説明

距離測定

本発明は、距離測定の方法であって、パルス状の電磁放射が少なくとも1つの送信器により発せられ、かつ反射された信号パルスが少なくとも1つの受信器により検出されるものに関する。本発明によると、対象物であって発せられた放射パルスが反射されるものからの距離が、パルスの伝播時間を決定することにより測定される。雑音が受信器により測定され、この受信器の雑音閾値を超える時点が決定され、信号パルスにより生成される雑音の変化が、それぞれ前記時点を含む複数の個々の測定を平均することにより検出される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離測定の方法に関する。この方法においては、パルス状の電磁放射が少なくとも1つの送信器を使用して送信され、反射された信号パルスが少なくとも1つの受信器を使用して検出され、かつ前記送信放射パルスが反射される対象物からの距離がパルスの伝播時間を決定することにより測定される。
【0002】
本発明は更に、パルスの伝播時間を決定することにより距離を測定するための装置であって、パルス状の電磁放射を送信するための少なくとも1つの送信器と、反射された信号パルスを検出するための少なくとも1つの受信器とを有する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
このタイプの距離測定のための方法及び装置は、一般に知られている。
【0004】
距離の測定においては、一方で、できるだけ正確な距離の値を手に入れる必要がある。他方、例えば遠方の対象物や反射率の低い対象物から出ている比較的小さな振幅の信号をも検出することができるよう、測定装置の感度はできるだけ高いものが指向される。
【0005】
パルス伝播時間を決定することによる既知の距離測定方法は、その基礎を成す基本的なアプローチに関して互いに区別することができる。2つのかなり異なるアプローチが、時間の測定のために使用される。
【0006】
1つのアプローチは、「連続測定」と呼ばれる。連続測定では、全アナログ受信信号がスキャンされる。即ち、使用されるスキャン速度に対応する精度で、「連続的に」、受信信号が測定される。複数の測定を実行し、全ての測定位置について(即ち、受信信号の全てのスキャン位置において)一定の高いスキャン速度で実行されるこれら測定に関する平均値を形成するのが通例である。これにより、S/Nとも称される信号対雑音比が改善される。この結果もたらされる準連続の振幅より、実際に関心のある信号パルスを復元することができる。即ち、これらは雑音から分離することができるため、この復元された信号パルスを参照して距離測定に必要な時間測定を実行することができる。
【0007】
これにより達成可能な高い精度と高い感度が、連続測定の利点である。スキャン、記憶、及び計算に必要な労力に関して解決すべき技術的課題がかなりあり、これが欠点である。これら課題は、全受信信号のスキャンとその後の評価において処理すべきデータの量が膨大であることによる。
【0008】
時間の測定における別のアプローチが、いわゆる「イベント測定」である。ここでは、全アナログ受信信号が評価されるのではない。受信信号は、所定の比較器閾値を超える信号部分又は時点のみが検出・評価されることを保証する比較器へと送られる。上記連続測定とは対照的に、イベント測定においては、実際に関心のあるイベント(特に、比較器の基準を超える信号パルス)について測定値が記録されるに過ぎないため、イベント測定当初よりデータの洪水が回避される。
【0009】
イベント測定の利点は、複数の測定を平均することで高い精度が達成可能な一方で、極めて僅かな量のデータのみを処理すればよい、ということである。しかし、関心のある信号パルスの雑音からの特定の離隔を必要とし、この信号/雑音の離隔に従い設定されることを要する比較器閾値の位置により、感度が固定される。このため、イベント測定は、当然ながら、感度のいかなる改善も許容しない、という欠点がある。イベント測定の更なる欠点は、高価及び/又は複雑な評価用電子機器の拡張なしには、送信放射パルスごとに1つの信号パルス(エコーとしても知られる)しか評価できない、ということである。というのも、送信放射パルスが時間の測定を開始し、エコー(即ち、受信器にて検出される信号パルス)が時間の測定を終了するからである。
【0010】
パルス伝播時間の測定による距離測定の分野において、妥当な量のデータに基づいて高精度及び高感度を同時に実現する測定方法は、現在のところ知られていない。
【特許文献1】DE 196 37 010 A
【特許文献2】US 4 586 043 A
【非特許文献1】"Radar Design Principles" (F.E. NATHANSON ET AL., 1991, SCITECH PUBLISHING, INC., MENDHAM, NJ, USA, XP002272505, Seite 80 - Seite 83
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、パルス伝播時間を決定することによる距離測定において、距離測定の高精度を高感度と同時に実現する可能性を提供すると共に、とりわけ送信される放射パルスごとに複数の信号パルスの評価を可能にし(即ち、マルチエコーの能力を与え)、更には、これら信号パルスの形状を分析可能にすること(即ち、任意の形状の反射信号を処理可能にすること)である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、本発明に従い、方法に係る独立請求項1の特徴及び装置に係る独立請求項24の特徴により達成される。
【0013】
従って、本発明による方法においては、雑音が受信器を使用して測定され、雑音の内側に位置する受信器の少なくとも1つの閾値を通過する時点が割り出され、かつ信号パルスにより引き起こされる雑音の変化が、それぞれ特定の時点を含む複数の個々の測定を平均することにより検出される。
【0014】
最初に説明したイベント測定と対照的に、本発明によれば、結果として、雑音を超えて大きく突き出している信号だけでなく、雑音が直接測定される。一方で、やはり最初に説明した連続測定とは対照的に、本発明によれば、全アナログ受信信号が連続的にスキャンされるのではなく、雑音の内側に位置する受信器の閾値が通過された時点について、受信信号の特定の特徴位置(「イベント」)が選択される。受信信号のこれら選択された位置のみに対して、更なる評価が加えられる。
【0015】
この更なる評価は、本発明によれば、複数の個々の測定の平均化を含むが、これら個々の測定は、連続測定と対照的に、本発明のスキャン速度により割り出されるアナログ受信信号の膨大な数の測定点を含んではおらず、実際には特徴時点のみを含む。従って、平均化の対象とされる個々の測定は、それぞれが全受信信号を表すのではなく、むしろ特定の時点のみを有するアナログ受信信号の一部のみを形成しており、当然ながら小さいが、特徴的であって明確に定められている。
【0016】
これにより、本発明によるデータ量の劇的な低減が、イベント測定の場合のようにアナログ受信信号中に存在する情報を失うことなく、達成される。本発明によれば、雑音の内側に受信器の閾値が位置するため、雑音を越えて充分に突き出している信号だけでなく、全受信信号が評価において考慮される。
【0017】
雑音パルスの振幅のみが、受信器の受信信号の特徴時点に対する本発明による制限ゆえに、考慮の外に残される。しかしながら、これは、雑音のみが存在して信号が存在しない時間範囲においては、雑音パルスが本発明による平均化においていわば「平均により消し去られ」るため、問題を呈さない。即ち、これらの時間範囲においては、雑音パルスが統計学的に分布し、即ち正及び負の雑音パルスが受信器の閾値の位置に応じた一定の確率比を有し、例えば受信器の閾値が0NEPに位置する場合には等しい確率であるという状況が利用される。ここで、「NEP」(「雑音等価出力」)とは、雑音の実効値に相当する出力を指す。
【0018】
対照的に、信号が存在する時間範囲においては、雑音が信号により影響され、即ち雑音パルスが信号の重畳により変化するという状況が、本発明により利用される。この状況は、信号の範囲において、雑音曲線が信号ゆえに正へとシフトされ、雑音パルスの拡幅がもたらされて、受信器閾値を超える確率、即ち正の信号の存在を検出できる確率が増すことを意味している。
【0019】
この確率の増加又は非対称が、本発明による平均化において、純粋な雑音の範囲において雑音パルスが平均値へと導かれる一方で、信号が存在する範囲においては、この信号により引き起こされた確率の増加をより高い値として測定でき、即ち雑音の平均値を上回って位置する値として測定できる点で、知覚可能になる。即ち、雑音が本発明による平均化により小さくなる一方で、信号のレベルは変わらないままである。
【0020】
本発明により利用されるこの状況は、特には送信放射パルスを反射している対象物の質により決定される信号の形状とは無関係である。一方では測定時間に対してより短い継続時間を有する個々の信号パルス、他方では自身の継続時間にわたってゼロとは異なる任意の量で広がる振幅を有する連続信号の両者が、雑音曲線を正へとシフトさせ、従って本発明による方法により検出可能である。これが、短い信号パルスにおいては「局所的」にのみ生じる一方で、より幅広い信号は、それぞれの時間領域において雑音曲線を全体としてシフトさせる。この種の幅広い信号も、本発明の意味において「信号パルス」として理解すべきであり、この種の全体としての雑音曲線のシフトを、「雑音の変化」として理解すべきである。
【0021】
