説明

超高分子量エチレン系共重合体

【課題】本発明の課題は、少量のα-オレフィンにより透明性を改善した超高分子量エチレン系共重合体を提供することである。
【解決手段】エチレンと炭素原子数が3以上8以下のα−オレフィンとを含む単量体混合物を共重合して得られる、粘度平均分子量が100万以上の超高分子量エチレン系共重合体であって、エチレンと炭素数3以上8以下のα−オレフィンに由来する合計の重合単位を基準として、α−オレフィンに由来する重合単位の含有率が0.01モル%以上1モル%未満であり、α−オレフィンに由来する重合単位の含有率{x(モル%)}と共重合体の透明性の指標であるヘイズ{y(%)}との関係が下記の数式(1)または数式(2)を満たすことを特徴とする、超高分子量エチレン系共重合体。
−107.5x+87≦y≦−43x+89 ・・・・数式(1)
44≦y≦71.8 ・・・・数式(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超高分子量エチレン系共重合体に関する。さらに詳しくは、エチレンと炭素数3以上8以下のα−オレフィンとを含む単量体混合物の共重合体であって、粘度平均分子量(Mv)が100万以上で、比較的低密度で透明性に優れた超高分子量エチレン系共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超高分子量オレフィン、特に超高分子量ポリエチレンは、汎用のポリエチレンに比べ、耐衝撃性、耐摩耗性、摺動性、耐薬品性に優れており、摺動部品として用いることができる。さらには、長期特性も優れているため、パイプ等の成型品にも使用されている。しかし、通常の高分子量ポリエチレンは結晶性が高く白色不透明であり、パイプの肉厚を薄くしても透明性に劣り、パイプ内の流通物を視認できない問題があるため、透明性に優れる材料が求められていた。
【0003】
この超高分子量ポリエチレンの透明性を改善する目的で、特許文献1には、エチレンと他のα−オレフィンとから得られる超高分子量エチレン系共重合体が提案されている。特許文献1には、エチレンとα−オレフィンとの共重合により高強度、高弾性、耐磨耗性を維持したまま、高衝撃性、高透明性を示す超高分子量ポリエチレン系共重合体が開示されている。しかし、該技術では、透明性を改善するため、主鎖に多量のα−オレフィンを導入することが必要であった。
【0004】
また、特許文献1の技術では、主鎖に多量のα−オレフィンを導入することが必要であったため、製造される共重合体の分子量が顕著に低下する傾向にあり、これを回避するために重合温度を下げる必要があり、このために生産性が著しく低下するという課題もあった。また、特許文献1には、α−オレフィン含有量と透明性の指標であるヘイズの相関は記載されていなかった。
【特許文献1】特公平5−86803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、少量のα−オレフィンにより透明性を改善した超高分子量エチレン系共重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、分子量と密度、更には共重合体中のα−オレフィン含有量とヘイズの関係が特定の範囲に入るように、主鎖に少量のα−オレフィンを導入することにより、高い生産性を維持したまま、透明性に優れ高い分子量を有する超高分子量エチレン系共重合体を提供できる技術を開発した。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]エチレンと炭素原子数が3以上8以下のα−オレフィンとを含む単量体混合物を共重合して得られる、粘度平均分子量(Mv)が100万以上の超高分子量エチレン系共重合体であって、
(1)エチレンと炭素数3以上8以下のα−オレフィンとに由来する合計の重合単位を基準として、α−オレフィンに由来する重合単位の含有率が0.01モル%以上1モル%未満であり、
(2)エチレンと炭素数3以上8以下のα−オレフィンとに由来する合計の重合単位を基準として、α−オレフィンに由来する重合単位の含有率{x(モル%)}と共重合体の透明性の指標であるヘイズ{y(%)}との関係が、xが0.01モル%以上0.4モル%未満の範囲では下記数式(1)を、xが0.4モル%以上1.0モル%未満の範囲では下記数式(2)を満たすことを特徴とする、超高分子量エチレン系共重合体。
−107.5x+87≦y≦−43x+89 ・・・・数式(1)
44≦y≦71.8 ・・・・数式(2)
[2]xとyとの関係が、xが0.4モル%以上1.0モル%未満の範囲では下記数式(3)を満たすことを特徴とする、上記[1]に記載の超高分子量エチレン系共重合体。
44≦y≦−43x+89 ・・・・数式(3)
[3]下記一般式(1)で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物と下記一般式(2)で表される塩素化剤との反応により調製された担体(A−1)に下記一般式(3)で表されるチタン化合物(A−2)及び下記一般式(4)で表される有機金属化合物(A−3)を担持することにより製造される固体触媒成分[A]、および下記一般式(5)で表される有機マグネシウム化合物、または下記一般式(6)で表される有機アルミニウム化合物である成分[B]からなるオレフィン重合用触媒を用いて製造されたことを特徴とする、上記[1]または[2]のいずれかに記載の超高分子量エチレン系共重合体。
(M1)α(Mg)β(R1a(R2b(OR3c ・・・式(1)
(式中、M1は周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属するマグネシウム以外の金属原子であり、R1、R2およびR3は、各々独立して、炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、α、β、a、bおよびcは次の関係を満たす実数である。0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0≦c、0<a+b、0≦c/(α+β)≦2、kα+2β=a+b+c(ここで、kはM1の原子価))
dSiCle4(4-(d+e)) ・・・式(2)
(式中、R4は炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、dおよびeは次の関係を満たす実数である。0<d、0<e、0<d+e≦4)
Ti(OR5f1(4-f) ・・・式(3)
(式中、fは0以上4以下の実数であり、R5は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、X1はハロゲン原子である。)
(M2)γ(Mg)ε(R6h(R7ij ・・・式(4)
(式中、M2は周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属する金属原子であり、R6およびR7は、各々独立して、炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、Yはアルコキシ、シロキシ、アリロキシ、アミノ、アミド、−N=C−R89、−SR10(ここで、R8、R9およびR10は炭素数2以上20以下の炭化水素基を表す)、β−ケト酸残基であり、γ、ε、h、iおよびjは次の関係を満たす実数である。0≦γ、0<ε、0≦h、0≦i、0<h+i、0≦j/(γ+ε)≦2、nγ+2ε=h+i+j(ここで、nはM2の原子価))
(M3)κ(Mg)λ(R11p(R12q(OR13r ・・・式(5)
(式中、M3は周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属する金属原子であり、R11、R12およびR13は、各々独立して、炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、κ、λ、p、qおよびrは次の関係を満たす数である。0≦κ、0<λ、0≦p、0≦q、0≦r、0<p+q、0≦r/(κ+λ)≦2、kκ+2λ=p+q+r(ここで、kはM3の原子価))
AlR14s23-s ・・・式(6)
(式中、R14は、各々独立して、炭素数1以上12以下の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基または炭素数6以上20以下のアリール基を表し、X2は、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1以上10以下のアルコキシド基を表し、sは1以上3以下の実数である。)
【発明の効果】
【0008】
本発明により、少量のα−オレフィンにより透明性を改善した超高分子量エチレン系共重合体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明により提供される超高分子量エチレン系共重合体は、エチレンと炭素原子数が3以上8以下のα−オレフィンとに由来する超高分子量エチレン系共重合体である。なお、本発明においては、超高分子量エチレン系共重合体中に含まれるエチレンと炭素数3以上8以下のα−オレフィンとに由来する重合単位に対する、α−オレフィンに由来する重合単位のモル分率を以下オレフィン含有率とも標記する。
