説明

超音波診断装置及び超音波画像処理装置

【課題】心周期に揺らぎが発生する場合であっても適切に画像を再構成することができ、歪み等がない超音波画像を生成することができる超音波診断装置等を提供すること。
【解決手段】四次元スキャンにおいて、複数フレームの超音波画像をECG信号に代表される当該被検体の生体信号に対応付けて取得し、この生体信号に基づいて、取得した複数フレームを心周期に区分した後、同一心時相のフレームの分類を行う。また、四次元スキャンにおいて、複数フレームの超音波画像を周波数解析によって心周期に区分した後、輝度変化曲線のフィッティングや相関関数を用いて、区分された心周期を微調整する。さらに、四次元スキャンにおいて、複数フレームの超音波画像を周波数解析によって心周期に区分した後、Mモード画像やMPR像を用いて、区分された心周期をマニュアル的に微調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば冠動脈異常部位周辺の壁運動やパフュージョン(perfusion)の評価に利用される超音波診断装置及び超音波画層処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断は、超音波プローブを体表から当てるだけの簡単な操作で心臓の拍動や胎児の動きの様子がリアルタイム表示で得られ、かつ安全性が高いため繰り返して検査を行うことができる。この他、システムの規模がX線、CT、MRIなど他の診断機器に比べて小さく、ベッドサイドへ移動していっての検査も容易に行えるなど簡便な診断手法であると言える。この超音波診断において用いられる超音波診断装置は、それが具備する機能の種類によって様々に異なるが、小型なものは片手で持ち運べる程度のものが開発されており、超音波診断はX線などのように被曝の影響がなく、産科や在宅医療等においても使用することができる。
【0003】
この様な超音波診断装置を用いた画像診断において、メカニカル四次元プローブ等を利用してダイナミックに心臓等の映像化を行うための手法(以下、四次元的心臓映像化法と呼ぶ)がある。
【0004】
図9(a)、9(b)、9(c)は、従来の四次元的心臓映像化法を説明するための図である。同図に示すように、心臓領域を一定時間、定速度でプローブを移動させて、心臓領域の三次元の超音波データを収集する。得られた三次元の超音波データは、断層面がプローブの移動に伴い、順次空間的に異なる位置より収集されたものである。なお、図9(a)においては、順次得られたフレームを*印で示してある。対象の心臓は、このプローブの移動中に心周期毎の拍動を繰り返す。四次元的心臓映像化技術では、得られた時系列のフレームデータを周波数解析して、心周期を推定する。この推定の結果、図9(b)に示すとおり、推定された心周期毎にフレームデータは区切られる。その後、図9(c)に示す様な同一心時相のフレームデータを抽出して、同一心時相のボリューム(volume)データを生成する。また、この様な流れを繰り返すことにより、各心時相に対応するフレームデータの抽出とボリュームデータの生成を繰り返す。得られた各時相毎のボリュームデータを用いて三次元画像を生成し、これを時系列に再生することで、1心周期の胎児心臓の疑似四次元画像を生成し表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第650264号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の超音波装置を用いた四次元的心臓映像化法においては、次のような問題がある。すなわち、現実の心周期には揺らぎがある。このため、心周期の揺らぎが発生した場合、心周期が定間隔であることを前提とする従来の手法では、画像再構成を適切に行うことができず、画像に歪みが生ずることがある。このひずみは、心臓の形態の画像診断を困難とする要因となる。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、心周期に揺らぎが発生する場合であっても適切に画像を再構成することができ、歪み等がない超音波画像を生成することができる超音波診断装置及び超音波画像処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0009】