以上説明したことが、更に所望の任意の大きさの信号に当てはまり、特には雑音の内側に位置する信号、即ち振幅が雑音パルスの平均振幅よりも小さく、特にはかなり小さい信号にも当てはまることが、本発明における特有の利点である。この種の小さな信号は、最初に説明したイベント測定を使用したのでは、測定することができない。当然ながら、より大きな信号も、自身を雑音に重畳させる。しかしながら、この状況は、現実にはイベント測定においては、どのみち、雑音よりも大きく上回る信号だけしか検出されず、雑音が測定されないため、何の役割も果たさない。
【0022】
本発明の更なる大きな利点は、全アナログ受信信号が考慮されるため、複数エコー能力が多かれ少なかれ自動的に与えられる点にある。
【0023】
本発明によれば、個々の測定の平均化が、比較的少数の特徴時点にもとづいてのみ行われるため、本発明は、感度の劇的な向上を、対応して同時に要求される測定及び評価のための大きな労苦を必要とせずに可能にする。実際に実現可能な距離測定装置の構成から出発するテストが、雑音の中心に位置する受信器閾値において、100mの範囲当たりに約60の雑音パルスが予想されることを示す。
【0024】
本発明による感度の向上は、他の点で更に詳しく眺めるが、従来は不可能であった距離測定のための多数の新規なセンサ設計及び用途を切り開く。
【0025】
従って、この従来は得られなかった領域への進出が、図式的な表現で表現すると、本発明が、全アナログ受信信号を考慮することにより情報の完全な利用の利点を自分のものにする(この点については、連続測定と同様)とともに、特徴イベントの限定によりデータの低減の利点を自分のものにする(この点については、イベント測定と同様)点で、達成される。これは、本発明によれば、一方ではアナログ受信信号が当然ながら連続的に、しかしながら他方では特定の時点により表されるイベントに関してのみ評価されることで、行われる。
【0026】
この理由のため、本発明は「連続イベント測定」とも称され、略してCEMとも称される。
【0027】
本発明の好適な実施の形態が、従属請求項、明細書、及び図面に記載される。
【0028】
本発明によれば、個々の測定を、送信された放射パルスのそれぞれについて生成することができる。本発明による特徴時点への限定ゆえ、高いパルス周波数であっても、先の放射パルスからもたらされた個々の測定を処理することができるよう、いずれの場合も2つの連続する放射パルスの送信の間に充分な時間を得ることができる。
【0029】
受信器の閾値の位置は、それぞれの用途に合わせて調節可能である。受信器の閾値がより雑音の内側へと置かれるほど、即ち閾値が低く設定されるほど、依然として検出できる信号が小さくなる。しかしながら、同時に、閾値が低く設定されるほど、受信器の閾値が雑音パルスの横腹によりより頻繁に通過され、即ち個々の測定がより多数の時点を含むため、小さな信号を雑音から区別するために実行しなければならない平均化の労苦が増加する。従って、感度の向上が、より大きな平均化の労苦という対価にて行われるが、本発明によれば、この平均化の労苦は、たとえ受信器の閾値が0NEPに位置する場合であっても、本発明によれば依然として特定の特徴時点のみが使用されるため、依然として最初に説明した連続測定のそれよりは数桁小さい。
【0030】
受信器の閾値は、それぞれの用途に応じ、特には平均化の労苦及び/又は検出感度に応じて、さまざまに設定することができる。単位時間当たりの雑音パルスの数が、例えば単位長さ当たりの光の速度を考慮しつつ実行すべき受信器閾値の変化の指標として機能することができる。この指標は、例えば個々の測定における特定の時点の密度など、測定値から由来できる。
【0031】
個々の測定の生成及び平均化、並びに雑音の変化の検出は、好ましくは、ソフトウェアにより支援された評価方法により行われる。
【0032】
更に、論理パルスの並びが、雑音の内側に位置する受信器の閾値により、雑音パルス及び/又は信号パルスにより変化させられた雑音パルスを含むアナログ受信信号から生成され、個々の測定が、この並びから導出されると好ましい。この論理パルスの並びは、論理測定値とも称される。論理測定値は、受信器閾値がアナログ測定値とも称される受信信号により通過された時点についての情報のみを含む。
【0033】
これにより、データの劇的な低減が実現され、しかしながら捜索対象の信号についての情報を含む重要なデータは、実際には、信号により引き起こされた雑音の変化が、信号の時間範囲において雑音パルスの拡幅を生じさせるがゆえに前記通過の時点の位置に直接的影響を有するため、失われていない。結果として、この巧みなデータ削減においては、不要なものだけが考慮から外される。
【0034】
論理パルスの横腹が、本発明による個々の測定の時点として使用されると好ましい。
【0035】
更に本発明によれば、個々の測定の時点が、受信器の少なくとも1つのメモリに書き込まれることが提案される。個々の測定のそれぞれが生成の直後に仮に書き込まれるメモリは、好ましくはICコンポーネントの一要素である。
【0036】
個々の測定の時点が、好ましくはメモリ、特にICコンポーネントのメモリに中間的に保存され、次いで更なるメモリ、特には時間パターン・メモリへと移され、これら時点が更なるメモリに、それらのそれぞれの時間情報を考慮に入れた構成で保存される。これら時点は、好ましくは、特には測定の際のクロックのサイクルをカウントするカウンタのカウンタ状態に対応する数字により、一方のメモリに表され、メモリ・アドレスにより他方のメモリに表され、数字とメモリ・アドレスとの間に明確な関連が存在する。
【0037】
更に好ましくは、個々の測定の平均化が、少なくとも1つの時間パターン・メモリにおいて実行され、好ましくは同じ時間パターン・メモリが、平均化される全ての個々の測定について使用され、時間パターン・メモリの対応するメモリ・セルが、立ち上がりのパルス横腹の場合に値nだけ増やされ、立ち下がりの横腹の場合に値nだけ減らされ、あるいはこの反対であり、好ましくはnについて値1が使用される。
【0038】
個々の測定の平均化が行われる時間パターン・メモリは、好ましくは個々の測定が最初にそれぞれ導入されるメモリと同一ではなく、むしろパラレル・インターフェイスを介して第1のメモリを有するICコンポーネントへと接続されたプロセッサ・システムの一要素である。
【0039】
好ましくは、測定時間が複数の連続する時間窓へと分割される時間パターンが、個々の測定の平均化において使用される。このプロセスにおいて、使用される時間パターン・メモリのそれぞれにおいて、メモリ・セルが、好ましくは各時間窓に関連付けられており、従って、連続する時間窓へと分割された測定時間、又は測定時間において割り出された特徴時点を、時間パターン・メモリへとマップすることができる。
【0040】
従って、個々の測定の平均化を、受信器の閾値の通過の回数が、特には各時間窓のための同じ時間パターン・メモリ内で正しい符号でカウント又は平均化され、それに応じてそれぞれのメモリ・セルの値がそれぞれ変化することで、行うことができる。
【0041】
平均化すべき最後の個々の測定が考慮された後、各時間窓について割り出された受信器閾値通過の数を、平均化深さとしても知られる平均化対象の個々の測定の数で除することができ、個々の測定の平均化が、これで終了する。代案として、時間パターン・メモリの対応するメモリ・セルを、この時間窓において生じる受信器閾値の通過のそれぞれについて、それぞれの時間窓において「1/平均化深さ」だけ増減させることも可能であり、即ち平均化対象の個々の測定の数による除算を、時間パターン・メモリが書き込まれる前に行うことも可能である。
【0042】
更に好ましくは、本発明によれば、平均値が、個々の測定の平均化に引き続いて振幅関数へと積分される。振幅関数は、以下ではソフトウェア振幅又はSW振幅とも称される。個々の測定がそれぞれ、受信器閾値の通過位置によりアナログ測定値から得られた論理測定値の時間微分を表し、従って個々の測定の平均化がいわば「微分世界」において行われ、即ち論理振幅の微分が、それにより達成されるデータ低減により計算、メモリ、及び評価の労苦の劇的な節約を達成するために時間の後で形成される一方で、引き続く個々の測定の平均化結果の積分は、いわば「現実世界」への復帰を表し、即ち時間の関数としての振幅が再び存在する。しかしながら、このプロセスにおいて、雑音が、個々の測定の平均化により、信号に対して特定の量で、特には平均化深さ即ち平均化される個々の測定の数により決定される量で、低減される。
【0043】
純粋な雑音の完全な「平均化による除去」は、無限に大きい数の個々の測定を平均化することによりのみ達成可能であるため、振幅関数は、純粋な雑音の時間範囲において正確に平滑ではない。しかしながら、本発明の好ましい更なる展開によれば、感度を、例えば所定の数の連続する時間窓にわたっていずれの場合も振幅関数において平均化が行われることで振幅関数の帯域幅が低減される点で、更に向上させることができる。この種の手段は、水平平均化としても知られ、振幅関数の平滑化をもたらし、特に量子化の結果としての雑音が低減される。
【0044】
信号により引き起こされた雑音の変化を検出するため、好ましくは、検出閾値が振幅関数へと適用される。本発明による方法が、好ましくは、ソフトウェアにより支援された評価の枠組みにおいて遅くとも個々の測定の平均化から出発して行われ、即ち全ての操作がソフトウェアにより行われるため、振幅関数へと適用される検出閾値は、ソフトウェア閾値とも称され、省略形式でSW閾値とも称される。
【0045】
個々の測定を使用して実行される平均化にもとづく雑音の低減により、アナログ測定値においては「雑音中に失われ」ていて、ソフトウェア雑音とも称することができる平均化により低減される雑音からの雑音の変化のみをもたらしていた信号パルスが、振幅関数において突出する。
【0046】
今や、(ソフトウェア)雑音から突き出している信号パルスを、SW閾値により簡単なやり方で特定することができる。従って、最初に説明したイベント測定のスタイルで図式的な表現で表現すると、この種の「イベント測定」は、いわば求める信号の特定のための振幅関数において実行され、しかしながら、これが、一方ではソフトウェアにより行われ、他方では増幅器のアナログ出力信号においては行われず、元のアナログ信号の不連続に分布した時点から得られた純粋に抽象的な構造、即ち振幅関数において行われる。
【0047】
それぞれの関連する対象物の距離が、好ましくは、検出閾値が通過された少なくとも1つの時点にもとづき信号パルスについての振幅関数において割り出される。この時点は、特には、信号パルスの前側又は立ち上がりの横腹が検出閾値を通過する時点である。
【0048】
検出閾値又はSW閾値により割り出された時点が、距離測定のための基準として機能し、この時点の割り出しにおける不規則性が、それから計算される対象物の距離に直接の影響を有するため、本発明の好ましい更なる発展によれば、信号パルスの立ち上がり及び/又は立ち下がりの横腹の領域においていずれの場合も信号パルスのどん底の割り出しのために振幅関数において雑音の外挿が実行され、このプロセスにおいて得られた雑音関数が振幅関数から差し引かれ、補間されたパルスの横腹のゼロ線との交点がどん底として割り出され、これらのどん底にもとづいて対象物の距離が割り出されるとき、精度を高めることができる。ここで「ゼロ線」は、雑音の局所平均値を意味する。
【0049】
信号パルスの横腹は、ここで、振幅関数又はSW振幅により得られる情報が使用される点で、調節される。雑音補償とも称されるこの手段は、どん底が信号パルスの振幅について何ら依存性を有さず、あるいは少なくとも信号パルスの横腹の検出閾値又はSW閾値の交点よりも少ない依存性しか有していないという状況を利用しており、従って、一方ではより高い精度が達成され、他方では一般に不可避である振幅依存性の影響が低減される。
【0050】
更に本発明によれば、信号パルスの形状が振幅関数において評価されることが提案される。これにより、対象物の距離に加えて更なる情報を、送信放射パルスが反射された対象物について得ることができる。信号パルスの形状は、特には、反射している対象物の形状、広がり、構造、及び表面の質により作用され、従って信号パルスの形状から対象物の種類について結論を出すことができる。
【0051】
振幅関数の信号パルスがソフトウェアにより提供され、これによりそれらのパルス形状に関する信号パルスの分析が、一方では最初に可能になり、他方では簡単なやり方でのパルス形状の割り出しのために、きわめて多様な評価手順を使用することができることが、本発明の特有の利点である。
【0052】
好ましくは、パケット平均値形成のため、それぞれの数の個々の測定が合算され、個々の測定の数により除算されることで、個々の測定の平均化がパケット的に行われる。ここで、用語「パケット」により、複数の個々の測定が対象物の距離の割り出しのために使用され、即ち対象物の距離についてのただ1つの値を得るために使用されることが表現され、パケットと称される複数の個々の測定が使用される。
【0053】
対象物の距離は、それぞれ、ただ1つのパケット平均値から決定することができる。あるいは、複数のパケットについて平均を行い、ここで形成された平均値から対象物の距離を決定することも可能である。
【0054】
この更なる平均化において、より多数の個々の測定が考慮されるため、これにより距離測定の感度及び精度を更に向上させることが可能である。複数のパケットを平均することの更なる利点は、特定の平均化プロセスを使用できる点にあり、実際、特にパケット形成のために実行される個々の測定の平均化において使用できず、あるいは例えば計算時間の要求が大きすぎるゆえに使用すべきでない平均化プロセスを使用できる点にある。
【0055】
以下で単にセンサとも称される本発明による装置において、受信器が、アナログ受信信号の生成のための増幅器と、雑音の内側に位置する少なくとも1つの閾値を有していて、この閾値によりアナログ受信信号から論理パルスの並びを生成することができる装置を有するようにされ、評価装置が受信器に組み合わされ、この評価装置により、論理パルスの横腹に対応する時点から、送信された複数の放射パルスについてそれぞれの個々の測定を生成することができ、それぞれ特定の時点を含む個々の測定の平均化を、信号パルスにより引き起こされた雑音の変化を検出するために実行できる。
【0056】
受信器は、好ましくは電磁放射の検出のために作られた要素であって、特には光ダイオードの形態で設けられ、好ましくはAPD型の光ダイオードの形態で設けられた要素を有する。送信器は、好ましくは、放射パルスの送信のためのレーザ・ダイオードを有する。
【0057】
雑音の内側に位置する少なくとも1つの閾値を有する装置は、好ましくは、閾値を形成する基準を有する少なくとも1つの比較器を有するが、一般に、制限増幅器も、比較器の代わりにアナログ受信信号からの論理パルスの生成のために設けることが可能である。
【0058】
既知の周波数を有する既知の幅のサイクル・パルスの放射のためのクロック、及び時間期間の間にサイクル・パルスが出力されるカウンタが、放射パルスの送信から論理パルスの横腹に対応する時点までにそれぞれ経過した時間期間の割り出しのために設けられる。本発明による距離測定装置の時間基準を、この種の中央の「測定クロック」により固定することができる。
【0059】
測定時間が、好ましくは複数の連続する時間窓へと分割され、評価装置が、そのメモリ・セルがそれぞれ時間窓に組み合わせられている少なくとも1つの時間パターン・メモリを有する。
【0060】
好ましくは、このプロセスにおいて、各メモリ・セルの値が、対応する時間窓へと包含されるパルスの横腹により可変とされ、好ましくは各メモリ・セルを、立ち上がりのパルス横腹により値nだけ増やすことができ、立ち下がりの横腹の場合に値nだけ減らすことができ、あるいはこの反対であり、好ましくはnについて値1がもたらされる。
【0061】
個々の測定の生成及び平均化、並びに雑音の変化の検出は、好ましくは、ソフトウェアにより支援された評価プロセスにより実行可能である。
【0062】
評価装置が、好ましくは、少なくとも個々の測定の生成を実行することができる少なくとも1つのICコンポーネントを有する。
【0063】
更に、好ましくは、評価ユニットが、少なくとも1つのマイクロプロセッサ、及び生成された個々の測定をICコンポーネントからマイクロプロセッサへと送信するための少なくとも1つのインターフェイスを有するようにされ、少なくとも個々の測定の平均化及び雑音の変化の検出を、マイクロプロセッサ及び少なくとも1つのメモリにより実行可能である。
【0064】
本発明による距離測定装置は、1つ以上の測定チャネルを有することができる。複数チャネルの変種の場合には、関連の増幅器及び比較器を備えている受信ダイオードが、好ましくは各チャネルについて設けられる。
【0065】
本発明の特有の利点は、本発明による方法の実行に適したセンサを実現するために、従来からのセンサの全体の基本構造に基本的な変更及び拡張を行う必要がない点にある。本発明は、おおむね従来からのコンポーネントにて実現可能であるが、少なくとも個々の測定の生成を実行できる特別製のICコンポーネントを設けることが好ましい。
【0066】
本発明によりのみ可能にされる感度の劇的な向上が、従来のセンサと比べてきわめて簡単な構造を有しており、より小さな寸法を有しかつ/又はよりコストの点で好ましく製造できるセンサを、性能特には感度に僅かな妥協すら必要とすることなく、かつ精度における小さな妥協も受け入れる必要なく実現可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0067】
以下、図面を参照しつつ、本発明を例示的に説明する。
【0068】
本発明による方法を実行することができる距離測定装置、及び本発明により可能になる実際の用途について詳しく眺める前に、まず本発明による方法の原理を、図1〜5を参照して説明しなければならない。図2〜5の表示は、模擬計算により得られたものである。
【0069】
図1は、距離測定のための本発明による装置(センサ)を概略的に示しており、この装置は、本発明による距離測定方法の実行のために作製される。
【0070】
このセンサは、パルス状の電磁放射13を送信するため、レーザ・ダイオード(図示されていない)を備えた送信器11を有する。センサの範囲内に位置する対象物19から反射された信号パルス15が、センサの受信器17の受信ダイオード61に入射し、即ち送信されるビームが、受信ダイオード61により定められる視野を覆う。
【0071】
送信器11に組み合わせられた光送信装置53、及び受信器17に組み合わせられた光受信装置55が、使用される放射に対して透過性であるセンサ・カバー51の背後に配置される。
【0072】
増幅器35及び比較器39が、受信ダイオード61の後方に配置される。増幅器35が、以下ではアナログ測定値とも称されるアナログ受信信号をもたらすが、このアナログ受信信号は、後で更に詳しく眺めるが、受信した信号又は信号パルスに加えて、雑音を含む。
【0073】
以下ではハードウェア閾値又はHW閾値とも称される比較器39の基準が、それぞれの用途に応じて、特には所望の感度に応じて設定される。
【0074】
HW閾値により、増幅器35のアナログ受信信号から、一連の論理パルスが生成され、センサの制御及び評価装置41の一要素であるセンサの下流のICコンポーネント45へと供給される。ICコンポーネント45は、後で更に詳しく眺めるメモリ25を有する。メモリ25は、いわゆる個々の測定を保存すべく機能し、ここで個々の測定とは、比較器39によりアナログ測定値から論理パルス経由で導出されるアナログ測定値の特徴時点で構成される。
【0075】
センサにより割り出そうとする対象物の距離は、この種の複数の個々の測定を平均することにより得られる。この目的のため、プロセッサ・システム63が、パラレル・インターフェイス49を介してICコンポーネント45の下流に配置され、ICコンポーネント45のメモリ25に収容された個々の測定が、それぞれプロセッサ・システム63へと送信される。更にシフト・レジスタ多重送信システムが、ICコンポーネント45とプロセッサ・システム63との間に設けられる。
【0076】
プロセッサ・システム63は、センサの全ての関連動作を制御するためのマイクロプロセッサ47、伝播時間の測定のための時間基準を固定するため時間クロックとして機能する中央測定クロック43、測定クロック43の時間サイクルをカウントするためのカウンタ67、及びICコンポーネント46により送られた個々の測定の平均化が行われるメモリ・システム27を有しており、更にメモリ・システム27は、やはり後でより詳しく述べる複数の時間パターン・メモリを有する。
【0077】
プロセッサ・システム63により割り出された対象物の距離を、インターフェイス59を介して決定することができる。
【0078】
本発明によるセンサは、複数の並行な測定チャネルにおいて同時に距離測定が可能であるよう、複数チャネルのバージョンとして設計することもできる。その場合、受信器17が、受信ダイオード61及びそれらに組み合わされた増幅器35並びに比較器39のアレイを有する一方で、ICコンポーネント45が、各測定チャネルのためのメモリ25を含んでおり、同様にプロセッサ・システム63のメモリ・システム27も、測定チャネルの数に対応する数の並列に動作する同一なメモリ構成を有する。この種の多チャンネル・センサの場合には、送信器11により送信される送信ビーム13が、好ましくは全ての受信器チャネルの視野、即ち全ての受信ダイオード61を覆うように成形される。
【0079】
本発明によれば、距離の測定が平均により行われるため、測定の際に変化することがない条件が適用されなければならず、即ち測定の際に対象物が、少なくともそれぞれの環境に応じた平均化深さのために必要とされる多くの放射パルスを対象物の方向に送信するための充分な時間期間の間は、センサに対して変化も移動もすべきではない。従って、決して本発明の用途がこれに限られるわけではないが、好ましい用途は、永続的又は固定のセンサに関する。この種の用途は、センサが正確に一方向のみを「見つめる」ため、一次元用途とも称される。
【0080】
上記本発明によるセンサにより実行できる本発明による測定方法についての以下の説明は、ただ1つの測定チャネルでのプロセスに関する。複数チャネルのセンサについては、これらのプロセスが、並列の測定チャネルにおいて同時に実行される。
【0081】
図2aは、受信ダイオードがいかなる信号も受信していないとき、即ち対象の信号の電磁放射の作用を受けていないときについて、受信ダイオードに接続された増幅器の出力信号37の時間挙動を示す。従って、図2aは、ゼロ線の上方又は下方に位置する統計学的に分布した雑音パルスからなる常に存在する雑音を示す。このプロセスにおいて、ゼロ線は0NEPに相当している。
【0082】
増幅器の出力信号37が比較器へと届けられ、ここで、以下でハードウェア閾値又はHW閾値と称される比較器の基準値21は、図2aに示すとおり、雑音の内側に位置する値に設定される。「雑音の内側」とは、詳しくは、HW閾値21が、−4.5NEPと+4.5NEPの間に位置することを意味する。HW閾値21は、例えば0NEPに位置することができる。当然ながら、この設定において、一方では検出感度、他方では平均化深さ、即ち平均化のための信号の検出に要する計算時間が、考えられる最大になる。本発明によれば、HW閾値21を、0NEPを下回る値へと設定することも可能である。更に、HW閾値21を、+4.5NEPよりもはるかに上の値に設定すること、即ち雑音のはるか上方に配置することも可能である。このようにすることで、本発明を最初に説明したイベント測定に従って機能させることができ、この点でイベント測定を、本発明による方法の特別な場合と考えることができる。
【0083】
図2aによればHW閾値21が雑音の中に位置するという事実は、雑音パルスが、数回にわたってHW閾値を通過するということを意味する。雑音パルスの横腹が有する有限の勾配、及び雑音パルスの種々の振幅ゆえ、HW閾値21が横断される時点33(図2c)は、HW閾値21の位置により決まり、より正確に言えば、HW閾値21とアナログ測定値37との間の相対位置により決まる。
【0084】
本発明によれば、図2aによるアナログ測定値37から、比較器のHW閾値21の助けにより、図2bに示すとおり等しいレベルの一連の論理パルス23で構成される論理測定値が生成される。論理パルス23の横腹は、アナログ測定値37の雑音パルスの横腹がHW閾値21を横切った時点33(図2c)に位置しており、雑音パルスの立ち上がりの横腹が、論理パルス23の立ち上がりの横腹に対応し、雑音パルスの立ち下がりの横腹が、論理パルス23の立ち下がりの横腹に対応している。
【0085】
従って、本発明による方法の精度即ち時間分解能は、HW閾値21の超過そのものが検出されて、論理パルス23の生成により更なる評価へと届けられるだけでなく、アナログ測定値37のHW閾値21を超えての上昇及びHW閾値21を超えての下降の間の区別がなされ、あるいはHW閾値21を超えた後に再びHW閾値21を下回って低下するとき、又はその反対が常に検出されることで、アナログ測定値37に含まれているはるかに多くの情報が利用されるよう、きわめて高い。結果として、図2bに示すとおり、さまざまな幅を有する論理パルス23が得られる。論理パルス23の幅又は論理パルス23間の「休止」の幅が、アナログ受信信号37がどれだけ長くHW閾値21を上回っており、あるいは下回っているのかを示す。
【0086】
次いで、いわゆる個々の測定が、論理パルス23の立ち上がり及び立ち下がりの横腹の時点33をデジタル化して、いわゆるイベント・リストに保存することで、図2bによる論理測定値の論理パルス23から生成される。このイベント・リストは、個々の測定に含まれている情報を表す。以下では、立ち上がりの横腹即ち正の横腹を、アップ・イベントとも称し、立ち下がりの横腹即ち負の横腹を、ダウン・イベントとも称する。
【0087】
図2cは、個々の測定を形成している保存されたイベント・リストの図式的表示であり、アップ・イベントを表しており説明のためだけの目的で以下では「針」とも称される上向きの線33と、ダウン・イベントを表す下向きの針33とを有する。この点で、図2cによる個々の測定を、論理パルス23により形成された論理測定値の時間微分と考えることができ、即ち論理測定値の微分により得られたものと考えることができる。
【0088】
図2cによる個々の測定、即ちイベント・リストの生成は、ICコンポーネントにおいて行われ、ICコンポーネントは、以下では単にICメモリとも称するが、保存位置の数が僅かに個々の測定当たりに予想される雑音パルスと同じ桁数にあり、即ち予想されるアップ・イベント及びダウン・イベントの合計と同じ桁数にあるイベント・リストの保存のための比較的小さなメモリを有する。保存位置は、各イベントについて、測定の際の中央測定クロック(図1)のサイクルをカウントしているカウンタのカウント状態に対応する数字で満たされる。従って、ICコンポーネントのメモリに保存された数字が、時間情報を含んでおり、即ち個々の測定を開始させる放射パルスの送信を基準に、それぞれのアップ又はダウン・イベントが生じた時点についての情報を含む。結果として、図2cによる全イベント・リストが、カウンタ状態の組としてICコンポーネントのメモリに保存される。メモリは、一方と他方、即ちアップ・イベントとダウン・イベントとの間の区別のために、2つのメモリ領域に分割される。
【0089】
従って、個々の測定を表すICコンポーネントのメモリの内容は、アナログ測定値37の雑音パルスが雑音の中に位置するHW閾値21をいつどの方向に横切ったかについての情報のみを含む。
【0090】
これにより、本発明によれば、距離測定のための方法の更なる手順において、当然ながら少量ではあるが特に決定的な情報のみをそれぞれ含む個々の測定のみが使用されるため、既に数回にわたって述べた劇的なデータの削減が達成される。
【0091】
個々の測定の平均化、及び引き続く平均化結果のソフトウェア振幅への積分が、図3に示されている。
【0092】
本発明によれば、対象物の距離の割り出しが、時間順に並んだ複数の個々の測定の平均化により行われ、個々の測定のそれぞれが、放射パルスの送信後に受信ダイオードにより受信された事象の時間における特徴点33を表す。当然ながら、このプロセスにおいては、必須ではないが好ましくは、平均される個々の測定が、直接に連続して送信された放射パルスのアナログ測定値から生成される。
【0093】
個々の測定の平均化は、もはやICコンポーネントにおいては行われず、パラレル・インターフェイスを介してICコンポーネントに接続され、時間パターン・メモリに組み合わせられているプロセッサ・システムにおいて行われる。
【0094】
ICコンポーネントにおいて生成されたイベント・リストは、その後すみやかに、ICコンポーネントが特には直後に引き続いて送信される放射パルスに属する次のイベント・リスト生成の用意ができるよう、パラレル・インターフェイスを介してプロセッサ・システムの時間パターン・メモリへと送信される。
【0095】
個々の測定を平均するために設けられた時間パターン・メモリの各メモリ・セルは、有限な長さの時間窓にそれぞれ対応している。アナログ測定37が行われる測定時間、即ちセンサの範囲又は信号が予測される最大の距離に応じた時間が、このようにして等しい長さの複数の連続する時間窓へと分割され、即ち作業が、そのパターンが時間パターン・メモリの分割に対応している時間パターンにより、本発明に従って実行される。予想される比較的少数のイベントのみが、ICメモリの寸法を決定するが、比較的多数の時間窓が、時間パターン・メモリにとって決定的であるため、時間パターン・メモリのメモリ・セルの数は、ICメモリの保存位置の数よりもかなり多い。
