超高感度シリコンセンサのミリメートル波能動画像形成装置
電熱フィードバックを利用して、熱放射線センサアセンブリ中の画素のボロメーター形検出要素と環境の間の、その要素の機械的支持構造体と電気インタコネクタによる熱伝導をゼロにして、主として光子線による熱伝導を制限する。バイポーラトランジスタ増幅器の回路の加熱作用によって中間ステージの温度を調節して、機械的支持構造体と電気インタコネクト構造体を通過する温度をゼロにして、電磁線センサの断熱、応答度及び感度を大きく改善する電熱フィードバックによって、機械的支持構造体と電気読み出しインタコネクト構造体に関連する熱伝導をゼロにすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、熱放射線を検出するボロメータータイプのセンサに関し、さらに詳しく述べると、ミリメートル(MM)波長で受動又は能動の画像形成を行うのに使用できる超高感度シリコンボロメータータイプのセンサに関する。
(関連技術の説明)
【0002】
赤外線(IR)ボロメーターは新しい多くの用途に使用され、かつ、使用することが提案されている。その主な用途は、サーマルカメラを製造する際の用途である。ボロメーターが重要なのは、その性能が著しく改善されて、非常に長い波長に感度が高くかつ作動温度が高いからである。具体的に述べると、IRカメラは、大きいボロメーター・アレーによって、約0.1Kより良好な感度すなわち等価雑音温度分解能(NEΔT)を達成した。このような性能は、量子検出器の性能より劣るが、多くの用途に対して、充分でかつ費用効率が高い。ボロメーターの性能は、主として断熱性を改良することによって改良され、これは、ICの微細加工技術の進歩によって可能になった。達成された断熱性は、限定的な放射線遮断の約10倍である。
【0003】
ボロメーターは、本来、量子検出器より低い速度で作動する。しかしその速度が低い制限は、画素集積時間が、フレーム速度に対応して、走査システムのラインタイムよりはるかに長いので、焦平面の星形アレー(staring focal plane array)によって軽減される。したがって、ボロメーターをより高感度にする際の主な障害は、各画素要素の断熱を実行する際の実用上の制約である。ボロメーターの性能は、断熱性が改善されると、直接改善されて、低温FLIRカメラに代替できる可能性を含むより広い用途が得られる。理想的に断熱されると、NEΔTは、感度が約10倍改善されると予想される。
【0004】
新しい作動モードを有するLWIRシリコンボロメーターとMWIRシリコンボロメーターが、2002年12月3日付けで発行された、本願の発明者であるNathan Bluzerの、標題が「Ultra Sensitive Silicon Sensor」の米国特許第6,489,615号に開示されている。この特許は、本願の出願人に譲渡されており、そしてその全体を本願に援用するものである。
【0005】
米国特許第6,489,615号では、電熱フィードバック(electro-thermal feedback)を利用し、熱放射線センサアセンブリのボロメーター画素の吸収要素と環境の間の、その要素の機械的支持構造体と電気的インタコネクタによる熱伝導を除いて、主として光子放射による熱伝導を制限している。機械的支持構造体と電気的インタコネクタに関連する熱伝導は、電気的インタコネクタのみならず中間ステージと機械的支持構造体の温度を調節してボロメーターの吸収要素の温度に等しくする電熱フィードバックによって、ゼロにできる。
(発明の要旨)
【0006】
したがって、本発明の目的は、電磁放射線センサを改良することである。
【0007】
本発明のさらなる目的は、ミリメートル(MM)波のスペクトルの熱放射線検出する放射線センサを改良することである。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、各種タイプの環境を通じて物体の受動画像形成を行う、電熱フィードバックを含む超高感度シリコンMM波センサを提供することである。
【0009】
そして、本発明のさらに別の目的は、例えば、限定されないが、30GHz、94GHz及び220GHzで作動するように構成された超高感度シリコンセンサを提供することである。
【0010】
これら及びその外の目的は、センサ用の熱浴(heat bath);熱放射線を受け取るアンテナ要素;そのアンテナ要素に結合された、熱放射線を検出する吸収要素;及びその吸収要素を熱浴に対して断熱する中間ステージ(intermediate stage)を備えてなる二層超高感度シリコンセンサを含む方法と装置によって達成される。そのアンテナは、吸収要素と中間ステージとほぼ同一平面にある熱浴に直接取り付ける。支持要素が、吸収要素、中間ステージ及び熱浴を相互に分離している。その中間ステージは、電熱フィードバック回路を備え、その回路は、熱放射線を検出するときに、中間ステージの温度を吸収要素の温度に集中させることによって、吸収要素と熱浴との間の熱伝導を低下させ、有効に、支持要素の熱伝導を最小の伝導値にして吸収要素の感度を熱放射線の限度まで最大にするトランジスター増幅器を含んでいる。これまで使用していた熱EMF電圧の代わりにダイオードの順電圧を使って、温度が感知される。複数のこれらセンサは、画像形成アレーでヒューズさせるためのものである。
【0011】
本発明の用途のさらなる範囲は、以下に述べる詳細な説明によって明らかになるであろう。しかし、当業者には、本発明の精神と範囲に含まれる各種の変形と変更は、その詳細な説明から明らかになるであろうから、その詳細な説明と具体的実施例は、本発明の好ましい実施態様を示しながら、例示することだけを目的としていると解すべきである。
【0012】
本発明は、例示することだけを目的として提供され本発明を限定するとみなすべきでない添付図面を参照して検討することにより充分に理解できるようになるであろう。
(発明の詳細な説明)
【0013】
断熱が改善されると、ボロメーターの性能が直接改善されて、ボロメーターに、例えば受動ミリメートル(MM)波の星形画像形成装置などの広範囲の用途が開ける。したがって、ここでボロメーターの断熱を大きく改善する手段を提供する。これには、検出器とその機械的支持体及び読出し構造体との間のMM画素の熱伝導をゼロにすることが必要である。断熱を放射線の限度まで改善すると、性能が少なくとも10倍改善される。本発明において、中間ステージの温度を変えて、検出器の温度の変化を追跡し機械的支持構造体と読出し構造体を通過する正味の熱流をゼロにする、米国特許第6,489,615号に示され説明されている改良された中間ステージと電熱フィードバックを導入することによって、機械的支持構造体と読出し構造体に関連する熱伝導をゼロにすることができる。中間ステージと検出器それぞれの温度間のこの電熱フィードバックは、さらに、受動ミリメートル波画像形成装置で使用できる超高感度シリコンセンサ(USSS)で達成できる。本発明によって提供される利点と性能は、下記解析によって明らかになるであろう。先ず従来のボロメーターの性能と限界を再検討することから始め、次いで超高感度シリコンセンサ(USSS)の性能と利点を究明する。
【0014】
従来のボロメーター
従来のボロメーターの画素とその等価熱回路(thermal equivalent circuit)9は、熱伝導性の低いブリッジ12で機械的に支持されている領域を有する長方形で表された吸収要素すなわち検出器10を備え、そのブリッジは、温度がTHBの熱浴部材14の上に配置され固定されている。シーン(scene)Tsから検出器10に入射する放射線力hνは、吸収されて、検出器の温度をTDからδTDまで変化させる。図2に示すように、検出器の熱容量はC1であり、そしてブリッジ12から熱浴14への熱伝導率はG1である。温度がTsのシーンは、エネルギーhνを検出器10に放射しており、これは図2には熱流QRとして示してある。検出器10は、ブリッジの熱伝導率G1によって熱浴14に機械的に連結されていることに加えて、放射線力QD1を放出して、遮蔽体(図示せず)からQS1を受け取っている。
【0015】
図2に示す等価熱回路に関係している以下の解析を行うために、放射線力を電流源QD1、QS1及びQR1として表し、温度がTHBの熱浴14と温度がTDの検出器10の間の熱伝導率を、熱伝導率G1の熱抵抗として表す。温度TS、TD、THBは電圧として処理する。かような等価モデルによって、ボロメーターの画素9(図1)の性能は、電子回路に使う充分に発達した方法で、下記のように解析できる。
【0016】
従来のボロメーターの信号レベル
検出器の信号は、吸収された入射光子束力によって決まり、これは、式:QR=σTS4AD/4F2(式中、σ=5.6697x10-8W-m-2-K-4、TSはシーンの温度であり、そしてFはレンズのF#である)で表される。さらに放射線力は、遮蔽体から検出器10内に入射し、それは、式:QS1=σTHB4AD[1−1/4F2]で表される。同様に、検出器10は放射線力を環境に放射し、これは式:QD1=σTD4ADで表される。
QR、QD1及びQS1の式の関数が異なるのは、放射線力が、異なる立体角を通じて放射されるからであり、レンズのF#で説明される。さらに、検出器10も、伝導率G1によって、温度がTHBの熱浴14に熱エネルギーを伝達する。
【0017】
解析の結果、ボロメーターの熱状態は下記式で表される。
【数1】
【0018】
G1(T)とC1(T)の温度依存性は式1に含めた。例えば、図1に示す従来のボロメーターの場合、G1(T)とC1(T)の導関数は、温度の弱関数であるので、簡単にするため一次項だけしか残っていないと仮定する。平衡状態すなわち放射線力が一定の状態での検出器の平衡温度TD0は、ω=0のときの式1から得られ、下記式で表される。
【数2】
【0019】
したがって、平衡時の検出器の温度は、TD0にて測定された伝導率G1で割り算された放射線力の流による熱浴の温度と異なっている。予想されるように、検出器10の受け取る放射線力が大きければ大きいほど、その作動温度は、入射する放射線力に正比例するので高くなる(QR+QS1>QD1)。QS1は温度で固定されているので、検出器の温度は、シーンの温度TSが変化するにつれて単調に変化し、そして検出器の温度の変化は、最小の伝導率G1によって最大になる。
【0020】
動的条件下での検出器の作動は、シーンの温度の動的変化δTSを、熱平衡温度TD0について、ボロメーターの温度の動的変化δTDに関連付けることが特徴である。放射線遮蔽体が一定温度に保持されすなわちδTHB=0なので、∂QS1/∂T=0によって何も影響がないと仮定した。式1の残りの項を、温度T10について微分して、下記式で表されるδTDとδTSの関係が得られる。
【数3】
【0021】
式3の他の変数は次の通りである。すなわちGR=∂QR/∂TS=σTS3AD/F2はシーンから空間を通過する熱放射線の伝導率である;GD1=∂QD1/∂T1=4σT13ADは検出器から空間を通過する熱放射線の伝導率である。
【0022】
式3は、シーンの温度の動的変化δTSと検出器の温度の変化δTDの関係を示す式である。検出器の信号δTDはδTSと単調関係にあり、δTS=δTDのとき最大信号が可能である。単位利得からの減少は、熱の時定数で決まる係数GR/[GD1+G1]AC応答で表され、半径方向周波数ωTM=[GD1+G1]/C1によって提供される。シーンから受け取った放射線力の大部分(シーン上の検出器のフットプリントに対応して)が、伝導率GD1とG1を通じて流出するので、信号の減少が起こる。最大の信号を得るには、伝導率GD1とGD2をGRの値に近付けねばならない。
【0023】
したがって、熱伝導率G1を最小にするため大いに努力されている。この目的を達成するため、熱特性の低い材料を選択すると共に幾何学的方法が使用されている。質量が非常に小さい検出器を作成すると、C1とACの低下が最小になる。しかし、C1の大きさは、反比例して、検出器の熱雑音のレベルに影響するのでむやみに小さくしてはならない。GD1とG1及びC1によって提供される最大信号と最小雑音の設計基準は、以下の雑音解析から開発される。
【0024】
従来のボロメーターの雑音のレベル
いくつもの雑音源が、検出器10の温度分散全体に関与しているので、これらはすべて検出器の感度に関与して制限する。この雑音源としては、(1)検出要素が吸収する、シーンの光子力の分散:δQ2R、(2) 検出要素が発する光子力の分散:δQD12、(3) 検出器が吸収する、放射線遮蔽体の光子力の分散:δQS12、(4)熱浴14の温度の分散:δTHB2及び(5)読出し電子機器の雑音によって発生する検出器の温度の分散:δTEL2がある。
【0025】
これら雑音源は各々、感度の劣化を起こすので以下に検査する。各種雑音源の作用を、それらの、検出器の温度の分散に対する影響によって定量化する。検出器の温度の分散による定量化は、一般に等価雑音温度分解能(NEΔT)によって表されるボロメーターの感度を得るのに適している。したがって、シーンからの光子束の分散:δQR2、検出器に関する前記分散:δQD12及び遮蔽体に関する前記分散:δQS12が、それぞれδTS2、δT12及びδTS12とラベルを付けた吸収体の温度分散を発生し、以下に計算する。
【0026】
(I.)発せられる放射線力のシーンによる変動によって、検出器の温度の分散が増大する。シーンが出力する放射線力の変動は、NEΔTによって表されるボロメーターの感度を最大限に制限する。検出器10からの雑音を含む他のすべての雑音が、シーンの光子束の変動からの雑音よりはるかに小さいときに最良で最小のNEΔTが得られる。したがって、最小の雑音のレベルは、シーンから到着して検出器10に吸収される信号力QRの雑音の分散δQ2Rに一致し、下記式で表される。
【数4】
【0027】
式(4)中のΔfは検出器10の電気周波数の帯域幅でありそしてkBはボルツマン定数である。上記式の分母が、信号のごく一部分だけが検出器に到達しそしてシーンが光子信号を発すると変動の大きさが小さくなることを示している。
【0028】
シーン出力の変動は、直ちに、検出器10で温度の分散に翻訳されて、これがバックグランドで限定された性能を表す。シーンが誘発した、検出器の温度の分散δTS2は、式3と4をまとめて周波数について積分することによって得ることができる。具体的に述べると、検出器の温度変動δTS2はシーンの放射線の分散δQR2によって発生し、下記式で表される。
【数5】
【0029】
式5は、シーンが検出器10に誘発させた温度の分散が二つの因数の積であることを示している。その第一因数は、自由空間の伝導率の、検出器10と熱浴14の間の伝導率に対する比率:GR/[GD1+G1]である。第二因数は、温度がTSで熱容量がC1である物体の温度分散である。最良の性能を得るためには、シーンからの雑音が、他のすべての雑音源より優勢でなければならない。これは、ファストレンズ(F#の小さいレンズ)と最小の伝導率[GD1+G1](断熱性の優れた吸収要素10)によって促進される。
【0030】
(II.)検出器の温度の分散δT12は、いくつかのソースによって発生し、そのソースには(1)検出器10と熱浴14の間の熱伝導率G1、(2)検出器10と放射線遮蔽体(図示せず)との間の放射線伝導率GD1、及び(3)検出器10とシーンとの間の放射線伝導率GS (先に検討した)が含まれている。ここで、熱伝導率G1とGD1による温度分散に集中して検討する。
【0031】
検出器10における、スペクトル温度密度分散(spectral density of temperature variance) δT12(f)は、検出器10と周辺の間の異なる伝導経路によって表される。そのスペクトル温度分散の式は、下記の通りである。
【数6】
【0032】
式6を積分すると、熱容量がC1で温度がTDの物体の温度分散に対応する熱力学的式kBTD2/C1が得られる。しかし、この全温度分散には、放射線と熱の伝導経路による影響が含まれている。その放射線の部分は、式6の分母のGD1の項に含まれている。二つの誘因がGD1に含まれており、その一方はシーンからのもので、もう一方は放射線遮蔽体からのものである。したがって、GD1=GR+GS1(式中、GS1は放射線遮蔽体と検出器10の間の伝導率である)である。半径方向の周波数ωについて積分すると、δTD2について下記式が得られる。
【数7】
したがって、検出器の温度の分散δT12は、温度がTDで熱容量がC1の物体の理論的な温度の分散になる。
【0033】
(III.)吸収要素の回りのアンテナ20とハウジング(放射線遮蔽体)からの放射線力の変動は、全温度分散に影響する。アンテナ20からの光子は、式4で表されるシーンからの光子と区別できない。これらの変動で発生する温度の分散は、検出器10と前記遮蔽体の間の放射線伝導率によって容易に推定される(GS1=GD1-GR)。式6と7に続いて、放射線遮蔽体を温度TS1に保持したことによる検出器10の温度の分散δTS12の式は下記のようになる。
【数8】
【0034】
上記温度の分散δTS12は、二つの因数の積として示されている。その第一因数は、この影響がGS1=GD1-GRの全分散GS1+GD1に対する比率によって減少することを示している。その第二因数は、温度がTS1で熱容量がC1である物体の理論的な温度の分散である。一般に、放射線遮蔽体の温度は、熱浴14の温度THBに等しい。したがって、一般に、式8のTS1の代わりにTHBを代入する。
【0035】
(IV.)熱浴の変動は検出器10の温度の分散に影響する。熱浴14の温度THB(図1)における温度分散δTHB2は下記式で表される。
【数9】
上記式中、CHBは熱浴14の熱容量である。分散δTHB2は、熱浴14の質量を増大することによって小さくすることができ、こうすることによって、原則としてδTHB2を、任意に、他の雑音源に比べて小さくできる。このことは、熱浴の温度の分散が検出器10に直結しているので特に重要である。一般に、G1>>GR,GD1,andGS1である。したがって、式2に示す等価回路によって、これは、分散δTHB2が、検出器の温度を、1に近づく結合係数によって調節する、直接証拠を提供する。したがって、すべての実用目的のため、熱浴14の温度の分散は、吸収要素の温度の分散として自己複製して、式9で表される。
【0036】
(V.)検出器の読出し回路の雑音は、検出器の温度の分散に影響する。その読出し回路の雑音は、1/fと白色雑音の成分を含む電圧スクェアードスペクトル密度(voltage squared spectral density)dENA2/dfで表される。この解析では、この電圧雑音は、ボロメーターの温度の等価分散に翻訳される。電圧の分散から温度の分散へのこの翻訳によって、NEΔTの解析と計算が促進される。読出し回路の電圧雑音を、温度の等価分散へ翻訳するには、実際の読出し回路とボロメーターを考慮する必要がある。この解析では、抵抗ボロメーターが最も広く使用されているという事実と矛盾せずに、従来の抵抗ボロメーターの性能を解析する。
【0037】
抵抗ボロメーター
読出し回路の電圧の雑音は、dc電流ICRでバイアスされた、抵抗ボロメーターからの出力をコラプト(corrupt)する。一層よく理解するため、電子回路の雑音によって発生するコラプション(corruption)を等価温度分散に変換する。電子電圧の雑音で起こる吸収要素の温度のこの等価分散は、δTEL2と表記する。
【0038】
図3に示す読出し回路に存在する全電気雑音は、ボロメーター由来のスペクトル電圧雑音の分散dE2N/dfと増幅器由来のスペクトル電圧雑音の分散dE2NA/dfの合計である。ボロメーター由来の電圧雑音は回路のキャパシタンスCEによってフィルタされ、増幅器由来の雑音と直列になっている。読み出し増幅器の入力における電圧雑音によって発生する温度の等価分散は下記式で表される。
【数10】
【0039】
上記式10中の主因数は、ICR∂RCB/∂TSの二乗値(∂RCB/∂TSは抵抗温度係数を示し、そしてICRは、読出し中にボロメーターを通じて流れるdcバイアス電流である)で割り算することによって、電圧雑音の分散を温度の分散に変換する。式10の第二の因数は、ボロメーターと増幅器の電圧雑音のスペクトル密度の分散を含んでいる。
【0040】