請求項1に記載の発明は、走査面を所定の方向に揺動又は回転させながら被検体の心臓を含む所定領域を超音波走査することで、少なくとも一心周期以上に亘る複数フレームの超音波画像を取得する超音波画像取得手段と、前記複数フレームの超音波画像取得時において前記心臓の周期を把握するための参照信号を取得する参照信号取得手段と、前記参照信号に基づいて、前記複数フレームの超音波画像を心周期毎に区分する心周期区分手段と、心周期毎に区分された前記複数フレームの超音波画像を用いて、同一心時相のボリュームデータを生成するデータ生成手段と、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、走査面を所定の方向に揺動又は回転させながら被検体の心臓を含む所定領域を超音波走査することで、少なくとも一心周期以上に亘る複数フレームの超音波画像を取得する超音波画像取得手段と、所定の手法に基づいて、前記複数フレームの超音波画像を心周期毎に区分する心周期区分手段と、心周期毎に区分された前記複数フレームの超音波画像を用いて、前記被検体の心時相を判定するための情報を生成する情報生成手段と、前記規準情報を用いて、前記心周期区分手段によって区分された心周期を調整する調整手段と、前記調整された複数フレームの超音波画像を用いて、同一心時相のボリュームデータを生成するデータ生成手段と、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
【0011】
請求項8に記載の発明は、走査面を所定の方向に揺動又は回転させながら被検体の心臓を含む所定領域を超音波走査することで取得された、少なくとも一心周期以上に亘る複数フレームの超音波画像を記憶する記憶手段と、前記複数フレームの超音波画像取得時において前記心臓の周期を把握するための参照信号を記憶する参照信号記憶手段と、前記参照信号に基づいて、前記複数フレームの超音波画像を心周期毎に区分する心周期区分手段と、心周期毎に区分された前記複数フレームの超音波画像を用いて、同一心時相のボリュームデータを生成するデータ生成手段と、を具備することを特徴とする超音波画像処理装置である。
【0012】
請求項9に記載の発明は、走査面を所定の方向に揺動又は回転させながら被検体の心臓を含む所定領域を超音波走査することで取得された、少なくとも一心周期以上に亘る複数フレームの超音波画像を記憶する記憶手段と、所定の手法に基づいて、前記複数フレームの超音波画像を心周期毎に区分する心周期区分手段と、心周期毎に区分された前記複数フレームの超音波画像を用いて、前記被検体の心時相を判定するための情報を生成する情報生成手段と、前記規準情報を用いて、前記心周期区分手段によって区分された心周期を調整する調整手段と、前記調整された複数フレームの超音波画像を用いて、同一心時相のボリュームデータを生成するデータ生成手段と、を具備することを特徴とする超音波画像処理装置である。
【発明の効果】
【0013】
以上本発明によれば、心周期に揺らぎが発生する場合であっても適切に画像を再構成することができ、歪み等がない超音波画像を生成することができる超音波診断装置及び超音波画像処理装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成図を示している。
【図2】図2は、本実施形態の心周期分類機能に係る処理(心周期分類処理)の流れを示したフローチャートである。
【図3】図3は、図2のステップS1における四次元スキャンを説明するための図である。
【図4】図4(a)、(b)、(c)は、図2のフローチャートに従う心周期分類処理の内容を説明するための概念図である。
【図5】図5は、本実施形態に係る心周期分類処理の流れを示したフローチャートである。
【図6】図6(a)、(b)、(c)、(d)は、図5のフローチャートに従う心周期分類処理の内容を説明するための概念図である。
【図7】図7は、本実施形態に係る心周期分類処理の流れを示したフローチャートである。
【図8】図8(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、図7のフローチャートに従う心周期分類処理の内容を説明するための概念図である。
【図9】図9(a)、9(b)、9(c)は、従来の四次元的心臓映像化法を説明するための図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1実施形態及び第2実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成図を示している。同図に示すように、本超音波診断装置1は、超音波プローブ12、入力装置13、モニター14、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22、Bモード処理ユニット23、ドプラ処理ユニット24、画像生成ユニット25、ボリュームデータ生成ユニット26、画像合成ユニット27、制御プロセッサ(CPU)28、内部記憶ユニット29、インタフェースユニット30を具備している。以下、個々の構成要素の機能について説明する。
【0017】
超音波プローブ12は、超音波送受信ユニット21からの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する複数の圧電振動子、当該圧電振動子に設けられる整合層、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有している。当該超音波プローブ12から被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送信方向の速度成分を依存して、周波数偏移を受ける。
【0018】
