超音波診断装置
【課題】簡素な構成にて、黒抜けを低減してS/Nの改善された画像データを生成することが可能な超音波診断装置を提供する
【解決手段】コヒーレンスファクタ算出部307cは、複数の振動子によって得られた受信信号に基づき、インコヒーレントサムISに対するコヒーレントサムCSの割合であるコヒーレンスファクタCFを算出する。リミッタ設定部308c及びγ補正部309cは、コヒーレンスファクタ算出部307cによって算出されたコヒーレンスファクタCFに対して補正を行う。コヒーレンスファクタ乗算器310cは、リミッタ設定部308c及びγ補正部309cによって補正されたコヒーレンスファクタCFを係数として、整相加算後の受信信号に乗じることによって、整相加算後の受信信号を補正する。
【解決手段】コヒーレンスファクタ算出部307cは、複数の振動子によって得られた受信信号に基づき、インコヒーレントサムISに対するコヒーレントサムCSの割合であるコヒーレンスファクタCFを算出する。リミッタ設定部308c及びγ補正部309cは、コヒーレンスファクタ算出部307cによって算出されたコヒーレンスファクタCFに対して補正を行う。コヒーレンスファクタ乗算器310cは、リミッタ設定部308c及びγ補正部309cによって補正されたコヒーレンスファクタCFを係数として、整相加算後の受信信号に乗じることによって、整相加算後の受信信号を補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多数の振動子(トランスデューサ)を配列して備える振動探触子(プローブ)を有し、生体等の被検体に対して超音波の送受信を行い、受信した超音波から得られた信号に基づいて超音波画像データを生成し、これに基づく超音波画像を画像表示装置に表示する超音波診断装置が知られている。
【0003】
このような超音波診断装置においては、電子走査では同一反射物により反射された超音波が振動子の配置により振動子毎に到達時間が異なることとなる。従来の超音波診断装置では、この到達時間のずれを修正するために、振動子毎に受信した超音波をそれぞれ電気信号として変換した後に整相加算処理を実施して、画像形成用の信号を生成することが行われている。この整相加算処理は、振動子から幾何学的焦点距離に基づき、振動子毎(チャンネル毎)に設定された遅延量だけ遅延補正をかけることにより、各信号の時間的なずれを調整するものである。
【0004】
従来の超音波診断装置によれば、理想的には、全てのチャンネルから同一の信号が得られるはずだが、被検体内における超音波の音速は必ずしも一定ではなく、実際の遅延量は理論値とは異なる場合があり、全ての信号について正しく整相加算されるとは限らない。そのため、S/Nの低い画像データが生成されることとなる。
【0005】
このような問題に鑑み、整相加算した信号の品質を示す指標としてコヒーレンスファクタ(Coherence Factor)を求める手法が提案されている。このコヒーレンスファクタは、インコヒーレントサム(Incoherent sum)に対するコヒーレントサム(Coherent sum)の割合によって算出され、値が大きいほど、理想的に近い整相加算が行われた良質の信号であることが示される。反対に、値が小さいほど、整相加算において相当な誤差の生じた質の低下した信号であることが示される。そして、このようにして求められたコヒーレンスファクタを、整相加算した信号に適用することで、信号の質に応じた重み付けが可能となり、アーチファクトが抑圧された、S/Nの改善された画像データを生成することができるようになる(例えば、非特許文献1)。
【0006】
ところが、単にコヒーレンスファクタによる重み付けを行って画像データを生成した場合には、例えば、サイドローブやスペックル等のアーチファクトが表れた部分等、局所的に重み付け量が極小となる結果、いわゆる黒抜けが生じ、不自然な超音波画像となって表れてしまうことがある。これにより、読影者の誤診に結びつくことがあり、場面によっては、不適切な超音波画像となってしまう。
【0007】
これに対し、従来の超音波診断装置において、上述したコヒーレンスファクタがより理想的な値を示すようにフィードバックを行って、送受信時におけるチャンネル毎の遅延量を調整するようにしたものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0228279号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Pai-Chi Li, and Meng-Lin Li, Adaptive Imaging Using the Generalized Coherence Factor, IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control, Vol.50(2003), NO.2, pp.128-141
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、コヒーレンスファクタを利用してS/Nの高い良質の画像データを生成することができるが、チャンネル毎に遅延量を調整するための回路構成等が必要であるため、構成が極めて複雑である。
【0011】
本発明の課題は、簡素な構成にて、黒抜けを低減してS/Nの改善された画像データを生成することが可能な超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、複数の振動子にて、駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信して振動子毎に受信信号を得る超音波探触子と、前記振動子毎の受信信号を整相加算する整相加算部と、整相加算後の受信信号に基づいて超音波診断画像を表示するための画像データを生成する画像処理部と、を備えた超音波診断装置において、
前記複数の振動子によって得られた受信信号に基づき、インコヒーレントサムに対するコヒーレントサムの割合であるコヒーレンスファクタを算出するコヒーレンスファクタ算出部と、
前記コヒーレンスファクタ算出部によって算出されたコヒーレンスファクタに対して補正を行うコヒーレンスファクタ補正部と、
前記コヒーレンスファクタ補正部によって補正されたコヒーレンスファクタを係数として、前記整相加算後の受信信号に乗じることによって、前記整相加算後の受信信号を補正する信号補正部と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記複数の振動子はN個(Nは正整数)の振動子であって、
前記コヒーレンスファクタ算出部は、基準となる任意の時間をtとし、前記N個の振動子のうちの任意の一の振動子をチャンネルiとし、当該チャンネルiに設定された遅延量をΔtiとし、時間tに遅延量Δtiを加算した時間におけるチャンネルiの受信信号をCi(t+Δti)としたとき、前記コヒーレンスファクタCF(t)を、次式(1)によって算出することを特徴とする。
【数1】
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の超音波診断装置において、
前記コヒーレンスファクタ補正部は、前記コヒーレンスファクタが所定の下限値未満であるときに前記コヒーレンスファクタを前記下限値に補正するリミッタ部を含むことを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の超音波診断装置において、
前記コヒーレンスファクタ補正部は、前記コヒーレンスファクタを入力し、該入力したコヒーレンスファクタに対応する出力値が得られるように前記コヒーレンスファクタを補正するコヒーレンスファクタ変換部を含むことを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の超音波診断装置において、
前記コヒーレンスファクタ変換部は、前記入力したコヒーレンスファクタに対してγ乗(0<γ<1)して前記出力値を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡素な構成にて、黒抜けを低減してS/Nの改善された画像データを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】超音波診断装置の外観構成を示す図である。
【図2】超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】受信部の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】整相加算部の機能的構成を示すブロック図である。
【図5】コヒーレンスファクタの入力値と出力値との関係を示すグラフである。
【図6】コヒーレンスファクタの入力値と出力値との関係を示すグラフである。