最良の性能を得るためには、ボロメーターの抵抗温度係数∂RCB/∂TSは大きくしなければならない。というのは、こうすると電圧雑音の温度分散に対する影響が直接小さくなるからである(式10参照)。ボロメーターのdcバイアス電流ICRを大きくすることは、原則として役に立つが、関連するI2R加熱がIR信号より非常に大きくなり(>1000X)、吸収要素の読出し回路のパルス作動(より広い雑音の帯域幅)を必要とするという実用上の問題がある。ボロメーターのスペクトル電圧の分散dE2N/dfより小さいスペクトル電圧の分散dE2NA/dfを有する読出し増幅器を選択することによって、雑音をさらに減らすことができる。このような状態は、大抵抗のボロメーターで促進できる。一般に、ボロメーターの抵抗は、10kΩより大きく、これは、12.9nV/Hz1/2という白色雑音の電圧のスペクトル密度を示している。この値は、式10の積分を複雑にする1/fの雑音項を含んでいない。ボロメーター由来の白色雑音だけが優勢であると仮定すると、式10は容易に積分することができ、結果は下記式で表される。
【数11】
【0041】
計算するため、dE2N/dfの値を増大して1/f雑音成分を補償することができ、そしてd2EN/dfの値として0.1μV/Hz1/2を選択して使用できる。式11の値は、ωEL=1/CEREとして与えられる電気読出し帯域幅に比例することにも注目すべきである。ωELは、熱機械的帯域幅ωTM=[GD1+G1]/C1に等しいことが理想的である。通常、熱機械的帯域幅は、ωEL=KBWωTMのように、定因数KBWによって、電気読み出し帯域幅より狭い(ωEL >ωTM)。
【0042】
ボロメーターの全温度分散δTT2は、単に、式5、7、8、9及び10の合計である。dE2N/dfが周波数に対して一定であると仮定し何回か変形した後、下記δTT2の式が得られる。
【数12】
【0043】
式12は、信号内に存在する雑音に関連するあらゆる雑音源の相対値を示すためこの形にした。式12は三つの項の積で構成されている。その主因数は、検出器の熱容量とシーンの温度で限定される、検出器の熱力学的に可能な最小の温度分散である。第二の因数は、検出器の断熱性が、シーンと検出器の間の伝導性ほど良好でないので、この最小の温度分散がどのように増大するかを示す。中括弧内の第三の因数は、吸収要素の全温度分散を増大する異なる雑音源を含んである。中括弧内の式が1に等しいとき、主な雑音はシーンの雑音である。
【0044】
ボロメーターの温度分解能は、式12で示す分散によって制限され、単に、標準偏差すなわち式12の平方根に等しい。これを信号の振幅(式3で表される)と組み合わせて、ボロメーターの性能を測定する。NEΔTによるボロメーターの性能は下記のように計算する。
【0045】
従来のボロメーターの感度
ボロメーターの感度は、その温度分解能NEΔTによって与えられる。NEΔTは、ボロメーターが分解できる最低温度であり、S/N比の絶対値が1であるときに起こる。そのS/N比は、式3と12によって容易に計算される。そのS/N比は、式3で表される、ボロメーターにおいて信号が誘発する温度変化を、式12の平方根で表される、ボロメーターの温度のRMS変動で割り算して得た値に等しい。S/N比が1の場合、δTSについて解いて得たNEΔTの式は下記の通りである。
【数13】
【0046】
NEΔTの式は、式13に、ωTM=[GD1+G1]/C1及びωEL=1/CEREを組み入れることによって簡略化した。したがって、NEΔTは、3因数の積として表される。その第一の因数は、レンズのF#に左右される熱帯域幅ωTMとGR、検出器の大きさAD及びシーンの温度TSによって決定される低周波数の熱力学的感度の限界を示す。第二の因数は、感度が周波数ωTM=[GD1+G1]/C1によってどのように低下するかを示す。第三の因数には、各種の雑音源すなわち、(1)シーンの信号の雑音、(2)放射線遮蔽体を含むボロメーターからの雑音、(3)熱浴からの雑音及び(4)電子読出し回路からの雑音による影響が含まれている。
【0047】
NEΔTは、式13に3因数の積として表されている。最大の感度すなわち最小のNEΔTは、これらの因数各々を最小限にすることによって達成される。式3の中央の因数は、NEΔTの半径方向周波数に対する依存性を示す。最適には、熱の半径方向の遮蔽体周波数ωTMは、システムのフレーム速度に等しくすべきである。ωTMをシステムのフレーム速度に設定すると、システムのdc感度が最大になり、このことは、式13の第一因数から明らかである。式13の第一因数は、最大の感度を得るには、システムの分解能の要件をみたしながら、(1) ωTMを最小に設定すべきであり、(2)レンズのF#はできるだけ小さくすべきであり(ファストレンズ)、及び(3)吸収体の大きさADはできるだけ大きくすべきである。第三の因数は、前記雑音の項すべてを明確に含んでいるので、最良の感度を得るには、1に向かって最小にしなければならない。
【0048】
第三の因数を1に向かって最小にするのに必要なステップは、前記雑音の項各々を詳細に検査することによって明らかになる。第三因数のこれら雑音の項は3グループに分けられる。第一グループは、シーンからの放射線の雑音と吸収体(放射線遮蔽体を含む)の雑音である。シーンの雑音が優勢であるときに雑音は最小になる。これは、小さいF#(ファストレンズ)を使用し、温度がシーンの温度TSより低い検出器TDと放射線遮蔽体TSを操作することによって促進できるが、検出器が平衡状態の場合、検出器とシーンは熱的に理想的に平衡しているので不可能である。
【0049】
式13の第三因数の中央の項は、熱コンタクトG1を通じて検出器に結合された熱浴雑音の影響を示す。CHB>>C1にすることによって熱浴雑音の影響の低下は、容易に最小になる。熱容量を充分大きくすることによって、熱浴の雑音は、厳しく低下し、それ以上に低下させるために他のステップは必要でない。
【0050】
式13の第三因数の分母の項は、検出器に対する読出し電気器具の雑音の影響である。読出し電気機器の雑音を信号中のシーンの雑音より小さく減らすことは困難である。その難しさは、式3の第三因数の分母の項を定量検査することによって明らかになる。楽観的に、抵抗ボロメーターからの雑音が優勢で、104Ωの抵抗器の場合、通常、雑音dEN2/dfが約2x10-16V2/Hzであると仮定する。この雑音は、事情を一層悪化させる1/f雑音を含んでいない。抵抗ボロメーターでは、∂RCB/∂TS=200Ω/K及びG1/GD1=10である。TS=300K、T1=213K、AD=0.25x10-4cm2及びF=1の場合、式13の第三因数の分母の項を評価して、(ωEL/ωTM)1.3x10-9/ICR2を得る。電子雑音の影響に関するこの式は、1より充分小さくて、電子雑音を無意味にしなくてはならない。(ωEL/ωTM)=1の場合、必要な回路電流ICR >> 0.04mAである。1/f雑音が含まれている場合、必要な電流のレベルは恐らくICR>1mAである。ICR=1mAの場合、読み出し中に送達される電力I2Rは、シーンから送達される電力0.1μワットに対して約10mワットである。これは、読み出し中の電力I2Rが、信号の電力の10万倍であることを意味している。これは、熱安定性の問題をもたらすので許容できない。なおこの問題は、読出し回路の作動デューティーサイクルを減らすことによって軽減することができる。例えば400x500のエレメントを有する星形アレーの場合、例えば、読出しのデューティーサイクルを1/(2x105 )に減らして熱の問題点を改善できる。しかしその雑音の帯域幅は、読出しのデューティーサイクルとは逆に増大するが、読出しの雑音は、読出しの電流ICRの二乗、すなわち(ωEL/ωTM)1.3x10-9/ICR2として減少する。この解決策は、ボロメーターの電流容量と読出し回路の最大電圧コンプライアンスのため、実用上の制限がある。したがって、ICRを増大しかつデューティーサイクルを低下させても改善は不十分でありしかも実用上制限がある。
【0051】
IRボロメーターについて行った解析は受動MM波画像形成と比べてはるかに厳しさが低いことは強調すべきである。このことは、雑音の項すべてが検出器に温度の分散として示されている式12を試験することで分かる。IRの場合、GR≒10-9W/K 及びG1≒10-8W/Kである。したがって,温度の分散は、少なくとも[G1/GR]2≒100によって増大し、そしてこれは電子雑音を含んでいない。MM波の領域では、同じ値のGRがGAE≒4x10-12W/Kによって置き換えられる。温度の分散の対応する最小の増大は、[G1/GEA]2≒6x106として又は1000倍以上増大する。これは、従来のLWIRボロメーターの感度を、約25mKから25ケルビンまで変える。読出しの電子雑音が含まれている場合、状態はさらに悪化する。このような感度の制約は、USSS法によって克服することができ、これについては次の章で説明する。
【0052】
MM超高感度シリコンセンサ
ボロメーター感度が、比率[GD1+G1]/GRによって低下することは、NEΔT(式13参照)に関する先の考察から明らかである。同様に光応答振幅(式3参照)も比率GR /[GD1+G1]によって劣化する。GD1とG1はレンズによって限定されるので、性能を改善するには、図1に示す吸収要素10と熱浴14の間の熱伝導率G1を下げる必要がある。特別な材料と形態を利用することによって熱伝導率G1を最小限にしようと多くの努力がなされている。現在、G1=2x10-8ワット/Kという値が得られているが、これはGD1の約10倍である。実際に要求されているのは、G1がGD1の1/10であることである。材料および形態による方法に固有の制限があることを考慮すると、ボロメーターと熱浴の間の熱伝導率G1をさらに低下させるには、別の方法が必要である。
【0053】
本発明は、例えば、画素のアレー中(図1)に含まれている超高感度シリコンセンサ(USSS)がシリコンの技術だけで製造され、そして電熱フィードバックを使って熱伝導率G1を実質的に低下させる改良方法に関する。電熱フィードバックを使って、(1) NEΔTに関連する改良及び(2)光応答振幅の増大によって、ボロメーターの画素の断熱性を10倍改良できる。MM-USSSの作動と性能の利点を以下に詳細に説明する。。
【0054】
まず最初に、電熱フィードバックが、最適に伝導率が低い材料と形態だけに基づいた先行技術の方法を超えて熱伝導率を少なくとも1/10まで、どのようにして低下させるかを詳しく説明する。この説明に続いて、受動MM-USSSの光応答と雑音のレベルを計算する。これらの計算から、MM-USSSの感度が計算される。
電熱フィードバックによる最大の断熱性
図1に示すボロメーター画素9の吸収要素10と熱浴14との間の断熱は、電熱フィードバックを使って有意に改善できる。電熱フィードバックの概念は、先に引用したBluzerの米国特許第6,489,615号に開示されている。ここで、本発明に従って電熱フィードバックによって最大限に断熱を行う方法を、解析して明らかにする。本発明によるMM-USSSの解析には、acとdcの要素が含まれているが、簡略化するため解析はdc応答に限定する。
【0055】
ここで図4-6をみると、温度がTINの中間ステージ16によって、温度がTHBの熱浴14に熱的に接続された、温度がTDの吸収要素すなわち検出器10を含むボロメーター画素9が記載されている。設計によって、THBが常にTDとTINより低いと仮定する。通常の作用に加えて、TDとTINの関係は、増幅器18で表される電熱フィードバックの回路の影響を最も大きく受ける。増幅器18は、中間ステージ16に熱QHを発生させるために使用する。その発生する熱は、温度TDとTINの差に比例し、具体的に示すと、QH=A(TD−TIN)(式中、Aは電熱フィードバック定数である)である。
【0056】
温度がTDの検出器10は、幾種類もの経路で放射線を受ける。本発明では、検出器10は、図5に示すようなdc 結合アンテナ20から間接的にそして黒体放射線QDを吸収することによって直接に、シーンからのミリメートル(MM)波放射線QAEを受ける。また、温度がTDの検出器10は、遮蔽体から放射線QS1を受けてそれ自体、環境にQD1を放射する。中間ステージも、放射線遮蔽体から熱放射線QS2を受けながら、熱放射線QD2を放射する。さらに、抵抗要素22、24と26、28として示したリンクのG1=G1A+G1BとG2=G2A+G2Bが、図に示すように、ボロメーターの画素9、検出器10、中間ステージ16及び熱浴14を熱的にかつ電気的に相互に接続している。検出器10とその周囲との間の実効熱インピーダンスは、電熱フィードバックの作用を含んでいる。その電熱フィードバックの断熱に対する作用は、熱保存の式から計算される。中間ステージ16におけるdc熱保存式は下記の通りである。
【数14】
【0057】
放射線遮蔽体と熱浴14は同じ一定温度に保持されているので、式14の項QS2とTHBは一定である。式14を微分すると、温度TDとTINの関係が計算されて下記式が得られる。
【数15】
【0058】
上記式中、GD2=∂QD2/∂TINは、中間ステージからその周囲に対する放射線伝導率であり下記式で表される。
【数16】
【0059】
上記式中、AINは中間ステージの前面の表面積であり、そしてσ=5.6697x10-8W/M2-K4(ステファン-ボルツマン定数)である。電熱フィードバック定数AがG1、G2及びGD2に比べて充分に大きければ、δTDのどんな温度変化もδTINによって検出され大部分代替されることは、式15からみて注目すべきである。シーンの見かけの温度の変化δTSの、検出器のδTDに対する作用は、検出器の熱保存から得られ、下記式で表される。
【数17】
【0060】
式17を微分する前に、各項を検査した。式17の右辺は、検出器10が出す黒体放射線QD1と伝導率G1によってドレインされるパワーを含んでいる。検出器10によって直接放射される微分パワーは下記式で表される。
【数18】
【0061】
上記式中、ADは検出器の前面の表面積を表す。式17の左辺は、三つの項すなわち一つの定数と二つの可変項を含んでいる。遮蔽体が一定温度に維持されているので、項QS1(δQS1=0)は定数である。可変項QDは、検出器10が直接受ける黒体放射線を表し、その微分は下記式で表される。
【数19】
【0062】
上記式中、FはレンズのF数であり、そしてδTSはシーンの温度の実際の変化である。項QAEは、検出器10がアンテナ20から受けるMM波放射線を表す。MM波のエネルギーhν<<kTSであるから、上記プランクの式は簡略化できる。作動周波数帯域幅について、受け取った放射線を積分すると、単純な式がえられ、その式は下記の通りである。
【数20】
【0063】
上記式中「k」はボルツマン定数であり、「η」はアンテナの効率を表し、「c」は光速であり、「N」は屈折率であり、「ν2−ν1」はアンテナ20の作動帯域幅であり、Apはアンテナの面積でありかつ画素の面積に実質的に等しく、εは物体の放出率であり、そしてTSはシーンの温度である。
【0064】
IRの放出率は、ほぼ1に等しい。MM波領域では、放出率は変化し約δε/ε≒10%であると仮定できる。QAEを微分して放出率とシーンの温度の変動を含めると下記式が得られる。
【数21】
【0065】
式21の右辺は、δTS+TSδε=δTSS(式中、TSSは等価放射温度と定義する)の項を含んでいる。この等価放射温度は、温度の実際の変化δTSよりはるかに大きいことがあることに留意すべきである。MM波の性能に関するこの解析では、等価放射温度TSSを常に使用する。式17を微分するとシーンの見掛けの温度TSS、検出器の温度TD及び中間ステージの温度TINそれぞれの変化の間の関係が得られ、下記式で表される。
【数22】
【0066】
GD1=∂QD1/∂TDであれば、GD=∂QD/∂TSである。後に明らかになるように、GD<<GAEであるからGDを無視する。式15と17を組み合わせ、中間ステージの温度の微分値δTINを消去すると、下記式で表されるδTSSとδTDの関係が得られる。
【数23】
【0067】
電熱フィードバックの利点は式23で表されている。電熱フィードバック定数Aが大きい場合[A>>{G1,G2,GD2}]、式23の分母はGD1まで減少する。電熱フィードバックを利用しなかったならば[A=0]、式23の分母は、GD1+G1G2/(G1+G2)−0.5G1まで増大する。このように、大きい電熱フィードバックによって、G1とG2で生成する熱移動作用が厳しく低下するので、検出器の断熱が0.5G1からGD1まで有効に改善される。この断熱の増大は、式23を数値で検査すると最もよく分かる。
【0068】
GAE、G1、G2、GD1、GD及びGD2の数値は、式16、18、19、21で計算する。経験に基づいたG1とG2の値については、10G1=G2=10-7W/Kと近似する。A=10-5W/Kの場合について計算する(以下に詳細に述べる)。Ap がアンテナ20 (図5参照)及びレンズ(図示せず)によって結合され、屈 折率N=10でかつF=1の1MM2の画素である場合、GAE≒4.2x10-12W/Kになる(95GHzが中心で結合効率が100%の30GHzの帯域幅を仮定する)。温度がTDの検出器を、直径を約5μm小さくして作製する。したがって、GD≒6x10-11W/K及びGD1≒2.4x10-10W/Kになる。中間ステージは、大きさが検出器の約10倍であるから、GD2≒2.4x10-9になる。これらの数値を集めて、式23の二つの限界を、電熱フィードバックあり又は無しで試験して、下記式が得られる。
【数24】
【0069】
式24は、電熱フィードバックの作用を劇的に示す。すなわち、所定の、等価放射線温度の変化δTSSの場合、検出器の応答信号δTDは、検出器に対する熱負荷の作用が大きく低下するので、250倍以上になる。
【0070】
電熱フィードバックの原理を利用して改善して、達成される断熱性は、材料及び/又は形状による方法で最適化することによって可能な断熱性を超える断熱性である。電熱フィードバックの原理を取り入れて、本発明のミリメートル(MM)波超高感度シリコンセンサ(USSS)の画素を提供しその性能を解析する。
【0071】
MM USSSの画素の実施態様と作動/読出し電子機器
電熱フィードバックを取り入れて、図5、6及び9に示すような本発明の超高感度シリコンセンサを製造するには、各ボロメーター画素9内に特別な回路を結合する必要がある。すなわち、電熱フィードバックには、(1)温度差センサ、(2)温度差増幅器、(3)温度差によって決まる出力を有するヒーター、及び(4)上記項目1-3を単一の画素に取り入れる構造が必要である。
【0072】
図5に示す上記(4)について、本発明のUSSS画素9は、製造を簡略化しかつ面積効率を最大にするためニ層設計を利用し、ac結合手段11によってアンテナ20にac結合されかつ所定の表面積を有する平坦な上部吸収体の部分を含む温度がTDの検出要素10、検出要素10に隣接する温度がTINの中間ステージ16、及び熱浴14を備えている。温度がTHBの熱浴は、基板部分15と上部環状部分を備えている。支持要素すなわちリンク22、24と26、28はそれぞれ、検出器10と中間ステージ16及び中間ステージ16と熱浴14の上部17を結合して伝導率G1AとG1B及びG2AとG2Bを与える。中間ステージ16と検出器10は、実質的に同一平面内にあり、熱浴14の上部部材17のほぼ円形の空洞30内に取り付けられ、支持要素26と28によって、内壁表面32に固定されている。熱浴14の上部部材17の外側表面34上に位置しかつ検出要素10及び中間ステージ16と実質的に同一平面内にあるほぼ平坦な部材で構成されているアンテナ要素20が図示されている。
【0073】
図5と9に示すUSSSの画素9は、個々の各画素の出力端にアクセスする読出し電子機器と共にアレー中に取り入れるものである。画素9のx-yアレーは、図11に示してあり、各画素9を読み出すためのx-yアドレススイッチを含んでいる。従来のアドレス回路には、かようなアレーで利用される列と行のシフトレジスタは示されていない。かようなアレーは、例えばミリメートルの波長で、シーンから発する電磁放射線を受動的に画像化することができる。
【0074】
操作は、電磁スペクトルのミリメートル(MM)波の部分の画像を形成することが目的であるから、図5に示すような画素9の大きさは、先に引用した米国特許第6,489,615号に提示・説明された、主としてLWIRでの操作に使うことを目的とする画素の大きさの250倍程度である。
