説明

超音波洗浄装置

【課題】360度方向に超音波を放射する円柱状または円筒状の放射部を有する超音波振動子を用いて管材またはワーク穴の内面を均一に、かつ効率的に洗浄することができる超音波洗浄装置を提供する。
【解決手段】超音波洗浄装置100は、超音波振動子10と、超音波発振器20、一対の走行手段30a,30bとを備える。走行手段30a,30bは、超音波振動子10の軸線と直交する方向に設けられた円形または多辺形の板状部材31と、板状部材31の外周に設けられた複数のボールキャスター32とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種管材、ワーク穴等の内面の洗浄を行う装置に関する。詳しくは、360度方向に超音波を放射する円柱状または円筒状の超音波振動子を管材またはワーク穴の中に入れ、走行させることで効率的に洗浄を行うことができる超音波洗浄装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、管材等の被洗浄体を洗浄する場合、被洗浄体を超音波洗浄槽中に入れて、洗浄槽の底面または側面から超音波を照射して洗浄を行うのが一般的である。
【0003】
また、被洗浄管内に洗浄液を循環させ、被洗浄管の外部から超音波を照射する管内洗浄方法及び管内洗浄装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−68956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の超音波洗浄槽を用いた洗浄方法では、管材等の外表面に付着した異物の剥離洗浄には有効であるが、管内面に付着した異物には不十分である。
【0006】
特許文献1に開示の管内洗浄装置は、従来の超音波洗浄槽を用いた洗浄方法に比べて管内異物の除去率がある程度に改善されたが、管内面を均一に、かつ効率的に洗浄することができない問題点があった。
【0007】
また、上述した超音波洗浄方法では、管材等の寸法の制約があるので、長尺の管材の内面、またはワーク穴を洗浄することができない欠点があった。
【0008】
そこで、本発明は、被洗浄体の寸法に制約されずに、各種管材、ワーク穴等の内面を均一に、かつ効率的に洗浄することができる超音波洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る超音波洗浄装置は、管材の内面またはワーク穴の内面を洗浄する超音波洗浄装置であって、少なくとも側面が放射面として360度方向に超音波を放射する円柱状または円筒状の放射部を有する超音波振動子と、前記超音波振動子の両端または両端付近に設けられ、前記超音波振動子を支持しながら前記管材の内面またはワーク穴の内面に沿って自在に移動可能な一対の走行手段とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
例えば、前記超音波振動子は、先端面および側面が放射面として超音波を放射する。
【0011】
また例えば、前記一対の走行手段は、前記超音波振動子の軸線と直交する方向に設けられた円形または多辺形の板状部材と、前記板状部材の外周に設けられた複数のキャスターとを有する。
【0012】
また例えば、前記一対の走行手段の片方には、駆動モータを有し、前記超音波振動子を前記管材の内面またはワーク穴の内面に沿って走行させる駆動手段をさらに備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、少なくとも側面が放射面として360度方向に超音波を放射する円柱状または円筒状の放射部を有する超音波振動子と、超音波振動子の両端または両端付近に設けられ、超音波振動子を支持しながら管材の内面またはワーク穴の内面に沿って自在に移動可能な一対の走行手段とを備え、超音波振動子を管材またはワーク穴の中に入れ、走行させると共に、超音波を発生することで、被洗浄体の寸法に制約されずに、各種管材、ワーク穴等の内面を均一に、かつ効率的に洗浄することができる。
【0014】
また、超音波振動子は、先端面および側面が放射面として超音波を放射することで、管材の端部、または穴の底面も同時に洗浄することができる。
【0015】
また、一対の走行手段は、超音波振動子の軸線と直交する方向に設けられた円形または多辺形の板状部材と、板状部材の外周に設けられた複数のキャスターとを有することで、簡単な構成で、スムーズに走行することが実現できる。
【0016】
さらに、一対の走行手段の片方には、駆動モータを有し、超音波振動子を管材の内面またはワーク穴の内面に沿って走行させる駆動手段をさらに備えることで、超音波振動子が自動的に走行することができ、長尺の管材またはワーク穴の洗浄に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の形態の超音波洗浄装置の構成を示す図である。