【0010】
本発明においては、炭素原子数3以上8以下のα−オレフィンには特に制限はないが、たとえば下記の一般式(A)で表されるものが挙げられる。
CH2=CR1516 ・・・式(A)
(R15およびR16は、各々独立して、水素原子または炭素数1以上6以下の炭化水素基である。ただし、R15およびR16が同時に水素原子であることはなく、またR15とR16の炭素数の和は6以下である。)
【0011】
上記の一般式(A)に含まれるα−オレフィンとしては、プロペン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン等が挙げられ、1−ブテン、1−ヘキセンがより好ましい。
【0012】
本発明の超高分子量エチレン共重合体のMvは100万以上である。Mvが100万未満の超高分子量エチレン系共重合体は該共重合体に必要な耐磨耗性が著しく悪化する可能性がある。なお、本発明の超高分子量エチレン共重合体のMvは、デカリン中に超高分子量エチレン共重合体を異なる濃度で溶解し、135℃で求めた溶液粘度を濃度0に外挿して求めたη(dl/g)から、以下の数式(4)により算出した値である。
Mv=(5.34×104)×η1.49 ・・・数式(4)
【0013】
本発明の超高分子量エチレン系共重合体は、例えば上記一般式(A)のα−オレフィンを用いて得られた場合には、エチレンに由来する重合単位(−CH2−CH2−)と上記一般式(A)のα−オレフィンに由来する重合単位(−CH2−CR1516−)を含む。
【0014】
本発明においては、超高分子量エチレン系共重合体のα−オレフィン含有率は、0.01モル%以上1モル%未満であり、0.1モル%以上1モル%未満であることが好ましく、0.2モル%以上1モル%未満であることがさらに好ましい。また、本発明の超高分子量エチレン系共重合体は、エチレンと炭素数3以上8以下のα−オレフィンとに由来する重合単位を基準として、99モル%を超えて99.99モル%以下、好ましくは99モル%を超えて99.9モル%以下、さらに好ましくは99モル%を超えて99.8モル%以下のエチレンに由来する重合単位を含有している。本発明においては、オレフィン含有率の測定はG.J.Ray、らのMacromolecules、10、773(1977)に開示された方法に準じて行われ、α−オレフィン含有率は、13C−NMRスペクトルにより観測されるメチレン炭素のシグナルを用いて、その面積強度より算出した。
【0015】
本発明においては、α−オレフィン含有率が1モル%以上では、密度が必要以上に低下し、懸濁重合法においては、使用する溶剤に溶解するため、あるいは、塊状のポリマーが生成するため、安定な連続運転が困難になる可能性がある。また、気相重合法においても、ポリマーがべとつきやすくなり、塊状のポリマーが生成するため、あるいは、リアクター内面にスケールとして付着するため、安定な連続運転が困難になる可能性がある。
【0016】
さらには、本発明の超高分子量エチレン系共重合体は、α−オレフィンに由来する重合単位の含有率{x(モル%)}とヘイズ{y(%)}の関係が、xが0.01モル%以上0.4モル%未満の範囲では下記数式(1)を、xが0.4モル%以上1.0モル%未満の範囲では下記数式(2)を満たすことが重要である。
−107.5x+87≦y≦−43x+89 ・・・・数式(1)
44≦y≦71.8 ・・・・数式(2)
【0017】
xとyが上記関係式を満たすことは、超高分子量エチレン系共重合体中に所望のα−オレフィンを含有し、かつ、共重合体が良好な透明性を有していることを意味する。上記の数式(1)を満たすことは、本発明以外の技術では困難である。
【0018】
本発明においては、xとyとの関係は、重合温度を一定の範囲に調整することや、触媒の種類および濃度を変化させることによって制御することができる。すなわち、重合温度を一定の範囲に調製することにより、α−オレフィンが比較的均一に含有されるため、xとyの関係を上記数式の範囲内とすることができる。また、触媒の種類および濃度を変化させることによっても、α−オレフィンを均一に含有させることが可能であるため、xとyの関係を上記数式の範囲内とすることができる。
【0019】
本発明においては、本発明の超高分子量エチレン系共重合体は、α−オレフィンに由来する重合単位の含有率{x(モル%)}とヘイズ{y(%)}の関係が、xが0.4モル%以上1.0モル%未満の範囲では下記数式(3)を満たしていることが好ましい。
44≦y≦−43x+89 ・・・・数式(3)
通常、α−オレフィンに由来する重合単位の含有率が高くなると、ヘイズを改善する効率が悪化するため、xとyとの関係は、xが大きくなるとyは特定の値に漸近することが一般的であった。ところが、本発明により、xが大きい場合にも従来よりもyを低下させることが可能となった。
【0020】
本発明の超高分子量エチレン系共重合体は、ヘイズの改善の観点から、下記の数式(4)、数式(5)および数式(6)を満たすことが好ましい。
−107.5x+88≦y≦−43x+88 ・・・・数式(4)
45≦y≦70.8 ・・・・数式(5)
45≦y≦−43x+88 ・・・・数式(6)
本発明においては、超高分子量エチレン共重合体の透明性の指標であるヘイズはASTM D1003の方法で測定した値である。本発明の超高分子量エチレン共重合体のヘイズは、数式1、数式2およびxの範囲から、45%以上87.6%以下である。ヘイズが45%以上であれば、パウダー同士が凝集して塊状のポリマーが生成することなく、安定な連続運転が可能である。ヘイズが87.6%以下であれば、透明性の改善効果が十分に発揮される。
【0021】
なお、本発明では縦60mm、横60mm、厚み2mmの金型を用い、ASTM D1928 Procedure Cに従って超高分子量エチレン系共重合体をプレスすることにより、プレスシートを作成した。まず、厚さ5mmの平滑な鉄板に厚さ0.1mmのアルミニウム板を載せ、さらにセロファンでコーティングされていない厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを載せた。この上に縦60mm、横60mm、厚み2mmの金型を載せ、これに8gの超高分子量エチレン系共重合体を入れ、この上に前述のポリエチレンテレフタレートフィルムを載せ、さらに前述のアルミニウム板を載せ、さら
に前述の鉄板を載せた。これを170℃に温度調節された圧縮成型機に入れ、170℃で300秒間加熱後、5秒間エアー抜き(100K/G)を行い、200K/Gで900秒の加圧を行った。加圧終了後サンプルを取り出し、取り出してから5秒後に25℃に温度調節された圧縮成型機に入れ、25℃で100K/Gにて600秒間加圧しながら15±2℃/分の冷却速度で冷却した。冷却速度は金型を厚紙で挟むことにより調節した。冷却後、取り出したプレスシートをヘイズ測定用プレス板とした。
【0022】
次に、本発明の超高分子量エチレン系共重合体の製造方法について説明する。
本発明の超高分子量共重合体を製造する触媒については特に制限は無いが、以下に記載する触媒を使用することで、得られる共重合に良好な透明性を付与することができ、さらに、パウダー同士が凝集して塊状のポリマーを生成することなく連続安定生産が可能であるため好ましい。
【0023】
本発明においては、固体触媒成分[A]および有機マグネシウム化合物または有機アルミニウム化合物である成分[B]からなるオレフィン重合用触媒を使用することが好ましい。固体触媒成分[A]が、一般式(1)で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物、一般式(2)で表される塩素化剤との反応により調製された担体(A−1)にチタン化合物(A−2)と有機金属化合物(A−3)とを担持することにより調製されるのが好ましく、該有機マグネシウム化合物と該塩素化剤との反応が60℃以上150℃以下で行われることが好ましい。
【0024】
本発明においては、この触媒の固体触媒成分[A]は、担体(A−1)、チタン化合物(A−2)、有機金属化合物(A−3)からなることが好ましく、その調製方法としては、担体(A−1)に(A−2)と(A−3)とを反応させることにより調製されることが好ましい。本発明において、担体(A−1)を使用しない場合、α−オレフィンが超高分子量エチレン系共重合体に効率的に含有されないことにより、前記の数式(1)を満足しない恐れがあるため好ましくない。本発明においては、この触媒の固体触媒成分[A]の担体である(A−1)は、不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物と塩素化剤との反応により合成されることが好ましい。
【0025】
本発明においては、(A−1)を合成する際に使用される有機マグネシウム化合物は、下記の一般式(1)で表されることが好ましい。
(M1)α(Mg)β(R1a(R2b(OR3c ・・・式(1)
