説明

足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器

【課題】足、手、顔等の身体の一部分にマッサージと加温と洗浄を1台の装置で同時に行うことができるとともに、コンパクト且つ軽量な構造とすることが可能な装置を提供すること。
【解決手段】利用者の足、手、顔等の身体の一部分を内部に収容する収容槽と、該収容槽内に収容された多数の粒体と、該粒体に運動エネルギーを与えて前記利用者の身体の一部分に衝突させる粒体動作手段と、前記収容槽内を加熱する加熱手段を備え、前記粒体動作手段が、前記収容槽の底部に配設されて略水平な軸周りに回転する羽根車からなることを特徴とする足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足、手、顔等の身体の一部分に対するマッサージと加温と洗浄とを1台の装置で同時に行うことができる足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器に関する。
【背景技術】
【0002】
足、手、顔等の身体の一部分を温めると全身の血行が促進されて健康に良いことは古くからよく知られている。
そのため、従来より、特に足を温めるための各種の足温器が数多く提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
また、足には数多くの経穴(ツボ)が集中しており、足に適度な刺激を与えることによって、優れた健康増進効果が得られることも古くからよく知られている。
そのため、従来より、足に適度な刺激を与えるための足マッサージ装置も数多く提案されている(例えば、下記特許文献2参照)。
【0004】
また、足は起立時に常に地面等に接することから他の部位に比べて汚れやすく、特段に激しい運動や作業等を行わなくても一日でかなり汚れてしまう。
通常、足の汚れは入浴時に洗浄することにより落とされるが、身体や場所の制約により入浴ができない場合や入浴が面倒なときのために、足だけを洗浄することができる足洗浄装置が従来より数多く提案されている(例えば、下記特許文献3参照)。
【0005】
上述したように、人間の足に対して各種の作用を及ぼすことができる機能をもつ装置は従来より数多く存在している。
しかしながら、従来の装置はいずれも単一の機能しか有していない。
すなわち、足温器は足を温める機能、足マッサージ装置は足をマッサージする機能、足洗浄装置は足を洗浄する機能を有しているが、他の機能を有しておらず、例えば足温器や足マッサージ装置を用いて足を洗浄したり、足洗浄装置を用いて足をマッサージしたりすることは通常できなかった。
【0006】
上記したような従来の装置においても、例えば足洗浄装置でお湯を使用することによって足の洗浄と加温を同時に行うことができるなど、使い方によっては1台の装置に2つの機能を発揮させることは可能であるが、この場合でも足をマッサージすることはできない。つまり、従来の装置では、足のマッサージと加温と洗浄という3つの機能を1台で発揮することはできなかった。
尚、技術的には1台の装置に3つの機能をもたせるようにすることは左程困難ではないかもしれないが、例えば従来の足洗浄装置にマッサージ機能を新たに付加しようとすると新たにマッサージ装置を組み込む必要が生じるため、装置が大型化・重量化することは避けられなかった。
【0007】
一方、本願出願人は、多数の粒体を噴流化して身体に衝突・摩擦させることにより身体を洗浄する身体洗浄装置を提案している(下記特許文献4参照)。
しかしながら、この特許文献4に開示された身体洗浄装置は、全身を洗浄するための装置であるから、装置が大きくて重く、足、手、顔等の身体の一部分の洗浄装置としては適していなかった。
また、この身体洗浄装置は、洗浄槽底部から気体を送り込んで粒体を噴流化させる構成を採用していることから、多数の粒体を噴流化させるために大容量のブロワーが必要となる。従って、仮にこの装置の構成を足、手、顔等の身体の一部分の洗浄装置に応用したとしても、装置全体が大型化・重量化してしまうことは避けられなかった。
【0008】
【特許文献1】特開2001−258986号公報
【特許文献2】特開2000−167021号公報
【特許文献3】特開平6−339509号公報
【特許文献4】特開2001−95880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、足、手、顔等の身体の一部分、特に足のマッサージと加温と洗浄を1台の装置で同時に行うことができるとともに、装置をコンパクトに且つ軽量に構成することが可能な足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、利用者の足、手、顔等の身体の一部分を内部に収容する収容槽と、該収容槽内に収容された多数の粒体と、該粒体に運動エネルギーを与えて前記利用者の身体の一部分に衝突させる粒体動作手段と、前記収容槽内を加熱する加熱手段を備え、前記粒体動作手段が、前記収容槽の底部に配設されて略水平な軸周りに回転する羽根車からなることを特徴とする足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器に関する。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記加熱手段として、前記収容槽の内壁に沿って取り付けられた電気温熱ヒータを備えていることを特徴とする請求項1記載の足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器に関する。
請求項3に係る発明は、前記加熱手段として、前記収容槽の外部から内部に温風を導く温風供給路と、該温風供給路に温風を供給する温風供給手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器に関する。
請求項4に係る発明は、前記加熱手段として、前記収容槽の外部から内部に温水を導く温水供給路と、該温水供給路に温水を供給する温水供給手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器に関する。
請求項5に係る発明は、前記温水を前記身体の一部分に向けて霧状に噴射する噴霧手段を有することを特徴とする請求項4記載の足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器に関する。
【0012】
請求項6に係る発明は、前記加熱手段が、前記収容槽の外部から内部に水蒸気を導く水蒸気供給路と、該水蒸気供給路に水蒸気を供給する水蒸気供給手段とからなることを特徴とする請求項1記載の足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器に関する。
請求項7に係る発明は、前記羽根車が、隣接して配置された互いに逆方向に回転する一対の羽根車を含むことを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器に関する。
請求項8に係る発明は、前記粒体が通過し得る開口部を有し収容槽の底部との間に間隙をあけて配設された中底板を備え、前記羽根車が該中底板の下方に配置されてなることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器に関する。
【0013】
請求項9に係る発明は、前記羽根車が収容槽の側面にも配設されていることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器に関する。
請求項10に係る発明は、前記羽根車が収容槽の複数の側面に配設されていることを特徴とする請求項9記載の足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器に関する。
請求項11に係る発明は、前記収容槽内に身体の一部分を出し入れするための出入口に、前記粒体が該身体の一部分に直接衝突することを防ぐ薄膜が取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至10いずれかに記載の足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器に関する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、加熱手段によって足を温めながら、多数の粒体に運動エネルギーを与えて利用者の足、手、顔等の身体の一部分に衝突させることによって、足、手、顔等の身体の一部分のマッサージと加温と洗浄を1台の装置で効率よく行うことが可能となる。また、粒体の衝突を利用することにより洗浄とマッサージの機能を同時に発揮させることができるため、装置をコンパクトに且つ軽量に構成することが可能となる。
更に、回転する羽根車によって多数の粒体を運動させることができるので、大容量のブロワーが必要なくなり、装置全体を小型化・軽量化することが可能となり、取り扱い性に優れた装置となる。また、羽根車を収容槽の底部に設置したことにより、粒体を収容槽内に巻き上げた後、巻き上げられた粒体は自由落下して羽根車へと自然に且つ確実に導かれるようになるので、多数の粒体を収容槽内にて効率良く連続的に運動させることができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、加熱手段として、収容槽の内壁に沿って取り付けられた電気温熱ヒータを備えているため、足、手、顔等の身体の一部分を濡らすことなく使用することができ、また使用時において加熱手段が邪魔にならず、装置をコンパクトに構成することが可能となる。
請求項3に係る発明によれば、加熱手段として、収容槽の内部に温風を導く温風供給路と、該温風供給路に温風を供給する温風供給手段を備えているため、足、手、顔等の身体の一部分を濡らすことなく使用することができ、また使用時に温風供給手段として家庭用ヘアドライヤーを利用することもできるため便利である。更には、温風の流れによって粒体の運動エネルギーを増大させ、洗浄効果やマッサージ効果を高めることが可能である。
請求項4に係る発明によれば、加熱手段として、収容槽の内部に温水を導く温水供給路と、該温水供給路に温水を供給する温水供給手段を備えているため、温水により足、手、顔等の身体の一部分を濡らすと同時に温めることにより、高い洗浄効果を得ることができる。また、収容槽内部に温水を貯めて使用することにより、高い温熱効果を得ることが可能となる。
請求項5に係る発明によれば、温水を身体の一部分に向けて霧状に噴射する噴霧手段を有するため、温水が微細な粒子となって満遍なく身体の一部分に吹き付けられることにより、高い洗浄効果を得ることが可能となる。
【0016】
請求項6に係る発明によれば、加熱手段が、収容槽の内部に水蒸気を導く水蒸気供給路と、該水蒸気供給路に水蒸気を供給する水蒸気供給手段とからなるため、水蒸気により足、手、顔等の身体の一部分を濡らすと同時に温めることで、高い洗浄効果を得ることができるとともに、水蒸気の流れにより粒体の運動を補助することも可能となる。
請求項7に係る発明によれば、互いに逆方向に回転する一対の羽根車によって、多数の粒体を効率良く巻き上げて連続的に上昇させることが可能となる。
請求項8に係る発明によれば、利用者の足、手、顔等の身体の一部分が羽根車に接触することができるので安全である。足に対して用いる場合には、中底板の上に足を載せることによって安定した状態で装置を使用することが可能となる。また、足の裏全面に粒体を衝突させることができるため、最も汚れやすい足の裏を綺麗に洗浄することが可能となるとともに、足の裏に多く存在する経穴(ツボ)を刺激して健康増進効果を高めることができる。
【0017】
請求項9に係る発明によれば、羽根車が収容槽の側面にも配設されているので、収容槽の側面からも粒体を送り出すことができ、利用者の身体の一部分に対して側方からも粒体を衝突させることが可能となり、洗浄効果やマッサージ効果を高めることができる。
請求項10に係る発明によれば、羽根車が収容槽の複数の側面に配設されているので、利用者の身体の一部分に対して満遍なく粒体を衝突させることが可能となり、洗浄効果やマッサージ効果を更に高めることができる。
請求項11に係る発明によれば、収容槽内に身体の一部分を出し入れするための出入口に、粒体が該身体の一部分に直接衝突することを防ぐ薄膜が取り付けられていることによって、粒体は薄膜を介して間接的に皮膚に当たるようになり、顔の場合には鼻や口等の内部に粒体が侵入することが防止され、足や手の場合には例えば傷部を保護することができ、また粒体を汚れ難くすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器(以下、単に装置と称す)の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1乃至図4は、本発明に係る装置の夫々別の実施形態を示す概略断面図であり、以下、図1を第一実施形態、図2を第二実施形態、図3を第三実施形態、図4を第四実施形態と称し、全ての実施形態をまとめて本発明と称する。
【0019】
先ず、第一乃至第四実施形態に共通する構成について説明する。
本発明に係る装置は、利用者の足、手、顔等の身体の一部分(図1乃至図4では足(A)が示されている)を収容する収容槽(1)と、この収容槽(1)内において足、手、顔等の身体の一部分(以下、単に身体の一部分と称す)に衝突する多数の粒体(2)と、収容槽(1)の底部との間に間隙をあけて配設された中底板(3)と、収容槽(1)の底部に配設されて粒体(2)に運動エネルギーを与える粒体動作手段と、収容槽(1)の内部を加熱する加熱手段を備えている。
【0020】
収容槽(1)は、本発明の装置を利用する利用者が洗浄・加温・マッサージしようとする身体の一部分を収容するための槽であって、当該身体の一部分を収容することができるだけの広さの内部空間を有している。
収容槽(1)の内部空間は、足を洗浄・加温・マッサージの対象とする場合、図示例のように足首から下の部分を収容することができるだけの容積とすることが好ましいが、膝から下の部分を収容することができるだけの容積としてもよいし、足の付け根から下の部分を収容することができるだけの容積としてもよい。
尚、図では利用者の片足のみが示されているが、収容槽(1)は利用者の左右の足を同時に入れることができるだけの横幅(紙面垂直方向の長さ)を有している。
【0021】
手を洗浄・加温・マッサージの対象とする場合、収容槽(1)の内部空間は、手首から先の部分を収容することができるだけの容積としてもよいし、肘から先の部分を収容することができるだけの容積としてもよいし、肩から先の部分を収容することができるだけの容積としてもよい。
【0022】
顔を洗浄・加温・マッサージの対象とする場合、収容槽(1)の内部空間は、顔面のみを収容することができるだけの容積としてもよいし、首から上を収容することができるだけの容積としてもよい。
【0023】
収容槽(1)の上部には、洗浄・加温・マッサージの対象となる身体の一部分を出し入れするための出入口が開口されており、この出入口には、利用者が身体の一部分を入れたときにその周囲に沿って密接するゴム等の可撓性素材からなる膜(5)が取り付けられている。この膜(5)は、粒体(2)が収容槽外部へと飛散することを防止するとともに、収容槽内部を密閉空間として、暖気、温水、水蒸気等が外部に漏れるのを防いで加温効果を高める役割も果たしている。
【0024】
粒体(2)は直径が0.5〜10mmの球体であり、材質は鉄(比重7.9)、アルミナ(比重3.7)、セラミックス(比重2.6)、プラスチック(比重1.2)等からなる。
粒体(2)は同じ材質のもののみを使用してもよいが、異なる材質のものを混合して使用することもできる。この場合、一個の粒体(2)の自由落下終端速度が略一定となるように、比重の大きい粒体は直径を小さく、比重の小さい粒体は直径を大きくするとよい。かかる構成を採用した場合、直径が大きく比重が小さい粒体は利用者の身体に強く当たるため血行の促進や皮膚の疲れの除去の為のマッサージ用として、直径が小さく比重が大きい粒体は表面積が大きいため洗浄用として、それぞれ効果的に作用する。
【0025】
また、本発明においては、粒体(2)を多孔質部材から形成し、その空隙に洗浄液を含浸しておく構成も好ましく採用できる。この構成によれば、収容槽内に別途洗浄液を供給する手段を設けることなく身体の洗浄を効果的に行うことが可能となる。
また、粒体(2)に遠赤外線放射物質を含有させる構成としてもよく、この構成によれば、遠赤外線が利用者の身体に放射されることによって、血行を促進して健康の増進を図ることができる。この場合、粒体そのものを遠赤外線放射セラミックス等の遠赤外線放射物質で構成してもよいし、表面に遠赤外線放射物質を付着させる構成としてもよい。
【0026】
中底板(3)は、洗浄・加温・マッサージの対象となる利用者の身体の一部分が、後述する羽根車(4)に接触することを防ぐ役割を有している。また、対象が足である場合には、収容槽(1)の内部で足を支持する役割も果たすことができる。
この中底板(3)は、粒体(2)が通過し得る大きさをもつ多数の開口部を有する平板であって、例えば金網やパンチングメタル板などから構成される。
尚、本発明においては、利用者の身体の一部分を後述する羽根車(4)から離れた位置に支持することができれば、必ずしもこのような中底板(3)を設ける必要は無く、他の方法、例えば複数本の棒を梯子状或いは格子状に設置することにより利用者の身体の一部分を支持するようにしてもよい。
【0027】
粒体動作手段は、収容槽(1)の底部に配設された羽根車(4)から構成されている。
羽根車(4)は、隣接して配置された互いに逆方向に回転する一対の羽根車からなり、各羽根車は、回転軸が粒体動作方向に対して略直角な軸周りに回転するように、回転軸が略水平方向となるように配置されている。
【0028】
図5は羽根車(4)の構造を示す図であって、(a)は外観斜視図であり、(b)は軸方向断面図、(c)は軸直角方向断面図である。
羽根車(4)は、中空円筒状の回転軸(41)と、この回転軸(41)の両端部に取り付けられた2枚の円板(42)と、これら2枚の円板(42)の間において回転軸(41)の外周面に等角度間隔で回転軸と平行に取り付けられた複数枚(図示例では8枚)の長方形状の羽根板(43)とから構成されている。
【0029】
図6は、羽根車(4)を上方から見た図であって、収容槽(1)の中底板(3)の下方を示す平面図である。
2つの羽根車(4)は、回転軸(41)が互いに平行となるように隣接して配置されている。2つの羽根車(4)の羽根板(43)同士は互いに干渉しないようにされているが、2つの羽根車(4)の羽根板(43)を同一平面内に配置したときに、羽根板の外縁部同士の間には、粒体が通過し得ない程度の微小な隙間しか形成されないようになっている。
【0030】
2つの羽根車(4)のうち、一方の羽根車の回転軸(41)にはカップリング(6)を介してモータ(7)が連結されており、このモータの駆動によって回転力を得るようになっている。
また、2つの羽根車(4)の回転軸(41)の一端部には夫々歯車(44)が外嵌されており、これら2つの歯車同士が噛み合うことによって、一方の回転軸が正方向に回転するともう一方の回転軸が逆方向に回転するようになっている。このときの回転方向は、図1乃至図4において矢印で示すように、右側の回転軸が時計回り方向、左側の回転軸が反時計回り方向となる。
尚、2つの回転軸間の回転伝達機構は歯車に限定されず、同様の作用が得られるものであれば、歯車に代えてベルト車や摩擦ローラ等の他の回転伝達機構を用いてもよい。
【0031】
このような互いに逆方向に回転する2つの羽根車を用いることによって、一度に多数の粒体を収容槽の上方に向けて効率良く巻き上げて上昇させることが可能となり、コンパクトな装置で高い洗浄効果やマッサージ効果を発揮することができる。
【0032】
上記構成からなる羽根車(4)を有する装置を使用する場合、図1乃至図4に示すように、利用者が収容槽(1)内に身体の一部分(図示例では足(A))を入れて中底板(3)の上に乗せた状態で、モータ(8)を駆動させて羽根車(4)を回転させる。
羽根車(4)が回転すると、収容槽(1)内の多数の粒体(2)は、羽根車(4)に設けられた羽根板(43)により巻き上げられて上昇し、中底板(3)の開口部を通過して収容槽(1)の上部に向かって上昇した後に自由落下する。
粒体(2)は、収容槽(1)内における上昇時もしくは落下時に利用者の身体の一部分に衝突して表面に衝撃・摩擦力を与えた後、自由落下して中底板(3)の開口部を通過し、再び羽根車(4)によって巻き上げられる。
【0033】
以上が第一乃至第四実施形態の装置に共通する構成である。
続いて、第一乃至第四実施形態の装置が夫々異なっている構成について説明する。
上述したように、本発明に係る装置は、収容槽(1)の内部を加熱する加熱手段を有しており、第一乃至第四実施形態はこの加熱手段の構成が夫々異なっている。
【0034】
第一実施形態に係る装置は、加熱手段が電気温熱ヒータ(9)から構成されている。
電気温熱ヒータ(9)は、厚みが薄い面状のヒータが用いられており、収容槽(1)の内壁に沿うように取り付けられている。
図示例においては、収容槽(1)の中底板(3)よりも上方位置において、利用者の足の甲の先端から足首付近に向いて取り付けられており、利用者の足を効率よく温めることができるようになっている。
電気温熱ヒータ(9)の種類は特に限定されず、カーボンヒータ(遠赤外線ヒータ)、ハロゲンヒータ、電熱線ヒータ等、公知のヒータを使用することができる。
【0035】
この第一実施形態に係る装置によれば、利用者は身体の一部分を濡らすことなく使用することができるため、例えば足に対して使用する場合には靴下を履いたままで使用することも可能である。
また、電気温熱ヒータ(9)は、収容槽(1)の内壁に沿うように取り付けられているため、使用時において身体の一部分が接触する等して邪魔になることがなく、また装置をコンパクトに構成することが可能となる。
【0036】
第二実施形態に係る装置は、加熱手段が、収容槽(1)の外部から内部に温風を導く温風供給路(10)と、該温風供給路(10)に温風を供給する温風供給手段(11)とから構成されている。
温風供給路(10)は、収容槽(1)の中底板(3)よりも下方位置において、収容槽(1)の内部と外部とを連通させるように設けられたパイプからなり、該パイプには温風供給手段(11)が接続されている。
温風供給手段(11)は、温風を発生することができる装置であれば特に限定されず、ヘアドライヤー等の電熱線を利用した温風発生装置を用いることもできるし、熱交換器やバーナー等を利用した温風発生装置を用いることもできる。
温風供給手段(11)は、温風の風量を調節できるものであることが好ましい。
また、温風供給手段(11)と温風供給路(10)が予め一体構造となっているものも本発明に含まれる。
【0037】
この第二実施形態に係る装置によれば、第一実施形態と同様に、利用者は身体の一部分を濡らすことなく使用することができるため、例えば足に対して使用する場合には靴下を履いたままで使用することも可能である。
また、温風供給手段として家庭用のヘアドライヤーを利用することも可能であるため、装置を簡易に且つ安価に構成することができる。
また、温風供給手段から供給される温風の流れが、粒体の運動エネルギーを増大させることにより、洗浄効果やマッサージ効果が高められる。
【0038】
第三実施形態に係る装置は、加熱手段が、収容槽(1)の外部から内部に温水を導く温水供給路(12)と、該温水供給路(12)に温水を供給する温水供給手段(13)とから構成されている。
図示例において、温水供給路(12)は、収容槽(1)の中底板(3)よりも上方位置において利用者の足の甲の先端から付け根部分に向くように取り付けられた複数のノズル(12a)と、収容槽(1)の外部からこれら複数のノズル(12a)に温水を供給するパイプ(12b)とからなり、該パイプ(12b)には温水供給手段(13)が接続されている。
【0039】
ノズル(12a)は、温水を利用者の身体の一部分に向けて霧状に噴射することができる噴霧ノズルであることが好ましい。これは、温水を霧状に噴霧することにより、温水が微細な粒子となって満遍なく身体の一部分に吹き付けられ、高い洗浄効果を得ることが可能となるためである。
【0040】
温水供給手段(13)は、パイプ(12b)の内部に温水を圧力水として供給することができる手段であればよく、例えば、一般家庭にあるような給湯器でもよいし、温水を貯蔵したタンクにポンプを連結したものであってもよい。
【0041】
この第三実施形態に係る装置によれば、収容槽(1)内に供給される温水によって、足を濡らすと同時に温めることができるため、高い洗浄効果を得ることが可能となる。また、収容槽(1)の内部に温水を貯めて使用することもでき、この場合には高い温熱効果を得ることが可能となる。
【0042】
第四実施形態に係る装置は、加熱手段が、収容槽(1)の内部に水蒸気を導く水蒸気供給路(14)と、該水蒸気供給路(14)に水蒸気を供給する水蒸気供給手段(15)とから構成されている。
水蒸気供給路(14)は、収容槽(1)の中底板(3)よりも下方位置において、収容槽(1)の内部と外部とを連通させるように設けられたパイプからなり、該パイプには水蒸気供給手段(15)が接続されている。
水蒸気供給手段(15)は、水蒸気を発生することができる装置であれば特に限定されず、公知の構造からなる加湿器等を用いることができる。
【0043】
この第四実施形態に係る装置によれば、収容槽(1)内に供給される水蒸気によって、足を濡らすと同時に温めることができるため、高い洗浄効果を得ることが可能となる。また、水蒸気供給手段から供給される水蒸気の流れが、粒体の運動エネルギーを増大させることにより、洗浄効果やマッサージ効果が高められる。
【0044】
また、本発明においては、上記した第一又は第二実施形態の加熱手段と、第三実施形態の加熱手段の両方を備えた装置とすることもできる。
すなわち、第一実施形態の電気温熱ヒータ(9)や、第二実施形態の温風供給路(10)及び温風供給手段(11)を備えた装置に、第三実施形態の温水供給路(12)及び温水供給手段(13)を組み込んだ装置としてもよい。この場合、ノズル(12a)として、温水を利用者の身体の一部分に向けて霧状に噴射することができる噴霧ノズルを用いる。
【0045】
第一実施形態の電気温熱ヒータ(9)を備えた装置に、第三実施形態の温水供給路(12)及び温水供給手段(13)を組み込んだ場合、収容槽(1)内部に収容された身体の一部分は、電気温熱ヒータ(9)によって温められるとともに、ノズル(12a)から霧状の温水が吹き付けられることにより、洗浄効果が大きく高められる。
また、第二実施形態の温風供給路(10)及び温風供給手段(11)を備えた装置に、第三実施形態の温水供給路(12)及び温水供給手段(13)を組み込んだ場合、収容槽(1)内部に収容された身体の一部分は、温風によって温められるとともに、ノズル(12a)から霧状の温水が吹き付けられることにより、洗浄効果が大きく高められる。
【0046】
尚、図1乃至図4では、足のマッサージ、加温、洗浄を行っている様子を示したが、本発明に係る装置は、足の他に手や顔などの他の身体の一部分のマッサージ、加温、洗浄を行うために用いることも可能であることは既述の通りである。
例えば、図7は、本発明に係る装置を顔のマッサージ、加温、洗浄のために用いている様子を示す一例である。この図示例では、第四実施形態の加熱手段を用いて、すなわち水蒸気による加熱を行いながら粒体を顔に衝突させることにより、顔のマッサージ、加温、洗浄を行っている。但し、上述した他の加熱手段及びその組み合わせを用いてもよいことは言うまでもない。
【0047】
図8は本発明に係る装置の変更例を示す図である。
この変更例に係る装置は、粒体動作手段を構成する羽根車(4)が収容槽(1)の底部だけでなく側面にも配設されている。
この羽根車(4)の形態は収容槽底部に配設される羽根車と同じであるが、両者を説明上区別するために、側面に配置される羽根車を符号(4a)で表す。
図8では羽根車(4a)を1つの側面のみに配設した例を示しているが、複数の側面に夫々配設することも可能である。例えば、収容槽(1)が直方体状である場合には、羽根車(4a)を1側面のみに設けてもよいし、2側面に設けてもよいし、3側面或いは4側面に設けることもできる。また、収容槽(1)が円筒状や円錐台状である場合には、複数の羽根車(4a)を側面に周方向に間隔をあけて設ければよい。
【0048】
図8の装置では、収容槽(1)の側面の一部が外方に向けて張り出している。(以下、この張り出し部分により形成される空間を張り出し空間(17)と称し、張り出し部分以外の収容槽内の空間を内部空間(18)と称する。)
張り出し空間(17)は、外方に向かうにつれて下方に傾斜する仕切り板(19)によって上下に仕切られており、仕切り板(19)の下方空間に時計周り方向に回転する羽根車(4a)が配設されている。
仕切り板(19)の傾斜下端部分は、粒体(2)が通過可能な網(19a)となっており、内部空間(18)から張り出し空間(19)内に入り込んだ粒体(2)は、仕切り板(19)の傾斜に沿って導かれ、網(19a)の開口部を通過して羽根車(4a)が配設された下方空間へと達する。
【0049】
羽根車(4a)が配設された仕切り板(19)の下方空間は、金網等の開口板(20)によって内部空間(18)と仕切られており、下方空間内に取り入れられた粒体(2)は羽根車(4a)の回転によって跳ね飛ばされ、開口板(20)の開口部を通過して再び内部空間(18)へと送り込まれる。
【0050】
このように、収容槽(1)の側面にも羽根車(4a)を配設すると、利用者の身体の一部分(図示例では足(A))に対して側方からも粒体を衝突させることが可能となって、身体の一部分にむら無く粒体が当たり、洗浄効果やマッサージ効果を高めることができる。また、羽根車(4a)を収容槽(1)の複数の側面に配設すると、身体の一部分に対して、より満遍なく粒体を衝突させることが可能となるため好ましい。
羽根車を側面に設ける場合には、右側面と左側面等の対向する側面に設けると、少ない数の羽根車で利用者の身体の一部分に効率良く粒体を衝突させることが可能となるため好ましい。
【0051】
また、収容槽(1)に形成された張り出し空間(17)の上部には、粒体(2)を収容槽(1)内に補給するための粒体補給庫(16)が設けられている。尚、この粒体補給庫(16)は着脱可能に構成することが好ましい。
粒体補給庫(16)には多数の粒体(2)が貯蔵されており、これらの粒体(2)を必要に応じて張り出し空間(17)へと供給し、羽根車(4a)の回転によって内部空間(18)へと送り込むことができる。
このような粒体補給庫(16)を設けることによって、利用者の好みや身体の大きさ、或いは主たる使用目的(洗浄目的かマッサージ目的か加温目的か)に応じて、収容槽内に存在する粒体の数を簡単に増やすことができる。
【0052】
この変更例に係る装置は、図示例では足に対して適用されているが、手や顔等の他の身体の一部分に対して適用するための装置とすることも勿論可能である。
また、加熱手段については、上述した第一乃至第四実施形態のうちのいずれか若しくはこれらの複数を組み合わせて設けることができる。
【0053】
図9は本発明に係る装置の他の変更例を示す図である。
この変更例に係る装置は、収容槽(1)内に身体の一部分を出し入れするための出入口に、粒体(2)が該身体の一部分に直接衝突することを防ぐ薄膜(21)が取り付けられている。
薄膜(21)は、布(不織布等)や紙などの薄くて柔らかいシート又はネットから形成されており、収容槽(1)の出入口を覆うように且つ薄膜(21)を介して身体の一部分を収容槽内の空間に入れることができるような張り具合及び大きさで取り付けられている。
このような薄膜(21)を取り付けることにより、粒体(2)は薄膜(21)を介して間接的に利用者の皮膚に当たるようになる。そのため、顔に対して使用した場合には鼻や口等の内部に粒体が侵入することが防止され、足や手に対して使用した場合には例えば傷部を保護することができ、また粒体を汚れ難くすることもできる。
【0054】
尚、本発明においては、上記したような薄膜を装置の出入口に取り付けなくても、利用者が装置を利用する際に自分で上記したようなシートやネットを用いて顔を覆ったり、手や足の傷口を覆ったりしてもよく、このようにしても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る装置は、足、手、顔等の身体の一部分に対するマッサージ、加温、洗浄を1台で行うことができるため、家庭で用いることができるのは勿論のこと、病院や介護施設等においても好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る装置の第一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る装置の第二実施形態を示す概略断面図である。
【図3】本発明に係る装置の第三実施形態を示す概略断面図である。
【図4】本発明に係る装置の第四実施形態を示す概略断面図である。
【図5】羽根車の構造を示す図であって、(a)は外観斜視図、(b)は軸方向断面図、(c)は軸直角方向断面図である。
【図6】羽根車を上方から見た図であって、装置の収容槽底部付近を示す平面図である。
【図7】本発明に係る装置を用いて顔のマッサージ、加温、洗浄を行っている様子を示す図である。
【図8】本発明に係る装置の変更例を示す概略断面図である。
【図9】本発明に係る装置の別の変更例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 収容槽
2 粒体
3 中底板
4 羽根車(底部)
4a 羽根車(側面)
9 電気温熱ヒータ(第一実施形態の加熱手段)
10 温風供給路(第二実施形態の加熱手段)
11 温風供給手段(第二実施形態の加熱手段)
12 温水供給路(第三実施形態の加熱手段)
13 温水供給手段(第三実施形態の加熱手段)
14 水蒸気供給路(第四実施形態の加熱手段)
15 水蒸気供給手段(第四実施形態の加熱手段)
21 薄膜
A 足

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の足、手、顔等の身体の一部分を内部に収容する収容槽と、該収容槽内に収容された多数の粒体と、該粒体に運動エネルギーを与えて前記利用者の身体の一部分に衝突させる粒体動作手段と、前記収容槽内を加熱する加熱手段を備え、前記粒体動作手段が、前記収容槽の底部に配設されて略水平な軸周りに回転する羽根車からなることを特徴とする足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器。
【請求項2】
前記加熱手段として、前記収容槽の内壁に沿って取り付けられた電気温熱ヒータを備えていることを特徴とする請求項1記載の足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器。
【請求項3】
前記加熱手段として、前記収容槽の外部から内部に温風を導く温風供給路と、該温風供給路に温風を供給する温風供給手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器。
【請求項4】
前記加熱手段として、前記収容槽の外部から内部に温水を導く温水供給路と、該温水供給路に温水を供給する温水供給手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器。
【請求項5】
前記温水を前記身体の一部分に向けて霧状に噴射する噴霧手段を有することを特徴とする請求項4記載の足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器。
【請求項6】
前記加熱手段として、前記収容槽の外部から内部に水蒸気を導く水蒸気供給路と、該水蒸気供給路に水蒸気を供給する水蒸気供給手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器。
【請求項7】
前記羽根車が、隣接して配置された互いに逆方向に回転する一対の羽根車を含むことを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器。
【請求項8】
前記粒体が通過し得る開口部を有し収容槽の底部との間に間隙をあけて配設された中底板を備え、前記羽根車が該中底板の下方に配置されてなることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器。
【請求項9】
前記羽根車が収容槽の側面にも配設されていることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器。
【請求項10】
前記羽根車が収容槽の複数の側面に配設されていることを特徴とする請求項9記載の足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器。
【請求項11】
前記収容槽内に身体の一部分を出し入れするための出入口に、前記粒体が該身体の一部分に直接衝突することを防ぐ薄膜が取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至10いずれかに記載の足、手、顔等の身体の一部分のマッサージ・温熱・洗浄器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−202955(P2007−202955A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28352(P2006−28352)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(597154966)学校法人高知工科大学 (141)
【Fターム(参考)】