説明

超音波診断装置及びその制御プログラム

【課題】造影剤の破壊後の観察部位の輝度が、破壊前の輝度に戻ったか否かを容易に判断することができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】超音波画像において領域を設定する領域設定部52と、前記領域内の画素の輝度分布に基づいて、この領域内の輝度分布の範囲を含む所定の輝度範囲を設定する輝度範囲設定部53と、前記超音波画像における画素が前記所定の輝度範囲内である場合に、該所定の輝度範囲内であることを示す所定の表示を行なう表示設定部54と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置及びその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体組織に造影剤を注入して超音波の送受信を行ない、造影剤からのエコー信号を含むエコー信号に基づいて作成された超音波画像を表示する超音波診断装置がある(例えば、特許文献1参照)。このような超音波診断装置における超音波画像では、造影剤が存在する部分は高輝度となって表示され、例えば心筋画像の解析分野において有効である。また肝臓について、組織の部分に造影剤が浸透していく様子を継続的に観察することを目的とする場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−202142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の造影剤を用いた撮影法において、造影剤を破壊し、その後の造影剤の流入を観察するという手法がある。造影剤を破壊すると、造影剤の消失によって一旦は輝度が低くなる。そして、再び造影剤が流入するにつれて輝度が高くなっていき、造影剤破壊前の輝度まで戻る。
【0005】
上述の造影剤を破壊する手法は、例えば肝臓における良性の腫瘍と悪性の腫瘍とを見分けることに利用される場合がある。造影剤の破壊後において、悪性の腫瘍は良性の腫瘍と比べて急激に輝度が上昇し、良性の腫瘍よりも短い時間で元の輝度に戻る。従って、造影剤の破壊後において輝度を観察し、破壊前の輝度に戻るまでの時間を知ることにより、良性であるか悪性であるかを診断することができる。
【0006】
しかし、造影剤の破壊前と破壊後とでは、腫瘍の周りの輝度が異なるため、人間の目の錯覚により、元の輝度になったか否かの判断が困難である場合がある。そこで、造影剤の破壊後の観察部位の輝度が、破壊前の輝度に戻ったか否かを容易に判断することができる超音波診断装置及びその制御プログラムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するためになされた第1の観点の発明は、超音波画像において領域を設定する領域設定部と、前記領域内の輝度分布の範囲を含む所定の輝度範囲を設定する輝度範囲設定部と、前記超音波画像における画素が前記所定の輝度範囲内である場合に、該所定の輝度範囲内であることを示す所定の表示を行なう表示設定部と、を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0008】
第2の観点の発明は、第1の観点の発明において、前記所定の表示は、前記超音波画像における前記所定の輝度範囲内の画素上に表示されることを特徴とする超音波診断装置である。
【0009】
第3の観点の発明は、第1の観点の発明において、前記所定の表示は、前記超音波画像とは別に表示されることを特徴とする超音波診断装置である。
【0010】
第4の観点の発明は、第1〜3のいずれか一の観点の発明において、前記所定の輝度範囲は、前記領域内の輝度の平均値から所定の範囲で設定されることを特徴とする超音波診断装置である。
【0011】
第5の観点の発明は、第1〜4のいずれか一の観点の発明において、前記表示設定部は、前記超音波画像における所定範囲内の画素を対象として、前記所定の表示を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
【0012】
第6の観点の発明は、第1〜5のいずれか一の観点の発明において、前記所定の表示は、前記所定の輝度範囲内の画素を、該所定の輝度範囲外の画素と区別しうる表示形態であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0013】
第7の観点の発明は、第6の観点の発明において、前記所定の表示の表示形態は、色、線又はドットにより前記所定の輝度範囲外の画素と区別するものであることを特徴とする超音波診断装置である。