【図2】超音波洗浄装置の構成を示すA−A断面図である。
【図3】第2の実施の形態の超音波洗浄装置の構成を示す図である。
【図4】超音波洗浄装置の応用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る超音波洗浄装置を実施するための形態を、図を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施の形態の超音波洗浄装置100の構成を示す図である。図2は、超音波洗浄装置100の構成を示すA−A断面図(拡大図)である。
【0020】
図1に示すように、超音波洗浄装置100は、超音波振動子10と、超音波発振器20、一対の走行手段30a,30bとを備える。
【0021】
超音波振動子10は、少なくとも1つの周波数の超音波振動を発生することができる。超音波振動子10は、超音波エネルギーを放射する円柱状または円筒状の放射部11を有し、放射部11の放射面(側面)から360度方向に超音波を放射することができる(図2参照)。円柱または円筒状の放射部は、例えば長さが少なくとも1つの超音波振動の周波数に対して、該超音波振動の半波長の整数倍に設定されている。ここで、例えば、周波数25kHz(または30kHz、40kHz)の超音波振動子を用いる。
【0022】
なお、超音波を放射する放射部11は、側面が放射面として超音波を放射することによって、超音波エネルギーの放射面積が大きくし、超音波エネルギーが均一に照射することが可能となる。例えば、超音波振動子10の発振周波数に対応する波長λである場合、λ/2の整数倍とされる。放射部11の直径はλ/2〜λ/10される。
【0023】
超音波発振器20は、超音波振動子10を駆動する電気信号を出力するものである。例えば、少なくとも1つの周波数の電気信号を発生し、超音波振動子に印加する。
【0024】
走行手段30a,30bは、超音波振動子10の両端または両端付近に設けられ、超音波振動子10を支持しながら管材の内面またはワーク穴の内面に沿って軸方向に自在に移動することができるものである。走行手段30(30a,30b)は、超音波振動子10の軸線と直交する方向に設けられた円形または多辺形の板状部材31と、板状部材31の外周に設けられた複数のボールキャスター32とを有する。なお、ボールキャスター32に限定されるものではない。例えば、管材またはワーク穴の寸法によって、他種類のキャスターを用いてもよい。
【0025】
このように本実施の形態においては、超音波洗浄装置100は、超音波振動子10と、超音波発振器20、走行手段30a,30bとを備える。
【0026】
これにより、360度方向に超音波を放射する円柱状または円筒状の放射部11を有する超音波振動子10を管材またはワーク穴の中に入れ、走行させると共に、超音波を発生することで、効率的に洗浄を行うことができる。
【0027】
また、一対の走行手段30a,30bは、超音波振動子10の軸線と直交する方向に設けられた円形または多辺形の板状部材31と、板状部材31の外周に設けられた複数のボールキャスター32とを有することで、簡単な構成で、スムーズに走行することが実現できる。
【0028】
図2は、本発明の第2の実施の形態の超音波洗浄装置200の構成を示す図である。
【0029】
図2に示すように、超音波洗浄装置200は、超音波振動子10Aと、超音波発振器20、一対の走行手段30a,30bとを備える。
【0030】
超音波振動子10Aは、少なくとも1つの周波数の超音波振動を発生することができる。超音波振動子10Aは、超音波エネルギーを放射する円柱状または円筒状の放射部11aを有し、放射部11aの先端面から前方に超音波を放射することができると共に、側面から360度方向に超音波を放射することができる(図2参照)。円柱または円筒状の放射部11aは、例えば長さが少なくとも1つの超音波振動の周波数に対して、該超音波振動の半波長の整数倍に設定されている。ここで、例えば、周波数25kHz(または30kHz、40kHz)の超音波振動子を用いる。
【0031】
また、放射部11aは、先端および側面が放射面として超音波を放射することによって、超音波エネルギーの放射面積が大きくし、超音波エネルギーが均一に照射することが可能となる。例えば、超音波振動子10Aの発振周波数に対応する波長λである場合、λ/2の整数倍とされる。放射部11aの直径はλ/2〜λ/10される。
【0032】
超音波発振器20及び走行手段30a,30bは、上述した第1の実施の形態と同様の構成を有する。詳細な説明を省略する。
【0033】
このように本実施の形態においては、超音波洗浄装置200は、超音波振動子10Aと、超音波発振器20、一対の走行手段30a,30bとを備える。