(式中、M1は周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属する金属原子であり、R1、R2およびR3は、各々独立して、炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、α、β、a、bおよびcは次の関係を満たす数である。0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0≦c、0<a+b、0≦c/(α+β)≦2、kα+2β=a+b+c(ここで、kはM1の原子価))
この化合物は、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、ジヒドロカルビルマグネシウム化合物およびこの化合物と他の金属化合物との錯体のすべてを包含するものである。記号α、β、a、b、cの関係式kα+2β=a+b+cは金属原子の原子価と置換基との化学量論性を示している。
【0026】
上記の一般式(1)においてR1ないしR2で表される炭化水素基は、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であることが好ましく、メチル、エチル、プロピル、ブチル、プロピル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基であることがさらに好ましい。R1はアルキル基であるあることが好ましい。α>0の場合、金属原子M1は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウムであることが好ましく、アルミニウム、ホウ素、ベリリウム、亜鉛であることがさらに好ましい。
【0027】
金属原子M1に対するマグネシウムの比β/αには特に制限はないが、0.1以上30以下であることが好ましく、0.5以上10以下であることがさらに好ましい。また、α=0である有機マグネシウム化合物を用いる場合には、上記の一般式(1)のR1、R2が次に示す三つの群(1)、(2)、(3)のいずれかに属することが好ましい。
(1)R1、R2の少なくとも一方が炭素原子数4〜6である二級または三級のアルキル基であること、好ましくはR1、R2がともに炭素原子数4〜6であり、少なくとも一方が二級または三級のアルキル基であること。
(2)R1とR2とが炭素原子数の互いに相異なるアルキル基であること、好ましくはR1が炭素原子数2または3のアルキル基であり、R2が炭素原子数4以上のアルキル基であること。
(3)R1、R2の少なくとも一方が炭素原子数6以上の炭化水素基であること、好ましくはR1、R2に含まれる炭素原子数を加算すると12以上になるアルキル基であること。
【0028】
以下これらの基を具体的に示す。(1)において炭素原子数4〜6である二級または三級のアルキル基としては、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、2−メチルブチル基、2−エチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、2−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2−メチル−2−エチルプロピル基が好ましく、1−メチルプロピル基がさらに好ましい。
【0029】
(2)において炭素原子数2または3のアルキル基としては、エチル基、1−メチルエチル基、プロピル基が好ましく、エチル基がさらに好ましい。また炭素原子数4以上のアルキル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられ、ブチル基、ヘキシル基がさらに好ましい。
【0030】
(3)において炭素原子数6以上の炭化水素基としては、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基、2−ナフチル基が好ましい。また、炭化水素基の中ではアルキル基が好ましく、アルキル基の中でもヘキシル基、オクチル基が特に好ましい。一般に、アルキル基に含まれる炭素原子数が増えると不活性炭化水素溶媒に溶けやすくなるが、溶液の粘度が高くなるために必要以上に長鎖のアルキル基を用いることは取り扱い上好ましくない。なお、上記有機マグネシウム化合物は不活性炭化水素溶液として使用されるが、該溶液中に微量のエーテル、エステル、アミン等のルイス塩基性化合
物が含有され、あるいは残存していても差し支えなく使用できる。
【0031】
次に、上記の一般式(1)のアルコキシ基(OR3)について説明する。R3で表される炭化水素基としては、炭素原子数1以上12以下のアルキル基またはアリール基が好ましく、3以上10以下のアルキル基またはアリール基がさらに好ましい。具体的には、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、1−メチルエチル基、ブチル基、1−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、2−エチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、2−エチル−4−メチルペンチル基、2−プロピルヘプチル基、2−エチル−5−メチルオクチル基、オ
クチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基、ナフチル基が好ましく、ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルペンチル基および2−エチルヘキシル基がさらに好ましい。
【0032】
上記の一般式(1)の有機マグネシウム化合物は、一般式R1MgXおよびR12Mg(R1は前述の意味であり、Xはハロゲンである)からなる群に属する有機マグネシウム化合物と、一般式M12kおよびM12(k-1)H(M1、R2、kは前述の意味である)からなる群に属する有機金属化合物とを不活性炭化水素溶媒中、室温〜150℃の間で反応させ、必要な場合には続いてR3で表される炭化水素基を有するアルコールまたは不活性炭化水素溶媒に可溶な上記R3で表される炭化水素基を有するアルコキシマグネシウム化合物、および/またはアルコキシアルミニウム化合物と反応させる方法により合成される。
【0033】
このうち、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物とアルコールとを反応させる場合の添加順序については特に制限はなく、有機マグネシウム化合物中にアルコールを加えていく方法、アルコール中に有機マグネシウム化合物を加えていく方法、または両者を同時に加えていく方法のいずれの方法も用いることができる。本発明において不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物とアルコールとの反応比率については特に制限はないが、反応の結果、得られるアルコキシ基含有有機マグネシウム化合物における、全金属原子に対するアルコキシ基のモル組成比c/(α+β)の範囲は0≦c/(
α+β)≦2であり、0≦c/(α+β)<1であるのがさらに好ましい。
【0034】
本発明における不活性炭化水素溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素ないしシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素等が挙げられる。
【0035】
本発明においては、(A−1)を合成する際に使用される塩素化剤は、下記の一般式(2)で表される、少なくとも一つはSi−H結合を有する塩化珪素化合物である。
dSiCle4(4-(d+e))・・・・・式(2)
(式中、R4は炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、dとeは次の関係を満たす実数である。0<d、0<e、0<d+e≦4)
上記の一般式(2)においてR4で表される炭化水素基に特に制限はないが、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数1〜3のアルキル基であることがさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、1−メチルエチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基、フェニル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、1−メチルエチル基であることがさらに好ましい。また、dおよびeはd+e≦4の関係を満たす0より大きな数であり、eが2
または3であることが好ましい。
【0036】
これらの塩化珪素化合物としては、HSiCl3、HSiCl2CH3、HSiCl225、HSiCl237、HSiCl2(1−CH325)、HSiCl249、HSiCl265、HSiCl2(4−Cl−C64)、HSiCl2CH=CH2、HSiCl2CH265、HSiCl2(1−C107)、HSiCl2CH2CH=CH2、H2SiClCH3、H2SiClC25、HSiCl(CH32、HSiCl(C252、HSiClCH3(1−CH325)、HSiClCH3(C65)、HSiCl(C652等が挙げられ、HSiCl3、HSiCl2CH3、HSiCl(CH32、HSiCl225が好ましく、HSiCl3、HSiCl2CH3が特に好ましい。これらの化合物は単独、またはこれらの化合物から選ばれた二種類以上の混合物として使用することが可能である。
【0037】
次に、本発明における有機マグネシウム化合物と塩化珪素化合物との反応について説明する。該有機マグネシウム化合物と該塩素化剤との反応が60℃以上150℃以下で行われるのが好ましく、65℃以上であることがより好ましい。この反応の温度が60℃未満では該反応が十分に進行しない可能性があり、150℃を超える場合には該塩化珪素化合物の分解等の副反応が進行する可能性がある。
【0038】
反応に際しては塩化珪素化合物を予め反応溶媒、たとえば、上記の不活性炭化水素溶媒、1,2−ジクロルエタン、o−ジクロルベンゼン、ジクロルメタン等の塩素化炭化水素、もしくはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系媒体、あるいはこれらの混合媒体を用いて希釈した後利用することが好ましい。特に、触媒の性能上、不活性炭化水素溶媒が好ましい。有機マグネシウム化合物と塩化珪素化合物との反応比率には特に制限はないが、通常有機マグネシウム化合物1モルに対し、塩化珪素化合物0.01〜100モルであり、好ましくは有機マグネシウム化合物1モルに対し、塩化珪素化合物0.1〜10モルの範囲である。
【0039】
反応方法については特に制限がないが、有機マグネシウム化合物と塩化珪素化合物とを同時に反応器に導入しつつ反応させる同時添加の方法、塩化珪素化合物を事前に反応器に仕込んだ後に有機マグネシウム化合物を反応器に導入させる方法、または有機マグネシウム化合物を事前に反応器に仕込んだ後に塩化珪素化合物を反応器に導入させる方法が好ましく、塩化珪素化合物を事前に反応器に仕込んだ後に有機マグネシウム化合物を反応器に導入させる方法がさらに好ましい。上記の反応により得られる固体成分は、ろ過あるいはデカンテーション法により分離した後、不活性炭化水素溶媒を用いて充分に洗浄し、未反
応物あるいは副生成物等を除去した後に使用されることが好ましい。
【0040】
本発明においては、固体存在下で有機マグネシウム化合物と塩化珪素化合物との反応を行うことにより担体(A−1)を調整することもできる。この固体は無機固体、有機固体のいずれでもよいが、無機固体を用いるほうが好ましい。無機固体としては特に制限はないが、下記のものが好ましい:
(i)無機酸化物;
(ii)無機炭酸塩、珪酸塩、硫酸塩;
(iii)無機水酸化物;
(iv)無機ハロゲン化物;
(v)(i)〜(iv)からなる複塩、固溶体ないし混合物。
【0041】
この無機固体には特に制限はないが、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、水和アルミナ、マグネシア、トリア、チタニア、ジルコニア、リン酸カルシウム・硫酸バリウム、硫酸カルシウム、珪酸マグネシウム、マグネシウム・カルシウム、アルミニウムシリケート[(Mg・Ca)O・Al23・5SiO2・nH2O]、珪酸カリウム・アルミニウム[K2O・3Al23・6SiO2・2H2O]、珪酸マグネシウム鉄[(Mg・Fe)2SiO4]、珪酸アルミニウム[Al23・SiO2]、炭酸カルシウム、塩化マグネシウム、よう化マグネシウムが好ましく、シリカ、シリカ・アルミナおよび塩化マグネシウムがさらに好ましい。無機固体の比表面積には特に制限はないが、20m2/g以上であることが好ましく、90m2/g以上であることがさらに好ましい。
【0042】
本発明においては、担体(A−1)に対するチタン化合物(A−2)及び有機金属化合物(A−3)の担持が、担体(A−1)にチタン化合物(A−2)と有機金属化合物(A−3)を反応させることにより行われるのが好ましい。
【0043】
本発明において、(A−2)としては、下記の一般式(3)で表されるチタン化合物が好ましい。
Ti(OR5f1(4-f) ・・・式(3)
(式中、fは0以上4以下の実数であり、R5は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、X1はハロゲン原子である。)
5で表される炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、アリル基等の脂肪族炭化水素基、シクロヘキシル、2−メチルシクロヘキシル、シクロペンチル基等の脂環式炭化水素基、フェニル、ナフチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられ、脂肪族炭化水素基が好ましい。X1で表されるハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、塩素が好ましい。上記から選ばれた(A−2)を、2種以上混合して使用することが可能である。
【0044】
(A−2)の使用量には特に制限はないが、担体に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0.01以上20以下が好ましく、0.05以上10以下が特に好ましい。チタン化合物(A−2)の使用量が担体に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で20よりも大きい場合には、α−オレフィンが超高分子量エチレン系共重合体に効率的に含有されないことにより、前記の数式(1)を満足しない恐れがあるために好ましくない。また、チタン化合物(A−2)の使用量が担体に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0.01よりも小さい場合には、触媒あたりの超高分子量エチレン系共重合体の生産性が顕著に低下する恐れがあるために好ましくない。
【0045】
次に、有機金属化合物(A−3)について説明する。本発明において、(A−3)としては、下記の一般式(4)で表される有機金属化合物が好ましい。
(M2)γ(Mg)ε(R6h(R7ij ・・・式(4)
(式中、M2は周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属する金属原子であり、R6およびR7は、各々独立して、炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、Yはアルコキシ、シロキシ、アリロキシ、アミノ、アミド、−N=C−R89、−SR10(ここで、R8、R9およびR10は、各々独立して、炭素数2以上20以下の炭化水素基を表す)、β−ケト酸残基であり、γ、ε、h、iおよびjは次の関係を満たす実数である。0≦γ、0<ε、0≦h、0≦i、0<h+i、0≦j/(γ+ε)≦2、nγ+2ε=h+i+j(ここで、nはM2の原子価))
上記の一般式(4)で表される有機金属化合物は不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、ジヒドロカルビルマグネシウム化合物およびこの化合物と他の金属化合物との錯体のすべてを包含するものである。記号γ、ε、h、i、jの関係式nγ+2ε=h+i+jは金属原子の原子価と置換基との化学量論性を示している。
【0046】
上記の一般式(4)においてR6、R7、R8、R9およびR10で表される炭化水素基は、各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、アルキル基であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基であることが好ましい。γ>0の場合、金属原子M2は周期律表第1族〜第3族からなる群に属する金属元素であり、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウムであることが好ましく、アルミニウム、ホウ素、ベリリウム、亜鉛であることがさらに好ましい。
【0047】
金属原子M2に対するマグネシウムの比ε/γには特に制限はないが、0.1以上30以下であることが好ましく、0.5以上10以下であることがさらに好ましい。また、γ=0である有機マグネシウム化合物を用いる場合、R6、R7は次に示す三つの群(1)、(2)、(3)のいずれかに属することが好ましい。
(1)R6、R7の少なくとも一方が炭素原子数4〜6である二級または三級のアルキル基であること、好ましくはR6、R7がともに炭素原子数4〜6であり、少なくとも一方が二級または三級のアルキル基であること。
(2)R6とR7とが炭素原子数の互いに相異なるアルキル基であること、好ましくはR6が炭素原子数2または3のアルキル基であり、R7が炭素原子数4以上のアルキル基であること。
(3)R6、R7の少なくとも一方が炭素原子数6以上の炭化水素基であること、好ましくはR6、R7に含まれる炭素原子数を加算すると12以上になるアルキル基であること。
【0048】
