説明

超音波診断装置

【課題】相関指標の分布に基づいて相関演算の結果を評価する。
【解決手段】画像形成部20は、収集されたエコーデータに基づいて超音波の画像データを形成する。相関演算部30は、複数の画像データに基づいて、画像データ間の相関演算により、その画像データ間の各変位ごとに相関値を算出する。画像データ間の各変位ごとに相関値が算出されて複数の変位に亘る相関値の分布が得られると、評価部40は、得られた相関値の分布に基づいて、画像データ間における相関演算の結果を評価する。評価部40は、相関値の分布から相関値に関する複数の極値を抽出し、それら複数の極値の分布状態から、相関演算の結果が適正か不適かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、画像データ間の相関演算に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を送受することにより得られる超音波画像の画像データに対して相関演算を行う超音波診断装置が知られている。例えば、時間的に変位する対象物を複数の画像データに亘って相関演算により追跡する技術や、プローブを移動させつつ得られる複数の画像データを相関演算により部分的に重ね合わせてパノラマ画像を形成する技術などが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
相関演算としては、例えば、位相限定相関法やパターンマッチング法(相互相関法、最小和絶対差法)などが知られている。これら相関演算の手法では、例えば、画像データ間の変位(dx,dy)ごとに相関指標C(dx,dy)が算出され、相関指標がピークとなる変位が推定変位(Δx,Δy)とされる。ここでピークとは、位相限定相関法や相互相関法では相関指標の最大値であり、最小和絶対差法では相関指標の最小値である。
【0004】
相関演算の結果が理想的な場合には、複数の変位(dx,dy)に亘って得られる相関指標の分布内で推定変位(Δx,Δy)の1箇所に急峻なピークが現れる。しかし、感度不足や対象物の想定外の動きなどの影響により、例えば急峻なピークが存在しない又は急峻なピークが複数存在するなど、相関指標の分布が理想的とは言えない場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3241243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した背景技術に鑑み、本願の発明者は、相関演算の結果を評価する技術について研究開発を重ねてきた。特に、相関演算により得られる相関指標の分布に注目した。
【0007】
本発明は、その研究開発の過程において成されたものであり、その目的は、相関指標の分布に基づいて相関演算の結果を評価する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的にかなう好適な超音波診断装置は、超音波を送受するプローブと、プローブを制御することにより受信信号を得る送受信部と、受信信号に基づいて超音波画像の画像データを形成する画像形成部と、複数の超音波画像に対応した複数の画像データに基づいて画像データ間の相関演算により当該画像データ間の各変位ごとに相関指標を算出する相関演算部と、複数の変位に亘って得られる相関指標の分布から相関指標の極値を抽出し、抽出された極値に基づいて前記相関演算の結果を評価する評価部と、を有することを特徴とする。
【0009】
上記構成において、相関演算としては、例えば、位相限定相関法やパターンマッチング法(相互相関法、最小和絶対差法)などが好適である。また、相関指標とは、例えば相関値などの相関関係の程度を示す数値であり、相関演算の各手法に応じた具体的な数式が用いられる。例えば、位相限定相関法や相互相関法では、相関が大きいほど(類似しているほど)値が大きくなる相関指標が利用され、最小和絶対差法では、相関が大きいほど値が小さくなる相関指標が利用される。そして、上記構成によれば、複数の変位に亘って得られる相関指標の分布から相関指標の極値が抽出され、抽出された極値に基づいて相関演算の結果が評価される。例えば、相関演算により得られた結果が適正か否かが判定される。
【0010】
望ましい具体例において、前記評価部は、相関が最大となる第1極値における相関指標が指標閾値に達しない場合に、前記相関演算が不適であると判定することを特徴とする。
【0011】
望ましい具体例において、前記評価部は、第1極値における相関指標が前記指標閾値に達する場合に、相関が大きい方から順に得られる第1極値を含むM個(Mは2以上の整数)の極値を対象として、第1極値と他の極値との比較に基づいて前記相関演算の結果を評価する、ことを特徴とする。
【0012】
望ましい具体例において、前記評価部は、相関が大きい方から順に得られる第1極値と第2極値との間における相関指標の差が指標差閾値に達する場合に、前記相関演算が適正であると判定する、ことを特徴とする。
【0013】
望ましい具体例において、前記評価部は、第1極値と第2極値との間における相関指標の差が前記指標差閾値に達しない場合に、第1極値と第2極値との間における距離に基づいて前記相関演算の結果を評価する、ことを特徴とする。
【0014】
望ましい具体例において、前記評価部は、第1極値と第2極値との間における距離が距離閾値を超える場合に、前記相関演算が不適であると判定する、ことを特徴とする。
【0015】
望ましい具体例において、前記評価部は、第1極値と第2極値との間における距離が前記距離閾値を超えない場合に、第1極値と第2極値を1つの極値とみなし、その極値と相関が大きい方から順に得られる第3極値との比較に基づいて前記相関演算の結果を評価する、ことを特徴とする。
【0016】
また、上記目的にかなう好適な超音波画像処理装置は、超音波の受信信号に基づいて形成される超音波画像の画像データを記憶する画像データ記憶部と、複数の超音波画像に対応した複数の画像データに基づいて、画像データ間の相関演算により当該画像データ間の各変位ごとに相関指標を算出する相関演算部と、複数の変位に亘って得られる相関指標の分布から相関指標の極値を抽出し、抽出された極値に基づいて前記相関演算の結果を評価する評価部と、を有することを特徴とする。
【0017】
例えば、上述した相関演算部と評価部の機能を実現するためのプログラムを利用することにより、コンピュータを前記超音波画像処理装置として機能させてもよい。なお、そのプログラムは、例えばディスクやメモリなどの記憶媒体に記憶され、その記憶媒体を介してコンピュータに提供されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明により相関指標の分布に基づいて相関演算の結果を評価することが可能になる。例えば、複数の変位に亘って得られる相関指標の分布から相関指標の極値が抽出され、抽出された極値に基づいて、相関演算により得られた結果が適正か否かが判定される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。
【図2】各変位ごとの相関値の算出を説明するための図である。
【図3】相関値に関する分布状態の適正例を示す図である。
【図4】相関値に関する分布状態の不適例を示す図である。
【図5】相関演算の結果の判定処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】関心領域の細分化を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の好適な実施形態を説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。プローブ10は、例えば心臓壁などの対象物を含む領域に対して超音波を送受波する超音波プローブである。プローブ10は、超音波を送受する複数の振動素子を備えており、複数の振動素子が送受信部12によって送信制御されて送信ビームが形成される。また、複数の振動素子が診断対象を含む領域内から得られる超音波を受波し、これにより得られた信号が送受信部12へ出力され、送受信部12が受信ビームを形成して受信ビームに沿ってエコーデータが収集される。
【0022】
プローブ10は、超音波ビーム(送信ビームと受信ビーム)を二次元平面内において走査してエコーデータを収集する。もちろん、超音波ビームを三次元空間内において立体的に走査する三次元プローブが利用されてもよい。
【0023】
対象物を含む領域内で超音波ビームが走査され、送受信部12によりエコーデータが収集されると、画像形成部20は、収集されたエコーデータに基づいて超音波の画像データを形成する。画像形成部20は、例えばBモード画像の画像データを形成する。また、画像形成部20は、複数の超音波画像に対応した複数の画像データを形成する。例えば、複数の時刻に亘って対象物を映し出した複数の画像データを形成する。あるいは、プローブ10を徐々に移動させつつ互いに異なる位置において対象物を映し出した複数の画像データが形成されてもよい。
【0024】
相関演算部30は、複数の画像データに基づいて、画像データ間の相関演算により、その画像データ間の各変位ごとに相関指標を算出する。ここで相関指標とは、画像データ間の相関関係の程度を示す数値であり、その具体例は例えば相関値である。相関指標の算出には相関演算の各手法に応じた公知の数式が用いられる。例えば、位相限定相関法や相互相関法では、相関が最大の場合(最も類似している場合)に最大値となる相関指標が利用され、最小和絶対差法では、相関が最大の場合に最小値となる相関指標が利用される。そこで、以下の説明においては、相関指標の具体例として、相関が最大の場合(最も類似している場合)に最大値を示す相関値を利用する。相関演算部30は、画像データ間の各変位ごとに相関値を算出し、これにより、複数の変位に亘る相関値の分布が得られる。
【0025】
図2は、各変位ごとの相関値の算出を説明するための図であり、画像データAと画像データBとの間における相関演算を示している。例えば、画像データA内において、対象物を含んだ対象領域Sが設定され、画像データB内において、関心領域(ROI)が設定される。図2において、関心領域は、対象領域Sに対応した位置にある画像領域を含むように設定されている。対象領域Sや関心領域の設定には、公知の様々な手法を利用することができる。もちろん、画像データBの全体を関心領域としてもよい。
【0026】
対象領域Sと関心領域(ROI)が設定されると、画像データBの関心領域内において画像データAの対象領域Sが移動され、各移動位置において、対象領域S内の複数の画素と、関心領域内の各移動位置における複数の画素とに基づいて、相関値が算出される。つまり、画像データAの画像部分である対象領域Sと、画像データB内の画像部分との間における相関値が算出される。例えば、画像データB内の対象領域Sに対応した位置を初期位置とし、その初期位置からの変位(dx,dy)ごとに相関値が算出され、関心領域内の全域に亘る複数の変位に対応した相関値の分布が形成される。
【0027】
なお、図2においては二次元平面内における平行移動の変位(dx,dy)を示しているが、さらに回転移動の変位を加えて、回転移動の変位も考慮した相関値の分布が形成されてもよい。また、三次元画像の画像データの場合には、三次元的な平行移動や回転移動の各変位ごとに相関値が算出される。
【0028】
図1に戻り、相関演算部30において、画像データ間の各変位ごとに相関値が算出されて複数の変位に亘る相関値の分布が得られると、評価部40は、得られた相関値の分布に基づいて、画像データ間における相関演算の結果を評価する。評価部40は、相関値の分布から相関値に関する複数の極値(例えば極大値)を抽出し、それら複数の極値の分布状態から、相関演算の結果が適正(OK)か不適(NG)かを判定する。
【0029】
図3は、相関値に関する分布状態の適正例を示す図である。図3には、x軸方向の変位dxに関する相関値C(dx)の分布状態が示されている。そして、変位dx(1)における相関値Cが極大値かつ最大値となっており、変位dx(1)から距離Lだけ離れた変位dx(m)にも極大値が存在する。但し、変位dx(1)における相関値Cと変位dx(m)における相関値Cの差dCが比較的大きい。つまり、変位dx(1)における相関値Cに比べて変位dx(m)における相関値Cが非常に小さい。
【0030】
相関演算の結果が理想的な場合には、相関値Cの分布内で推定変位の1箇所に急峻なピークが現れる。例えば、図3に示すように、変位dx(1)の1箇所に非常に大きな相関値Cが現れ、変位dx(1)が推定変位とされる。こうして、図3に示すような相関値の分布状態の場合に、その相関演算の結果が適正であると判定される。
【0031】
図4は、相関値に関する分布状態の不適例を示す図である。図4には、不適例1から不適例3が示されており、各不適例には、x軸方向の変位dxに関する相関値C(dx)の分布状態が示されている。
【0032】
不適例1では、変位dx(1)における相関値Cが最大値であるものの、その相関値が閾値CMINよりも小さい。不適例1に示すような相関値の分布状態の場合に、相関値Cの最大値が小さすぎるため、相関演算の結果が不適であると判定される。
【0033】
不適例2では、変位dx(1)における相関値Cが極大値となっており、変位dx(1)から距離Lだけ離れた変位dx(m)にも極大値が存在する。そして、変位dx(1)における相関値Cと変位dx(m)における相関値Cの差dCが殆ど無い。つまり、変位dx(1)における相関値Cとほぼ同じ程度の大きさの相関値Cが変位dx(m)においても得られており、急峻なピークが2箇所(複数箇所)に現れているため、相関演算の結果が不適であると判定される。
【0034】
不適例3においても、変位dx(1)における相関値Cと変位dx(m+1)における相関値Cの差dCが殆ど無く、急峻なピークが2箇所(複数箇所)に現れているため、相関演算の結果が不適であると判定される。また、変位dx(1)と変位dx(m)は近接しているため、これらの変位における極大値を1箇所における極大値とみなすようにしてもよい。
【0035】
なお、図3,4においては、x軸方向の変位dxに関する1次元的な相関値C(dx)の分布状態を例として説明したが、図2に示すような2次元的な相関演算の場合においては、x軸方向の変位dxとy軸方向の変位dyに関する2次元的な相関値の分布が利用される。もちろん、3次元画像に関する3次元的な相関演算の場合においては、3次元的な相関値の分布に拡張される。
【0036】
評価部40(図1)は、図3に示すような相関値の分布状態の場合に、その相関演算の結果が適正であると判定する。一方、図4に示すような相関値の分布状態の場合に、評価部40(図1)は、その相関演算の結果が不適であると判定する。そこで、その具体的な判定処理について以下に説明する。
【0037】
図5は、相関演算の結果の判定処理を説明するためのフローチャートである。評価部40(図1)は、例えば、図5に示すフローチャートに従って相関演算の結果を判定する。そこで、図5に示すフローチャートに沿ってその判定処理を説明する。なお、既に図1に示した部分(構成)については、以下の説明において図1の符号を利用する。
【0038】
まず、相関演算部30において得られた相関値の分布から、相関値が最大となる第1極値C(dx(1),dy(1))が抽出され、相関値の閾値CMINと比較される(S501)。相関値の閾値CMINは、相関値の大きさに関する信頼性を評価するための数値であり、例えば予め設定された数値が利用される。もちろん、検査者などのユーザが閾値CMINを適宜に変更できる構成としてもよい。
【0039】
S501の比較において、相関値の第1極値C(dx(1),dy(1))が閾値CMINより小さい場合には、S508に進んで相関演算の結果が不適(NG)と判定され、本フローチャートが終了する。ここで不適と判定される相関演算の結果は、図4の不適例1に対応している。
【0040】
一方、S501の比較において、相関値の第1極値C(dx(1),dy(1))が閾値CMIN以上の場合には、相関値が大きい方から順に得られる第1極値を含むM個(Mは2以上の整数)の極値を対象として、第1極値と他の極値との比較に基づいて相関演算の結果が評価される。
【0041】
つまり、相関値が大きい方からの順番を示す数値mが2に初期化され(S502)、さらに、対象とされる極値の個数Mと数値mが比較される(S503)。Mは2以上の整数であり数値mが2に初期化されているため、初めてS503において比較が行われた場合にはS504に進み、第1極値C(dx(1),dy(1))と第2極値C(dx(2),dy(2))との間の相関値の差dCが算出され、相関値の差dCと相関値の差に関する閾値dCMINが比較される(S504)。
【0042】
相関値の差に関する閾値dCMINは、第1極値と他の極値との間の相関値の差から信頼性を評価するための数値であり、例えば予め設定された数値が利用される。もちろん、検査者などのユーザが閾値dCMINを適宜に変更できる構成としてもよい。また、相関値の差dCは、例えば次式により算出される。
【0043】
【数1】

【0044】
S504の比較において、相関値の差dCが閾値dCMIN以上の場合には、S507に進んで相関演算の結果が適正(OK)と判定され、本フローチャートが終了する。ここで適正と判定される相関演算の結果は、図3の適正例に対応している。こうして、相関演算の結果が適正と判定されると、第1極値C(dx(1),dy(1))の位置が推定変位(Δx,Δy)とされる。
【0045】
一方、S504の比較において相関値の差dCが閾値dCMINよりも小さい場合には、第1極値C(dx(1),dy(1))と第m極値C(dx(m),dy(m))に関する極値間の距離Lが算出されて、距離Lと距離の閾値LMAXが比較される(S505)。
【0046】
距離の閾値LMAXは、第1極値と他の極値との間の距離から信頼性を評価するための数値であり、例えば予め設定された数値が利用される。もちろん、検査者などのユーザが閾値LMAXを適宜に変更できる構成としてもよい。また、極値間の距離Lは、例えば次式により算出される。
【0047】
【数2】

【0048】
S505の比較において、極値間の距離Lが閾値LMAXより大きい場合には、S508に進んで相関演算の結果が不適(NG)と判定され、本フローチャートが終了する。ここで不適と判定される相関演算の結果は、図4の不適例2に対応している。
【0049】
一方、S505の比較において、極値間の距離Lが閾値LMAX以下の場合には、第1極値C(dx(1),dy(1))と第m極値C(dx(m),dy(m))が互いに近接しており、これらが相関値の分布内における同一の山(ピーク)に対応したものであるとみなされ、数値mに1が加えられて(S506)、次に相関値の大きい極値が対象とされる。
【0050】
そして、対象とされる極値の個数Mと数値mが比較され(S503)、数値mが個数M以下の場合には、S504以降の処理が繰り返し実行される。さらに、繰り返し実行された結果、S503の比較において数値mが個数Mより大きくなると、対象となるM個全ての極値に関する判定において不適判定がないことから、S507に進んで相関演算の結果が適正(OK)と判定され、第1極値C(dx(1),dy(1))の位置が推定変位(Δx,Δy)とされて本フローチャートが終了する。
【0051】
以上の処理により、評価部40は、例えば図2を利用して説明した相関演算に関する結果を判定する。なお、図2においては、比較的広い1つの関心領域(ROI)を利用しているが、この関心領域を複数に分割してもよい。
【0052】
図6は、関心領域の細分化を説明するための図である。図2に示した関心領域(ROI)を図6に示すように複数のサブROI(1)〜(6)に細分化してもよい。この場合には、例えば、各サブROIごとに対象領域S(図2)が設定され、さらに、各サブROIごとに相関演算が実行される。各サブROIについての相関演算は、例えば二次元平面内における平行移動の変位(dx,dy)について実行される。そして、各サブROIごとに、その相関演算の結果についての判定処理(図5)が実行され、相関演算の結果が適正または不適と判定される。
【0053】
さらに、適正と判定されたサブROIから得られる推定変位(Δx,Δy)を利用して、関心領域(ROI)の全体に関する変位を算出してもよい。例えば、適正と判定された複数のサブROIから得られる複数の推定変位(Δx,Δy)を用いて、例えば最小2乗法により次式を満足する解を算出することにより、関心領域(ROI)の全体に関する変位が得られる。
【0054】
【数3】

【0055】
数3式において、(x,y)と(x´,y´)は2つの画像データ間において互いに対応する座標(画素の位置)を示しており、(ΔX,ΔY)は関心領域全体に関する平行移動の変位、θは関心領域全体に関する回転移動の変位(角度)を示している。各サブROIについては平行移動の変位(dx,dy)のみを考慮して相関演算の負荷を低減しているが、適正な複数のサブROIから得られる推定変位(Δx,Δy)を利用することにより、関心領域全体においては、平行移動の変位(ΔX,ΔY)に加えて回転移動の変位θも得ることが可能になる。しかも、適正と判定されたサブROIのみを利用しているため、推定精度の低下を抑制することができる。
【0056】
以上、本発明の好適な実施形態である超音波診断装置について説明したが、例えば、図1に示した相関演算部30と評価部40をコンピュータにより実現し、そのコンピュータを超音波画像処理装置として機能させてもよい。また、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【符号の説明】
【0057】
10 プローブ、20 画像形成部、30 相関演算部、40 評価部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受するプローブと、
プローブを制御することにより受信信号を得る送受信部と、
受信信号に基づいて超音波画像の画像データを形成する画像形成部と、
複数の超音波画像に対応した複数の画像データに基づいて、画像データ間の相関演算により当該画像データ間の各変位ごとに相関指標を算出する相関演算部と、
複数の変位に亘って得られる相関指標の分布から相関指標の極値を抽出し、抽出された極値に基づいて前記相関演算の結果を評価する評価部と、
を有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記評価部は、相関が最大となる第1極値における相関指標が指標閾値に達しない場合に、前記相関演算が不適であると判定する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波診断装置において、
前記評価部は、第1極値における相関指標が前記指標閾値に達する場合に、相関が大きい方から順に得られる第1極値を含むM個(Mは2以上の整数)の極値を対象として、第1極値と他の極値との比較に基づいて前記相関演算の結果を評価する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波診断装置において、
前記評価部は、相関が大きい方から順に得られる第1極値と第2極値との間における相関指標の差が指標差閾値に達する場合に、前記相関演算が適正であると判定する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波診断装置において、
前記評価部は、第1極値と第2極値との間における相関指標の差が前記指標差閾値に達しない場合に、第1極値と第2極値との間における距離に基づいて前記相関演算の結果を評価する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項5に記載の超音波診断装置において、
前記評価部は、第1極値と第2極値との間における距離が距離閾値を超える場合に、前記相関演算が不適であると判定する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波診断装置において、
前記評価部は、第1極値と第2極値との間における距離が前記距離閾値を超えない場合に、第1極値と第2極値を1つの極値とみなし、その極値と相関が大きい方から順に得られる第3極値との比較に基づいて前記相関演算の結果を評価する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
超音波の受信信号に基づいて形成される超音波画像の画像データを記憶する画像データ記憶部と、
複数の超音波画像に対応した複数の画像データに基づいて、画像データ間の相関演算により当該画像データ間の各変位ごとに相関指標を算出する相関演算部と、
複数の変位に亘って得られる相関指標の分布から相関指標の極値を抽出し、抽出された極値に基づいて前記相関演算の結果を評価する評価部と、
を有する、
ことを特徴とする超音波画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−90769(P2012−90769A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240630(P2010−240630)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】