説明

超音波診断装置

【課題】血管壁の厚みの測定や、腫瘍のサイズなど、被検体内の様々な診断部位をより精度良く診断することができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】被検体内における超音波の速度分布を検出する音速分布検出手段と、音速分布検出手段が検出した速度分布を、超音波の送受信方向に微分して、音速微分値を算出する微分値算出手段とを有することにより、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を送受信することにより生体内の臓器等の撮像を行って、診断のために用いられる超音波診断画像を生成する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断装置が実用化されている。一般に、この種の超音波診断装置は、振動子アレイを内蔵した超音波探触子(超音波プローブ)と、この超音波探触子に接続された装置本体とを有しており、超音波探触子から被検体に向けて超音波を送信し、被検体からの超音波エコーを超音波探触子で受信して、その受信信号を装置本体で電気的に処理することにより超音波画像が生成される。
【0003】
ところで、超音波診断装置において、超音波画像を生成するとき、被検体の生体内の音速は一定であると仮定して、超音波画像を生成している。しかしながら、実際の生体内の音速値にはばらつきがあるため、このばらつきによって、超音波画像には空間的な歪みが生じていた。
これに対して、近年、被検体内の診断部位をより精度よく診断するために、任意の診断部位における音速値(局所音速値)を測定し、このような画像の歪みを補正することが行われている。
超音波画像の歪みを補正することにより、例えば、血管壁の厚みの測定や、腫瘍のサイズなど様々な部位の計測の精度が向上する。
【0004】
例えば、特許文献1には、診断部位の周辺に複数の格子点を設定し、各格子点に対して超音波ビームを送受信することにより得られる受信データに基づいて、局所音速値の演算を行う超音波診断装置が提案されている。
また、特許文献2には、複数の第1の領域において、フォーカス処理におけるビーム集束度を判定し、各領域について音速値を求め、さらに、第1の領域よりも細分化された複数の第2の領域について音速値を求める超音波診断装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−99452号公報
【特許文献2】特開2009−279306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および特許文献2に記載の超音波診断装置では、超音波プローブから被検体内に向けて超音波ビームを送受信することで、生体内における局所音速値を求めることができ、例えばBモード画像に局所音速値の情報を重畳させて表示することが可能となる。
しかしながら、局所音速値を求めるために、設定した格子点や領域に向けて、超音波ビームを送信する際には、正確な音速が不明であるため、設定した格子点や領域とは、ずれた位置に超音波ビームが送信されてしまう。そのため、正確な局所音速値を求めることはできず、超音波画像の歪みを正確に補正することはできない。従って、血管壁の厚みの測定や、腫瘍のサイズなど様々な部位の計測を正確に行なうことはできない。
【0007】
本発明の目的は、血管壁の厚みの測定や、腫瘍のサイズなど、被検体内の様々な診断部位をより精度良く診断することができる超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、超音波探触子の振動子アレイから、被検体に超音波を送信すると共に、被検体からの超音波エコーを受信した前記振動子アレイが出力する受信信号に基づいて超音波画像を生成する超音波診断装置において、前記被検体内における超音波の速度分布を検出する音速分布検出手段と、前記音速分布検出手段が検出した前記速度分布を、超音波の送受信方向に微分する微分手段とを有することを特徴とする超音波診断装置を提供する。
【0009】
ここで、前記微分手段が前記音速分布を微分した微分結果を、前記超音波画像に重畳して表示することが好ましい。
また、前記微分手段は、前記音速分布を微分して得られる音速微分値を、超音波の送受信方向と直交する方向に配列して出力することが好ましい。
【0010】
また、前記微分結果を、色に変換して、前記超音波画像に重畳して表示することが好ましい。
あるいは、前記微分結果を、濃度に変換して、前記超音波画像に重畳して表示することが好ましい。
【0011】
また、前記微分手段は、前記音速分布検出手段が検出した前記速度分布に、超音波の送受信方向に平滑化フィルタを掛けた後に、超音波の送受信方向の微分を行なってもよい。
さらに、前記超音波画像上において、超音波の音速が一定とみなせる領域を設定する領域設定部を有し、前記微分手段は、前記領域設定部が設定した領域内においては、超音波の音速は一定として、超音波の送受信方向の微分を行なうことが好ましい。
