説明

超音波画像処理方法および超音波画像処理装置

血管の超音波Bモード画像におけるノイズ出現を低減するために血流情報が使用される。血流検出器によって血流信号が取得される。ハイパスフィルタ通過後、血管内腔の血流信号パワーのみが残り、静止組織部分からの信号パワーは抑制される。Bモード画像のノイズを低減する利得制御信号aを生成するのに使用される血流成分パラメータを計算するために血流信号成分が使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して超音波画像診断の分野に関する。具体的には、本発明の実施例は血管を画像化する際にノイズを低減する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波は、心臓や肝臓などの臓器、血管、妊婦体内の胎児といった様々な体内構造を画像化するために使用される。血管の画像化には、Bモード画像の技術が利用される。一般的に、血液は、血管内において血管壁や周辺組織よりも低いエコー電力を示すため、高コントラストが生じる。血管壁の表層あるいは内膜は、動脈硬化、狭窄、または冠状動脈閉塞などの心血管疾病の診断において特に注目されている。典型的には、血管内膜の厚みが計測されて診断に使用される。しかし、様々な要因によって、大抵は、血管内腔にクラッタノイズが出現して内膜の厚みの測定を困難にしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
血管画像におけるノイズの出現を低減する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、血管のBモード画像におけるクラッタノイズを低減するために、血流情報を使用するシステムおよび方法を採用するのが望ましいことを発見した。
【0005】
本発明の第1の態様は、各位置ごとに数回に亘って、超音波信号を送信して血管からの超音波信号を受信することによって血管を画像化する際に、戻ってきた超音波信号によるクラッタノイズ発現(manifest)を抑制するための方法を提供する。本方法は、反射された超音波画像信号を処理してBモード画像出力を生成し、反射された超音波信号を復調してドプラ信号を生成し、ドプラ信号にウォールフィルタ処理(wall filtering)を施し、信号の血流成分のみを通過させ、血流成分パラメータに基づいて利得制御信号αを生成し、Bモード画像プロセッサの出力を利得制御信号αで制御するものであって、Bモード画像プロセッサの出力におけるノイズ発現を抑制する。
【0006】
本発明の別の態様は、各位置ごとに数回に亘って、超音波信号を血管へ送信して血管から受信することによって血管を画像化する際に、反射された超音波信号によってクラッタノイズ出現を抑制するための方法を提供する。本発明のこの態様による方法では、反射された超音波画像信号を処理してBモード画像出力を生成し、反射された超音波画像信号にウォールフィルタをかけて信号の血流成分のみを通過させ、血流成分パラメータを計算し、血流成分パラメータに基づいて利得制御信号αを生成し、Bモード画像プロセッサの出力を利得制御信号αで制御することを含み、Bモード画像プロセッサ出力のノイズ出現を抑制する。
【0007】
本発明の別の態様は、各位置ごとに数回に亘って超音波信号を血管へ送信して血管から受信することによって血管を画像化する際に、反射された超音波信号によってクラッタノイズ出現を抑制するためのシステムを提供する。本発明のこの態様は、反射された超音波信号を受信し、受信した信号を出力するように構成された受信器と、受信器に接続され受信した信号からBモード処理された画像を出力するように構成されたBモード画像プロセッサと、受信器に接続され反射された超音波画像信号を復調してドプラ信号を生成するドプラ血流検出器であって、ドプラ信号にフィルタをかけてドプラ信号の血流成分のみを出力するように構成されたウォールフィルタを有するドプラ血流検出器と、ドプラ血流検出器に接続され血流成分パラメータを計算して血流成分に基づいて利得制御信号αを生成するように構成された利得制御生成器と、利得制御生成器とBモード画像プロセッサとに接続され利得制御信号αを使ってBモード処理された画像出力を修正するように構成された信号合成器と、を含み、Bモード処理された画像においてノイズ出現を抑制する。
【0008】