【0014】
第8の観点の発明は、第1〜7のいずれか一の観点の発明において、前記所定の表示は、前記所定の輝度範囲の画素の輝度に応じて異なる表示形態で表示されるものであることを特徴とする超音波診断装置である。
【0015】
第9の観点の発明は、第1〜8のいずれか一の観点の発明において、前記領域が設定される超音波画像は、造影剤が注入された被検体についての超音波画像であって、造影剤を破壊する前の超音波画像であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0016】
第10の観点の発明は、第1〜9のいずれか一の観点の発明において、操作者が指示入力を行なう操作部を備え、前記領域設定部は、前記操作部における指示入力に基づいて前記領域を設定することを特徴とする超音波診断装置である。
【0017】
第11の観点の発明は、コンピュータに、超音波画像において領域を設定する領域設定機能と、前記領域内の画素の輝度分布に基づいて、該領域内の輝度分布の範囲を含む所定の輝度範囲を設定する輝度範囲設定機能と、前記超音波画像における所定範囲内の画素が前記所定の輝度範囲内である場合に、該所定の輝度範囲内であることを示す所定の表示を表示させる表示設定機能と、を実行させることを特徴とする超音波診断装置の制御プログラムである。
【発明の効果】
【0018】
上記観点の発明によれば、前記領域設定部によって設定された領域内の輝度分布に基づいて、この領域内の輝度分布の範囲を含む所定の輝度範囲が設定され、前記超音波画像における画素が前記所定の輝度範囲内である場合に、この所定の輝度範囲内であることを示す所定の表示が行なわれる。従って、例えば造影剤の破壊前の超音波画像における観察部位に前記領域を設定すると、前記所定の輝度範囲として、前記観察部位に設定された領域内の輝度分布に基づいてこの領域の輝度分布の範囲を含む所定の輝度範囲が設定される。そして、造影剤を破壊することによって一旦低くなった観察部位の輝度が前記所定の輝度範囲まで上昇すると、前記所定の表示が行われるので、造影剤の破壊後の観察部位の輝度が、破壊前の輝度に戻ったか否かを容易に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の実施形態の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図1に示す超音波診断装置における表示制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】第一実施形態の超音波診断装置における処理を示すフローチャートである。
【図4】図1に示す超音波診断装置における表示部の表示の一例を示す図である。
【図5】超音波画像に領域が設定された表示部の表示の一例を示す図である。
【図6】領域の輝度分布の一例を示す図である。
【図7】造影剤破壊直後の超音波画像が表示された表示部の表示の一例を示す図である。
【図8】造影剤破壊後の超音波画像上に色画像が表示された表示部の表示の一例を示す図である。
【図9】肝臓の組織、良性及び悪性の腫瘍の輝度と時間との関係を表すグラフである。
【図10】造影剤破壊後に、腫瘍の部分の輝度が造影剤破壊前の輝度まで上昇した状態の超音波画像であって、色画像を表示しない場合の超音波画像が表示された表示部を示す参考図である。
【図11】第二実施形態において造影剤破壊直後の表示部の表示の一例を示す図である。
【図12】図11に示す状態から一部の画素について輝度が上昇し、色画像が表示された表示部の表示の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について、図1〜図10に基づいて詳細に説明する。図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信部3、エコーデータ処理部4、表示制御部5、表示部6、操作部7、制御部8及び記憶部9を備える。
【0021】
前記超音波プローブ2は、アレイ状に配置された超音波振動子(図示省略)を有して構成され、この超音波振動子によって被検体に対して超音波を送信し、そのエコー信号を受信する。前記送受信部3は、前記超音波プローブ2を所定の送信条件で駆動させ、スキャン面を超音波ビームによって音線順次で走査させる。前記送受信部3は前記制御部8からの制御信号によって前記超音波プローブ2を駆動させる。
【0022】
また、前記送受信部3は、前記超音波プローブ2で得られたエコー信号について、整相加算処理等の信号処理を行ない、信号処理後のエコーデータを前記エコーデータ処理部4へ出力する。
【0023】
前記エコーデータ処理部4は、前記送受信部3から出力されたエコーデータに対し、対数圧縮処理、包絡線検波処理等の所定の処理を行う。この所定の処理は、造影剤からのエコー信号を含むデータに基づいて超音波画像を作成するために必要な公知の処理を含む。
【0024】
前記表示制御部5は、図2に示すように、表示画像作成部51、領域設定部52、輝度範囲設定部53、表示設定部54を有している。また、特に図示しないが、前記表示制御部5は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの半導体メモリ(Memory)を有している。
【0025】
前記表示画像作成部51は、スキャンコンバータ(Scan Converter)を含んで構成され、前記エコーデータ処理部4で所定の処理がなされたデータを前記表示部6に表示される超音波画像データに走査変換する。そして、前記表示画像作成部51は、この超音波画像データに基づく超音波画像を前記表示部6に表示する。
【0026】
なお、前記超音波画像データに変換される前のデータを、ローデータ(Raw Data)と云う。このローデータは、前記半導体メモリや前記記憶部9に記憶される。
【0027】
前記領域設定部52は、前記操作部7における指示入力に基づいて、前記表示部6に表示された超音波画像に領域R(図5参照)を設定する(領域設定機能)。詳細は後述する。前記領域設定部52は、本発明における領域設定部の実施の形態の一例である。また、前記領域設定機能は、本発明における領域設定機能の実施の形態の一例である。
【0028】
前記輝度範囲設定部53は、前記領域R内の輝度分布に基づいて、この領域R内の輝度分布の範囲を含む所定の輝度範囲Brを設定する(輝度範囲設定機能)。詳細は後述する。前記輝度範囲設定部53は、本発明における輝度範囲設定部の実施の形態の一例である。また、前記輝度範囲設定機能は、本発明における輝度範囲設定機能の実施の形態の一例である。
【0029】
前記表示設定部54は、前記表示部6に表示された超音波画像Gにおける所定範囲S(図8参照)内の画素について、所定の輝度範囲Br内である場合に、前記超音波画像Gの当該画素上に色画像Clを合成して表示する(表示設定機能)。詳細は後述する。前記表示設定部54は、本発明における表示設定部の実施の形態の一例である。また、前記色画像Clは、本発明における所定の表示の実施の形態の一例である。さらに、前記表示設定機能は、本発明における表示設定機能の実施の形態の一例である。
【0030】
前記表示部6は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などで構成される。前記操作部7は、操作者が指示や情報を入力するためのキーボード及びポインティングデバイス(図示省略)などを含んで構成されている。
【0031】
前記制御部8は、CPU(CentRal Processing Unit)で構成され、HDD(Hard Disk Drive)などで構成される前記記憶部9に記憶された制御プログラムを読み出し、前記超音波診断装置1の各部における機能を実行させる。
【0032】
さて、本例の超音波診断装置1の作用について図3のフローチャートに基づいて説明する。先ず、ステップS1では、図4に示すように、前記表示部6に超音波画像Gを表示させる。より詳細には、造影剤が注入された被検体に対して前記超音波プローブ2によって超音波の送受信を行ない、得られたエコー信号に基づいて超音波画像データの作成を行なって、前記表示部6にリアルタイムの前記超音波画像Gを表示する。超音波画像Gは造影剤からのエコー信号を含むデータに基づいて作成された超音波画像であり、腫瘍Xの像が写っている。
【0033】
次に、ステップS2では、図5に示すように超音波画像Gに領域Rを設定する。具体的には、操作者が前記操作部7を用いて、領域Rの位置を超音波画像Gにおいて指定する指示入力を行なうと、前記領域設定部52は、指定された位置に前記領域Rを設定する。例えば、操作部7を用いて超音波画像Gにおける任意の点を指定すると、その点を中心とする所定の半径の円を前記領域Rとして設定してもよい。ただし、これに限られるものではない。
【0034】
領域Rは、造影剤を破壊して消失させた後における造影剤の再流入を観察したい観察部位に設定される。ここでは、観察部位は腫瘍Xであり、前記領域Rは腫瘍Xに設定される。前記領域Rは、観察部位である腫瘍X以外の部分を含まないように設定することが望ましく、本例では、腫瘍Xの全体ではなく腫瘍Xの一部分に設定されている。
