説明

超音波診断装置

【課題】ドプラ変移周波数スペクトル表示における流速が高い成分の見えにくさの改善。
【解決手段】FFT解析器24から出力されるエコー信号のドプラ変移周波数のスペクトルは、Log変換器26にて対数増幅され、ダイナミックレンジ調整部30に入力される。ダイナミックレンジ調整部30は、Log変換器26から入力されるドプラスペクトルの各ドプラ変移周波数成分の信号強度(輝度)を、当該成分のドプラ変移周波数に対応するダイナミックレンジ設定値を用いて変換する。このとき、ダイナミックレンジ調整部30は、ドプラ変移周波数が大きくなるほど、ダイナミックレンジが小さくなる関係(マップ)を用いて、そのドプラ変移周波数に対応するダイナミックレンジを求める。これにより、ドプラ変移周波数(流速)が大きくなって信号が小さくなると、ダイナミックレンジが狭まることで、信号とノイズとの輝度の差が広がる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特にドプラ変移周波数の表示に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波診断装置における連続波ドプラ法やパルスドプラ法による測定結果のスペクトル表示では、表示範囲全体(言い換えれば、ドプラ変移周波数すなわち速度の範囲全体)で表示コントラストが一定である。診断対象部位(臓器など)や超音波探触子の種類に応じて表示コントラストが切り替えられるものもあるが、この場合も、診断部位や超音波探触子により決まる一律のコントラストで表示範囲全体のスペクトルが表示される。
【0003】
一方、Bモード表示では、エコーの深さなどに応じて表示のダイナミックレンジを調整する技術が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、Bモード画像の表示ダイナミックレンジを、深さ方向又は横(走査角)方向について可変する方法が開示されている。この方法では、対数圧縮マップの傾きと切片を深さや走査角に応じて変える。例えば深さ方向に深くなるほど、エコー信号のS/N比(信号・ノイズ比)の改善のために、表示のダイナミックレンジを狭めている。
【0005】
また、特許文献2には、Bフロー(Bモード+カラードプラ)画像表示において、Bフロー値を表示画素値に変換する特性曲線の傾きを変えることで、ダイナミックレンジを変える方法が開示されている。特許文献2の方法では、特性曲線の傾きを、操作者の走査に応じて変えており、Bフローモードが選択されると、Bモードよりもダイナミックレンジを狭くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−192275号公報
【特許文献2】特開2004−129967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、同一位置の血流を観察した場合、血流の速度が高速であるほど反射信号の強度が小さいので、連続波ドプラ法やパルスドプラ法では、高速な血流成分ほど信号強度が低くなり、このことが表示上での輝度の低下に繋がっている。しかし、連続波ドプラ法やパルスドプラ法での診断において重要なのは一般に最高流速部分等の流速が高い部分であり、従来装置では、そのような流速が高い部分の画像が、輝度の低さにより見えにくくなっていた。これに対する対策として、受信信号のゲイン(増幅率)を増大させることが考えられるが、この方法ではノイズも同じだけ増幅されるので、信号部分の見やすさは余り改善されない。以上、高速血流の場合の問題を例示したが、そのような場合以外にも、受信信号のゲインの調整では、信号部分の見やすさ(言い換えれば信号・ノイズ比)が改善されない場合があり得る。
【0008】
本発明は、連続波ドプラ法やパルスドプラ法などにおけるドプラ変移周波数のスペクトル表示において、受信信号のゲインの調整では改善できない信号成分の見えにくさを改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる超音波診断装置は、超音波エコー信号からドプラ変移周波数のスペクトルを算出するスペクトル算出手段と、前記スペクトルにおけるドプラ変移周波数成分の周波数に応じて、前記スペクトルにおける各ドプラ変移周波数成分の表示ダイナミックレンジを選択するダイナミックレンジ選択手段と、前記スペクトルの各ドプラ変移周波数成分を、前記ダイナミックレンジ選択手段で選択された表示ダイナミックレンジで表示する表示手段と、を備える。
【0010】
一つの態様では、前記ダイナミックレンジ選択手段は、前記スペクトルにおけるドプラ変移周波数成分の周波数が大きくなるほど当該成分を表示する場合の表示ダイナミックレンジが小さくなる対応関係に従い、前記スペクトルにおける各ドプラ変移周波数成分の表示ダイナミックレンジを選択する。
【0011】
別の態様では、超音波診断装置は、前記スペクトルの各ドプラ変移周波数成分のゲインを調整するゲイン調整手段、を更に備え、前記表示手段は、前記ゲイン調整手段によるゲインの調整と、前記ダイナミックレンジ選択手段で選択された表示ダイナミックレンジと、の両方を組み合わせて前記スペクトルの各ドプラ変移周波数成分に適用した結果を表示する。
【0012】
更なる態様では、超音波診断装置は、前記表示手段において選択されている前記ドプラ変移周波数成分の表示範囲の情報を取得する取得手段、を更に備え、前記ダイナミックレンジ選択手段は、前記対応関係を、前記表示手段において選択可能な前記ドプラ変移周波数成分の表示範囲ごとに記憶しており、前記取得手段が取得した表示範囲に対応する前記対応関係に従って、前記ドプラ変移周波数成分の周波数から、当該成分を表示するときの表示ダイナミックレンジを求める。
【0013】
別の態様では、超音波診断装置は、前記超音波診断装置にて使用されている超音波探触子の種類を取得する取得手段、を更に備え、前記ダイナミックレンジ選択手段は、前記対応関係を超音波探触子の種類ごとに記憶しており、前記取得手段が取得した超音波探触子の種類に対応する前記対応関係を用いて、前記ドプラ変移周波数成分の周波数から、当該成分を表示するときの表示ダイナミックレンジを求める。
【0014】
更に別の態様では、超音波診断装置は、前記超音波診断装置に指定された診断対象部位の情報を取得する取得手段、を更に備え、前記ダイナミックレンジ選択手段は、前記対応関係を前記診断対象部位ごとに記憶しており、前記取得手段が取得した診断部位に対応する対応づけ情報を用いて、前記ドプラ変移周波数成分の周波数から、当該成分を表示するときの表示ダイナミックレンジを求める。
【0015】
更に別の態様では、超音波診断装置は、前記超音波診断装置に指定されたドプラ測定方式の種類の情報を取得する取得手段、を更に備え、前記ダイナミックレンジ選択手段は、前記対応関係を前記ドプラ測定方式の種類ごとに記憶しており、前記取得手段が取得したドプラ測定方式の種類に対応する対応づけ情報を用いて、前記ドプラ変移周波数成分の周波数から、当該成分を表示するときの表示ダイナミックレンジを求める。
【0016】
更に別の態様では、超音波診断装置は、前記対応関係をマニュアル設定するためのマニュアル設定手段を備える。
【0017】
更なる態様では、超音波診断装置は、各診断深さについての受信信号のゲインを設定するためのSTC設定手段を備え、前記マニュアル設定手段は、前記対応関係をマニュアル設定する場合、前記STC設定手段に対するユーザの設定入力を、各診断深さを各ドプラ変移周波数と、ゲインを表示ダイナミックレンジと、それぞれ読み替えて解釈することで、前記対応関係を求める。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ドプラ変移周波数(流速に対応)が大きいほど、表示ダイナミックレンジを狭めることで、ドプラ変移周波数のスペクトル表示において、ドプラ変移周波数が大きい成分の信号とノイズとの輝度差を広げることができ、信号とノイズとの視覚的な弁別が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態の超音波診断装置におけるスペクトルドプラ表示のための表示処理系の一例を示す機能ブロック図である。
【図2】スペクトルドプラ表示画像を模式的に示す図である。
【図3】ドプラ変移周波数の大きさに応じたダイナミックレンジを示す変換マップ(関数)の一例を模式的に示す図である。
【図4】ドプラ変移周波数の大きさに応じて選択されたダイナミックレンジによる、ダイナミックレンジ調整部の入出力特性の変化を説明するための図である。
【図5】ドプラ変移周波数に応じてダイナミックレンジとゲインの両方を調整することの効果を説明するための図である。
【図6】流速(ドプラ変移周波数)レンジごとの変換マップの例を示す図である。
【図7】変形例の表示処理系を示す機能ブロック図である。
【図8】STCゲイン設定部をダイナミックレンジ変換マップの設定に用いる方式を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1を用いて、実施形態の超音波診断装置におけるスペクトルドプラ表示のための表示処理系の一例を説明する。この図では、送信信号処理系や、スペクトルドプラ表示以外の表示(例えばBモードやカラー血流イメージング)のための受信信号処理・表示処理系は省略している。すなわち、図1の装置は、連続波ドプラ法又はパルスドプラ法により、被検体内の血流等の流れのドプラ変移(シフト)周波数のスペクトルを求めて表示する。ドプラ変移周波数は、流れの速さ(流速)を表している。
【0021】
超音波振動子10は、被検体内からの超音波エコーを電気信号(受信信号)に変換する。図では振動子10を1つのみ示したが、アレイ探触子の場合、多数の振動子10が存在し、これらにより超音波ビームを形成することができる。受信アンプ12は、この受信信号を増幅する。ミキサ14I及び14Qは、発振器16から出力される参照周波数信号と、これを90°移相器18で90°移相した信号とにより、受信信号を直交検波する。なお、参照周波数信号は、送信器(図示省略)にも供給され、送信超音波の生成に用いられている。
【0022】
ミキサ14I及び14Qから出力される検波結果のI信号及びQ信号は、それぞれA/D変換器20I及び20Qでデジタル信号に変換され、整相加算器(ビームフォーマー)22に入力される。整相加算器22は、各振動子10のデジタル化されたI信号及びQ信号を、位相を合わせて加算することで受信ビームを形成し、受信ビームについてのデジタル受信信号を生成する。FFT解析器24は、このデジタル受信信号に対して高速フーリエ変換(FFT)演算やフィルタ処理などを行うことで、その受信信号のドプラ変移周波数のスペクトルを計算する。Log変換器26は、ドプラ変移周波数のスペクトルの信号レベルを対数増幅することで、表示装置42のダイナミックレンジに合った信号レベルに変換する。
【0023】
以上に説明した各ユニットとしては、従来周知のものを用いればよい。
【0024】
本実施形態の装置は、このような従来周知の構成に加えて、ダイナミックレンジ調整部30を備える。ダイナミックレンジ調整部30は、Log変換器26から入力される信号(ドプラ変移周波数のスペクトル)の信号強度のダイナミックレンジ(すなわち、表示装置42で表示されるとき表示ダイナミックレンジ)を、ドプラ変移周波数の大きさに応じて調整する。特に、ドプラ変移周波数が大きくなるほど、表示ダイナミックレンジが小さくなるように調整する。この表示ダイナミックレンジの調整については、あとで更に詳しく説明する。
【0025】
ダイナミックレンジ調整部30にて調整されたスペクトル信号は、表示画像処理部40にて他の表示モード(例えばBモードやカラー血流イメージング)の画像と合成され、表示装置42に表示される。表示画像処理部40及び表示装置42は、スペクトルの強度に応じた輝度でスペクトルを表示している。すなわち、スペクトルにおけるある周波数成分は、その周波数成分の強度に応じた輝度で表示される。
【0026】
図2に、従来のスペクトルドプラ表示画像の一例を示す。この例に示すように、スペクトルドプラ表示の縦軸は流速(ドプラ変移周波数に対応)、横軸は時間であり、各時刻にて計算されたドプラ変移周波数スペクトルを時系列順に表示していく。なお、流速には超音波振動子に近づく方向の流速と遠ざかる方向の流速とがあり、図示例では近づく方向の流速を+(プラス)、遠ざかる方向の流速を−(マイナス)で示している。また、図示例では、流速の表示レンジ(範囲)が、+5.3m/s〜−5.3m/sとなっている。流速の表示レンジは、ユーザからの指定、或いは探触子の種類などに応じて可変である。
【0027】
従来のスペクトルドプラ表示では、流速の表示レンジ全域にわたって表示ダイナミックレンジ(言い換えればコントラスト)を一定にしている。したがって、血流が高速になるほど一般に血流からのエコーの強度が小さくなることから、スペクトル表示における高流速成分の輝度が小さくなる。図2の例では、遠ざかる方向(−方向)に高い流速が出ている部分があるが、その部分の輝度が低速部分よりも小さくなっていることが分かるであろう。輝度が低くなると、ノイズとの輝度差が小さくなる。
【0028】
そこで、本実施形態は、前述のように、ダイナミックレンジ調整部30にて、ドプラ変移周波数(流速)の大きくなるほど表示ダイナミックレンジを狭めることで、スペクトルの高流速部分のノイズとの輝度差を大きくするようにしている。表示対象の入力信号Dinについて「表示ダイナミックレンジを狭める」とは、その入力信号Dinのビット幅で表現できる信号強度の幅のうち、「表示画像の画素値(すなわちダイナミックレンジ調整部の出力信号Dout)のビット幅で表現できる範囲に割り当てる幅」を狭めることである。
【0029】
本実施形態のダイナミックレンジ調整の考え方は、ダイナミックレンジの一部しか使っていない入力信号Dinを、ダイナミックレンジの大部分を使った出力信号Doutへと変換するというものである。
【0030】
すなわち、ダイナミックレンジ調整部30に対するLog変換部26からの入力信号Dinは、スペクトルのうちドプラ変移周波数(すなわち流速)が小さい範囲では、(エコーが強いなどの理由から)当該周波数の信号成分自体の強度が高いので、信号強度が大きい。入力信号Dinのダイナミックレンジ(この場合は、当該信号を表すデータのビット幅)は、このような低速部分の大きな信号強度を表現できるように定められている。したがって、信号強度がそもそも小さい高速(高ドプラ変移周波数)の成分は、入力信号Dinが表現できる信号強度の範囲のうち、低い方の一部分を占めるに過ぎなくなる。ドプラ変移周波数が同じでも、実際のエコー信号から求められる当該ドプラ変移周波数の成分の強度は諸条件によりばらつくが、傾向としては、ドプラ変移周波数の大きさが大きくなるほどスペクトルにおける当該成分の強度は小さくなる。このように、強度が小さい成分を小さいままで輝度に変換していたのではノイズとの差が小さくなってしまうので、本実施形態では、そのように強度の小さい高ドプラ変移周波数の成分については、表示ダイナミックレンジを小さくして、輝度が高くなるようにするのである。このように、入力信号Dinのうち当該ドプラ変移周波数の信号強度が(実際の信号において統計的に)存在する範囲(これはDinの全ビット幅のうちの下側の一部分)を、ダイナミックレンジ調整部30により、出力信号Doutのビット幅のほぼ全範囲にマッピングするというのが、ダイナミックレンジ調整部30の働きである。
【0031】
ダイナミックレンジ調整部30が行うダイナミックレンジ変換の演算は、例えば次式(1)で表されるものである。
【0032】
Dout = 2×Din/ダイナミックレンジ設定値 ・・・(1)
【0033】
ここに例示した式(1)は、ダイナミックレンジ調整部30に対する入力信号Dinと出力信号Doutとが同じビット幅(例えば8ビットなど)である場合の一例である。2における正の整数nは、出力信号Doutのビット幅である。例えば、信号Doutのビット幅が8ビットの場合、その信号は0〜255の256段階の信号強度(輝度)を表現することができる。「ダイナミックレンジ設定値」は、入力信号Dinの全信号強度範囲(当該信号のビット幅)のうち、出力信号Doutの全信号強度範囲(ビット幅)に割り当てる幅(これが「表示ダイナミックレンジ」)を規定する値である。上述の式では、このダイナミックレンジ設定値が分母なので、この設定値が小さいほど、同じ入力信号Dinに対する出力信号Doutの値が大きくなる(すなわち輝度が高くなる)。
【0034】
ダイナミックレンジ設定値は、ドプラ変移周波数ごとに変わってくる。例えば、あるドプラ変移周波数に対応するダイナミックレンジ設定値は、入力信号Dinにおけるそのドプラ変移周波数の信号成分の強度の統計的な最大値に基づき(例えばその最大値より少し大きい値に)定めればよい。このようにすれば、入力信号Dinにおけるあるドプラ変移周波数成分の信号の最大値は、出力信号Doutで表現可能な最大値近傍にマッピングされることになる。
【0035】
以上のような表示ダイナミックレンジの調整のために、ダイナミックレンジ調整部30は、例えば図3に例示するようなマップ(関数)110の情報を有している。このマップ110では、横軸がドプラ変移周波数fdの絶対値(大きさ)、縦軸がダイナミックレンジ設定値を示している。図示のように、マップ110では、ドプラ変移周波数が大きくなるほどダイナミックレンジ設定値が小さくなっている。これは、上述のように、ドプラ変移周波数が大きくなるほど小さくなる信号強度を、出力信号Doutのビット幅のほぼ全域にマッピングするためである。この例では、ダイナミックレンジ調整部30は、Log変換器26から入力される入力信号Dinのスペクトルにおける、あるドプラ変移周波数成分のためのダイナミックレンジ設定値を求めるには、当該ドプラ変移周波数(横軸の値)に対応するマップ110上の点を求め、その点に対応するダイナミックレンジ設定値(縦軸の値)を読み出せばよい。なお、図3では、直感的に理解しやすいように、マップ110をグラフで示したが、実際のコンピュータシステムに実装する場合は、このマップ110は、ドプラ変移周波数ごとに、当該周波数に対応するダイナミックレンジ設定値を登録した表(テーブル)形式の情報などでよい。
【0036】
例えば、図3のマップ110において、比較的小さいドプラ変移周波数fd1と比較的大きいドプラ変移周波数fd2を例にとると、後者の方がダイナミックレンジ設定値が小さい。したがって、上述の式(1)に従うとするならば、ダイナミックレンジ調整部30の入出力特性は、図4に示すようになる。すなわち、小さいドプラ変移周波数fd1の入出力特性112よりも、大きいドプラ変移周波数fd2の入出力特性の方が傾きが大きい。すなわち、大きいドプラ変移周波数fd2の入出力特性114の方が、出力信号Doutのビット幅で表現可能な最大値(MAX)に達する入力信号Dinの値Din2が(小さいfd1についてのDin1よりも)小さい。大きいドプラ変移周波数fd2では信号強度そのものが小さいので、入力信号Dinの成分の強度がDin2を超えることはほとんどない。したがって、このような入出力特性114でも、入力信号Dinを飽和させることなく、出力信号Doutのビット幅の有効利用が図られる。
【0037】
式(1)に従った表示ダイナミックレンジの調整では、ダイナミックレンジを小さくした場合、(ノイズに対する意味での)信号のレベル(強度)のみならず、ノイズのレベルも大きくなる。しかし、信号もノイズも比例関係で大きくなるので、信号とノイズとのレベル差は、入力信号Dinの場合よりも、出力信号Doutの場合の方が大きくなる。これにより、信号とノイズの視覚的な弁別がしやすくなる。
【0038】
マップにおけるダイナミックレンジ値の最大値は、例えば、ダイナミックレンジ調整部30の出力する調整後の信号Doutのビット幅で表現可能な最大値である。また、マップにおけるダイナミックレンジ値の最小値は、例えばドプラ変移周波数(流速)の最大値における、スペクトルの当該周波数の成分の統計的な最大値に応じた値(例えば、Doutのビット幅で表現可能な最大値の10%程度)である。
【0039】
マップ110は、例えば、上述のように、ドプラ変移周波数(の大きさ)ごとに、当該ドプラ変移周波数についての入力信号Dinの実際の信号強度の存在範囲を、出力信号Doutの信号強度の範囲(ビット幅)全体にマッピングできるようなダイナミックレンジ設定値を実験などで求めることで、作成すればよい。また、後述するように、マップ110は、ユーザが作成(または既存のマップを修正)できるようにしてもよい。例えば、ユーザ(例えば医師)が、ドプラスペクトル表示の画面を見ながら、各周波数成分(流速)についてのダイナミックレンジ設定値を調整する(例えば、暗い部分を明るくするなど)ことが考えられる。
【0040】
このように、この実施形態では、スペクトルの各ドプラ変移周波数成分の信号(入力信号Din)ごとに、当該ドプラ変移周波数に対応するダイナミックレンジ設定値をマップ110から読み出す。そして、読み出したダイナミックレンジ設定値を式(1)に適用することで、その入力信号Dinに対応するダイナミックレンジ調整後の出力信号Doutを計算する。このように、スペクトルのドプラ変移周波数成分ごとに表示ダイナミックレンジを個別に調整することで、スペクトル表示における反射信号強度の低い高流速成分の信号・ノイズ比を改善することができる。
【0041】
なお、上述の式(1)は、ダイナミックレンジ調整のための関係式のあくまで一例に過ぎない。他の式を用いてももちろんよい。
【0042】
図3の例では、マップが示すドプラ変移周波数とダイナミックレンジの関係は直線であったが、これは一例に過ぎない。マップは曲線状としてもよい。
【0043】
なお、以上の例は、ドプラ変移周波数に応じて表示ダイナミックレンジのみを変更する例である。別の例として、ドプラ変移周波数に応じて、表示ダイナミックレンジだけでなく、信号のゲインを変えるようにしてもよい。この場合、信号のゲインは、ドプラ変移周波数が大きくなるほど大きくする。これは、ドプラ変移周波数が大きくなるほど信号強度が小さくなるからである。信号のゲインの調整は、入力信号Dinのデータに対し、例えばビットシフトを行うことで行ってもよい。例えば、ゲインを増大させる場合は、入力信号Dinのデータ(ビット列)を左シフトすることで、入力信号を大きくすることができる。もちろん、ビットシフトは一例に過ぎず、入力信号に対して1以上の値を乗算するなどといった他の方法でも、ゲインを増大させることができる(なお、kビット左シフトすることは信号を2倍にすることに相当する)。この場合、乗算する係数が、ゲインに相当する。ドプラ変移周波数に応じた適切なゲインは、実験などにより求めておき、マップ化しておけばよい。上述したビットシフトによる信号のゲイン調整は、例えば信号のLog変換前(例えばLog変換器26の直前)で行うことが好適である。
【0044】
ここで、ゲインを大きくすると、信号だけでなくノイズも大きくなるため、信号とノイズのレベル差はゲインを変えても基本的には変わらない。したがって、ゲインを増大させるだけでは、高流速の成分を視覚的にノイズから弁別しやすくすることには直結しない。したがって、ゲイン調整を上述のダイナミックレンジ調整と併用することが望ましい。
【0045】
ドプラ変移周波数に応じて表示ダイナミックレンジとゲインの両方を調整する場合、一例としては、まず入力信号Dinのゲインを上述のようにドプラ変移周波数に応じて調整した後、そのゲイン調整後の信号に対してダイナミックレンジ調整の演算を行って、出力信号Doutを求めることが考えられる。もちろん、これは一例に過ぎず、ゲイン調整とダイナミックレンジ調整の順序は逆であってもよい。
【0046】
このようなダイナミックレンジ調整とゲイン調整の併用方式の利点を、図5を用いて説明する。なお、この併用方式での調整処理は、例えば図1の装置におけるダイナミックレンジ調整部30にて行われる。図5には、ドプラ変移周波数が(a)小さい場合(低流速)と(b)大きい場合(高流速)の、入力信号Dinの信号レベル(強度)に対する表示ダイナミックレンジ120,122,124の関係が示される。図中の「最大レンジ」は、入力信号Dinの信号レベル(強度)の取り得る最大範囲である。(a)ドプラ変移周波数が小さいケースでは、表示ダイナミックレンジ120を図示のような範囲に設定しておくことで、ノイズレベルが出力信号Doutの50階調目、信号レベルが200階調目になったとする(最大255階調であるとする)。
【0047】
一方、(b)ドプラ変移周波数が大きくなった場合、入力信号Dinの信号レベル自体が、変移周波数が低い場合よりも小さくなる。この場合に、信号のゲインのみを増大させる(ダイナミックレンジの幅は維持)と、ダイナミックレンジ122の幅は変移周波数が低い場合のダイナミックレンジ120の幅と同じであるが、ダイナミックレンジ122のカバーする信号レベルの範囲が下がることになる。図示は省略したが、(b)の場合において、ダイナミックレンジもゲインも調整しない場合、出力信号Doutにおける信号レベルは(a)の場合よりも下がって70階調目になるとする。ただし、この場合も、ノイズそのものの大きさは(a)の場合と変わらないので、出力信号Doutにおけるノイズレベルは(a)の場合と同じく50階調目である。これに対し、ゲインのみ調整した場合のダイナミックレンジ122では、ゲインが50階調分加算されるので、出力信号Doutにおける信号レベルは120階調目になり信号の輝度が高まるが、ノイズレベルも同じだけ上昇して100階調目になるので、信号とノイズの輝度差は、ゲイン調整をしてもしなくても変わらない。
【0048】
これに対して、(b)ドプラ変移周波数が大きくなった場合に、ゲインの増大とダイナミックレンジの縮小とを併用すると、図5に示すように、ダイナミックレンジ124のようになる。このダイナミックレンジ124の幅に対応する入力信号Dinの範囲が、出力信号Doutのビット幅全体にマッピングされることになる。これにより、例えばノイズレベルは出力信号Doutの50階調目となり、信号レベルは150階調目になる。このように、ゲインの増大とダイナミックレンジの縮小の併用により、信号とノイズの輝度差(階調差)を大きくすることができる。
【0049】
なお、図5を用いて説明した例では、ドプラ変移周波数が大きくなるほどゲインを増大させ且つダイナミックレンジを縮小したが、これ以外の制御も考えられる。例えば、ドプラ変移周波数が大きくなるほどゲインを低下させ且つダイナミックレンジを縮小する場合も考えられる。例えば、被検体の深部になるほど帯域を広くとる場合、それに応じて深部ほどノイズが大きくなるので、表示輝度を深さによらずほぼ一定に保つために、ゲインを下げる場合がある。このような深部におけるゲイン低減と連動して、ダイナミックレンジを縮小してもよい。また、ノイズが一定の場合にダイナミックレンジを小さくすると、上記(1)式の分母が小さくなるため、出力信号値が増大し、ノイズレベルも大きくなる。このような状況で、表示におけるノイズレベルをほぼ一定に保つために、ゲインを低減させる場合もあり得る。
【0050】
さて、超音波診断装置における連続波ドプラモード又はパルスドプラモードでのスペクトル表示では、表示する流速レンジ(図2における縦軸方向の表示範囲に対応づけられた流速の範囲)が切り替え可能になっていることが一般的である。この流速レンジは、手動又は(信号の存在する範囲を自動検出するなどの方法により)自動で切り替え可能である。ここで、1つの例として、ドプラ変移周波数から表示ダイナミックレンジの設定値を求めるマップ情報(図2参照)を、その流速レンジごとに用意することも考えられる。図6に示す例では、流速レンジ1,2,3,4のそれぞれについて、マップ130,132,134,136を用意する。この例では、流速レンジの番号が大きくなるほど、流速レンジの幅(すなわちカバーする最大流速、すなわち最大ドプラ変移周波数)が大きくなる。流速レンジ2,3,4に対応するマップ132,134,136では、流速(ドプラ変移周波数)が小さい範囲では、流速が変わってもダイナミックレンジが変化しない。これは、これまで説明したように低流速域では十分な信号輝度がある他に、それらの流速レンジの番号が大きくなるほどより高い流速域をカバーすることとなり、ユーザの注目は高い流速成分に移るからである。すなわち、このような場合、高流速部分の信号・ノイズ比を高めることの必要性は高いが、低流速部分の信号・ノイズ比は高くなくてもよいからである。
【0051】
図6では、各マップ132,134,136は折れ線状である。これらの折れ線マップから単純にドプラ変移周波数に対応するダイナミックレンジを読み出してもよいが、別の例として、マップ上での、その注目するドプラ変移周波数の前後所定幅以内の各点に対応するダイナミックレンジ設定値の平均を求め、この平均を上述の式(1)に適用してもよい。これにより、折れ線状のマップを平滑化して使用することができる。また、流速レンジごとのマップを折れ線ではなく滑らかな曲線としてもよい。
【0052】
また、ドプラ変移周波数とダイナミックレンジ設定値との関係を表すマップを、超音波探触子の種類(機種)ごとに用意してもよい。これは例えば、超音波探触子の種類が変われば送信する超音波の周波数などといった送受信特性が変わるので、ドプラ変移周波数の大きさに対する生体内からの反射信号の大きさ(ひいてはスペクトルにおける当該ドプラ変移周波数成分の強度)が変わるからである。この場合、超音波探触子の種類の各々について、上述のような流速レンジごとのマップをそれぞれ用意するようにしてもよい。
【0053】
また、ドプラ変移周波数とダイナミックレンジ設定値との関係を表すマップは、被検体内の診断部位ごとに用意するようにしてもよい。超音波診断装置において、スペクトルドプラ法が適用される代表的な診断部位には、例えば心臓、腹部、頸部、下肢血管部などがある。これら代表的な診断部位ごとに、マップを用意するのである。診断部位ごとに、超音波の伝搬環境(体表からの深さや周囲の臓器や脂肪などの分布など)が異なるので、個別にマップを用意することで、より適切なダイナミックレンジ調整が可能になる。この場合、各診断部位について、上述のような流速レンジごとのマップをそれぞれ用意するようにしてもよい。
【0054】
また、ドプラ変移周波数とダイナミックレンジ設定値との関係を表すマップを、ドプラ測定方式の種類(モード)ごとに用意してもよい。例えば、連続波(CW)ドプラモードとパルス波(PW)ドプラモードを備える超音波診断装置の場合、CWモード用のマップとPWモード用のマップを用意するなどである。例えばCWモードとPWモードでは、使用周波数帯や送信タイミングなどの送受信条件が異なり、受信結果も大きく異なってくるので、モードに応じたマップを用意することが好ましい。この場合、ドプラ測定方式の種類(モード)の各々について、上述のような流速レンジごとのマップをそれぞれ用意するようにしてもよい。
【0055】
また、超音波探触子の種類と診断部位との組合せごとにマップを用意してもよい。すなわち、超音波探触子は、種類ごとに、適用される診断部位がいくつか決まっている。したがって、超音波探触子の種類と、その種類が適用される診断部位との組合せごとに、マップを用意することで、より精密なダイナミックレンジ調整が可能になる。この場合、超音波探触子の種類と診断部位の組合せの各々について、上述のような流速レンジごとのマップをそれぞれ用意するようにしてもよい。
【0056】
また、同様に、超音波探触子の種類とドプラ測定方式の種類(モード)との組合せごとにマップを用意してもよい。また、診断部位とドプラ測定方式の種類との組合せごとにマップを用意してもよい。また、更に、超音波探触子の種類と診断部位とドプラ測定方式の種類(モード)との組合せごとにマップを用意してもよい。いずれの場合も、組合せの各々について、上述のような流速レンジごとのマップをそれぞれ用意するようにしてもよい。
【0057】
図7に、変形例を示す。図7に示す要素のうち、図1に示した要素と同様の要素には、同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
図7に示す変形例の装置は、図1に示したように、マップ選択部32,マップ記憶部34を備えている。マップ記憶部34には、一例として、上述したプローブ(超音波探触子)と診断部位とドプラ測定方式(CW/PW)と流速レンジとの組合せごとに、ドプラ変移周波数とダイナミックレンジ設定値との関係を表すマップが記憶されている。
【0059】
制御部50は、超音波診断装置全体を制御する。この実施形態との関連では、制御部50は、操作部60からのユーザの指示に応じて、ユーザが選択した診断に使用するプローブの種類や診断部位を特定したり、スペクトルドプラ表示の流速レンジを特定したりする。すなわち、操作部60には、プローブ種類や診断部位、ドプラ測定方式(CW又はPW)、流速レンジなどの選択のためのユーザインタフェース(ハードウエアボタンや、画面上のGUI(グラフィカルユーザインタフェース)など)が設けられている。ユーザがそのユーザインタフェースにて選択を行うと、その選択結果が、制御部50にて、流速レンジ選択結果52,プローブ選択結果54,診断部位選択結果56、ドプラ測定方式(CW/PW)選択結果57等として保持される。なお、プローブ種類、診断部位、ドプラ測定方式(CW/PW)、流速レンジのうちの1以上を、ユーザ指定ではなく自動検出により特定してもよい。
【0060】
マップ選択部32は、制御部50から流速レンジ選択結果52,プローブ選択結果54,診断部位選択結果56、ドプラ測定方式(CW/PW)選択結果57を受け取り、マップ記憶部34内のマップの中から、それら四者の組合せに対応するものを選択し、ダイナミックレンジ調整部30に伝達する。ダイナミックレンジ調整部30は、マップ選択部32が選択したマップに従い、ドプラ変移周波数に対応するダイナミックレンジ設定値を求め、この設定値を用いて表示ダイナミックレンジを調整する。
【0061】
この例では、プローブ(超音波探触子)と診断部位とドプラ測定方式(CW/PW)と流速レンジとの組合せごとにマップを用意したが、これは一例に過ぎない。上述のようにプローブ(超音波探触子)、診断部位、ドプラ測定方式(CW/PW)、流速レンジのいずれか1つの値の範囲ごとにマップを用意してもよいし、それら四者のうちの二者以上の組合せごとにマップを用意したもよい。
【0062】
また、図7の例では、制御部50は、マップ登録部58は、ユーザがマップを作成又は修正するためのユーザインタフェースを提供し、そのユーザインタフェースを用いてユーザが作成又は修正したマップをマップ記憶部34に登録する。
【0063】
例えば、超音波診断装置の中には、STC(Sensitivity Time Control)機能を備えるものがある。STC機能は、被検体内の反射源の深さ(これは超音波の送信から、反射波の受信までの時間に対応する)に応じて、その深さに応じて受信信号に対する増幅率(ゲイン)を変化させる機能である。そして、このSTC機能における、深さとゲインとの関係を示す曲線を、ユーザが自由に設定できる機種も少なくない。このような機種では、図8の(a)に示すように、縦方向に並んだ複数のつまみ150−1,150−2,…,150−nの横方向についての位置を変えることにより、各深さのゲインを設定する操作部を備えている。(a)に示す操作部では、下方が、診断深さが深くなる方向(体表からの拒理が大きくなる方向)である。深さの異なる各つまみ150の横方向についての位置が、それぞれその深さに対応するゲインを表す。すなわち、各つまみ150の位置が、ユーザによって図8の(a)に示すように位置決めされた場合、受信信号のゲインは、(b)に示すように。それらつまみ150の並び方に応じたカーブ(曲線)160に従って、診断深さが深くなるほど増大することとなる。なお、このSTC設定用の操作部(各つまみ)は、ハードウエアとして実装してもよいし、画面上にGUIとして実装してもよい。
【0064】
図7の例のマップ登録部58は、このようなSTCカーブ設定のための操作部を、ドプラ変移周波数とダイナミックレンジ設定値との関係を表すマップの作成・修正のためのユーザインタフェースとして利用してもよい。この場合、ユーザが操作部60に対してマップ作成を指示した場合、その後ユーザからマップ作成完了の指示が入力されるまでは、マップ登録部58は、STCカーブ設定のための操作部に対するユーザの操作を、そのマップを定義する操作と解釈する。すなわち、マップ作成時には、マップ登録部58は、STCカーブ設定用の操作部の縦(深さ)方向を、ドプラ変移周波数の大きさが大きくなる方向と解釈し、各つまみ150の横方向の位置を表示ダイナミックレンジと解釈する。例えば、つまみ150の位置が右になるほど表示ダイナミックレンジが狭く(小さく)なるよう(この逆でも構わない)、つまみ150の横方向の位置を、ダイナミックレンジ設定値に対応づけておけばよい。ユーザは、例えば実際の診断の中でスペクトルドプラ表示(図2参照)を見ながら、各つまみ150の位置を操作することで、所望のマップを得ることができる。このようにして作成したマップは、現在表示中のスペクトルには既に適用済のものであるが、例えばユーザからの指示があれば、マップ登録部58はこのマップをマップ記憶部34に登録する。このマップは、ユーザ専用のカスタムマップとして固有の識別名称(この名称はユーザが指定する)や操作部60上のプリセットボタンと対応づけて登録し、後でその識別名称の指定やプリセットボタンを押下することで呼び出せるようにしてもよい。また、そのマップを作成したときのスペクトルドプラ表示の流速レンジ、そのとき用いているプローブの種類及び診断部位の組合せに対応づけて、そのマップをマップ記憶部34に登録するようにしてもよい。この場合、マップ記憶部34に、既にその流速レンジ、プローブ種類及び診断部位の組合せに対するマップが記憶されている場合、新たに登録するマップをそのマップに上書きしてもよいし、その組合せに対するマップのバリエーションの1つとして登録してもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 超音波振動子、12 受信アンプ、14I,14Q ミキサ、16 発振器、18 90°移相器、20I,20Q A/D変換器、22 整相加算器(ビームフォーマー)、24 FFT解析器、26 Log変換器、30 ダイナミックレンジ調整部、40 表示画像処理部、42 表示装置。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波エコー信号からドプラ変移周波数のスペクトルを算出するスペクトル算出手段と、
前記スペクトルにおけるドプラ変移周波数成分の周波数に応じて、前記スペクトルにおける各ドプラ変移周波数成分の表示ダイナミックレンジを選択するダイナミックレンジ選択手段と、
前記スペクトルの各ドプラ変移周波数成分を、前記ダイナミックレンジ選択手段で選択された表示ダイナミックレンジで表示する表示手段と、
を備える超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置であって、前記ダイナミックレンジ選択手段は、前記スペクトルにおけるドプラ変移周波数成分の周波数が大きくなるほど当該成分を表示する場合の表示ダイナミックレンジが小さくなる対応関係に従い、前記スペクトルにおける各ドプラ変移周波数成分の表示ダイナミックレンジを選択する、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の超音波診断装置であって、
前記スペクトルの各ドプラ変移周波数成分のゲインを調整するゲイン調整手段、を更に備え、
前記表示手段は、前記ゲイン調整手段によるゲインの調整と、前記ダイナミックレンジ選択手段で選択された表示ダイナミックレンジと、の両方を組み合わせて前記スペクトルの各ドプラ変移周波数成分に適用した結果を表示する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波診断装置であって、
前記表示手段において選択されている前記ドプラ変移周波数成分の表示範囲の情報を取得する取得手段、
を更に備え、
前記ダイナミックレンジ選択手段は、前記対応関係を、前記表示手段において選択可能な前記ドプラ変移周波数成分の表示範囲ごとに記憶しており、前記取得手段が取得した表示範囲に対応する前記対応関係に従って、前記ドプラ変移周波数成分の周波数から、当該成分を表示するときの表示ダイナミックレンジを求める、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の超音波診断装置であって、
前記超音波診断装置にて使用されている超音波探触子の種類を取得する取得手段、
を更に備え、
前記ダイナミックレンジ選択手段は、前記対応関係を超音波探触子の種類ごとに記憶しており、前記取得手段が取得した超音波探触子の種類に対応する前記対応関係を用いて、前記ドプラ変移周波数成分の周波数から、当該成分を表示するときの表示ダイナミックレンジを求める、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の超音波診断装置であって、
前記超音波診断装置に指定された診断対象部位の情報を取得する取得手段、
を更に備え、
前記ダイナミックレンジ選択手段は、前記対応関係を前記診断対象部位ごとに記憶しており、前記取得手段が取得した診断部位に対応する対応づけ情報を用いて、前記ドプラ変移周波数成分の周波数から、当該成分を表示するときの表示ダイナミックレンジを求める、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の超音波診断装置であって、
前記超音波診断装置に指定されたドプラ測定方式の種類の情報を取得する取得手段、
を更に備え、
前記ダイナミックレンジ選択手段は、前記対応関係を前記ドプラ測定方式の種類ごとに記憶しており、前記取得手段が取得したドプラ測定方式の種類に対応する対応づけ情報を用いて、前記ドプラ変移周波数成分の周波数から、当該成分を表示するときの表示ダイナミックレンジを求める、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の超音波診断装置であって、
前記対応関係をマニュアル設定するためのマニュアル設定手段を備える、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項9】
請求項8に記載の超音波診断装置であって、
各診断深さについての受信信号のゲインを設定するためのSTC設定手段を備え、
前記マニュアル設定手段は、前記対応関係をマニュアル設定する場合、前記STC設定手段に対するユーザの設定入力を、各診断深さを各ドプラ変移周波数と、ゲインを表示ダイナミックレンジと、それぞれ読み替えて解釈することで、前記対応関係を求める、
ことを特徴とする超音波診断装置。


【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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