本発明の別の態様は、各位置ごとに数回に亘って超音波信号を血管へ送信して血管から受信することによって血管を画像化する際に、反射された超音波信号によってクラッタノイズ出現を抑制するためのシステムを提供する。本発明のこの態様は、反射された超音波信号を受信し受信した信号を出力するように構成された受信器と、受信器に接続され受信した信号からBモード処理された画像を出力するように構成されたBモード画像プロセッサと、受信器に接続されたRF血流検出器であって、反射された超音波RF信号にフィルタをかけて受信信号の血流成分のみを出力するように構成されたウォールフィルタを有するRF血流検出器と、RF血流検出器に接続され血流成分パラメータを計算して血流成分に基づいて利得制御信号αを生成するように構成された利得制御生成器と、利得制御生成器とBモード画像プロセッサとに接続され利得制御信号αを使ってBモード処理された画像出力を修正するように構成された信号合成器と、を含み、Bモード処理された画像においてノイズ出現を抑制する。
【0009】
本発明の一つまたは複数の実施態様の詳細を、添付の図面および以下の説明で説明する。本発明の他の特徴、目的および利点は、説明および図面から、また特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】クラッタノイズを示す血管の例示的なBモード画像を示す図である。
【図2】例示的な血流画像を示す図である。
【図3】クラッタノイズ抑制後の例示的なBモード画像を示す図である。
【図4】ドプラフロー処理を使用したBモード画像用のクラッタノイズ抑制システムの例示的なシステム図である。
【図5】RFフロー処理を使用したBモード画像用のクラッタノイズ抑制システムの例示的なシステム図である。
【図6】例示的なドプラ血流検出器を示す図である。
【図7】例示的なRF血流検出器を示す図である。
【図8】ルックアップテーブルとして構成された例示的な利得制御信号発生器を示す図である。
【図9】例示的な利得制御信号曲線を示す図である。
【図10】ルックアップテーブルとして構成された例示的な利得制御信号発生器を示す図である。
【図11】例示的な利得制御信号曲線を示す図である。
【図12】デジタル信号プロセッサとして構成された例示的な利得制御信号発生器を示す図である。
【図13】デジタル信号プロセッサとして構成された例示的な利得制御信号発生器を示す図である。
【図14】ドプラフロー処理を使用したBモード画像用の例示的なクラッタノイズ抑制方法を示す図である。
【図15】RFフロー処理を使用したBモード画像用の例示的なクラッタノイズ抑制方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して説明するが、図面全体を通じて同一番号は同一要素を表している。本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明において説明されたまたは図面に図示された実施例の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態でも可能であり、種々の応用および種々の用途において実施することができる。また、本明細書で使用される言語の使用方法や専門用語は、説明を目的としており、制限的なものとしてみなすべきではないことを理解されたい。本明細書では、「含む」、「備える」、「有する」およびこれらの変化形は、それら以降に記載される項目、およびその同等物、さらに追加項目を包含することを意味する。「搭載した」、「接続した」、「連結した」という用語も広義に使用され、直接的および間接的な、搭載、接続、連結を包含する。さらに「接続した」および「連結した」は、物理的あるいは機械的な接続または連結に制限されるものではない。
【0012】
本発明は、図面において説明または含意されたどんな特定のソフトウェア言語にも限定されないことを留意されたい。本願の実装において種々の代替のソフトウェア言語を用いてもよいことは当業者には明らかである。当分野ではよくあることだが、構成要素および項目の中にはハードウェア要素であるかのように図示および説明されるものがあることを理解されたい。しかし、当業者には、この詳細な説明を読めば、少なくともある実施形態においては、本方法および本システムにおける構成要素がソフトウェアまたはハードウェアのいずれかで実装されることが理解されるだろう。
【0013】
超音波は超音波トランスデューサによって人体内へ送信され、様々な臓器、血管、妊婦体内の胎児を画像化する。組織内の散乱体は超音波を散乱させ、散乱した超音波はトランスデューサへ戻る。受信ビームフォーマは超音波ビームを形成し、ポストプロセッサは、戻ってきた超音波信号の振幅からBモード画像としての組織画像を作成する。
【0014】
血管は患者の心血管状態を示すので、よく画像化される。血管の内膜厚は、しばしば測定されて診断用に使用される。しかし、内膜の画像は、様々な要因によるノイズによって頻繁に隠れてしまう。血流情報は、通常、カラードプラおよびスペクトルドプラ技術を使用して得られる。