【0096】
各時間窓即ち時間パターン・メモリの各保存位置が、アップ・イベント及びダウン・イベント即ちイベント・リストを含むICメモリのカウンタ状態に対応しており、従って、あとで更に詳しく説明するとおり、時間パターン・メモリのそれぞれのメモリ・セルの内容を、ICメモリに存在するカウンタ状態のそれぞれについて値1だけ変化させることで、ICメモリの内容を時間パターン・メモリへと一意にマップすることができる。
【0097】
図3aは、連続して生成された10個の個々の測定を示しており、個々の測定のそれぞれは、この例では雑音のみを含んでいて信号を含んでいない図2aによるアナログ測定値37から、図2bによる論理パルスの並びを介して導出される。雑音パルスの統計学的分布ゆえ、雑音パルスから導出され図3においてやはり上向き及び下向きに突き出した針で示されている個々の測定のアップ・イベント及びダウン・イベントは、時間においてランダムな分布を有する。
【0098】
従って、放射パルスの送信により開始する測定時間の時間窓においてイベントが発生する確率は、全ての時間窓において等しい大きさであり、即ち、個々の測定の全てを考慮したとき、各時間窓が同じ数のイベントを含んでおり、あるいは別の表現によれば、針の密度が時間において一定であるが、これがこの厳密さで当てはまるのは、平均化される個々の測定の数が無限に多く、即ち平均化深さが無限に大きい場合だけである。
【0099】
図3の例は、10の平均化深さしか有しておらず、従って針の密度が、図3bに示されているとおり、正確には時間において一定になっていない。
【0100】
有限の平均化深さの場合には、時間パターンの精緻さに応じて、即ち時間窓のサイズに応じて、2つ以上のイベントが時間窓内に包含される可能性が多かれ少なかれ存在する。図3の例の場合がこれに該当し、これが図3bに通常の2倍の長さの針により示されている。
【0101】
個々の測定の平均化は、個々の測定がプロセッサ・システムの同じ時間パターン・メモリへと順次に導入されることで、技術的には実現される。このプロセスにおいて、時間パターン・メモリのi番目のメモリ・セルが、i番目の時間窓に包含されるイベントに関して、アップ・イベントの場合即ち立ち上がりの横腹の場合には値が1だけ増やされることで、ダウン・イベントの場合即ち立ち下がりの横腹の場合には値が1だけ減らされることで、変化させられる。
【0102】
結果として、時間パターン・メモリのメモリ・セルにより表現される各時間窓についての平均化の際に、イベントがどの程度頻繁にこの時間窓に包含されるかについて、アップ・イベントが正であると評価され、ダウン・イベントが負であると評価されてカウントがなされる。雑音のみが測定されており、即ち信号が存在しない場合、平均化深さが無限に大きいならば、アップ・イベント及びダウン・イベントの発生が各時間窓について等しい確率であり、従ってこの理論的境界線の場合には、時間パターン・メモリの各メモリ・セルの出発値が、平均化の最後においても存在するであろう。
【0103】
図2cによる個々の測定のそれぞれが、下敷きとなる図2bによる論理測定値の時間微分を表しており、個々の測定のみが平均化されるため、上述の平均化は、いわば「微分世界」で行われている。
【0104】
「現実世界」への復帰は、平均化した個々の測定(図3b)を、図3cに示されており以下でソフトウェア振幅又はSW振幅とも称されるいわゆる振幅関数29へと積分することにより、平均化に続いて行われる。
【0105】
積分においては、より前の時間ウインドウに対応する全てのメモリ・セルの内容及びそれぞれのメモリ・セルそのものの内容の合計が、各時間窓について形成され、即ち時間パターン・メモリの各メモリ・セルについて形成され、即ちメモリ・セル1〜iの合計が、i番目のメモリ・セルに書き込まれる。それぞれの加数は、それぞれの時間窓について、発生したアップ・イベントの数が発生したダウン・イベントの数と異なるときのみゼロと相違し、ゼロと異なる加数の値は、それぞれの時間窓において余ったアップ・イベント又はダウン・イベントの平均の数に相当し、個々の測定のそれぞれが積分されるのではなく、平均化された個々の測定が積分され、即ち積分が平均化の後に行われるため、実際に平均数に相当する。
【0106】
この順序を逆にし、即ちそれぞれ前もって積分された個々の測定を平均化すると、平均化及び積分が線形な演算操作であるため、当然ながら同じ結果がもたらされるが、かなり大きな計算の労苦がともなうであろう。
【0107】
図3cによるSW振幅29は、図2aに対応するアナログ測定値37の雑音を表すが、個々の測定を使用して実行された平均化ゆえに、平均化深さに応じた係数で、即ち平均化に使用された個々の測定の数に応じた係数で、雑音が低減される。無限に大きい平均化深さにおいては、図3cによるSW振幅29は、平滑な水平線になるであろう。従って、SW振幅29における雑音を、SW雑音と称することができる。
【0108】
本発明によれば、論理パルス23(図2b)の横腹に対応し、個々の測定を形成している特徴時点33のみが、平均化のための基礎として使用され、更に平均化が、時間パターン・メモリにおける値1の加算及び減算からなる操作のみを必要とするため、この雑音抑制のために必要とされる計算上の労苦は比較的僅かである。
【0109】
図3bに図式的に示されている複数の個々の測定の平均化の結果は、複数の個々の測定を個々の測定からなるパケットと考えるとき、即ち本発明による個々の測定の平均化がパケット的に行われるとき、説明のためにパケット平均値と称することができる。次いで、図3cによる振幅関数又はSW振幅29への移行が、個々の測定の平均化パケットの積分により行われ、言葉を替えれば、パケット平均値の積分により行われる。これにより、時間パターン・メモリの更なる処理のためのサイクルが、平均化深さにより全体として減らされる。
【0110】
平均化した個々の測定(図4a)のSW振幅29(図4b)への積分の原理を、図4の例からより明らかに見て取ることができる。
【0111】
図4aが個々の測定ではなく、複数の個々の測定の平均化の結果であるという事実を、同じ向きのイベント即ちアップ・イベント又はダウン・イベントが互いに直接並んでいることが数回あるという個々の測定においてはありえない事実(現実のアナログ測定値から導出される個々の測定においては、図2の助けにより容易に明らかであるように、ダウン・イベントがアップ・イベントに続かなければならず、その逆もしかりである)から、すぐに理解できるであろう。
【0112】
ただ1つの時間窓を除いて、図4aによる平均化を含む時間パターン・メモリの各メモリ・セルは、値1を有する。例外は、通常の2倍の長さを有する下向きの針により示されており、即ち時間パターンの精度の範囲内において結果としていずれの場合も関連の放射パルスの送信から計算された同じ時点で発生した正確に2つのイベントが、この時間窓に包含される。
【0113】
これは、SW振幅29について、図3bに関して既に説明した積分において形成される合計が、2つの連続する時間窓の間でただ1回だけ値1では変化しないことを意味している。この例外は、2つのイベントを含む上述の時間窓ゆえの2だけの変化である。
【0114】
図5は、雑音の内側に位置する信号を本発明による方法により検出できることを示す。特に、最大振幅が4.5NEPよりもはるかに小さいような信号を検出することができる。
【0115】
この種の信号15が、測定時間に比べて短期間である信号パルス15の形態で、雑音なしで図5aに示されている。
【0116】
図5bは、図2aに相当するアナログ測定値37を示しており、雑音及び図5aの信号15を含むが、互いに重畳される。この重畳は、雑音が信号15により変化させられたことを意味し、換言すれば、信号15が雑音中に含まれていることを意味する。本発明による方法は、この雑音の変化、従って信号15を、たとえ信号15が雑音に深く含まれており雑音から突き出していなくても、検出できるようにする。
【0117】
このプロセスにおいて、本発明は、信号15の時間範囲においてアナログ測定値37が純粋な雑音測定に比べて正へとシフトされるという状況を利用する。このシフトは、信号15の時間範囲においてHW閾値21が超えられる確率を大きくする。即ち、信号15の時間範囲に位置する時間窓においては、信号が存在しておらずイベントが統計学的に分布しているもっぱら雑音の領域にくらべ、時間平均で、即ち連続する個々の測定の平均について、より多くの数のアップ・イベントがより多くの数のダウン・イベントをともなって発生する。
【0118】
信号15の検出に必要とされる平均化深さは、とりわけ、信号15のレベルにより決まる。これが、種々の平均化深さについてSW振幅29を示す図5c〜5fにより示されている。
【0119】
図5cは、平均化深さ1に対応しており、即ち図示されているSW振幅29が、ただ1つの個々の測定の積分により得られている。この特別な場合においては、SW振幅29が、論理測定値(図2b)と同一であり、ここでは信号を識別することは不可能である。
【0120】
図5d、5e、及び5fは、それぞれ平均化深さ10、100、及び1,000について、SW振幅29を示す。平均化深さが大きくなるとともに、信号15が雑音を超えてどんどん大きくなる。平均化深さ10(図5d)においては、信号15を未だ識別することができないが、平均化深さ100(図5e)においては、信号15が既に雑音を大きく超えている。平均化深さ1,000(図5f)においては、今や信号15をはっきりと特定できるほどに雑音が抑制される。