なお、本実施形態に係る本超音波プローブ12は、三次元領域をリアルタイムで走査し被走査領域に関する三次元画像を連続的に表示する四次元超音波診断に対応可能なものである。典型例としては、複数の超音波振動子が二次元マトリックス状に配列された二次元アレイプローブ、複数の超音波振動子が一方向に配列された一次元アレイプローブを機械的に揺動させるメカニカル四次元プローブ、経食道にて心臓を観察するためのマルチプレーンTEEプローブ等が挙げられる。しかしながら、当該例に拘泥されることなく、超音波プローブ12として一次元アレイプローブを採用し、手動により揺動しながら移動させることでも、リアルタイムでの三次元領域の超音波走査を実現することができる。
【0019】
入力装置13は、装置本体11に接続され、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等を装置本体11にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を有している。例えば、操作者が入力装置13の終了ボタンやFREEZEボタンを操作すると、超音波の送受信は終了し、当該超音波診断装置は一時停止状態となる。
【0020】
モニター14は、スキャンコンバータ25からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を画像として表示する。
【0021】
超音波送信ユニット21は、図示しないトリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路等を有している。パルサ回路では、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスが繰り返し発生される。また、遅延回路では、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が、各レートパルスに与えられる。トリガ発生回路は、このレートパルスに基づくタイミングで、プローブ12に駆動パルスを印加する。
【0022】
超音波受信ユニット22は、図示していないアンプ回路、A/D変換器、加算器等を有している。アンプ回路では、プローブ12を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器では、増幅されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0023】
Bモード処理ユニット23は、送受信ユニット21からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。このデータは、スキャンコンバータ25に送信され、反射波の強度を輝度にて表したBモード画像としてモニター14に表示される。
【0024】
ドプラ処理ユニット24は、送受信ユニット21から受け取ったエコー信号から速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。得られた血流情報はスキャンコンバータ25に送られ、平均速度画像、分散画像、パワー画像、これらの組み合わせ画像としてモニター14にカラー表示される。
【0025】
画像生成ユニット25は、超音波スキャンの走査線信号列を、Bモード処理ユニット23、ドプラ処理ユニット24、データ処理ユニット26から受け取ったデータをテレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換し、表示画像としての超音波診断画像を生成する。画像生成ユニット25は、画像データを格納する記憶メモリを搭載しており、例えば診断の後に操作者が検査中に記録された画像を呼び出すことが可能となっている。なお、当該画像生成ユニット25に入る以前のデータは、例えば空間的位置毎の振幅値或いは輝度値の集合であり、「生データ」と呼ばれる。
【0026】
ボリュームデータ生成ユニット26は、制御プロセッサ28からの制御に基づいて、スキャンコンバージョン前の生データ、或いはスキャンコンバージョン後の画像データを用いて、後述する心周期分類機能に従う処理を実行する。
【0027】
画像合成ユニット27は、画像生成ユニット25から受け取った画像データを種々のパラメータの文字情報や目盛等と共に合成する。
【0028】
制御プロセッサ28は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を制御する制御ユニットである。制御プロセッサ28は、内部記憶ユニット29から画像生成・表示等を実行するための専用プログラムを読み出して自身が有するメモリ上に展開し、各種処理に関する演算・制御等を実行する。
【0029】
内部記憶ユニット29は、所定のスキャンシーケンス、画像生成。表示処理を実行するための制御プログラムや、診断情報(患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、送受信条件、ボディマーク生成プログラム、後述する心周期分類機能を実現するための専用プログラム、その他のデータ群が保管されている。内部記憶ユニット29のデータは、インタフェース部30を経由して外部周辺装置へ転送することも可能となっている。
