお、電子署名を検査報告書に対してだけでなく、検査データに対して使用してもよい。
【0077】
また、データの改ざん防止技術として公開鍵暗号技術や、電子透かし技術を検査データや検査報告書に使用することで、データが改ざんされている場合に容易に発見することが可能になる。
【0078】
さらに、検査データの改ざんを防止するための電子透かしを、検査データと検査報告書との双方に対して使用する際に、検査毎に特有の電子透かしを使用することで、データ改ざんの有無だけでなく、検査データと検査報告書とが正しく結び付けられていることを保証することが可能になる。
【0079】
実施例2によると、検査データ及び検査結果の信頼度の高いトレーサビリティが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る超音波検査装置の第1実施形態を示す構成図。
【図2】データ収録手順を示すフローチャート。
【図3】解析処理手順を示すフローチャート。
【図4】解析画面表示例を示す図。
【図5】検査報告書画面表示例を示す図。
【図6】実施例1のデータ収録手順を示すフローチャート。
【図7】実施例2のデータ収録手順を示すフローチャート。
【図8】実施例2の解析処理手順を示すフローチャート。
【図9】実施例2のデータ収録手順の別の例を示すフローチャート。
【図10】実施例2の解析処理手順の別の例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0081】
1 超音波検査装置
2 超音波探傷機構
3 駆動制御機構
4 データ収録機構
5 データ転送機構
6 データ解析機構
7 遠隔制御機構
8 解析画面
9 解析開始ボタン
10 検査報告書作成ボタン
11 解析結果表示部
12 欠陥有無表示部
13 ファイル名表示部
14 検査報告書画面
15 必要事項表示部
16 検査結果表示部
17 解析結果表示部
18 備考表示部
A 被検査体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波探傷を行う超音波探傷機構と、
前記超音波探傷機構を移動駆動させ、且つこの移動駆動の制御を行う駆動制御機構と、
超音波探傷の条件を示すデータが記録された条件ファイルを作成するとともに、前記超音波探傷機構から取得した超音波データ及び前記駆動制御機構から取得した位置データの検査データをデータファイルに収録するデータ収録機構と、
このデータ収録機構において収録された検査データをデータ解析するとともに、このデータ解析から得られた検査結果に基づいて検査報告書を作成して出力するデータ解析機構と、
前記データ収録機構及びデータ解析機構間で検査データを転送するためのデータ伝送機構とを備えることを特徴とする超音波検査装置。
【請求項2】
前記超音波探傷機構として、パルスレーザ光を被検査体に照射した際に発生する弾性領域の歪みを利用して超音波を送信するレーザ超音波探傷法を用いた請求項1記載の超音波検査装置。
【請求項3】
前記データ収録機構は、超音波データ及び位置データに加えて、被検査対象面へ照射するレーザ光の強度及び被検査対象面から戻ってくるレーザ光の強度の情報を収録する請求項2記載の超音波検査装置。
【請求項4】
前記超音波探傷装置及びデータ収録機構の操作を遠隔操作により行う遠隔制御機構を備えた請求項1記載の超音波検査装置。
【請求項5】
前記データ収録機構は、このデータ収録機構の操作及び発生したイベントを記録するログファイルを作成するように構成した請求項1記載の超音波検査装置。
【請求項6】
前記データ収録機構で収録された検査データまたはデータ解析機構で作成された検査報告書のデータに、検査員を示す電子署名が記録されるように構成した請求項1記載の超音波検査装置。
【請求項7】
検査データと検査報告書とには、超音波検査毎に電子透かしが記録される請求項1記載の超音波検査装置。
【請求項8】
前記データ収録機構で収録された検査データまたは前記データ解析機構で作成された検査報告書のデータに、改ざん防止機能が設けられた請求項1記載の超音波検査装置。
【請求項9】
超音波探傷の条件を示すデータが記録された条件ファイルを作成し、
超音波探傷を行う超音波探傷機構の移動を制御するとともに、前記超音波探傷機構から取得した超音波データの検査データをデータファイルに収録し、
前記検査データをデータ解析するとともに、このデータ解析から得られた検査結果に基づいて検査報告書を作成することを特徴とする超音波検査方法。
【請求項10】
前記検査データを収録する際の操作及び発生したイベントを記録するログファイルを作成する請求項9記載の超音波検査方法。
【請求項11】
前記検査データまたは検査報告書のデータに、検査員を示す電子署名を記録する請求項9記載の超音波検査方法。
【請求項12】
前記検査データと検査報告書とに、超音波検査毎に特有の電子透かしを記録する請求項9記載の超音波検査方法。
【請求項13】
前記検査データまたは検査報告書のデータは、改ざん防止機能を備える請求項9記載の超音波検査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−232462(P2007−232462A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52255(P2006−52255)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】