説明

超音波診断装置

【課題】複数の超音波探触子を利用する超音波診断装置の新たな装置構成を提供する。
【解決手段】共用プローブコネクタ20内には、レセプタクル1〜10の各々に対応して信号切替部1〜10が設けられている。送信回路1〜5は、各々、プローブa10またはプローブb14の各振動素子を駆動するための送信信号を生成して出力する回路である。受信回路1〜5は、各々、プローブa10またはプローブb14の各振動素子から取得される受信信号に対して、例えば検波処理などを施す回路である。制御部31は、各送信回路と各受信回路を、どのレセプタクルに対応させるのかを決定し、切替制御信号として共用プローブコネクタ20の信号切替部1〜10へ出力する。これにより、対応する各レセプタクルと装置本体30内の各送信回路および各受信回路とが選択的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に複数の超音波プローブを利用する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超音波診断装置は、臓器などの診断のみに留まらず、外科的な手術中の支援にも利用されており、手術中の支援として、複数の超音波探触子(プローブ)を併用するケースが多くなっている。例えば、手術部分の詳細な超音波画像を取得するプローブと、そのプローブや手術部位の位置を確認するための比較的広い範囲の超音波画像を取得するプローブと、二つのプローブが利用される。
【0003】
複数のプローブを併用する手法として、各プローブに対応した複数の超音波診断装置の利用が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。また、二つのプローブを一つの超音波診断装置で利用してもよい(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平10−137243号公報
【特許文献2】特開2003−180693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プローブごとに超音波診断装置を複数利用する場合、プローブの数だけ装置本体を用意する必要がある。この場合、例えば、複数の装置本体を置くための広いスペースが必要になるなどの問題が生じる。また、複数のプローブを一つの装置本体で利用するためには、プローブの数だけプローブコネクタが必要になる。
【0006】
本発明は、上記事例に鑑みて成されたものであり、その目的は、複数の超音波探触子(プローブ)を利用する超音波診断装置の新たな装置構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の好適な態様である超音波診断装置は、複数の超音波プローブと、前記複数の超音波プローブが接続され、それら複数の超音波プローブによって共用される共用プローブコネクタと、前記共用プローブコネクタを介して前記複数の超音波プローブの各々へ送信信号を供給する送信部と、前記共用プローブコネクタを介して前記複数の超音波プローブの各々から受信信号を取得する受信部と、を有し、前記共用プローブコネクタは、前記送信部が出力する信号の中から選択された各超音波プローブごとの送信信号を対応する各超音波プローブへ供給し、各超音波プローブから得られる受信信号を受信部へ出力する、ことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、共用プローブコネクタを介して複数の超音波プローブと装置本体とを接続することができるため、例えば、一台の装置本体で一つの共用プローブコネクタによって複数の超音波プローブを併用することが可能になる。
【0009】
望ましくは、前記送信部は、複数の送信回路を含み、前記共用プローブコネクタは、前記複数の送信回路のうちの少なくとも一つからなる各送信回路群を各超音波プローブに割り当てることによって、各送信回路群から出力される送信信号を対応する各超音波プローブへ供給する、ことを特徴とする。望ましくは、前記受信部は、複数の受信回路を含み、前記共用プローブコネクタは、前記複数の受信回路のうちの少なくとも一つからなる各受信回路群を各超音波プローブに割り当てることによって、各超音波プローブから得られる受信信号を対応する各受信回路群へ出力する、ことを特徴とする。
【0010】
望ましくは、前記共用プローブコネクタは、前記送信部から順次出力される複数の超音波プローブの送信信号の各々を対応する各超音波プローブへ順次供給する、ことを特徴とする。望ましくは、前記共用プローブコネクタは、前記複数の超音波プローブから得られる受信信号の各々を前記受信部へ時分割して順次出力する、ことを特徴とする。
【0011】
望ましくは、前記複数の超音波プローブは、互いに周波数特性の異なる超音波を送波し、前記各超音波プローブから得られる受信信号に対して、その超音波プローブに応じたフィルタ処理を施すことにより、その超音波プローブから送波された超音波に対応した受信信号成分を抽出するフィルタ処理部と、前記各超音波プローブごとに対応する受信信号成分に基づいて超音波画像を形成する画像構成部と、をさらに有する、ことを特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明の好適な態様である共用プローブコネクタは、超音波診断装置の装置本体と複数の超音波プローブとを接続するために、それら複数の超音波プローブによって共用される共用プローブコネクタにおいて、前記装置本体が出力する信号の中から各超音波プローブごとの送信信号を選択して対応する各超音波プローブへ供給し、各超音波プローブから得られる受信信号を前記装置本体へ出力する、ことを特徴とする。
【0013】
望ましくは、複数の超音波プローブの各々が接続される複数のプローブ接続部と、前記装置本体に含まれる複数の送信回路のうちの少なくとも一つからなる各送信回路群を前記各プローブ接続部に割り当て、さらに、前記装置本体に含まれる複数の受信回路のうちの少なくとも一つからなる各受信回路群を前記各プローブ接続部に割り当てる信号切替部と、を有し、これにより、各送信回路群から出力される送信信号を対応する各プローブ接続部を介して各超音波プローブへ供給するとともに、各プローブ接続部を介して各超音波プローブから得られる受信信号を対応する各受信回路群へ出力する、ことを特徴とする。
【0014】
望ましくは、前記各プローブ接続部を介して各超音波プローブから得られるプローブ情報に基づいて、各プローブ接続部とそれに接続された各超音波プローブの識別子とを対応付けたプローブ識別情報を生成する識別情報生成部をさらに有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明により、複数の超音波プローブを利用する超音波診断装置の新たな装置構成が提供される。その装置構成により、例えば、一台の装置本体で一つの共用プローブコネクタによって複数の超音波プローブを併用することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されており、図1はその全体構成を示すブロック図である。
【0018】
本実施形態の超音波診断装置は、プローブa10とプローブb14の二つのプローブ、共用プローブコネクタ20、装置本体30で構成される。共用プローブコネクタ20は、プローブa10およびプローブb14の二つのプローブを装置本体に接続するためのコネクタである。
【0019】
プローブa10は、2Dアレイ振動子12を含む2Dアレイプローブである。つまり、2Dアレイ振動子12内の格子状に配列された複数の振動素子から出力される超音波パルスの送波タイミングなどが適宜制御され、超音波ビームを三次元空間内で走査するプローブである。2Dアレイ振動子12に供給される送信信号や2Dアレイ振動子12において取得された受信信号は、プラグ1〜4を介して転送される。
【0020】
一方、プローブb14は、高周波リニア振動子16を含む高周波リニアプローブである。つまり、高周波リニア振動子16内の直線状に配列された複数の振動素子から出力される超音波パルスの送波タイミングなどが適宜制御され、超音波ビームをビーム方向に垂直な方向へ走査するプローブである。高周波リニア振動子16に供給される送信信号や高周波リニア振動子16において取得された受信信号は、プラグ1´およびプラグ2´を介して転送される。
【0021】
なお、本発明では、共用プローブコネクタ20に接続されるプローブ数は2つに限定されず、3つ以上のプローブが接続されてもよい。また、接続されるプローブは、2Dアレイプローブや高周波リニアプローブに限定されず、例えば、Bモード画像用のプローブやドプラ情報取得用のプローブが利用されてもよい。本実施形態では、本発明の代表例として、2Dアレイプローブ(プローブa10)と高周波リニアプローブ(プローブb14)の二つのプローブを併用する形態を説明する。
【0022】
プローブa10およびプローブb14が接続される共用プローブコネクタ20は、第一のプローブ接続部を構成するレセプタクル1〜5と、第二のプローブ接続部を構成するレセプタクル6〜10を含んでいる。各レセプタクルはプローブ内の各プラグと嵌め合わせられる。つまり、レセプタクル1〜5からなる第一のプローブ接続部には、プローブa10が接続され、レセプタクル1〜4の各々にプラグ1〜4が嵌め合わせられる。プローブa10のプラグ数が4つでありレセプタクル5に対応するプラグが存在しないため、レセプタクル5は空き状態となっている。