【0030】
インタフェース部30は、入力装置13、ネットワーク、新たな外部記憶装置(図示せず)に関するインタフェースである。当該装置によって得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インタフェース部30よって、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0031】
(心周期分類機能)
次に、本超音波診断装置1が有する、心周期分類機能について説明する。この機能は、四次元超音波画像診断において、被検体の心周期に揺らぎが発生し一定間隔でなくなる場合であっても、正確な心周期分類を実行し、歪みのない三次元画像を生成し提供するものである。なお、本実施形態においては説明を具体的にするため、被検体を小児或いは成人であるとする。
【0032】
図2は、本実施形態の心周期分類機能に係る処理(心周期分類処理)の流れを示したフローチャートである。また、図3は、図2のステップS1における四次元スキャンを説明するための図である。図4(a)、(b)、(c)は、図2のフローチャートに従う心周期分類処理の内容を説明するための概念図である。なお、以下の説明では、スキャンコンバート前の生データ(すなわち、画像生成ユニット25に入力前のデータ)を用いて心周期分類処理を実行する場合を例とする。しかしながら、当該例に拘泥されることなく、スキャンコンバート後の画像データ(すなわち、画像生成ユニット25から出力されたデータ)を用いて心周期分類処理を行うようにしてもよい。
【0033】
まず、図3、図4(a)に示すように、被検体(胎児)からの参照信号と対応させながら、被検体の少なくとも心臓の一部を含む領域(心臓領域)について、超音波走査面を揺動させつつ一定期間の超音波走査(四次元スキャン)を実行する。これにより、当該心臓領域に関して、上記一定期間に亘る複数フレームの超音波画像が取得される(ステップS1)。ここで、参照信号とは、心周期を客観的に把握するために当該被検体から収集される生体信号である。典型例としては、ECG信号、心音(或いは心音に関する情報)等を挙げることができる。以下においては、説明を具体的にするため、参照信号としてECG信号を用いるものとする。
【0034】
なお、図4(a)においては、順次得られたフレームを*印により象徴的に示してある。取得された複数フレームの超音波画像は、Bモード処理ユニット23において所定の処理を受けた後、それぞれECG信号及び揺動位置(超音波走査面の空間的位置)と対応付けてボリュームデータ生成ユニット26に一時的に記憶される。
【0035】
このような四次元スキャンによって取得された複数フレームの超音波画像は、超音波走査面の移動に伴い、順次空間的に異なる位置(断面)より収集されたものとなる。また、上記四次元スキャン中においても心臓は拍動を繰り返す。従って、取得された複数フレームの超音波画像は、空間的に異なる断面のそれぞれについて、複数の心時相において取得されたものとなる。
【0036】
次に、ボリュームデータ生成ユニット26は、複数フレームの超音波画像データを、参照信号に基づいて心周期毎に区分する(ステップS2)。すなわち、ボリュームデータ生成ユニット26は、取得したECG信号に基づいてR波発生時刻を特定し、当該特定されたR波発生時刻に基づいて、ステップS1において取得された複数フレームの画像を一心周期毎に区分する。なお、心周期に揺らぎが発生した場合には、心周期が短くなったりながくなったりする。従って、係る場合には、図4(b)に示すように心周期の間で含まれるフレーム数に違いが生じることになる。なお、このフレーム数の違いは、心周期の間で比較した場合、空間的な不等間隔に対応する。
【0037】
次に、ボリュームデータ生成ユニット26は、区分された複数フレームの画像と各画像の走査面の空間的位置とを用いて、同一心時相のボリュームデータを生成する(ステップS3)。すなわち、ボリュームデータ生成ユニット26は、図4(c)に示すように、心周期毎に区分された複数フレームの画像を同一心時相に分類する。その後、ボリュームデータ生成ユニット26は、同一心時相に分類された複数の画像を超音波走査面の空間的位置に基づいてつなぎ合わせることで、同一心時相のボリュームデータを生成する。
【0038】
次に、画像生成ユニット25は、生成された各心時相に対応する複数のボリュームデータを用いて、各心時相に対応する三次元画像を生成する(ステップS4)。生成された各心時相に対応する三次元画像は、画像合成ユニット27において文字情報等と合成され、モニター14において時系列で連続的に表示される(ステップS5)。これにより、1心周期の心臓の疑似四次元画像を生成し表示することができる。
【0039】