以下これらの基を具体的に示す。(1)において炭素原子数4〜6である二級または三級のアルキル基としては、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、2−メチルブチル基、2−エチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、2−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2−メチル−2−エチルプロピル基が好ましく、1−メチルプロピル基がさらに好ましい。
【0049】
(2)において炭素原子数2または3のアルキル基としては、エチル基、1−メチルエチル基、プロピル基が好ましく、エチル基がさらに好ましい。また炭素原子数4以上のアルキル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が好ましく、ブチル基、ヘキシル基がさらに好ましい。
【0050】
(3)において炭素原子数6以上の炭化水素基としては、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基、2−ナフチル基が好ましい。炭化水素基の中ではアルキル基が好ましく、アルキル基の中でもヘキシル基、オクチル基が特に好ましい。一般に、アルキル基に含まれる炭素原子数が増えると不活性炭化水素溶媒に溶けやすくなるが、溶液の粘度が高くなるために必要以上に長鎖のアルキル基を用いることは取り扱い上好ましくない。なお、上記有機マグネシウム化合物は不活性炭化水素溶液として使用されるが、該溶液中に微量のエーテル、エステル、アミン等のルイス塩基性化合物が含
有され、あるいは残存していても差し支えなく使用できる。
【0051】
次にYについて説明する。Yはアルコキシ基、シロキシ基、アリロキシ基、アミノ基、アミド基、−N=C−R89、−SR10(ここで、R8、R9およびR10は炭素数2以上20以下の炭化水素基を表す)β−ケト酸残基であり、アルコキシ基またはシロキシ基であることが好ましい。
【0052】
上記の一般式(4)で表される有機金属化合物の合成方法については特に制限はないが、置換基Yを有する有機マグネシウム化合物とM2を含む有機金属化合物とを反応させる方法、有機マグネシウム化合物と置換基Yを有するM2を含む有機金属化合物とを反応させる方法、置換基Yを有する有機マグネシウム化合物と置換基Yを有するM2を含む有機金属化合物とを反応させる方法、有機マグネシウム化合物とM2を含む有機金属化合物とを反応させた後にY残基を生成する化合物を反応させる方法が好ましい。
【0053】
具体的には、一般式R6MgYおよびR62Mg(R6およびYは前述の意味である)からなる群に属する有機マグネシウム化合物と、一般式M27kおよびM27(k-1)H(M2、R7、kは前述の意味である)からなる群に属する有機金属化合物とを、不活性炭化水素溶媒中、25℃以上150℃以下の範囲で反応させ、必要な場合には続いてYH(Yは前述の意味である)で表される化合物とを反応させる方法が好ましい。この反応は不活性炭化水素溶媒中で行われることが好ましい。反応の温度には特に制限はないが、25℃以上150℃以下であることが好ましい。この反応の結果、得られる有機マグネシウム化合物における、全金属原子に対するY基のモル組成比j/(γ+ε)の範囲は0≦j/(γ+ε)≦2であり、0<j/(γ+ε)<1であることが好ましい。
【0054】
(A−3)の使用量は、担体に含まれるマグネシウムに対する(A−3)に含まれるMgのモル比で0.01以上20以下が好ましく、0.05以上10以下が特に好ましい。有機金属化合物(A−3)の使用量が担体に含まれるマグネシウム原子に対する(A−3)に含まれるMgのモル比で20よりも大きい場合には、α−オレフィンが超高分子量エチレン系共重合体に効率的に含有されないことにより、前記の数式(1)を満足しない恐れがあるために好ましくない。また、有機金属化合物(A−3)の使用量が担体に含まれるマグネシウム原子に対する(A−3)に含まれるMgのモル比で0.01よりも小さい場合には、触媒あたりの超高分子量エチレン系共重合体の生産性が顕著に低下する恐れがあるために好ましくない。
【0055】
次に、担体(A−1)と、チタン化合物(A−2)および有機金属化合物(A−3)との反応について説明する。この反応は不活性溶媒中で行われることが好ましく、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒中で行われることがさらに好ましい。この反応の温度については特に制限はないが、−80℃〜150℃の範囲で行うことが好ましく、−40℃〜100℃の範囲で行うことがさらに好ましい。担体(A−1)に、(A−2)と(A−3)を添加する際の順序は特に制限はなく、(A−2)に続いて(A−3)を加える、(A−3)に続いて(A−2)を加える、(A−2)と(A−3)とを同時に添加する、のいずれの方法も可能であるが、(A−2)と(A−3)とを同時に添加する方法が好ましい。(A−2)に対する(A−3)のモル比は0.1〜10の範囲にあることが好ましく、0.5〜5の範囲にあることがさらに好ましい。(A−2)に対する(A−3)のモル比が10よりも大きい場合には、α−オレフィンが超高分子量エチレン系共重合体に効率的に含有されないことにより、前記の数式(1)を満足しない恐れがあるために好ましくない。また、(A−2)に対する(A−3)のモル比が0.1よりも小さい場合には、触媒あたりの超高分子量エチレン系共重合体の生産性が顕著に低下する恐れがあるために好ましくない。かくして得られた固体触媒成分[A]は、好ましくは、不活性炭化水素溶媒を用いたスラリー溶液として使用される。
【0056】
本発明の固体触媒成分[A]は、有機マグネシウム化合物または有機アルミニウム化合物である成分[B]と組み合わせることにより、さらに高活性な重合用触媒となる。
【0057】
成分[B]の有機マグネシウム化合物としては、一般式(5)で表されるものが好ましい。
(M3)κ(Mg)λ(R11p(R12q(OR13r ・・・式(5)
(式中、M3は周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属する金属原子であり、R11、R12およびR13は、各々独立して、炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、κ、λ、p、qおよびrは次の関係を満たす数である。0≦κ、0<λ、0≦p、0≦q、0≦r、0<p+q、0≦r/(κ+λ)≦2、kκ+2λ=p+q+r(ここで、kはM3の原子価))
この化合物は、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、ジアルキルマグネシウム化合物およびこの化合物と他の金属化合物との錯体の全てを包含するものである。κ、λ、p、q、r、M3、R11、R12、OR13についてはすでに述べたとおりであるが、不活性炭化水素溶媒に可溶な化合物が望ましいため、λ/κは0.5〜10の範囲にあることが好ましく、また特にM3がアルミニウムである化合物がさらに好ましい。
【0058】
成分[B]の有機アルミニウム化合物としては、下記一般式(6)で表されるものが好ましい。
AlR14s23-s ・・・式(6)
(式中、R14は、各々独立して、炭素数1以上12以下の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基または炭素数6以上20以下のアリール基を表し、X2は、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1以上10以下のアルコキシド基を表し、sは1以上3以下の実数である)
好ましい有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ(2−メチルプロピル)アルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリ(3−メチルブチル)アルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハライド、ジイソブチルアルミニウムハライド等のジアルキルアルミニウムハライド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジ(2−メチルプロピル)アルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド等のハロゲン化アルミニウム化合物、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジ(2−メチルプロピル)アルミニウムブトキシド等のアルコキシアルミニウム化合物、ジメチルヒドロシロキシアルミニウムジメチル、エチルメチルヒドロシロキシアルミニウムジエチル、エチルジメチルシロキシアルミニウムジエチル等のシロキシアルミニウム化合物およびこれらの混合物が好ましく、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ(2−メチルプロピル)アルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハライドがさらに好ましい。
【0059】
固体触媒成分[A]および有機マグネシウム化合物または有機アルミニウム化合物である成分[B]の反応方法には特に制限はないが、重合条件下において両者を別々に重合系内に添加することが好ましい。あらかじめ反応させた後に重合系に添加する場合には、α−オレフィンが超高分子量エチレン系共重合体に効率的に含有されないことにより、前記の数式(1)を満足しない恐れがあるために好ましくない。また、組み合わせる両成分の比率は、固体触媒成分[A]1gに対して有機マグネシウム化合物または有機アルミニウム化合物である成分[B]は1ミリモル以上100ミリモル以下の範囲で行うのが好ましい。固体触媒成分[A]1gに対する有機マグネシウム化合物または有機アルミニウム化合物である成分[B]の比率が100ミリモルよりも大きい場合には、α−オレフィンが超高分子量エチレン系共重合体に効率的に含有されないことにより、前記の数式(1)を満足しない恐れがあるために好ましくない。また、固体触媒成分[A]1gに対して有機マグネシウム化合物または有機アルミニウム化合物である成分[B]の比率が1ミリモルよりも小さい場合には、反応が十分に進行しないことにより、触媒あたりの超高分子量エチレン系共重合体の生産性が顕著に低下する恐れがあるために好ましくない。
【0060】
本発明の超高分子量エチレン共重合体は、懸濁重合法あるいは気相重合法によりエチレンとα−オレフィンを共重合させ製造することができる。懸濁重合法においては、媒体として不活性炭化水素媒体を用いることができ、さらにオレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0061】
かかる不活性炭化水素媒体としては、具体的には、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチルクロライド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物等を挙げることができる。
【0062】
本発明における重合温度は、通常、40℃以上が好ましく、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上、且つ100℃以下が好ましく、より好ましくは85℃以下の範囲である。重合温度が40℃よりも低い場合には、α−オレフィンが超高分子量エチレン系共重合体に効率的に含有されないことにより、前記の数式(1)を満足しない恐れがあるために好ましくない。また、重合温度が100℃よりも高い場合には、触媒の失活反応が優先的に進行することにより、触媒あたりの超高分子量エチレン系共重合体の生産性が顕著に低下する恐れがあるために好ましくない。
【0063】
重合圧力は、通常、常圧以上2MPa以下が好ましく、より好ましくは0.1MPa以上1.5MPa以下、さらに好ましくは0.1MPa以上1.0MPa以下の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行なうことができる。
【0064】
得られる重合体の分子量を調整する方法としては特に制限はないが、例えば重合系に存在させる水素の濃度を変化させるか、重合温度を変化させるか、あるいは有機マグネシウム化合物または有機アルミニウム化合物である成分[B]の濃度を変化させるか、炭素数3以上8以下のα−オレフィンの濃度を変化させることによって調節することができる。
【0065】
また、重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行なうことも可能である。さらに、例えば、西独国特許出願公開第3127133号明細書に記載されているように、得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、あるいは重合温度を変化させることによって調節することもできる。なお、本発明では、上記のような各成分以外にも超高分子量エチレン共重合の製造に有用な他の成分を含むことができる。
【0066】
本発明の超高分子量エチレン共重合体は、通常の超高分子量ポリエチレンと同じ成形加工方法を用いて成形が可能である。例えば、金型に超高分子量ポリエチレン粉末を入れ、長時間加熱下圧縮成形する方法やラム押出機による押出し成形等の各種公知成形法により本発明の超高分子量エチレン共重合体の成形体を得ることができる。
【0067】
また、本発明の超高分子量エチレン共重合体の成形体としては、超高分子量エチレン共重合体を適当な溶剤あるいは可塑剤と混合し、フィルム状に押し出し、延伸させた後、使用した溶剤あるいは可塑剤を抽出することでできる微多孔質のフィルムも含まれる。このフィルムは電池用セパレータ等に使用できる。この場合、シリカ等の無機材料と混合したフィルムにすることもできる。
【0068】
さらに、本発明の超高分子量エチレン共重合体粉体を適当な溶剤あるいは可塑剤に溶解あるいは混合してゲル状混合物を調製し、公知のゲル紡糸技術により超高弾性率高強度繊維を得ることもできる。
【実施例】
【0069】
本発明を実施例に基づいて説明する。
[粘度平均分子量(Mv)の測定]
20ミリリットルのデカリンにポリマー20mgをいれ、150℃、2時間攪拌してポリマーを溶解させた。その溶液を135℃の高温糟で、ウベローデタイプの粘度計を用いて、標線間の落下時間(ts )を測定した。なお、ブランクとしてポリマーを入れていない、デカヒドロナフタレンのみの落下時間(tb )を測定した。下記の数式(9)に従いポリマーの比粘度(ηsp/C)をプロットし、濃度0に外挿した極限粘度(η)を求めた。
ηsp/C = (ts/tb−1)/0.1 ・・・数式(9)
このηから下記の数式(10)に従い、粘度平均分子量(Mv)を求めた。
Mv=(5.34×104)×η1.49 ・・・数式(10)
【0070】
[プレスシートの作成]
縦60mm、横60mm、厚み2mmの金型を用い、ASTM D1928 Procedure Cに従って超高分子量エチレン系共重合体をプレスすることにより、プレスシートを作成した。まず、厚さ5mmの平滑な鉄板に厚さ0.1mmのアルミニウム板を載せ、さらにセロファンでコーティングされていない厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製 ルミラー)を載せた。この上に縦60mm、横60mm、厚み2mmの金型を載せ、これに8gの超高分子量エチレン系共重合体を入れ、この上に前述のポリエチレンテレフタレートフィルムを載せ、さらに前述のアルミニウム板を載せ、さらに前述の鉄板を載せた。これを170℃に温度調節された圧縮成型機(株式会社神藤金属工業所製 SFA−37)に入れ、170℃で900秒間加熱後、10MPaで5秒間エアー抜きを行い、20MPaで300秒の加圧を行った。加圧終了後サンプルを取り出し、取り出してから5秒後に25℃に温度調節された圧縮成型機(株式会社神藤金属工業所製 SFA−37)に入れ、25℃で10MPaにて600秒間加圧しながら15±2℃/分の冷却速度で冷却した。冷却速度は金型を厚紙で挟むことにより調節した。冷却後、取り出したプレスシートをヘイズの測定に使用した。
【0071】
[ヘイズの測定]
ヘイズは、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HM−100)を用いて、ASTM D 1003の方法で測定した。試験片として、上記プレスシートを用いた。
[α−オレフィンに由来する重合単位の含有率の測定]
α−オレフィンに由来する重合単位の含有率{x(モル%)}の測定はG.J.RayらのMacromolecules,10,773(1977)に開示された方法に準じて行われ、xは、13C−NMRスペクトルにより観測されるメチレン炭素のシグナルを用いて、その面積強度より算出した。使用した機器は日本電子製Lambda−400であった。使用した溶媒はオルトジクロロベンゼン−d4、測定温度は140℃、観測周波数は100MHz(13C)、パルス幅45°(7.5μsec)、積算回数は10,000回であった。測定基準はPE(−eee−)シグナルであり29.9ppmとした。
【0072】
[参考例1]
固体触媒成分[A]の調製
(担体(A−1)の合成)
充分に窒素置換された8リットルステンレス製オートクレーブに2モル/リットルのヒドロキシトリクロロシランヘキサン溶液1460ミリリットルを仕込み、80℃で攪拌しながら組成式AlMg5(C4911(OC492で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液3730ミリリットル(マグネシウム2.68モル相当)を4時間かけて滴下し、さらに80℃で1時間攪拌しながら反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を除去し、2600ミリリットルのヘキサンで4回洗浄することにより担体(A−1)を調整した。この担体を分析した結果、担体1g当たりに含まれるマグネシウムが8.43ミリモルであった。
(固体触媒成分[A]の調製)
上記担体(A−1)160gを含有するヘキサンスラリー2880ミリリットルに20℃で攪拌しながら(A−2)として1モル/リットルの四塩化チタンヘキサン溶液160ミリリットルと(A−3)として1モル/リットルの組成式AlMg5(C4911(OSiH(C2522で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液160ミリリットルとを同時に1時間かけて添加した。添加後、20℃で1時間反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を1600ミリリットル除去し、ヘキサン1600ミリリットルで2回洗浄することにより、固体触媒成分[A]を調製した。この固体触媒成分1g中に含まれるチタン量は0.98ミリモルであった。
【0073】
[参考例2]
固体触媒成分[C]の調製
充分に窒素置換された8リットルステンレス製オートクレーブにヘキサン1600ミリリットルを添加した。20℃で攪拌しながら(A−2)として1モル/リットルの四塩化チタンヘキサン溶液800ミリリットルと(A−3)として1モル/リットルの組成式AlMg5(C4911(OSiH(C2522で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液800ミリリットルとを同時に1時間かけて添加した。添加後、ゆっくりと昇温し、20℃で1時間反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を1600ミリリットル除去し、ヘキサン1600ミリリットルで2回洗浄することにより、固体触媒成分[C]を調製した。この固体触媒成分1g中に含まれるチタン量は3.61ミリモルであった。
【0074】
[実施例1]
成分[B]の有機アルミニウム化合物として、イソブチルアルミニウムハイドライド0.4ミリモルを脱水脱酸素したヘキサン0.8リットルと1−ブテン2.5ミリリットルとともに、内部を真空脱気し窒素置換した内容積1.5リットルのオートクレーブに入れた。次いで、オートクレーブの内部を70℃に保ち、次いで、固体触媒成分[A]10mgを添加した。この後、エチレンを添加して全圧を0.2MPaとすることにより重合を開始した。エチレンを連続的に補給することにより全圧を0.2MPaに保ちつつ、70℃で60分間重合を行った。重合スラリーを抜き出しメタノールで脱活し、濾過後90℃で1時間乾燥させた。こうして得られた超高分子量エチレン系共重合体のポリマー収量は180gで、触媒1gあたりの重合活性は18000g/g−触媒であった。デカリン(135℃)中におけるηは14.5dl/g、このηから求めたMvは290万であった。透明性の指標となるヘイズyは70%で、非常に透明性に優れていた。xは0.3モル%であった。その他の値も含めて表1に示す。このxとyは上記の数式(1)を満たしていた。
【0075】
[比較例1]
固体触媒成分として、固体触媒成分[C]を10mg用いた以外は実施例1と同様に重合を行った。この重合により得られた超高分子量エチレン共重合体のポリマーの収量は300g、触媒1gあたりの重合活性は30000g/g−触媒であった。デカリン(135℃)中におけるηは12.8dl/g、このηから求めたMvは240万であった。透明性の指標となるヘイズは77%で、実施例1に比べると透明性に劣っていた。xは0.3モル%であった。その他の値も含めて表1に示す。このxとはyは上記の数式(1)を満たしていなかった。
【0076】
[実施例2]
1−ブテンの量を5ミリリットルとした以外は、実施例1と同様な方法で重合を行った。こうして得られた超高分子量エチレン系共重合体のポリマー収量は200gで、触媒1gあたりの重合活性は20000g/g−触媒であった。デカリン(135℃)中におけるηは14.0dl/g、このηから求めたMvは270万であった。透明性の指標となるヘイズyは66%で、xは0.4モル%であった。その他の値も含めて表1に示す。このxとyは上記の数式(2)および数式(3)を満たしていた。
【0077】
[実施例3]
1−ブテンの量を10ミリリットルとした以外は、実施例1と同様な方法で重合を行った。こうして得られた超高分子量エチレン系共重合体のポリマー収量は250gで、触媒1gあたりの重合活性は25000g/g−触媒であった。デカリン(135℃)中におけるηは13.6dl/g、このηから求めたMvは260万であった。透明性の指標となるヘイズyは56%で、xは0.6モル%であった。その他の値も含めて表1に示す。このxとyとは上記の数式(2)および数式(3)を満たしていた。
【0078】
[実施例4]
1−ブテンの量を20ミリリットルとした以外は、実施例1と同様な方法で重合を行った。こうして得られた超高分子量エチレン系共重合体のポリマー収量は300gで、触媒1gあたりの重合活性は30000g/g−触媒であった。デカリン(135℃)中におけるηは12.0dl/g、このηから求めたMvは220万であった。透明性の指標となるヘイズyは52%で、xは0.8モル%であった。その他の値も含めて表1に示す。このxとyとは上記の数式(2)および数式(3)を満たしていた。
【0079】
[実施例5]
重合温度を60℃とした以外は、実施例3と同様な方法で重合を行った。こうして得られた超高分子量エチレン系共重合体のポリマー収量は200gで、触媒1gあたりの重合活性は20000g/g−触媒であった。デカリン(135℃)中におけるηは14.0dl/g、このηから求めたMvは270万であった。透明性の指標となるヘイズyは60%で、xは0.6モル%であった。その他の値も含めて表1に示す。このxとyとは上記の数式(2)および数式(3)を満たしていた。
【0080】
[実施例6]
重合温度を50℃、1−ブテンの量を25ミリリットルとした以外は、実施例1と同様な方法で重合を行った。こうして得られた超高分子量エチレン系共重合体のポリマー収量は150gで、触媒1gあたりの重合活性は15000g/g−触媒であった。デカリン(135℃)中におけるηは12.4dl/g、このηから求めたMvは230万であった。透明性の指標となるヘイズyは67%で、xは0.8モル%であった。その他の値も含めて表1に示す。このxとyとは上記の数式(2)を満たしていた。
【0081】
[実施例7]
重合温度を75℃、1−ブテンの量を25ミリリットルとした以外は、実施例1と同様な方法で重合を行った。こうして得られた超高分子量エチレン系共重合体のポリマー収量は150gで、触媒1gあたりの重合活性は34000g/g−触媒であった。デカリン(135℃)中におけるηは9.8dl/g、このηから求めたMvは160万であった。透明性の指標となるヘイズyは46%で、xは0.9モル%であった。その他の値も含めて表1に示す。このxとyとは上記の数式(2)および数式(3)を満たしていた。
【0082】
[実施例8]
重合温度を80℃、1−ブテンの量を4ミリリットルとした以外は、実施例1と同様な方法で重合を行った。こうして得られた超高分子量エチレン系共重合体のポリマー収量は150gで、触媒1gあたりの重合活性は29000g/g−触媒であった。デカリン(135℃)中におけるηは11.2dl/g、このηから求めたMvは195万であった。透明性の指標となるヘイズyは47%で、xは0.4モル%であった。その他の値も含めて表1に示す。このxとyとは上記の数式(2)および数式(3)を満たしていた。
【0083】
[実施例9]
重合温度を80℃、1−ブテンの量を1.5ミリリットルとした以外は、実施例1と同様な方法で重合を行った。こうして得られた超高分子量エチレン系共重合体のポリマー収量は150gで、触媒1gあたりの重合活性は24000g/g−触媒であった。デカリン(135℃)中におけるηは11.9dl/g、このηから求めたMvは214万であった。透明性の指標となるヘイズyは67%で、xは0.2モル%であった。その他の値も含めて表1に示す。このxとyとは上記の数式(1)を満たしていた。
【0084】
[比較例2]
実施例2の固体触媒成分[A]の替わりに固体触媒[C]を10mg用いた以外は実施例2と同様に重合を行った。超高分子量エチレン共重合体のポリマーの収量は300g、触媒1gあたりの重合活性は30000g/g−触媒であった。デカリン(135℃)中におけるηは12.0dl/g、このηから求めたMvは220万であった。透明性の指標となるヘイズは74%で、xは0.6モル%であった。その他の値も含めて表1に示す。このxとyとは上記の数式(2)を満たしていなかった。
【0085】
[比較例3]
実施例3の固体触媒成分[A]の替わりに固体触媒[C]を10mg用いた以外は実施例3と同様に重合を行った。こうして得られた超高分子量エチレン共重合体のポリマーの収量は300g、触媒1gあたりの重合活性は30000g/g−触媒であった。デカリン(135℃)中におけるηは10.0dl/g、このηから求めたMvは165万であった。透明性の指標となるヘイズは73%で、xは0.8モル%であった。その他の値も含めて表1に示す。このxとyとは上記の数式(2)を満たしていなかった。
【0086】
[比較例4]