【0023】
また、レセプタクル6〜10からなる第二のプローブ接続部には、プローブb14が接続され、レセプタクル6,7の各々にプラグ1´,2´が嵌め合わせられる。プローブb14のプラグ数が2つでありレセプタクル8〜10に対応するプラグが存在しないため、レセプタクル8〜10は空き状態となっている。
【0024】
各プラグと各レセプタクルは、例えば、一方がオス形状、他方がメス形状に構成され、互いに噛み合う形状が望ましい。各プラグと各レセプタクルの形状については、後に図7を利用して一例を紹介する。
【0025】
共用プローブコネクタ20内には、レセプタクル1〜10の各々に対応して信号切替部1〜10が設けられている。各信号切替部は、対応する各レセプタクルと装置本体30内の各送信回路および各受信回路とを選択的に接続する機能を備えている。
【0026】
装置本体30内の送信回路1〜5は、各々、プローブa10またはプローブb14の各振動素子を駆動するための送信信号を生成して出力する回路である。各送信回路は、例えば20チャンネル分(振動素子20個分)の送信信号を出力する。一方、装置本体30内の受信回路1〜5は、各々、プローブa10またはプローブb14の各振動素子から取得される受信信号に対して、例えば検波処理などを施す回路である。各受信回路は、例えば20チャンネル分(振動素子20個分)の受信信号を処理する。
【0027】
以下、本実施形態の超音波診断装置における送受信動作について説明する。なお、以下の説明において各送信回路および各受信回路は、共に20チャンネル単位の信号を取り扱うものとする。この場合、各レセプタクルおよび各プラグについても、各送信回路または各受信回路に対応して、20チャンネル単位の信号を取り扱う。
【0028】
プローブa10は、4つのプラグ1〜4を備えている。つまり、プローブa10は、合計80チャンネルの信号によって駆動される。プローブa10が共用プローブコネクタ20に接続されてプラグ1〜4が、各々、レセプタクル1〜4に接続されると、プローブa10からプラグ1〜4を介してプローブコード(プローブの識別子)が出力される。プローブコードは、例えば、プローブa10内の図示しないメモリなどに記憶された情報であり、プローブa10が2Dアレイプローブであることなどを示す情報である。出力されたプローブコードは、レセプタクル1〜4によって取得され、プローブコード生成部22へ伝えられる。
【0029】
プローブコード生成部22は、レセプタクル1〜5からなる第一のプローブ接続部に、2Dアレイプローブであるプローブa10が接続されたことを認識し、第一のプローブ接続部と2Dアレイプローブのプローブコードとを対応付けたプローブ識別情報を生成する。なお、各レセプタクルごとにプローブコードを対応付けしてもよい。つまり、プローブ識別情報として、レセプタクル1〜4の各々に2Dアレイプローブのプローブコードを対応付け、さらに、レセプタクル5には何も接続されていないことを示す情報を生成してもよい。
【0030】
同様に、プローブb14が共用プローブコネクタ20に接続されると、プローブb14からプラグ1´,2´を介してプローブコードが出力され、レセプタクル6,7を介してプローブコード生成部22へ伝えられる。その結果、プローブコード生成部22は、レセプタクル6〜10からなる第二のプローブ接続部に、高周波リニアプローブであるプローブb14が接続されたことを認識し、第二のプローブ接続部と高周波リニアプローブのプローブコードとを対応付けたプローブ識別情報を生成する。生成されたプローブ識別情報は、装置本体30内の制御部31へ伝えられる。
【0031】
制御部31は、プローブ識別情報に基づいて、各送信回路と各受信回路を、どのレセプタクルに対応させるのかを決定し、切替制御信号として共用プローブコネクタ20の信号切替部1〜10へ出力する。例えば、送信時において、送信回路1〜4をプローブa10に割り当てる場合、信号切替部1〜4によって送信回路1〜4の各々がレセプタクル1〜4に割り当てられ、レセプタクル1〜4を介して、送信回路1〜4の各送信信号がプラグ1〜4の各々に出力される。さらに、送信回路4,5をプローブb14に割り当てる場合、信号切替部6,7によって送信回路4,5の各々がレセプタクル6,7に割り当てられ、レセプタクル6,7を介して、送信回路4,5の各送信信号がプラグ1´,2´の各々に出力される。
【0032】