【図7】実施例1によって取得された画像を示す図である。
【図8】実施例2によって取得された画像を示す図である。
【図9】実施例3によって取得された画像を示す図である。
【図10】実施例4によって取得された画像を示す図である。
【図11】実施例5によって取得された画像を示す図である。
【図12】実施例6によって取得された画像を示す図である。
【図13】比較例1によって取得された画像を示す図である。
【図14】比較例2によって取得された画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る超音波診断装置について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0020】
本発明の実施の形態に係る超音波診断装置100は、図1に示すように、超音波診断装置本体1と超音波探触子2とを備えている。超音波探触子2は、図示しない生体等の被検体に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する。超音波診断装置本体1は、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2に電気信号の駆動信号を送信することによって超音波探触子2に被検体に対して送信超音波を送信させるとともに、超音波探触子2にて受信した被検体内からの反射超音波に応じて超音波探触子2で生成された電気信号である受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化する。
【0021】
超音波探触子2は、圧電素子からなる振動子2aを備えており、この振動子2aは、例えば、方位方向(走査方向)に一次元アレイ状に複数配列されている。本実施の形態では、例えば、192個の振動子2aを備えた超音波探触子2を用いている。なお、振動子2aは、二次元アレイ状に配列されたものであってもよい。また、振動子2aの個数は、任意に設定することができる。また、本実施の形態では、超音波探触子2について、リニア電子スキャンプローブを採用したが、電子走査方式あるいは機械走査方式の何れを採用してもよく、また、リニア走査方式、セクタ走査方式あるいはコンベックス走査方式の何れの方式を採用することもできる。
【0022】
超音波診断装置本体1は、例えば、図2に示すように、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、画像生成部14と、メモリ部15と、DSC(Digital Scan Converter)16と、表示部17と、制御部18とを備えて構成されている。
【0023】
操作入力部11は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデータの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備えており、操作信号を制御部18に出力する。
【0024】
送信部12は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2にケーブル3を介して電気信号である駆動信号を供給して超音波探触子2に送信超音波を発生させる回路である。送信部12は、例えば、クロック発生回路、遅延回路、パルス発生回路を備えている。クロック発生回路は、駆動信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。遅延回路は、駆動信号の送信タイミングを振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させて送信超音波によって構成される送信ビームの集束を行うための回路である。パルス発生回路は、所定の周期で駆動信号としてのパルス信号を発生させるための回路である。
このように構成された送信部12は、制御部18の制御に従って、駆動信号を供給する複数の振動子2aを、超音波の送受信毎に所定数ずらしながら順次切り替え、出力の選択された複数の振動子2aに対して駆動信号を供給することにより走査を行う。本実施の形態では、送信部12は、192個の振動子2aから連続するN個の振動子2a1〜2aNを実際に使用する振動子として選択し、当該使用する振動子2a1〜2aNにて超音波の送信を行わせる。ここで、使用する振動子2a1〜2aNをそれぞれチャンネル(CH)1〜Nということがある。なお、使用する振動子の数(開口数)は、フォーカス点の深度に応じて可変させるが、一定であってもよい。
【0025】
受信部13は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号の受信信号を受信する回路である。受信部13は、図3に示すように、例えば、AMP(Amplifier)13a、ADC(Analog to Digital Converter)13b及び整相加算部13cを備えている。
【0026】
AMP13a(13a1〜13aN)は、受信信号を、使用する振動子2a1〜2aN毎に対応した個別経路毎に、予め設定された所定の増幅率で増幅させるための回路である。
ADC13b(13b1〜13bN)は、増幅された受信信号を所定周波数(例えば、60MHz)にてサンプリングしてA/D変換する。ADC13b1〜13bNはそれぞれ、A/D変換後の受信信号S1〜SNを整相加算部13cに出力する。
【0027】
整相加算部13cは、A/D変換された受信信号S1〜SNに対してそれぞれ遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)する。整相加算部13cは、整相加算された受信信号を、整相加算信号BFとして画像生成部14に出力する。
【0028】
より具体的には、整相加算部13cは、図4に示すように、タイミング調整部301c、加算器302c、乗算器303c、乗算器304c、加算器305c、係数乗算器306c、コヒーレンスファクタ算出部307c、リミッタ設定部308c、γ補正部309c、コヒーレンスファクタ乗算器310c、及び、スイッチSW1〜SW3を備えている。
【0029】
タイミング調整部301c(301c1〜301cN)は、基準時間tに対してチャンネル毎に定められた遅延量Δtiだけ遅延した受信信号が出力されるように、ADC13b1〜13bNより入力された受信信号S1〜SNの出力タイミングをそれぞれ調整する。
このようにして、タイミング調整部301c1〜301cNは、受信信号S1〜SNに対してそれぞれ遅延時間を与えて時相を整える。
【0030】
加算器302cは、タイミング調整部301c1〜301cNによって時相の調整された受信信号S1〜SNを加算し、その結果を出力する。
本実施の形態では、以上のようにして、タイミング調整部301c及び加算器302cにより受信信号の整相加算を行う。ここで、整相加算後の受信信号φ(t)については、下記式(2)によって表すことができる。なお、下記式(2)において、tは基準時間を表し、Δtiは、チャンネル1〜Nのそれぞれに対応する遅延量を表し、Ci(t+Δti)は、基準時間tから遅延量Δtiだけ遅延したタイミングにおける受信信号S1〜SNの信号の大きさを表す。
【数2】
【0031】
乗算器303cは、加算器302cから出力された整相加算後の受信信号を二乗し、その結果をコヒーレントサムCSとしてコヒーレンスファクタ算出部307cに出力する。また、加算器302cから出力された整相加算後の受信信号は、コヒーレンスファクタ乗算器310cにも出力される。
【0032】
一方、乗算器304c1〜304cNは、タイミング調整部301c1〜301cNから出力された受信信号S1〜SNをそれぞれ二乗し、その結果をそれぞれ出力する。
加算器305cは、乗算器304c1〜304cNからの出力結果を加算し、その結果を出力する。
係数乗算器306cは、加算器305cからの出力結果を、使用する振動子の数で乗じ、その結果をインコヒーレントサムISとしてコヒーレンスファクタ算出部307cに出力する。
【0033】
コヒーレンスファクタ算出部307cは、入力したコヒーレントサムCSとインコヒーレントサムISとからコヒーレンスファクタを算出し、その結果をコヒーレンスファクタCFとして出力する。コヒーレンスファクタは、インコヒーレントサムに対するコヒーレントサムの割合を示すものであり、整相加算後の受信信号が理想的であるか否かを示す指標となるものである。すなわち、コヒーレンスファクタは、理想的な整相加算後の受信信号に対する誤差の度合いを示すものである。本実施の形態では、以上のように構成されているため、インコヒーレントサムIS(t)に対するコヒーレントサムCS(t)の割合であるコヒーレンスファクタCF(t)を、下記式(3)によって求めることができる。ここで、Nは使用する振動子の数(開口数)を示している。
【数3】
【0034】
リミッタ部の一例としてのリミッタ設定部308cは、コヒーレンスファクタCFを入力し、入力したコヒーレンスファクタCFが予め設定された下限値未満である場合には、コヒーレンスファクタCFを下限値に補正して出力する。本実施の形態では、例えば、下限値を「−12dB」及び「−18dB」の何れかに設定することができる。なお、下限値については任意の値とすることができる。また、本実施の形態では、スイッチSW1によってリミッタ設定部308cの機能のON/OFFを切り替えることができる。スイッチSW1は、例えば、操作入力部11によるユーザの設定操作にて切り替えが可能となっている。これにより、ユーザは、場面に応じた補正をかけることが可能となっている。
【0035】
コヒーレンスファクタ変換部の一例としてのγ補正部309cは、コヒーレンスファクタCFを入力し、入力値からこれに対応する出力値に変換して出力する。具体的には、γ補正部309cは、入力したコヒーレンスファクタCFを入力値とし、これに対して補正値(γ)をべき乗して出力値を得る。本実施の形態では、例えば、補正値(γ)を「γ=0.75」及び「γ=0.5」の何れかに設定することができる。なお、補正値(γ)は上述したものに限定されないが、「0<γ<1」の範囲で設定するのが望ましい。
【0036】
ここで、リミッタ設定部308cによって下限が−12dBに制限されたコヒーレンスファクタCFを入力値とした場合の入力値と出力値との関係を図5に示し、リミッタ設定部308cによって下限が−18dBに制限されたコヒーレンスファクタCFを入力値とした場合の入力値と出力値との関係を図6に示す。図5及び図6中、それぞれ、横軸は入力値を示し、縦軸は出力値を示す。また、図5及び図6中、それぞれ、Aは、補正値(γ)が「γ=1.0」である場合、すなわち、γ補正部309cによる補正が行われない場合の入力値と出力値との関係を示す。また、Bは、補正値(γ)が「γ=0.75」である場合の入力値と出力値との関係を示す。また、Cは、補正値(γ)が「γ=0.5」である場合の入力値と出力値との関係を示す。
このように、本実施の形態では、上述したようにして入力したコヒーレンスファクタに対して補正値(γ)をべき乗することにより、入力したコヒーレンスファクタが小さいほど出力値が大きくなるように値を持ち上げることができる。
【0037】
なお、本実施の形態では、コヒーレンスファクタに対して所定値をべき乗することで出力値が非線形的に得られるように構成したが、例えば、コヒーレンスファクタに対して所定値を乗じる等、入力値に対して出力値が線形的に得られるようにしてもよい。また、入力値に対して出力値が一義的に定められたLUT(Look Up Table)等のテーブルを利用する構成としてもよい。また、入力値に対して対数演算を実施して出力値が得られるようにしてもよい。また、入力値に対する出力値を、入力値毎に個別に設定できるように構成してもよい。また、フォーカス点の深度に応じて入力値に対する出力値の関係を変更するようにしてもよい。
【0038】
また、本実施の形態では、スイッチSW2によってγ補正部309cの機能のON/OFFを切り替えることができる。スイッチSW2は、例えば、操作入力部11によるユーザの設定操作にて切り替えが可能となっている。これにより、ユーザは、場面に応じた補正をかけることが可能となっている。
【0039】
以上のように、リミッタ設定部308c及びγ補正部309cは、コヒーレンスファクタ補正部を構成する。
なお、本実施の形態では、上述のようにしてリミッタ設定部308c及びγ補正部309cをそれぞれ選択的に機能させてコヒーレンスファクタの補正を行うように構成したが、リミッタ設定部308c及びγ補正部309cによる補正を必ず実施する構成としてもよい。また、リミッタ設定部308c及びγ補正部309cの何れか一方のみ設けられた構成としてもよい。また、本実施の形態では、リミッタ設定部308cによってコヒーレンスファクタの下限を制限した後に、γ補正部309cによる補正が行われるように構成したが、γ補正部309cによる補正を行った後に、リミッタ設定部308cによるコヒーレンスファクタの下限の制限が行われるようにしてもよい。
【0040】
信号補正部の一例としてのコヒーレンスファクタ乗算器310cは、加算器302cから出力された整相加算後の受信信号に対して、コヒーレンスファクタ算出部307c、リミッタ設定部308c又はγ補正部309cから出力されたコヒーレンスファクタCFを係数として乗じ、その結果を整相加算信号BFとして画像生成部14に出力する。
本実施の形態では、このようにして、整相加算後の受信信号に対して重み付けを行うことができる。また、リミッタ設定部308cによるコヒーレンスファクタの下限の制限を実施した場合には、受信信号に対する重み付け量が極めて小さくなるようなことが抑制できるので、受信信号の大きさをある程度確保することができ、ノイズ部分が抑圧されすぎていわゆる黒抜けが発生するのを低減することができるようになる。また、γ補正部309cによるコヒーレンスファクタの変換を行った場合には、コヒーレンスファクタが小さいほど持ち上がるように補正されるので、黒抜けの発生をより効果的に低減することができるようになる。
【0041】
また、本実施の形態では、スイッチSW3によってコヒーレンスファクタ乗算器310cの機能のON/OFFを切り替えることができる。スイッチSW3は、例えば、操作入力部11によるユーザの設定操作にて切り替えが可能となっている。すなわち、本実施の形態では、整相加算部13cは、整相加算後の受信信号に対して、コヒーレンスファクタによる重み付けを行うか否かについて切り替え可能に構成されている。スイッチSW3によりコヒーレンスファクタ乗算器310cの機能がOFFとなった場合には、加算器302cから出力された整相加算後の受信信号が整相加算信号BFとして画像生成部14に出力される。これにより、ユーザは、場面に応じて、コヒーレンスファクタの適用の可否を選択して超音波診断画像を取得することができるようになる。
【0042】
画像生成部14は、図2に示すように、受信部13からの整相加算信号BFに対して包絡線検波処理や対数増幅などを実施し、ダイナミックレンジやゲインの調整を行って輝度変換することにより、Bモード画像データを生成する。すなわち、Bモード画像データは、受信信号の強さを輝度によって表したものである。
【0043】
メモリ部15は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリによって構成されており、画像生成部14から送信されたBモード画像データをフレーム単位で記憶する。すなわち、メモリ部15は、フレーム単位により構成された超音波診断画像データとして記憶することができる。そして、記憶された超音波診断画像データは、制御部18の制御に従って、DSC16に送信される。
【0044】
DSC16は、メモリ部15より受信した超音波診断画像データをテレビジョン信号の走査方式による画像信号に変換し、表示部17に出力する。
【0045】
表示部17は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ、無機ELティスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示装置が適用可能である。表示部17は、DSC16から出力された画像信号に従って表示画面上に超音波診断画像の表示を行う。なお、表示装置に代えてプリンタ等の印刷装置等を適用してもよい。
【0046】
制御部18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えて構成され、ROMに記憶されているシステムプログラム等の各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波診断装置100の各部の動作を集中制御する。
ROMは、半導体等の不揮発メモリ等により構成され、超音波診断装置100に対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、各種データ等を記憶する。これらのプログラムは、コンピュータが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【実施例1】
【0047】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、勿論本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
[実施例1]
本実施の形態による超音波診断装置100により、複数のワイヤーを有する所定のファントムに対して超音波の送受信を行って得られた受信信号を整相加算し、整相加算後の受信信号に対し、下限値が−18dBに設定されたコヒーレンスファクタを乗じて補正し、これに基づいて画像化した。その画像を図7に示す。
【0049】
[実施例2]
同様に、下限値を−18dBとした上で、補正値(γ=0.75)をべき乗して得られた補正後のコヒーレンスファクタを整相加算後の受信信号に対して乗じて補正し、これに基づいて画像化した。その画像を図8に示す。
【0050】
[実施例3]
同様に、下限値を−18dBとした上で、補正値(γ=0.5)をべき乗して得られた補正後のコヒーレンスファクタを整相加算後の受信信号に対して乗じて補正し、これに基づいて画像化した。その画像を図9に示す。
【0051】
[実施例4]
同様に、整相加算後の受信信号に対し、下限値が−12dBに設定されたコヒーレンスファクタを乗じて補正し、これに基づいて画像化した。その画像を図10に示す。
【0052】
[実施例5]
同様に、下限値を−12dBとした上で、補正値(γ=0.75)をべき乗して得られた補正後のコヒーレンスファクタを整相加算後の受信信号に対して乗じて補正し、これに基づいて画像化した。その画像を図11に示す。
【0053】
[実施例6]
同様に、下限値を−12dBとした上で、補正値(γ=0.5)をべき乗して得られた補正後のコヒーレンスファクタを整相加算後の受信信号に対して乗じて補正し、これに基づいて画像化した。その画像を図12に示す。
【0054】
[比較例1]
比較例1として、本実施の形態による超音波診断装置100により、上述のファントムに対して超音波の送受信を行って得られた受信信号を整相加算し、整相加算後の受信信号に対するコヒーレンスファクタによる重み付けは行わず、これに基づいて画像化した。その画像を図13に示す。
【0055】
[比較例2]
比較例2として、本実施の形態による超音波診断装置100により、上述のファントムに対して超音波の送受信を行って得られた受信信号を整相加算し、整相加算後の受信信号に対してコヒーレンスファクタによる重み付けを行うが、下限値の設定及び補正値の適用によるコヒーレンスファクタの補正は行わず、これに基づいて画像化した。その画像を図14に示す。
【0056】
[結果]
比較例2では、比較例1に比べ、ノイズが大きく抑圧されているので、分解能の高い画像が得られている。また、比較例1による画像では、サイドローブが目立つ一方、比較例2による画像ではサイドローブは抑圧されているが、コヒーレンスファクタが局所的に極小となるため、抑圧の度合いが大きくなり、サイドローブ部分に黒抜けが発生している。また、比較例2による画像では、特に深部における受信信号が微弱であるとともに、コヒーレンスファクタも極小となるため、黒抜けが目立っている。
【0057】
これに対し、実施例1では、比較例2に比べ、深部における黒抜けがやや軽減された、分解能の高い画像が得られた。さらに、実施例2及び3による画像では、黒抜けも大きく減少した。特に実施例3による画像では、サイドローブ部分の黒抜けが目立たない程度となった。一方で、実施例1〜3による画像によれば、補正値を小さくするほど、ノイズが表れるようになることがわかった。
【0058】
また、実施例4〜6による画像では、コヒーレンスファクタの下限が実施例1〜3よりも高く設定されているので、サイドローブ部分や深部における黒抜けが実施例1〜3による画像よりもそれぞれ低減されている。
【0059】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、超音波探触子2は、複数の振動子2a1〜2aNにて、駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信して振動子2a1〜2aN毎に受信信号を得る。整相加算部13cは、振動子2a1〜2aN毎の受信信号を整相加算する。画像生成部14は、整相加算後の受信信号に基づいて超音波診断画像を表示するための画像データを生成する。コヒーレンスファクタ算出部307cは、複数の振動子2a1〜2aNによって得られた受信信号に基づき、インコヒーレントサムISに対するコヒーレントサムCSの割合であるコヒーレンスファクタCFを算出する。リミッタ設定部308c及びγ補正部309cは、コヒーレンスファクタ算出部307cによって算出されたコヒーレンスファクタCFに対して補正を行う。コヒーレンスファクタ乗算器310cは、リミッタ設定部308c及び/又はγ補正部309cによって補正されたコヒーレンスファクタCFを係数として、整相加算後の受信信号に乗じることによって、整相加算後の受信信号を補正する。その結果、コヒーレンスファクタを適用して整相加算後の受信信号の補正を行うので、S/Nの改善された画像データを生成することができる。また、コヒーレンスファクタの補正を行うことにより、コヒーレンスファクタを適用することによって生じる黒抜けが低減された画像データを生成することができる。また、コヒーレンスファクタを補正することにより、実現可能であるので、複雑な回路構成を必要とせず、簡素な構成にて実現することができる。
【0060】
また、本発明の実施の形態によれば、リミッタ設定部308cは、コヒーレンスファクタCFが所定の下限値未満であるときにコヒーレンスファクタCFを下限値に補正する。その結果、コヒーレンスファクタが下限値未満にならないので、ノイズの抑圧をある程度まで制限して黒抜けを緩和させることができる。
【0061】
また、本発明の実施の形態によれば、γ補正部309cは、コヒーレンスファクタCFを入力し、入力したコヒーレンスファクタCFに対応する出力値が得られるようにコヒーレンスファクタを補正する。その結果、コヒーレンスファクタを好ましい値に変更することができ、ユーザの所望とする画像データを得ることができるようになる。
【0062】
また、本発明の実施の形態によれば、γ補正部309cは、入力したコヒーレンスファクタCFに対してγ乗(0<γ<1)して出力値を得る。その結果、コヒーレンスファクタが小さいほど持ち上がるように補正されるので、黒抜けの発生がより効果的に低減された画像データを得ることができるようになる。
【0063】
なお、本発明の実施の形態における記述は、本発明に係る超音波診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。超音波診断装置を構成する各機能部の細部構成及び細部動作に関しても適宜変更可能である。
【0064】
また、本実施の形態では、受信信号をサンプリングしてA/D変換した後に整相加算を行うようにしたが、A/D変換を行わないで整相加算する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
S 超音波診断装置
1 超音波診断装置本体
2 超音波探触子
2a 振動子
13 受信部
13c 整相加算部
307c コヒーレンスファクタ算出部
308c リミッタ設定部
309c γ補正部
310c コヒーレンスファクタ乗算器
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多数の振動子(トランスデューサ)を配列して備える振動探触子(プローブ)を有し、生体等の被検体に対して超音波の送受信を行い、受信した超音波から得られた信号に基づいて超音波画像データを生成し、これに基づく超音波画像を画像表示装置に表示する超音波診断装置が知られている。
【0003】
このような超音波診断装置においては、電子走査では同一反射物により反射された超音波が振動子の配置により振動子毎に到達時間が異なることとなる。従来の超音波診断装置では、この到達時間のずれを修正するために、振動子毎に受信した超音波をそれぞれ電気信号として変換した後に整相加算処理を実施して、画像形成用の信号を生成することが行われている。この整相加算処理は、振動子から幾何学的焦点距離に基づき、振動子毎(チャンネル毎)に設定された遅延量だけ遅延補正をかけることにより、各信号の時間的なずれを調整するものである。
【0004】
従来の超音波診断装置によれば、理想的には、全てのチャンネルから同一の信号が得られるはずだが、被検体内における超音波の音速は必ずしも一定ではなく、実際の遅延量は理論値とは異なる場合があり、全ての信号について正しく整相加算されるとは限らない。そのため、S/Nの低い画像データが生成されることとなる。
【0005】
このような問題に鑑み、整相加算した信号の品質を示す指標としてコヒーレンスファクタ(Coherence Factor)を求める手法が提案されている。このコヒーレンスファクタは、インコヒーレントサム(Incoherent sum)に対するコヒーレントサム(Coherent sum)の割合によって算出され、値が大きいほど、理想的に近い整相加算が行われた良質の信号であることが示される。反対に、値が小さいほど、整相加算において相当な誤差の生じた質の低下した信号であることが示される。そして、このようにして求められたコヒーレンスファクタを、整相加算した信号に適用することで、信号の質に応じた重み付けが可能となり、アーチファクトが抑圧された、S/Nの改善された画像データを生成することができるようになる(例えば、非特許文献1)。
【0006】
ところが、単にコヒーレンスファクタによる重み付けを行って画像データを生成した場合には、例えば、サイドローブやスペックル等のアーチファクトが表れた部分等、局所的に重み付け量が極小となる結果、いわゆる黒抜けが生じ、不自然な超音波画像となって表れてしまうことがある。これにより、読影者の誤診に結びつくことがあり、場面によっては、不適切な超音波画像となってしまう。
【0007】
これに対し、従来の超音波診断装置において、上述したコヒーレンスファクタがより理想的な値を示すようにフィードバックを行って、送受信時におけるチャンネル毎の遅延量を調整するようにしたものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0228279号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Pai-Chi Li, and Meng-Lin Li, Adaptive Imaging Using the Generalized Coherence Factor, IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control, Vol.50(2003), NO.2, pp.128-141
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、コヒーレンスファクタを利用してS/Nの高い良質の画像データを生成することができるが、チャンネル毎に遅延量を調整するための回路構成等が必要であるため、構成が極めて複雑である。
【0011】
本発明の課題は、簡素な構成にて、黒抜けを低減してS/Nの改善された画像データを生成することが可能な超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、複数の振動子にて、駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信して振動子毎に受信信号を得る超音波探触子と、前記振動子毎の受信信号を整相加算する整相加算部と、整相加算後の受信信号に基づいて超音波診断画像を表示するための画像データを生成する画像処理部と、を備えた超音波診断装置において、
前記複数の振動子によって得られた受信信号に基づき、インコヒーレントサムに対するコヒーレントサムの割合であるコヒーレンスファクタを算出するコヒーレンスファクタ算出部と、
前記コヒーレンスファクタ算出部によって算出されたコヒーレンスファクタに対して補正を行うコヒーレンスファクタ補正部と、
前記コヒーレンスファクタ補正部によって補正されたコヒーレンスファクタを係数として、前記整相加算後の受信信号に乗じることによって、前記整相加算後の受信信号を補正する信号補正部と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記複数の振動子はN個(Nは正整数)の振動子であって、
前記コヒーレンスファクタ算出部は、基準となる任意の時間をtとし、前記N個の振動子のうちの任意の一の振動子をチャンネルiとし、当該チャンネルiに設定された遅延量をΔtiとし、時間tに遅延量Δtiを加算した時間におけるチャンネルiの受信信号をCi(t+Δti)としたとき、前記コヒーレンスファクタCF(t)を、次式(1)によって算出することを特徴とする。
【数1】
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の超音波診断装置において、
前記コヒーレンスファクタ補正部は、前記コヒーレンスファクタが所定の下限値未満であるときに前記コヒーレンスファクタを前記下限値に補正するリミッタ部を含むことを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の超音波診断装置において、
前記コヒーレンスファクタ補正部は、前記コヒーレンスファクタを入力し、該入力したコヒーレンスファクタに対応する出力値が得られるように前記コヒーレンスファクタを補正するコヒーレンスファクタ変換部を含むことを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の超音波診断装置において、
前記コヒーレンスファクタ変換部は、前記入力したコヒーレンスファクタに対してγ乗(0<γ<1)して前記出力値を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡素な構成にて、黒抜けを低減してS/Nの改善された画像データを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】超音波診断装置の外観構成を示す図である。
【図2】超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】受信部の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】整相加算部の機能的構成を示すブロック図である。
【図5】コヒーレンスファクタの入力値と出力値との関係を示すグラフである。
【図6】コヒーレンスファクタの入力値と出力値との関係を示すグラフである。
【図7】実施例1によって取得された画像を示す図である。
【図8】実施例2によって取得された画像を示す図である。
【図9】実施例3によって取得された画像を示す図である。
【図10】実施例4によって取得された画像を示す図である。
【図11】実施例5によって取得された画像を示す図である。
【図12】実施例6によって取得された画像を示す図である。
【図13】比較例1によって取得された画像を示す図である。
【図14】比較例2によって取得された画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る超音波診断装置について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0020】
本発明の実施の形態に係る超音波診断装置100は、図1に示すように、超音波診断装置本体1と超音波探触子2とを備えている。超音波探触子2は、図示しない生体等の被検体に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する。超音波診断装置本体1は、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2に電気信号の駆動信号を送信することによって超音波探触子2に被検体に対して送信超音波を送信させるとともに、超音波探触子2にて受信した被検体内からの反射超音波に応じて超音波探触子2で生成された電気信号である受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化する。
【0021】
超音波探触子2は、圧電素子からなる振動子2aを備えており、この振動子2aは、例えば、方位方向(走査方向)に一次元アレイ状に複数配列されている。本実施の形態では、例えば、192個の振動子2aを備えた超音波探触子2を用いている。なお、振動子2aは、二次元アレイ状に配列されたものであってもよい。また、振動子2aの個数は、任意に設定することができる。また、本実施の形態では、超音波探触子2について、リニア電子スキャンプローブを採用したが、電子走査方式あるいは機械走査方式の何れを採用してもよく、また、リニア走査方式、セクタ走査方式あるいはコンベックス走査方式の何れの方式を採用することもできる。
【0022】
超音波診断装置本体1は、例えば、図2に示すように、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、画像生成部14と、メモリ部15と、DSC(Digital Scan Converter)16と、表示部17と、制御部18とを備えて構成されている。
【0023】
操作入力部11は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデータの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備えており、操作信号を制御部18に出力する。
【0024】
送信部12は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2にケーブル3を介して電気信号である駆動信号を供給して超音波探触子2に送信超音波を発生させる回路である。送信部12は、例えば、クロック発生回路、遅延回路、パルス発生回路を備えている。クロック発生回路は、駆動信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。遅延回路は、駆動信号の送信タイミングを振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させて送信超音波によって構成される送信ビームの集束を行うための回路である。パルス発生回路は、所定の周期で駆動信号としてのパルス信号を発生させるための回路である。
このように構成された送信部12は、制御部18の制御に従って、駆動信号を供給する複数の振動子2aを、超音波の送受信毎に所定数ずらしながら順次切り替え、出力の選択された複数の振動子2aに対して駆動信号を供給することにより走査を行う。本実施の形態では、送信部12は、192個の振動子2aから連続するN個の振動子2a1〜2aNを実際に使用する振動子として選択し、当該使用する振動子2a1〜2aNにて超音波の送信を行わせる。ここで、使用する振動子2a1〜2aNをそれぞれチャンネル(CH)1〜Nということがある。なお、使用する振動子の数(開口数)は、フォーカス点の深度に応じて可変させるが、一定であってもよい。
【0025】
受信部13は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号の受信信号を受信する回路である。受信部13は、図3に示すように、例えば、AMP(Amplifier)13a、ADC(Analog to Digital Converter)13b及び整相加算部13cを備えている。
【0026】
AMP13a(13a1〜13aN)は、受信信号を、使用する振動子2a1〜2aN毎に対応した個別経路毎に、予め設定された所定の増幅率で増幅させるための回路である。
ADC13b(13b1〜13bN)は、増幅された受信信号を所定周波数(例えば、60MHz)にてサンプリングしてA/D変換する。ADC13b1〜13bNはそれぞれ、A/D変換後の受信信号S1〜SNを整相加算部13cに出力する。
【0027】
整相加算部13cは、A/D変換された受信信号S1〜SNに対してそれぞれ遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)する。整相加算部13cは、整相加算された受信信号を、整相加算信号BFとして画像生成部14に出力する。
【0028】
より具体的には、整相加算部13cは、図4に示すように、タイミング調整部301c、加算器302c、乗算器303c、乗算器304c、加算器305c、係数乗算器306c、コヒーレンスファクタ算出部307c、リミッタ設定部308c、γ補正部309c、コヒーレンスファクタ乗算器310c、及び、スイッチSW1〜SW3を備えている。
【0029】
タイミング調整部301c(301c1〜301cN)は、基準時間tに対してチャンネル毎に定められた遅延量Δtiだけ遅延した受信信号が出力されるように、ADC13b1〜13bNより入力された受信信号S1〜SNの出力タイミングをそれぞれ調整する。
このようにして、タイミング調整部301c1〜301cNは、受信信号S1〜SNに対してそれぞれ遅延時間を与えて時相を整える。
【0030】
加算器302cは、タイミング調整部301c1〜301cNによって時相の調整された受信信号S1〜SNを加算し、その結果を出力する。
本実施の形態では、以上のようにして、タイミング調整部301c及び加算器302cにより受信信号の整相加算を行う。ここで、整相加算後の受信信号φ(t)については、下記式(2)によって表すことができる。なお、下記式(2)において、tは基準時間を表し、Δtiは、チャンネル1〜Nのそれぞれに対応する遅延量を表し、Ci(t+Δti)は、基準時間tから遅延量Δtiだけ遅延したタイミングにおける受信信号S1〜SNの信号の大きさを表す。
【数2】
【0031】
乗算器303cは、加算器302cから出力された整相加算後の受信信号を二乗し、その結果をコヒーレントサムCSとしてコヒーレンスファクタ算出部307cに出力する。また、加算器302cから出力された整相加算後の受信信号は、コヒーレンスファクタ乗算器310cにも出力される。
【0032】
一方、乗算器304c1〜304cNは、タイミング調整部301c1〜301cNから出力された受信信号S1〜SNをそれぞれ二乗し、その結果をそれぞれ出力する。
加算器305cは、乗算器304c1〜304cNからの出力結果を加算し、その結果を出力する。
係数乗算器306cは、加算器305cからの出力結果を、使用する振動子の数で乗じ、その結果をインコヒーレントサムISとしてコヒーレンスファクタ算出部307cに出力する。
【0033】
コヒーレンスファクタ算出部307cは、入力したコヒーレントサムCSとインコヒーレントサムISとからコヒーレンスファクタを算出し、その結果をコヒーレンスファクタCFとして出力する。コヒーレンスファクタは、インコヒーレントサムに対するコヒーレントサムの割合を示すものであり、整相加算後の受信信号が理想的であるか否かを示す指標となるものである。すなわち、コヒーレンスファクタは、理想的な整相加算後の受信信号に対する誤差の度合いを示すものである。本実施の形態では、以上のように構成されているため、インコヒーレントサムIS(t)に対するコヒーレントサムCS(t)の割合であるコヒーレンスファクタCF(t)を、下記式(3)によって求めることができる。ここで、Nは使用する振動子の数(開口数)を示している。
【数3】
【0034】
リミッタ部の一例としてのリミッタ設定部308cは、コヒーレンスファクタCFを入力し、入力したコヒーレンスファクタCFが予め設定された下限値未満である場合には、コヒーレンスファクタCFを下限値に補正して出力する。本実施の形態では、例えば、下限値を「−12dB」及び「−18dB」の何れかに設定することができる。なお、下限値については任意の値とすることができる。また、本実施の形態では、スイッチSW1によってリミッタ設定部308cの機能のON/OFFを切り替えることができる。スイッチSW1は、例えば、操作入力部11によるユーザの設定操作にて切り替えが可能となっている。これにより、ユーザは、場面に応じた補正をかけることが可能となっている。
【0035】
コヒーレンスファクタ変換部の一例としてのγ補正部309cは、コヒーレンスファクタCFを入力し、入力値からこれに対応する出力値に変換して出力する。具体的には、γ補正部309cは、入力したコヒーレンスファクタCFを入力値とし、これに対して補正値(γ)をべき乗して出力値を得る。本実施の形態では、例えば、補正値(γ)を「γ=0.75」及び「γ=0.5」の何れかに設定することができる。なお、補正値(γ)は上述したものに限定されないが、「0<γ<1」の範囲で設定するのが望ましい。
【0036】
ここで、リミッタ設定部308cによって下限が−12dBに制限されたコヒーレンスファクタCFを入力値とした場合の入力値と出力値との関係を図5に示し、リミッタ設定部308cによって下限が−18dBに制限されたコヒーレンスファクタCFを入力値とした場合の入力値と出力値との関係を図6に示す。図5及び図6中、それぞれ、横軸は入力値を示し、縦軸は出力値を示す。また、図5及び図6中、それぞれ、Aは、補正値(γ)が「γ=1.0」である場合、すなわち、γ補正部309cによる補正が行われない場合の入力値と出力値との関係を示す。また、Bは、補正値(γ)が「γ=0.75」である場合の入力値と出力値との関係を示す。また、Cは、補正値(γ)が「γ=0.5」である場合の入力値と出力値との関係を示す。
このように、本実施の形態では、上述したようにして入力したコヒーレンスファクタに対して補正値(γ)をべき乗することにより、入力したコヒーレンスファクタが小さいほど出力値が大きくなるように値を持ち上げることができる。
【0037】
なお、本実施の形態では、コヒーレンスファクタに対して所定値をべき乗することで出力値が非線形的に得られるように構成したが、例えば、コヒーレンスファクタに対して所定値を乗じる等、入力値に対して出力値が線形的に得られるようにしてもよい。また、入力値に対して出力値が一義的に定められたLUT(Look Up Table)等のテーブルを利用する構成としてもよい。また、入力値に対して対数演算を実施して出力値が得られるようにしてもよい。また、入力値に対する出力値を、入力値毎に個別に設定できるように構成してもよい。また、フォーカス点の深度に応じて入力値に対する出力値の関係を変更するようにしてもよい。
【0038】
また、本実施の形態では、スイッチSW2によってγ補正部309cの機能のON/OFFを切り替えることができる。スイッチSW2は、例えば、操作入力部11によるユーザの設定操作にて切り替えが可能となっている。これにより、ユーザは、場面に応じた補正をかけることが可能となっている。
【0039】
以上のように、リミッタ設定部308c及びγ補正部309cは、コヒーレンスファクタ補正部を構成する。
なお、本実施の形態では、上述のようにしてリミッタ設定部308c及びγ補正部309cをそれぞれ選択的に機能させてコヒーレンスファクタの補正を行うように構成したが、リミッタ設定部308c及びγ補正部309cによる補正を必ず実施する構成としてもよい。また、リミッタ設定部308c及びγ補正部309cの何れか一方のみ設けられた構成としてもよい。また、本実施の形態では、リミッタ設定部308cによってコヒーレンスファクタの下限を制限した後に、γ補正部309cによる補正が行われるように構成したが、γ補正部309cによる補正を行った後に、リミッタ設定部308cによるコヒーレンスファクタの下限の制限が行われるようにしてもよい。
【0040】
信号補正部の一例としてのコヒーレンスファクタ乗算器310cは、加算器302cから出力された整相加算後の受信信号に対して、コヒーレンスファクタ算出部307c、リミッタ設定部308c又はγ補正部309cから出力されたコヒーレンスファクタCFを係数として乗じ、その結果を整相加算信号BFとして画像生成部14に出力する。
本実施の形態では、このようにして、整相加算後の受信信号に対して重み付けを行うことができる。また、リミッタ設定部308cによるコヒーレンスファクタの下限の制限を実施した場合には、受信信号に対する重み付け量が極めて小さくなるようなことが抑制できるので、受信信号の大きさをある程度確保することができ、ノイズ部分が抑圧されすぎていわゆる黒抜けが発生するのを低減することができるようになる。また、γ補正部309cによるコヒーレンスファクタの変換を行った場合には、コヒーレンスファクタが小さいほど持ち上がるように補正されるので、黒抜けの発生をより効果的に低減することができるようになる。
【0041】
また、本実施の形態では、スイッチSW3によってコヒーレンスファクタ乗算器310cの機能のON/OFFを切り替えることができる。スイッチSW3は、例えば、操作入力部11によるユーザの設定操作にて切り替えが可能となっている。すなわち、本実施の形態では、整相加算部13cは、整相加算後の受信信号に対して、コヒーレンスファクタによる重み付けを行うか否かについて切り替え可能に構成されている。スイッチSW3によりコヒーレンスファクタ乗算器310cの機能がOFFとなった場合には、加算器302cから出力された整相加算後の受信信号が整相加算信号BFとして画像生成部14に出力される。これにより、ユーザは、場面に応じて、コヒーレンスファクタの適用の可否を選択して超音波診断画像を取得することができるようになる。
【0042】
画像生成部14は、図2に示すように、受信部13からの整相加算信号BFに対して包絡線検波処理や対数増幅などを実施し、ダイナミックレンジやゲインの調整を行って輝度変換することにより、Bモード画像データを生成する。すなわち、Bモード画像データは、受信信号の強さを輝度によって表したものである。
【0043】
メモリ部15は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリによって構成されており、画像生成部14から送信されたBモード画像データをフレーム単位で記憶する。すなわち、メモリ部15は、フレーム単位により構成された超音波診断画像データとして記憶することができる。そして、記憶された超音波診断画像データは、制御部18の制御に従って、DSC16に送信される。
【0044】
DSC16は、メモリ部15より受信した超音波診断画像データをテレビジョン信号の走査方式による画像信号に変換し、表示部17に出力する。
【0045】
表示部17は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ、無機ELティスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示装置が適用可能である。表示部17は、DSC16から出力された画像信号に従って表示画面上に超音波診断画像の表示を行う。なお、表示装置に代えてプリンタ等の印刷装置等を適用してもよい。
【0046】
制御部18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えて構成され、ROMに記憶されているシステムプログラム等の各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波診断装置100の各部の動作を集中制御する。
ROMは、半導体等の不揮発メモリ等により構成され、超音波診断装置100に対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、各種データ等を記憶する。これらのプログラムは、コンピュータが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【実施例1】
【0047】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、勿論本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
[実施例1]
本実施の形態による超音波診断装置100により、複数のワイヤーを有する所定のファントムに対して超音波の送受信を行って得られた受信信号を整相加算し、整相加算後の受信信号に対し、下限値が−18dBに設定されたコヒーレンスファクタを乗じて補正し、これに基づいて画像化した。その画像を図7に示す。
【0049】
[実施例2]
同様に、下限値を−18dBとした上で、補正値(γ=0.75)をべき乗して得られた補正後のコヒーレンスファクタを整相加算後の受信信号に対して乗じて補正し、これに基づいて画像化した。その画像を図8に示す。
【0050】
[実施例3]
同様に、下限値を−18dBとした上で、補正値(γ=0.5)をべき乗して得られた補正後のコヒーレンスファクタを整相加算後の受信信号に対して乗じて補正し、これに基づいて画像化した。その画像を図9に示す。
【0051】
[実施例4]
同様に、整相加算後の受信信号に対し、下限値が−12dBに設定されたコヒーレンスファクタを乗じて補正し、これに基づいて画像化した。その画像を図10に示す。
【0052】
[実施例5]
同様に、下限値を−12dBとした上で、補正値(γ=0.75)をべき乗して得られた補正後のコヒーレンスファクタを整相加算後の受信信号に対して乗じて補正し、これに基づいて画像化した。その画像を図11に示す。
【0053】
[実施例6]
同様に、下限値を−12dBとした上で、補正値(γ=0.5)をべき乗して得られた補正後のコヒーレンスファクタを整相加算後の受信信号に対して乗じて補正し、これに基づいて画像化した。その画像を図12に示す。
【0054】
[比較例1]
比較例1として、本実施の形態による超音波診断装置100により、上述のファントムに対して超音波の送受信を行って得られた受信信号を整相加算し、整相加算後の受信信号に対するコヒーレンスファクタによる重み付けは行わず、これに基づいて画像化した。その画像を図13に示す。
【0055】
[比較例2]
比較例2として、本実施の形態による超音波診断装置100により、上述のファントムに対して超音波の送受信を行って得られた受信信号を整相加算し、整相加算後の受信信号に対してコヒーレンスファクタによる重み付けを行うが、下限値の設定及び補正値の適用によるコヒーレンスファクタの補正は行わず、これに基づいて画像化した。その画像を図14に示す。
【0056】
[結果]
比較例2では、比較例1に比べ、ノイズが大きく抑圧されているので、分解能の高い画像が得られている。また、比較例1による画像では、サイドローブが目立つ一方、比較例2による画像ではサイドローブは抑圧されているが、コヒーレンスファクタが局所的に極小となるため、抑圧の度合いが大きくなり、サイドローブ部分に黒抜けが発生している。また、比較例2による画像では、特に深部における受信信号が微弱であるとともに、コヒーレンスファクタも極小となるため、黒抜けが目立っている。
【0057】
これに対し、実施例1では、比較例2に比べ、深部における黒抜けがやや軽減された、分解能の高い画像が得られた。さらに、実施例2及び3による画像では、黒抜けも大きく減少した。特に実施例3による画像では、サイドローブ部分の黒抜けが目立たない程度となった。一方で、実施例1〜3による画像によれば、補正値を小さくするほど、ノイズが表れるようになることがわかった。
【0058】
また、実施例4〜6による画像では、コヒーレンスファクタの下限が実施例1〜3よりも高く設定されているので、サイドローブ部分や深部における黒抜けが実施例1〜3による画像よりもそれぞれ低減されている。
【0059】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、超音波探触子2は、複数の振動子2a1〜2aNにて、駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信して振動子2a1〜2aN毎に受信信号を得る。整相加算部13cは、振動子2a1〜2aN毎の受信信号を整相加算する。画像生成部14は、整相加算後の受信信号に基づいて超音波診断画像を表示するための画像データを生成する。コヒーレンスファクタ算出部307cは、複数の振動子2a1〜2aNによって得られた受信信号に基づき、インコヒーレントサムISに対するコヒーレントサムCSの割合であるコヒーレンスファクタCFを算出する。リミッタ設定部308c及びγ補正部309cは、コヒーレンスファクタ算出部307cによって算出されたコヒーレンスファクタCFに対して補正を行う。コヒーレンスファクタ乗算器310cは、リミッタ設定部308c及び/又はγ補正部309cによって補正されたコヒーレンスファクタCFを係数として、整相加算後の受信信号に乗じることによって、整相加算後の受信信号を補正する。その結果、コヒーレンスファクタを適用して整相加算後の受信信号の補正を行うので、S/Nの改善された画像データを生成することができる。また、コヒーレンスファクタの補正を行うことにより、コヒーレンスファクタを適用することによって生じる黒抜けが低減された画像データを生成することができる。また、コヒーレンスファクタを補正することにより、実現可能であるので、複雑な回路構成を必要とせず、簡素な構成にて実現することができる。
【0060】
また、本発明の実施の形態によれば、リミッタ設定部308cは、コヒーレンスファクタCFが所定の下限値未満であるときにコヒーレンスファクタCFを下限値に補正する。その結果、コヒーレンスファクタが下限値未満にならないので、ノイズの抑圧をある程度まで制限して黒抜けを緩和させることができる。
【0061】
また、本発明の実施の形態によれば、γ補正部309cは、コヒーレンスファクタCFを入力し、入力したコヒーレンスファクタCFに対応する出力値が得られるようにコヒーレンスファクタを補正する。その結果、コヒーレンスファクタを好ましい値に変更することができ、ユーザの所望とする画像データを得ることができるようになる。
【0062】
また、本発明の実施の形態によれば、γ補正部309cは、入力したコヒーレンスファクタCFに対してγ乗(0<γ<1)して出力値を得る。その結果、コヒーレンスファクタが小さいほど持ち上がるように補正されるので、黒抜けの発生がより効果的に低減された画像データを得ることができるようになる。
【0063】
なお、本発明の実施の形態における記述は、本発明に係る超音波診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。超音波診断装置を構成する各機能部の細部構成及び細部動作に関しても適宜変更可能である。
【0064】
また、本実施の形態では、受信信号をサンプリングしてA/D変換した後に整相加算を行うようにしたが、A/D変換を行わないで整相加算する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
S 超音波診断装置
1 超音波診断装置本体
2 超音波探触子
2a 振動子
13 受信部
13c 整相加算部
307c コヒーレンスファクタ算出部
308c リミッタ設定部
309c γ補正部
310c コヒーレンスファクタ乗算器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の振動子にて、駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信して振動子毎に受信信号を得る超音波探触子と、前記振動子毎の受信信号を整相加算する整相加算部と、整相加算後の受信信号に基づいて超音波診断画像を表示するための画像データを生成する画像処理部と、を備えた超音波診断装置において、
前記複数の振動子によって得られた受信信号に基づき、インコヒーレントサムに対するコヒーレントサムの割合であるコヒーレンスファクタを算出するコヒーレンスファクタ算出部と、
前記コヒーレンスファクタ算出部によって算出されたコヒーレンスファクタに対して補正を行うコヒーレンスファクタ補正部と、
前記コヒーレンスファクタ補正部によって補正されたコヒーレンスファクタを係数として、前記整相加算後の受信信号に乗じることによって、前記整相加算後の受信信号を補正する信号補正部と、
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記複数の振動子はN個(Nは正整数)の振動子であって、
前記コヒーレンスファクタ算出部は、基準となる任意の時間をtとし、前記N個の振動子のうちの任意の一の振動子をチャンネルiとし、当該チャンネルiに設定された遅延量をΔtiとし、時間tに遅延量Δtiを加算した時間におけるチャンネルiの受信信号をCi(t+Δti)としたとき、前記コヒーレンスファクタCF(t)を、次式(1)によって算出することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【数1】
【請求項3】
前記コヒーレンスファクタ補正部は、前記コヒーレンスファクタが所定の下限値未満であるときに前記コヒーレンスファクタを前記下限値に補正するリミッタ部を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記コヒーレンスファクタ補正部は、前記コヒーレンスファクタを入力し、該入力したコヒーレンスファクタに対応する出力値が得られるように前記コヒーレンスファクタを補正するコヒーレンスファクタ変換部を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記コヒーレンスファクタ変換部は、前記入力したコヒーレンスファクタに対してγ乗(0<γ<1)して前記出力値を得ることを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項1】
複数の振動子にて、駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信して振動子毎に受信信号を得る超音波探触子と、前記振動子毎の受信信号を整相加算する整相加算部と、整相加算後の受信信号に基づいて超音波診断画像を表示するための画像データを生成する画像処理部と、を備えた超音波診断装置において、
前記複数の振動子によって得られた受信信号に基づき、インコヒーレントサムに対するコヒーレントサムの割合であるコヒーレンスファクタを算出するコヒーレンスファクタ算出部と、
前記コヒーレンスファクタ算出部によって算出されたコヒーレンスファクタに対して補正を行うコヒーレンスファクタ補正部と、
前記コヒーレンスファクタ補正部によって補正されたコヒーレンスファクタを係数として、前記整相加算後の受信信号に乗じることによって、前記整相加算後の受信信号を補正する信号補正部と、
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記複数の振動子はN個(Nは正整数)の振動子であって、
前記コヒーレンスファクタ算出部は、基準となる任意の時間をtとし、前記N個の振動子のうちの任意の一の振動子をチャンネルiとし、当該チャンネルiに設定された遅延量をΔtiとし、時間tに遅延量Δtiを加算した時間におけるチャンネルiの受信信号をCi(t+Δti)としたとき、前記コヒーレンスファクタCF(t)を、次式(1)によって算出することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【数1】
【請求項3】
前記コヒーレンスファクタ補正部は、前記コヒーレンスファクタが所定の下限値未満であるときに前記コヒーレンスファクタを前記下限値に補正するリミッタ部を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記コヒーレンスファクタ補正部は、前記コヒーレンスファクタを入力し、該入力したコヒーレンスファクタに対応する出力値が得られるように前記コヒーレンスファクタを補正するコヒーレンスファクタ変換部を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記コヒーレンスファクタ変換部は、前記入力したコヒーレンスファクタに対してγ乗(0<γ<1)して前記出力値を得ることを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−231819(P2012−231819A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100579(P2011−100579)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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