【0015】
カラードプラは、超音波を血管内に送信し、移動する赤血球から散乱超音波を検出することによって血流を画像化するのによく使用される二次元画像化技術である。カラードプラは、Bモード画像と同様に、多数のビームからなる。血流速度を検出するために、カラードプラは、超音波信号を位置ごとに数回送信して動きを検出する。二次元の血流画像を作成するために、送信位置をサブミリ単位で、または超音波の波長程度で移動する。送信位置の移動を約100回繰り返して数センチをカバーし、二次元血流画像を作成する。位相配列トランスデューサまたは扇型画像フォーマットのために、送信方向は、例えば、約0.5〜1.0度という小さな角度で変更される。これを約100回繰り返して、扇型画像の約90度をカバーする。送信位置または方向ごとに、超音波が数回送信される。受信されたビーム成形後のRF超音波信号は、直交復調されて、複素化されたドプラI−Q信号になる。
【0016】
ドプラI−Q信号は、血流信号成分に加え、静止組織の信号成分を含んでいる。静止信号成分は、通常、血流成分より大きく、30〜40dBである。したがって、血流を正確に検出するためには静止信号成分を除去する必要がある。
【0017】
数回の送信により受信されたドプラ信号に対してハイパスフィルタ(高域フィルタ)をかけて血流信号成分のみを得るが、ハイパスフィルタは血管壁ノイズを除去するものであり、一般的にウォールフィルタと呼ばれる。ハイパスフィルタは、静止信号成分を除去して血流信号成分のみを通過させる。ハイパスフィルタの一つの形態としては、信号減算、または、後続の送信からのドプラ信号を先行する送信からのドプラ信号から減算する2タップFIRフィルタがある。連続した送信から受信した各ドプラI−Q信号の間の位相差が血流を示す。さらに、ハイパスフィルタを通過したドプラI−Q信号のパワーが、血流の存在を示している。
【0018】
本発明のシステムおよび方法は、上述の血流信号を使用してBモード信号振幅を低下させることによってクラッタノイズを低減するものである。クラッタノイズが血管内腔に存在していても、血流もまた、通常、内腔の同じ位置において存在している。血管内のクラッタノイズは、内膜を隠し、内腔の厚みの測定を困難にする。振幅a、パワーa、または累乗パワーa(指数bは実数)などの血流成分のパラメータを計算して、同じ画像位置でのBモード画像プロセッサの出力信号を抑制するための利得制御信号αを生成するのに使用することができる。血流成分パラメータは、総数または平均数であってよい。クラッタノイズ抑制量は、使用された血流成分パラメータと比例するか、または所定の関係にある。
【0019】
図1は、例示的なBモード画像プロセッサから出力された、近位壁103および遠位壁105をもつ血管101の画像を示している。クラッタノイズ107は、近位壁103に近接して示されている。図2は、図1に示されたBモード画像の利得を低減するために使用される同じ血管の血流201の画像を示している。図3は、明瞭な血管内腔301を表す結果画像を示す。
【0020】
図4は、本発明を備えた超音波システムを示している。図14は、本方法を説明するフロー図を示している。送信器406によって送信/受信スイッチ404を介して駆動される超音波プローブ402から超音波信号が送信される。受信器408は、受信した超音波信号を、スイッチ404を介してプローブ402から受信し、その信号を処理する(ステップ1405)。処理済み信号は、血流検出器410、Bモード画像プロセッサ412(ステップ1410)、およびドプラスペクトルプロセッサ424に接続される。ドプラスペクトルプロセッサは、受信器408によって出力された信号からドプラスペクトルを計算し、そのドプラスペクトルを、ドプラスペクトルモードか、またはBモード画像および/またはカラーフロー画像付きの混合モードで、スキャンコンバータ420に出力する。
【0021】
血流検出器410は、血流を検出し、振幅a、パワーa、累乗パワーa、またはこれらの値の組み合わせである血流成分パラメータを計算して、利得制御信号生成器418へ出力する。利得制御信号生成器418は、血流成分パラメータにしたがって利得制御信号αを生成し、その利得制御信号αを、乗算器または可変利得増幅器などの信号合成器414へ出力する。
【0022】