この送信例では、送信回路4がプローブa10およびプローブb14の両方に利用されており同時に二つのプローブへ送信信号を供給できない。この場合、例えば、送信回路1〜4の送信回路群からプローブa10へ送信信号を出力した後、送信回路4,5の送信回路群からプローブb14へ送信信号を出力する。これを交互に繰り返す時分割処理によって、二つのプローブへ送信信号を供給することができる。
【0033】
一方、受信時において、受信回路1〜4をプローブa10に割り当てる場合、信号切替部1〜4によって受信回路1〜4の各々がレセプタクル1〜4に割り当てられる。そして、2Dアレイ振動子12で取得された受信信号が、プラグ1〜4およびレセプタクル1〜4を介して、受信回路1〜4に出力される。さらに、受信回路4,5をプローブb14に割り当てる場合、信号切替部6,7によって受信回路4,5の各々がレセプタクル6,7に割り当てられる。そして、高周波リニア振動子16で取得された受信信号が、プラグ1´,2´およびレセプタクル6,7を介して、受信回路4,5に出力される。
【0034】
この受信例では、受信回路4がプローブa10およびプローブb14の両方に利用されており同時に二つのプローブの受信信号を処理できない。この場合、例えば、受信回路1〜4の受信回路群によってプローブa10の受信信号を処理した後、受信回路4,5の受信回路群によってプローブb14の受信信号を処理する。これを交互に繰り返す時分割処理によって、二つのプローブの受信信号を処理することができる。
【0035】
制御部31は、前述の切替制御信号に加えて、送信と受信のタイミングを示す送受信回路選択信号を信号切替部1〜10へ供給する。信号切替部1〜10は、送受信回路選択信号に基づいて、送信回路をレセプタクルに接続するタイミング、受信回路をレセプタクルに接続するタイミングを決定する。
【0036】
また、各プローブへ送信信号を供給する際、制御部31は、各プローブに対応する送信回路群に対して、対応するプローブに応じた制御を行う。例えば、送信回路1〜4をプローブa10に割り当てる際、送信回路1〜4を、2Dアレイ振動子12に応じた中心周波数(例えば、2.5MHz)に設定し、2Dアレイ振動子12に応じたステアリング制御を行う。同様に、送信回路4,5をプローブb14に割り当てる際、送信回路4,5を、高周波リニア振動子16に応じた中心周波数(例えば、10MHz)に設定し、高周波リニア振動子16に応じたリニア走査制御を行う。
【0037】
ちなみに、制御部31は、共用プローブコネクタ20内の制御信号インターフェース24およびレセプタクルを介して、各プローブへ制御信号を出力することも可能である。また、各プローブから制御信号インターフェース24へ信号が転送されてもよい。例えば、各プローブ内にそのプローブの位置を検出する位置センサが設けられ、位置センサで検出された位置情報が制御信号インターフェース24へ伝えられ、制御信号インターフェース24を介して装置本体30の制御部31へ転送されてもよい。さらに、制御信号インターフェース24は、例えば二つのプローブから得られた位置情報に基づいて、それら二つのプローブ間の相対位置情報を生成してもよい。
【0038】
受信回路1〜5で処理された受信信号は、整相加算回路32に出力される。整相加算回路32は、受信回路1〜5から出力される受信処理後の信号に対して増幅や整相加算などの処理を行う。整相加算回路32は、制御部31によって制御され、プローブa10およびプローブb14の各々のタイプに応じた受信ビームの形成を実行する。
【0039】
こうして、制御部31は、送信回路1〜4および受信回路1〜4をプローブa10に割り当て、さらに、送信回路1〜4、受信回路1〜4および整相加算回路32を制御して送信ビームの形成、受信ビームの形成を行う。そして、整相加算回路32から、2Dアレイ振動子12によって形成される走査空間内の各超音波ビームごとのエコーデータ(整相加算後の受信信号)が出力される。制御部31は、超音波ビームを三次元空間内で三次元的にステアリングさせて三次元空間内のエコーデータ(ボリュームデータ)を取得する。
【0040】
また、制御部31は、送信回路4,5および受信回路4,5をプローブb14に割り当て、さらに、送信回路4,5、受信回路4,5および整相加算回路32を制御して送信ビームの形成、受信ビームの形成を行う。そして、整相加算回路32から、高周波リニア振動子16によって形成される走査面内の各超音波ビームごとのエコーデータ(整相加算後の受信信号)が出力される。
【0041】
なお、プローブa10の受信信号、プローブb14の受信信号は、交互に、時分割処理で取得されるため、整相加算回路32においても、各プローブに対応する受信信号の処理に応じたタイミングで時分割処理によって整相加算処理が実行される。
【0042】