【0121】
対象物19が位置する距離、即ち送信された放射パルス13が反射されてただ1つの信号パルス15(図5a及び5f)として受信(図1)される距離の割り出しのため、光の速度を考慮しつつ、送信された放射パルス13の前側の横腹と信号パルス15の前側の横腹15との間で経過する時間期間から距離を計算するときに、信号パルス15の前側の横腹の開始の時点が必要である。
【0122】
この時間期間の終わりを形成する時点を決定するため、図5に例として描かれており以下では検出閾値31とも称されるソフトウェア閾値又はSW閾値が、SW振幅29へと適用される。この検出閾値31は、そのSW振幅29への適用が、マイクロプロセッサにおいて動作するソフトウェアにより支援された評価プロセスの枠組みにおいて行われるという点で、SW閾値31である。
【0123】
求めようとする対象物の距離を、光の速度を使用して、信号パルス15の前側の横腹が検出閾値31を通過した時点65から、計算できる。信号パルス15の前側の横腹とSW閾値31との交点からのこの時点65の割り出しは、ソフトウェアにより行われ、この時点65は、ソフトウェア・イベント又はSWイベントとも称される。
【0124】
距離測定の精度を高めるため、ソフトウェアにより支援された評価プロセスの枠組みにおいて、SS振幅29が今までのところ考慮の外に置かれている更に多くの情報を含むという状況を利用できる。これを、以下で更に詳しく眺める。
【0125】
本発明の利点は、HW閾値21を雑音の中へと所望のとおり遠くへ置くことができ、更には例えば0NEPに置くことができるため、所望のとおりに小さい信号15を検出できるという点にある。HW閾値21の低減は、アナログ測定値37から得られる雑音パルスの数を増加させるだけであり、即ち論理測定値(図2b)の論理パルス23から導き出される個々の測定当たりのイベント33の数を増加させ、これは、SW振幅29内の信号15がSW閾値31(図5f)を使用することができるように充分に(SW)雑音から突き出すような程度まで雑音を抑制するために必要とされる平均化深さの増加をもたらす。
【0126】
最初に説明したイベント測定に対する所望の感度向上に応じて、SW振幅29内の信号15をSW閾値31の適用により充分な安全性で雑音から分離できるよう、いかにSW閾値31を設定すべきかの検討において、SW閾値=
【数1】

と表される単純な設定ルールを参照できることが、統計学的検討にもとづき、本発明により見出されており、ここで、
mは、個々の測定の平均化についての平均化深さであり、
p=P(HWsmin)は、SW振幅においてHWsminのHW閾値及びmの平均化深さにおいて雑音パルスを検出する確率であり、ここで、
【数2】

であって、
f(x)は、正規分布密度であり、
minは、「安全」と定義される測定についての最小信号であり、9倍の標準偏差に位置する信号であり、即ちイベント測定の場合に9NEPに位置し、あるいは本発明による方法の場合にSW振幅の雑音に対して9σ(σ=標準偏差)に位置し、
HWsminは、4.5NEP/Eであって、Eは、イベント測定に対して必要とされる感度の向上であり、m=Eが当てはまる。
【0127】
結果として、信号が雑音に対して9倍の標準偏差に位置するときに、信号が充分に安全に検出され、即ち偽の信号が充分に安全に回避される「充分に安全」の定義としてのSW閾値31の本発明による設定規則に入り、これによれば、HW閾値が雑音に対して標準偏差の4.5倍に相当するときに、雑音の検出が充分に安全に回避される。
【0128】
イベント測定に対して必要とされる感度の向上が例えばE=8の場合、m=E=64の平均化深さ、及びほぼσ=3.62の標準偏差で約18に位置するSW振幅の雑音の分布の平均値において、約35のSW閾値についての値となる(18+4.5・3.62≒35)。このプロセスにおいて、SW閾値の値の範囲又は結果の範囲が、0〜64の64個の個々の測定の考えられる結果により、依然として結果の範囲のノーミングを行うことなく、あらかじめ設定される。
【0129】
本発明による方法の更なる利点は、それが検出すべき信号15の形状と無関係である点にある。測定時間に比べて短い信号パルス15だけでなく、その長さにわたって任意の形状とされた振幅を有する幅の広い信号も、本発明による方法により検出可能である。この種の幅の広い信号は、それぞれの時間範囲全体について、その振幅に従って雑音を持ち上げ、それぞれの時間窓についてイベントの発生の確率を、純粋な雑音測定に比べて増加させる。従って、SW振幅が、平均化深さに応じて、この時間範囲において多かれ少なかれ平滑な関数になり、純粋な雑音を表すSW振幅の位置に比べて、幅広い信号の振幅に相当する程度で上方へとシフトされる。
【0130】
測定時間において順次に生じる所望の任意の数の信号を検出できるようになるという点が、本発明による更なる利点である。信号により引き起こされた雑音の変化が全て、図5から直接見て取れるように、SW閾値31により検出できるSW振幅29内の信号15をもたらす。従って、本発明による方法は、もとより複数エコーの能力を有する。
【0131】
導入部分において既に述べたとおり、平滑化が水平平均により実行され、例えば平均化が、振幅関数29においていずれの場合も所定の数の連続な時間窓にわたって実行されることで、振幅関数29の帯域幅を低減することができる。この種の平滑化は、いずれの場合も、図5c〜5fに示した振幅関数29においては、未だ実行されていない。平均化の後に依然として残っているSW雑音を、平滑化により、信号15に比べて更に低減することができる。これにより、雑音のみが平滑化される一方で、信号は、それが平滑化時間よりも幅広い範囲において、レベルに関して変化しないままであるため、更なる感度の向上が達成できる。
【0132】
既に説明したとおり、振幅関数29から出発して、ソフトウェアにより実行でき、雑音補償と称され、信号パルス15に関する伝播時間の測定のための基準として使用されるのが、SWイベント65ではなく、即ち信号パルス15の前側即ち立ち上がりの横腹とSW閾値31との交点(図5f)ではない更なる手段により、距離測定の精度を更に改善させることができる。むしろ雑音補償においては、SWイベント65の領域において雑音の外挿が実行され、それにより雑音関数が得られ、引き続いて前側の横腹の領域において、振幅関数29から局所的に差し引かれる。このやり方で信号パルス15の領域において雑音が取り除かれた振幅関数29において、信号パルス15の前側又は立ち上がりの横腹の外挿により、ゼロ線即ち雑音の平均値との交点を決定することが、今や可能である。次いで、この交点が有意などん底として機能し、これにもとづいて対象物の距離が計算される。この雑音補償は、信号パルス15の後ろ側又は立ち下がりの横腹においても実行できる。
【0133】
距離の計算は、それぞれの放射パルス13(図1)の送信、特にはその前側の横腹から、前記有意などん底まで、経過する時間期間を中央測定クロック43(図1)により発せられこの目的のためのカウンタを使用してカウントされるクロック・パルス又はサイクル・パルスの数により測定することで、行われる。次いで、送信された放射パルス13と受信された信号パルス15との間で経過した時間期間を、これらサイクル・パルスの既知の幅及び周波数から決定することができ、対応する対象物の距離を、光の速度を使用して計算することができる。
【0134】
以下は、この点においてあくまで例として挙げられ、これにより本発明による測定方法を実行できる本発明によるセンサの考えられる構成において提供される。
【0135】
本発明によるセンサは、受信チャネルを有する。放射光の波長が905nmであるパルス・レーザ・ダイオードが、電磁放射の送信器として使用される。送信される放射パルスのパルス幅は、約5nsになる。出力は、40Wになる。係数80のAPDが、受信ダイオードとして使用される。静電結合を有する広帯域の増幅器が、増幅器として使用される。
【0136】
パルスの繰返し速度は10kHzであり、従って直接連続する2つの送信放射パルス間の時間は、0.1msになる。
【0137】
上記構成を使用し、50mmの収束光学系の直径を有し、距離を測定しなければならない目標対象物の反射率が約5%であり、典型的な日光及び典型的な大気による減衰を考慮したときの最初に説明したイベント測定における範囲として、約82mがもたらされる。
【0138】
例えば感度を値8だけ高めなければならない場合、64個の個々の測定を1つの測定へと平均化しなければならない。9NEPの信号が、安全な検出のための最小信号であると仮定する。平均化の後に8倍小さい信号を安全に検出できるために、関連のHW閾値を、4.5NEPから約0.56NEPまで小さくしなければならないであろう。0.56NEPにおいて、雑音パルスを検出する確率は、0NEPにおける0.5に対して、約0.287である。これらの値を対応する2項分布に取り入れるならば、SW振幅σ=3.62がもたらされる。このプロセスにおけるSW振幅についての値の範囲は、0〜64であり、実際、64イベントにおいて考えられる結果に沿っている。平均値は、18.37にある。今やソフトウェア範囲、即ちSW振幅において安全な測定を達成するために、SW閾値は既に示したように35に設定されなければならない。
【0139】
係数Eでの感度の向上は、係数E1/2でだけ範囲の増大に入れられ、更に例えば大気による減衰など、現実において生じる他の影響ゆえの減少が考慮に入れられるため、約220mの範囲が、このセンサの設計において達成されるであろう。
【0140】
受信器が約200MHz帯域幅及び3次の低域通過を有するとき、約6nsの平均幅を有する約100個の雑音パルスの平均が、この220mの経路において検出されるであろう。
【0141】
従って、個々の測定のそれぞれは、イベント・リストとしてICメモリに保存された約100個のアップ・イベント及び約100個のダウン・イベントで構成されるであろう。保存すべき最大の数が2バイトに適合するため、200×2バイトがメモリ・サイズとして充分であろう。従って、400バイトのサイズのメモリが、ICコンポーネントについて充分である。
【0142】
SW振幅は、全体で約12,800個のイベントで構成される平均化した個々の測定の積分により生じる。従って、カウント周波数が1.5GHzであるカウンタが使用される場合、時間パターン内の時間窓は、0.1mの距離の差を表す。220mの距離について、2,200個の時間パターン位置、即ち時間パターン・メモリ内のメモリ・セルが、必要とされるであろう。従って、各時間パターン位置が、平均でおおよそ2.9回の「+1」及び2.9回の「−1」で注入されるであろう。この注入の統計学的変動が、実際の注入数を生む。必要とされるメモリ・サイズは、2,200バイトになる。
【0143】
64*0.1ms=6.4msが、測定時間としてもたらされ、これにより156Hzの測定速度を表すことができる。
【0144】
本発明による方法に従って機能する本発明によるセンサは、8の感度の向上及び約81/2≒2.8の範囲の増大をイベント測定に対して達成しつつ、約100個の雑音及び信号パルスで構成されるこの量のパルスの測定を、うまく処理し、結果を距離へと処理する。
【0145】
なによりもまず劇的な感度の向上、及び事実上無制限な複数エコー能力、並びに本発明により利用可能にされる対象目標物の構成に応じて変形されたパルスのパルス形状分析の可能性が、従来は実現されていなかった多数の新規な適用可能性を切り開く。
【0146】
このように、例えばより高い感度ゆえ、送信器の素子としてレーザ・ダイオードの代わりにLEDを使用することで、感度を失うことなく送信器側の光学的性能を軽減することができる。あるいは、人間の眼に可視である範囲に位置する電磁放射の送信のために設計できるパルス状動作のCWレーザ・ダイオードを、送信器の素子として使用することができる。これらの手段は、センサの製造におけるコストにかなりの低減をもたらすことができる。
【0147】
同様に製造コストを減らすことができる代案として可能な手段又は追加として可能な手段は、受信器側において受信器の素子としてPINダイオードを使用することにある。APD型のダイオードに代えて使用することができる。
【0148】
更に、電力消費が低減されてなるセンサを実現できる。本発明は、特には、例えば約5Vといった比較的低い動作電圧に対応できるセンサの製造を可能にする。
【0149】
本発明において達成できる感度の向上を好都合なやり方で利用する更なる可能性は、例えば受信器側の光学表面を小さくすることで、センサの光学デバイスをより小さくすることにある。このやり方で、本発明により得られた感度の向上が、通常のサイズの光学デバイスにもとづくセンサの元の性能を維持しつつ、センサをより小さくするために利用される。
【0150】
従来のセンサにおいては、この種の手段が、それらが多少なりとも実現される範囲において、少なくとも範囲の劇的な減少という結果を有するのに対し、それらの手段が本発明との関連において実施されるときには、それらの手段により生じる範囲の喪失を、本発明により達成できる感度の向上により少なくとも補償できるため、範囲が損なわれることがない。
【0151】
更に、距離測定の特定の用途が、本発明によりのみ可能になり、あるいは少なくとも本発明によりはるかに容易に実行できるようになる。
【0152】
例えば、汚染された大気における距離の測定、又はセンサの光学表面が汚損した状態での距離測定について、ここで触れておかねばならない。大気の汚染は、例えば霧により生じうる。本発明によるセンサは、霧を高い感度及び無制限の複数エコー能力並びにパルス形状分析の可能性ゆえに検出可能なだけでなく、受信した信号パルスの形状の評価という本発明による可能性ゆえに、霧の特徴であるパルスの形状を認識できるため、霧検出器として機能可能である。
【0153】
更に、本発明は、広くスキャナとの組み合わせにおいて使用可能である。即ち、個々の放射パルスが1つ以上のスキャン平面において異なる角度方向で順次に送信され、反射された信号パルスがそれらの伝播時間及び角度方向に関して送信された各放射パルスについて評価されるスキャナにおいて使用可能である。スキャン周波数が低くなると、即ち本発明を利用するセンサのそれぞれの構成要素がより低速で旋回すると、スキャナが少なくともほぼ同じ方向をより長く「注目」し、従って同じ対象物を「標的とする」ことができるため、平均化深さをより大きく選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】本発明の一実施形態による距離測定のための装置の概略図。
【図2a】信号なしの場合の測定例における、アナログ測定値そのもの。
【図2b】同図aのアナログ測定値から導出される論理測定値。
【図2c】同図bの論理測定値から導出される個々の測定。
【図3a】信号なしの場合の10個の個々の測定例における、10個の個々の測定そのもの。
【図3b】同図aの10個の個々の測定の平均化。
【図3c】同図bの平均化からの積分により導出されるソフトウェア振幅。
【図4a】図3に比べて拡大された縮尺における、複数の個々の測定の平均化のソフトウェア振幅(同図b)への積分の一例。
【図4b】図3に比べて拡大された縮尺で、複数の個々の測定の平均化(同図a)のソフトウェア振幅への積分の一例。
【図5a】信号ありの場合の測定例における、雑音なしの信号そのもの。
【図5b】雑音及び信号を含むアナログ測定値。
【図5c】ただ1つの個々の測定に関するソフトウェア振幅。
【図5d】10個の個々の測定の平均化及び積分により割り出されるソフトウェア振幅。
【図5e】100個の個々の測定の平均化及び積分により割り出されるソフトウェア振幅。
【図5f】1,000個の個々の測定の平均化及び積分により割り出されるソフトウェア振幅。
【符号の説明】
【0155】
11 送信器
13 送信された放射
15 信号パルス
17 受信器
19 対象物
21 受信器の閾値、HW閾値
23 論理測定値の論理パルス
25 メモリ
27 メモリ・システム、時間パターン・メモリ
29 振幅関数、SW振幅
31 検出閾値、SW閾値
33 個々の測定の時点、イベント
35 増幅器
37 アナログ受信信号、アナログ測定値
39 閾値を有する装置、比較器
41 制御及び評価装置
43 クロック、測定クロック
45 ICコンポーネント
47 マイクロプロセッサ
49 インターフェイス
51 カバー
53 光送信システム
55 光受信システム
57 シフト・レジスタ・マルチプレクサ
59 インターフェイス
61 受信ダイオード
63 プロセッサ・システム
65 SWイベント
67 カウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
距離測定の方法であって、
パルス状の電磁放射(13)が少なくとも1つの送信器(11)を使用して送信され、
反射された信号パルス(15)が少なくとも1つの受信器(17)を使用して検出され、かつ
前記送信放射パルス(13)が反射される対象物(19)からの距離が、パルスの伝播時間を決定することにより測定されるものにおいて、
雑音が受信器(17)を使用して測定され、
雑音の内側に位置する前記受信器(17)の少なくとも1つの閾値を通過する時点(33)が割り出され、かつ
前記信号パルス(15)により引き起こされる雑音の変化が、それぞれ特定の時点(33)を含む複数の個々の測定を平均することにより検出されること、
を特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、個々の測定が送信放射パルス(13)のそれぞれに関し生成されることを特徴とするもの。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、個々の測定の生成及び平均化、並びに雑音の変化の検出が、ソフトウェアにより支援された評価方法により行われることを特徴とするもの。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法において、論理パルス(23)の並びが、雑音の内側に位置する前記受信器(17)の閾値(21)により、雑音パルス及び/又は信号パルス(15)により変化させられた雑音パルスを含むアナログ受信信号(37)から生成され、個々の測定が、この並びから導出されることを特徴とするもの。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、論理パルス(23)の横腹が、個々の測定の時点(33)として使用されることを特徴とするもの。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法のおいて、前記個々の測定の時点(33)が、少なくとも1つのメモリ(25、27)に導入されることを特徴とするもの。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法において、前記個々の測定の時点(33)が、まずメモリ(25)、特にICコンポーネント(45)のメモリに中間的に保存され、次いで更なるメモリ(27)、特に時間パターン・メモリへと移され、前記時点(33)が前記更なるメモリ(27)に、それらのそれぞれの時間情報を考慮に入れた構成で保存されることを特徴とするもの。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法において、前記個々の測定の平均化が、少なくとも1つの時間パターン・メモリ(27)において実行され、好ましくは同じ時間パターン・メモリが、平均化される全ての個々の測定に使用され、時間パターン・メモリ(27)の対応するメモリ・セルが、立ち上がりのパルス横腹の場合に値nだけ増やされ、立ち下がりの横腹の場合に値nだけ減らされ、あるいはこの反対であり、好ましくはnについて値1が使用されることを特徴とするもの。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法において、測定時間が複数の連続する時間窓へと分割される時間パターンが、前記個々の測定の平均化において使用され、少なくとも1つの時間パターン・メモリ(25、27)の1つのメモリ・セルが、好ましくは各時間窓に関連付けられていることを特徴とするもの。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記受信器(17)の閾値(21)の通過の回数が、前記平均化において各時間窓について、特には正しい符号をともなってカウント又は平均化されることを特徴とするもの。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の方法において、前記平均化において、前記受信器(17)の閾値(21)が超えられた時点(33)と前記受信器(17)の閾値(21)が下まわられた時点(33)との間の区別がなされ、好ましくは、超えられた時点(33)が正として評価され、下まわられた時点(33)が負として評価され、あるいはこの逆であることを特徴とするもの。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の方法において、前記平均値が、前記個々の測定の平均化に引き続いて振幅関数(29)へと積分されることを特徴とするもの。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記振幅関数(29)の帯域幅が、平均化が好ましくはいずれの場合も振幅関数(29)において、所定の数の連続する時間窓にわたって実行されることで、少なくされることを特徴とするもの。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の方法において、前記信号パルス(15)により引き起こされた雑音の変化を検出するため、検出閾値(31)が前記振幅関数(29)へと適用されることを特徴とするもの。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、それぞれ関係する対象物の距離が、信号パルス(15)について振幅関数(29)において、前記検出閾値(31)が通過された少なくとも1つの時点(65)にもとづいて割り出されることを特徴とするもの。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の方法において、前記検出閾値(31)が、前記受信器(17)の閾値(21)が4.5NEPの値に対して減じられる係数に依存して設定されることを特徴とするもの。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記検出閾値(31)が、前記係数を含む計算詳細から計算されることを特徴とするもの。
【請求項18】
請求項12〜17のいずれかに記載の方法において、前記信号パルス(15)のどん底の割り出しのため振幅関数(29)において、いずれの場合も、前記信号パルス(15)の立ち上がりの横腹及び/又は立ち下がりの横腹の領域において、雑音の外挿が実行され、このプロセスにおいて得られた雑音関数が、前記振幅関数(29)から差し引かれ、内挿されたパルス横腹の雑音の平均値との交点が、前記どん底として割り出され、対象物の距離が前記どん底にもとづいて割り出されることを特徴とするもの。
【請求項19】
請求項14〜18のいずれかに記載の方法において、信号パルス(15)の形状が、前記振幅関数(29)において評価されることを特徴とするもの。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載の方法において、前記個々の測定の平均化がパケット的に行われ、パケット平均値の形成のため、合算がいずれの場合も多数の単一の個々の測定により順次に実行され、除算が前記多数の個々の測定により行われることを特徴とするもの。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、対象物の距離が、ただ1つのパケット平均値から割り出されることを特徴とするもの。
【請求項22】
請求項20に記載の方法において、平均化が複数のパケットについて実行され、対象物の距離が、ここで形成された平均値から割り出されることを特徴とするもの。
【請求項23】
請求項24〜32のいずれかに記載の装置が使用されることを特徴とする請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
パルスの伝播時間を決定することにより距離を測定するための装置であって、
パルス状の電磁放射(13)を送信するための少なくとも1つの送信器(11)と、反射される信号パルス(15)を検出するための少なくとも1つの受信器(17)とを有するものにおいて、
前記受信器(17)が、アナログ受信信号(37)の生成のための増幅器(35)と、雑音の内側に位置する少なくとも1つの閾値(21)を有していて、該閾値(21)により前記アナログ受信信号(37)から論理パルス(23)の並びを生成することができる装置(39)とを有すること、
評価装置(41)であって、論理パルス(23)の横腹に対応する時点(33)から送信された複数の放射パルス(13)についてそれぞれの個々の測定を生成することができるものが、前記受信器(17)に組み合わされていること、及び
それぞれ割り出された時点(33)を含む個々の測定の平均化が、前記信号パルス(15)により引き起こされる雑音の変化を検出するために実行できること、
を特徴とする装置。
【請求項25】
請求項24に記載の装置において、前記雑音の内側に位置する閾値(21)を有する装置が、少なくとも1つの比較器(39)又は少なくとも1つの制限増幅器を有することを特徴とするもの。
【請求項26】
請求項24又は25に記載の装置において、既知の周波数を有する既知の幅のサイクル・パルスの放射のためのクロック(43)、及び放射パルス(13)の送信から論理パルス(23)の横腹に対応する時点(33)までにそれぞれ経過する時間期間の割り出しのために或る時間期間の間に放射されたサイクル・パルスを提供するカウンタを特徴とするもの。
【請求項27】
請求項24〜26のいずれかに記載の装置において、測定時間が、複数の連続する時間窓へと分割され、前記評価装置(41)が、そのメモリ・セルがそれぞれ時間窓に組み合わせられている少なくとも1つの時間パターン・メモリ(27)を有することを特徴とするもの。
【請求項28】
請求項27に記載の装置において、各メモリ・セルの値が、対応する時間窓へと包含されるパルスの横腹により可変であり、好ましくは各メモリ・セルを、立ち上がりのパルス横腹により値nだけ増やすことができ、立ち下がりの横腹の場合に値nだけ減らすことができ、あるいはこの反対であり、好ましくはnについて値1がもたらされることを特徴とするもの。
【請求項29】
請求項24〜28のいずれかに記載の装置において、個々の測定の生成及び平均化、並びに雑音の変化の検出を、ソフトウェアにより支援された評価方法により実行できることを特徴とするもの。
【請求項30】
請求項24〜29のいずれかに記載の装置において、前記評価装置(41)が、少なくとも個々の測定の生成を実行することができる少なくとも1つのICコンポーネント(45)を有することを特徴とするもの。
【請求項31】
請求項30に記載の装置において、前記評価ユニット(41)が、少なくとも1つのマイクロプロセッサ(47)、及び生成された個々の測定を前記ICコンポーネント(45)から前記マイクロプロセッサ(47)へと送信するための少なくとも1つのインターフェイス(49)を有しており、少なくとも個々の測定の平均化及び雑音の変化の検出が、前記マイクロプロセッサ(47)及び少なくとも1つのメモリ(27)により実行可能であることを特徴とするもの。
【請求項32】
請求項1〜22のいずれかに記載の方法に従って動作可能であることを特徴とする請求項24〜31のいずれかに記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図2c】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図3c】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図5c】
image rotate

【図5d】
image rotate

【図5e】
image rotate

【図5f】
image rotate


【公表番号】特表2007−507693(P2007−507693A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530094(P2006−530094)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011111
【国際公開番号】WO2005/036203
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(506115569)トリプル−イン ホールディング アーゲー (2)
【氏名又は名称原語表記】TRIPLE−IN HOLDING AG
【住所又は居所原語表記】Baarerstrasse 75, CH−6300 Zug, Switzerland
【Fターム(参考)】