図6は、ドプラ血流検出器410の図を示している。ドプラ血流検出器は、ウォールフィルタ(すなわちハイパスフィルタ)602、速度演算器604、パワー演算器606、分散演算器608を含む。ウォールフィルタは、復調されたI−Q信号を受信器408から受信する(ステップ1415)。ハイパスフィルタのカットオフ周波数またはコーナー周波数は、ユーザーによって調節可能であり、低周波数の静止組織信号成分を遮断しながら高周波の血流信号成分のみを通過させる。ハイパスフィルタの構成は、FIR(有限インパルス応答)フィルタ、IIR(無限インパルス応答)フィルタ、多項式フィルタ、回帰直線フィルタ、あるいはその他の種類の構造でもよい(ステップ1420)。血流信号成分は、速度演算器604、パワー演算器606、および分散演算器608に接続される。
【0023】
速度演算器604は、速度信号をテレビラスタ走査の速度画像へ変換するスキャンコンバータ420に対して出力される血流速度を計算する。次に、速度画像は、通常のカラーフローモードでディスプレイモニタ422へ表示される。分散演算器608は、分散信号をテレビラスタ走査の分散画像へ変換するスキャンコンバータ420に対して出力される分散または乱流指標を計算する。次に、分散画像は、通常のカラーフローモードでディスプレイモニタ422へ表示される。パワー演算器606は、血流成分パラメータの信号振幅a、パワーa、累乗パワーa、およびこれらの値の組み合わせを計算する。血流成分パラメータは、一般的に、次式を使用してサンプリングされたハイパスフィルタ通過後の複素ドプラI−Q信号から計算される。
【0024】
【数1】

【0025】
ここで、zは、ハイパスフィルタ通過後の複素ドプラI−Q信号、iは、超音波送信シーケンスに関するi番目の成分を示し、Nは、離散時間におけるハイパスフィルタ通過後の信号のサンプル数を示す。*は、複素共役を示す。通常、フィルタを通過する出力数は、送信/受信信号数よりも少ない。
【0026】
パワー演算器606は、DSP、FPGA、ASIC、または乗算器、加算器、除算器、絶対値演算器などの個別の要素でもよい。
【0027】
その他の血流成分パラメータは、次式によりパワーaから求められる。
【0028】
【数2】

【0029】
信号振幅aおよび累乗パワーaも、次式により求められる。
【0030】
【数3】

【0031】
数式(4)および数式(5)によって求められる血流成分パラメータは、数式(2)および数式(3)によって得られるものと異なるが、これは、処理ステップの順序が異なるためである(ステップ1425)。振幅a、パワーa、累乗パワーaのための上記血流成分パラメータ計算は、それぞれ合計値を表している。各パラメータ値をサンプル数Nで割ることによって合計血流成分パラメータを正規化して、追加の計算によって平均値を求めてもよい。
【0032】
血流成分パラメータである、振幅a、パワーa、累乗パワーa、またはこれらの値の組み合わせは、利得制御生成器418へ接続され、利得制御信号αを生成するのに使用される。信号/ノイズ比(SN比)を増加させるために、これらの血流成分パラメータを次式のような合成血流成分パラメータに組み合わせてもよい。なお、次式において、d、d、dは重み係数を表す実数であり、i番目の成分b(i)も実数である。
【0033】
【数4】

【0034】
1つ以上の血流成分パラメータを組み合わせると、一般的に、信号/ノイズ比が増加し、無相関ノイズが減少する。上式は、パワー演算器606において計算され、その後、利得制御生成器418へ出力される。パワー演算器606は、カラーフローモードでスキャンコンバータ420へ出力する。
【0035】
利得制御生成器418は、例えば、図12に示されるようなデジタル信号プロセッサ(DSP)1210、図8に示されるようなルックアップテーブル(LUT)810、あるいはFPGA、ASIC、または乗算器や加算器などの個別の要素であってもよい。利得制御生成器418は、血流成分パラメータを入力として使用する。図9はLUT810またはDSPの信号処理能力を応答曲線で表している。入力が小さい場合、高利得になる。入力が大きい場合、利得は、0か、または0に近似となる。図9に示された曲線は例示である。その他の所定の曲線を、Bモード画像プロセッサ412によって出力された信号(ステップ1430)を抑制するのに使用してもよい。利得制御生成器418の利得制御信号αは、出力され、信号合成器414に接続される。
【0036】
Bモード画像プロセッサ412は、Bモード画像を作成し、画像を信号合成器414へ出力する。画像は、画像信号をテレビラスタ走査画像へ変換するスキャンコンバータ420へ出力される。次に、画像はディスプレイモニタ422に表示される。Bモード信号利得は、利得制御信号αによって制御される。例えば、血流制御パラメータが大きい場合には、信号合成器414の利得は小さくなり、クラッタノイズが血管内腔に存在する場合にはノイズを抑制する。血流はクラッタノイズの存在する血管内腔にだけ存在するので、全体的な利得制御によりクラッタノイズが除去される。血流成分パラメータが低い場合(組織領域の場合)には、信号合成器414の利得は大きくなり、標準輝度のBモード組織画像となる。このようにして、血流領域に存在するクラッタノイズは、血流信号によって低減される(ステップ1435)。
【0037】
他の実施形態では、カラードプラ処理を使用する代わりに、RF信号レベルで相互相関または時間シフトの技術を用いて血流を検出してもよい。速度を検出するためには、位置ごとに数回超音波信号を送信して動きを検出する。二次元血流画像を作成するために、送信位置を、サブミリ単位で、または超音波の波長程度で移動する。送信位置の移動を約100回繰り返して数センチをカバーし、二次元血流画像を作成する。位相アレイトランスデューサまたは扇型画像フォーマットのために、送信方向は、例えば、約0.5〜1.0度という小さな角度で変更される。これを約100回繰り返して、扇型画像の約90度をカバーする。送信位置または方向ごとに、超音波が数回送信される。ビーム成形後のRF信号にハイパスフィルタをかけて、組織信号を除去し血流信号を通過させる。振幅c、パワーc、パワーcに上昇されるパワー(ただし、bは実数)、またはこれらの値の組み合わせが計算され、同じ位置でのBモード画像プロセッサの出力信号を抑制するための利得制御信号αを生成するのに使用される。血流成分パラメータは、総数であっても平均数であってもよい。
【0038】
図5、7、10、11、15は、本システムおよび本方法を示している。送信器506は、スイッチ504を介して、超音波信号を超音波プローブ502へ送信する。超音波は、血管を含む被検体へ送信される。次に、超音波は、超音波プローブ502へ戻り、そこで電気信号へ変換される(ステップ1505)。反射された超音波信号は、スイッチ504を介して受信器508に接続される。受信器は、信号を処理して、RF信号を、RF血流検出器510、Bモード画像プロセッサ512(ステップ1510)、ドプラスペクトルプロセッサ524へ出力する。ドプラスペクトルプロセッサは、受信器508によって出力された信号からドプラスペクトルを計算し、そのドプラスペクトルを、ドプラモードか、またはBモード画像および/またはカラーフローモードとの混合モードで、スキャンコンバータ520に出力する。Bモード画像プロセッサ512は、RF信号を処理してBモード画像信号を出力する。RF血流検出器510は、RF信号を処理して、血流成分パラメータである、振幅c、パワーc、パワーcに上昇されるパワー、またはこれらの値の組み合わせである血流成分パラメータを利得制御信号生成器518へ出力する。
【0039】
図7は、RF血流検出器510の図である。RF血流検出器は、ハイパスフィルタ702、速度演算器704、パワー演算器706、分散演算器708を含む。ハイパスフィルタの一つの形態としては、信号減算、または後続の送信から受信したドプラ信号を先行する送信から減算する2タップFIRフィルタがある。2タップFIRフィルタでは、2つ以上の送信シーケンス間でハイパスフィルタをかける。複数の送信間でのハイパスフィルタは、血管壁ノイズを除去するものであって、ウォールフィルタと呼ばれる。ハイパスフィルタは、2つ以上の送信から受信したRF信号を、高次のFIR、IIR、またはその他の種類のフィルタにおいて使用してもよい。ハイパスフィルタのカットオフ周波数はユーザーによって調節可能であってよく、低周波数の静止組織信号成分を遮断しながら、受信器508から受信したRF信号からの高周波の血流信号成分のみを通過させ(ステップ1520)、速度演算器704、パワー演算器706、分散演算器708に接続させる。
【0040】
速度演算器704は、ハイパスフィルタを通過したRF信号から血流速度を計算する。速度は、スキャンコンバータ520へ出力され、そこで速度信号はテレビラスタ走査の速度画像へ変換される。次に、速度画像は、ディスプレイモニタ522に通常のカラーフローモードで表示される。分散演算器708は、ハイパスフィルタを通過したRF信号から、乱流指標としての分散を計算する。分散は、分散信号をテレビラスタ走査の分散画像へ変換するスキャンコンバータ520へ出力される。次に、分散画像は、ディスプレイモニタ522に通常のカラーフローモードで表示される。パワー演算器706は、サンプリングされたRF信号から、次式を使用して血流成分パラメータである振幅c、パワーc、または累乗パワーcを計算する。ただし、xは、ハイパスフィルタを通過したRF信号サンプル、Nは、ハイパスフィルタを通過した信号サンプル数である。
【0041】
【数5】

【0042】
パワー演算器706は、DSP、FPGA、ASIC、または乗算器、加算器、除算器、絶対値演算器などの個別の要素でもよい。
【0043】
これらの値のうち1つを計算して、その他の値を以下のように第1の計算値から交互に求めても良い。例えば、パワーcが最初に計算され、振幅cおよび累乗パワーcは、次式によりパワーcから求められる。
【0044】
【数6】

【0045】
数式(10)、数式(11)によって計算される血流成分パラメータは、数式(6)、数式(8)によって計算されるパラメータと異なるが、これは、処理ステップの順序が異なるためである(ステップ1525)。振幅c、パワーc、累乗パワーcのための上記血流成分パラメータ計算は、それぞれ合計値を表している。各パラメータ値をサンプル数Nで割ることによって合計血流成分パラメータを正規化して、追加の計算をして平均値を求めてもよい。
【0046】
利得制御生成器518は、血流成分パラメータである、振幅c、パワーc、または累乗パワーc、またはこれらの値の組み合わせを受信して利得制御信号αを生成する。信号/ノイズ比(SN比)を増加させるために、これらの血流成分パラメータを、例えば、次式のような合成血流成分パラメータに組み合わせてもよい。ただし、d、d、dは重み係数を表す実数であり、i番目の成分であるb(i)も実数である。
【0047】
【数7】

【0048】
1つ以上の血流成分パラメータを組み合わせると、一般的に信号/ノイズ比が増加し、無相関のノイズが減少する。上式は、パワー演算器706で計算され、利得制御生成器518へ出力される。パワー演算器706は、カラーフローモードでスキャンコンバータへ出力する。
【0049】
利得制御生成器518は、例えば、図13に示されるようなデジタル信号プロセッサDSP1310、図8に示されるようなルックアップテーブル(LUT)1010、あるいはFPGA、ASIC、または乗算器、加算器などの個別の要素であってもよい。DSP1310またはLUT1010の応答例を図11に示す。血流成分パラメータの値が小さい場合、利得制御信号αは高くなり、高値の場合は、0に近い利得が生じる。図11に示された曲線は例示である。その他の所定の曲線を、Bモード画像プロセッサ512によって出力された信号(ステップ1530)を抑制するのに使用してもよい。利得制御生成器518の利得制御信号αは、出力され、信号合成器514に接続される。
【0050】
信号合成器514は、乗算器または可変利得増幅器であってもよい。信号合成器514は、元のBモード画像を利得制御信号αで乗算して、新しいBモード画像を、画像信号をテレビラスタ走査の画像へ変換するスキャンコンバータ520に対して出力する。画像は、次にディスプレイモニタ522に表示される(ステップ1535)。
【0051】
本RF血流検出システムおよび方法は、広帯域な超音波信号を使用しているため、ドプラ血流検出よりも高度な空間分解能を提供することができる。
【0052】
本発明の1つまたは複数の実施形態を説明した次第だが、本発明の精神および範囲に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは明らかである。したがって、他の実施形態も添付の請求の範囲内となる。
【符号の説明】
【0053】
402 超音波プローブ、404 スイッチ、406 送信器、408 受信器、410 血流検出器(カラードプラ)、412 Bモード画像プロセッサ、418 利得制御生成器、420 スキャンコンバータ、422 ディスプレイモニタ、424 ドプラスペクトルプロセッサ、502 超音波プローブ、504 スイッチ、506 送信器、508 受信器、510 血流検出器(RF、カラー)、512 Bモード画像プロセッサ、518 利得制御生成器、520 スキャンコンバータ、522 ディスプレイモニタ、524 ドプラスペクトルプロセッサ、602 ウォールフィルタ(ハイパスフィルタ)、604 速度演算器、606 パワー演算器、608 分散演算器、702 ウォールフィルタ(ハイパスフィルタ)、704 速度演算器、706 パワー演算器、708 分散演算器、810 LUT、1010 LUT、1210 DSP、1310 DSP。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各位置ごとに数回に亘って超音波信号を血管へ送信して血管から受信することにより前記血管を画像化する際に、反射された超音波信号によるクラッタノイズ出現を抑制するための方法であって、
前記反射された超音波信号を処理してBモード画像出力を生成し、
前記反射された超音波信号を復調してドプラ信号を生成し、