フィルタ34は、整相加算回路32から出力される整相加算後のエコーデータに対してフィルタ処理を施す。フィルタ34は、プローブa10およびプローブb14の各々に応じたフィルタ処理を実行して、整相加算後のエコーデータに含まれる他方プローブの成分を除去する機能を備えている。
【0043】
本実施形態において、プローブa10およびプローブb14の二つのプローブは、手術中の支援などにおいて併用される。例えば、高周波リニアプローブであるプローブb14が手術部分の詳細な超音波画像を取得するプローブとして利用され、プローブb14や手術部位の位置を確認するための比較的広い範囲の超音波画像を取得するプローブとして2Dアレイプローブであるプローブa10が利用される。こうした併用形態の場合、一方のプローブが発した超音波の反射波を他方のプローブが受波してしまう可能性がある。そこで、フィルタ34において、整相加算後のエコーデータに含まれる他方のプローブの成分が除去される。
【0044】
図2は、本実施形態におけるフィルタ処理を説明するための図であり、フィルタ(図1の符号34)で実行されるバンドパスフィルタ(BPF)処理を説明するための図である。なお、プローブa(図1の符号10)の中心周波数がf1であり、プローブb(図1の符号14)の中心周波数がf2である場合を例として説明する。以下、図1に示した部分には図1の符号を付して説明する。
【0045】
図2の(a)は、プローブa10およびプローブb14に対して、互いにほぼ同じ帯域幅のBPFを利用する場合のフィルタ設定を示している。プローブa10のエコーデータを処理する際、フィルタ34は、周波数f1に対応したプローブa10用のBPF40を設定する。また、プローブb14のエコーデータを処理する際、フィルタ34は、周波数f2に対応したプローブb14用のBPF41を設定する。
【0046】
このため、例えば、プローブa10がプローブa10自身から発せられた超音波の反射波とプローブb14から発せられた超音波の反射波とを含む多重的な受信信号を取得したとしても、フィルタ34において、周波数f1に対応したプローブa10用のBPF40によって、プローブa10自身から発せられた超音波の反射波成分のみが抽出される。同様に、プローブb14に関しては、周波数f2に対応したプローブb14用のBPF41によって、プローブb14自身から発せられた超音波の反射波成分のみが抽出される。このように、フィルタ34において、それぞれ、他方プローブの成分を除去することができる。
【0047】
図2の(b)は、プローブa10の帯域幅を広く、プローブb14の帯域幅を狭くした場合のフィルタ設定を示している。プローブa10のエコーデータを処理する際、フィルタ34は、周波数f1に対応したプローブa10用のBPF42を設定する。また、プローブb14のエコーデータを処理する際、フィルタ34は、周波数f2に対応したプローブb14用のBPF43を設定する。このため、図2の(a)の場合と同様に、フィルタ34において、周波数f1に対応したプローブa10用のBPF42によって、プローブa10自身から発せられた超音波の反射波成分のみが抽出され、プローブb14に関しては、周波数f2に対応したプローブb14用のBPF43によって、プローブb14自身から発せられた超音波の反射波成分のみが抽出される。図2の(b)に示すように、プローブのタイプに応じて、一方の帯域幅を広くしてもよい。
【0048】
なお、フィルタ34は、バンドパスフィルタ処理以外の他の周波数フィルタ処理、例えば、ローパスフィルタ処理またはハイパスフィルタ処理などを実行させるものであってもよい。
【0049】
図1に戻り、画像構成部36は、フィルタ34によってフィルタ処理されたエコーデータに基づいて、プローブa10およびプローブb14の各々に対応した超音波画像を形成する。本実施形態では、プローブa10が三次元画像取得用の2Dアレイプローブであるため、画像構成部36は、プローブa10に対応するエコーデータに基づいて、三次元画像、あるいは、三次元画像の一部である二次元断層画像(Bモード画像)を形成する。三次元画像やBモード画像の形成処理には周知の技術が利用され、各エコーデータに対してその振幅の大きさに応じた画素値が割り当てられて三次元画像やBモード画像が形成される。また、本実施形態では、プローブb14が高周波リニアプローブであるため、画像構成部36は、プローブb14に対応するエコーデータに基づいて、対象組織に関する詳細な断層画像を形成する。
【0050】
