説明

超音波診断装置

【課題】断層画像、弾性画像、及び血流画像を診断に適した表示態様で表示する超音波診断装置を実現する。
【解決手段】超音波診断装置を、被検体との間で超音波を送受信して、被検体の断層部位の組織の断層画像を生成する断層画像構成手段と、断層部位の組織の弾性画像を生成する弾性画像構成手段と、断層部位の血流画像を生成する血流画像構成手段と、で構成する。そして、弾性画像(S6)上に血流画像(S5)を重畳し(S7)、さらに断層画像(S4)上にS7で生成された画像を加算する(S8)合成画像構成手段を設ける。これにより、3種類の画像が1つの画像に合成されて表示されるので、検査者は、同一視線で3種類の画像情報を得ることができ、診断能を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して、被検体内の撮像対象部位の断層画像、生体組織の硬さ又は軟らかさを示す弾性画像、及び撮像対象部位の血流画像を生成して表示する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波探触子により被検体内部に超音波を送信するとともに、被検体内部から生体組織の構造に応じた超音波の反射エコー信号を受信し、例えば超音波断層像(Bモード像)等の断層画像を生成して診断用に表示するものである。
【0003】
また、超音波断層像以外にも、例えば反射エコー信号の超音波周波数は血球の移動によりドプラシフトする性質を利用して、反射エコー信号についてドプラ復調、血流演算などを行って血流画像を生成することが知られている。
【0004】
また、近年、手動又は機械的な方法により超音波探触子で被検体を圧迫しながら反射エコー信号を計測し、計測時間が異なる2つの反射エコー信号のフレームデータに基づいて圧迫により生じた生体各部の変位を求め、その変位データに基づいて生体組織の弾性を表す弾性画像を生成することが行われている。
【0005】
ところで、特許文献1には、断層画像と弾性画像とを同時に、或いは交互に計測し、それらを画像表示装置の同一画面上に表示することが記載されている。また、特許文献2には、断層画像に、弾性画像や血流画像を重ねて、或いは嵌め込んで表示することが記載されている。これによれば、断層画像で被検体の患部の全体を観察しながら、弾性画像や血流画像を別の観点から観察することができるとされている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−060853号公報
【特許文献2】特開2006−340745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2に記載された技術には、断層画像、弾性画像、及び血流画像の3種類の画像の表示による総合診断能の向上にさらなる余地が残されている。
【0008】
すなわち、特許文献1,2の技術は、断層画像上に弾性画像を重ね合わせて表示したり、或いは断層画像上に血流画像を重ね合わせて表示したり、又は、これらの重ね合わせた画像を同一画面上に並列表示するものである。例えば並列表示した場合は、3種類の画像が同一画面上に現れることにはなるが、これでは、検査者は画像診断に際して両画像間で視線の移動を伴うので、関心部位の3種類の画像情報を総合的に判断することに困難が伴う場合がある。
【0009】
そこで、本発明は、断層画像、弾性画像、及び血流画像を診断に適した表示態様で表示する超音波診断装置を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の超音波診断装置は、被検体との間で超音波を送受信する超音波探触子と、超音波探触子により計測された反射エコー信号に基づいて、被検体の断層部位の組織の断層画像を生成する断層画像構成手段と、反射エコー信号に基づいて、断層部位の組織の弾性画像を生成する弾性画像構成手段と、超音波探触子により計測された反射エコー信号に基づいて血流情報を求め、断層部位の血流画像を生成する血流画像構成手段と、断層画像、弾性画像、及び血流画像の合成画像を生成する合成画像構成手段と、合成画像を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
すなわち、合成画像構成手段によって、同一断層部位における断層画像、弾性画像、及び血流画像の3種類の画像が1つの画像に合成されて表示されるので、検査者は、同一視線で3種類の画像情報を得ることができる。したがって、3種類の画像情報からの総合診断能を向上させながら、検査時間を短縮して検査効率を向上することができる。
【0012】
この場合において、合成画像構成手段による3種類の画像の具体的な合成手法は、以下の3態様を採用することができる。
【0013】
まず、第1態様は、血流画像を前記弾性画像上に重畳するとともに、重畳された画像を断層画像上に重畳して又は加算して合成画像を生成するものである。つまり、合成された画像は、断層部位の全体の組織構造を表す白黒断層画像が最背面となり、この断層画像上に、組織弾性に応じて例えば色相階調され半透明化された弾性画像が中間面として加算され、さらに、この画像上の最前面に、血流速度に応じて例えば色相階調された血流画像が重畳された画像となる。
【0014】
このように弾性画像を半透明化して加算することにより、同一組織の構造情報と弾性情報という異なる情報を同時に観察することができ、診断能を向上することができる。また、一般的に断層部位の全体に対する血流が占める領域は小さいので、血流画像は、透過させずカラーで最前面に表示して検査者が見えやすくするものである。
【0015】
次に、第2態様は、弾性画像が、被検体に圧力を印加して計測された取得時刻の異なる1対の反射エコー信号に基づくフレームデータ間の相関演算に基づいて構成される場合において、弾性画像上の相関演算において相関エラーとなった箇所にのみ血流画像を重畳するものである。そして、この重畳された画像を、断層画像上に重畳して又は加算して合成画像を生成するのは第1態様と同様である。
【0016】
これは、血流画像を常に最前面に優先表示するのではなく、相関エラーにより弾性画像が生成されない箇所に限って血流画像を重畳、言い換えれば重ね合わせて表示するものである。これによれば、例えば、断層画像と弾性画像との合成画像をメインで観察しながらも、弾性画像を構成する際にノイズ若しくは演算ミスなどに起因して相関エラーとなって画像情報が欠損するアーチファクト部には、血流画像があれば補充的に重畳することができる。その結果、3画像情報による総合診断に適した合成画像を提供することができる。また、これによれば、アーチファクトにより弾性画像が構成されていない箇所が、血流の影響によるものなのか、それとも他の要因によるものなのかを判断することができる。
【0017】
そして、第3態様は、弾性画像が、組織の弾性に応じて階調化された画像である場合において、弾性画像上の全階調範囲の中から設定された階調範囲に対応する箇所に血流画像を重畳するものである。そして、この重畳された画像を、断層画像上に重畳して又は加算して合成画像を生成するのは第1態様と同様である。
【0018】
これは、血流画像を常に最前面に優先表示するのではなく、弾性画像の中から例えば検査者により選択された、或いは予め設定されている階調範囲に対応する箇所に血流画像を重畳表示するものである。これによれば、断層部位の中でも検査者が真に観察したい組織に絞って血流画像を表示させることができ、診断に適した合成画像を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、断層画像、弾性画像、及び血流画像を診断に適した表示態様で表示する超音波診断装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を適用してなる超音波診断装置の実施例を説明する。なお、以下の説明では、同一機能部品については同一符号を付して重複説明を省略する。
【0021】
図1は本発明を適用した超音波診断装置の基本構成を示すブロック図である。図1に示すように、超音波診断装置1には、被検体10に当接させて用いる超音波探触子12と、超音波探触子12を介して被検体10に時間間隔をおいて超音波を繰り返し送信する送信部14と、被検体10から発生する時系列の反射エコー信号を受信する受信部16と、送信部14と受信部16を制御する送受信制御部17と、受信部16で受信された反射エコーを整相加算する整相加算部18とが備えられている。
【0022】
また、整相加算部18からのRF信号フレームデータに基づいて被検体の濃淡断層画像、例えば白黒断層画像を構成する断層画像構成部20と、断層画像構成部20の出力信号を画像表示器26の表示に合うように変換する白黒スキャンコンバータ22とが備えられている。
【0023】
また、整相加算部18から出力されるRF信号フレームデータを記憶し、少なくとも2枚のフレームデータを選択するRFフレームデータ選択部28と、被検体10の生体組織の変位を計測する変位計測部30と、変位計測部30で計測された変位情報から歪み又は弾性率を求める弾性情報演算部32と、弾性情報演算部32での弾性演算エラーの評価などを行うエラー評価部33と、弾性情報演算部32で演算した歪み又は弾性率からカラー弾性画像を構成する弾性画像構成部34と、弾性画像構成部34の出力信号を画像表示器26の表示に合うように変換するカラースキャンコンバータ36とが備えられている。
【0024】
また、整相加算部18から出力されるRF信号フレームデータに対してドプラ復調などの演算を行うドプラ復調部47と、ドプラ復調部47の出力信号を血流情報に変換する血流演算部48と、血流演算部48からの出力信号に平滑処理やフレーム相関などの画像処理を行う画像処理部49と、画像処理部49からの出力信号を、画像表示器26の表示に合うように変換するカラースキャンコンバータ50などが備えられている。
【0025】
また、弾性情報演算部32、エラー評価部33、弾性画像構成部34、及びカラースキャンコンバータ36,50などを制御する画像制御部44と、画像制御部44に指示を与えるインターフェイス部42とが備えられている。
【0026】
そして、白黒スキャンコンバータ22,カラースキャンコンバータ36,カラースキャンコンバータ50からそれぞれ出力される白黒断層画像、カラー弾性画像、及び血流画像の3画像の合成画像を生成する本発明の特徴部である合成画像構成部24と、合成画像を表示する画像表示器26が備えられている。
【0027】
ここで、超音波診断装置1について詳細に説明する。超音波探触子12は、複数の振動子を配設して形成されており、被検体10に振動子を介して超音波を送受信する機能を有している。送信部14は、超音波探触子12を駆動して超音波を発生させるための送波パルスを生成するとともに、送信される超音波の収束点をある深さに設定する機能を有している。また、受信部16は、超音波探触子12で受信した反射エコー信号について所定のゲインで増幅してRF信号、すなわち受波信号を生成するものである。整相加算部18は、受信部16で増幅されたRF信号を入力して位相制御し、一点又は複数の収束点に対し超音波ビームを形成してRF信号フレームデータを生成するものである。
【0028】
断層画像構成部20は、整相加算部18からのRF信号フレームデータを入力してゲイン補正、ログ圧縮、検波、輪郭強調、フィルタ処理等の信号処理を行い、断層画像データを得るものである。また、白黒スキャンコンバータ22は、断層画像構成部20からの断層画像データをデジタル信号に変換するA/D変換器と、変換された複数の断層画像データを時系列に記憶するフレームメモリと、制御コントローラを含んで構成されている。この白黒スキャンコンバータ22は、フレームメモリに格納された被検体内の断層フレームデータを1画像として取得し、取得された断像フレームデータをテレビ同期で読み出すものである。
【0029】
RFフレームデータ選択部28は、整相加算部18からの複数のRF信号フレームデータを格納し、格納されたRF信号フレームデータ群から1組すなわち2つのRF信号フレームデータを選択する。例えば、整相加算部18から時系列に画像のフレームレートに基づいて生成されるRF信号フレームデータをRFフレームデータ選択部28に順次記憶し、記憶されたRF信号フレームデータ(N)を第1のデータとして選択すると同時に、時間的に過去に記憶されたRF信号フレームデータ群(N−1、N−2、N−3…N−M)の中から1つのRF信号フレームデータ(X)を選択する。なお、ここでN、M、XはRF信号フレームデータに付されたインデックス番号であり、自然数とする。
【0030】
そして、変位計測部30は、選択された1組のデータすなわちRF信号フレームデータ(N)及びRF信号フレームデータ(X)から1次元或いは2次元相関処理を行って、断層画像の各点に対応する生体組織における変位や移動ベクトルすなわち変位の方向と大きさに関する1次元又は2次元変位分布を求める。ここで、移動ベクトルの検出にはブロックマッチング法を用いる。ブロックマッチング法とは、画像を例えばN×N画素からなるブロックに分け、関心領域内のブロックに着目し、着目しているブロックに最も近似しているブロックを前のフレームから探し、これを参照して予測符号化すなわち差分により標本値を決定する処理を行う。
【0031】
弾性情報演算部32は、変位計測部30から出力される計測値、例えば移動ベクトルと、圧力計測部46から出力される圧力値とから断層画像上の各点に対応する生体組織の歪みや弾性率を演算し、その歪みや弾性率に基づいて弾性画像信号すなわち弾性フレームデータを生成するものである。
【0032】
このとき、歪みのデータは、生体組織の移動量例えば変位を空間微分することによって算出される。また、弾性率のデータは、圧力の変化を歪みの変化で除することによって計算される。例えば、変位計測部30により計測された変位をL(X)、圧力計測部46により計測された圧力をP(X)とすると、歪み△S(X)は、L(X)を空間微分することによって算出することができるから、△S(X)=△L(X)/△Xという式を用いて求められる。また、弾性率データのヤング率Ym(X)は、Ym=(△P(X))/△S(X)という式によって算出される。このヤング率Ymから断層画像の各点に相当する生体組織の弾性率が求められるので、2次元の弾性画像データを連続的に得ることができる。なお、ヤング率とは、物体に加えられた単純引張り応力と、引張りに平行に生じる歪みに対する比である。
【0033】
エラー評価部33は、変位計測部30で相関演算を行った際に、例えば無エコー部、ガス部、血流部などで相関演算エラーとなったアーチファクト部を抽出する機能を有している。
【0034】
弾性画像構成部34は、フレームメモリと画像処理部とを含んで構成されており、弾性情報演算部32から時系列に出力される弾性フレームデータをフレームメモリに確保し、確保されたフレームデータに対し画像処理を行うものである。
【0035】
カラースキャンコンバータ36は、弾性画像構成部34からの弾性フレームデータに色相情報を付与する機能を有したものである。つまり、弾性フレームデータに基づいて光の3原色すなわち赤(R)、緑(G)、青(B)に変換するものである。例えば、歪みが大きい弾性データを赤色コードに変換すると同時に、歪みが小さい弾性データを青色コードに変換する。
【0036】
そして、本発明の特徴部である合成画像構成部24は、フレームメモリと、画像処理部と、画像選択部とを備えて構成されている。ここで、フレームメモリは、白黒スキャンコンバータ22からの断層画像データとカラースキャンコンバータ36,50からの弾性画像データ,血流画像データとを格納するものである。
【0037】
また、画像処理部は、フレームメモリに確保された断層画像データ,弾性画像データ、及び血流画像データの合成処理を行う。具体的な合成処理内容は後述する。さらに、画像選択部は、フレームメモリ内の断層画像データ、弾性画像データ、血流画像データ、及び画像処理部の合成画像データのうちから画像表示器26に表示する画像を選択するものである。
【0038】
以下、本発明の特徴部である合成画像構成部24の詳細について、実施例ごとに説明する。
【実施例1】
【0039】
図2は、第1実施例の画像合成処理の概念図である。図2に示すように、まず、断層画像の生成用の超音波送受信(S1)、血流画像の生成用の超音波送受信(S2)、弾性画像の生成用の超音波送受信(S3)をそれぞれ行う。また、これらの処理と並列して、断層画像の構築処理(S4)、血流画像の構築処理(S5)、弾性画像の構築処理(S6)を行う。
【0040】
ここで、断層画像の生成用の超音波送受信と弾性画像の生成用の超音波送受信とを別の処理としているが、これらは共通の処理とすることもできる。つまり、断層画像の生成用の超音波送受信により得られたRF信号フレームデータを、弾性画像の生成にも用いることができる。
【0041】
次に、弾性画像上に血流画像を重畳する(S7)。ここで、重畳とは弾性画像上に血流画像を重ね合わせることであり、血流画像が生成された箇所は、常に血流画像が優先してカラー表示されることとなる。ただし、この弾性画像と血流画像との表示優先度を選択できるようにしてもよい。
【0042】
続いて、S7で合成された画像と断層画像の合成を行う(S8)。ここでの合成は、例えば、弾性画像を半透明カラー表示として断層画像上に加算するものである。つまり、合成画像の各画素の輝度情報及び色相情報は、白黒断層画像とカラー弾性画像との各情報を、任意に設定可能な合成割合で加算したものとなる。そして、S8で合成処理された画像を画像表示器26に表示する(S9)。
【0043】
ここで、図3に、被検体の筋肉、脂肪、甲状腺、腫瘍、頚動脈などの各組織を撮像したときの断層画像のみの表示(a)と、上述の合成処理により生成された合成画像の表示(b)を模式的に示す。この合成画像は、一般的に断層部位の全体に対する存在領域の小さい血流画像を、カラーで最前面に表示して検査者に見えやすくするものである。さらに、弾性画像を半透明カラー表示として断層画像上に加算して、組織の弾性情報及び形態情報を同時に観察できるようにしたものである。これによれば、例えば、腫瘍の硬さ情報、形態情報などを観察しながら、さらに腫瘍上の血流の走向を鮮明に観察でき、3種類の画像情報からの総合的な診断能の向上を図ることができる。
【実施例2】
【0044】
図4は、第2実施例の画像合成処理の概念図である。S11〜S16の処理は第1実施例と同様であるので説明を省略する。本実施例では、図4に示すように弾性画像の構築処理後に、弾性画像のアーチファクト部抽出処理を行う(S17)。具体的には、変位計測部30での1組のRF信号フレームデータ間の相関演算の際に、相関エラーとなった部位をエラー評価部33がアーチファクト部として抽出する。相関エラーとなる部位とは、例えば、適切な相関が取れず、弾性画像を作成できない部位である。
【0045】
続いて、血流画像のうち、アーチファクト部と重複する箇所のみを抽出し(S18)、S16で生成された弾性画像上に、抽出された血流画像を重畳する(S19)。ここでの重畳処理は、第1実施例と同様に、弾性画像上に抽出された血流画像を重ね合わせるものである。そして、その後は第1実施例と同様に、S19で重畳された画像と、S14で生成された断層画像とを合成し(S20)、合成された画像を表示処理する(S21)。
【0046】
このように、本実施例は、生成された血流画像を常に優先表示するのではなく、相関エラーにより弾性画像が生成されない箇所に限って血流画像を重畳して表示するものである。
【0047】
図5に、被検体の脂肪、血管などの各組織を撮像したときの断層画像のみの表示(a)と、上述の合成処理により生成された合成画像の表示(b)を模式的に示す。弾性画像は、上述したように、RF信号フレームデータ間の相関演算により変位を算出し、空間微分を介して、歪み演算、弾性率演算を行う。そのため、無エコー部やガス部、血流部においては適切な相関がとれず、弾性画像を構築することは困難であり、例えばアーチファクトとして画像化されるか、若しくは除外(リジェクション)されて表示される。そこで、この除外部分に限って血流画像があれば重畳して、検査者により多くの被検体の情報を与えている。
【0048】
このように、相関エラーによるリジェクション領域に血流画像があれば付加的に重畳するので、例えば、断層画像と弾性画像との合成画像をメインで観察しながらも、血流情報も併せて3画像情報による総合診断をすることができる。
また、これによれば、アーチファクトにより弾性画像が構成されていない箇所が、血流の影響によるものなのか、それとも他の要因によるものなのかを判断することができる。さらに、弾性画像生成過程で既に持っているパラメータを用いるため、半透明等の複雑な処理をすることなく、弾性画像と血流画像の表示領域の決定を容易にすることができる。
【実施例3】
【0049】
図6は、第3実施例の画像合成処理の概念図である。S31〜S36の処理は第1実施例と同様であるので説明を省略する。本実施例では、画像表示器26上に例えば図7に示すような弾性画像の階調カラーバーを表示させ、検査者に、全階調範囲の中から任意の階調領域を選択可能としている。つまり、弾性画像は、上述したように組織の弾性値に応じて色相階調されるものであるので、この色相階調をカラーバーとして画像表示器26上に表示させ、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、トラックボールなど周知のユーザーインターフェースを用いて検査者に弾性範囲を設定させる(S37)。
【0050】
続いて、選択された弾性範囲に対応する弾性画像を抽出し(S38)、抽出された弾性画像に対応する箇所の表示用血流画像を抽出する(S39)。そして、S36で生成された弾性画像上に、抽出された血流画像を重畳する(S40)。ここでの重畳処理は、第1実施例と同様に、弾性画像上に抽出された血流画像を重ね合わせるものである。そして、その後は第1実施例と同様に、S40で重畳された画像と、S34で生成された断層画像とを合成し(S41)、合成された画像を表示処理する(S42)。
【0051】
このように、本実施例は、カラーバー上にて任意に血流情報のレンジを選択できるようにし、それを画面上に表示するものである。これによれば、実施例1のように、弾性像上に全ての血流画像を優先表示するのではなく、任意の範囲だけを表示することができる。その結果、断層部位の中でも検査者が真に観察したい組織に絞って血流画像を表示させることができ、検査者の視認性の向上を図ることができる。
【0052】
なお、本実施例のように、カラーバーを用いて弾性値の範囲を選択するだけでなく、例えば、弾性値の数値範囲を入力するなど、様々な選択手法を採用することができる。また、例えば、組織が硬くなっている部分を病変部とみなして、この硬くなった部分を3種類の画像情報から集中的に診断したい場合などは、その都度選択するのではなく、予め血流画像を表示させる弾性値の範囲を設定しておいてもよい。
【実施例4】
【0053】
図8は、第4実施例の画像合成処理の概念図である。S51〜S56の処理は、超音波を送受信してそれぞれの画像を生成するという点は上述の各実施例と同様である。しかし、上述の各実施例では、断層部位の領域全体に対して断層画像、弾性画像、及び血流画像を生成するのに対して、本実施例は、超音波診断装置の処理能力と画像のフレームレートとの関係、或いは検査者の視認性などの観点から、弾性画像と血流画像については関心領域を設定するものである。
【0054】
つまり、まず、S51,S54の処理により生成された断層画像を画像表示器26に表示させ、被検体の組織構造を検査者に与える。そして、検査者はこの画像を参照しながら、ユーザーインターフェースを介して弾性画像、血流画像のそれぞれに対して関心領域(以下、ROIという。)を設定する(S57)。
【0055】
続いて、設定された複数のROIにおける弾性画像、及び血流画像を生成し(S55,S56)、生成された弾性画像及び血流画像が重複する領域については両画像を合成する(S58)。ここでの合成は、上述の各実施例で説明した弾性画像と血流画像との重畳処理のいずれかを採用することができる。そして、その後は第1実施例と同様に、S58で重畳された画像と、S54で生成された断層画像とを合成し(S59)、合成された画像を表示処理する(S60)。
【0056】
図9に、被検体の脂肪、筋肉、甲状腺、腫瘍、頚動脈などの各組織を撮像したときの断層画像のみの表示(a)と、上述の合成処理により生成された合成画像の表示(b)を模式的に示す。このように、設定されたROI内にのみ、弾性画像及び血流画像が表示されるので、例えば腫瘍など検査者が注目する部位にのみ、断層画像、弾性画像、及び血流画像の3画像情報を表示することができる。
【0057】
これによれば、検査者は、注目する組織の構造情報と弾性情報という異なる情報、及びこの組織上の血流の走行状況、という3種類の画像情報を同一視線で得ることができるので、総合診断能を向上させながら、検査時間を短縮して検査効率を向上することができる。
【0058】
一方、弾性画像用のROIと血流画像用のROIとが重複しない箇所については、図10に示すように、弾性画像及び血流画像が、それぞれ断層画像と合成される。ここで、弾性画像と断層画像とを合成する場合は、弾性画像を半透明カラー表示として断層画像上に加算してもよいし、半透明化せずに断層画像上に重畳してもよい。また、血流画像と断層画像との合成については、血流画像を断層画像上に重畳すればよい。
【0059】
ここで、本実施例では、検査者が弾性画像に対するROI、血流画像に対するROIをそれぞれ設定する場合を説明したが、例えば、両画像に対するROIを共通化させて、断層画像を参照しながら1回のROI設定で、そのROIに対する弾性画像及び血流画像を生成して合成表示してもよい。
【0060】
また、例えば、断層画像を参照しながら弾性画像用のROIを設定すると、このROIにおける弾性画像が生成され、弾性画像上の全階調範囲の中から予め設定された階調範囲に対応する箇所に、血流画像用のROIが自動設定されるように関心領域設定部を設けてもよい。自動設定されたROIに対して血流画像が生成された後は、上述と同様の合成処理をして表示すればよい。
【0061】
以上、本発明の超音波診断装置の合成画像構成部の各実施例について説明したが、上述の各実施例において、弾性画像と血流画像とを同時に表示させる場合に、弾性値の階調と表示色との対応を示すカラーバー、血流速度の階調と表示色との対応をしめすカラーバーを表示させてもよい。また、予め血流速度の閾値を設定できるようにして、閾値より速い又は遅い、或いは設定閾値の範囲内の血流画像のみを表示するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の超音波診断装置の基本構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施例の画像合成処理の概念図である。
【図3】被検体の各組織の断層画像のみの表示(a)と、第1実施例の合成処理により生成された合成画像の表示(b)を模式的に示す図である。
【図4】第2実施例の画像合成処理の概念図である。
【図5】被検体の各組織の断層画像のみの表示(a)と、第2実施例の合成処理により生成された合成画像の表示(b)を模式的に示す図である。
【図6】第2実施例の画像合成処理の概念図である。
【図7】弾性画像の階調カラーバーの表示により、検査者に、任意の階調領域を選択させる概念図である。
【図8】第4実施例の画像合成処理の概念図である。
【図9】被検体の各組織の断層画像のみの表示(a)と、第4実施例の合成処理(弾性画像用のROIと血流画像用のROIが重複する場合)により生成された合成画像の表示(b)を模式的に示す図である。
【図10】被検体の各組織の断層画像のみの表示(a)と、第4実施例の合成処理(弾性画像用のROIと血流画像用のROIが重複しない場合)により生成された合成画像の表示(b)を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 超音波診断装置
10 被検体
12 超音波探触子
20 断層画像構成部
22 白黒スキャンコンバータ
24 合成画像構成部
26 画像表示器
28 RFフレームデータ選択部
30 変位計測部
32 弾性情報演算部
33 エラー評価部
34 弾性画像構成部
36,50 カラースキャンコンバータ
44 画像制御部
47 ドプラ復調部
48 血流演算部
49 画像処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体との間で超音波を送受信する超音波探触子と、該超音波探触子により計測された反射エコー信号に基づいて、前記被検体の断層部位の組織の断層画像を生成する断層画像構成手段と、前記反射エコー信号に基づいて、前記断層部位の組織の弾性画像を生成する弾性画像構成手段と、前記超音波探触子により計測された反射エコー信号に基づいて血流情報を求め、前記断層部位の血流画像を生成する血流画像構成手段と、前記断層画像、弾性画像、及び血流画像の合成画像を生成する合成画像構成手段と、前記合成画像を表示する表示手段と、を備えてなることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記合成画像構成手段は、前記血流画像を前記弾性画像上に重畳するとともに、重畳された画像を前記断層画像上に重畳して又は加算して合成画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記弾性画像は、前記被検体に圧力を印加して計測された取得時刻の異なる1対の前記反射エコー信号に基づくフレームデータ間の相関演算に基づいて構成され、前記合成画像構成手段は、前記弾性画像上の前記相関演算において相関エラーとなった箇所に前記血流画像を重畳することを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記弾性画像は、前記組織の弾性に応じて階調化された画像であり、前記合成画像構成手段は、前記弾性画像上の全階調範囲の中から設定された階調範囲に対応する箇所に前記血流画像を重畳することを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記表示手段に表示された前記断層画像上に、前記弾性画像用の関心領域、及び前記血流画像用の関心領域のそれぞれを設定する関心領域設定手段を備え、前記画像合成手段は、両関心領域の重複領域では、前記断層画像、弾性画像、及び血流画像の合成画像を生成するとともに、前記重複領域以外の各関心領域では、前記弾性画像及び血流画像のそれぞれを前記断層画像上に重畳して又は加算して合成画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記弾性画像は、前記組織の弾性に応じて階調化された画像であり、前記弾性画像上の全階調範囲の中から設定された階調範囲に対応する箇所に、血流画像用の関心領域を設定する関心領域設定手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記血流画像は、血流速度に応じて色相階調された画像であり、前記弾性画像は、前記組織の弾性に応じて色相階調され、かつ半透明にされた画像であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−284287(P2008−284287A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134334(P2007−134334)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】