1−ブテンを使用しなかったこと以外は実施例1と同様に重合を行った。こうして得られた超高分子量エチレン単独重合体のポリマーの収量は110g、触媒1gあたりの重合活性は11000g/g−触媒であった。デカリン(135℃)中におけるηは17.1dl/g、このηから求めたMvは370万であった。透明性の指標となるヘイズは88%で、xは0モル%であった。その他の値も含めて表1に示す。
【0087】
[比較例5]
1−ブテンを使用しなかったこと以外は比較例1と同様に重合を行った。こうして得られた超高分子量エチレン単独重合体のポリマーの収量は170g、触媒1gあたりの重合活性は17000g/g−触媒であった。デカリン(135℃)中におけるηは15.3dl/g、このηから求めたMvは310万であった。透明性の指標となるヘイズは88%で、xは0モル%であった。その他の値も含めて表1に示す。
【0088】
[比較例6]
重合温度を85℃とした以外は実施例9と同様に重合を行った。こうして得られた超高分子量エチレン単独重合体のポリマーには一部凝集ポリマーが見られた。この凝集ポリマーは、連続安定生産において支障をきたす事が予想される。収量は250g、触媒1gあたりの重合活性は25000g/g−触媒であった。凝集ポリマーを除いたポリマーのデカリン(135℃)中におけるηは10.5dl/g、このηから求めたMvは178万であった。透明性の指標となるヘイズは52%で、xは0.3モル%であった。その他の値も含めて表1に示す。このxとyは上記の数式(1)を満たしていなかった。
【0089】
[比較例7]
重合温度を85℃とした以外は実施例2と同様に重合を行った。こうして得られた超高分子量エチレン単独重合体のポリマーには一部塊状のポリマーが観察された。この塊状のポリマーは、連続安定生産において支障をきたす事が予想される。収量は270g、触媒1gあたりの重合活性は17000g/g−触媒であった。塊状のポリマーを除いたポリマーのデカリン(135℃)中におけるηは10.0dl/g、このηから求めたMvは165万であった。透明性の指標となるヘイズは42%で、xは0.6モル%であった。その他の値も含めて表1に示す。このxとyは上記の数式(2)を満たしていなかった。
【0090】
[比較例8]
重合温度を85℃とした以外は実施例3と同様に重合を行った。こうして得られた超高分子量エチレン単独重合体のポリマーには塊状のポリマーが多く観察された。この塊状のポリマーは、連続安定生産において支障をきたす事が予想される。収量は320g、触媒1gあたりの重合活性は32000g/g−触媒であった。塊状のポリマーを除いたポリマーのデカリン(135℃)中におけるηは9.0dl/g、このηから求めたMvは141万であった。透明性の指標となるヘイズは40%で、xは0.8モル%であった。その他の値も含めて表1に示す。このxとyは上記の数式(2)を満たしていなかった。
【0091】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の超高分子量エチレン系共重合体は、透明性や柔軟性に優れると共に耐摩耗性、低摩擦性、および強度に優れていることから、ギヤーなどの摺動部材、軸受部材、人工関節代替品、スキー用滑走面材、スノーボード用滑走面材、研磨材、各種磁気テープのスリップシート、フレキシブルディスクのライナー、防弾部材、電池用セパレータ、各種フィルター、発泡体、フィルム、パイプ、繊維、糸、釣り糸、まな板等の分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンと炭素原子数が3以上8以下のα−オレフィンとを含む単量体混合物を共重合して得られる、粘度平均分子量(Mv)が100万以上の超高分子量エチレン系共重合体であって、
(1)エチレンと炭素数3以上8以下のα−オレフィンとに由来する合計の重合単位を基準として、α−オレフィンに由来する重合単位の含有率が0.01モル%以上1モル%未満であり、
(2)エチレンと炭素数3以上8以下のα−オレフィンとに由来する合計の重合単位を基準として、α−オレフィンに由来する重合単位の含有率{x(モル%)}と共重合体の透明性の指標であるヘイズ{y(%)}との関係が、xが0.01モル%以上0.4モル%未満の範囲では下記数式(1)を、xが0.4モル%以上1.0モル%未満の範囲では下記数式(2)を満たすことを特徴とする、超高分子量エチレン系共重合体。
−107.5x+87≦y≦−43x+89 ・・・・数式(1)
44≦y≦71.8 ・・・・数式(2)
【請求項2】
xとyとの関係が、xが0.4モル%以上1.0モル%未満の範囲では下記数式(3)を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の超高分子量エチレン系共重合体。
44≦y≦−43x+89 ・・・・数式(3)
【請求項3】
下記一般式(1)で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物と下記一般式(2)で表される塩素化剤との反応により調製された担体(A−1)に下記一般式(3)で表されるチタン化合物(A−2)及び下記一般式(4)で表される有機金属化合物(A−3)を担持することにより製造される固体触媒成分[A]、および下記一般式(5)で表される有機マグネシウム化合物、または下記一般式(6)で表される有機アルミニウム化合物である成分[B]からなるオレフィン重合用触媒を用いて製造されたことを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれかに記載の超高分子量エチレン系共重合体。
(M1)α(Mg)β(R1a(R2b(OR3c ・・・式(1)
(式中、M1は周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属するマグネシウム以外の金属原子であり、R1、R2およびR3は、各々独立して、炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、α、β、a、bおよびcは次の関係を満たす実数である。0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0≦c、0<a+b、0≦c/(α+β)≦2、kα+2β=a+b+c(ここで、kはM1の原子価))
dSiCle4(4-(d+e)) ・・・式(2)
(式中、R4は炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、dおよびeは次の関係を満たす実数である。0<d、0<e、0<d+e≦4)
Ti(OR5f1(4-f) ・・・式(3)
(式中、fは0以上4以下の実数であり、R5は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、X1はハロゲン原子である。)
(M2)γ(Mg)ε(R6h(R7ij ・・・式(4)
(式中、M2は周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属する金属原子であり、R6およびR7は、各々独立して、炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、Yはアルコキシ、シロキシ、アリロキシ、アミノ、アミド、−N=C−R89、−SR10(ここで、R8、R9およびR10は炭素数2以上20以下の炭化水素基を表す)、β−ケト酸残基であり、γ、ε、h、iおよびjは次の関係を満たす実数である。0≦γ、0<ε、0≦h、0≦i、0<h+i、0≦j/(γ+ε)≦2、nγ+2ε=h+i+j(ここで、nはM2の原子価))
(M3)κ(Mg)λ(R11p(R12q(OR13r ・・・式(5)
(式中、M3は周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属する金属原子であり、R11、R12およびR13は、各々独立して、炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、κ、λ、p、qおよびrは次の関係を満たす数である。0≦κ、0<λ、0≦p、0≦q、0≦r、0<p+q、0≦r/(κ+λ)≦2、kκ+2λ=p+q+r(ここで、kはM3の原子価))
AlR14s23-s ・・・式(6)
(式中、R14は、各々独立して、炭素数1以上12以下の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基または炭素数6以上20以下のアリール基を表し、X2は、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1以上10以下のアルコキシド基を表し、sは1以上3以下の実数である。)

【公開番号】特開2007−284664(P2007−284664A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73165(P2007−73165)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】