前述のように、本実施形態では、プローブa10およびプローブb14のタイプは、2Dアレイプローブや高周波リニアプローブに限定されない。画像構成部36は、プローブa10およびプローブb14のタイプに応じた処理を実行する。例えば、プローブb14がドプラ情報取得用のプローブであれば、エコーデータからドプラ情報を抽出して、対象組織(血流など)の速度情報を取得する。そして、取得した対象組織の速度情報に基づいて、例えば、カラードプラ画像を形成する。カラードプラ画像の形成処理には周知の技術が利用される。つまり、例えば、血流に対応するエコーデータから血流の速度情報が抽出され、Bモード画像上において、血流内の各部ごとにその速度に対応した色付け処理が施されカラードプラ画像が形成される。
【0051】
なお、プローブa10の受信信号、プローブb14の受信信号は、交互に、時分割処理で取得されるため、画像構成部36においても、各プローブに応じたタイミングで時分割処理によって画像形成処理が実行される。
【0052】
画像構成部36において形成されたプローブa10およびプローブb14の各々に対応した超音波画像は、表示部38に表示される。表示部38は、例えばユーザ操作に応じて、プローブa10の画像(例えば三次元画像)、プローブb14の画像(例えば詳細な断層画像)の二つの画像を同時表示させた表示画像を出力する。
【0053】
以上の説明において、整相加算回路32、フィルタ34および画像構成部36での各処理は、各プローブに応じたタイミングで時分割処理されている。これは、送信回路4および受信回路4が、プローブa10およびプローブb14によって共用されているためである。
【0054】
しかし、各送信回路が二つのプローブで併用されない場合、例えば、送信回路1〜3によって一方のプローブの送信信号が形成され、送信回路4,5によって他方のプローブの送信信号が形成される場合には、時分割処理を行わずに、二つのプローブへ送信信号を供給することができ、また、例えば、受信回路1〜3によって一方のプローブの受信信号が処理され、受信回路4,5によって他方のプローブの受信信号を処理することができる。つまり、時分割処理を行わずに、二つのプローブの受信信号を処理することができる。時分割処理を行わない構成の場合、さらに、二つのプローブの各々に対応させて、整相加算回路32、フィルタ34および画像構成部36を、各々、二つずつ設けてもよい。これにより、二つのプローブで得られる受信信号を同時に並列処理することが可能になる。
【0055】
図3は、本実施形態の超音波診断装置の使用例を説明するための図である。この例では、2Dアレイプローブ50(図1におけるプローブa10)によって、対象組織である心臓54の広域に亘って超音波が送受波され、心臓54に関する広域の三次元画像が取得される。一方、高周波リニアプローブ52(図1におけるプローブb14)によって、心臓54の関心部分に関する局所的な超音波画像が取得される。高周波リニアプローブ52は、例えば、縫合器などに取り付けられ、縫合箇所の精細な画像を取得する。これに対し、2Dアレイプローブ50は、心臓54および縫合器などを含む画像を取得して、心臓54と縫合器の相対位置関係を視覚的にユーザに伝える。
【0056】
図4は、本実施形態の超音波診断装置で形成される表示画像例を説明するための図であり、図3に示した2Dアレイプローブ50および高周波リニアプローブ52によって取得された画像を示している。
【0057】
図4の(a)は、一方のプローブの表示が二次元(2D)画像の場合を示している。つまり、2Dアレイプローブ50によって、心臓の広域に亘る断層画像(2DアレイプローブのB画像60)が形成され、その右側に、高周波リニアプローブの画像62が表示されている。
【0058】
これに対し、図4の(b)は、一方のプローブの表示が三次元(3D)画像の場合を示している。つまり、2Dアレイプローブ50によって、心臓の広域に亘る三次元画像(2Dアレイプローブの3D画像60´)が形成され、その右側に、高周波リニアプローブの画像62が表示されている。
【0059】
図4に示すように、広域的に心臓を映し出す画像と、局所的に手術部位を精細に映し出す画像とが並べて配置されるため、手術部位の位置確認や手術部位の状態確認を、容易かつ正確に行うことができる。
【0060】
図5は、本実施形態における共用プローブコネクタ20の形状を説明するための図であり、図5(a)〜(c)は、互いに同一形状の共用プローブコネクタ20を示している。共用プローブコネクタ20は、プローブ(例えば、プローブa10)を脱着することができる。このため、図5(a),(b)に示すように、プローブにはロック解除ボタン70が設けられており、このロック解除ボタン70を操作することによって、図5(c)に示すロック用つめ74とロック用溝76とが嵌合あるいは解除され、プローブを脱着することができる。なお、プローブの誤挿入を防ぐため、プローブと共用プローブコネクタ20との接触部分には、図5(a),(b)に示すように誤挿入防止形状72が施されており、例えば、プローブが上下反対に挿入されることなどを防止している。