【0075】
本発明の温度差センサは、背中合わせに接続された二つのシリコンダイオード30と40を利用して、検出器10と中間ステージ16の間の温度差を測定する。図6に示すように、一方のダイオード38を検出器10に組み入れ、そして第二のダイオード40を中間ステージ16内に組み入れる。定電流でバイアスすると、シリコンダイオード38と40は各々、フェルミ準位の変化に追従する温度依存性電圧を示す。このフェルミ準位の温度依存性によって、n側の伝導帯とp側の伝導帯の間に、温度依存性の電位差が生成する。定電流でバイアスされた、ダイオードにかかる温度依存性の電圧変化は、通常、約−2.3mV/oKである。図6に示すような背中合わせに接続された二つのダイオード38と40を利用して、検出器10と中間ステージ16の間の温度差を測定する。この温度差によって、増幅器18で増幅される入力電圧を生じて、出力電圧V0を出力する。
【0076】
本発明の増幅器18は、図9に示すようにバイポーラトランジスタ回路42を含み、その増幅器は、出力電圧V0を増幅し提供するのみならずその零入力電力消費(quiescent power consumption)が中間ステージ16のヒーターとしても働くので、電熱フィードバックのループを機械化する。この二重機能は、バイポーラトランジスタ42を含む増幅回路18を、定電流IHにて平衡状態で作動するように設計することによって、可能になる。増幅器18を定電流IHで作動させると、確実に、その出力電圧は、検出器10と中間ステージの間の温度差の尺度になるのみならず、中間ステージ16に送達される熱形電力QHを決定する。増幅器18によって中間ステージ16に送達される熱形電力QHは、簡単に下記式で表される。
【数25】
【0077】
上記式中、AGは増幅器の電圧利得であり、そしてIHは増幅器が作動するdcバイアス電流である。増幅器の低周波数電圧利得は通常約105であり、そしてIHは約1μAである。IHは、TD>TIN(TD<TIN)になるように一定に保持されるので、V0は、増幅器の零入力電力を増大(減少)させて中間ステージ16を加熱(冷却)する。中間ステージのバイポーラトランジスタの温度操作(加熱と冷却)は、熱浴14の温度を、常にシーン中の物体の温度より低く調節する(すなわち、THB<{TD,TIN})ことによって可能になる。このように増幅器18と熱浴14を組み合すと所望のバイポーラ温度作動が行われる。
【0078】
電熱フィードバックの微分式は、式25を微分することによって得られ、下記の通りである。
【数26】
【0079】
電熱係数Aは、AG=105、IH=10-6ampを使って容易に求められる。これらの値を式26に代入して、A=10-5W/Kが得られ、これは、G1=G1A+G1B又はG2=G1A+G1Bよりはるかに大きく、その約1000倍である。
【0080】
したがって、三つの温度プラットホーム、すなわち、温度がTDの検出器、温度がTINの中間ステージ及び温度がTHBの熱浴を利用することによって、電熱フィードバックは、中間ステージ16に加えられた電力QHを調節して、その温度TINを検出器の温度TDに近づける。検出器10と中間ステージ16の温度差を最小にすると、伝導率G1=G1A+G1Bが効果的にゼロになる。
【0081】
MM USSSのAC応答
MM USSSのAC応答は、図7と8に示す熱等価回路で解析することによって計算される。この解析は、従来のボロメーターについて先に述べた解析法と類似の方法を踏襲して行う。その解析法では、THBが常にTDとTINより低いと無条件で仮定する。その解析結果は、電熱フィードバックが、伝導率G1を厳しく低下させるので、断熱を少なくとも40倍改善しかつ応答を増大することを示す。検出器10の熱容量はC1で表し、中間ステージの熱容量はC2で表す。QAEは、検出器10に結合されたアンテナ20を通じて送達された、シーンからの放射線力を表す。QDは、検出器10によって直接吸収された放射線力を表す。QS1とQS2はそれぞれ、検出器10と中間ステージ16によって吸収された、放射線遮蔽体からの放射線力を表す。QD1とQD2はそれぞれ、検出器10と中間ステージ16が発した放射線力を表す。QHは、電熱フィードバック回路が送達した放射線力を表す。
【0082】
検出器10と中間ステージ16における熱バランス条件(thermal balance condtion)は、二つの積分式で表される。検出器10における熱バランスの式は、下記式で表される。
【数27】
【0083】
小さい温度変化の限度を考慮し、式27のG1とC1の積分は、温度に対してリニアのテイラー級数項のみ考慮することによって近似される。この近似を利用して、式27の温度の微分をおこなうと、下記の簡略化された式が得られる。
【数28】
【0084】
先の考察から、GAEδTSS>>GDδTSであることが分かったので、GDδTSは無視できる。同様に、中間ステージにおける熱バランス条件は、下記積分式で表される。
【数29】
【0085】
式27の場合と同様に、小さい温度変化の限度を考慮し、G1、G2及びC2の積分は、温度に対してリニアのテイラー級数項のみを考慮することによって近似される。式29の温度の微分を行い、次いで式26と16を結合して下記の簡略化された式が得られる。
【数30】
【0086】
A>>{G1,G2,GD2}であるから、電熱フィードバックによって、必ずδTD=δTINになることは明らかである。このような条件下で、G1による熱電流は、検出器10の温度TDが変化しても変化しない。TINを消去するため式29と30を結合すると断熱の改善が明らかになる。式29と30を結合してTINを消去し、何回か変形した後、下記のTSSの関数としてのTDの式が得られる。
【数31】
【0087】
式31は、電熱フィードバック値が大きい場合(すなわち、A>>{G1,G2,GD2})、放射性シーンの温度の変化δTSSは、式31の右辺で表される近似によってδTDに関連している。これは、中間ステージ16の温度TINが検出器10の温度の変化に追随して、熱伝導率G1を効果的にはるかに小さくするから、起こる。雑音によって課される限界を除いて、熱伝導率G1は、Aが無限大に近づくにつれてゼロに近づくはずである。
【0088】
ここで使われる値のA=10-5W/K(式26参照)は、通常の値の10G1=G2=10-7W/Kよりはるかに大きい。したがって、電熱フィードバックの作用によって、伝導率G1=40GD1が伝導率GD1より低くなる。式3と31の分母を比較すると明らかなように、この低下によって、直接、応答が、少なくとも40倍になる。この増大した応答は、放射性シーンの温度変化δTSSに対する応答の検出器の温度変化δTDから明らかである(式31参照)。応答性が増大すると、種々の雑音源によるコラプションを非常に受けにくい信号を提供して直接感度を改善するので、重要な利点が生じる。
【0089】
式31の近似によって与えられる検出器10のAC温度の応答は、時定数C1/GD1による応答である。TVのフレーム速度の場合、これを行うには検出器10の熱容量を最小限にする必要がある。図5に示すようなアンテナ20によって、検出器の大きさは、MM波の信号に有意に悪影響を与えることなく、最小限にすることができる。特に、図5に示すような本発明の好ましい実施態様による検出器10の大きさは、直径が約5μmであり、画素9の予想サイズの約1000μm2よりはるかに小さい。この方法は、TVのフレーム速度と一致する時定数例えば0.167秒を実現するために利用できる。
【0090】
式30と31で与えられたδTD、δTIN及びδTSSの相互関係によって、ここでMM USSSの電圧応答の計算を行う。電熱フィードバックの増幅器18で送達された電力QHによって、出力信号VOが提供される。電熱フィードバック回路で送達された電力の変化δQHは、δQH=−δVOIHであるから、バイアス電流IHによる出力信号のδVOに単純に関連している(式26参照)。この関係を式30に組み入れて何回か変形した後、δTD、δTINに対する出力信号依存性に関する下記式が得られる。
【数32】
【0091】
電圧応答度は、δTINとδTDを、δTSSで置き換えることによって消去して得られる。この置換えは2ステップで達成される。第一に、式(30)を使って、δTINヲδTDで置き換える。第二に、式(31)を使って、δTDをδTSSで置き換える。これらすべての置換を実施し、次いで何回か変形を行った後、MM USSSの応答度は、下記式で表される。
【数33】
【0092】
式33の近似は、A>>{G1,G2,GD2}という事実を使用することによって可能である。式33を試験することによって、いくつかの特徴が明らかになる。出力電圧VOは、二つの因数と二つの時定数の積である。
【0093】
その第一因数は、熱伝導率G2が高くなり及びバイアス電流IHが低くなると、電圧応答度が増大することを示す。放射性シーンの温度の変化δTSSが所定の変化である場合、増幅器18が中間ステージ16に送達しなければならない電力は、熱伝導率G2が高くなるにつれて増大するので、上記のことが起こる。IHは固定されているから、増幅器18がより大きい電力を送達できる唯一の方法は、出力電圧VOを増大することによる方法である。したがって、あたかも、各画素当たりの電力消費量の増大及び/又はdc動作電圧の上昇を犠牲にして、電圧応答度が、増大したようである。
【0094】
同様に、電圧応答度は、IHとは逆に変化する。というのは、放射性シーンの温度の変化δTSSが所定の変化でかつ熱伝導率G2が一定である場合、増幅器18が中間ステージ16に送達しなければならない電力は一定のままであるからである。IHを下げると、増幅器の出力電圧は、送達される電力を一定に維持するために増大する必要がある。
【0095】
式(33)の二つの時定数は、検出器10の時定数を表すポール(pole)及び中間ステージ16の時定数を表すゼロである。検出器10の時定数は電圧応答度を低下させる。検出器10が、熱容量ゼロであれば(C1=0)、検出器の温度の上昇は、供給された放射線力を検出器に対する熱負荷量で割り算して得た値(GD1として与えられる)に対応している。しかし、検出器の温度が変化しうる前に、検出器の熱容量C1はエネルギーを受け取る(TDが上昇する場合)か又は放出する(TDが低下する場合)必要があり、そしてこの遅延は、ac電圧応答の減少として現れる。
【0096】
式(33)の第二の時定数は、中間ステージ16の時定数である。この時定数は、検出器の時定数と逆の作用を有し、すなわち電圧応答度を増大する。これは、電気フィードバック回路の作動を検査することによって理解できる。中間ステージ16の熱容量がゼロである場合(C2=0)、中間ステージの温度上昇は、単に、電気フィードバック回路が提供する出力電力(すなわちV0IH)を熱負荷量(G2+GD2)で割り算して得た値である。熱容量C2≠0であるから、検出器の温度を上昇(低下)させるため、もっと多量(もっと少量)の電力を、中間ステージ16に供給する必要がある。したがって、中間ステージの温度を検出器の温度TDまで上げる(下げる)必要がある場合、増幅器18の出力電圧は大きく(小さく)することになる。
【0097】
原則として、第一に、前記二つの時定数を使って、MM USSSの周波数応答を、検出器の時定数を超えて拡張できる。これは、中間ステージ16の時定数を検出器10定数と等しくすることによって達成できる。
【0098】
MM USSSの雑音のレベル
本発明のMM USSSの雑音源は、すべて、従来のボロメーターに存在する雑音源であるが、追加の雑音が、電熱フィードバック出力電力QHによって生成する。具体的に述べると、放射線が誘発する熱の変動による雑音としては、シーンのフラックスのQS;放射線遮蔽体のQS1とQS2;検出器10のボロメーターのQD1;及び中間ステージ16のQD2がある。また伝導率G1=G1A+G1B及びG2=G1A+G1Bを通じて検出器10に結合された熱浴14由来の熱の変動もある。最後に電熱フィードバックループ由来の雑音がある。これらの雑音源はすべて、検出器の温度に、信号と区別できない温度の変動を誘発する。MM USSSの出力は、電圧信号VOであるから、これらすべての雑音項は、列挙され(itemize)雑音電圧として示される。
【0099】
具体的に述べると、MM USSSの雑音は、温度の変動によって生ずるRMS電圧の変動(括弧内に記載)(1)シーン(δVO(TSS));(2)熱浴10(δVO(THB));(3)検出器10のステージ(δVO(TD))及び(4)中間ステージ16(δVO(TIN))として示される。さらに、各MM USSS画素に含まれている電熱フィードバックと読み出しの回路由来の五番目の雑音項δVO(EL)がある。これら雑音成分各々の式を誘導して以下に示す。
【0100】
全雑音は、各種雑音源と検出器出力の間の伝達関数を利用して計算する。放射線温度TSS、熱浴の温度THB、検出器ステージの温度TD、中間ステージの温度TIN、及び読み出し電子機器の変動のRMS値の知識を利用する。各RMS値は、特定の雑音の変動のフーリエ表現から得た標準偏差として処理する。重ね合わせの原理を利用し、すべての周波数にわたって合計した異なる伝達関数を使って、検出器の出力に対する各雑音源の影響を計算する。
【0101】
(I.)放射性シーンの温度の変動δTSSは、MM USSSの出力に対する雑音δVO(TSS)に影響し、この影響の伝達関数は式(33)で表される。最大周波数の応答については、式(33)のポールとゼロを調節してキャンセルする。放射性シーンの温度のスペクトル変動δTSS(ω)から検出器出力の変動への雑音の影響は、近似的に下記式で表される。
【数34】
【0102】
これらの影響を周波数について積分すると、シーンの温度のRMS変動δTSS(RMS)によって検出器出力がコラプトされて下記式が得られる。
【数35】
【0103】
比率GAE/GD1=0.5で表される検出器の熱伝導率によって、シーンからの雑音が減少する。しかし、その信号も同量減少して、他の雑音源によるコラプションを受けやすくなり、感度が低下する。
【0104】
(II.)熱浴14の温度変動(δTHB(RMS))は、検出器10の出力信号に変動を起こす。この影響は、式26によるδQH=IHδVO=A[δTD−δTIN]という事実を利用して計算する。したがって、δTDとδTINに対してδTHB(RMS)によって生じる変化を計算することによって、式26でδVO(THB)を得る。δTHB≠0及びδTSS=δTS=0という条件下で、重ね合わせの原理を使って、式27と29を微分して、δTHB(ω)の変動のδTD(ω)とδTIN(ω)に対する影響を得る。異なるフーリエ雑音項を合計してRMS値を得ることを目的としているのでスペクトルの表現を使用する。式27を微分し、変形した後、簡略化して下記式が得られる。
【数36】
【0105】
式29について同じ手順を繰り返して、以下に示すこれら雑音項の間の相互関係を示す第二の式が得られる。
【数37】
【0106】
式37において、δQH=A[δTD−δTIN]という事実を利用した。δTD(ω)とδTIN(ω)について、式36と37を、δTHB(ω)によって解いて、熱浴14による、増幅器18の出力電圧のスペクトル変動δVO(ω)を計算して下記式が得られる。
【数38】
【0107】
熱浴の熱容量CHBに任意に大きいことを認識することによって、上記式を簡略化する。このことを、Aが非常に大きいという事実と共に式38に組み入れて、近似し、下記簡略化された式が得られる。
【数39】
【0108】
熱浴14の熱の変動で生じるRMS雑音は、熱本体(thermal body)(式40の積分記号と角括弧内の項)のパワー・スペクトル密度を使用して得られる。式39をパワー・スペクトル密度の積分に変換して、熱浴の温度で生じる出力雑音電圧の下記式が得られる。
【数40】
【0109】
式38は、いくつかの条件を認識することによって簡略化できる。比率GD1/CHBは非常に小さいので、積分記号内のω2CHB2の項を因数分解できる。こらの近似値を組み入れ、周波数について積分して、簡単な関係を示す下記式を得る。
【数41】
【0110】
この式は、熱浴14の温度の変動による増幅器18の出力電圧のRMS変動を示す。そのレベルは、可能な最小の熱力学的雑音のレベルであり、驚くべきことには、熱浴14の熱容量とは独立しておりそして検出器10の熱容量には依存している。
【0111】
(III.)検出器10の温度TDの変動によって、出力雑音電圧の変動が増大する。図6に示す等価回路を使って、δQIN=δQH=0であるときのノードTDにおけるパワーを合計して、下記式を得る。
【数42】
【0112】
式28を使って、変数δTINを式42から消去して、下記式を得る。
【数43】
【0113】
式26による前記計算から、TDにおける温度変動で生じる雑音電圧を示す下記式を得る。
【数44】
【0114】
式44を式43と組み合わせて、パワーの変動δQDによるスペクトル雑音の依存性に関する、下記式で表される解析解を得る。
【数45】
【0115】
パワースペクトル密度:δQDの二乗値は、d2QD/df=4GD1kB(TD)2で表され、これを式45の絶対平方(absolute square)と組み合わせ、積分し次いでその平方根をとって、TDで生じるRMS電圧の変動δVO(TD)を得る。これらの演算を、いくつかの簡略化と共に実施して下記式を得る。
【数46】
【0116】
(IV.)雑音の変動δTIN(ω)の増幅器18の出力信号に対する影響は、δTD(ω)の影響と同様に計算する。図8に示す等価回路を使って、δQD=δQH=0であるときのノードTDにおけるパワーを合計して、δTD(ω)とδTIN(ω)の間の関係を示す下記式を得る。
【数47】
【0117】
雑音源δQINの影響を計算しているので、式47の温度変動δTIN(ω)は、|TIN|>|TD|を示している。図8に示すノードTINのパワーを合計して、スペクトルパワーの関係を示す下記式を得る。
【数48】
【0118】
δQH=A[δTD−δTIN]という事実と式7を利用し、式48中の変数δQHとδTDを置き換え消去して下記式を得る。
【数49】
【0119】
式26を使って、ノードTINの熱の変動によって生じる出力電圧VO[TIN(ω)]のスペクトル変動を示す下記式を得る。
【数50】
【0120】
式49と50を組み合わせδTIN(ω)を消去して、黒体放射線のスペクトル変動によるノードTINのスペクトル電圧の変動を示す下記式を得る。
【数51】
【0121】
Aは非常に大きいので、式51は、スペクトル電圧の変動に関連するパワーが、電熱フィードバックのループに関係なく、黒体放射線のパワー変動中のパワーに等しいことを示す。ノードTINのパワー変動は、(TINにおける古典的温度分散) × (このノードから周囲までの熱伝導率)に等しい。したがって、ノードTINにおける熱変動による電圧VOのRMSは下記式で表される。
【数52】
【0122】
式52によって、THB、TS、TD及びTINにおける温度変動で生じる増幅器18の出力電圧に対するRMSの全影響の計算を完了する。残りの雑音の影響は電熱フィードバック回路由来の雑音であるが、これは以下で計算する。
【0123】
(V.)バイポーラトランジスタ42を含む図9に示す本発明の好ましい実施態様の読み出しと電熱フィードバックの回路由来の雑音は、下記のように、出力信号に対する雑音に影響する。この影響は、図10に示す図9の等価回路を利用して計算する。便宜上、すべての電気雑音の項は、INOと標記された電気発生器に含まれている。これは、フィードバックの形態でなく存在している雑音を示している。さらに、この解析は、回路中の雑音は係数INOを有するフーリエ式で表すことができるという事実に基づいている。振幅INOを有する任意周波数を解析すると、電熱フィードバックによる雑音の式が得られる。
【0124】
回路内を流れる雑音は、図9に示す読出し回路内に存在する電気フィードバックと電熱フィードバックによって影響を受ける。したがって、フィードバックでない電流雑音のレベルINO(図10)は、フィードバックの作用が含まれているとき、新しいレベルinに修正され、下記式で表される。
【数53】
【0125】