前記ドプラ信号にウォールフィルタ処理を施して当該信号の血流成分のみを通過させ、
血流成分パラメータを計算し、
前記血流成分パラメータに基づいて利得制御信号αを生成し、
Bモード画像プロセッサの前記出力を前記利得制御信号αで制御して前記Bモード画像プロセッサ出力のノイズ出現を抑制する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ウォールフィルタ処理は、さらに、ドプラ信号を受信して、ハイパスフィルタを使用して前記受信されたドプラ信号を処理することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記血流成分パラメータの計算は、さらに前記ウォールフィルタ処理されたドプラ信号から振幅aを計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記血流成分パラメータの計算は、さらに前記ウォールフィルタ処理されたドプラ信号からパワーaを計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、血流成分パラメータの計算は、さらに、
前記ウォールフィルタ処理されたドプラ信号から、振幅aと、パワーaと、累乗パワーab(i)(指数b(i)は実数)と、を計算し、
前記振幅aと、パワーaと、累乗パワーab(i)とをそれぞれ対応する重みd、d、d(d、d、i番目の成分であるdは実数)で乗算し、
前記重み付けされた振幅daと、パワーdと、累乗パワーdb(i)とを合計して、合成血流成分パラメータを

とする、方法。
【請求項6】
前記利得制御信号αは、前記血流成分パラメータに基づく所定の曲線応答であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
各位置ごとに数回に亘って超音波信号を血管へ送信して血管から受信することにより前記血管を画像化する際に、反射された超音波信号によるクラッタノイズ出現を抑制するための方法であって、
前記反射された超音波信号を処理してBモード画像出力を生成し、
前記反射された超音波信号にウォールフィルタ処理を施して当該信号の血流成分のみを通過させ、
血流成分パラメータを計算し、
前記血流成分パラメータに基づいて利得制御信号αを生成し、
Bモード画像プロセッサの前記出力を前記利得制御信号αで制御して前記Bモード画像プロセッサ出力のノイズ出現を抑制する、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記ウォールフィルタ処理は、さらに、RF信号を受信して、ハイパスフィルタを使用して前記受信されたRF信号を処理することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記血流成分パラメータの計算は、さらに前記ウォールフィルタ処理された信号から振幅cを計算することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記血流成分パラメータの計算は、さらに前記ウォールフィルタ処理された信号からパワーcを計算することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
請求項7に記載の方法であって、血流成分パラメータの計算は、さらに、
前記ウォールフィルタ処理された信号から、振幅cとパワーcと累乗パワーcb(i)(指数b(i)は実数)とを計算し、
前記振幅cと、パワーcと、累乗パワーcb(i)と、をそれぞれ対応する重みd、d、d(d、d、i番目の成分であるdは実数)で乗算し、
前記重み付けされた振幅dcと、パワーdと、累乗パワーdb(i)とを合計して、合成血流成分パラメータを

とする、方法。
【請求項12】
前記利得制御信号αは、前記血流成分パラメータに基づく所定の曲線応答であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
各位置ごとに数回に亘って超音波信号を血管へ送信して血管から受信することにより前記血管を画像化する際に、反射された超音波信号によるクラッタノイズ出現を抑制するためのシステムであって、
前記反射された超音波信号を受信し、受信した信号を出力するように構成された受信器と、
前記受信器に接続され、前記受信した信号からBモード処理された画像を出力するように構成されたBモード画像プロセッサと、
前記受信器に接続され、前記反射された超音波信号を復調してドプラ信号を生成するように構成されたドプラ血流検出器であって、前記ドプラ信号にフィルタをかけて前記ドプラ信号の血流成分のみを出力するように構成されたウォールフィルタを有するドプラ血流検出器と、