以上述べた構成によれば、四次元スキャンにおいて、複数フレームの超音波画像をECG信号に代表される当該被検体の生体信号等に対応付けて取得し、この生体信号に基づいて、取得した複数フレームを心周期に区分した後、同一心時相のフレームの分類を行う。従って、四次元スキャン中において仮に心周期の揺らぎが発生した場合であっても、複数のフレームを参照信号に基づいて正確に心拍毎に区分し、各心拍における各フレームの心時相を正確に決定することができる。その結果、撮影中の心周期の揺らぎに影響を受けず、ひずみのない高画質な超音波画像を安定して提供することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る超音波診断装置1は、参照信号を用いない心周期分類機能の例について説明する。なお、本実施形態においては説明を具体的にするため、被検体が胎児である場合を例とする。しかしながら、当該例に拘泥されることなく、本実施形態に係る心周期分類機能は、小児、成人に対しても適用可能である。
【0041】
図5は、本実施形態に係る心周期分類処理の流れを示したフローチャートである。また、図6(a)、(b)、(c)、(d)は、図5のフローチャートに従う心周期分類処理の内容を説明するための概念図である。
【0042】
まず、図6(a)に示すように、胎児の心臓領域について、超音波走査面を揺動させつつ一定期間の超音波走査(四次元スキャン)を実行する(ステップS11)。参照信号を利用しない点以外は、図2のステップS1と実質的に同様である。なお、図6(a)においては、順次得られたフレームを*印により象徴的に示してある。
【0043】
次に、ボリュームデータ生成ユニット26は、取得された時系列の複数フレームに設定されたROIついて周波数解析を実行し(ステップS12)、その結果に基づいて、図6(b)に示すように当該複数フレームの超音波画像データを心周期毎に区分する(ステップS13)。
【0044】
次に、ボリュームデータ生成ユニット26は、各心周期における複数フレームの超音波画像を所定の手法を用いて分析し(ステップS14)、各心周期における特定心時相(例えば、収縮末期位置)を推定する(ステップS15)。例えば、ボリュームデータ生成ユニット26は、ステップS13において区切られた各心周期において、各フレームの超音波画像に設定されたROI内の輝度変化曲線をフィッティングする。ボリュームデータ生成ユニット26は、そのフィッティングカーブのピーク時相を利用して各心周期間の時相を正確に特定し、各心周期における収縮末期時点を推定する。或いは、ボリュームデータ生成ユニット26は、上記ROI内の輝度変化曲線の相互相関関数を用いて、各心周期間の時相を正確に特定し、各心周期における収縮末期時点を推定する。また、フィッティングや相関関数の他にも、特定心時相と相関のある特徴量(例えば、最大輝度値等)であれば、これを利用することも可能である。
【0045】
次に、ボリュームデータ生成ユニット26は、各心周期毎に推定された収縮末期時点を規準として、ステップS13において区分された心周期を調整する(ステップS16)。例えば、ステップS15において推定された収縮末期時点を規準とした場合に、ステップS13において区分された心周期が短いとき(あるいは長いとき)には、心周期の揺らぎが発生していると考えられる。係る場合、ボリュームデータ生成ユニット26は、ステップS13で実行された心周期の区分を再度調整する。この結果、図6(c)に示すように、各心周期間で含まれるフレーム数に違いが生じることになる。
【0046】
次に、ボリュームデータ生成ユニット26は、区分された複数フレームの画像と各画像の走査面の空間的位置とを用いて、同一心時相のボリュームデータを生成する(ステップS17)。すなわち、ボリュームデータ生成ユニット26は、図6(c)に示すように、心周期毎に区分された複数フレームの画像を同一心時相に分類する。その後、ボリュームデータ生成ユニット26は、同一心時相に分類された複数の画像を超音波走査面の空間的位置に基づいてつなぎ合わせることで、同一心時相のボリュームデータを生成する。
【0047】
次に、画像生成ユニット25は、生成された各心時相に対応する複数のボリュームデータを用いて、各心時相に対応する三次元画像を生成する(ステップS18)。生成された各心時相に対応する三次元画像は、画像合成ユニット27において文字情報等と合成され、モニター14において時系列で連続的に表示される(ステップS19)。これにより、1心周期の胎児心臓の疑似四次元画像を生成し表示することができる。
【0048】
以上述べた構成によれば、四次元スキャンにおいて、複数フレームの超音波画像を周波数解析によって心周期に区分した後、輝度変化曲線のフィッティングや相関関数を用いて、区分された心周期を微調整する。従って、四次元スキャン中において仮に心周期の揺らぎが発生した場合であっても、区分後の微調整により正確に心拍毎に再区分し、各心拍における各フレームの心時相を正確に決定することができる。その結果、撮影中の心周期の揺らぎに影響を受けず、ひずみのない高画質な超音波画像を安定して提供することができる。
【0049】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態に係る超音波診断装置1は、参照信号を用いない心周期分類機能の他の例について説明する。なお、本実施形態においては説明を具体的にするため、被検体が胎児である場合を例とする。
【0050】
図7は、本実施形態に係る心周期分類処理の流れを示したフローチャートである。また、図8(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、図7のフローチャートに従う心周期分類処理の内容を説明するための概念図である。
【0051】
まず、図8(a)に示すように、胎児の心臓領域について四次元スキャンを実行する(ステップS21)。参照信号を利用しない点以外は、図2のステップS1と実質的に同様である。なお、図8(a)においては、順次得られたフレームを*印により象徴的に示してある。
【0052】
次に、ボリュームデータ生成ユニット26は、取得された時系列の複数フレームに設定されたROIついて周波数解析を実行し(ステップS22)、その結果に基づいて、図8(b)に示すように当該複数フレームの超音波画像データを心周期毎に区分する(ステップS23)。
【0053】
次に、ボリュームデータ生成ユニット26は、複数フレームの超音波画像を用いて、各フレームの所定の位置(領域)についてMモード画像を生成する(ステップS24)。生成されたMモード画像は、例えば図8(c)に示すように、ステップS23において区分された心周期を示す情報(同図では、Mモード画像上の時間軸に垂直な縦線L1、L2、L3、L4)が付加された形態にて、モニター14に表示される。なお、Mモード画像の他に、例えば任意の断面に対応するMPR像を用いることも可能である。さらに、MPR像に厚みをつけた三次元画像も利用できる。
【0054】
次に、ボリュームデータ生成ユニット26は、入力装置13からの指示に基づいて、ステップS23において区分された心周期を調整する(ステップS25)。すなわち、医師は、表示されたMモード画像より心周期を主観的に判断し、当該判断に基づいて例えばトラックボール等操作により縦線L1、L2、L3、L4の位置(時点)を移動させることにより、ステップS23において区分された心周期を変更する。ボリュームデータ生成ユニット26は、当該縦線L1、L2、L3、L4の位置変更に基づいて、図8(d)に示すようにステップS23において区分された心周期を調整する。
【0055】
次に、ボリュームデータ生成ユニット26は、区分された複数フレームの画像と各画像の走査面の空間的位置とを用いて、同一心時相のボリュームデータを生成する(ステップS26)。すなわち、ボリュームデータ生成ユニット26は、図8(e)に示すように、心周期毎に区分された複数フレームの画像を同一心時相に分類する。その後、ボリュームデータ生成ユニット26は、同一心時相に分類された複数の画像を超音波走査面の空間的位置に基づいてつなぎ合わせることで、同一心時相のボリュームデータを生成する。
【0056】
次に、画像生成ユニット25は、生成された各心時相に対応する複数のボリュームデータを用いて、各心時相に対応する三次元画像を生成する(ステップS27)。生成された各心時相に対応する三次元画像は、画像合成ユニット27において文字情報等と合成され、モニター14において時系列で連続的に表示される(ステップS28)。これにより、1心周期の胎児心臓の疑似四次元画像を生成し表示することができる。
【0057】
以上述べた構成によれば、四次元スキャンにおいて、複数フレームの超音波画像を周波数解析によって心周期に区分した後、Mモード画像やMPR像を用いて、区分された心周期をマニュアル的に微調整する。従って、四次元スキャン中において仮に心周期の揺らぎが発生した場合であっても、Mモード画像等を用いたマニュアル微調整により正確に心拍毎に再区分し、各心拍における各フレームの心時相を正確に決定することができる。その結果、撮影中の心周期の揺らぎに影響を受けず、ひずみのない高画質な超音波画像を安定して提供することができる。
【0058】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0059】
また、各実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0060】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上本発明によれば、心周期に揺らぎが発生する場合であっても適切に画像を再構成することができ、歪み等がない超音波画像を生成することができる超音波診断装置及び超音波画像処理装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0062】
1…超音波診断装置、12…超音波プローブ、13…入力装置、14…モニター、21…超音波送信ユニット、22超…音波受信ユニット、23…Bモード処理ユニット、24…ドプラ処理ユニット、25…画像生成ユニット、26…ボリュームデータ生成ユニット、27…画像合成ユニット、28…制御プロセッサ(CPU)、29…内部記憶ユニット、30…インタフェースユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査面を所定の方向に揺動又は回転させながら被検体の心臓を含む所定領域を超音波走査することで、少なくとも一心周期以上に亘る複数フレームの超音波画像を取得する超音波画像取得手段と、
前記複数フレームの超音波画像取得時において前記心臓の周期を把握するための参照信号を取得する参照信号取得手段と、
前記参照信号に基づいて、前記複数フレームの超音波画像を心周期毎に区分する心周期区分手段と、
心周期毎に区分された前記複数フレームの超音波画像を用いて、同一心時相のボリュームデータを生成するデータ生成手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記参照信号は、前記被検体のECG信号又は心音に関する情報であることを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
走査面を所定の方向に揺動又は回転させながら被検体の心臓を含む所定領域を超音波走査することで、少なくとも一心周期以上に亘る複数フレームの超音波画像を取得する超音波画像取得手段と、
所定の手法に基づいて、前記複数フレームの超音波画像を心周期毎に区分する心周期区分手段と、
心周期毎に区分された前記複数フレームの超音波画像を用いて、前記被検体の心周期を判定するための情報を生成する情報生成手段と、
前記規準情報を用いて、前記心周期区分手段によって区分された心周期を調整する調整手段と、
前記調整された複数フレームの超音波画像を用いて、同一心時相のボリュームデータを生成するデータ生成手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
前記情報生成手段は、
各心周期毎の輝度変化曲線のフィッティングカーブを取得し、
前記心時相を判定するための情報として、前記フィッティングカーブを用いて推定される特定心時相を生成すること、
を特徴とする請求項3記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記情報生成手段は、
各心周期毎の輝度変化曲線の相関関数を取得し、
前記心時相を判定するための情報として、前記相関関数を用いて推定される特定心時相を生成すること、
を特徴とする請求項3記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記情報生成手段は、
各心周期毎の輝度変化の特徴量を取得し、
前記心時相を判定するための情報として、前記特徴量を用いて推定される特定心時相を生成すること、
を特徴とする請求項3記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記情報生成手段は、前記心時相を判定するための情報としてMモード画像を生成することを特徴とする請求項3記載の超音波診断装置。
【請求項8】
走査面を所定の方向に揺動又は回転させながら被検体の心臓を含む所定領域を超音波走査することで取得された、少なくとも一心周期以上に亘る複数フレームの超音波画像を記憶する記憶手段と、
前記複数フレームの超音波画像取得時において前記心臓の周期を把握するための参照信号を記憶する参照信号記憶手段と、
前記参照信号に基づいて、前記複数フレームの超音波画像を心周期毎に区分する心周期区分手段と、
心周期毎に区分された前記複数フレームの超音波画像を用いて、同一心時相のボリュームデータを生成するデータ生成手段と、
を具備することを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項9】
走査面を所定の方向に揺動又は回転させながら被検体の心臓を含む所定領域を超音波走査することで取得された、少なくとも一心周期以上に亘る複数フレームの超音波画像を記憶する記憶手段と、
所定の手法に基づいて、前記複数フレームの超音波画像を心周期毎に区分する心周期区分手段と、
心周期毎に区分された前記複数フレームの超音波画像を用いて、前記被検体の心時相を判定するための情報を生成する情報生成手段と、
前記規準情報を用いて、前記心周期区分手段によって区分された心周期を調整する調整手段と、
前記調整された複数フレームの超音波画像を用いて、同一心時相のボリュームデータを生成するデータ生成手段と、
を具備することを特徴とする超音波画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−45660(P2011−45660A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198871(P2009−198871)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】