上記式中、gMはバイポーラトランジスタの相互コンダクタンスであり、そして1/GMはダイオードのインピーダンスである。ダイオードとバイポーラトランジスタの「p」領域と「n」領域おけるフェルミレベルの温度依存性のため、ベースとエミッタの間の電圧差は、ac成分と熱成分を持っている。したがって、バイポーラトランジスタのベース-エミッタ電圧差は下記式で表される。
【数54】
【0126】
式54の右辺の第一項は、基準電流が非常に小さいという仮定のもとでのインピーダンスZ1と直列のダイオード38による出力電圧の電気部分を示す。式54の右辺の第二項は、ダイオードの温度(TD)とトタランジスタの温度(TIN)の温度変化で生じる熱電圧の変化を示す。係数∂VBE/∂Tは、1ケルビン当たりの電圧の変化を示し、一般に∂VBE/∂T≒-2.3MV/Kである。出力電圧の変化δVO(ω)は、出力ノードのすべてのインピーダンス及びフィードバックの作用を含んだ実際に流れている雑音電流を含めることによって容易に計算され、これは下記式で表される。
【数55】
【0127】
式55を式54に組み入れ、いくつかの項を変形した後、式53のより良好な表現の下記式を得る。
【数56】
【0128】
式56を観察すると、式56の熱項が、INで表現されるとき正の値であるならば、電流INが元の雑音電流INOより小さいことは明らかである。実際に、電熱フィードバックの項がさらに雑音電流を減少させることは明らかになり、これについては、以下に計算する。
【0129】
式48を、δQIN(ω)=0という条件下で処理して、IN(ω)、δTD(ω)及びδTIN(ω)の間の関係を示す下記式を得る。
【数57】
【0130】
項−IHδVO(ω)=δQ H(ω)を含めたが、それは、出力ノード中に流入するdc電流IHの出力電圧の変化δVO(ω)によって生じる、中間ステージで消費される電力の変化を示す。雑音電流が増大すると、出力電圧が低下し、そして中間ステージが消費する零入電力も低下するので、式57の左辺はマイナス符号になる。先に、式47でδTD(ω)とδTIN(ω)の関係を示した。
【0131】
式57と47を組合わせて、δTD(ω)を消去し、IHVO(ω)の関数としてのδTIN(ω)を下記式として得る。
【数58】
【0132】
δTD(ω)を式47で置き換え、δTIN(ω)を式58で置き換え、そしてδVO(ω)を式55で置き換えることによって、式56の右辺の大部分の項をIN(ω)で表す。これら置換をすべて行い何回か変形した後、下記IN(ω)によるINO(ω)の式を得る。
【数59】
【0133】
読出しと電熱フィードバックの回路による出力雑音の電圧は、式55と59を組み合すことによって容易に得られ、下記式で表される。
【数60】
【0134】
上記式の分母には、出力雑音電圧に影響する二つの項すなわち電気フィードバックの項と熱フィードバックの項が存在している。∂VBE/∂T≒-2.3MV/Kの値はマイナスの値なので、そのマイナスの符号を分母の熱項から除く。雑音電流が電気と熱のフィードバックの作用でどの程度低下するか、前記分母によって決まるので、式60の分母がどの程度大きいかが問題である。その低下の大きさは、Z1≒ZOO及び10gM=GMでありかつ式60の分母において熱項が電気項よりはるかに小さいことを認識することによって推定する。これらのことを組み入れ、式60を簡略化して下記式を得る。
【数61】
【0135】
比率gM/GMが小さくなればなるほど雑音が大きく低下することに注目すべきである。この特徴及びインピーダンスZ1の値を利用して、読出しと電熱フィードバックの回路からの雑音を最小限にする。本願の実施例では、この比率は10/1であるから、電子回路の雑音は1/10に減少する。
【0136】
RMS出力の雑音電圧を、式61と雑音パワーのスペクトル密度を利用して測定する。その雑音パワーのスペクトル密度の一般式は、下記式で表される。
【数62】
【0137】
上記雑音パワーのスペクトル密度は、白色雑音と1/f雑音を含んでいる。その白色雑音パワーのスペクトル密度の振幅は定数[INO]2で表されそして1/f雑音のコーナ周波数は定数Bで表される。図9に示すトランジスタ42などのバイポーラトランジスタの場合、Bの値は、約1.0KHzと推定され、100Hz程度に小さくできる。インピーダンスZ1の式は、抵抗R10とキャパシタンスC10を平行に組み合わせた式であり、Z1=R10/(1+jωR10C10)で表される。これらの項をすべて組み合わせて、雑音電圧のRMS値の下記式を得る。
【数63】
【0138】
上記計算は雑音のRMS値を扱うので、絶対値の二乗値をインピーダンスZ1に使用する。さらに、1/f雑音項は、発散を避けるため、ゼロでないところから積分する。代わりに、システムの校正に接続されている半径方向の周波数ω1を選択する。式63を積分して、電子雑音の閉鎖形の値を示す下記式を得る。
【数64】
【0139】
RMS回路の雑音電圧の値を、熱源由来の雑音電圧の値と比較する。理想的には、最適の性能を達成するため回路の電圧を最小にしなければならない。
【0140】
MM 超高感度シリコンセンサの全雑音電圧
ボロメーター画素9(図9)の出力端における全雑音は、式35、41、46、52及び64で与えられた結果のRMSの合計である。これらの式すべてを組み合わせて、画素出力端における全RMS雑音電圧を示す下記式を得る。
【数65】
【0141】
全RMS電圧雑音の式には、シーン、熱浴14、検出器10、中間ステージ16、及びバイポーラトランジスタ18を含む読出し電子機器の影響が含まれている。
【0142】
式65から、いくつかのことが明らかである。信号と同様に(式33参照)、シーンの信号からの雑音(式65の角括弧内の第一項で表されている)は、GAE/GD1=1/30まで減少する。この減少によって他のすべての雑音源が一層重大になり、感度を損なう。前記角括弧内の第二項は、熱浴14からの雑音を示し、熱浴のTHBをシーンのTSより低くすることによって減少させることができる。前記角括弧内の第三項は検出器10からの雑音を示し、そして第四項は、中間ステージ16からの雑音を示す。この中間ステージ16からの雑音は、確実にTD=TINになるように熱電フィードバックに保証させながら、C1<<C2にすることによって最小にできる。最後の項は、電子読出し機の雑音を示す。最良の性能を得るためには、電子読出し機の雑音を、MM USSSと関連する熱雑音の項より小さくしなければならない。すなわち、式65の角括弧内の(KTD2/C1)で表される項は、THB=TDであるから、(KTHB2/C1)にほぼ等しい。この項の値は、TD=300Kということを認識することによって容易に推定できる。検出器の熱容量C1は、C1≒1.56x10-11J/Kであると推定され、これは直径が5μm、厚さが0.5μmそしてK=1.38x10-23J/Kのシリコン膜の熱容量に相当する。これらの項をすべて組み合わせて(KTD2/C1)の計算値≒8x10-8K2になる。最終的感度は前記角括弧内のリーディング項が他のすべての項より大きい時に得られる。比率GAE/GD1=1/30ならば、センサは、それ自体の熱の変動のRMSの合計(式65の角括弧内の第二、第三及び第四の項)並びに電子読出し機の雑音の値(式65の角括弧内の第五項)によって制限されると、結論される。MM USSSの感度は、次の章で測定する。
【0143】
MM USSSの等価雑音放射温度
MM USSSの等価雑音放射温度(NERΔT)は、MM USSSが分解できる最小温度を示し、S/N比1で起こる。これは、式65で与えられる雑音電圧を、式33で与えられる絶対応答度で割り算し、何回か変形し次いでGD1<<G2と近似して数学的に下記式として得られる。
【数66】
【0144】
MM USSSの感度の式は、以下の三つの項すなわち、熱負荷[GD1/GAE]による劣化、熱の変動と電子回路からの雑音、及び検出器10tと中間ステージ16の周波数応答を示す「ac」因数の積として表される。これらの項、各々を詳細に検討する。
【0145】
第一項は、GD1/検出器とシーンの間の伝導率GAE由来の熱負荷によって生成する、感度の劣化である。GD1/GAE=30であるから、これは有意な劣化である。電熱フィードバックによって、これが、GD1/GAE=2400からGD1/GAE=30まで低下した。これは、従来の方法のほとんど100倍の改善であり、感度を大きく改善するMM USSSを提唱する優れた理由を明確に例証している。
【0146】
前記角括弧内の項は、すべて雑音源を示す。前の因数が大きい減少因数であるから([GAE/GD1]2=1/900)、第一項は無視できる。前記角括弧内の第二、第三及び第四の項の組合わせは、(KTD2/C1)≒8x10-8K2であることは前から分かっているので、容易に求めることができる。熱浴14と中間ステージ16の温度は検出器10とほぼ同じであると近似される([TD=THB=TIN]及び10C1≒C2)。前記角括弧内の第二、第三及び第四の項を組み合わせて、約2x10-7K2という推定値を得る。これら三つの項はそれ自体、感度を0.013Kより大きく限定することに注目すべきである。
【0147】
この優れた性能は、あいにく、式66の角括弧内の第五項で表される電子回路の雑音によって劣化する。この劣化は、数値を置換することによって容易に推定できる。設計によって、R10=108、C10=1PF、GM/GM=0.1、IH/G2=10、B=1KHz、及びバイポーラ増幅器18の白色雑音パワースペクトル密度は[INO]2=(8/3)EIHであるので4.3x10-25に等しいと推定される。これらをすべて組み合わせると、電子回路の雑音の項は下記式のようになる。
【数67】
【0148】
電子機器の雑音には、白色雑音(第一項)と1/f雑音(第二項)が含まれている。その雑音の合計は、センサの低周波数作動コーナーのω1によって決まる。校正を、1時間ごとに一回自動的に実施すると仮定すると、式67の値は、3.2x10-5K2になる。この値は、すべての検出器熱雑音の項の合計2x10-7K2よりはるかに大きい。式67由来の数値を式66に挿入すると、放射温度分解能の推定値が得られ、それは0.2Kである。これによって、MM USSSの優れた性能が予想される。
【0149】
上記解析結果と本願に開示されている本発明の実施態様から、本発明は、受動MM波画像形成法に特に適合していることが分かる。受動ミリメートル波画像形成法は、衣服を透過して、雲を透過して及び降雨中に見ることを含むいくつかの重要な特徴を提供する。前者の特徴は、武器や爆発物の遠隔検出を行うホームディフェンス(home defense)の用途を提供する。後者の特徴は、地上、空中及び海上に展開されている軍事基地の視程を改善する。
【0150】
さらに、センサが、モノリシック設計で単一のシリコンウェーハ上に製造されると、マイクロ波ミキサが不要になる。このように回路系を簡略化すると、ミリメートル波画像形成装置の製造コストが直接、有意に減少する。
【0151】
USSSの画素の発明の好ましい実施態様と現在考えられるものを示し説明してきたが、すべての変形、変更及び修正も、本願の特許請求の範囲に記載されて本発明の精神と範囲内に含まれていることに注目すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】熱浴を含む基板の上面に設置されている断熱ブリッジに取り付けられた従来のボロメーター形センサを例示する線図である。
【図2】図1に示すボロメーター用の熱等価回路を示す。
【図3】図1に示すセンサの電気雑音等価回路を示す。
【図4】本発明のボロメーター形センサ用電熱フィードバック回路を例示する電気ブロック線図である。
【図5】本発明の好ましい実施態様を例示する二層ボロメーター形センサを例示する線図である。
【図6】図5に示すボロメータセンサに設置する電熱フィードドバック回路を例示する電気回路の線図である。
【図7】図5に示す本発明の実施態様の熱等価回路である。
【図8】図5に示す実施態様の、熱変動による雑音源用の熱等価回路である。
【図9】図6に示す増幅器に含まれているバイポーラトランジスタ回路系の電気回路線図である。
【図10】図9に示す電熱フィードバック回路の機能等価回路である。
【図11】図5に示す画素のアレーの電気回路の線図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、熱放射線を検出するボロメータータイプのセンサに関し、さらに詳しく述べると、ミリメートル(MM)波長で受動又は能動の画像形成を行うのに使用できる超高感度シリコンボロメータータイプのセンサに関する。
(関連技術の説明)
【0002】
赤外線(IR)ボロメーターは新しい多くの用途に使用され、かつ、使用することが提案されている。その主な用途は、サーマルカメラを製造する際の用途である。ボロメーターが重要なのは、その性能が著しく改善されて、非常に長い波長に感度が高くかつ作動温度が高いからである。具体的に述べると、IRカメラは、大きいボロメーター・アレーによって、約0.1Kより良好な感度すなわち等価雑音温度分解能(NEΔT)を達成した。このような性能は、量子検出器の性能より劣るが、多くの用途に対して、充分でかつ費用効率が高い。ボロメーターの性能は、主として断熱性を改良することによって改良され、これは、ICの微細加工技術の進歩によって可能になった。達成された断熱性は、限定的な放射線遮断の約10倍である。
【0003】
ボロメーターは、本来、量子検出器より低い速度で作動する。しかしその速度が低い制限は、画素集積時間が、フレーム速度に対応して、走査システムのラインタイムよりはるかに長いので、焦平面の星形アレー(staring focal plane array)によって軽減される。したがって、ボロメーターをより高感度にする際の主な障害は、各画素要素の断熱を実行する際の実用上の制約である。ボロメーターの性能は、断熱性が改善されると、直接改善されて、低温FLIRカメラに代替できる可能性を含むより広い用途が得られる。理想的に断熱されると、NEΔTは、感度が約10倍改善されると予想される。
【0004】
新しい作動モードを有するLWIRシリコンボロメーターとMWIRシリコンボロメーターが、2002年12月3日付けで発行された、本願の発明者であるNathan Bluzerの、標題が「Ultra Sensitive Silicon Sensor」の米国特許第6,489,615号に開示されている。この特許は、本願の出願人に譲渡されており、そしてその全体を本願に援用するものである。
【0005】
米国特許第6,489,615号では、電熱フィードバック(electro-thermal feedback)を利用し、熱放射線センサアセンブリのボロメーター画素の吸収要素と環境の間の、その要素の機械的支持構造体と電気的インタコネクタによる熱伝導を除いて、主として光子放射による熱伝導を制限している。機械的支持構造体と電気的インタコネクタに関連する熱伝導は、電気的インタコネクタのみならず中間ステージと機械的支持構造体の温度を調節してボロメーターの吸収要素の温度に等しくする電熱フィードバックによって、ゼロにできる。
(発明の要旨)
【0006】
したがって、本発明の目的は、電磁放射線センサを改良することである。
【0007】
本発明のさらなる目的は、ミリメートル(MM)波のスペクトルの熱放射線検出する放射線センサを改良することである。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、各種タイプの環境を通じて物体の受動画像形成を行う、電熱フィードバックを含む超高感度シリコンMM波センサを提供することである。
【0009】
そして、本発明のさらに別の目的は、例えば、限定されないが、30GHz、94GHz及び220GHzで作動するように構成された超高感度シリコンセンサを提供することである。
【0010】
これら及びその外の目的は、センサ用の熱浴(heat bath);熱放射線を受け取るアンテナ要素;そのアンテナ要素に結合された、熱放射線を検出する吸収要素;及びその吸収要素を熱浴に対して断熱する中間ステージ(intermediate stage)を備えてなる二層超高感度シリコンセンサを含む方法と装置によって達成される。そのアンテナは、吸収要素と中間ステージとほぼ同一平面にある熱浴に直接取り付ける。支持要素が、吸収要素、中間ステージ及び熱浴を相互に分離している。その中間ステージは、電熱フィードバック回路を備え、その回路は、熱放射線を検出するときに、中間ステージの温度を吸収要素の温度に集中させることによって、吸収要素と熱浴との間の熱伝導を低下させ、有効に、支持要素の熱伝導を最小の伝導値にして吸収要素の感度を熱放射線の限度まで最大にするトランジスター増幅器を含んでいる。これまで使用していた熱EMF電圧の代わりにダイオードの順電圧を使って、温度が感知される。複数のこれらセンサは、画像形成アレーでヒューズさせるためのものである。
【0011】
本発明の用途のさらなる範囲は、以下に述べる詳細な説明によって明らかになるであろう。しかし、当業者には、本発明の精神と範囲に含まれる各種の変形と変更は、その詳細な説明から明らかになるであろうから、その詳細な説明と具体的実施例は、本発明の好ましい実施態様を示しながら、例示することだけを目的としていると解すべきである。
【0012】
本発明は、例示することだけを目的として提供され本発明を限定するとみなすべきでない添付図面を参照して検討することにより充分に理解できるようになるであろう。
(発明の詳細な説明)
【0013】
断熱が改善されると、ボロメーターの性能が直接改善されて、ボロメーターに、例えば受動ミリメートル(MM)波の星形画像形成装置などの広範囲の用途が開ける。したがって、ここでボロメーターの断熱を大きく改善する手段を提供する。これには、検出器とその機械的支持体及び読出し構造体との間のMM画素の熱伝導をゼロにすることが必要である。断熱を放射線の限度まで改善すると、性能が少なくとも10倍改善される。本発明において、中間ステージの温度を変えて、検出器の温度の変化を追跡し機械的支持構造体と読出し構造体を通過する正味の熱流をゼロにする、米国特許第6,489,615号に示され説明されている改良された中間ステージと電熱フィードバックを導入することによって、機械的支持構造体と読出し構造体に関連する熱伝導をゼロにすることができる。中間ステージと検出器それぞれの温度間のこの電熱フィードバックは、さらに、受動ミリメートル波画像形成装置で使用できる超高感度シリコンセンサ(USSS)で達成できる。本発明によって提供される利点と性能は、下記解析によって明らかになるであろう。先ず従来のボロメーターの性能と限界を再検討することから始め、次いで超高感度シリコンセンサ(USSS)の性能と利点を究明する。
【0014】
従来のボロメーター
従来のボロメーターの画素とその等価熱回路(thermal equivalent circuit)9は、熱伝導性の低いブリッジ12で機械的に支持されている領域を有する長方形で表された吸収要素すなわち検出器10を備え、そのブリッジは、温度がTHBの熱浴部材14の上に配置され固定されている。シーン(scene)Tsから検出器10に入射する放射線力hνは、吸収されて、検出器の温度をTDからδTDまで変化させる。図2に示すように、検出器の熱容量はC1であり、そしてブリッジ12から熱浴14への熱伝導率はG1である。温度がTsのシーンは、エネルギーhνを検出器10に放射しており、これは図2には熱流QRとして示してある。検出器10は、ブリッジの熱伝導率G1によって熱浴14に機械的に連結されていることに加えて、放射線力QD1を放出して、遮蔽体(図示せず)からQS1を受け取っている。
【0015】
図2に示す等価熱回路に関係している以下の解析を行うために、放射線力を電流源QD1、QS1及びQR1として表し、温度がTHBの熱浴14と温度がTDの検出器10の間の熱伝導率を、熱伝導率G1の熱抵抗として表す。温度TS、TD、THBは電圧として処理する。かような等価モデルによって、ボロメーターの画素9(図1)の性能は、電子回路に使う充分に発達した方法で、下記のように解析できる。
【0016】
従来のボロメーターの信号レベル
検出器の信号は、吸収された入射光子束力によって決まり、これは、式:QR=σTS4AD/4F2(式中、σ=5.6697x10-8W-m-2-K-4、TSはシーンの温度であり、そしてFはレンズのF#である)で表される。さらに放射線力は、遮蔽体から検出器10内に入射し、それは、式:QS1=σTHB4AD[1−1/4F2]で表される。同様に、検出器10は放射線力を環境に放射し、これは式:QD1=σTD4ADで表される。
QR、QD1及びQS1の式の関数が異なるのは、放射線力が、異なる立体角を通じて放射されるからであり、レンズのF#で説明される。さらに、検出器10も、伝導率G1によって、温度がTHBの熱浴14に熱エネルギーを伝達する。
【0017】
解析の結果、ボロメーターの熱状態は下記式で表される。
【数1】
【0018】
G1(T)とC1(T)の温度依存性は式1に含めた。例えば、図1に示す従来のボロメーターの場合、G1(T)とC1(T)の導関数は、温度の弱関数であるので、簡単にするため一次項だけしか残っていないと仮定する。平衡状態すなわち放射線力が一定の状態での検出器の平衡温度TD0は、ω=0のときの式1から得られ、下記式で表される。
【数2】
【0019】
したがって、平衡時の検出器の温度は、TD0にて測定された伝導率G1で割り算された放射線力の流による熱浴の温度と異なっている。予想されるように、検出器10の受け取る放射線力が大きければ大きいほど、その作動温度は、入射する放射線力に正比例するので高くなる(QR+QS1>QD1)。QS1は温度で固定されているので、検出器の温度は、シーンの温度TSが変化するにつれて単調に変化し、そして検出器の温度の変化は、最小の伝導率G1によって最大になる。
【0020】
動的条件下での検出器の作動は、シーンの温度の動的変化δTSを、熱平衡温度TD0について、ボロメーターの温度の動的変化δTDに関連付けることが特徴である。放射線遮蔽体が一定温度に保持されすなわちδTHB=0なので、∂QS1/∂T=0によって何も影響がないと仮定した。式1の残りの項を、温度T10について微分して、下記式で表されるδTDとδTSの関係が得られる。
【数3】
【0021】
式3の他の変数は次の通りである。すなわちGR=∂QR/∂TS=σTS3AD/F2はシーンから空間を通過する熱放射線の伝導率である;GD1=∂QD1/∂T1=4σT13ADは検出器から空間を通過する熱放射線の伝導率である。
【0022】
式3は、シーンの温度の動的変化δTSと検出器の温度の変化δTDの関係を示す式である。検出器の信号δTDはδTSと単調関係にあり、δTS=δTDのとき最大信号が可能である。単位利得からの減少は、熱の時定数で決まる係数GR/[GD1+G1]AC応答で表され、半径方向周波数ωTM=[GD1+G1]/C1によって提供される。シーンから受け取った放射線力の大部分(シーン上の検出器のフットプリントに対応して)が、伝導率GD1とG1を通じて流出するので、信号の減少が起こる。最大の信号を得るには、伝導率GD1とGD2をGRの値に近付けねばならない。
【0023】
したがって、熱伝導率G1を最小にするため大いに努力されている。この目的を達成するため、熱特性の低い材料を選択すると共に幾何学的方法が使用されている。質量が非常に小さい検出器を作成すると、C1とACの低下が最小になる。しかし、C1の大きさは、反比例して、検出器の熱雑音のレベルに影響するのでむやみに小さくしてはならない。GD1とG1及びC1によって提供される最大信号と最小雑音の設計基準は、以下の雑音解析から開発される。
【0024】
従来のボロメーターの雑音のレベル
いくつもの雑音源が、検出器10の温度分散全体に関与しているので、これらはすべて検出器の感度に関与して制限する。この雑音源としては、(1)検出要素が吸収する、シーンの光子力の分散:δQ2R、(2) 検出要素が発する光子力の分散:δQD12、(3) 検出器が吸収する、放射線遮蔽体の光子力の分散:δQS12、(4)熱浴14の温度の分散:δTHB2及び(5)読出し電子機器の雑音によって発生する検出器の温度の分散:δTEL2がある。
【0025】
これら雑音源は各々、感度の劣化を起こすので以下に検査する。各種雑音源の作用を、それらの、検出器の温度の分散に対する影響によって定量化する。検出器の温度の分散による定量化は、一般に等価雑音温度分解能(NEΔT)によって表されるボロメーターの感度を得るのに適している。したがって、シーンからの光子束の分散:δQR2、検出器に関する前記分散:δQD12及び遮蔽体に関する前記分散:δQS12が、それぞれδTS2、δT12及びδTS12とラベルを付けた吸収体の温度分散を発生し、以下に計算する。
【0026】
(I.)発せられる放射線力のシーンによる変動によって、検出器の温度の分散が増大する。シーンが出力する放射線力の変動は、NEΔTによって表されるボロメーターの感度を最大限に制限する。検出器10からの雑音を含む他のすべての雑音が、シーンの光子束の変動からの雑音よりはるかに小さいときに最良で最小のNEΔTが得られる。したがって、最小の雑音のレベルは、シーンから到着して検出器10に吸収される信号力QRの雑音の分散δQ2Rに一致し、下記式で表される。
【数4】
【0027】
式(4)中のΔfは検出器10の電気周波数の帯域幅でありそしてkBはボルツマン定数である。上記式の分母が、信号のごく一部分だけが検出器に到達しそしてシーンが光子信号を発すると変動の大きさが小さくなることを示している。
【0028】
シーン出力の変動は、直ちに、検出器10で温度の分散に翻訳されて、これがバックグランドで限定された性能を表す。シーンが誘発した、検出器の温度の分散δTS2は、式3と4をまとめて周波数について積分することによって得ることができる。具体的に述べると、検出器の温度変動δTS2はシーンの放射線の分散δQR2によって発生し、下記式で表される。
【数5】
【0029】
式5は、シーンが検出器10に誘発させた温度の分散が二つの因数の積であることを示している。その第一因数は、自由空間の伝導率の、検出器10と熱浴14の間の伝導率に対する比率:GR/[GD1+G1]である。第二因数は、温度がTSで熱容量がC1である物体の温度分散である。最良の性能を得るためには、シーンからの雑音が、他のすべての雑音源より優勢でなければならない。これは、ファストレンズ(F#の小さいレンズ)と最小の伝導率[GD1+G1](断熱性の優れた吸収要素10)によって促進される。
【0030】
(II.)検出器の温度の分散δT12は、いくつかのソースによって発生し、そのソースには(1)検出器10と熱浴14の間の熱伝導率G1、(2)検出器10と放射線遮蔽体(図示せず)との間の放射線伝導率GD1、及び(3)検出器10とシーンとの間の放射線伝導率GS (先に検討した)が含まれている。ここで、熱伝導率G1とGD1による温度分散に集中して検討する。
【0031】
検出器10における、スペクトル温度密度分散(spectral density of temperature variance) δT12(f)は、検出器10と周辺の間の異なる伝導経路によって表される。そのスペクトル温度分散の式は、下記の通りである。
【数6】
【0032】
式6を積分すると、熱容量がC1で温度がTDの物体の温度分散に対応する熱力学的式kBTD2/C1が得られる。しかし、この全温度分散には、放射線と熱の伝導経路による影響が含まれている。その放射線の部分は、式6の分母のGD1の項に含まれている。二つの誘因がGD1に含まれており、その一方はシーンからのもので、もう一方は放射線遮蔽体からのものである。したがって、GD1=GR+GS1(式中、GS1は放射線遮蔽体と検出器10の間の伝導率である)である。半径方向の周波数ωについて積分すると、δTD2について下記式が得られる。
【数7】
したがって、検出器の温度の分散δT12は、温度がTDで熱容量がC1の物体の理論的な温度の分散になる。
【0033】
(III.)吸収要素の回りのアンテナ20とハウジング(放射線遮蔽体)からの放射線力の変動は、全温度分散に影響する。アンテナ20からの光子は、式4で表されるシーンからの光子と区別できない。これらの変動で発生する温度の分散は、検出器10と前記遮蔽体の間の放射線伝導率によって容易に推定される(GS1=GD1-GR)。式6と7に続いて、放射線遮蔽体を温度TS1に保持したことによる検出器10の温度の分散δTS12の式は下記のようになる。
【数8】
【0034】
上記温度の分散δTS12は、二つの因数の積として示されている。その第一因数は、この影響がGS1=GD1-GRの全分散GS1+GD1に対する比率によって減少することを示している。その第二因数は、温度がTS1で熱容量がC1である物体の理論的な温度の分散である。一般に、放射線遮蔽体の温度は、熱浴14の温度THBに等しい。したがって、一般に、式8のTS1の代わりにTHBを代入する。
【0035】
(IV.)熱浴の変動は検出器10の温度の分散に影響する。熱浴14の温度THB(図1)における温度分散δTHB2は下記式で表される。
【数9】
上記式中、CHBは熱浴14の熱容量である。分散δTHB2は、熱浴14の質量を増大することによって小さくすることができ、こうすることによって、原則としてδTHB2を、任意に、他の雑音源に比べて小さくできる。このことは、熱浴の温度の分散が検出器10に直結しているので特に重要である。一般に、G1>>GR,GD1,andGS1である。したがって、式2に示す等価回路によって、これは、分散δTHB2が、検出器の温度を、1に近づく結合係数によって調節する、直接証拠を提供する。したがって、すべての実用目的のため、熱浴14の温度の分散は、吸収要素の温度の分散として自己複製して、式9で表される。
【0036】
(V.)検出器の読出し回路の雑音は、検出器の温度の分散に影響する。その読出し回路の雑音は、1/fと白色雑音の成分を含む電圧スクェアードスペクトル密度(voltage squared spectral density)dENA2/dfで表される。この解析では、この電圧雑音は、ボロメーターの温度の等価分散に翻訳される。電圧の分散から温度の分散へのこの翻訳によって、NEΔTの解析と計算が促進される。読出し回路の電圧雑音を、温度の等価分散へ翻訳するには、実際の読出し回路とボロメーターを考慮する必要がある。この解析では、抵抗ボロメーターが最も広く使用されているという事実と矛盾せずに、従来の抵抗ボロメーターの性能を解析する。
【0037】
抵抗ボロメーター
読出し回路の電圧の雑音は、dc電流ICRでバイアスされた、抵抗ボロメーターからの出力をコラプト(corrupt)する。一層よく理解するため、電子回路の雑音によって発生するコラプション(corruption)を等価温度分散に変換する。電子電圧の雑音で起こる吸収要素の温度のこの等価分散は、δTEL2と表記する。
【0038】
図3に示す読出し回路に存在する全電気雑音は、ボロメーター由来のスペクトル電圧雑音の分散dE2N/dfと増幅器由来のスペクトル電圧雑音の分散dE2NA/dfの合計である。ボロメーター由来の電圧雑音は回路のキャパシタンスCEによってフィルタされ、増幅器由来の雑音と直列になっている。読み出し増幅器の入力における電圧雑音によって発生する温度の等価分散は下記式で表される。
【数10】
【0039】
上記式10中の主因数は、ICR∂RCB/∂TSの二乗値(∂RCB/∂TSは抵抗温度係数を示し、そしてICRは、読出し中にボロメーターを通じて流れるdcバイアス電流である)で割り算することによって、電圧雑音の分散を温度の分散に変換する。式10の第二の因数は、ボロメーターと増幅器の電圧雑音のスペクトル密度の分散を含んでいる。
【0040】
最良の性能を得るためには、ボロメーターの抵抗温度係数∂RCB/∂TSは大きくしなければならない。というのは、こうすると電圧雑音の温度分散に対する影響が直接小さくなるからである(式10参照)。ボロメーターのdcバイアス電流ICRを大きくすることは、原則として役に立つが、関連するI2R加熱がIR信号より非常に大きくなり(>1000X)、吸収要素の読出し回路のパルス作動(より広い雑音の帯域幅)を必要とするという実用上の問題がある。ボロメーターのスペクトル電圧の分散dE2N/dfより小さいスペクトル電圧の分散dE2NA/dfを有する読出し増幅器を選択することによって、雑音をさらに減らすことができる。このような状態は、大抵抗のボロメーターで促進できる。一般に、ボロメーターの抵抗は、10kΩより大きく、これは、12.9nV/Hz1/2という白色雑音の電圧のスペクトル密度を示している。この値は、式10の積分を複雑にする1/fの雑音項を含んでいない。ボロメーター由来の白色雑音だけが優勢であると仮定すると、式10は容易に積分することができ、結果は下記式で表される。
【数11】
【0041】
計算するため、dE2N/dfの値を増大して1/f雑音成分を補償することができ、そしてd2EN/dfの値として0.1μV/Hz1/2を選択して使用できる。式11の値は、ωEL=1/CEREとして与えられる電気読出し帯域幅に比例することにも注目すべきである。ωELは、熱機械的帯域幅ωTM=[GD1+G1]/C1に等しいことが理想的である。通常、熱機械的帯域幅は、ωEL=KBWωTMのように、定因数KBWによって、電気読み出し帯域幅より狭い(ωEL >ωTM)。
【0042】
ボロメーターの全温度分散δTT2は、単に、式5、7、8、9及び10の合計である。dE2N/dfが周波数に対して一定であると仮定し何回か変形した後、下記δTT2の式が得られる。
【数12】
【0043】
式12は、信号内に存在する雑音に関連するあらゆる雑音源の相対値を示すためこの形にした。式12は三つの項の積で構成されている。その主因数は、検出器の熱容量とシーンの温度で限定される、検出器の熱力学的に可能な最小の温度分散である。第二の因数は、検出器の断熱性が、シーンと検出器の間の伝導性ほど良好でないので、この最小の温度分散がどのように増大するかを示す。中括弧内の第三の因数は、吸収要素の全温度分散を増大する異なる雑音源を含んである。中括弧内の式が1に等しいとき、主な雑音はシーンの雑音である。
【0044】
ボロメーターの温度分解能は、式12で示す分散によって制限され、単に、標準偏差すなわち式12の平方根に等しい。これを信号の振幅(式3で表される)と組み合わせて、ボロメーターの性能を測定する。NEΔTによるボロメーターの性能は下記のように計算する。
【0045】
従来のボロメーターの感度
ボロメーターの感度は、その温度分解能NEΔTによって与えられる。NEΔTは、ボロメーターが分解できる最低温度であり、S/N比の絶対値が1であるときに起こる。そのS/N比は、式3と12によって容易に計算される。そのS/N比は、式3で表される、ボロメーターにおいて信号が誘発する温度変化を、式12の平方根で表される、ボロメーターの温度のRMS変動で割り算して得た値に等しい。S/N比が1の場合、δTSについて解いて得たNEΔTの式は下記の通りである。
【数13】
【0046】
NEΔTの式は、式13に、ωTM=[GD1+G1]/C1及びωEL=1/CEREを組み入れることによって簡略化した。したがって、NEΔTは、3因数の積として表される。その第一の因数は、レンズのF#に左右される熱帯域幅ωTMとGR、検出器の大きさAD及びシーンの温度TSによって決定される低周波数の熱力学的感度の限界を示す。第二の因数は、感度が周波数ωTM=[GD1+G1]/C1によってどのように低下するかを示す。第三の因数には、各種の雑音源すなわち、(1)シーンの信号の雑音、(2)放射線遮蔽体を含むボロメーターからの雑音、(3)熱浴からの雑音及び(4)電子読出し回路からの雑音による影響が含まれている。
【0047】
NEΔTは、式13に3因数の積として表されている。最大の感度すなわち最小のNEΔTは、これらの因数各々を最小限にすることによって達成される。式3の中央の因数は、NEΔTの半径方向周波数に対する依存性を示す。最適には、熱の半径方向の遮蔽体周波数ωTMは、システムのフレーム速度に等しくすべきである。ωTMをシステムのフレーム速度に設定すると、システムのdc感度が最大になり、このことは、式13の第一因数から明らかである。式13の第一因数は、最大の感度を得るには、システムの分解能の要件をみたしながら、(1) ωTMを最小に設定すべきであり、(2)レンズのF#はできるだけ小さくすべきであり(ファストレンズ)、及び(3)吸収体の大きさADはできるだけ大きくすべきである。第三の因数は、前記雑音の項すべてを明確に含んでいるので、最良の感度を得るには、1に向かって最小にしなければならない。
【0048】
第三の因数を1に向かって最小にするのに必要なステップは、前記雑音の項各々を詳細に検査することによって明らかになる。第三因数のこれら雑音の項は3グループに分けられる。第一グループは、シーンからの放射線の雑音と吸収体(放射線遮蔽体を含む)の雑音である。シーンの雑音が優勢であるときに雑音は最小になる。これは、小さいF#(ファストレンズ)を使用し、温度がシーンの温度TSより低い検出器TDと放射線遮蔽体TSを操作することによって促進できるが、検出器が平衡状態の場合、検出器とシーンは熱的に理想的に平衡しているので不可能である。
【0049】
式13の第三因数の中央の項は、熱コンタクトG1を通じて検出器に結合された熱浴雑音の影響を示す。CHB>>C1にすることによって熱浴雑音の影響の低下は、容易に最小になる。熱容量を充分大きくすることによって、熱浴の雑音は、厳しく低下し、それ以上に低下させるために他のステップは必要でない。
【0050】
式13の第三因数の分母の項は、検出器に対する読出し電気器具の雑音の影響である。読出し電気機器の雑音を信号中のシーンの雑音より小さく減らすことは困難である。その難しさは、式3の第三因数の分母の項を定量検査することによって明らかになる。楽観的に、抵抗ボロメーターからの雑音が優勢で、104Ωの抵抗器の場合、通常、雑音dEN2/dfが約2x10-16V2/Hzであると仮定する。この雑音は、事情を一層悪化させる1/f雑音を含んでいない。抵抗ボロメーターでは、∂RCB/∂TS=200Ω/K及びG1/GD1=10である。TS=300K、T1=213K、AD=0.25x10-4cm2及びF=1の場合、式13の第三因数の分母の項を評価して、(ωEL/ωTM)1.3x10-9/ICR2を得る。電子雑音の影響に関するこの式は、1より充分小さくて、電子雑音を無意味にしなくてはならない。(ωEL/ωTM)=1の場合、必要な回路電流ICR >> 0.04mAである。1/f雑音が含まれている場合、必要な電流のレベルは恐らくICR>1mAである。ICR=1mAの場合、読み出し中に送達される電力I2Rは、シーンから送達される電力0.1μワットに対して約10mワットである。これは、読み出し中の電力I2Rが、信号の電力の10万倍であることを意味している。これは、熱安定性の問題をもたらすので許容できない。なおこの問題は、読出し回路の作動デューティーサイクルを減らすことによって軽減することができる。例えば400x500のエレメントを有する星形アレーの場合、例えば、読出しのデューティーサイクルを1/(2x105 )に減らして熱の問題点を改善できる。しかしその雑音の帯域幅は、読出しのデューティーサイクルとは逆に増大するが、読出しの雑音は、読出しの電流ICRの二乗、すなわち(ωEL/ωTM)1.3x10-9/ICR2として減少する。この解決策は、ボロメーターの電流容量と読出し回路の最大電圧コンプライアンスのため、実用上の制限がある。したがって、ICRを増大しかつデューティーサイクルを低下させても改善は不十分でありしかも実用上制限がある。
【0051】
IRボロメーターについて行った解析は受動MM波画像形成と比べてはるかに厳しさが低いことは強調すべきである。このことは、雑音の項すべてが検出器に温度の分散として示されている式12を試験することで分かる。IRの場合、GR≒10-9W/K 及びG1≒10-8W/Kである。したがって,温度の分散は、少なくとも[G1/GR]2≒100によって増大し、そしてこれは電子雑音を含んでいない。MM波の領域では、同じ値のGRがGAE≒4x10-12W/Kによって置き換えられる。温度の分散の対応する最小の増大は、[G1/GEA]2≒6x106として又は1000倍以上増大する。これは、従来のLWIRボロメーターの感度を、約25mKから25ケルビンまで変える。読出しの電子雑音が含まれている場合、状態はさらに悪化する。このような感度の制約は、USSS法によって克服することができ、これについては次の章で説明する。
【0052】
MM超高感度シリコンセンサ
ボロメーター感度が、比率[GD1+G1]/GRによって低下することは、NEΔT(式13参照)に関する先の考察から明らかである。同様に光応答振幅(式3参照)も比率GR /[GD1+G1]によって劣化する。GD1とG1はレンズによって限定されるので、性能を改善するには、図1に示す吸収要素10と熱浴14の間の熱伝導率G1を下げる必要がある。特別な材料と形態を利用することによって熱伝導率G1を最小限にしようと多くの努力がなされている。現在、G1=2x10-8ワット/Kという値が得られているが、これはGD1の約10倍である。実際に要求されているのは、G1がGD1の1/10であることである。材料および形態による方法に固有の制限があることを考慮すると、ボロメーターと熱浴の間の熱伝導率G1をさらに低下させるには、別の方法が必要である。
【0053】
本発明は、例えば、画素のアレー中(図1)に含まれている超高感度シリコンセンサ(USSS)がシリコンの技術だけで製造され、そして電熱フィードバックを使って熱伝導率G1を実質的に低下させる改良方法に関する。電熱フィードバックを使って、(1) NEΔTに関連する改良及び(2)光応答振幅の増大によって、ボロメーターの画素の断熱性を10倍改良できる。MM-USSSの作動と性能の利点を以下に詳細に説明する。。
【0054】
まず最初に、電熱フィードバックが、最適に伝導率が低い材料と形態だけに基づいた先行技術の方法を超えて熱伝導率を少なくとも1/10まで、どのようにして低下させるかを詳しく説明する。この説明に続いて、受動MM-USSSの光応答と雑音のレベルを計算する。これらの計算から、MM-USSSの感度が計算される。
電熱フィードバックによる最大の断熱性
図1に示すボロメーター画素9の吸収要素10と熱浴14との間の断熱は、電熱フィードバックを使って有意に改善できる。電熱フィードバックの概念は、先に引用したBluzerの米国特許第6,489,615号に開示されている。ここで、本発明に従って電熱フィードバックによって最大限に断熱を行う方法を、解析して明らかにする。本発明によるMM-USSSの解析には、acとdcの要素が含まれているが、簡略化するため解析はdc応答に限定する。
【0055】
ここで図4-6をみると、温度がTINの中間ステージ16によって、温度がTHBの熱浴14に熱的に接続された、温度がTDの吸収要素すなわち検出器10を含むボロメーター画素9が記載されている。設計によって、THBが常にTDとTINより低いと仮定する。通常の作用に加えて、TDとTINの関係は、増幅器18で表される電熱フィードバックの回路の影響を最も大きく受ける。増幅器18は、中間ステージ16に熱QHを発生させるために使用する。その発生する熱は、温度TDとTINの差に比例し、具体的に示すと、QH=A(TD−TIN)(式中、Aは電熱フィードバック定数である)である。
【0056】
温度がTDの検出器10は、幾種類もの経路で放射線を受ける。本発明では、検出器10は、図5に示すようなdc 結合アンテナ20から間接的にそして黒体放射線QDを吸収することによって直接に、シーンからのミリメートル(MM)波放射線QAEを受ける。また、温度がTDの検出器10は、遮蔽体から放射線QS1を受けてそれ自体、環境にQD1を放射する。中間ステージも、放射線遮蔽体から熱放射線QS2を受けながら、熱放射線QD2を放射する。さらに、抵抗要素22、24と26、28として示したリンクのG1=G1A+G1BとG2=G2A+G2Bが、図に示すように、ボロメーターの画素9、検出器10、中間ステージ16及び熱浴14を熱的にかつ電気的に相互に接続している。検出器10とその周囲との間の実効熱インピーダンスは、電熱フィードバックの作用を含んでいる。その電熱フィードバックの断熱に対する作用は、熱保存の式から計算される。中間ステージ16におけるdc熱保存式は下記の通りである。
【数14】
【0057】
放射線遮蔽体と熱浴14は同じ一定温度に保持されているので、式14の項QS2とTHBは一定である。式14を微分すると、温度TDとTINの関係が計算されて下記式が得られる。
【数15】
【0058】
上記式中、GD2=∂QD2/∂TINは、中間ステージからその周囲に対する放射線伝導率であり下記式で表される。
【数16】
【0059】
上記式中、AINは中間ステージの前面の表面積であり、そしてσ=5.6697x10-8W/M2-K4(ステファン-ボルツマン定数)である。電熱フィードバック定数AがG1、G2及びGD2に比べて充分に大きければ、δTDのどんな温度変化もδTINによって検出され大部分代替されることは、式15からみて注目すべきである。シーンの見かけの温度の変化δTSの、検出器のδTDに対する作用は、検出器の熱保存から得られ、下記式で表される。
【数17】
【0060】
式17を微分する前に、各項を検査した。式17の右辺は、検出器10が出す黒体放射線QD1と伝導率G1によってドレインされるパワーを含んでいる。検出器10によって直接放射される微分パワーは下記式で表される。
【数18】
【0061】
上記式中、ADは検出器の前面の表面積を表す。式17の左辺は、三つの項すなわち一つの定数と二つの可変項を含んでいる。遮蔽体が一定温度に維持されているので、項QS1(δQS1=0)は定数である。可変項QDは、検出器10が直接受ける黒体放射線を表し、その微分は下記式で表される。
【数19】
【0062】
上記式中、FはレンズのF数であり、そしてδTSはシーンの温度の実際の変化である。項QAEは、検出器10がアンテナ20から受けるMM波放射線を表す。MM波のエネルギーhν<<kTSであるから、上記プランクの式は簡略化できる。作動周波数帯域幅について、受け取った放射線を積分すると、単純な式がえられ、その式は下記の通りである。
【数20】
【0063】
上記式中「k」はボルツマン定数であり、「η」はアンテナの効率を表し、「c」は光速であり、「N」は屈折率であり、「ν2−ν1」はアンテナ20の作動帯域幅であり、Apはアンテナの面積でありかつ画素の面積に実質的に等しく、εは物体の放出率であり、そしてTSはシーンの温度である。
【0064】
IRの放出率は、ほぼ1に等しい。MM波領域では、放出率は変化し約δε/ε≒10%であると仮定できる。QAEを微分して放出率とシーンの温度の変動を含めると下記式が得られる。
【数21】
【0065】
式21の右辺は、δTS+TSδε=δTSS(式中、TSSは等価放射温度と定義する)の項を含んでいる。この等価放射温度は、温度の実際の変化δTSよりはるかに大きいことがあることに留意すべきである。MM波の性能に関するこの解析では、等価放射温度TSSを常に使用する。式17を微分するとシーンの見掛けの温度TSS、検出器の温度TD及び中間ステージの温度TINそれぞれの変化の間の関係が得られ、下記式で表される。
【数22】
【0066】
GD1=∂QD1/∂TDであれば、GD=∂QD/∂TSである。後に明らかになるように、GD<<GAEであるからGDを無視する。式15と17を組み合わせ、中間ステージの温度の微分値δTINを消去すると、下記式で表されるδTSSとδTDの関係が得られる。
【数23】
【0067】
電熱フィードバックの利点は式23で表されている。電熱フィードバック定数Aが大きい場合[A>>{G1,G2,GD2}]、式23の分母はGD1まで減少する。電熱フィードバックを利用しなかったならば[A=0]、式23の分母は、GD1+G1G2/(G1+G2)−0.5G1まで増大する。このように、大きい電熱フィードバックによって、G1とG2で生成する熱移動作用が厳しく低下するので、検出器の断熱が0.5G1からGD1まで有効に改善される。この断熱の増大は、式23を数値で検査すると最もよく分かる。
【0068】
GAE、G1、G2、GD1、GD及びGD2の数値は、式16、18、19、21で計算する。経験に基づいたG1とG2の値については、10G1=G2=10-7W/Kと近似する。A=10-5W/Kの場合について計算する(以下に詳細に述べる)。Ap がアンテナ20 (図5参照)及びレンズ(図示せず)によって結合され、屈 折率N=10でかつF=1の1MM2の画素である場合、GAE≒4.2x10-12W/Kになる(95GHzが中心で結合効率が100%の30GHzの帯域幅を仮定する)。温度がTDの検出器を、直径を約5μm小さくして作製する。したがって、GD≒6x10-11W/K及びGD1≒2.4x10-10W/Kになる。中間ステージは、大きさが検出器の約10倍であるから、GD2≒2.4x10-9になる。これらの数値を集めて、式23の二つの限界を、電熱フィードバックあり又は無しで試験して、下記式が得られる。
【数24】
【0069】
式24は、電熱フィードバックの作用を劇的に示す。すなわち、所定の、等価放射線温度の変化δTSSの場合、検出器の応答信号δTDは、検出器に対する熱負荷の作用が大きく低下するので、250倍以上になる。
【0070】
電熱フィードバックの原理を利用して改善して、達成される断熱性は、材料及び/又は形状による方法で最適化することによって可能な断熱性を超える断熱性である。電熱フィードバックの原理を取り入れて、本発明のミリメートル(MM)波超高感度シリコンセンサ(USSS)の画素を提供しその性能を解析する。
【0071】
MM USSSの画素の実施態様と作動/読出し電子機器
電熱フィードバックを取り入れて、図5、6及び9に示すような本発明の超高感度シリコンセンサを製造するには、各ボロメーター画素9内に特別な回路を結合する必要がある。すなわち、電熱フィードバックには、(1)温度差センサ、(2)温度差増幅器、(3)温度差によって決まる出力を有するヒーター、及び(4)上記項目1-3を単一の画素に取り入れる構造が必要である。
【0072】
図5に示す上記(4)について、本発明のUSSS画素9は、製造を簡略化しかつ面積効率を最大にするためニ層設計を利用し、ac結合手段11によってアンテナ20にac結合されかつ所定の表面積を有する平坦な上部吸収体の部分を含む温度がTDの検出要素10、検出要素10に隣接する温度がTINの中間ステージ16、及び熱浴14を備えている。温度がTHBの熱浴は、基板部分15と上部環状部分を備えている。支持要素すなわちリンク22、24と26、28はそれぞれ、検出器10と中間ステージ16及び中間ステージ16と熱浴14の上部17を結合して伝導率G1AとG1B及びG2AとG2Bを与える。中間ステージ16と検出器10は、実質的に同一平面内にあり、熱浴14の上部部材17のほぼ円形の空洞30内に取り付けられ、支持要素26と28によって、内壁表面32に固定されている。熱浴14の上部部材17の外側表面34上に位置しかつ検出要素10及び中間ステージ16と実質的に同一平面内にあるほぼ平坦な部材で構成されているアンテナ要素20が図示されている。
【0073】
図5と9に示すUSSSの画素9は、個々の各画素の出力端にアクセスする読出し電子機器と共にアレー中に取り入れるものである。画素9のx-yアレーは、図11に示してあり、各画素9を読み出すためのx-yアドレススイッチを含んでいる。従来のアドレス回路には、かようなアレーで利用される列と行のシフトレジスタは示されていない。かようなアレーは、例えばミリメートルの波長で、シーンから発する電磁放射線を受動的に画像化することができる。
【0074】
操作は、電磁スペクトルのミリメートル(MM)波の部分の画像を形成することが目的であるから、図5に示すような画素9の大きさは、先に引用した米国特許第6,489,615号に提示・説明された、主としてLWIRでの操作に使うことを目的とする画素の大きさの250倍程度である。
【0075】
本発明の温度差センサは、背中合わせに接続された二つのシリコンダイオード30と40を利用して、検出器10と中間ステージ16の間の温度差を測定する。図6に示すように、一方のダイオード38を検出器10に組み入れ、そして第二のダイオード40を中間ステージ16内に組み入れる。定電流でバイアスすると、シリコンダイオード38と40は各々、フェルミ準位の変化に追従する温度依存性電圧を示す。このフェルミ準位の温度依存性によって、n側の伝導帯とp側の伝導帯の間に、温度依存性の電位差が生成する。定電流でバイアスされた、ダイオードにかかる温度依存性の電圧変化は、通常、約−2.3mV/oKである。図6に示すような背中合わせに接続された二つのダイオード38と40を利用して、検出器10と中間ステージ16の間の温度差を測定する。この温度差によって、増幅器18で増幅される入力電圧を生じて、出力電圧V0を出力する。
【0076】
本発明の増幅器18は、図9に示すようにバイポーラトランジスタ回路42を含み、その増幅器は、出力電圧V0を増幅し提供するのみならずその零入力電力消費(quiescent power consumption)が中間ステージ16のヒーターとしても働くので、電熱フィードバックのループを機械化する。この二重機能は、バイポーラトランジスタ42を含む増幅回路18を、定電流IHにて平衡状態で作動するように設計することによって、可能になる。増幅器18を定電流IHで作動させると、確実に、その出力電圧は、検出器10と中間ステージの間の温度差の尺度になるのみならず、中間ステージ16に送達される熱形電力QHを決定する。増幅器18によって中間ステージ16に送達される熱形電力QHは、簡単に下記式で表される。
【数25】
【0077】
上記式中、AGは増幅器の電圧利得であり、そしてIHは増幅器が作動するdcバイアス電流である。増幅器の低周波数電圧利得は通常約105であり、そしてIHは約1μAである。IHは、TD>TIN(TD<TIN)になるように一定に保持されるので、V0は、増幅器の零入力電力を増大(減少)させて中間ステージ16を加熱(冷却)する。中間ステージのバイポーラトランジスタの温度操作(加熱と冷却)は、熱浴14の温度を、常にシーン中の物体の温度より低く調節する(すなわち、THB<{TD,TIN})ことによって可能になる。このように増幅器18と熱浴14を組み合すと所望のバイポーラ温度作動が行われる。
【0078】
電熱フィードバックの微分式は、式25を微分することによって得られ、下記の通りである。
【数26】
【0079】
電熱係数Aは、AG=105、IH=10-6ampを使って容易に求められる。これらの値を式26に代入して、A=10-5W/Kが得られ、これは、G1=G1A+G1B又はG2=G1A+G1Bよりはるかに大きく、その約1000倍である。
【0080】
したがって、三つの温度プラットホーム、すなわち、温度がTDの検出器、温度がTINの中間ステージ及び温度がTHBの熱浴を利用することによって、電熱フィードバックは、中間ステージ16に加えられた電力QHを調節して、その温度TINを検出器の温度TDに近づける。検出器10と中間ステージ16の温度差を最小にすると、伝導率G1=G1A+G1Bが効果的にゼロになる。
【0081】
MM USSSのAC応答
MM USSSのAC応答は、図7と8に示す熱等価回路で解析することによって計算される。この解析は、従来のボロメーターについて先に述べた解析法と類似の方法を踏襲して行う。その解析法では、THBが常にTDとTINより低いと無条件で仮定する。その解析結果は、電熱フィードバックが、伝導率G1を厳しく低下させるので、断熱を少なくとも40倍改善しかつ応答を増大することを示す。検出器10の熱容量はC1で表し、中間ステージの熱容量はC2で表す。QAEは、検出器10に結合されたアンテナ20を通じて送達された、シーンからの放射線力を表す。QDは、検出器10によって直接吸収された放射線力を表す。QS1とQS2はそれぞれ、検出器10と中間ステージ16によって吸収された、放射線遮蔽体からの放射線力を表す。QD1とQD2はそれぞれ、検出器10と中間ステージ16が発した放射線力を表す。QHは、電熱フィードバック回路が送達した放射線力を表す。
【0082】
検出器10と中間ステージ16における熱バランス条件(thermal balance condtion)は、二つの積分式で表される。検出器10における熱バランスの式は、下記式で表される。
【数27】
【0083】
小さい温度変化の限度を考慮し、式27のG1とC1の積分は、温度に対してリニアのテイラー級数項のみ考慮することによって近似される。この近似を利用して、式27の温度の微分をおこなうと、下記の簡略化された式が得られる。
【数28】
【0084】
先の考察から、GAEδTSS>>GDδTSであることが分かったので、GDδTSは無視できる。同様に、中間ステージにおける熱バランス条件は、下記積分式で表される。
【数29】
【0085】
式27の場合と同様に、小さい温度変化の限度を考慮し、G1、G2及びC2の積分は、温度に対してリニアのテイラー級数項のみを考慮することによって近似される。式29の温度の微分を行い、次いで式26と16を結合して下記の簡略化された式が得られる。
【数30】
【0086】
A>>{G1,G2,GD2}であるから、電熱フィードバックによって、必ずδTD=δTINになることは明らかである。このような条件下で、G1による熱電流は、検出器10の温度TDが変化しても変化しない。TINを消去するため式29と30を結合すると断熱の改善が明らかになる。式29と30を結合してTINを消去し、何回か変形した後、下記のTSSの関数としてのTDの式が得られる。
【数31】
【0087】
式31は、電熱フィードバック値が大きい場合(すなわち、A>>{G1,G2,GD2})、放射性シーンの温度の変化δTSSは、式31の右辺で表される近似によってδTDに関連している。これは、中間ステージ16の温度TINが検出器10の温度の変化に追随して、熱伝導率G1を効果的にはるかに小さくするから、起こる。雑音によって課される限界を除いて、熱伝導率G1は、Aが無限大に近づくにつれてゼロに近づくはずである。
【0088】
ここで使われる値のA=10-5W/K(式26参照)は、通常の値の10G1=G2=10-7W/Kよりはるかに大きい。したがって、電熱フィードバックの作用によって、伝導率G1=40GD1が伝導率GD1より低くなる。式3と31の分母を比較すると明らかなように、この低下によって、直接、応答が、少なくとも40倍になる。この増大した応答は、放射性シーンの温度変化δTSSに対する応答の検出器の温度変化δTDから明らかである(式31参照)。応答性が増大すると、種々の雑音源によるコラプションを非常に受けにくい信号を提供して直接感度を改善するので、重要な利点が生じる。
【0089】
式31の近似によって与えられる検出器10のAC温度の応答は、時定数C1/GD1による応答である。TVのフレーム速度の場合、これを行うには検出器10の熱容量を最小限にする必要がある。図5に示すようなアンテナ20によって、検出器の大きさは、MM波の信号に有意に悪影響を与えることなく、最小限にすることができる。特に、図5に示すような本発明の好ましい実施態様による検出器10の大きさは、直径が約5μmであり、画素9の予想サイズの約1000μm2よりはるかに小さい。この方法は、TVのフレーム速度と一致する時定数例えば0.167秒を実現するために利用できる。
【0090】
式30と31で与えられたδTD、δTIN及びδTSSの相互関係によって、ここでMM USSSの電圧応答の計算を行う。電熱フィードバックの増幅器18で送達された電力QHによって、出力信号VOが提供される。電熱フィードバック回路で送達された電力の変化δQHは、δQH=−δVOIHであるから、バイアス電流IHによる出力信号のδVOに単純に関連している(式26参照)。この関係を式30に組み入れて何回か変形した後、δTD、δTINに対する出力信号依存性に関する下記式が得られる。
【数32】
【0091】
電圧応答度は、δTINとδTDを、δTSSで置き換えることによって消去して得られる。この置換えは2ステップで達成される。第一に、式(30)を使って、δTINヲδTDで置き換える。第二に、式(31)を使って、δTDをδTSSで置き換える。これらすべての置換を実施し、次いで何回か変形を行った後、MM USSSの応答度は、下記式で表される。
【数33】
【0092】
式33の近似は、A>>{G1,G2,GD2}という事実を使用することによって可能である。式33を試験することによって、いくつかの特徴が明らかになる。出力電圧VOは、二つの因数と二つの時定数の積である。
【0093】
その第一因数は、熱伝導率G2が高くなり及びバイアス電流IHが低くなると、電圧応答度が増大することを示す。放射性シーンの温度の変化δTSSが所定の変化である場合、増幅器18が中間ステージ16に送達しなければならない電力は、熱伝導率G2が高くなるにつれて増大するので、上記のことが起こる。IHは固定されているから、増幅器18がより大きい電力を送達できる唯一の方法は、出力電圧VOを増大することによる方法である。したがって、あたかも、各画素当たりの電力消費量の増大及び/又はdc動作電圧の上昇を犠牲にして、電圧応答度が、増大したようである。
【0094】
同様に、電圧応答度は、IHとは逆に変化する。というのは、放射性シーンの温度の変化δTSSが所定の変化でかつ熱伝導率G2が一定である場合、増幅器18が中間ステージ16に送達しなければならない電力は一定のままであるからである。IHを下げると、増幅器の出力電圧は、送達される電力を一定に維持するために増大する必要がある。
【0095】
式(33)の二つの時定数は、検出器10の時定数を表すポール(pole)及び中間ステージ16の時定数を表すゼロである。検出器10の時定数は電圧応答度を低下させる。検出器10が、熱容量ゼロであれば(C1=0)、検出器の温度の上昇は、供給された放射線力を検出器に対する熱負荷量で割り算して得た値(GD1として与えられる)に対応している。しかし、検出器の温度が変化しうる前に、検出器の熱容量C1はエネルギーを受け取る(TDが上昇する場合)か又は放出する(TDが低下する場合)必要があり、そしてこの遅延は、ac電圧応答の減少として現れる。
【0096】
式(33)の第二の時定数は、中間ステージ16の時定数である。この時定数は、検出器の時定数と逆の作用を有し、すなわち電圧応答度を増大する。これは、電気フィードバック回路の作動を検査することによって理解できる。中間ステージ16の熱容量がゼロである場合(C2=0)、中間ステージの温度上昇は、単に、電気フィードバック回路が提供する出力電力(すなわちV0IH)を熱負荷量(G2+GD2)で割り算して得た値である。熱容量C2≠0であるから、検出器の温度を上昇(低下)させるため、もっと多量(もっと少量)の電力を、中間ステージ16に供給する必要がある。したがって、中間ステージの温度を検出器の温度TDまで上げる(下げる)必要がある場合、増幅器18の出力電圧は大きく(小さく)することになる。
【0097】
原則として、第一に、前記二つの時定数を使って、MM USSSの周波数応答を、検出器の時定数を超えて拡張できる。これは、中間ステージ16の時定数を検出器10定数と等しくすることによって達成できる。
【0098】
MM USSSの雑音のレベル
本発明のMM USSSの雑音源は、すべて、従来のボロメーターに存在する雑音源であるが、追加の雑音が、電熱フィードバック出力電力QHによって生成する。具体的に述べると、放射線が誘発する熱の変動による雑音としては、シーンのフラックスのQS;放射線遮蔽体のQS1とQS2;検出器10のボロメーターのQD1;及び中間ステージ16のQD2がある。また伝導率G1=G1A+G1B及びG2=G1A+G1Bを通じて検出器10に結合された熱浴14由来の熱の変動もある。最後に電熱フィードバックループ由来の雑音がある。これらの雑音源はすべて、検出器の温度に、信号と区別できない温度の変動を誘発する。MM USSSの出力は、電圧信号VOであるから、これらすべての雑音項は、列挙され(itemize)雑音電圧として示される。
【0099】
具体的に述べると、MM USSSの雑音は、温度の変動によって生ずるRMS電圧の変動(括弧内に記載)(1)シーン(δVO(TSS));(2)熱浴10(δVO(THB));(3)検出器10のステージ(δVO(TD))及び(4)中間ステージ16(δVO(TIN))として示される。さらに、各MM USSS画素に含まれている電熱フィードバックと読み出しの回路由来の五番目の雑音項δVO(EL)がある。これら雑音成分各々の式を誘導して以下に示す。
【0100】
全雑音は、各種雑音源と検出器出力の間の伝達関数を利用して計算する。放射線温度TSS、熱浴の温度THB、検出器ステージの温度TD、中間ステージの温度TIN、及び読み出し電子機器の変動のRMS値の知識を利用する。各RMS値は、特定の雑音の変動のフーリエ表現から得た標準偏差として処理する。重ね合わせの原理を利用し、すべての周波数にわたって合計した異なる伝達関数を使って、検出器の出力に対する各雑音源の影響を計算する。
【0101】
(I.)放射性シーンの温度の変動δTSSは、MM USSSの出力に対する雑音δVO(TSS)に影響し、この影響の伝達関数は式(33)で表される。最大周波数の応答については、式(33)のポールとゼロを調節してキャンセルする。放射性シーンの温度のスペクトル変動δTSS(ω)から検出器出力の変動への雑音の影響は、近似的に下記式で表される。
【数34】
【0102】
これらの影響を周波数について積分すると、シーンの温度のRMS変動δTSS(RMS)によって検出器出力がコラプトされて下記式が得られる。
【数35】
【0103】
比率GAE/GD1=0.5で表される検出器の熱伝導率によって、シーンからの雑音が減少する。しかし、その信号も同量減少して、他の雑音源によるコラプションを受けやすくなり、感度が低下する。
【0104】
(II.)熱浴14の温度変動(δTHB(RMS))は、検出器10の出力信号に変動を起こす。この影響は、式26によるδQH=IHδVO=A[δTD−δTIN]という事実を利用して計算する。したがって、δTDとδTINに対してδTHB(RMS)によって生じる変化を計算することによって、式26でδVO(THB)を得る。δTHB≠0及びδTSS=δTS=0という条件下で、重ね合わせの原理を使って、式27と29を微分して、δTHB(ω)の変動のδTD(ω)とδTIN(ω)に対する影響を得る。異なるフーリエ雑音項を合計してRMS値を得ることを目的としているのでスペクトルの表現を使用する。式27を微分し、変形した後、簡略化して下記式が得られる。
【数36】
【0105】
式29について同じ手順を繰り返して、以下に示すこれら雑音項の間の相互関係を示す第二の式が得られる。
【数37】
【0106】
式37において、δQH=A[δTD−δTIN]という事実を利用した。δTD(ω)とδTIN(ω)について、式36と37を、δTHB(ω)によって解いて、熱浴14による、増幅器18の出力電圧のスペクトル変動δVO(ω)を計算して下記式が得られる。
【数38】
【0107】
熱浴の熱容量CHBに任意に大きいことを認識することによって、上記式を簡略化する。このことを、Aが非常に大きいという事実と共に式38に組み入れて、近似し、下記簡略化された式が得られる。
【数39】
【0108】
熱浴14の熱の変動で生じるRMS雑音は、熱本体(thermal body)(式40の積分記号と角括弧内の項)のパワー・スペクトル密度を使用して得られる。式39をパワー・スペクトル密度の積分に変換して、熱浴の温度で生じる出力雑音電圧の下記式が得られる。
【数40】
【0109】
式38は、いくつかの条件を認識することによって簡略化できる。比率GD1/CHBは非常に小さいので、積分記号内のω2CHB2の項を因数分解できる。こらの近似値を組み入れ、周波数について積分して、簡単な関係を示す下記式を得る。
【数41】
【0110】
この式は、熱浴14の温度の変動による増幅器18の出力電圧のRMS変動を示す。そのレベルは、可能な最小の熱力学的雑音のレベルであり、驚くべきことには、熱浴14の熱容量とは独立しておりそして検出器10の熱容量には依存している。
【0111】
(III.)検出器10の温度TDの変動によって、出力雑音電圧の変動が増大する。図6に示す等価回路を使って、δQIN=δQH=0であるときのノードTDにおけるパワーを合計して、下記式を得る。
【数42】
【0112】
式28を使って、変数δTINを式42から消去して、下記式を得る。
【数43】
【0113】
式26による前記計算から、TDにおける温度変動で生じる雑音電圧を示す下記式を得る。
【数44】
【0114】
式44を式43と組み合わせて、パワーの変動δQDによるスペクトル雑音の依存性に関する、下記式で表される解析解を得る。
【数45】
【0115】
パワースペクトル密度:δQDの二乗値は、d2QD/df=4GD1kB(TD)2で表され、これを式45の絶対平方(absolute square)と組み合わせ、積分し次いでその平方根をとって、TDで生じるRMS電圧の変動δVO(TD)を得る。これらの演算を、いくつかの簡略化と共に実施して下記式を得る。
【数46】
【0116】
(IV.)雑音の変動δTIN(ω)の増幅器18の出力信号に対する影響は、δTD(ω)の影響と同様に計算する。図8に示す等価回路を使って、δQD=δQH=0であるときのノードTDにおけるパワーを合計して、δTD(ω)とδTIN(ω)の間の関係を示す下記式を得る。
【数47】
【0117】
雑音源δQINの影響を計算しているので、式47の温度変動δTIN(ω)は、|TIN|>|TD|を示している。図8に示すノードTINのパワーを合計して、スペクトルパワーの関係を示す下記式を得る。
【数48】
【0118】
δQH=A[δTD−δTIN]という事実と式7を利用し、式48中の変数δQHとδTDを置き換え消去して下記式を得る。
【数49】
【0119】
式26を使って、ノードTINの熱の変動によって生じる出力電圧VO[TIN(ω)]のスペクトル変動を示す下記式を得る。
【数50】
【0120】
式49と50を組み合わせδTIN(ω)を消去して、黒体放射線のスペクトル変動によるノードTINのスペクトル電圧の変動を示す下記式を得る。
【数51】
【0121】
Aは非常に大きいので、式51は、スペクトル電圧の変動に関連するパワーが、電熱フィードバックのループに関係なく、黒体放射線のパワー変動中のパワーに等しいことを示す。ノードTINのパワー変動は、(TINにおける古典的温度分散) × (このノードから周囲までの熱伝導率)に等しい。したがって、ノードTINにおける熱変動による電圧VOのRMSは下記式で表される。
【数52】
【0122】
式52によって、THB、TS、TD及びTINにおける温度変動で生じる増幅器18の出力電圧に対するRMSの全影響の計算を完了する。残りの雑音の影響は電熱フィードバック回路由来の雑音であるが、これは以下で計算する。
【0123】
(V.)バイポーラトランジスタ42を含む図9に示す本発明の好ましい実施態様の読み出しと電熱フィードバックの回路由来の雑音は、下記のように、出力信号に対する雑音に影響する。この影響は、図10に示す図9の等価回路を利用して計算する。便宜上、すべての電気雑音の項は、INOと標記された電気発生器に含まれている。これは、フィードバックの形態でなく存在している雑音を示している。さらに、この解析は、回路中の雑音は係数INOを有するフーリエ式で表すことができるという事実に基づいている。振幅INOを有する任意周波数を解析すると、電熱フィードバックによる雑音の式が得られる。
【0124】
回路内を流れる雑音は、図9に示す読出し回路内に存在する電気フィードバックと電熱フィードバックによって影響を受ける。したがって、フィードバックでない電流雑音のレベルINO(図10)は、フィードバックの作用が含まれているとき、新しいレベルinに修正され、下記式で表される。
【数53】
【0125】
上記式中、gMはバイポーラトランジスタの相互コンダクタンスであり、そして1/GMはダイオードのインピーダンスである。ダイオードとバイポーラトランジスタの「p」領域と「n」領域おけるフェルミレベルの温度依存性のため、ベースとエミッタの間の電圧差は、ac成分と熱成分を持っている。したがって、バイポーラトランジスタのベース-エミッタ電圧差は下記式で表される。
【数54】
【0126】
式54の右辺の第一項は、基準電流が非常に小さいという仮定のもとでのインピーダンスZ1と直列のダイオード38による出力電圧の電気部分を示す。式54の右辺の第二項は、ダイオードの温度(TD)とトタランジスタの温度(TIN)の温度変化で生じる熱電圧の変化を示す。係数∂VBE/∂Tは、1ケルビン当たりの電圧の変化を示し、一般に∂VBE/∂T≒-2.3MV/Kである。出力電圧の変化δVO(ω)は、出力ノードのすべてのインピーダンス及びフィードバックの作用を含んだ実際に流れている雑音電流を含めることによって容易に計算され、これは下記式で表される。
【数55】
【0127】
式55を式54に組み入れ、いくつかの項を変形した後、式53のより良好な表現の下記式を得る。
【数56】
【0128】
式56を観察すると、式56の熱項が、INで表現されるとき正の値であるならば、電流INが元の雑音電流INOより小さいことは明らかである。実際に、電熱フィードバックの項がさらに雑音電流を減少させることは明らかになり、これについては、以下に計算する。
【0129】
式48を、δQIN(ω)=0という条件下で処理して、IN(ω)、δTD(ω)及びδTIN(ω)の間の関係を示す下記式を得る。
【数57】
【0130】
項−IHδVO(ω)=δQ H(ω)を含めたが、それは、出力ノード中に流入するdc電流IHの出力電圧の変化δVO(ω)によって生じる、中間ステージで消費される電力の変化を示す。雑音電流が増大すると、出力電圧が低下し、そして中間ステージが消費する零入電力も低下するので、式57の左辺はマイナス符号になる。先に、式47でδTD(ω)とδTIN(ω)の関係を示した。
【0131】
式57と47を組合わせて、δTD(ω)を消去し、IHVO(ω)の関数としてのδTIN(ω)を下記式として得る。
【数58】
【0132】
δTD(ω)を式47で置き換え、δTIN(ω)を式58で置き換え、そしてδVO(ω)を式55で置き換えることによって、式56の右辺の大部分の項をIN(ω)で表す。これら置換をすべて行い何回か変形した後、下記IN(ω)によるINO(ω)の式を得る。
【数59】
【0133】
読出しと電熱フィードバックの回路による出力雑音の電圧は、式55と59を組み合すことによって容易に得られ、下記式で表される。
【数60】
【0134】
上記式の分母には、出力雑音電圧に影響する二つの項すなわち電気フィードバックの項と熱フィードバックの項が存在している。∂VBE/∂T≒-2.3MV/Kの値はマイナスの値なので、そのマイナスの符号を分母の熱項から除く。雑音電流が電気と熱のフィードバックの作用でどの程度低下するか、前記分母によって決まるので、式60の分母がどの程度大きいかが問題である。その低下の大きさは、Z1≒ZOO及び10gM=GMでありかつ式60の分母において熱項が電気項よりはるかに小さいことを認識することによって推定する。これらのことを組み入れ、式60を簡略化して下記式を得る。
【数61】
【0135】
比率gM/GMが小さくなればなるほど雑音が大きく低下することに注目すべきである。この特徴及びインピーダンスZ1の値を利用して、読出しと電熱フィードバックの回路からの雑音を最小限にする。本願の実施例では、この比率は10/1であるから、電子回路の雑音は1/10に減少する。
【0136】
RMS出力の雑音電圧を、式61と雑音パワーのスペクトル密度を利用して測定する。その雑音パワーのスペクトル密度の一般式は、下記式で表される。
【数62】
【0137】
上記雑音パワーのスペクトル密度は、白色雑音と1/f雑音を含んでいる。その白色雑音パワーのスペクトル密度の振幅は定数[INO]2で表されそして1/f雑音のコーナ周波数は定数Bで表される。図9に示すトランジスタ42などのバイポーラトランジスタの場合、Bの値は、約1.0KHzと推定され、100Hz程度に小さくできる。インピーダンスZ1の式は、抵抗R10とキャパシタンスC10を平行に組み合わせた式であり、Z1=R10/(1+jωR10C10)で表される。これらの項をすべて組み合わせて、雑音電圧のRMS値の下記式を得る。
【数63】
【0138】
上記計算は雑音のRMS値を扱うので、絶対値の二乗値をインピーダンスZ1に使用する。さらに、1/f雑音項は、発散を避けるため、ゼロでないところから積分する。代わりに、システムの校正に接続されている半径方向の周波数ω1を選択する。式63を積分して、電子雑音の閉鎖形の値を示す下記式を得る。
【数64】
【0139】
RMS回路の雑音電圧の値を、熱源由来の雑音電圧の値と比較する。理想的には、最適の性能を達成するため回路の電圧を最小にしなければならない。
【0140】
MM 超高感度シリコンセンサの全雑音電圧
ボロメーター画素9(図9)の出力端における全雑音は、式35、41、46、52及び64で与えられた結果のRMSの合計である。これらの式すべてを組み合わせて、画素出力端における全RMS雑音電圧を示す下記式を得る。
【数65】
【0141】
全RMS電圧雑音の式には、シーン、熱浴14、検出器10、中間ステージ16、及びバイポーラトランジスタ18を含む読出し電子機器の影響が含まれている。
【0142】
式65から、いくつかのことが明らかである。信号と同様に(式33参照)、シーンの信号からの雑音(式65の角括弧内の第一項で表されている)は、GAE/GD1=1/30まで減少する。この減少によって他のすべての雑音源が一層重大になり、感度を損なう。前記角括弧内の第二項は、熱浴14からの雑音を示し、熱浴のTHBをシーンのTSより低くすることによって減少させることができる。前記角括弧内の第三項は検出器10からの雑音を示し、そして第四項は、中間ステージ16からの雑音を示す。この中間ステージ16からの雑音は、確実にTD=TINになるように熱電フィードバックに保証させながら、C1<<C2にすることによって最小にできる。最後の項は、電子読出し機の雑音を示す。最良の性能を得るためには、電子読出し機の雑音を、MM USSSと関連する熱雑音の項より小さくしなければならない。すなわち、式65の角括弧内の(KTD2/C1)で表される項は、THB=TDであるから、(KTHB2/C1)にほぼ等しい。この項の値は、TD=300Kということを認識することによって容易に推定できる。検出器の熱容量C1は、C1≒1.56x10-11J/Kであると推定され、これは直径が5μm、厚さが0.5μmそしてK=1.38x10-23J/Kのシリコン膜の熱容量に相当する。これらの項をすべて組み合わせて(KTD2/C1)の計算値≒8x10-8K2になる。最終的感度は前記角括弧内のリーディング項が他のすべての項より大きい時に得られる。比率GAE/GD1=1/30ならば、センサは、それ自体の熱の変動のRMSの合計(式65の角括弧内の第二、第三及び第四の項)並びに電子読出し機の雑音の値(式65の角括弧内の第五項)によって制限されると、結論される。MM USSSの感度は、次の章で測定する。
【0143】
MM USSSの等価雑音放射温度
MM USSSの等価雑音放射温度(NERΔT)は、MM USSSが分解できる最小温度を示し、S/N比1で起こる。これは、式65で与えられる雑音電圧を、式33で与えられる絶対応答度で割り算し、何回か変形し次いでGD1<<G2と近似して数学的に下記式として得られる。
【数66】
【0144】
MM USSSの感度の式は、以下の三つの項すなわち、熱負荷[GD1/GAE]による劣化、熱の変動と電子回路からの雑音、及び検出器10tと中間ステージ16の周波数応答を示す「ac」因数の積として表される。これらの項、各々を詳細に検討する。
【0145】
第一項は、GD1/検出器とシーンの間の伝導率GAE由来の熱負荷によって生成する、感度の劣化である。GD1/GAE=30であるから、これは有意な劣化である。電熱フィードバックによって、これが、GD1/GAE=2400からGD1/GAE=30まで低下した。これは、従来の方法のほとんど100倍の改善であり、感度を大きく改善するMM USSSを提唱する優れた理由を明確に例証している。
【0146】
前記角括弧内の項は、すべて雑音源を示す。前の因数が大きい減少因数であるから([GAE/GD1]2=1/900)、第一項は無視できる。前記角括弧内の第二、第三及び第四の項の組合わせは、(KTD2/C1)≒8x10-8K2であることは前から分かっているので、容易に求めることができる。熱浴14と中間ステージ16の温度は検出器10とほぼ同じであると近似される([TD=THB=TIN]及び10C1≒C2)。前記角括弧内の第二、第三及び第四の項を組み合わせて、約2x10-7K2という推定値を得る。これら三つの項はそれ自体、感度を0.013Kより大きく限定することに注目すべきである。
【0147】
この優れた性能は、あいにく、式66の角括弧内の第五項で表される電子回路の雑音によって劣化する。この劣化は、数値を置換することによって容易に推定できる。設計によって、R10=108、C10=1PF、GM/GM=0.1、IH/G2=10、B=1KHz、及びバイポーラ増幅器18の白色雑音パワースペクトル密度は[INO]2=(8/3)EIHであるので4.3x10-25に等しいと推定される。これらをすべて組み合わせると、電子回路の雑音の項は下記式のようになる。
【数67】
【0148】
電子機器の雑音には、白色雑音(第一項)と1/f雑音(第二項)が含まれている。その雑音の合計は、センサの低周波数作動コーナーのω1によって決まる。校正を、1時間ごとに一回自動的に実施すると仮定すると、式67の値は、3.2x10-5K2になる。この値は、すべての検出器熱雑音の項の合計2x10-7K2よりはるかに大きい。式67由来の数値を式66に挿入すると、放射温度分解能の推定値が得られ、それは0.2Kである。これによって、MM USSSの優れた性能が予想される。
【0149】
上記解析結果と本願に開示されている本発明の実施態様から、本発明は、受動MM波画像形成法に特に適合していることが分かる。受動ミリメートル波画像形成法は、衣服を透過して、雲を透過して及び降雨中に見ることを含むいくつかの重要な特徴を提供する。前者の特徴は、武器や爆発物の遠隔検出を行うホームディフェンス(home defense)の用途を提供する。後者の特徴は、地上、空中及び海上に展開されている軍事基地の視程を改善する。
【0150】
さらに、センサが、モノリシック設計で単一のシリコンウェーハ上に製造されると、マイクロ波ミキサが不要になる。このように回路系を簡略化すると、ミリメートル波画像形成装置の製造コストが直接、有意に減少する。
【0151】
USSSの画素の発明の好ましい実施態様と現在考えられるものを示し説明してきたが、すべての変形、変更及び修正も、本願の特許請求の範囲に記載されて本発明の精神と範囲内に含まれていることに注目すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】熱浴を含む基板の上面に設置されている断熱ブリッジに取り付けられた従来のボロメーター形センサを例示する線図である。
【図2】図1に示すボロメーター用の熱等価回路を示す。
【図3】図1に示すセンサの電気雑音等価回路を示す。
【図4】本発明のボロメーター形センサ用電熱フィードバック回路を例示する電気ブロック線図である。
【図5】本発明の好ましい実施態様を例示する二層ボロメーター形センサを例示する線図である。
【図6】図5に示すボロメータセンサに設置する電熱フィードドバック回路を例示する電気回路の線図である。
【図7】図5に示す本発明の実施態様の熱等価回路である。
【図8】図5に示す実施態様の、熱変動による雑音源用の熱等価回路である。
【図9】図6に示す増幅器に含まれているバイポーラトランジスタ回路系の電気回路線図である。
【図10】図9に示す電熱フィードバック回路の機能等価回路である。
【図11】図5に示す画素のアレーの電気回路の線図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱浴、
放射電磁エネルギーを受け取るアンテナ要素、
前記アンテナ要素に結合され、そのアンテナ要素が受け取った放射電磁エネルギーを吸収し検出する手段を含む熱に応答する吸収要素、
前記吸収要素を前記熱浴に対して断熱する中間ステージであって、少なくとも二つの第一断熱部材と少なくとも二つの第二断熱部材を備え、その断熱部材が各々、所定の熱伝導率を有し、吸収要素を中間ステージに相互接続し及び中間ステージを熱浴に相互接続し、第一断熱部材が吸収要素と中間ステージの間に配置されそして第二断熱部材が中間ステージと熱浴の間に配置されてなる中間ステージ、
前記中間ステージに組み入れた電熱フィードバック回路であって、電磁放射線を検出する時に、前記中間ステージの温度を前記吸収要素の温度に集中させることによって、前記吸収要素と前記熱浴の間の熱伝導を減少させ、前記第一断熱部材の熱伝導を有効に最小の熱伝導値にして、放射線センサの感度を放射線の限度まで改善する電熱フィードバック回路、
を備え、
前記電熱フィードバック回路が、前記中間ステージと組み合わせたバイポーラトランジスタを含む発熱増幅器、及び前記吸収要素と前記中間ステージの間の温度差を検出して、受け取った電磁放射線によって決まる出力電圧信号を発して、増幅器が発生した電力を制御する手段を含み、
増幅器自体に含まれているトランジスタの生成した熱が、前記温度差の信号に応答して前記中間ステージを直接加熱して、前記吸収要素と前記中間ステージの温度を等しくする、
電磁放射線センサアセンブリ。
【請求項2】
二層の装置を備え、そして前記アンテナ要素、前記吸収要素及び前記中間ステージが、前記熱浴の上に配置された実質的に同じ平面内の要素で構成されている請求項1に記載のセンサアセンブリ。
【請求項3】
前記アンテナ要素が、前記熱浴の上部外表面上に配置されている請求項1に記載のセンサアセンブリ。
【請求項4】
x-yアドレス読出し回路を含むx-yセンサアセンブリを備え、前記熱浴、前記アンテナ要素、前記吸収要素及び前記中間ステージが、x-yアドレス読出し回路のアドレスする単一画素を形成する請求項1に記載のセンサアセンブリ。
【請求項5】
前記吸収要素と前記アンテナ要素を含む要素のうち少なくとも一つのスペクトル応答が、調節されて、電磁スペクトルの少なくとも赤外線領域を含む、電磁スペクトルの所定の領域で作動する請求項1に記載のセンサアセンブリ。
【請求項6】
前記所定の領域が、電磁スペクトルのミリメートル波の領域も含んでいる請求項4に記載のセンサアセンブリ。
【請求項7】
前記吸収要素がボロメーターを含んでいる請求項4に記載のセンサアセンブリ。
【請求項8】
前記吸収要素が抵抗器手段と温度センサ手段を有し、前記抵抗器手段がアンテナにac結合されて電磁エネルギーを受け取り吸収し、そして前記温度センサ手段が抵抗器手段に熱的に結合されてその温度を監視する請求項4に記載のセンサアセンブリ。
【請求項9】
前記画素がシリコン製である請求項4に記載のセンサアセンブリ。
【請求項10】
複数の前記画素が画素のアレーに含まれている請求項4に記載のセンサアセンブリ。
【請求項11】
前記中間ステージが支持部材を含み,そして前記支持部材及び前記第一と第二の断熱部材が、前記熱浴を提供する手段の上に、前記吸収要素を定置するためのブリッジを形成している請求項2に記載のセンサアセンブリ。
【請求項12】
前記熱浴が基板及びアンテナ要素が取り付けられた上部本体部分含み、その上部本体部分が、前記中間ステージと前記吸収要素が配置されている空洞を含んでいる請求項11に記載のセンサアセンブリ。
【請求項13】
バイポーラトランジスタを含む前記増幅器が増幅器を含み、そして温度差を検出する前記手段が、前記吸収要素と前記中間ステージの間の温度差を感知する第一と第二のダイオードを備えている請求項2に記載のセンサアセンブリ。
【請求項14】
第一と第二のダイオードが、背中合わせの回路の関係で増幅器の入力端に接続されている請求項12に記載のセンサアセンブリ。
【請求項15】
前記中間ステージが中心に配置された開口を有し、そして前記吸収要素がその開口内に配置されている請求項3に記載のセンサアセンブリ。
【請求項16】
熱浴部材の形状の熱シンク、
前記熱浴部材に取り付けられた、放射電磁エネルギーを受け取るためのアンテナ要素、
前記アンテナ要素に結合された、放射電磁エネルギーを検出するための熱に高感度の検出要素、
前記検出要素と熱浴部材の間に配置された中間ステージ、及び
所定の熱伝導性と電導性を有し、検出要素を中間ステージに接続する少なくとも二つの第一断熱部材と、所定の熱伝導性と電導性を有し、中間ステージを共通の熱浴部材に接続する少なくとも二つの第二断熱部材とを含む中間ステージ用支持構造体を、各画素が備えているセンサ画素のアレー、並びに
吸収された電磁放射線に応答して、中間ステージの温度を検出要素の温度に集中させ、有効に、第一断熱部材の熱伝導を最小の伝導値にして、センサ要素の断熱性をしたがって感度を放射線の限度まで改善することによって、検出要素と熱浴の間の熱伝導を減少させるための中間ステージ中の電熱フィードバック回路、
を備え、
その電熱フィードバック回路が、中間ステージと組み合わせたバイポーラトランジスタ、及び検出要素と中間ステージの間の温度差を検出して固体のバイポーラトランジスタと発生する熱を制御するための温度差信号を生成する手段を含み、
バイポーラトランジスタ自体が生成した熱が、前記温度差信号に応答して中間ステージを直接加熱して、中間ステージの温度を検出要素の温度に集中させる、
電磁放射線センサアセンブリ。
【請求項17】
アンテナ要素、検出要素、中間ステージが、二層アセンブリにおいて熱浴と実質的に同一平面内にある請求項16に記載の電磁アセンブリ。
【請求項18】
前記検出要素がボロメーターを含んでいる請求項16に記載のセンサアセンブリ。
【請求項19】
検出要素とアンテナ要素を含む要素のうち少なくとも一つのスペクトル応答が、電磁スペクトルの所定領域で作動するように調節される請求項16に記載のセンサアセンブリ。
【請求項20】
前記所定の領域が、電磁スペクトルの赤外線及び/又はミリメートル波の領域を含んでいる請求項18に記載のセンサアセンブリ。
【請求項21】
熱浴手段、
熱浴手段の外表面に配置された電磁放射線を受け取るアンテナ手段、
アンテナ手段が受け取った電磁放射線を検出する熱吸収手段、
中間ステージと熱浴手段の間に配置された断熱手段、及び熱吸収手段を熱浴手段に対して断熱する熱吸収手段、
所定の熱伝導性と電導性を有し、熱吸収手段を断熱手段に接続する第一手段、
所定の熱伝導性と電導性を有し、断熱手段を熱浴手段に接続する第二手段、並びに
電磁放射線を検出する時に、断熱手段の温度を熱吸収手段の温度に集中させることによって熱吸収手段と熱浴手段の間の熱伝導を減少させ、接続するための第一手段の熱伝導を、有効に、最小の熱伝導値にして、センサアセンブリの感度を放射線の限度まで改善するために、断熱手段に組み合わせた電熱フィードバック回路、
を備え、
その電磁フィードバック回路手段が、断熱手段と組み合わせた熱を発生するバイポーラトランジスタ増幅手段、及び熱吸収手段と断熱手段の間の温度差を検出して、バイポーラトランジスタ増幅器によって中間ステージに送達される電力を制御する温度差信号を発する手段を含み、
そしてバイポーラトランジスタ増幅手段の生成した熱が、前記温度差信号に応答して断熱手段を直接加熱して、熱吸収要素と中間ステージの温度を等しくする、
電磁放射線センサアセンブリ。
【請求項22】
前記アンテナ手段、前記熱吸収手段及び前記断熱手段が,二層のセンサアセンブリを形成する請求項21に記載のセンサアセンブリ。
【請求項1】
熱浴、
放射電磁エネルギーを受け取るアンテナ要素、
前記アンテナ要素に結合され、そのアンテナ要素が受け取った放射電磁エネルギーを吸収し検出する手段を含む熱に応答する吸収要素、
前記吸収要素を前記熱浴に対して断熱する中間ステージであって、少なくとも二つの第一断熱部材と少なくとも二つの第二断熱部材を備え、その断熱部材が各々、所定の熱伝導率を有し、吸収要素を中間ステージに相互接続し及び中間ステージを熱浴に相互接続し、第一断熱部材が吸収要素と中間ステージの間に配置されそして第二断熱部材が中間ステージと熱浴の間に配置されてなる中間ステージ、
前記中間ステージに組み入れた電熱フィードバック回路であって、電磁放射線を検出する時に、前記中間ステージの温度を前記吸収要素の温度に集中させることによって、前記吸収要素と前記熱浴の間の熱伝導を減少させ、前記第一断熱部材の熱伝導を有効に最小の熱伝導値にして、放射線センサの感度を放射線の限度まで改善する電熱フィードバック回路、
を備え、
前記電熱フィードバック回路が、前記中間ステージと組み合わせたバイポーラトランジスタを含む発熱増幅器、及び前記吸収要素と前記中間ステージの間の温度差を検出して、受け取った電磁放射線によって決まる出力電圧信号を発して、増幅器が発生した電力を制御する手段を含み、
増幅器自体に含まれているトランジスタの生成した熱が、前記温度差の信号に応答して前記中間ステージを直接加熱して、前記吸収要素と前記中間ステージの温度を等しくする、
電磁放射線センサアセンブリ。
【請求項2】
二層の装置を備え、そして前記アンテナ要素、前記吸収要素及び前記中間ステージが、前記熱浴の上に配置された実質的に同じ平面内の要素で構成されている請求項1に記載のセンサアセンブリ。
【請求項3】
前記アンテナ要素が、前記熱浴の上部外表面上に配置されている請求項1に記載のセンサアセンブリ。
【請求項4】
x-yアドレス読出し回路を含むx-yセンサアセンブリを備え、前記熱浴、前記アンテナ要素、前記吸収要素及び前記中間ステージが、x-yアドレス読出し回路のアドレスする単一画素を形成する請求項1に記載のセンサアセンブリ。
【請求項5】
前記吸収要素と前記アンテナ要素を含む要素のうち少なくとも一つのスペクトル応答が、調節されて、電磁スペクトルの少なくとも赤外線領域を含む、電磁スペクトルの所定の領域で作動する請求項1に記載のセンサアセンブリ。
【請求項6】
前記所定の領域が、電磁スペクトルのミリメートル波の領域も含んでいる請求項4に記載のセンサアセンブリ。
【請求項7】
前記吸収要素がボロメーターを含んでいる請求項4に記載のセンサアセンブリ。
【請求項8】
前記吸収要素が抵抗器手段と温度センサ手段を有し、前記抵抗器手段がアンテナにac結合されて電磁エネルギーを受け取り吸収し、そして前記温度センサ手段が抵抗器手段に熱的に結合されてその温度を監視する請求項4に記載のセンサアセンブリ。
【請求項9】
前記画素がシリコン製である請求項4に記載のセンサアセンブリ。
【請求項10】
複数の前記画素が画素のアレーに含まれている請求項4に記載のセンサアセンブリ。
【請求項11】
前記中間ステージが支持部材を含み,そして前記支持部材及び前記第一と第二の断熱部材が、前記熱浴を提供する手段の上に、前記吸収要素を定置するためのブリッジを形成している請求項2に記載のセンサアセンブリ。
【請求項12】
前記熱浴が基板及びアンテナ要素が取り付けられた上部本体部分含み、その上部本体部分が、前記中間ステージと前記吸収要素が配置されている空洞を含んでいる請求項11に記載のセンサアセンブリ。
【請求項13】
バイポーラトランジスタを含む前記増幅器が増幅器を含み、そして温度差を検出する前記手段が、前記吸収要素と前記中間ステージの間の温度差を感知する第一と第二のダイオードを備えている請求項2に記載のセンサアセンブリ。
【請求項14】
第一と第二のダイオードが、背中合わせの回路の関係で増幅器の入力端に接続されている請求項12に記載のセンサアセンブリ。
【請求項15】
前記中間ステージが中心に配置された開口を有し、そして前記吸収要素がその開口内に配置されている請求項3に記載のセンサアセンブリ。
【請求項16】
熱浴部材の形状の熱シンク、
前記熱浴部材に取り付けられた、放射電磁エネルギーを受け取るためのアンテナ要素、
前記アンテナ要素に結合された、放射電磁エネルギーを検出するための熱に高感度の検出要素、
前記検出要素と熱浴部材の間に配置された中間ステージ、及び
所定の熱伝導性と電導性を有し、検出要素を中間ステージに接続する少なくとも二つの第一断熱部材と、所定の熱伝導性と電導性を有し、中間ステージを共通の熱浴部材に接続する少なくとも二つの第二断熱部材とを含む中間ステージ用支持構造体を、各画素が備えているセンサ画素のアレー、並びに
吸収された電磁放射線に応答して、中間ステージの温度を検出要素の温度に集中させ、有効に、第一断熱部材の熱伝導を最小の伝導値にして、センサ要素の断熱性をしたがって感度を放射線の限度まで改善することによって、検出要素と熱浴の間の熱伝導を減少させるための中間ステージ中の電熱フィードバック回路、
を備え、
その電熱フィードバック回路が、中間ステージと組み合わせたバイポーラトランジスタ、及び検出要素と中間ステージの間の温度差を検出して固体のバイポーラトランジスタと発生する熱を制御するための温度差信号を生成する手段を含み、
バイポーラトランジスタ自体が生成した熱が、前記温度差信号に応答して中間ステージを直接加熱して、中間ステージの温度を検出要素の温度に集中させる、
電磁放射線センサアセンブリ。
【請求項17】
アンテナ要素、検出要素、中間ステージが、二層アセンブリにおいて熱浴と実質的に同一平面内にある請求項16に記載の電磁アセンブリ。
【請求項18】
前記検出要素がボロメーターを含んでいる請求項16に記載のセンサアセンブリ。
【請求項19】
検出要素とアンテナ要素を含む要素のうち少なくとも一つのスペクトル応答が、電磁スペクトルの所定領域で作動するように調節される請求項16に記載のセンサアセンブリ。
【請求項20】
前記所定の領域が、電磁スペクトルの赤外線及び/又はミリメートル波の領域を含んでいる請求項18に記載のセンサアセンブリ。
【請求項21】
熱浴手段、
熱浴手段の外表面に配置された電磁放射線を受け取るアンテナ手段、
アンテナ手段が受け取った電磁放射線を検出する熱吸収手段、
中間ステージと熱浴手段の間に配置された断熱手段、及び熱吸収手段を熱浴手段に対して断熱する熱吸収手段、
所定の熱伝導性と電導性を有し、熱吸収手段を断熱手段に接続する第一手段、
所定の熱伝導性と電導性を有し、断熱手段を熱浴手段に接続する第二手段、並びに
電磁放射線を検出する時に、断熱手段の温度を熱吸収手段の温度に集中させることによって熱吸収手段と熱浴手段の間の熱伝導を減少させ、接続するための第一手段の熱伝導を、有効に、最小の熱伝導値にして、センサアセンブリの感度を放射線の限度まで改善するために、断熱手段に組み合わせた電熱フィードバック回路、
を備え、
その電磁フィードバック回路手段が、断熱手段と組み合わせた熱を発生するバイポーラトランジスタ増幅手段、及び熱吸収手段と断熱手段の間の温度差を検出して、バイポーラトランジスタ増幅器によって中間ステージに送達される電力を制御する温度差信号を発する手段を含み、
そしてバイポーラトランジスタ増幅手段の生成した熱が、前記温度差信号に応答して断熱手段を直接加熱して、熱吸収要素と中間ステージの温度を等しくする、
電磁放射線センサアセンブリ。
【請求項22】
前記アンテナ手段、前記熱吸収手段及び前記断熱手段が,二層のセンサアセンブリを形成する請求項21に記載のセンサアセンブリ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−509344(P2007−509344A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536630(P2006−536630)
【出願日】平成16年9月20日(2004.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/030673
【国際公開番号】WO2005/043096
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(397017191)ノースロップ グラマン コーポレーション (30)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月20日(2004.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/030673
【国際公開番号】WO2005/043096
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(397017191)ノースロップ グラマン コーポレーション (30)
【Fターム(参考)】
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