【0034】
これにより、360度方向に超音波を放射する円柱状または円筒状の放射部11aを有する超音波振動子10Aを管材またはワーク穴の中に入れ、走行させると共に、超音波を発生することで、効率的に洗浄を行うことができる。
【0035】
また、超音波振動子10は、放射部11aの先端面および側面が放射面として超音波を放射することで、管材の端部、または穴の底面も同時に洗浄することができる。
【0036】
また、一対の走行手段30a,30bは、超音波振動子10の軸線と直交する方向に設けられた円形または多辺形の板状部材31と、板状部材31の外周に設けられた複数のボールキャスター32とを有することで、簡単な構成で、スムーズに走行することが実現できる。
【0037】
図4は、超音波洗浄装置200の一応用例を示す図である。図4に示すように、管材Pを洗浄する際に、管材Pを、洗浄液(または水)を入れた洗浄槽Tの中に所定角度に設置して、超音波洗浄装置200を管材Pの中に設置し、超音波振動子10Aのケーブルを介して超音波振動子10を移動させながら超音波を照射する。これにより、管材Pの内面を均一に、かつ効率的に洗浄することができる。
【0038】
なお、上述した実施の形態において、超音波洗浄装置100,200は、超音波振動子10のケーブルを介して超音波振動子10を移動させるものとしたが、これに限定されるものではない。例えば、一対の走行手段30a,30bの片方には、駆動モータおよびプロペラを設けて、超音波振動子10を管材の内面またはワーク穴の内面に沿って走行させる駆動手段をさらに備えるようにしてもよい。これにより、超音波振動子が自動的に走行することができ、長尺の管材またはワーク穴の洗浄に対応することができる。
【0039】
また、上述した実施の形態においては、一対の走行手段30a,30bは、超音波振動子10の軸線と直交する方向に設けられた円形または多辺形の板状部材31と、板状部材31の外周に設けられた複数のボールキャスター32とを有するものとしたが、これに限定されるものではない。例えば、他のスムーズに移動できる構成、例えば管材、ワーク穴等の内面に傷を付けずに滑動できる構成を用いてもよい。
【0040】
また、上述した実施の形態においては、円形の管材の内面を洗浄する例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、角パイプ、角穴に合わせて板状部材31の形状を形成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明は、各種配管、ワーク穴等の内面を効率的に洗浄する目的に利用できる。
【符号の説明】
【0042】
10,10A 超音波振動子
11,11a 放射部
20 超音波発振器
30a,30b 走行手段
31 板状部材
32 ボールキャスター
100,200 超音波洗浄装置
P 管材
T 洗浄槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管材の内面またはワーク穴の内面を洗浄する超音波洗浄装置であって、
少なくとも側面が放射面として360度方向に超音波を放射する円柱状または円筒状の放射部を有する超音波振動子と、
前記超音波振動子の両端または両端付近に設けられ、前記超音波振動子を支持しながら前記管材の内面またはワーク穴の内面に沿って自在に移動可能な一対の走行手段とを備えることを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項2】
前記超音波振動子は、放射部の先端面および側面が放射面として超音波を放射することを特徴とする請求項1に記載の超音波洗浄装置。
【請求項3】
前記一対の走行手段は、前記超音波振動子の軸線と直交する方向に設けられた円形または多辺形の板状部材と、前記板状部材の外周に設けられた複数のキャスターとを有することを特徴とする請求項1または2に記載の超音波洗浄装置。
【請求項4】
前記一対の走行手段の片方には、駆動モータを有し、前記超音波振動子を前記管材の内面またはワーク穴の内面に沿って走行させる駆動手段をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の超音波洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−217987(P2012−217987A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102194(P2011−102194)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(503407797)新科産業有限会社 (3)
【Fターム(参考)】