説明

路肩集水ブロック

【課題】歩車道境界部に水たまりが生じにくく、ガタツキや破損のおそれがなく、強度も高く、歩道領域、車道領域との結着性が高く、歩道領域、車道領域の両方から流れてくる雨水を効率的に排水溝に導出でき、また交差点における歩道領域と車道領域の湾曲境界においても設置可能な構造の路肩集水ブロックを提供する。
【解決手段】一方が車道領域、他方が歩道領域に接する歩車道境界部に設置される路肩集水ブロック。平板状のブロック本体1の車道領域側には、車道領域の舗装材11の排水勾配に連続する勾配を有する車道連設部2を設け、ブロック本体1の歩道領域側には、歩道領域に設置される歩車道境界ブロック13が乗る歩車道境界ブロック載置部3を設け、歩車道境界ブロック載置部3と車道連設部2との境界部には、上部に透水孔を設けた排水管4を、その排水管4の上部が車道連設部2の勾配の最下端部とほぼ同じ高さになるように一体に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点や駐車場の出入り口などで、車道と歩道の境界を段差なく接続するブロックに関し、特に、車道側の中央から路肩に向かう集水用傾斜面(エプロン部)と歩道側の集水用傾斜面の両方によって集水される雨水が、車道と歩道の境界部に集まって水たまりや水浸しになるのを防ぐ、集水・排水機能を持たせた路肩集水ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車道(通常は舗装道路)の路面と歩道の境界には、歩車道境界ブロックが設置され、歩車道の区画と、車道の路肩の崩壊防止を図っている。
【0003】
また、歩道および車道に降った雨水を効率的に排水するために、エプロン部一体型の路肩集水ブロックが用いられることが通常である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、エプロン部を一体成型した歩車道境界ブロックは、ブロックの上面が排水路となり、歩行や自転車等の通過の際に泥はねを生じさせるため、特許文献2のような上面が開放した凹溝状の集水路を設けたエプロン部一体成型の路肩集水ブロックが開発された。そして、この特許文献2に記載された路肩集水ブロックにおいては、凹溝状の集水路に、上面に雨水通過孔を開設したリッドを嵌合し、集水路の上部を覆うようにしている。
【0005】
一方、歩道を併設した道路が別の道路と交差する場所、すなわち交差点においては、一方の歩道がそこと交差する車道によって一旦途切れ、歩道の端部は車道上の横断歩道とつながる。このような場所では、人のほか、自転車や車椅子も通るので、縁石のような段差や突起物(障害物)は設置されず、歩道側と車道側をなだらかにつなぐ路肩集水ブロックが設置されるようになってきている。この路肩集水ブロックは、通常、水たまり解消のため、歩道側路面と車道側路面(エプロン部)に降る雨水を側溝ブロックに集めるための集水路を有している。
【0006】
なお、路肩集水ブロックは、交差点のみならず、車道側から歩道側の駐車場、店舗等に車両や車椅子を円滑に通すための車両乗り入れ箇所にも設置されることがある。
【0007】
例えば特許文献3には、車道側に凸に湾曲する湾曲境界を介して歩道領域と車道領域(エプロン部)が互いに区分されており、その湾曲境界が、車両の乗り上げ部を上部側に有しかつ長手方向に沿って湾曲した歩車道境界ブロックを連続的に接続した状態で舗装路面に埋設することによって構成されている歩道巻き込み部において、前記湾曲境界を構成する各境界ブロックは、長手方向に貫通する排水路を断面内部に有する横断面下半部分をなす普通コンクリート層と、この排水路内に外部水を導く吸水機能を有する横断面上半部分をなすポーラスコンクリート層からなるブロック本体よりなり、当該湾曲境界を構成する各境界ブロックのうちの最も低位置に設置される境界ブロックの排水路が近隣の集水桝に接続されている歩道巻き込み部の排水構造が開示されている。
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3024532号公報
【特許文献2】特開2001−279607号公報
【特許文献3】特開2004−60341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前掲の特許文献2においては、凹溝状の集水路に、雨水通過孔を開設したリッドを嵌合しているので、集水路とリッドとの製造誤差に基づくガタツキや離脱、破損という問題がある。
また、前掲の特許文献3においては、普通コンクリート層とポーラスコンクリート層からなるブロック本体の上面に、普通コンクリート層の上部に形成されている排水路内への水分の取り込みを確実にするために、スリット状の導水孔が形成されているが、このスリット状の導水孔も、吸水機能を持たせたポーラスコンクリート層も排水能力が低いとともに目詰まりしやすく、降雨時に車道側と歩道側から流れてきた水により水たまりが生じやすいという問題がある。さらに、ブロック本体上面側がポーラスコンクリート層であり、普通コンクリート層よりも強度的に弱いので、長期間のうちに欠けたり摩耗したりして、寿命が短いという問題もある。
そこで本発明は、歩道領域、車道領域の両方から流れてくる雨水を効率的に排水溝に導出でき、水たまりが生じにくく、また、ガタツキや破損のおそれがなく、強度も高い構造の路肩集水ブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明の路肩集水ブロックは、一方が車道領域、他方が歩道領域に接する歩車道境界部に設置される路肩集水ブロックであって、平板状のブロック本体の前記車道領域側には、車道領域の排水勾配に連続する勾配を有する車道連設部を設け、前記ブロック本体の歩道領域側には、歩道領域に設置される歩車道境界ブロックが乗る歩車道境界ブロック載置部を設け、前記歩車道境界ブロック載置部と前記車道連設部との境界部には、上部に透水孔を設けた排水管を、その排水管の上部が前記車道連設部の勾配の最下端部とほぼ同じ高さになるように一体に設けたことを特徴とする。
【0011】
本発明においては、車道領域、歩道領域の共通基礎上に、歩車道境界部形成のブロックとして直線状、湾曲状に並べて設置する。車道側には、ブロック本体の車道連設部が並ぶので、車道の舗装材の排水勾配の下り側が車道連設部の端部とつながるように車道側を施工する。歩道側には、歩車道境界ブロックが歩車道境界ブロック載置部の上に乗るように施工する。歩車道境界ブロックの先端部は、排水管の側壁に接する。施工完了状態では、車道側の舗装面と車道連設部の上面とがつながり、最も下ったところに排水管の上部が位置する。また、歩車道境界ブロックの上面の勾配が最も下ったところに同じく排水管の上部が位置することになる。これにより、車道側の降雨と、歩道側の降雨の両方が、排水管の上部の透水孔に導かれ、排水管を通って地中に埋設されている排水溝(暗渠)に集水される。このため、排水能力が高く、水たまりが生じにくい。排水管は、ブロック本体と一体に設けられているので、排水管のガタツキや破損、離脱のおそれがない。
【0012】
前記ブロック本体をコンクリート製とし、前記排水管は鋼管または鋼製U字溝に鋼製蓋板を固着したもので形成し、ブロック本体内部のアンカー筋と溶接にて一体化することにより、排水管の強度を向上させることができ、排水管がブロック本体と分離したり割れたりすることを防止することができる。
【0013】
直線状に隣接するブロック本体の接合部を、連結方向の端部に形成されたピン係合穴と連結ピンとで接合する構成とすることにより、連結設置時のブロック本体の水平方向の位置決めを正確に行い、設置後の位置ずれを防止することができる。
【0014】
前記歩車道境界ブロック載置部上に乗る歩車道境界ブロックを前記ブロック本体と一体に形成することにより、現場施工時に別体の歩車道境界ブロックを歩車道境界ブロック載置部に載置する手間が省け、工期が短縮する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、平板状のブロック本体の前記車道領域側には、車道領域の排水勾配に連続する勾配を有する車道連設部を設け、前記ブロック本体の歩道領域側には、歩道領域に設置される歩車道境界ブロックが乗る歩車道境界ブロック載置部を設け、前記歩車道境界ブロック載置部と前記車道連設部との境界部には、上部に透水孔を設けた排水管を、その排水管の上部が前記車道連設部の勾配の最下端部とほぼ同じ高さになるように一体に設けたことにより、歩道領域、車道領域の両方から流れてくる雨水を効率的に排水溝に導出でき、水たまりが生じにくく、また、ガタツキや破損のおそれがなく、強度も高い構造の路肩集水ブロックを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図6を参照して具体的に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る路肩集水ブロックの正面図、図2はその平面図である。これらの図において、路肩集水ブロックのブロック本体1は、車道連設部2と、歩車道境界ブロック載置部3と、排水管4とを備えている。
【0017】
ブロック本体1はコンクリート製であり、内部に鉄筋(図示せず)が配筋されている。連結方向の端部には、ピン係合穴5と、モルタル結着用の溝6が形成されている。
【0018】
車道連設部2は、車道側の舗装面と上面がつながるものであり、端部から他方に向けて下り勾配が形成されている。ブロック本体1の他端側は水平面状にカットされていてそこに歩車道境界ブロック載置部3が形成されている。そして、車道連設部2と歩車道境界ブロック載置部3の中間部には角柱状の鋼管または鋼製U字溝に鋼製蓋板を固着したものからなる排水管4が設けられている。この排水管4には、底部と側部にアンカー筋7が溶接により固定されており、ブロック本体1の製造時に、アンカー筋7が埋設されるようにし、ブロック本体1と一体化されている。
【0019】
排水管4の上面には透水孔4aが設けられており、また上面での滑り止めのために、縞鋼板が用いられている。この排水管4は、錆止めのために、溶融亜鉛仕上げをすることで寿命を長くすることができる。
【0020】
なお、このブロック本体1は重量物であるので、施工時に重機で吊り上げることができるように、吊り用インサート8が埋設されている。
【0021】
以上の構成の路肩集水ブロックの施工状態を図3〜図6に示す。図3は施工状態を示す断面図、図4は直線部の施工例を示す斜視図、図5は湾曲部の施工例を示す斜視図、図6は湾曲部における路肩集水ブロック同士の接合部の断面図である。
【0022】
本路肩集水ブロックの施工に際しては、まず、車道領域、歩道領域の共通基礎10上に、歩車道境界部形成のブロックとして設置する。車道側には、ブロック本体1の車道連設部2が並ぶようにし、車道の舗装材11の排水勾配の下り側が車道連設部2の端部とつながるように車道側を施工する。歩道側には、歩道用ブロック12の端部の歩車道境界ブロック13が歩車道境界ブロック載置部3の上に乗るように施工する。歩車道境界ブロック13の先端部は、排水管4の側壁に接する。施工完了状態では、車道側の舗装材11の面と車道連設部2の上面とがつながり、最も下ったところに排水管4の上部が位置するようになる。また、歩車道境界ブロック13の上面の勾配が最も下ったところに、排水管4の上部が位置することになる。これにより、車道側の降雨と、歩道側の降雨の両方が、排水管4の上部の透水孔4aに導かれ、排水管4の内部の排水路を通って地中に埋設されている排水溝(図示せず)に集水される。
【0023】
ここで、図4に示すように、歩車道の境界が直線状である箇所では、ブロック本体1は連結方向の端部に形成されたピン係合穴5と両側が円錐台形状の連結ピン(図示せず)とで接合する構成とすることにより、連結設置時のブロック本体1の水平方向の位置決めを正確に行い、設置後の位置ずれを防止することができる。なお、ブロック本体1どうしの接合部の目地は、モルタルを用いて埋めるようにする。
【0024】
図5に示すように、歩車道の境界が湾曲状である箇所では、ブロック本体1の幅は直線部用のものよりも短いものとし、隣接するブロック本体1の接合部を、扇形の現場打ちコンクリート部14を介して接合する。この場合、排水管4の接合部には隙間が生じるので、図6に示すように、排水管4の接合部には止水用のパッキン9を用いることにより、湾曲部も、隣接するブロック本体1の排水管4どうしを水漏れすることなく結合することができる。
【0025】
図7は、本発明の他の実施の形態に係る路肩集水ブロックの斜視図である。この実施の形態では、図1〜図6に示した実施の形態における歩車道境界ブロック載置部3上に乗る歩車道境界ブロック13をブロック本体20と一体に形成したものである。その他の構成については、上述した実施の形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
この実施の形態によれば、歩車道境界ブロック13をブロック本体20と一体に形成することにより、現場施工時に別体の歩車道境界ブロックを歩車道境界ブロック載置部に載置する手間が省け、工期が短縮する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、歩道領域、車道領域の両方から流れてくる雨水を効率的に排水溝に導出でき、水たまりが生じにくく、ガタツキや破損のおそれがなく、強度も高く、また交差点における歩道領域と車道領域の湾曲境界においても設置可能な構造の路肩集水ブロックとして、ブロック製造および施工の分野において好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係る路肩集水ブロックの正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る路肩集水ブロックの平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る路肩集水ブロックの施工状態を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る路肩集水ブロックの直線部の施工例を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る路肩集水ブロックの湾曲部の施工例を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る路肩集水ブロックの湾曲部における路肩集水ブロック同士の接合部の断面図である。
【図7】本発明の他の実施の形態に係る路肩集水ブロックの斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ブロック本体
2 車道連設部
3 歩車道境界ブロック載置部
4 排水管
4a 透水孔
5 ピン係合穴
6 モルタル結着用の溝
7 アンカー筋
8 吊り用インサート
9 パッキン
10 共通基礎
11 車道の舗装材
12 歩道用ブロック
13 歩車道境界ブロック
14 現場打ちコンクリート部
20 ブロック本体
21 歩車道境界部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方が車道領域、他方が歩道領域に接する歩車道境界部に設置される路肩集水ブロックであって、平板状のブロック本体の前記車道領域側には、車道領域の排水勾配に連続する勾配を有する車道連設部を設け、前記ブロック本体の歩道領域側には、歩道領域に設置される歩車道境界ブロックが乗る歩車道境界ブロック載置部を設け、前記歩車道境界ブロック載置部と前記車道連設部との境界部には、上部に透水孔を設けた排水管を、その排水管の上部が前記車道連設部の勾配の最下端部とほぼ同じ高さになるように一体に設けたことを特徴とする路肩集水ブロック。
【請求項2】
前記ブロック本体はコンクリート製であり、前記排水管は鋼管または鋼製U字溝に鋼製蓋板を固着したもので形成され、前記排水管は、前記ブロック本体内部のアンカー筋と溶接にて一体化されていることを特徴とする請求項1記載の路肩集水ブロック。
【請求項3】
直線状に隣接するブロック本体の接合部は、連結方向の端部に形成されたピン係合穴と連結ピンとで接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の路肩集水ブロック。
【請求項4】
前記歩車道境界ブロック載置部上に乗る歩車道境界ブロックを前記ブロック本体と一体に形成したことを特徴とする請求項1から3のいずれかの項に記載の路肩集水ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−270359(P2009−270359A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122520(P2008−122520)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000138314)株式会社ヤマウ (15)
【Fターム(参考)】