【0035】
次に、ステップS3では、前記ステップS2において設定された前記領域R内の画素の輝度分布に基づいて、前記輝度範囲設定部53は前記色画像Clを表示する輝度範囲を設定する。具体的に図6に基づいて説明する。図6には、前記領域R内の画素の輝度分布Dが示されている。前記輝度範囲設定部53は、前記輝度分布Dの平均値AVに対して±bの範囲を前記輝度範囲Brとする。
【0036】
なお、図5においては、前記領域R内の輝度は一様になっているが、実際には一様の輝度ではない。本例では、図6に示すような輝度分布になっているものとする。
【0037】
ここで、輝度範囲Brの幅について説明する。造影剤の破壊後に造影剤が再流入して破壊前と同じ状態に戻っても、同じ画素について破壊前の輝度と破壊後の輝度が全く同じにならない場合がある。従って、前記色画像Clが表示される輝度に、ある程度の幅を持たせるべく、所定の幅2bを有する前記輝度範囲Brが設定されている。一方、前記輝度範囲Brの幅が広すぎると破壊前と同じ状態に戻っていないにもかかわらず前記色画像Clが表示されてしまい、適切な判断ができないおそれがある。従って、前記輝度範囲Brの幅は、以上のような観点から適切な範囲に設定される。ただし、前記輝度範囲Brは、前記輝度分布Dの範囲を超えないように設定される。
【0038】
ちなみに、前記bの範囲を大きくすればするほど領域Rの平均輝度から離れた輝度についても色画像が表示されるようになる。一方、前記bの範囲を小さくすればするほど、領域Rの平均輝度に近い輝度にならないと色画像が表示されないことになる。
【0039】
前記bは、予めデフォルトとして設定されていてもよいし、操作者が前記操作部7において入力することによって設定されるようになっていてもよい。
【0040】
次に、ステップS4では、造影剤を破壊することができる音圧の超音波を送信することにより造影剤の破壊を行なう。これにより、造影剤が消失するので、図7に示すように前記超音波画像Gは、造影剤の破壊前よりも輝度が低くなる。
【0041】
造影剤が再流入すると、超音波画像Gの輝度が上昇する。そして、ステップS5では、前記表示設定部54が、図8に示すように超音波画像Gの所定範囲S内において前記輝度範囲Br内の輝度まで上昇した各画素に色を付して色画像Clを表示する。前記表示設定部54は、背景の超音波画像Gを透過させるようにして前記色画像Clを表示させる(色画像Clは図8においてドット(Dot)で表されている)。前記色画像Clは、例えば赤や青など予め設定された色の画像である。
【0042】
前記超音波画像Gにおける所定範囲Sは、操作者が操作部において指示入力を行なうことにより設定されてもよい。また、前記所定範囲Sは、前記領域Rを設定することにより自動的に設定されてもよい。領域Rを設定することにより自動的に前記所定範囲Sを設定する場合、例えば前記領域Rの中心を通る対角線を有する正方形を前記所定範囲Sとして設定してもよい。前記所定範囲Sは、前記超音波画像Gに表示されなくてもよいし表示されてもよい。
【0043】
ここで、輝度の上昇について図9に基づいて説明する。図9に示す3つのグラフのうち、実線のグラフTiは肝臓の正常組織の輝度と時間との関係を表すグラフ、一点鎖線のグラフXgは肝臓にできた良性の腫瘍の輝度と時間との関係を表すグラフ、ドットのグラフXbは肝臓にできた悪性の腫瘍の輝度と時間との関係を表すグラフである。なお、各グラフTi,Xg,Xbは概略が示されている。
【0044】
図9において、時刻t0で造影剤を破壊したものとする。造影剤破壊前において、正常組織の輝度はB1、良性及び悪性の腫瘍の輝度はともにB2である。ただし、この輝度は一例であり、実際には、正常組織や良性及び悪性の腫瘍の輝度は一様ではなく、同じ正常組織や同じ良性及び悪性の腫瘍であっても、異なる輝度で表示される場合がある。
【0045】
肝臓において、造影剤が破壊されて消失した後に、血管部分には造影剤がすぐに流入するものの、組織には徐々に造影剤がいきわたる。従って、正常組織については、グラフTiに示すように、時刻t0において造影剤が破壊されて消失し、輝度がB1から零になった後、徐々に輝度が上昇している。
【0046】
また、良性の腫瘍についても、正常組織と同様に造影剤消失後に徐々に輝度が上昇する。従って、良性の腫瘍については、グラフXgに示すように、時刻t0において輝度がB2からB3になった後、正常組織と同様の上昇曲線を描いて輝度が上昇する。
【0047】
ちなみに、造影剤の破壊前において、悪性及び良性の腫瘍の輝度B2は正常組織の輝度B1よりも高くなっている。このため、時刻t0においても悪性及び両性の腫瘍の輝度B3は正常組織よりも高くなっている。
【0048】
一方、悪性の腫瘍の周囲には血管が集まっているため、悪性の腫瘍であれば血管を流れる造影剤の影響によって急激に輝度が上昇する。従って、悪性の腫瘍については、グラフXbに示すように、時刻t0において輝度がB3になった後、正常な組織や良性の腫瘍よりも急激な上昇曲線を描いて輝度が上昇し、時刻t1で再び輝度B2になる。
【0049】
以上より、本例の超音波診断装置1によれば、造影剤を破壊してから前記色画像Clが表示されるまでの時間によって、前記超音波画像Gにおける腫瘍Xが良性であるか悪性であるかを診断することができる。
【0050】
また、図4及び図5における造影剤が破壊される前の超音波画像Gと、図7及び図8における造影剤が破壊された後の超音波画像Gとでは、腫瘍Xの周りの輝度が異なっている。従って、仮に前記色画像Clが表示されない場合には、図10の参考図に示すように、破壊後の超音波画像Gにおいて、腫瘍Xが破壊前の輝度と同じ輝度まで上昇しても、操作者は目の錯覚により同じ輝度になったかどうかを認識しづらい。しかし、本例では、上述のように、前記輝度範囲Brの輝度まで上昇すると、前記色画像Clが表示されるので(図8)、腫瘍Xの部分の輝度が造影剤の破壊前の輝度にまで上昇したことを容易に把握することができる。
【0051】
なお、前記超音波画像Gにおいて、輝度範囲Br内の輝度の画素があり、この画素上に前記色画像Clが表示されている状態において、前記操作部7からの指示入力に基づいて前記表示設定部54が前記色画像Clを非表示とするようになっていてもよい。このように、表示されていた前記色画像Clを非表示とすることにより、色画像Clが表示されていた部分の背景の超音波画像を確認することができる。
【0052】
次に、第一実施形態の変形例について説明する。上記実施形態では、前記色画像Clは一色の色になっているが、輝度に応じて異なる色としてもよい。例えば、前記色画像Clは、輝度が低くなるにつれて明度が低くなるようなものであってもよい。また、前記色画像Clは、輝度に応じて明度が異なるとともに色相についても異なっていてもよい。
【0053】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。この第二実施形態の超音波診断装置も、第一実施形態の超音波診断装置1と基本構成は同一である。従って、第一実施形態と異なる事項について説明するものとし、同一の構成については同一の符号を用いるものとする。
【0054】
本例では、前記超音波画像Gとは別に前記色画像Clが表示されるようになっている。具体的に図11及び図12に基づいて説明する。本例では、前記表示設定部54は、表示枠Flを前記表示部6に表示し、この表示枠Fl内に前記色画像Clを表示する。前記表示枠Flは、前記超音波画像Gの横に表示される。
【0055】
前記表示枠Flは、前記超音波画像Gに設定された前記所定範囲Sと同じ大きさ及び形状になっている。前記表示設定部54は、前記所定範囲S内に前記色画像Clを表示する代わりに前記表示枠Fl内に前記色画像Clを表示する。より詳細には、前記表示枠Fl内の各画素は、前記所定範囲S内の各画素に対応した画素になっている。そして、前記所定範囲S内の画素が前記輝度範囲Br内の輝度になると、前記表示枠Fl内の対応する画素に色を付して前記色画像Clを表示する。
【0056】
例えば、図11に示すように、造影剤破壊直後であって前記所定範囲S内の各画素が前記輝度範囲Brの範囲外の輝度である場合、前記表示枠Fl内には前記色画像Clが表示されていない。そして、図12に示すように前記所定範囲S内において前記輝度範囲Brの輝度になった画素があると、この画素に対応する前記表示枠Fl内の画素に色を付して前記色画像Clを表示する。例えば、腫瘍Xの部分の画素が前記輝度範囲Brの輝度になっている場合、腫瘍Xと同じ大きさの色画像Clが前記表示枠Fl内に表示される。
【0057】
本例によれば、前記色画像Clが表示されるので、腫瘍Xの輝度が造影剤の破壊前の輝度にまで上昇したか否かを容易に把握することができるとともに、前記色画像Clを超音波画像Gに合成して表示しないことにより、従来と同様に超音波画像Gを観察することができる。
【0058】
本例においても、第一実施形態の変形例と同様に、前記色画像Clが輝度に応じて異なる色になっていてもよい。
【0059】
以上、本発明を前記各実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、一旦設定された前記領域Rを再設定し、前記輝度範囲Brの再設定を行ってもよい。
【0060】
また、上記各実施形態においては、リアルタイムの超音波画像を表示させる場合について説明したが、前記記憶部9や前記半導体メモリに記憶されたローデータに基づく超音波画像を表示させる場合にも同様に適用することができる。ローデータに基づく超音波画像を表示させる場合であれば、リアルタイムの場合とは異なり、操作者は前記超音波プローブ2による超音波の送受信などの作業を行なう必要がないため、前記領域Rの設定等に対して集中することができ、より適切な観察を行なうことができる。
【0061】
さらに、前記色画像Clは、本発明における所定の表示の一例であり、本発明における所定の表示は、前記所定の輝度範囲Br内の画素について、この輝度範囲Br外の画素と区別しうる表示形態であれば、前記色画像Clに限られるものではない。例えば、前記色画像Clに代えて、所定の輝度範囲Br内の画素について斜線や縦線或いは横線などの線を表示してもよいし、ドットを表示してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 超音波診断装置
7 操作部
52 領域設定部
53 輝度範囲設定部
54 表示設定部
G 超音波画像
R 領域
D 輝度分布
Br 輝度範囲
Cl 色画像(所定の表示)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像において領域を設定する領域設定部と、
前記領域内の輝度分布の範囲を含む所定の輝度範囲を設定する輝度範囲設定部と、
前記超音波画像における画素が前記所定の輝度範囲内である場合に、該所定の輝度範囲内であることを示す所定の表示を行なう表示設定部と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記所定の表示は、前記超音波画像における前記所定の輝度範囲内の画素上に表示されることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記所定の表示は、前記超音波画像とは別に表示されることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記所定の輝度範囲は、前記領域内の輝度の平均値から所定の範囲で設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記表示設定部は、前記超音波画像における所定範囲内の画素を対象として、前記所定の表示を行なうことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記所定の表示は、前記所定の輝度範囲内の画素を、該所定の輝度範囲外の画素と区別しうる表示形態であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記所定の表示の表示形態は、色、線又はドットにより前記所定の輝度範囲外の画素と区別するものであることを特徴とする請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記所定の表示は、前記所定の輝度範囲の画素の輝度に応じて異なる表示形態で表示されるものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記領域が設定される超音波画像は、造影剤が注入された被検体についての超音波画像であって、造影剤を破壊する前の超音波画像であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
操作者が指示入力を行なう操作部を備え、
前記領域設定部は、前記操作部における指示入力に基づいて前記領域を設定する
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
コンピュータに、
超音波画像において領域を設定する領域設定機能と、
前記領域内の画素の輝度分布に基づいて、該領域内の輝度分布の範囲を含む所定の輝度範囲を設定する輝度範囲設定機能と、
前記超音波画像における所定範囲内の画素が前記所定の輝度範囲内である場合に、該所定の輝度範囲内であることを示す所定の表示を表示させる表示設定機能と、
を実行させることを特徴とする超音波診断装置の制御プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図6】
image rotate

【図9】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate