説明

超音波診断装置

【課題】3次元データを取得した立体的領域の断面である2D超音波画像を生成するとともに、2D超音波画像を生成する断面を、HMDを用いて切り替える。
【解決手段】超音波診断装置11は、超音波プローブ12、超音波画像生成部42、HMD13、姿勢計測部46を備える。超音波プローブ12は、超音波トランスデューサが2次元に配列された超音波トランスデューサアレイ32を備える。超音波画像生成部42は、被検体内の立体的な領域の断面である2D超音波画像を生成する。HMD13は、動きに応じた信号を出力する姿勢センサ54と、視野57に画像等を投影する投影部56を備える。姿勢計測部46は、術者Op(HMD13)の回転方向及び回転角度を計測する。2D超音波画像を生成する被験体内の立体的領域の断面は予め複数種類に定められ、HMD13の回転方向及び回転角度に応じて生成する2D超音波画像が切り替えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内に超音波を送信して、被検体の断層画像を得る超音波診断装置に関するものであり、さらに詳しくは、ヘッドマウントディスプレイを備えた超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療分野において、超音波診断装置が診察や検査に広く用いられている。超音波診断装置は、被検体内に超音波を送信し、そのエコーから被検体の超音波断層画像(以下、超音波画像という)を生成し、モニタ表示する装置であり、概ね、超音波プローブやプロセッサ装置等から構成される。超音波プローブは、被検体の体表にあてがわれて使用され、被検体内に超音波を送信するとともに、被検体内からのエコーを受信する。プロセッサ装置は、超音波プローブが受信したエコーに応じて出力する信号に基づいて被検体の超音波画像を生成し、モニタに表示する。
【0003】
超音波プローブは、医師や検査技師等の術者が片手で把持できる程度の大きさに形成されるとともに、柔軟性のある通信ケーブルや無線によってプロセッサ装置と接続される。これにより、術者は、当接させる位置や角度を自在に調節しながら、超音波プローブを被検体に当接させることができる。一方、超音波画像が表示されるモニタはプロセッサ装置とともにベットサイド等の所定位置に置かれる。このように、超音波プローブはモニタから離れた位置で使用されるので、超音波診断装置を用いた診察や検査では、超音波プローブの位置や角度を確認したり、超音波画像を確認するために、術者はモニタと超音波プローブを把持した手元とに何度も視線を移動させる必要があった。
【0004】
こうした視線移動の煩わしさを解消するために、近年では、超音波プローブを把持した手元を観察する視野の中に超音波画像を重畳して表示させるヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDという)を用いる技術が知られている。なかでも、HMDを用いることによって視野の中に単に超音波画像を重畳して表示するだけでなく、術者の瞳孔の位置を認識し、術者の視線の先に超音波画像を表示させる技術が知られている(特許文献1)。
【0005】
また、一般に多く用いられる超音波プローブ(以下、2D超音波プローブという)は、超音波トランスデューサが1列に並べて配置され、1つの面内で超音波を送受信することにより、被検体の断層画像となる受信信号を取得するが、近年では、超音波トランスデューサが2次元に配列され、被検体内の立体的な領域に超音波を送受信することにより、この領域の3次元の受信信号(以下、3次元データという)を得る3D超音波プローブも知られている。例えば、乳がんは、早期がん(2mm以下)で発見されれば90%以上完治し、超早期がん(数mm)で発見されればほぼ100%完治すると言われているが、このような小さいターゲットに穿刺を行う場合、通常の2次元の断層画像では、穿刺針が腫瘤に確実に刺入されたか等を確認することが難しい。このため、近年の乳がん検査では、3D超音波プローブが用いられ、腫瘤周囲の複数の断面で超音波画像を観察しながら、穿刺が行われる。
【0006】
さらに、3D超音波プローブとHMDとをともに備える超音波診断装置も知られている。例えば、3D超音波プローブを用いて3次元データを取得し、被検体内の様子を立体的に描出した3D超音波画像をHMDに表示するときに、術者の視線方向から見た3D超音波画像を生成,表示することによって、3D超音波プローブと処置具の操作のために術者の両手がふさがる施術を行う場合の超音波診断装置に関わる操作を低減させた超音波診断装置が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−18015号公報
【特許文献2】特開2000−201925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
超音波診断装置を用いて穿刺等を行う場合、腫瘍等がある位置やその個数等を確認したり、診断箇所を決定したりするために、事前に比較的広範囲で超音波画像を観察することが一般的である。こうした広範囲の観察には、前述の3D超音波画像が有効である。一方、穿刺を行う場合、穿刺針の刺入経路は、被検部位周辺の組織性状等を精査して定める必要があるので、3D超音波画像よりも、穿刺針を含む平面の超音波画像による観察が有効である。しかし、従来の3D超音波プローブを備えた超音波診断装置は、3D超音波プローブを用いる場合に常に3D超音波画像を表示し、また、被検体の任意断面について平面の超音波画像(以下、2D超音波画像)を表示することができる場合でも、どういった断面の2D超音波画像を生成,表示するか等の設定に煩雑な操作が必要となるため、必ずしも使い勝手が良いとは言えない。
【0009】
このように、3D超音波プローブを用いて2D超音波画像を生成する場合、例えば、特許文献2のように、HMDによって術者の視線を検出し、3次元データを取得したエリアに対して視線に垂直な断面の2D超音波画像を生成,表示することが考えられる。しかし、3D超音波プローブを用いて2D超音波画像を生成する場合であっても、従来の2D超音波プローブを用いて2D超音波画像を生成する場合と同様に、超音波プローブの位置や傾きのわずかな変化によって、穿刺針等の処置具を見失いやすいという欠点がある。また、2D超音波画像を生成する断面を視線に追従させて変化させる場合、一定の断面の2D超音波画像を観察するためには、超音波プローブを固定するだけでなく、HMDを装着した頭部をも固定しなければならないため、かえって術者に負担を強いることになる。このため、3D超音波プローブを用いて2D超音波画像を生成,表示するときには、視線移動に対する追従性よりも、適切な断面の超音波画像に簡単な操作で切り替えられることが望ましい。
【0010】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、3D超音波プローブを用いて3次元データを取得し、必要に応じて3次元データを取得した立体的領域の複数の断面について選択的に2D超音波画像を生成,表示するとともに、こうした2D超音波画像を生成,表示する断面を、HMDを用いた簡単な操作で切り替えることができる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の超音波診断装置は、超音波を送受信する超音波トランスデューサが2次元に配列され、被検体内の立体的な領域に前記超音波を走査する超音波プローブと、前記超音波トランスデューサが前記被検体内からのエコーを受信して出力する受信信号に基づいて、前記被検体の立体的な領域の所定断面について断層画像を生成する断層画像生成手段と、術者の頭部に装着され、前記術者の頭部の動きに応じた信号を出力する姿勢検知手段と、前記術者の視野に少なくとも前記断層画像を投影する投影手段と、を有するヘッドマウントディスプレイと、前記姿勢検知手段から出力される信号に基づいて、予め定められた前記ヘッドマウントディスプレイの姿勢を基準として前記ヘッドマウントディスプレイを装着した前記術者の頭部の回転方向及び回転角度を計測する回転計測手段と、を備え、前記断層画像を生成する前記所定断面は予め複数種類に定められ、前記回転計測手段によって計測された前記回転方向及び前記回転角度に応じて前記投影手段に投影される前記断層画像が前記複数種類の前記断層画像のなかで切り替わることを特徴とする。
【0012】
また、前記断層画像を生成する前記所定断面は、少なくとも3種類定められ、前記ヘッドマウントディスプレイが前記基準となる姿勢の場合と、前記ヘッドマウントディスプレイが水平に回転された場合と、前記ヘッドマウントディスプレイが鉛直に回転された場合とで、各々異なることが好ましい。
【0013】
また、前記投影手段に投影される前記断層画像が切り替わる前記回転角度が、前記ヘッドマウントディスプレイの姿勢が前記基準となる姿勢から遠ざかる向きに回転される往路回転と、前記基準となる姿勢に近づく向きに回転される復路回転とで異なることが好ましい。
【0014】
さらに、前記投影手段に投影される前記断層画像が切り替わる前記回転角度が、前記往路回転時よりも前記復路回転時で小さいことが好ましい。
【0015】
前記投影手段に投影される前記断層画像が切り替わる前記回転角度が可変であることが好ましい。
【0016】
複数種類の前記断層画像のうち、少なくとも1種類の前記断層画像に穿刺針の刺入方向を示すガイドラインが重畳表示されることが好ましい。
【0017】
前記断層画像生成手段は、前記超音波プローブと前記ヘッドマウントディスプレイがともに可動状態の時に前記断層画像を生成することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、3D超音波プローブを用いて3次元データを取得し、必要に応じて3次元データを取得した立体的領域の断面について2D超音波画像を生成,表示するとともに、こうした2D超音波画像を生成,表示する断面を、HMDを用いた簡単な操作で切り替えることができる。このため、本発明の超音波診断装置を用いて穿刺等を行う場合に術者の両手が超音波プローブと処置具の操作のためにふさがっていても、穿刺針等の処置具の刺入経路を容易に確認することができる。また、このとき、2D超音波画像を生成する断面は、術者の視線に追従して変更されるのではなく、複数種類の断面から選択的に切り替えられるので、穿刺針等の処置具を見失い難い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】超音波診断装置の概略及び手技の様子を示す図である。
【図2】HMDの外観を示す図である。
【図3】超音波プローブ及び穿刺針アダプタの外観を示す図である。
【図4】超音波診断装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】視野の様子を示す説明図である。
【図6】HMDによって視野内に表示されるウィンドウの例を示す説明図である。
【図7】超音波診断装置で表示する2D超音波画像の様態を示す説明図である。
【図8】表示する2D超音波画像を切り替える様態を示す説明図である。
【図9】表示する2D超音波画像を切り替える様態を示す説明図である。
【図10】水平方向及び鉛直方向の回転を組み合わせる場合に表示する2D超音波画像の例を示す説明図である。
【図11】水平方向及び鉛直方向の回転を組み合わせる場合に表示する2D超音波画像の例を示す説明図である。
【図12】C画像にバイオプシーガイドを表示する例を示す説明図である。
【図13】3D超音波画像を表示する例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、超音波診断装置11は、ベッド等に安静に寝かされた被検体Paの体内に超音波を送信し、そのエコーに基づいて被検体内の断層画像である超音波画像を生成,表示する装置であり、超音波プローブ12、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)13、本体14から構成される。
【0021】
超音波プローブ12は、超音波を送受信するプローブであり、術者Opが片手で把持できる程度の大きさに形成され、被検者Paの体表に当接して使用される。また、超音波プローブ12は、柔軟な通信ケーブルで本体14と接続されており、所定の範囲内では、本体14の配置に関わらず、被検者Paに当接させる位置や傾きを自在に調節することができる。また、超音波プローブ12は、いわゆる3D超音波プローブであり、被検体内の立体的な領域(以下、走査エリアという)に超音波を送信するとともに、この走査エリアからのエコーを受信する。
【0022】
HMD13は、術者Opの頭部に装着され、術者Opの視野に超音波画像等を重畳して表示するディスプレイである。このHMD13は、いわゆる透過型のディスプレイであり、術者OpはHMD13を装着した状態でも、これを装着しない場合とほぼ同様に、直接的に被検者Pa等を観察することができる。また、HMD13は、術者Opに装着されたときに術者Opの眼前に位置する傾斜面を利用して、術者Opの目に超音波画像等の像光を投影する。これにより、術者Opは、実際の視野の中に、超音波画像等の虚像を認識する。さらに、HMD13は、後述するように内蔵されたセンサによって術者Opの頭部の動きを検知し、これを本体14に通知する。
【0023】
本体14は、プロセッサ装置16、モニタ17、操作部18、記憶装置19等から構成される。本体14を構成するこれらの各装置は、例えば、可搬カート21に載せられ、ベッドサイドに配置される。プロセッサ装置16は、操作部18やHMD13からの操作入力に応じて、超音波プローブ12やHMD13等、超音波診断装置11の動作を制御する。例えば、プロセッサ装置16は、受信したエコーを反映して超音波プローブ12が出力する受信信号から超音波画像を生成し、モニタ17やHMD13に表示させる。また、操作部18やHMD13の操作入力に応じて、超音波画像等を記憶装置19に記憶させる。
【0024】
図2に示すように、HMD13は、メガネ部26とHMD制御部27とからなり、固定バンド28によって術者Opの頭部に固定される。なお、固定バンド28は、図2に示す通り、術者Opの側頭部から後頭部を固定するバンドと、術者Opの頭頂部から後頭部にかけて固定するバンドとからなり、術者Opが頭部を移動させた場合にも、メガネ部26やHMD制御部27が所定の装着位置からずれないように、HMD13を術者Opにフィットさせる。
【0025】
メガネ部26は、術者OpがHMD13を装着したときに術者Opの眼前に位置する部材であり、ほぼ透明な材料から形成される。このため、HMD13を装着した術者Opは、HMD13を装着しない場合とほぼ同様の視野が得られる。また、このメガネ部26の外面26aは、HMD13を装着しやすいように一般的な頭部形状に合わせて湾曲しているものの、術者Opの視線に対しては略垂直になるように概ね平坦な形状に形成されている。一方、メガネ部26の内面26bは、術者Opの視線に対して所定角度に傾斜した傾斜面となっている。さらに、このメガネ部26の内面26bは、入射光を部分的に透過及び反射するいわゆるハーフミラーになっている。
【0026】
HMD制御部27は、メガネ部26の上部にほぼ一体となって配置され、術者OpがHMD13を装着したときに、術者Opの額に当接される。このHMD制御部27には、HMD13の動作を担う光学系やセンサ等の各素子が内蔵されており、これらの光学系や各素子によって、術者Opの視野内に超音波画像等を表示したり、術者Opの頭部の動きを検知する。また、HMD制御部27は、柔軟性のある通信ケーブル29によってプロセッサ装置16に接続されており、前述のHMD制御部27に内蔵された各素子の動作は、この通信ケーブル29を介してプロセッサ装置16から受信する制御信号に基づいて動作する。同様に、HMD制御部27に内蔵された撮像素子等が出力する信号は、通信ケーブル29を介してプロセッサ装置16に送信される。
【0027】
図3に示すように、超音波プローブ12は、術者Opが把持する把持部31と、超音波トランスデューサアレイ32が内蔵され、被検体Paの体表に当接される先端部33とからなり、通信ケーブル34によってプロセッサ装置16に接続される。超音波トランスデューサアレイ32は、超音波トランスデューサを2次元に配列したものであり、これらの各々の超音波トランスデューサによって超音波を発生させて被検体Pa内の走査エリアに向けて送信するとともに、各超音波トランスデューサで被検体Paからのエコーを受信する。
【0028】
また、超音波プローブ12には、穿刺針アダプタ36が付属されている。穿刺針アダプタ36は、穿刺針37(処置具)を挿抜自在に保持するとともに、超音波プローブ12に対して穿刺針37の刺入位置や刺入角度を固定するアダプタであり、超音波診断装置11を用いて穿刺を行う場合に先端部33に取り付けられる。なお、超音波プローブ12には、超音波プローブ12に対する穿刺針37の刺入位置及び刺入角度に応じて、複数種類の穿刺針アダプタ36が付属しており、穿刺する位置や腫瘍等の深さに応じて適宜選択して用いられる。
【0029】
図4に示すように、プロセッサ装置16は、送受信部41、超音波画像生成部42、表示制御部43、姿勢計測部46等、システムバス47で接続された各部からなる。
【0030】
送受信部41は、パルサ及びレシーバからなる。パルサ及びレシーバは、超音波トランスデューサアレイ32を構成する超音波トランスデューサの個数分だけ設けられており、送受信部41は、これらを用いて超音波プローブ12から超音波ビームを送信させたり、受信したエコーに応じて超音波プローブ12から出力される受信信号を受信する。例えば、送受信部41は、複数のパルサの中から、いくつかを選択して駆動する。また、このとき、送受信部41は、選択した全てのパルサを同時に駆動するのではなく、それぞれタイミングを遅延させながら選択したパルサを個々に駆動する。これにより、駆動されたパルサに対応する超音波トランスデューサからは超音波が発生するとともに、選択したパルサの駆動タイミングに応じた深さに収束する超音波ビームが送信される。また、送受信部41は、エコーを受信したときに各超音波トランスデューサから出力される受信信号を、各々対応したレシーバで受信し、これを増幅してA/D変換し、デジタル化する。こうしてデジタル化された受信信号は、超音波画像生成部42に入力される。また、送受信部41による超音波ビームの送受信の制御は、後述する主制御部51によって行われる。例えば、主制御部51は、超音波画像生成部42で要求される超音波画像等に応じて、パルサやレシーバの駆動タイミング等を変更することにより、送信する超音波ビームの様態が変更される。
【0031】
超音波画像生成部42は、送受信部41から入力される受信信号に対して直交検波処理を施し、各受信信号を複素ベースバンド化し、走査エリアについての3次元データを生成する。また、超音波画像生成部42は、1フレーム分の3次元データから、整相加算により受信フォーカス処理を施す等して、被検体内の様子を立体的に描出した3D超音波画像や、超音波ビームを送受信した走査エリアの所定断面について2D超音波画像(例えば、Bモード画像)を生成する。例えば、超音波画像生成部42は、いわゆる3D超音波プローブである超音波プローブ12が本体14に接続され、かつ、HMD13が可動状態であり、後述する姿勢センサ54から信号が出力されている場合に、2D超音波画像を生成する。また、後述する姿勢計測部46からの姿勢信号に基づいて、走査エリアのどの方向の断面について2D超音波画像を生成するかを切り替える。一方、いわゆる3D超音波プローブである超音波プローブ12が接続され可動状態であるときに、HMD13が接続されていなかったり、電源がONになっていない場合やHMD13(を装着した術者頭部)の動きに応じた制御(以下、ヘッドトラッキングという)がオフに設定された等で、HMD13が非動作状態の場合、HMD13によるヘッドトラッキングの設定がオフの場合には超音波画像生成部42は3D超音波画像を生成する。
【0032】
また、超音波画像生成部42は、走査エリアに対して方向が異なる複数の断面について2D超音波画像を生成する。こうして2D超音波画像を生成する断面の種類は予め設定され、超音波画像生成部42は、これらの断面の中から、後述するように術者Opの頭部の動きに応じて要求された断面の2D超音波画像を生成する。なお、こうして超音波画像生成部42が生成した超音波画像は、フレームメモリ48に一時的に記憶され、表示制御部43によって読み出される。
【0033】
表示制御部43は、フレームメモリ48から超音波画像生成部42で生成された超音波画像を読み出し、モニタ17及びHMD13に表示させる。このとき、表示制御部43は、被検者Paに関する情報や観察部位、日付や時刻、超音波診断装置11の設定の状態、送信する超音波の周波数やパワー、ROIを示す枠線、穿刺針の刺入をアシストするバイオプシーガイド、表示されている2D超音波画像の走査エリアに対する断面方向等の種々の情報や、設定メニュー等を、超音波画像とともにモニタ17及びHMD13に表示する。このとき、表示制御部43は、こうした超音波画像等をモニタ17の全画面に表示させる。一方、表示制御部43は、上述の超音波画像等からなる擬似的なモニタ画面を、術者Opの視野57内の部分的な領域(以下、ウィンドウという)に表示されるように、視野57内の位置座標やサイズを指定する。このように表示制御部43が指定するウィンドウの位置座標やサイズは、操作部18の操作によって予め定められる。
【0034】
姿勢計測部46は、後述する姿勢センサ54から入力される信号に基づいて、HMD13を装着した術者Opの頭部の動きを検出し、これを姿勢信号として超音波画像生成部42に入力する。こうして姿勢計測部46が出力する姿勢信号は、例えば、術者頭部の回転方向及び回転角度を示す。超音波画像生成部42では、この姿勢信号に基づいて、術者頭部が予め定められた方向に所定角度以上回転した場合に、生成する2D超音波画像を変更する。また、姿勢信号に含まれる術者頭部の回転方向及び回転角度を計測する基準は、HMD13を装着した術者Opが姿勢を調節した状態で操作部18からの設定入力することにより、任意に設定される。
【0035】
主制御部51は、プロセッサ装置16の各部とシステムバス47を介して接続されており、これら各部の動作を統括的に制御する。ROM52には、超音波診断装置11の動作を制御するための各種プログラムやデータが記憶されており、主制御部51は、ROM52から必要なプログラムやデータを読み出して、作業用メモリであるRAM53に展開し、読み出したプログラムを逐次処理する。また、主制御部51は、操作部18から操作入力信号が入力され、この入力信号に応じた動作を超音波診断装置11の各部に実行させる。さらに、超音波プローブ12やHMD13等の接続を検知するとともに、こうした超音波診断装置11の各部の接続状態や動作状態を必要箇所に通知する。例えば、主制御部51は、超音波プローブ12の接続をID(識別信号)の入力によって検知し、また、HMD13の接続を姿勢センサ54(後述)からの信号入力によって検知し、これらの接続状態及び動作状態を超音波画像生成部42に通知する。
【0036】
また、同じく図4に示すように、HMD制御部27は、姿勢センサ54と投影部56とを備える。姿勢センサ54は、HMD13を装着した術者Opの頭部の動きを検知するセンサであり、例えばジャイロセンサ等の角速度センサからなる。この姿勢センサ54は、HMD13を装着した術者Opの頭部の動きに応じた信号(例えば、角速度信号)を、姿勢計測部46に出力する。
【0037】
投影部56は、液晶表示素子と投影光学系(いずれも図示しない)から構成される。投影部56に備えられた液晶表示素子には、前述の表示制御部43によって、超音波画像や各種情報が前述のウィンドウに対応する範囲に表示される。投影光学系は、こうして液晶表示素子に表示されたウィンドウをメガネ部26の内面26bに向けて投影する。このとき、液晶表示素子からの光は、結像されず、メガネ部26の内面26bによって反射され、術者Opの目に入射する。これにより、術者Opは、超音波画像が表示されたウィンドウを視野57内に虚像として認識する。
【0038】
図5に示すように、HMD13を装着した術者Opは、HMD13を装着しない場合とほぼ同様の視野57を、メガネ部26を通して観察することができる。但し、HMD13を通して観察する視野57には、超音波画像等が表示されたウィンドウ61が所定位置に表示されるため、HMD13を介さない視野と比較すると、このウィンドウ61が表示される部分が欠損する。このため、HMD13を装着した術者Opは、例えば、超音波プローブ12を把持した自らの手元62が視野57の左側に、ウィンドウ61が視野57の右側に位置する方向に顔を向ける。一方、こうした状態で超音波診断装置11を使用することで、術者Opは、ほとんど視線を移動させずに、手元62と超音波画像(ウィンドウ61)をほぼ同時に観察することができる。なお、ウィンドウ61の表示位置やサイズは前述のように操作部18からの入力によって予め定められる。
【0039】
図6に示すように、HMD13が視野57に表示するウィンドウ61は、例えば、タイトルバー63と、このタイトルバー63の下方に設けられた画像表示エリア64とからなる。
【0040】
タイトルバー63は、術者OpのIDや、被検者Paの氏名、観察部位等が表示される。また、タイトルバー63は、ウィンドウ61の表示位置の変更に用いられる。HMD13からの視線入力によってウィンドウ61の表示位置を変更する場合、まず、術者Opがタイトルバー63のほぼ同じ箇所を注視する。これを視線検出部46が検知すると、表示制御部43は、タイトルバー63の色を反転させるとともに、術者Opの視線の移動に追従させてウィンドウ61の表示位置を移動させる。そして、術者Opが再びタイトルバー63を注視すると、表示制御部43は、タイトルバー63の色をもとの色に戻して、ウィンドウ61の表示位置を固定する。
【0041】
画像表示エリア64の中央から左側にかけて、超音波画像66が表示される。なお、ここでは画像表示エリア64に2D超音波画像(後述するC画像)が表示される例を示しているが、こうして画像表示エリア64に表示される超音波画像66は、超音波画像生成部42が生成した各種超音波画像がリアルタイムに更新される。このため、超音波画像生成部42が、後述するC画像,S画像,A画像等の2D超音波画像を生成した場合には、これらが画像表示エリア64に表示される。また、超音波画像生成部42が、3D超音波画像を生成した場合には、画像表示エリア64には3D超音波画像が表示される。また、超音波画像66の左辺には、被検者Pa内の深さを示すスケールが表示される。さらに、超音波画像66の右側には、日付や時刻、超音波診断装置11の設定の状態、送信する超音波の周波数やパワーや表示されている2D超音波画像の走査エリアに対する断面方向等の各種情報68が表示される。
【0042】
また、図7に示すように、超音波診断装置11は、2D超音波画像を生成,表示する場合、超音波プローブ12を基準として方向が予め定められた3種類の2D超音波画像(C画像71,S画像72,A画像73)のうちいずれかを選択的に生成,表示する。図7(A)に示すように,C画像71は、立体的な走査エリア74の中でも、超音波トランスデューサアレイ32の短手方向(y方向)に垂直なコロナル(Coronal)面76(以下、C面という)に沿った2D超音波画像である。また、C面76は、走査エリア74のy方向中央を通る面であり、前述の穿刺針アダプタ36を用いて穿刺針37を刺入する場合、穿刺針37はこのC面76に沿って刺入される。したがって、C画像71には、穿刺針37の陰影が線状に現れる。このC画像71は、2D超音波プローブを用いて超音波画像を生成,表示する場合の超音波画像に対応する。
【0043】
図7(B)に示すように、S画像72は、走査エリア74の中でも、超音波トランスデューサアレイ32の長手方向(x方向)に垂直なサジタル(Sagittal)面77(以下、S面という)に沿った2D超音波画像である。また、S面77は、走査エリア74のx方向中央を通る。このため、穿刺針アダプタ36を用いて穿刺針37を刺入する場合、穿刺針37がこのS面77に到達すると、S画像72には穿刺針37の陰影がほぼ点状に現れる。さらに、図7(C)に示すように、A画像73は、走査エリア74の中でも、超音波トランスデューサアレイ32の長手方向(x方向)及び短手方向(y方向)に平行なA(Axial)面78(以下、A面という)に沿った2D超音波画像である。また、A面78は、走査エリア74の中でも被検体Paの深さ方向(z方向)中央を通る面であり、穿刺針アダプタ36を用いて穿刺針37を刺入する場合、穿刺針37がA面78に到達すると、A画像73には穿刺針37の陰影がほぼ点状に現れる。
【0044】
なお、コロナル(Coronal)面,サジタル(Sagittal)面,アキシャル(Axial)面という語は、医療分野では通常、人体(被検体Pa)を基準として定められるが、本明細書中ではこれらの用語を、上述のように超音波プローブ12を基準として定める。
【0045】
同様に、図7(A)〜(C)に示すように、例えば走査エリア74のほぼ中央に腫瘍79がある場合、C画像71,S画像72,A画像73にはそれぞれ腫瘍79が映し出されるが、これらの各2D超音波画像71〜73には同じ腫瘍79の異なる断面の像が映し出される。このため、術者Opは、HMD13を用いたヘッドトラッキング制御により、これらの3種類の2D超音波画像71〜73を適宜切り替えてHMD13に表示させながら、穿刺針37の刺入経路や腫瘍79に対する刺入位置等を確認しながら穿刺を行う。
【0046】
上述の超音波診断装置11は、以下のように動作する。まず、超音波診断装置11を用いて超音波画像66を観察しながら診断や穿刺等の施術を行う場合、術者Opは超音波プローブ12を本体14に接続する。このとき、HMD13は本体14に接続しないでおくか、HMD13を本体14に接続しても非動作状態にしておくか、またはヘッドトラッキングの設定をオフに設定しておく。このとき、主制御部51は、超音波プローブ12の接続及び可動状態であること、さらにHMD13が非動作状態またはヘッドトラッキング制御の設定がオフであることを超音波画像生成部42に通知するため、超音波画像生成部42は、超音波プローブ12で得られた3次元データに基づいて3D超音波画像を生成する。このため、術者Opは、超音波プローブ12を被検体Paの先端部33を被検部位に当接させ、被検部位が立体的に描出された3D超音波画像をモニタ17またはHMD13で観察しながら、被検部位内にある腫瘍の位置や個数等を把握する。その後、術者Opは、HMD13を可動状態にし、ヘッドトラッキングの設定をオンにする。また、3D超音波画像による観察によって把握した腫瘍の位置等に応じて、超音波プローブ12を当接させる位置を調節するとともに、施術の妨げにならない位置にウィンドウ61が表示されるように、術者Opは、手元62を見ながら自身の姿勢を調節する。そして、術者Opはこの姿勢を維持したまま、操作部18を操作して、施術時に基準となる術者Opの姿勢(以下、基準姿勢という)を設定する。このとき、姿勢計測部46は、この設定が行われたときにHMD13から入力された姿勢信号に基づいて、HMD13(HMD13を装着した術者頭部)の回転方向及び回転角度を計測する基準に設定する。
【0047】
このように、事前の予備観察を終え、ヘッドトラッキングに関する設定を行うと、超音波プローブ12及びHMD13が可動状態であるため、超音波画像生成部42は超音波プローブ12で取得された3次元データに基づいて2D超音波画像を生成するようになる。このとき、図8(A)に示すように、術者Opが基準姿勢をとると、超音波画像生成部42はC画像71を生成する。このため、術者OpはC画像71を観察しながら、例えば穿刺針37を被験体Paに刺入する。また、術者Opが頭部を左右(水平)に回転させると、これに応じて姿勢計測部46は基準姿勢からのHMD13の回転方向及び回転角度を計測する。こうして姿勢計測部46で計測されたHMD13の回転方向が基準姿勢に対して左右いずれかであり、かつ、回転角度が±60度以上の場合、超音波画像生成部42は、生成する2D超音波画像をC画像71からS画像72に切り替える。一方、HMD13の回転方向が基準姿勢に対して左右いずれかであっても、回転角度が60度未満の場合には、超音波画像生成部42はC画像71の生成を継続する。このため、穿刺針37の刺入経路等を確認するためにS画像72を観察する必要がある場合、術者Opは、自身の頭部を左右いずれかに±60度以上回転させることで、S画像72を観察する。
【0048】
一方、上述のように左右いずれかに向いてS画像72を観察した後、頭部を左右に回転し、姿勢を基準姿勢に近づけると、その回転角度に応じて超音波画像生成部42は、S画像72またはC画像71を生成する。まず、基準姿勢からの回転角度が、±40度以上の場合、超音波画像生成部42は、S画像72を生成する。また、基準姿勢からの回転角度が、±40度未満になると、超音波画像生成部42は、生成する2D超音波画像をS画像72からC画像71に切り替える。したがって、前述のようにC画像71からS画像72に表示を切り替えるときには、基準姿勢からHMD13を±60度以上左右に回転させる必要があるが、ちょうどS画像72に切り替わる角度(±60度)から術者頭部が15度〜20度程度ぶれても、S画像72の表示が継続される。また、基準姿勢からの角度が±40度未満になると、超音波画像生成部42は生成する2D超音波画像をS画像72からC画像71に切り替える。このため、HMD13に表示される2D超音波画像が、C画像71からS画像72に表示が切り替わるときに、術者Opの頭部がわずかにぶれた場合でも、C画像71とS画像72で頻繁に表示が切り替わったりせずに、術者Opが求める2D超音波画像を安定して表示させることができる。
【0049】
また、上述のようにHMD13を装着した術者Opが頭部を左右に回転させることにより、HMD13に表示する2D超音波画像がC画像71とS画像72とで相互に切り替わるが、図9に示すように、術者Opが頭部を上下に回転させた場合や術者Opが身を乗り出した場合、HMD13に表示される2D超音波画像は、C画像71とA画像73とで相互に切り替わる。図9(A)に示すように術者Opが基準姿勢で手元62を観察している場合には前述と同様、HMD13にはC画像71が表示される。この状態から、図9(B)に示すように、術者Opが頭部を鉛直下方向に回転させると、この回転角度が基準姿勢に対して60度以上の場合に、超音波画像生成部42は、生成する2D超音波画像をC画像71からA画像73に切り替える。一方、このようにA画像73を表示させた後、術者Opが頭部を鉛直上向きに回転させ、この回転角度が基準姿勢に対して40度以上の場合には、超音波画像生成部42はA画像73の生成を継続する。また、術者Opが頭部を鉛直上向きに回転させ、その回転角度が基準姿勢に対して40度未満になると、超音波画像生成部42は、生成する2D超音波画像をA画像73からC画像71に切り替える。したがって、HMD13に表示させるC画像71からA画像73に切り替えるときには、基準姿勢からHMD13を60度以上鉛直下向きに回転させる必要があるが、ちょうどA画像73に切り替わる角度(±60度)から術者頭部が15度〜20度程度ぶれても、A画像73の表示が継続される。
【0050】
また、図9(C)に示すように、術者Opが身を乗り出し、手元62を視野57に入れながらも頭部を鉛直下向きに回転させた場合、その回転角度が60度以上であれば、超音波画像生成部42は生成する2D超音波画像をC画像71からA画像73に切り替える。また、こうして身を乗り出した姿勢から、再び元の基準姿勢に近づく方向に移動し、手元62を視野57に入れながら頭部が鉛直上向きに回転した場合、その回転角度が40度未満になると、超音波画像生成部42は、生成する2D超音波画像をA画像73からC画像71に切り替える。なお、図8及び図9で説明した切り替え以外の回転や移動がHMD13に生じた場合には、超音波がそう生成部42は、直前に生成していた2D超音波画像と同じものを生成し続ける。
【0051】
上述のように、超音波診断装置11は、3D超音波プローブ(超音波プローブ12)を用いて3次元データを取得するとともに、必要に応じてこの3次元データを取得した走査エリア74の複数の断面について選択的に2D超音波画像を生成し、表示する。また、こうした2D超音波画像を生成,表示するか否かは、HMD13の接続状態や動作状態,ヘッドトラッキングに関する設定等によって必要に応じて切り替え可能となっている。このため、3D超音波画像による観察が適切な施術前の広範囲な事前観察や、2D超音波画像による精査が求められる施術中等のワークフローで、各々に適した超音波画像を生成,表示させることができる。
【0052】
さらに、超音波診断装置11は、2D超音波画像を生成,表示するときに、この2D超音波画像の生成及び表示切り替えを、HMD13(を装着した術者Opの頭部)の回転方向及び回転角度に応じて切り替える。このため、術者Opは、HMD13を装着した状態で頭部を回転させるだけで、走査エリア74の所望の断面についての2D超音波画像を容易に観察することができ、超音波プローブ12と処置具によって両手がふさがった状態でも容易に所望の2D超音波画像を観察することができる。
【0053】
また、超音波診断装置11は、表示する2D超音波画像を、C画像71,S画像72,A画像73の3種類の2D超音波画像から選択する。このため、表示する2D超音波画像を視線に追従させて滑らかに切り替える場合と比較すると、少なくとも術者Opが一定の範囲内の姿勢であれば、必ずしもその姿勢を固定する必要がないため、穿刺等の施術を行う際に、超音波プローブ12や術者Op(HMD13)の姿勢が多少ぶれたとしても、穿刺針37等の処置具を見失い難い。
【0054】
なお、上述の実施形態では、基準姿勢でC画像71を表示し、HMD13を装着した術者Opが頭部を左右(水平)に回転させた場合に、表示する2D超音波画像をC画像71とS画像72とで切り替え、術者Opが頭部を上下(鉛直)に回転させた場合に、表示する2D超音波画像をC画像71とA画像73とで切り替える例を説明したが、以下では、HMD13の水平回転と鉛直回転を組み合わせた場合の表示例を説明する。
【0055】
例えば、基準姿勢から遠ざかる方向にHMD13の姿勢を変化させる往路回転の場合、図10(A)に示すように、領域Iは水平(左右)方向の回転角度が±60度未満、かつ、鉛直(上下)方向の回転角度が60度未満の領域であり、HMD13の姿勢がこの領域I内にあるときにはC画像71が表示される。また、領域II+及び領域II−は、水平方向の回転角度が±60度以上、かつ、鉛直方向の回転角度が60度以上の領域であり、HMD13の姿勢がこの領域II+及び領域II−内にあるときにはS画像72が表示される。同様に、領域IIIは、水平方向の回転角度が±60度未満、かつ、鉛直方向の回転角度が60度以上の領域であり、前述の通り、HMD13の姿勢がこの領域III内にある時にはA画像73が表示される。したがって、HMD13の姿勢がこれらの領域I,領域II±,領域III内にある時の動作は、上述の実施形態と同様である。一方、領域IV±は、水平方向の回転角が±60度以上、かつ、鉛直方向の回転角が60度以上の領域である。HMD13の姿勢がこの領域IV±内にある場合、上述の実施形態の例では直前に表示していた2D超音波画像を継続して表示するが、図10(A)に示す通り、HMD13の姿勢が領域II±からこの領域IV±に変化したときにはA画像73を表示し、HMD13の姿勢が領域IIIからこの領域IV±に変化したときにはS画像72を表示するようにしても良い。例えば、領域II±から領域IV±にHMD13の姿勢を変化させた場合、術者OpはS画像72を観察している状態から、頭部を下げ、あるいは身を乗り出し、手元62を覗き込もうとしているので、上述の実施形態のようにS画像72の表示を継続するよりも、図10(A)のように、A画像73を表示する方がより感覚的にマッチした2D超音波画像を表示させることができる。こうしたことは、HMD13の姿勢を領域IIIから領域IV±に変化させた場合も同様である。
【0056】
また、図10(B)に示すように、基準姿勢に近づく方向にHMD13の姿勢を変化させる復路回転の場合、各領域I’,II’±,III’,IV’±は、各領域の水平方向における回転角度の境界が±40度、鉛直方向における回転角度の境界が40度となっている以外は、前述と同様である。また、図10(B)に示す通り、前述とは逆に、HMD13の姿勢を、領域IV’±から領域III’または領域II’±内の姿勢に変化させたときには、各領域で定められた2D超音波画像を表示する。
【0057】
さらに、ここでは往路での領域IV±、及び復路での領域IV’±で表示する2D超音波画像として、S画像72及びA画像73を用いる例を説明したが、こうして往路の領域IV±、及び復路の領域IV’±で表示する2D超音波画像は、必ずしもC画像71,S画像72,A画像73から選択しなくても良い。例えば、図11(A)及び(B)に示すように、HMD13の姿勢が往路の領域IV±及び復路の領域IV’±内の姿勢となったときには、走査エリア74の対角方向に対応した対角画像81a,81bを超音波画像生成部42で生成し、これをHMD13に表示しても良い。特に、前述(図10)のように、領域IV±及び復路の領域IV’±で表示する対角画像は、より術者Opの感覚に合致するように、どの領域から変化してきたかを考慮して、前述の図10のように対角画像81a,81bを組み合わせて用いても良い。こうして、対角画像81a,81bを生成,表示することで、術者Opはより感覚的に所望の2D超音波画像を観察することができる。
【0058】
なお、上述の実施形態では、鉛直下向きを正として、HMD13を基準姿勢よりも下向きに回転させたときに、表示する2D超音波画像をC画像71からA画像73に切り替える例を説明したが、これに限らず、基準姿勢よりも上向きにHMD13の姿勢を回転させたときにも、上述の実施形態等と対称になるような境界条件で、C画像71とA画像73とで表示を切り替えるようにしても良い。
【0059】
なお、上述の実施形態では、HMD13に表示する超音波画像66は超音波画像生成部42によって生成された2D超音波画像を表示する例を説明したが、こうしてHMD13に表示する超音波画像66には、施術等に必要な情報を重畳したものであることが好ましい。例えば、穿刺針アダプタ36を用いることによって、被検体Paに対する穿刺針37の刺入位置及び刺入角度は定まるので、例えば、図12に示すように、超音波画像66(C画像71)内に重畳して、穿刺針37の刺入方向を示すバイオプシーガイド82を表示することが好ましい。また、バイオプシーガイド82は、少なくともC画像71に表示することが好ましい。
【0060】
なお、上述の実施形態では、穿刺等の施術時にHMD13に2D超音波画像を表示する例を説明したが、これに限らず、図13に示すように、3D超音波画像83を表示しても良い。このように、2D超音波画像を表示するか、3D超音波画像83を表示するかの選択は、施術の種類や術者Opの好みに応じて適宜設定変更できるようにしておくことが好ましい。また、3D超音波画像83をHMD13に表示する場合、上述の実施形態と同様に、HMD13を装着した術者Opの姿勢に応じて、3D超音波画像83を表示する向きを変更することが好ましい。さらに、このような、HMD13の姿勢に応じた3D超音波画像83を表示する向きの調節が不要な場合には、ヘッドトラッキング機能をオフに設定できるようにしておくことが好ましい。
【0061】
なお、上述の実施形態では、超音波トランスデューサアレイ32が超音波トランスデューサを長方形状に配列したものであり、走査エリア74が直方体状である例を説明したが、これに限らず、超音波トランスデューサが2次元に配列されていれば超音波トランスデューサ12として用いることができる。但し、超音波トランスデューサアレイ32が超音波トランスデューサを正方形状に平面に配列したものである場合、走査エリア74に対してC面76とS面77の区別は、上述の実施形態のように超音波トランスデューサアレイ32の方向性だけでは定められないので、超音波プローブ12の外形等に応じて予め定めておくことが好ましい。また、上述の実施形態では、超音波トランスデューサアレイ32は超音波トランスデューサを平面に配列した例を説明したが、2D超音波プローブでいうコンベックス型のように、超音波トランスデューサを配列する平面は湾曲していても良い。
【0062】
なお、上述の実施形態では、設定した姿勢を基準として、HMD13の姿勢が水平方向の回転角度±60度未満及び鉛直方向の回転角度60度未満でC画像71を表示し、水平方向の回転角度±60度以上でS画像72に表示を切り替え、鉛直方向の回転角度60度以上でA画像73に表示を切り替える例を説明した。また、上述の実施形態では、S画像72を表示している状態で、HMD13の水平方向の回転角度が±40度未満になったときにC画像71に表示を切り替え、A画像73を表示している状態で、HMD13の鉛直方向の回転角度が40度未満になったときにC画像71に表示を切り替える例を説明した。しかし、こうした2D超音波画像の表示切り替えの境界となるHMD13の回転角度(姿勢)は、上述の実施形態で説明した例に限らない。例えば、C画像71とS画像72との切り替えで水平方向にHMD13を切り替える角度が往路で±60度,復路で±40度に設定されている例を説明したが、これらの角度は施術の種類や術者Opの好み等に応じて任意に設定できることが好ましい。C画像71とA画像73との切り替えで鉛直方向にHMD13を切り替える角度についても同様である。また、例えば、上述の実施形態では、C画像71とS画像72との切り替えで水平方向にHMD13を回転させる角度(往路±60度,復路±40度)と、C画像71とA画像73との切り替えで鉛直方向にHMD13を回転させる角度(往路60度,復路40度)の大きさが共通であるが、施術の種類や術者Opのこの未踏に応じて、各々独立に、任意の角度に設定できることが好ましい。
【0063】
さらに、上述の実施形態では、HMD13の往路回転の場合に±60度(60度)、復路回転の場合に±40度(40度)でC画像71とS画像72(A画像73)との切り替え、往路回転と復路回転で表示する2D超音波画像を切り替える角度が異なる例を説明したが、2D超音波画像を切り替える角度はこの例に限らず、術者OpがよりHMD13の回転動作に対して高感度な2D超音波画像の表示切り替えを望む場合には、HMD13の往路回転と復路回転で同じ角度(例えば往路,復路とも45度)で2D超音波画像の表示を切り替えるようにしても良い。また、HMD13の回転に対する2D超音波画像の表示切り替え精度は、術者Opの好み等によって任意に設定できるようにしておくことが好ましい。なお、穿刺等の施術を行う場合、通常はC画像71を観察し、S画像72やA画像73を穿刺針37の刺入経路の確認等のために補助的に用いることが多く、必ずしも2D超音波画像の頻繁で高感度な切り替えを要しない。こうした場合には、上述の実施形態の例のように、HMD13の往路回転と復路回転とで2D超音波画像の表示を切り替える角度を異なる角度にし、かつ、往路でのC画像71の表示角度範囲(水平±60度,鉛直60度)を復路でのC画像71の表示角度範囲(水平±40度,鉛直40度)よりも大きくしておくことで、過度な表示切り替えによるちらつき等を抑えることが好ましい。また、上述の実施形態では、往路でのC画像71の表示角度範囲よりも復路のC画像71の表示角度範囲が大きい例を説明したが、逆に、往路でのC画像71の表示角度範囲が復路のC画像71の表示角度範囲を小さくしても良い。この場合、一度S画像72やA画像73を表示させると、S画像72やA画像73の表示が継続されやすくなり、術者Opは頭部を大きな角度に向け続けなくてもS画像72やA画像73を観察することができるようになり、S画像72やA画像73を観察することが多い施術等を行う場合に、術者Opの姿勢についての負担を軽減することができる。
【0064】
なお、上述の実施形態では、HMD13の回転方向及び回転角度に応じて生成,表示する2D超音波画像を切り替える例を説明したが、これに限らず、回転方向または回転角度のいずれか一方に応じて生成,表示する2D超音波画像を切り替えても良い。
【0065】
なお、上述の実施形態では、超音波診断装置11を用いて穿刺を行う場合に、穿刺針アダプタ36を用いるいわゆるプローブガイド法の例を説明したが、これに限らず、穿刺針アダプタ36を用いずに、術者Opの手技のみで穿刺を行ういわゆるフリーハンド法の場合にも超音波診断装置11を好適に用いることができる。また、上述の実施形態では、主として超音波診断装置11を穿刺に用いる例を説明したが、麻酔や各種手術等にも超音波診断装置11を好適に用いることができる。
【0066】
なお、上述の実施形態では、2D超音波画像としてC画像71,S画像72,A画像73の3種類のうちいずれかを生成,表示する例を説明したが、これに限らない。例えば、上述の実施形態では、C画像71は走査エリア74の中央を通る断面について2D超音波画像であるが、こうした超音波画像生成部42で生成する2D超音波画像は、必ずしも走査エリア74の中央を通る断面についてのものでなくても良い。したがって、C画像71は走査エリア74のy方向に垂直な断面であれば良く、走査エリア74のy方向に対して任意の位置の断面についての2D超音波画像を生成するようにしても良い。これは、S画像72やA画像73についても同様である。また、例えば、走査エリア74に対する方向性もC画像71,S画像72,A画像73のうちのいずれかの方向と平行である必要はなく、HMD13の水平回転や鉛直回転に対応して、対角画像81a,81bのように、走査エリア74に対して任意の角度や向きの断面についての2D超音波画像を生成するようにしても良い。さらに、こうした2D超音波画像を生成する走査エリア74の断面方向は、被検部位に対する超音波プローブ12の当接させやすさや術者Opの好み等に応じて任意に設定できるようにしておくことが好ましい。
【0067】
なお、上述の実施形態では、実際の視野57にウィンドウ61を投影するいわゆる透過型のHMD13の例を説明したが、これに限らず、非透過型のHMDも超音波画像診断装置11に好適に用いることができる。非透過型のHMDを用いる場合、術者Opの視線の方向に合わせて、術者Opの視野57を撮影した画像に、超音波画像66等を表示したウィンドウ61を重畳してHMDに表示すれば良い。
【符号の説明】
【0068】
11 超音波診断装置
12 超音波プローブ
13 ヘッドマウントディスプレイ(HMD)
14 本体
16 プロセッサ装置
17 モニタ
18 操作部
26 メガネ部
27 HMD制御部
28 固定バンド
29,34 通信ケーブル
31 把持部
32 超音波トランスデューサアレイ
33 先端部
36 穿刺針アダプタ
37 穿刺針
41 送受信部
42 超音波画像生成部
43 表示制御部
44 穿刺針検出部
46 姿勢計測部
47 システムバス
48 フレームメモリ
49 DSP
51 主制御部
54 姿勢センサ
56 投影部
57 視野
61 ウィンドウ
62 手元
63 タイトルバー
64 画像表示エリア
66 超音波画像
71 C画像
72 S画像
73 A画像
74 走査エリア
76 コロナル面
77 サジタル面
78 アキシャル面
79 腫瘍
81a,81b 対角画像
82 バイオプシーガイド
83 3D超音波画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受信する超音波トランスデューサが2次元に配列され、被検体内の立体的な領域に前記超音波を走査する超音波プローブと、
前記超音波トランスデューサが前記被検体内からのエコーを受信して出力する受信信号に基づいて、前記被検体の立体的な領域の所定断面について断層画像を生成する断層画像生成手段と、
術者の頭部に装着され、前記術者の頭部の動きに応じた信号を出力する姿勢検知手段と、前記術者の視野に少なくとも前記断層画像を投影する投影手段と、を有するヘッドマウントディスプレイと、
前記姿勢検知手段から出力される信号に基づいて、予め定められた前記ヘッドマウントディスプレイの姿勢を基準として前記ヘッドマウントディスプレイを装着した前記術者の頭部の回転方向及び回転角度を計測する回転計測手段と、
を備え、
前記断層画像を生成する前記所定断面は予め複数種類に定められ、前記回転計測手段によって計測された前記回転方向及び前記回転角度に応じて前記投影手段に投影される前記断層画像が前記複数種類の前記断層画像のなかで切り替わることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記断層画像を生成する前記所定断面は、少なくとも3種類定められ、前記ヘッドマウントディスプレイが前記基準となる姿勢の場合と、前記ヘッドマウントディスプレイが水平に回転された場合と、前記ヘッドマウントディスプレイが鉛直に回転された場合とで、各々異なることを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記投影手段に投影される前記断層画像が切り替わる前記回転角度が、前記ヘッドマウントディスプレイの姿勢が前記基準となる姿勢から遠ざかる向きに回転される往路回転と、前記基準となる姿勢に近づく向きに回転される復路回転とで異なることを特徴とする請求項1または2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記投影手段に投影される前記断層画像が切り替わる前記回転角度が、前記往路回転時よりも前記復路回転時で小さいことを特徴とする請求項3記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記投影手段に投影される前記断層画像が切り替わる前記回転角度が可変であることを特徴とする請求項1ないし4いずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項6】
複数種類の前記断層画像のうち、少なくとも1種類の前記断層画像に穿刺針の刺入方向を示すガイドラインが重畳表示されることを特徴とする請求項1ないし5いずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記断層画像生成手段は、前記超音波プローブと前記ヘッドマウントディスプレイがともに可動状態の時に前記断層画像を生成することを特徴とする請求項1ないし6いずれかに記載の超音波診断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−206281(P2011−206281A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77167(P2010−77167)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】