前記ドプラ血流検出器に接続され、前記血流成分に基づいて血流成分パラメータを計算し、利得制御信号αを生成するように構成された利得制御生成器と、
前記利得制御生成器と前記Bモード画像プロセッサとに接続され、前記利得制御信号αを使って、前記Bモード処理された画像出力を修正するように構成された信号合成器と、
を備え、
前記Bモード処理された画像におけるノイズ出現を抑制することを特徴とするシステム。
【請求項14】
前記ウォールフィルタは、ハイパスフィルタであることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記血流成分パラメータは、振幅aであることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記血流成分パラメータは、パワーaであることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
請求項13に記載のシステムであって、前記血流成分パラメータは、前記ウォールフィルタを通過したドプラ信号からの振幅aと、パワーaと、累乗パワーab(i)(指数b(i)は実数)とを含む合成血流成分パラメータ

であり、ここで、前記振幅a、パワーa、累乗パワーab(i)は、それぞれに対応する重みd、d、d(d、d、i番目の成分であるdは実数)で乗算され、合計されていることを特徴とするシステム。
【請求項18】
前記利得制御信号αは、前記血流成分に基づく所定の曲線応答であることを特徴とする、請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
各位置ごとに数回に亘って超音波信号を血管へ送信して血管から受信することにより前記血管を画像化する際に、反射された超音波信号によるクラッタノイズ出現を抑制するためのシステムであって、
前記反射された超音波信号を受信し、受信した信号を出力するように構成された受信器と、
前記受信器に接続され、前記受信した信号からBモード処理された画像を出力するように構成されたBモード画像プロセッサと、
前記受信器に接続されたRF血流検出器であって、前記反射された超音波RF信号にフィルタをかけて前記受信信号の血流成分のみを出力するように構成されたウォールフィルタを有するRF血流検出器と、
前記RF血流検出器に接続され、前記血流成分に基づいて血流成分パラメータを計算し、利得制御信号αを生成するように構成された利得制御生成器と、
前記利得制御生成器と前記Bモード画像プロセッサとに接続され、前記利得制御信号αを使って前記Bモード処理された画像出力を修正するように構成された信号合成器と、
を備え、
前記Bモード処理された画像におけるノイズ出現を抑制することを特徴とするシステム。
【請求項20】
前記ウォールフィルタは、ハイパスフィルタであることを特徴とする請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記血流成分パラメータは、振幅cであることを特徴とする請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記血流成分パラメータは、パワーcであることを特徴とする請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
請求項19に記載のシステムであって、前記血流成分パラメータは、前記ウォールフィルタを通過したRF信号からの振幅cと、パワーcと、累乗パワーcb(i)(指数b(i)は実数)とを含む合成血流成分パラメータ

であり、ここで、前記振幅c、パワーc、累乗パワーcb(i)は、それぞれに対応する重みd、d、d(d、d、i番目の成分であるdは実数)で乗算され、合計されていることを特徴とするシステム。
【請求項24】
前記利得制御信号αは、前記血流成分に基づく所定の曲線応答であることを特徴とする、請求項19に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−522582(P2010−522582A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541658(P2009−541658)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【国際出願番号】PCT/JP2008/056727
【国際公開番号】WO2008/123595
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】