【0061】
図6は、図5に示す共用プローブコネクタ20の内部構造を説明するための図であり、図6(a)はプローブが着装された状態を示し、図6(b)はプローブが外された状態を示している。図6(a)に示すように、プローブが共用プローブコネクタ20に着装されると、プローブ内のプラグ80と共用プローブコネクタ20内のレセプタクル82が嵌め合わされる。これにより、プラグ80とレセプタクル82を介して、送信信号や受信信号が転送される。一方、図6(b)に示すように、プローブが共用プローブコネクタ20から外されると、プローブ内のプラグ80と共用プローブコネクタ20内のレセプタクル82が離れて、プラグ80とレセプタクル82を介した信号のやり取りが遮断される。このため、例えば、プローブがプラグ80を介して断続的にプローブコードを出力する構成とすることにより、装置本体内の制御部(図1の符号31)が、プローブコードの検知または非検知に基づいて、プローブの着脱状態を把握することもできる。
【0062】
図7は、各プラグおよび各レセプタクルの形状例を説明するための図である。図7(a)に示す例では、レセプタクル82に複数のピン状の電極と接地(GND)が設けられている。電極やGNDは、各レセプタクル82および各プラグ80が取り扱うチャンネル数に応じた個数だけ格子状に複数個設けられる。また、図7(a)に示すプラグ80には、レセプタクル82の電極やGNDの各ピンに対応した挿入部86が格子状に複数個設けられている。プラグ80とレセプタクル82が嵌め合わされる際、各挿入部86に、対応する電極やGNDの各ピンが挿入されて電気的な導通状態が形成される。なお、プラグ80には誤挿入防止形状84が施されており、レセプタクル82にも誤挿入防止形状84に対応した形状(図示せず)が施される。これにより、プラグ80およびレセプタクル82が上下反対に挿入されることなどを防止している。
【0063】
図7(b)に示す例では、プラグ80の凸状の張り出し部の表面に複数の電極が短冊状に設けられている。また、張り出し部には誤挿入防止形状84が施されている。そして、レセプタクル82には、プラグ80の張り出し部に対応した凹状の挿入部が設けられ、プラグ80とレセプタクル82が嵌め合わされる際、レセプタクル82の挿入部にプラグ80の張り出し部が挿入される。プラグ80の張り出し部が挿入されると、プラグ80の各電極と、それに対応するレセプタクル82の各電極とが接触して、電気的な導通状態が形成される。
【0064】
図7に示したプラグ80およびレセプタクル82の形状は、あくまでも一例に過ぎず、本発明において、プラグ80およびレセプタクル82の形状として他の形状を適用してもよいことはいうまでもない。
【0065】
図8は、本発明に係る共用プローブコネクタ20の様々な形状例を説明するための図である。図8(a)は、共用プローブコネクタ20、2Dアレイプローブ50および高周波リニアプローブ52が一体的に形成された例である。つまり、2Dアレイプローブ50および高周波リニアプローブ52が共用プローブコネクタ20の上面に固定的に取り付けられている。このように、複数のプローブが予め固定的に共有プローブコネクタ20に取り付けられてもよい。もちろん、プローブの取り付け位置についても、共有プローブコネクタ20の上面に限定されず、側面、下面、あるいは、正面に設けられてもよい。
【0066】
図8(b)は、2Dアレイプローブ50および高周波リニアプローブ52が共用プローブコネクタ20の正面の上部に設けられた例を示している。図8(b)に示すように、二つのプローブが隣接するように配置されてもよい。また、各プローブは、共用プローブコネクタ20から脱着可能でもよく、あるいは、固定的に取り付けられてもよい。
【0067】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】フィルタ処理を説明するための図である。
【図3】本発明に係る超音波診断装置の使用例を説明するための図である。
【図4】本発明に係る超音波診断装置で形成される表示画像例を説明するための図である。
【図5】本発明に係る共用プローブコネクタの形状を説明するための図である。
【図6】本発明に係る共用プローブコネクタの内部構造を説明するための図である。
【図7】各プラグおよび各レセプタクルの形状例を説明するための図である。
【図8】本発明に係る共用プローブコネクタの様々な形状例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0069】
10 プローブa、14 プローブb、20 共用プローブコネクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の超音波プローブと、
前記複数の超音波プローブが接続され、それら複数の超音波プローブによって共用される共用プローブコネクタと、
前記共用プローブコネクタを介して前記複数の超音波プローブの各々へ送信信号を供給する送信部と、
前記共用プローブコネクタを介して前記複数の超音波プローブの各々から受信信号を取得する受信部と、
を有し、
前記共用プローブコネクタは、前記送信部が出力する信号の中から選択された各超音波プローブごとの送信信号を対応する各超音波プローブへ供給し、各超音波プローブから得られる受信信号を受信部へ出力する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記送信部は、複数の送信回路を含み、
前記共用プローブコネクタは、前記複数の送信回路のうちの少なくとも一つからなる各送信回路群を各超音波プローブに割り当てることによって、各送信回路群から出力される送信信号を対応する各超音波プローブへ供給する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波診断装置において、
前記受信部は、複数の受信回路を含み、
前記共用プローブコネクタは、前記複数の受信回路のうちの少なくとも一つからなる各受信回路群を各超音波プローブに割り当てることによって、各超音波プローブから得られる受信信号を対応する各受信回路群へ出力する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記共用プローブコネクタは、前記送信部から順次出力される複数の超音波プローブの送信信号の各々を対応する各超音波プローブへ順次供給する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波診断装置において、
前記共用プローブコネクタは、前記複数の超音波プローブから得られる受信信号の各々を前記受信部へ時分割して順次出力する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記複数の超音波プローブは、互いに周波数特性の異なる超音波を送波し、
前記各超音波プローブから得られる受信信号に対して、その超音波プローブに応じたフィルタ処理を施すことにより、その超音波プローブから送波された超音波に対応した受信信号成分を抽出するフィルタ処理部と、
前記各超音波プローブごとに対応する受信信号成分に基づいて超音波画像を形成する画像構成部と、
をさらに有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
超音波診断装置の装置本体と複数の超音波プローブとを接続するために、それら複数の超音波プローブによって共用される共用プローブコネクタにおいて、
前記装置本体が出力する信号の中から各超音波プローブごとの送信信号を選択して対応する各超音波プローブへ供給し、各超音波プローブから得られる受信信号を前記装置本体へ出力する、
ことを特徴とする共用プローブコネクタ。
【請求項8】
請求項7に記載の共用プローブコネクタにおいて、
複数の超音波プローブの各々が接続される複数のプローブ接続部と、
前記装置本体に含まれる複数の送信回路のうちの少なくとも一つからなる各送信回路群を前記各プローブ接続部に割り当て、さらに、前記装置本体に含まれる複数の受信回路のうちの少なくとも一つからなる各受信回路群を前記各プローブ接続部に割り当てる信号切替部と、
を有し、
これにより、各送信回路群から出力される送信信号を対応する各プローブ接続部を介して各超音波プローブへ供給するとともに、各プローブ接続部を介して各超音波プローブから得られる受信信号を対応する各受信回路群へ出力する、
ことを特徴とする共用プローブコネクタ。
【請求項9】
請求項8に記載の共用プローブコネクタにおいて、
前記各プローブ接続部を介して各超音波プローブから得られるプローブ情報に基づいて、各プローブ接続部とそれに接続された各超音波プローブの識別子とを対応付けたプローブ識別情報を生成する識別情報生成部、
をさらに有する、
ことを特徴とする共用プローブコネクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−204560(P2006−204560A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−20662(P2005−20662)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】