また、前記音速分布検出手段が検出した前記速度分布を、前記超音波画像に重畳して表示することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記構成を有する本発明の超音波診断装置によれば、被検体内における超音波の速度分布を検出し、検出した速度分布を、超音波の送受信方向に微分して、音速微分値を算出し、超音波画像に重畳して表示するので、生体内の診断部位の境界を正確に求めることができ、被検体内の診断部位をより精度よく診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の構成を概念的に示すブロック図である。
【図2】(A)および(B)は、音速演算の原理を模式的に示す図である。
【図3】(A)および(B)超音波画像を模式的に示す図である。
【図4】(A)は、図3(A)のA−A線における音速値の一例を模式的に示すグラフであり、(B)は、(A)の音速微分値を模式的に示すグラフである。
【図5】(A)および(B)は、音速値の一例を模式的に示すグラフである。
【図6】超音波画像を模式的に示す図である。
【図7】音速値の一例を模式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の超音波診断装置について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の超音波診断装置の一例の構成を概念的に示すブロック図である。
超音波診断装置10は、超音波プローブ12と、超音波プローブ12に接続される送信回路14および受信回路16と、画像生成手段18と、シネメモリ22と、音速マップ生成部24と、微分値算出部26と、表示制御部32と、表示部34と、制御部36と、操作部38と、格納部40とを有する。
なお、図示例の超音波診断装置10は、超音波画像の撮像と音速マップの生成を行なう構成を有すると共に、生成した音速値を、超音波の送受信方向に微分して、音速微分値を算出する構成を有するものである。
【0016】
超音波プローブ12は、通常の超音波診断装置に用いられる振動子アレイ42を有する。
振動子アレイ42は、1次元又は2次元に配列された複数の超音波トランスデューサを有している。これらの超音波トランスデューサは、超音波画像の撮像の際に、それぞれ送信回路14から供給される駆動信号に従って超音波ビームを送信すると共に、光照射手段が光を照射することにより発生する超音波と、被検体からの超音波エコーとを受信して受信信号を出力する。
【0017】
各超音波トランスデューサは、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子、PMN−PT(マグネシウムニオブ酸・チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成した振動子によって構成される。
【0018】
そのような振動子の電極に、パルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生して、それらの超音波の合成により超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することにより伸縮して電気信号を発生し、それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0019】
送信回路14は、例えば、複数のパルサを含んでおり、制御部36からの制御信号に応じて選択された送信遅延パターンに基づいて、振動子アレイ42の複数の超音波トランスデューサから送信される超音波が超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号の遅延量を調節して複数の超音波トランスデューサに供給する。
【0020】
受信回路16は、振動子アレイ42の各超音波トランスデューサから送信される受信信号を増幅してA/D変換した後、制御部36からの制御信号に応じて選択された受信遅延パターンに基づいて設定される音速または音速の分布に従い、各受信信号にそれぞれの遅延を与えて加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれた受信データ(音線信号)が生成される。
受信回路16は、受信データを画像生成手段18、シネメモリ22、および、音速マップ生成部24に供給する。
【0021】
画像生成手段18は、受信回路16から供給された受信データから超音波画像を生成するものである。
画像生成手段18は、信号処理部46、DSC48、画像処理部50、および、画像メモリ52を有する。
【0022】
信号処理部46は、受信回路16で生成された受信データに対し、超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施すことにより、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。
【0023】
DSC(digital scan converter)48は、信号処理部46で生成されたBモード画像信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)する。
【0024】
画像処理部50は、DSC48から入力されるBモード画像信号に階調処理等の各種の必要な画像処理を施した後、Bモード画像信号を表示制御部32に出力する、あるいは画像メモリ52に格納する。
【0025】
表示制御部32は、画像処理部50によって画像処理が施されたBモード画像信号に基づいて、表示部34に超音波診断画像を表示させる。
表示部34は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、表示制御部32の制御の下で、超音波診断画像を表示する。
【0026】
シネメモリ22は、受信回路16から出力される受信データを順次格納する。また、シネメモリ22は、制御部36から入力されるフレームレートに関する情報(例えば、超音波の反射位置の深度、走査線の密度、視野幅を示すパラメータ)を上記の受信データに関連付けて格納する。
【0027】
音速マップ生成部24は、制御部36による制御の下で、診断対象となる被検体内の組織における局所音速値を演算し、音速値と位置情報とを示す音速マップを生成する部位である。
音速マップ生成部24が行なう局所音速値の演算方法には、特に限定はなく、例えば本願の出願人により出願された特開2010−99452号公報に記載の方法により行うことができる。
【0028】
この方法は、図2(A)に示されるように、被検体内に超音波を送信した際に、被検体の反射点となる格子点Xから振動子アレイ42に到達する受信波Wxに着目したとき、図2(B)に示されるように、格子点Xよりも浅い位置、すなわち振動子アレイ42に近い位置に複数の格子点A1、A2、・・・を等間隔に配列し、格子点Xからの受信波を受けた複数の格子点A1、A2、・・・からのそれぞれの受信波W1、W2、・・・の合成波Wsumが、ホイヘンスの原理により、格子点Xからの受信波Wxに一致することを利用して、格子点Xにおける局所音速値を求める方法である。
【0029】
まず、すべての格子点X、A1、A2、・・・に対する最適音速値をそれぞれ求める。ここで、最適音速値とは、各格子点に対し、設定音速に基づきフォーカス計算をして撮影を行うことにより超音波画像を形成し、設定音速を種々変化させたときに画像のコントラスト、シャープネスが最も高くなる音速値であり、例えば特開平8−317926号公報に記載のように、画像のコントラスト、スキャン方向の空間周波数、分散等に基づいて最適音速値の判定を行うことができる。
【0030】
次に、格子点Xに対する最適音速値を用いて、格子点Xから発せられる仮想的な受信波Wxの波形を算出する。
さらに、格子点Xにおける仮定的な局所音速値Vを種々変化させて、それぞれ格子点A1、A2、・・・からの受信波W1、W2、・・・の仮想的な合成波Wsumを算出する。このとき、格子点Xと各格子点A1、A2、・・・との間の領域Rxaにおける音速は一様で、格子点Xにおける局所音速値Vに等しいものと仮定する。格子点Xから伝播した超音波が格子点A1、A2、・・・に到達するまでの時間はXA1/V、XA2/V、・・・となる。ここで、XA1、XA2、・・・は、それぞれ格子点A1、A2、・・・と格子点Xとの間の距離である。そこで、格子点A1、A2、・・・からそれぞれ時間XA1/V、XA2/V、・・・だけ遅延して発した反射波を合成することにより、仮想的な合成波Wsumを求めることができる。
【0031】
次に、このように格子点Xにおける仮定的な局所音速値Vを種々変化させて算出された複数の仮想的な合成波Wsumと格子点Xからの仮想的な受信波Wxとの誤差をそれぞれ算出し、誤差が最小になる仮定的な局所音速値Vを格子点Xにおける局所音速値と判定する。ここで、仮想的な合成波Wsumと格子点Xからの仮想的な受信波Wxとの誤差の算出方法としては、互いの相互相関をとる方法、受信波Wxに合成波Wsumから得られる遅延を掛けて位相整合加算する方法、合成波Wsumに受信波Wxから得られる遅延を掛けて位相整合加算する方法等を採用することができる。
以上のようにして、被検体内の各部における局所音速値を演算し、被検体内の音速マップを生成することができる。
音速マップ生成部24は、生成した音速マップを微分値算出部26に供給する。
【0032】
微分値算出部26は、音速マップ生成部24から供給された音速マップを超音波の送受信方向に微分して、音速微分値を算出する部位である。
【0033】
図3(A)および(B)は、中央に楕円で示す対象部位Pと、その周辺部分とで組織が異なる場合の超音波画像を模式的に示す図である。また、図4(A)は、図3(A)のA−A線における音速値を模式的に示すグラフであり、図4(B)は、図4(A)の音速値を微分して求めた音速微分値を模式的に示すグラフである。
図4(A)に示すように、対象部位Pとその周辺部位のように、生体内において異なる組織間では、それぞれ音速値が異なる。従って、音速マップを、超音波の送受信方向に微分して、図4(B)に示すような音速微分値を求めることにより、音速微分値が変化する位置から、異なる組織の間の境界、すなわち、対象部位Pの境界の位置を求めることができる。また、求めた音速微分値を、超音波画像に重畳して表示することにより、異なる組織の間の境界を表示することができる。
なお、音速微分値を、超音波画像に重畳して表示する際には、例えば、図3(B)に示すように、所定の第1閾値以上の音速微分値と、所定の第2閾値以下の音速微分値のみを表示するようにしてもよい。あるいは、音速微分値の値に応じて、色分けして表示してもよいし、音速微分値を濃度(輝度)に変換して表示してもよい。
【0034】
前述のとおり、局所音速値を求めて、超音波画像の歪みを補正することにより、例えば、血管壁の厚みの測定や、腫瘍のサイズなど様々な部位の計測の精度を向上させることができる。しかしながら、局所音速値を求めるために超音波ビームを送信する際には、正確な音速値が不明であるため、設定した送信位置に、正確に超音波ビームを送信することができず、正確な局所音速値を求めることはできない。そのため、超音波画像の歪みを正確に補正することはできず、各部位の計測を正確に行なうことはできない。
【0035】
これに対して、本発明は、被検体内における超音波の速度分布を検出し、検出した速度分布を、超音波の送受信方向に微分して、音速微分値を算出し、超音波画像に重畳して表示する。
ここで、超音波の送受信を行なって局所音速値を求めた場合には、超音波の送受信方向と直交する方向においては、屈折の影響等により、音速値の絶対値のみでなく、相対的な値の変化も、正確に捉える事ができない。一方、超音波の送受信方向においては、音速値の変化については、正確に捉えることができる。そのため、本発明においては、検出した速度分布を、超音波の送受信方向に微分して、音速微分値を算出することによって、音速値が変化した位置、すなわち、異なる組織の間の境界の位置を正確に求めることができる。したがって、血管壁の厚みの測定や、腫瘍のサイズなど様々な部位の計測を正確に行なうことができる。
【0036】
なお、超音波診断装置10は、複数の表示モードを有し、表示モードを選択することによって、表示部34に所望の画像を表示する構成であってもよい。例えば、超音波画像(Bモード画像)を単独で表示するモードと、Bモード画像に音速微分値を重畳して表示するモード(例えば、音速微分値に応じて色分けまたは輝度を変化させる表示、あるいは音速微分値が等しい点を線で結ぶ表示)とを有し、操作者が操作部38から、いずれかの表示モードを選択する構成としてもよい。
【0037】
制御部36は、操作者により操作部38から入力された指令に基づいて超音波診断装置各部の制御を行う。
操作部38は、操作者が入力操作を行うためのものであり、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパネル等から形成することができる。
【0038】
格納部40は、動作プログラム等を格納するもので、ハードディスク、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROM、DVD−ROM等の記録媒体を用いることができる。
なお、信号処理部46、DSC48、画像処理部50、表示制御部32、音速マップ生成部24および微分値算出部26は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。
【0039】
次に超音波診断装置10の動作について説明する。
操作者は、超音波プローブ12を被検体の表面に当接する。この状態で、送信回路14から供給される駆動信号に従って振動子アレイ42から超音波ビームが送信され、被検体からの超音波エコーを、振動子アレイ42が受信し、受信信号を出力する。
受信回路16は、受信信号から受信データを生成し、画像生成手段18に供給する。画像生成手段18の信号処理部46は、受信データを処理してBモード画像信号を生成する。Bモード画像信号を、DSC48がラスター変換し、画像処理部50が画像処理を施し、超音波画像が生成される。生成された超音波画像は、画像メモリ52に格納されると共に、表示制御部32により超音波画像が表示部34に表示される。
また、受信回路16は、受信データを、シネメモリ22および音速マップ生成部24に供給する。音速マップ生成部24は、受信データから被検体内の各部の局所音速値を演算し、音速マップを生成して、微分値算出部26に供給する。微分値算出部26は、音速マップから音速微分値を算出する。算出された音速微分値は、DSC48でラスター変換され、画像処理部50で各種の画像処理が施された後、表示制御部32に送られる。そして、操作者により操作部38から入力された表示モードに従って、Bモード画像に音速微分値を重畳した状態で表示部34に表示される。
【0040】
このように本発明に係る超音波診断装置10は、被検体内における超音波の速度分布を検出し、検出した速度分布を、超音波の送受信方向に微分して、音速微分値を算出し、超音波画像に重畳して表示することにより、異なる組織の間の境界の位置を正確に求めることができ、血管壁の厚みの測定や、腫瘍のサイズなど様々な部位の計測を正確に行なうことができる。
【0041】
なお、図示例においては、超音波画像全体の局所音速値をマップ化した音速マップを、超音波の送受信方向に微分して音速微分値を求めて、所定の第1閾値以上の音速微分値と、所定の第2閾値以下の音速微分値のみを表示する構成としたが、本発明は、これに限定はされず、超音波の送受信方向を延在方向とする1ライン、あるいは、数ラインについて、局所音速値を微分して、音速微分値を求めて、局所音速値の変化位置を表示するようにしてもよい。
【0042】
また、図5(A)に示すように、算出した局所音速値の分布(音速マップ)に含まれるノイズが大きい場合には、音速マップに、平滑化フィルタを掛けて、図5(B)に示すように平滑化して、その後、音速マップを超音波の送受信方向に微分するようにしてもよい。
なお、平滑化フィルタとしては、特に限定はなく、移動平均フィルタや加重平均フィルタ、あるいはローパスフィルタなど、各種の平滑化フィルタが利用可能である。
【0043】
また、音速マップに平滑化フィルタを掛けた場合には、局所音速値の変化がなだらかになってしまい、異なる組織の間の境界の位置が曖昧になってしまうおそれがある。そのため、図6に示すように、表示された超音波画像上で、各組織に対応して、局所音速値が一定とみなせる領域RaおよびRbをそれぞれ設定する領域設定部を有する構成として、図7に示すように、領域設定部が設定した領域RaおよびRbでの局所音速値を一定として、微分を行なって、音速微分値を求めるようにしてもよい。例えば、設定した領域での局所音速値は、領域内での局所音速値の平均値で一定とみなして、微分をおこなう。
なお、領域設定部は、操作者による操作部38からの指示に応じて、領域を設定するようにしても良いし、平滑化を行なった後に、自動的に設定するようにしてもよい。
【0044】
また、音速マップ生成部24が生成した音速マップを超音波画像に重畳して表示するようにしてもよく、音速マップを超音波画像に重畳して表示するモードを有し、表示モードの選択に応じて、音速マップを超音波画像に重畳して表示するようにしてもよい。
【0045】
また、信号処理部46は、受信回路から供給された受信データから、Bモード画像信号を生成する際に、音速マップ生成部24が生成した音速マップを利用して、Bモード画像信号を生成するようにしても良い。音速マップ生成部24が生成した音速マップを利用して、Bモード画像信号を生成することにより、より歪みの少ない超音波画像を生成することができる。
【0046】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0047】
10 超音波診断装置
12 超音波プローブ
14 送信回路
16 受信回路
18 画像生成手段
22 シネメモリ
24 音速マップ生成部
26 微分値算出部
32 表示制御部
34 表示部
36 制御部
38 操作部
40 格納部
42 振動子アレイ
46 信号処理部
48 DSC
50 画像処理部
52 画像メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波探触子の振動子アレイから、被検体に超音波を送信すると共に、被検体からの超音波エコーを受信した前記振動子アレイが出力する受信信号に基づいて超音波画像を生成する超音波診断装置において、
前記被検体内における超音波の速度分布を検出する音速分布検出手段と、
前記音速分布検出手段が検出した前記速度分布を、超音波の送受信方向に微分する微分手段とを有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記微分手段が前記音速分布を微分した微分結果を、前記超音波画像に重畳して表示する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記微分手段は、前記音速分布を微分して得られる音速微分値を、超音波の送受信方向と直交する方向に配列して出力する請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記微分結果を、色に変換して、前記超音波画像に重畳して表示する請求項2または3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記微分結果を、濃度に変換して、前記超音波画像に重畳して表示する請求項2または3に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記微分手段は、前記音速分布検出手段が検出した前記速度分布に、超音波の送受信方向に平滑化フィルタを掛けた後に、超音波の送受信方向の微分を行なう請求項1〜5のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記超音波画像上において、超音波の音速が一定とみなせる領域を設定する領域設定部を有し、
前記微分手段は、前記領域設定部が設定した領域内においては、超音波の音速は一定として、超音波の送受信方向の微分を行なう請求項1〜6のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記音速分布検出手段が検出した前記速度分布を、前記超音波画像に重畳して表示する請求項1〜7のいずれかに記載の超音波診断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate