説明

路車間通信システム、及び車載機

【課題】車両進行方向前方の所定位置までの距離を精度よく求めることができる路車間通信システム、及び車載機を提供する。
【解決手段】本発明の路車間通信システムは、車両進行方向前方の所定位置までの距離情報を、総フレーム数が所定数である複数の送信フレームよりなる第二のダウンリンク情報30に格納するビーコン制御機7を備えた光ビーコン4と、第二のダウンリンク情報30を受信する車載機2を備えている。車載機2は、前記総フレーム数と車両Cの走行速度とに基づいて、第二のダウンリンク情報30を受信する間の車両Cの走行に応じた、前記距離情報を補正するための補正距離を求める補正部21cを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路側に設置された路側通信機と、車両に搭載された車載機との間で双方向通信を行う路車間通信システム、及びこれに用いる車載機に関する。
【背景技術】
【0002】
路車間通信システムを利用した交通情報サービスとして、光ビーコン、電波ビーコン又はFM多重放送を用いたいわゆるVICS(Vehicle Information and Communication System)が既に展開されている。このうち、光ビーコンは近赤外線を通信媒体とした光通信を採用しており、車載機との双方通信が可能となっている。
具体的には、車両を特定するための車両ID等を含むアップリンク情報が車載機からインフラ側の光ビーコンに送信され、逆に、渋滞情報、区間旅行時間情報、及び車線通知情報等を含むダウンリンク情報が光ビーコンから車載機に送信されるようになっている。
【0003】
上記光ビーコンは、道路に配置され、車載機との間で双方向通信を行う投受光器を備えており、この投受光器から、ダウンリンクの切り替え前の第一情報として、車線通知情報(車両ID、車線番号無し)を含む第一のダウンリンク情報を道路のダウンリンク領域に所定の送信周期で常時送信している。ダウンリンク領域を車両が通過すると、その車両に搭載された車載機が第一のダウンリンク情報を受信し、当該車載機は、自己の車両IDを格納したアップリンク情報の送信を開始する。
【0004】
光ビーコンは、前記アップリンク情報を受信すると、車載機に対して、前記車両IDを含む第二のダウンリンク情報の送信を開始し、この第二のダウンリンク情報の送信を所定時間内において可能な限り繰り返す。車載機は、当該第二のダウンリンク情報に、自己の車両IDが格納されていることを確認すると、当該第二のダウンリンク情報が自身に対して送信されていると認識し、当該第二のダウンリンク情報から必要な情報を得ることができる。車載機は、第二のダウンリンク情報に、自己の車両IDが格納されていることを確認するまで、アップリンク情報を繰り返し送信する。
【0005】
例えば図9に示すように、上記光ビーコンの投受光器104では、その直下よりも上流側よりに通信領域Aが設定されている。光ビーコン(光学式車両感知器)の「近赤外線式インタフェース規格」によれば、車両Cに搭載された車載機102からのアップリンク情報を受信するアップリンク領域UAは、図のように、通信領域Aの車両進行方向の上流部分に設定されており、ダウンリンク領域DAは、通信領域A全体と一致するように設定されている。従って、アップリンク領域UAの上流端cは、ダウンリンク領域DAの上流端と一致するとともに、アップリンク領域UAは、ダウンリンク領域DAの上流部分と重複して設定されている。従って、ダウンリンク領域DAの車両進行方向長さは通信領域A全体の同方向長さと一致する。
【0006】
上記従来の光ビーコンを用いた路車間通信システムにおいて、双方通信を利用して車載機102に自己の位置標定を行わせ、停止線の手前で強制停止するように車両を制御したり、ドライバに停止や減速を促す報知を行ったりして、ドライバに対して安全運転支援を行う場合がある。例えば、図9において、通信領域A内の特定位置P(例えば、アップリンク領域UAのほぼ中央)を車両の位置と見立て、当該特定位置から、通信領域Aよりも下流側の所定位置P0(例えば、停止線40)までの距離情報(距離L0)を第二のダウンリンク情報に含ませておく。そしてこの距離L0を含む第二のダウンリンク情報を車載機102に受信させ、車載機102に車両進行方向前方の所定位置P0までの距離L0について認識させるシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−293660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記路車間通信システムにおいて、光ビーコンは、アップリンク情報を受信した後、第二のダウンリンク情報を繰り返し送信するが、車載機2が、繰り返し送信される第二のダウンリンク情報を所定回数目で受信を終える場合がある。この場合、光ビーコンが最初の第二のダウンリンク情報を送信してから車載機102が第二のダウンリンク情報の受信を終えるまでの間に、当該車載機2を搭載した車両は前方に進行することとなる。
【0009】
このため、車載機102が第二のダウンリンク情報を受信して距離情報を取得したときには、当該距離情報には、第二のダウンリンク情報を受信するまでの間に車両が進行することによる誤差が生じ、車両進行方向前方の所定位置までの距離について精度よく求めることができない場合があった。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、車両進行方向前方の所定位置までの距離を精度よく求めることができる路車間通信システム、及び車載機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明は、道路上の所定範囲に設定された通信領域においてアップリンク情報を送信する車載機と、前記通信領域において前記アップリンク情報を受信した後に所定のダウンリンク情報を所定の送信周期で前記車載機に繰り返し送信する光ビーコンと、を備えた路車間通信システムであって、前記光ビーコンは、前記通信領域から車両進行方向前方の所定位置までの距離についての距離情報を、総フレーム数が所定数である複数の送信フレームよりなる前記所定のダウンリンク情報に格納するビーコン制御機を有し、前記車載機は、前記総フレーム数と前記車両の走行速度とに基づいて、前記所定のダウンリンク情報を受信する間の前記車両の走行に応じた、前記距離情報に対する補正距離を求める補正距離演算部を有することを特徴としている。
【0012】
上記構成の路車間通信システムによれば、補正距離演算部が、総フレーム数と車両の走行速度とに基づいて、所定のダウンリンク情報を受信する間の車両の走行に応じた補正距離を求めるので、アップリンク情報の受信に応じて所定のダウンリンク情報の送信が開始されてから、車載機が当該所定のダウンリンク情報の受信を終えるまでの間に車両が進行することによる誤差が距離情報に生じたとしても、前記補正距離によって補正することができ、その結果、車両進行方向前方の所定位置までの距離について精度よく求めることができる。
【0013】
(2)上記路車間通信システムにおいて、車載機は、光ビーコンから前記所定のダウンリンク情報が2回繰り返して送信されれば、規格上、概ね95パーセント以上の確率で、所定のダウンリンク情報を格納した前記複数の送信フレームの全てを受信することができる。
このため、前記補正距離演算部は、前記所定のダウンリンク情報が2回繰り返して送信される間に前記車両が走行した距離を前記補正距離として求めてもよい。
(3)さらに、車載機は、光ビーコンから所定のダウンリンク情報が1回送信されれば、規格上、75パーセント以上の確率で、所定のダウンリンク情報を格納した前記複数の送信フレームの全てを受信することができる。
従って、上記確率が許容できる場合には、前記補正距離演算部は、前記所定のダウンリンク情報が1回送信される間に前記車両が走行した距離を前記補正距離として求めてもよい。
【0014】
(4)1つの所定のダウンリンク情報は、総フレーム数が所定数である複数の送信フレームに格納されて送信されるので、送信フレームの送信間隔と総フレーム数より1つの所定のダウンリンク情報を送信するために必要な時間を求めることができ、そのときの車両の走行速度を考慮することで、1つの所定のダウンリンク情報が送信される間に前記車両が走行する単位補正距離が得られる。
従って、前記補正距離演算部は、前記総フレーム数と前記走行速度とから1つの前記所定のダウンリンク情報が送信される間に前記車両が走行する単位補正距離を求め、前記総フレームに相当するすべての前記送信フレームを受信するために必要な前記所定のダウンリンク情報の必要送信回数を求め、前記単位補正距離と前記必要送信回数とに基づいて前記補正距離を求めることができる。
【0015】
(5)前記必要送信回数は、前記所定のダウンリンク情報の通信品質に基づいて定められることが好ましい。
(6)さらにその通信品質から、送信フレームごとの受信確率が求められる場合には、総フレーム数に相当するすべての送信フレームを受信できる確率を求めることができる。
このため、前記補正距離演算部は、前記通信品質から求められる、前記所定のダウンリンク情報が繰り返し送信されたときの各送信回数に対応する、前記総フレーム数に相当するすべての前記送信フレームを受信できる確率を示す受信確率に基づいて、前記必要送信回数を決定するものであることが好ましい。
この場合、送信フレームの受信確率に応じた適切な必要送信回数を設定することができ、より精度の高い補正距離が得られる。この結果、車両進行方向前方の所定位置までの距離についてより精度よく求めることができる。
【0016】
(7)(8)前記通信品質は、具体的には、前記送信フレーム受信時のビットエラーレートであってもよく、また、受信した前記所定のダウンリンク情報の受信レベルであってもよく、これらを用いることによって、必要送信回数を好適に求めることができる。
【0017】
(9)また、前記車載機が、前記光ビーコンからの前記所定のダウンリンク情報を、前記車両に備えられたワイパ装置によって払拭される前記車両の被払拭部材を通過して受信するように設けられている場合、ワイパ装置の動作によって、被払拭部材が払拭されると、所定のダウンリンク情報が車載機に到達するのを阻害され、補正距離演算部による補正距離の演算が精度よくできないおそれがある。
このため、前記補正距離演算部は、前記ワイパ装置の動作を検知すると、求めた前記補正距離に代えて予め設定された代替値を前記補正距離とするものであることが好ましい。
これにより、ワイパ装置が動作することで、補正距離の演算が精度よくできなかったとしても、精度よく演算できなかった補正距離が距離情報の補正に用いられるのを防止できる。
【0018】
(10)また、前記路側通信機が、前記車両以外の他の車両に搭載された他の車載機が送信するアップリンク情報を受信することで、それまで送信していたダウンリンク情報の送信を中止し、前記他の車載機に応じた所定のダウンリンク情報に切り替えて送信を開始した場合、車載機は、それまで受信していた自己に対する所定のダウンリンク情報とは連続性の無い、前記他の車載機に応じた所定のダウンリンク情報を格納した送信フレームを受信することとなるので、補正距離演算部による補正距離の演算が精度よくできないおそれがある。
従って、前記補正距離演算部は、前記所定のダウンリンク情報を受信する際に当該所定のダウンリンク情報が、自己以外の他の車載機に対応して切り替えられたことを検知すると、求めた前記補正距離に代えて予め設定された代替値を前記補正距離とすることが好ましい。
これにより、他の車載機に応じた所定のダウンリンク情報が送信されることで、補正距離の演算が精度よくできなかったとしても、精度よく演算できなかった補正距離が距離情報の補正に用いられるのを防止できる。
【0019】
(11)また、本発明は、道路上の所定範囲に設定された通信領域においてアップリンク情報を送信するとともに、前記アップリンク情報を受信した光ビーコンから所定の送信周期で繰り返し送信される所定のダウンリンク情報を受信する車載機であって、前記所定のダウンリンク情報は、総フレーム数が所定数である複数の送信フレームにより構成されるとともに、前記通信領域から車両進行方向前方の所定位置までの距離についての距離情報を含んでおり、前記総フレーム数と前記車両の走行速度とに基づいて、前記所定のダウンリンク情報を受信する間の前記車両の走行に応じた、前記距離情報に対する補正距離を求める補正距離演算部を有することを特徴としている。
【0020】
上記構成の車載機によれば、上述のように、ダウンリンク情報を受信するまでの間に車両が進行することによる誤差が生じたとしても、車両進行方向前方の所定位置までの距離について精度よく求めることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明の路車間通信システム、及び車載機によれば、車両進行方向前方の所定位置までの距離を精度よく求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る路車間通信システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】光ビーコンの平面図である。
【図3】光ビーコンの通信領域Aを示す側面図である。
【図4】光ビーコン、及び、これと路車間通信する車載機が搭載された車両の概略構成図である。
【図5】通信領域において光ビーコンのビーコンヘッドと車載機の車載ヘッドとの間で行われる双方向での路車間通信の手順を示す図である。
【図6】切り替え後、光ビーコンから繰り返し送信される第二のダウンリンク情報の態様の一例を示す図である。
【図7】本発明の第二の実施形態に係る路車間通信システムの全体構成を示すブロック図である。
【図8】第二の実施形態による光ビーコンの通信領域を示す側面図である。
【図9】従来の光ビーコンの通信領域を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
〔第一の実施形態〕
〔システムの全体構成〕
図1は、本発明の第一の実施形態に係る路車間通信システムの全体構成を示すブロック図である。
図1に示すように、この路車間通信システムは、インフラ側の交通管制システム1と、道路Rを走行する各車両Cに搭載された車載機2とを備えて構成されている。
交通管制システム1は、管制室に設けられた中央装置3と、道路Rの各所に多数設置された光ビーコン(光学式車両感知器)4とから構成されている。光ビーコン4は、近赤外線を通信媒体とした光通信によって車載機2との間で双方向通信を行う。なお、中央装置3は交通管制室に設けられている。
【0024】
〔光ビーコンの構成〕
光ビーコン4は、電話回線等の通信回線5を介して中央装置3と接続された通信インタフェースである通信部6と、この通信部6が接続されたビーコン制御機7と、このビーコン制御機7のセンサ用インタフェースに接続された複数(図例では4つ)のビーコンヘッド(投受光器)8とを備えている。
各ビーコンヘッド8は、筐体の内部に発光ダイオード(LED)10、フォトセンサ(受信部)11を収納して構成されている(図3参照)。このうち、LED10は、近赤外線よりなるダウンリンク情報を後述する通信領域Aに発光し、フォトセンサ11は、車載機2からの近赤外線よりなるアップリンク情報を受光する。後述のダウンリンク領域DA及びアップリンク領域UAは、これらLED10及びフォトセンサ11を調整することによって、道路上の所定の範囲に設定される。
【0025】
図2は、上記光ビーコン4の平面図である。
図2に示すように、本実施形態の光ビーコン4は、同じ方向の複数(図例では4つ)の車線R1〜R4を有する道路Rに設置されており、各車線R1〜R4に対応して設けられた前記複数のビーコンヘッド8と、これらビーコンヘッド8を一括制御する制御部である一台の前記ビーコン制御機7とを備えている。
上記ビーコン制御機7は、CPU、メモリ(RAM)及び記憶装置(ROM)を有するプログラマブルなマイコンよりなり、通信部6(図1)による中央装置3との双方向通信と、ビーコンヘッド8による車載機2との路車間通信を行う通信制御部としての機能を有する。なお、このビーコン制御機7による路車間通信の内容については後述する。
【0026】
ビーコン制御機7は、道路脇に立設した支柱13に設置されており、各ビーコンヘッド8は、支柱12から道路R側に水平に架設した架設バー13に取り付けられ、道路Rの各車線R1〜R4の直上に配置されている。
各ビーコンヘッド8のLED10は、各車線R1〜R4の直下よりも車両進行方向の上流側に向けて近赤外線を発光しており、これにより、車載機2との間で路車間通信を行うための通信領域Aが当該ヘッド8の上流側に設定されている。
【0027】
〔通信領域について〕
図3は、光ビーコン4の通信領域Aを示す側面図である。なお、車両Cは、図中矢印の方向に進行する。図3において、光ビーコン4による通信領域Aは、後述する車載機2の車載ヘッド20(図4参照)がダウンリンク情報を受信することができるダウンリンク領域(図3において実線のハッチングを設けた領域)DAと、光ビーコン4のビーコンヘッド8がアップリンク情報を受信することができるアップリンク領域(図3において破線のハッチングを設けた領域)UAとからなる。
【0028】
光ビーコン(光学式車両感知器)4の「近赤外線式インタフェース規格」では、アップリンク領域は、ダウンリンク領域の車両進行方向の上流部分と重複し、ダウンリンク領域の上流端とアップリンク領域の上流端とが互いに一致するものと規定されている。このため、通信領域A全体の車両進行方向長さはダウンリンク領域の同方向長さと一致するものとされている。
【0029】
上記規格に対して、本実施形態のダウンリンク領域DAは、ビーコンヘッド8と、道路R上に設定された位置d1と、位置d2とを結ぶ領域に設定され、アップリンク領域UAは、ビーコンヘッド8と、道路R上に設定された位置u1と、位置u2とを結ぶ領域に設定されており、ダウンリンク領域DAの上流端を示す点d2は、アップリンク領域UAの上流端を示す点u2よりも上流側(図3中の右側)となっている。また、ダウンリンク領域DAの車両進行方向の長さは、通信領域A全体の同方向の長さと一致している。
このため、アップリンク領域UAは、ダウンリンク領域DAに重複して設定されるとともに、ダウンリンク領域DAのみで構成される領域が、アップリンク領域UAの下流側だけでなく、同領域UAの上流側にも存在している。
【0030】
〔車載機及び車両の構成〕
図4は、光ビーコン4、及び、これと路車間通信する車載機2が搭載された車両Cの概略構成図である。
図4に示すように、この車両Cは、ドライバの搭乗席(図示せず)を有する車体15と、この車体15に搭載された上述の車載機2と、車両Cの各部を統合制御する電子制御装置(ECU)16と、車体15を駆動するエンジン17と、車体15を制動するブレーキ装置18と、車両Cの現時の速度を常時検出している速度検出器19とを備えている。ECU16は、ドライバのアクセル操作に基づくエンジン17の駆動制御や、ブレーキ操作に基づく制動制御等、車両Cに対する各種の制御を行う。
【0031】
車載機2は、車両Cのダッシュボード(図示せず)上に設置された車載ヘッド20と、車載ヘッド20が接続された車載コンピュータ21と、搭乗席のドライバに対するヒューマンインタフェースとしてのディスプレイ22及びスピーカ装置23とを備えている。
上記車載ヘッド20は、光ビーコンのビーコンヘッド8と同様に、発光ダイオード(LED)とフォトセンサとを備えた投受光部20aと、これを制御するための制御部20bとを備えている(図示せず)。投受光部20aが備えているLEDは、近赤外線よりなるアップリンク情報を発光し、フォトセンサは、通信領域Aに発光された近赤外線よりなるダウンリンク情報を受光する。
制御部20bは、車載コンピュータ21との間で、送受信される情報についての授受を行い、投受光部20aに、これら情報について、前記アップリンク情報及びダウンリンク情報の送受信を行わせる。なお、これら投受光部20a及び制御部20bのより具体的な機能については、後に詳述する。
【0032】
車載コンピュータ21は、CPU、メモリ(RAM)及び記憶装置(ROM)を有するマイコンによって構成されており、車載ヘッド20による光ビーコン4との路車間通信の制御処理を行う。また、車載コンピュータ21は、車両CのECU16と接続されており、車両Cに関する必要な情報を取得することができる。
車載コンピュータ21は、所定の各機能を実行するプログラムを記憶装置に格納しており、このプログラムが実行する機能部としてフレーム数取得部21a、速度取得部21b、補正部21c、及び支援制御部21dを備えている。
【0033】
車載コンピュータ21のフレーム数取得部21aは、後述する第二のダウンリンク情報を構成する送信フレームの総フレーム数を取得する機能を有している。速度取得部21bは、ECU16を介して速度検出器19が検出する車両Cの現時の走行速度を取得する機能を有している。補正部21cは、後述する補正距離を求める機能を有している。
支援制御部21dは、車載機2が受信したダウンリンク情報に含まれる支援情報に基づいてドライバに対する安全運転支援の制御を行う。なお、これら、フレーム数取得部21a、速度取得部21b、補正部21c、及び支援制御部21dの機能については後に詳述する。
【0034】
〔路車間通信の態様〕
図5は、通信領域Aにおいて光ビーコン4のビーコンヘッド8と車載機2の車載ヘッド20との間で行われる双方向での路車間通信の手順を示している。以下、図5を参照しつつ、この路車間通信の態様について説明する。
まず、光ビーコン4のビーコン制御機7は、各車線R1〜R4に対応する各ビーコンヘッド8から、ダウンリンクの切り替え前の第一情報として、車線通知情報を含む第一のダウンリンク情報28を、各車線R1〜R4のダウンリンク領域DAに所定の送信周期で常に送信し続けている(図5のF1)。なお、この段階では、車線通知情報には未だ車両IDは格納されていない。
【0035】
車載機2を搭載した車両Cがダウンリンク領域DAの上流側部分に進入すると、車載機2の車載ヘッド20が車線通知情報(車両ID無し)を含む第一のダウンリンク情報28を受信する。この際、車載機2の車載コンピュータ21は、当該車両Cが通信領域A内に存在していることを認識する。
その後、車載コンピュータ21はアップリンク情報29の送信を開始し(図5のF2)、このアップリンク情報29を光ビーコン4のビーコンヘッド8に対して所定の送信周期で送信する(図5のF3)。
車載コンピュータ21は、このアップリンク情報29に当該車両Cに特定の車両IDを格納して当該アップリンク情報29を送信する。なお、車載コンピュータ21は、光ビーコン4のビーコン制御機7がダウンリンクの切り替えを行ったことを認識するまで、当該アップリンク情報29を送信し続ける。
【0036】
一方、光ビーコン4のビーコンヘッド8が、自身が設定するアップリンク領域UAにおいて、アップリンク情報29を受信すると(図5のF4)、ビーコン制御機7は、ダウンリンクの切り替え後の第二情報として、上記車両ID情報を有する車載機2のための車線通知情報を含む第二のダウンリンク情報30の送信を開始し(図5のF5)、このダウンリンク情報30の送信を所定時間内において可能な限り繰り返す(図5のF6)。
上記車線通知情報には、車線R1〜R4ごとに車両IDを格納するフィールドがあり、各車両IDに対して車線番号を付与することができる。このため、異なる車線R1〜R4を走行する各車両Cの車載コンピュータ21は、その格納フィールド内のいずれに自車両の車両IDが含まれるかを判断することにより、自車両がどの車線R1〜R4を走行しているかを認識できる。
【0037】
ビーコン制御機7は、第二のダウンリンク情報30に、車両IDを含む車線通知情報の他に、渋滞情報、事象規制情報、及び、ドライバに対する安全運転支援のための前記支援情報等を格納して送信する。
この支援情報には、光ビーコン4の下流側の信号機の灯色が変わるタイミング情報である前記信号機情報や、ダウンリンク領域DAから光ビーコン4の下流側の所定位置(例えば、前方の交差点手前にある停止線)までの長さ情報である距離情報等が含まれる。
【0038】
第二のダウンリンク情報30は、所定の送信周期で順次送信される複数の送信フレーム31で構成されている。前記「近赤外線式インタフェース規格」によれば、この送信フレーム31のデータ量は合計128バイトと規定され、ヘッダ部32に5バイト、実データ部33に123バイトが割り当てられている。
【0039】
なお、前記規格によれば、第二のダウンリンク情報30は、1〜80個の送信フレーム31で構成することができ、送信可能時間は250msに設定されている。また、このダウンリンク情報30は送信すべき情報量に対応した任意数の送信フレーム31で構成され、上記送信可能時間の範囲内で繰り返し送信される。なお、送信フレーム31の送信周期は約1msである。
【0040】
車載機2は、第二のダウンリンク情報30を受信した時点(図5のF7)で光ビーコン4でのダウンリンクの切り替えを認識し、この時点でアップリンク情報29の送信を停止する。
【0041】
車載機2は、第二のダウンリンク情報30を受信することで、これに格納された距離情報を取得することができ、図3に示すように、通信領域Aからその下流側の所定位置P0までの距離を認識して位置標定を行う(図5のF8)。さらに、認識した所定位置P0までの距離を利用して、ドライバに対する安全運転支援を行う。
【0042】
ここで、車載機2による第二のダウンリンク情報30の受信の詳細について説明する。
図6は、切り替え後、光ビーコン4から繰り返し送信される第二のダウンリンク情報30の態様の一例を示す図である。
光ビーコン4は、ダウンリンクの切り替え後の第二のダウンリンク情報30を所定の送信間隔に設定された複数の送信フレーム31を用いて繰り返し送信する。
具体的に、光ビーコン4のビーコン制御機7は、前記距離情報等の各種情報を、総フレーム数が所定数である複数の送信フレーム31よりなる第二のダウンリンク情報30に格納する。ビーコン制御機7は、ダウンリンクの切り替えの際、第二のダウンリンク情報30の情報量に応じて、当該第二のダウンリンク情報30を送信するために必要な総フレーム数を決定する。そして、ビーコン制御機7は、送信しようとする第二のダウンリンク情報30を、決定した総フレーム数で分割し、分割した分割情報をそれぞれ送信フレーム31の実データ部33に格納することで、決定した総フレーム数分の送信フレーム31で、第二のダウンリンク情報30を構成する。
このようにして、光ビーコン4は、複数の送信フレーム31よりなる第二のダウンリンク情報30を繰り返し送信する。
【0043】
また、各送信フレーム31のヘッダ部32には、第二のダウンリンク情報30を構成する複数の送信フレーム31の内、最初に送信される送信フレーム31から、最後に送信される送信フレーム31までの間で、順番に割り付けられるフレーム番号が格納されるとともに、最後に送信される送信フレーム31のヘッダ部32には、当該送信フレーム31が、一の第二のダウンリンク情報30を構成する複数の送信フレーム31の内の最後の送信フレーム31であることを示す情報(最後情報)が格納される。
【0044】
図6では、第二のダウンリンク情報30は、15個の送信フレームによって送信される場合を示している。この場合、ビーコン制御機7は、総フレーム数を「15」に決定するとともに、第二のダウンリンク情報30を分割することで15個の分割情報を生成し、15個の分割情報それぞれを15個の送信フレーム31に格納する。光ビーコン4は、個々に分割情報を格納する15個の送信フレーム31により構成される第二のダウンリンク情報30を繰り返し送信する。
【0045】
車載機2は、第二のダウンリンク情報30を構成する15個の送信フレーム31の全てを受信することで、第二のダウンリンク情報30を取得する。
図3も参照して、具体的には、上述したように、車載機2の車載ヘッド20が、投受光部20aによって、光ビーコン4から送信される上記送信フレーム31を受信する。光ビーコン4からの送信フレーム31を受信すると投受光部20aは、その受信信号を車載ヘッド20の制御部20bに与える。
【0046】
制御部20bは、与えられた受信信号から、送信フレーム31のヘッダ部32や実データ部33に格納されている情報を取得し、自己の有する記憶部に、その取得した情報(フレーム情報)を格納する。このとき、制御部20bは、取得したフレーム情報に含まれる、ヘッダ部32に格納されていたフレーム番号、及び最後の送信フレーム31であることを示す情報(最後フレーム情報)を参照する。制御部20bは、最後フレーム情報が含まれる送信フレームのフレーム番号を認識することで、現状受信しようとしている第二のダウンリンク情報30の総フレーム数を把握することができる。
また、制御部20bは、取得したフレーム情報のフレーム番号を参照し、自己の記憶部にすでに格納されているフレーム情報の中に、同一のフレーム番号を含むフレーム情報の有無を確認する。同一のフレーム番号を含むフレーム情報がすでに格納されている場合には、制御部20bは、その取得したフレーム情報については記憶部に格納しない。
【0047】
以上のようにして、制御部20bは、投受光部20aが順次受信する送信フレーム31の受信信号についての処理を行う。そして、記憶部に格納されたフレーム情報のフレーム番号を確認し、総フレーム数までのすべてのフレーム番号を含むフレーム情報がそろったことを認識すると、制御部20bは、第二のダウンリンク情報30を構成する総フレームに相当する全ての送信フレーム31の受信を終えたと判断する。
【0048】
ここで、光ビーコン4と車載ヘッド20との間の光通信においては、車載ヘッド20が光ビーコン4からの送信フレーム31を受信する際に、その通信環境等の条件に関わらず一定の確率で受信エラーが生じるので、例えば、切り替え直後の繰り返し送信回数一回目の第二のダウンリンク情報30の送信で、第二のダウンリンク情報30を構成する15個の送信フレーム31の全てを受信できない場合がある。
車載ヘッド20の制御部20bは、上述のように、投受光部20aからの受信信号から得られるフレーム情報が全てそろったと認識するまで、第二のダウンリンク情報30を構成する総フレームに相当する全ての送信フレーム31の受信を終えたと判断しない。このため、繰り返し送信回数一回目の第二のダウンリンク情報30の送信で、全て(15個)の送信フレーム31を受信できなかった場合には、二回目以降の第二のダウンリンク情報30の送信を待つ。車載ヘッド20は、繰り返し送信回数二回目以降の第二のダウンリンク情報30の送信で、一回目に受信できなかった送信フレーム31を再度受信する機会を得ることができ、その受信できなかった送信フレーム31を補完的に受信する。
このようにして、車載ヘッド20は、複数の送信フレーム31に格納された第二のダウンリンク情報30が繰り返し送信される間に、第二のダウンリンク情報30を構成する総フレームに相当する全ての送信フレーム31を受信する。
【0049】
車載ヘッド20の制御部20bは、全ての送信フレーム31を受信したと判断すると、ヘッダ部32等の情報を含む送信フレーム31に含まれる全ての情報(記憶部に格納した全てのフレーム情報)を車載コンピュータ21に出力する。
【0050】
第二のダウンリンク情報30を構成する全ての送信フレーム31に含まれるフレーム情報が与えられた車載コンピュータ21は、第二のダウンリンク情報30の受信が完了したものと判断し(図5のF7)、さらに、第二のダウンリンク情報30に自己の車両IDが含まれていることを認識すると、車載ヘッド20によるアップリンク情報29の送信を停止させる。
以上のようにして、本実施形態の車載機2は、車載ヘッド20が全ての送信フレーム31を受信した上で、さらにその受信した情報を車載コンピュータに出力された段階で、第二のダウンリンク情報30の受信が完了したと判断する。
【0051】
本実施形態の路車間通信システムでは、上記のように第二のダウンリンク情報30の受信を終えた車載機2に、通信領域Aからその下流側の所定位置P0までの距離を認識させて位置標定を行い(図5のF8)、これに基づいて、ドライバに対する安全運転支援を行う距離認識システムとして機能する。
以下、車載機2が行う安全運転支援のための距離認識の態様について説明する。
【0052】
〔距離認識の態様〕
光ビーコン4のビーコン制御機7は、通信領域Aの所定位置P1からその下流側の所定位置P0までの距離L1の数値を含む前記距離情報を予め記憶装置に記憶している。そして、この距離L1についての距離情報を第二のダウンリンク情報30に格納して送信する。
図3を参照して、距離L1の下流端(終点)である所定位置P0は、光ビーコン4の下流側に設置された、例えば信号機手前の停止線40の位置に設定されている。また、距離L1の上流端(始点)である所定位置P1は、例えば、アップリンク領域UAにおける道路R上の車両進行方向の略中央位置に設定されている。
【0053】
車載コンピュータ21は、受信した第二のダウンリンク情報30に含まれている距離情報を取得して、前記距離L1を認識する。そして、車載コンピュータ21の支援制御部21dは距離L1を利用して、ドライバに対する安全運転支援を行う。
【0054】
本実施形態では、アップリンク情報30を受信した光ビーコン4が切り替え後の最初の第二のダウンリンク情報30の送信を開始したときの車載機2(車両C)の位置が、アップリンク領域UA内の所定位置P1であるものであるとして、そのときの下流側の所定位置P0までの距離L1を車載機2に認識させる。
【0055】
ここで、図3に示すように、車載機2は、切り替え後の最初の第二のダウンリンク情報30の送信が開始されてから、実際に第二のダウンリンク情報30の受信を終えるまでに、所定の時間を必要とする。従って、第二のダウンリンク情報30の受信を終えることで取得される当該第二のダウンリンク情報30に格納される距離情報には、車載機2が第二のダウンリンク情報30の受信を終えるのに必要な時間の間に車両Cが前進することによる誤差が含まれることとなる。
【0056】
本実施形態の車載機2は、自己が第二のダウンリンク情報30の受信を終えるのに必要な時間を求め、さらにその時間から前記誤差を距離として求め、求めた距離(補正距離)によって、距離情報(距離L1)を補正する機能を有している。
以下、距離情報の補正について説明する。
【0057】
図3を参照して、第二のダウンリンク情報30の受信が完了したものと判断すると、車載コンピュータ21は、フレーム数取得部21aに、第二のダウンリンク情報30を構成する送信フレーム31の総フレーム数を取得させるとともに、速度取得部21bに、ECU16から現時の車両Cの走行速度を取得させる。
フレーム数取得部21aは、車載ヘッド20から第二のダウンリンク情報30とともに出力されるヘッダ部32に格納されていた情報(フレーム番号、最後情報)を参照することで、前記総フレーム数を取得することができる。
さらに、車載コンピュータ21は、補正部21cに、受信した第二のダウンリンク情報30に含まれている距離情報を取得させるとともに、上記フレーム数取得部21a及び速度取得部21bが取得した前記総フレーム数及び走行速度に基づいて、前記距離情報を補正するための補正距離を算出させ、距離情報の補正を行わせる。
【0058】
補正部21cは、以下のようにして補正距離を求める。すなわち、第二のダウンリンク情報30は、上述のように、所定の送信周期に設定された複数の送信フレーム31によって送信されるので、1つの第二のダウンリンク情報30を送信するために必要な時間は、第二のダウンリンク情報30を構成する総フレーム数に、送信フレーム31の送信周期を乗算することで前記必要な時間を求めることができる。
【0059】
具体的に図6を参照して説明すると、図例においては、第二のダウンリンク情報30は、総フレーム数が「15」であり、15個の送信フレーム31によって送信される。
送信フレーム31の送信周期は、約1ミリ秒なので、15個の送信フレーム31を順次送信するのに必要な時間、すなわち、1つの第二のダウンリンク情報30を送信するために必要な時間は、約15ミリ秒である。
【0060】
さらに、車両Cが、例えば、時速70kmで走行していたとすると、その間の走行距離は約0.32mとなる。
つまり、送信フレームの送信周期と、第二のダウンリンク情報30を構成する送信フレームの総フレーム数とが認識されていれば、1つの第二のダウンリンク情報30を送信するために必要な時間を求めることができ、さらに、車両Cの走行速度を考慮することで、その間に車両Cが走行する走行距離(単位補正距離)を求めることができる。
【0061】
ここで、上述したように、光ビーコン4と車載ヘッド20との間の光通信においては、車載ヘッド20が光ビーコン4からの送信フレーム31を受信する際に、その通信環境等の条件に関わらず一定の確率で受信エラーが生じる。このため、切り替え後最初の(繰り返し送信回数が)一回目の第二のダウンリンク情報30の送信で、第二のダウンリンク情報30を構成する15個の送信フレーム31の全てを受信できない場合があり、この場合、車載ヘッド20は、送信フレーム31の全てを受信するために繰り返し送信回数二回目以降の第二のダウンリンク情報30の送信によって、受信できなかった送信フレーム31を補間的に受信する。
車載ヘッド20は、繰り返される第二のダウンリンク情報30の送信によって、第二のダウンリンク情報30を構成する総フレームに相当する全ての送信フレーム31を受信し、受信した情報(フレーム情報)を車載コンピュータ21に出力することで、第二のダウンリンク情報30の受信を終える。
【0062】
そこで、補正部21cは、上記単位補正距離に加えて、第二のダウンリンク情報30を構成する総フレームに相当する全ての送信フレーム31を受信するために必要な第二のダウンリンク情報30の繰り返し送信回数である必要送信回数を求め、前記単位補正距離と前記必要送信回数とを乗算することで補正距離を求める。
【0063】
前記必要送信回数は、第二のダウンリンク情報30を繰り返し送信したときの各送信回数に対応する、第二のダウンリンク情報30を構成する複数の送信フレーム31の全てを車載機2が受信できる確率を示す受信確率に基づいて定められる。
【0064】
前記受信確率は、光ビーコン4から送信されるダウンリンク情報の通信品質に基づいて定められる。具体的に、上記通信品質は、送信フレームのビットエラーレートであり、本実施形態の光ビーコン4においては、送信フレームのビットエラーレートが、10-5以下と、前記「近赤外線式インタフェース規格」に規定されている。
上記受信確率は、上記送信フレームごとのビットエラーレートに基づいて、一の第二のダウンリンク情報30を送信するのに必要な送信フレーム数に応じて求められる。
【0065】
例えば、図6のように、第二のダウンリンク情報30を構成する送信フレーム31の総フレーム数が「15」である場合、繰り返し送信回数1回目(切り替え後の最初)の第二のダウンリンク情報30の場合、前記受信確率は、75パーセントと求められる。また、繰り返し送信回数が2回目の場合、前記受信確率は、95パーセント、繰り返し送信回数が3回目の場合、前記受信確率は、ほぼ100パーセントとなる。
また、前記受信確率は、個々送信フレーム31ごとのビットエラーレートから求められるので、1つの第二のダウンリンク情報30を送信するのに必要な送信フレーム数、すなわち、フレーム数取得部21aが取得する総フレーム数に応じて変化する。例えば、第二のダウンリンク情報30の総フレーム数が増加すれば、それに応じて、前記受信確率は低下する場合がある。
【0066】
ただし、第二のダウンリンク情報30の情報量に応じて総フレーム数が増加しうる範囲で増加したとしても、繰り返し送信回数が2回目の場合で、前記受信確率は、規格上、概ね95パーセント以上となる。このため、必要送信回数を「2」として、補正距離を求めてもよい。
また、上述したように、繰り返し送信回数が1回目の場合においても、その受信確率は、規格上、75パーセント以上となる。
従って、上記の受信確率が許容できる場合には、補正部21cは、必要送信回数を「1」として、補正距離として求めてもよい。
【0067】
本実施形態において、例えば、補正部21cが、繰り返し送信回数に対応する前記受信確率が90パーセント以上となる繰り返し送信回数を必要送信回数として選択するように設定されている場合には、当該補正部21は、ほとんどの場合、必要送信回数について「2」を選択する。
なお、前記受信確率については、車載機2の送信フレームの受信性能にも依存するので、必要送信回数を選択する上での閾値として設定される前記受信確率の値は、適宜選択することができる。
【0068】
以上のようにして、補正部21cは、単位補正距離と、必要送信回数とを求め、これらを乗算することで、補正距離を求める。
さらに、補正部21cは、第二のダウンリンク情報30から取得した距離情報により表される距離L1から上記補正距離を減算することで距離情報の補正を行い、補正後の距離Lcを得る。
車載コンピュータ21は、補正部21cが求めた補正後の距離情報(距離Lc)を利用して、ドライバに対する安全運転支援を行う。
【0069】
〔安全運転支援について〕
例えば、支援制御部21dは、補正部21cが停止線40までの距離として求めた、補正後の距離Lcと現時点の車両Cの走行速度とから、その停止線40の手前で停止するための減速度(負の加速度)を算出し、その減速度をECU16に通知する。ECU16は、当該減速度となるようにブレーキ装置18を作動させ、これにより、車両Cを停止線40の手前で自動停止させることができる。
【0070】
また、支援制御部21dの安全運転支援としては、ディスプレイ22やスピーカ装置23を用いたドライバに対する注意喚起であってもよい。
例えば、支援制御部21dにより、停止線40までの距離Lcをディスプレイ22に表示させてもよい。また、現時の車両Cの走行速度が速すぎる場合には、支援制御部21dにより、停車や減速を促す注意喚起をディスプレイ22に表示させたり、その注意喚起をスピーカ装置23から音声出力させたりしてもよい。
【0071】
また、支援制御部21dは、前記距離情報(距離Lc)と共に、第二のダウンリンク情報に含まれる信号情報を用いて安全運転支援を行うこともできる。
ここで、信号情報とは、交通信号機が表示する現在又は将来の信号灯色に関する情報を指し、各信号灯色の表示継続予定期間や表示する順序等に関する情報(表示予定情報)等を含む。例えば、「現在灯色が青信号で継続予定時間が5秒であり、次の灯色が黄信号で継続予定時間が8秒であり、その次の灯色が右折青矢印灯で継続予定時間10秒である」といった情報である。
【0072】
この信号情報を受信した車載コンピュータ21の支援制御部21dは、停止線40までの補正後の距離Lcと車両Cの走行速度や加速度等から、停止線40に到着するまでの所要時間を推定した上で、当該所要時間経過後の信号灯色を推定することができる。そして、例えば、現在の信号灯色は青信号であるが、停止線40に到着する時点で信号灯色が赤信号と予測されるような場合には、安全に停止線40の手前で停止することができるように、車両Cを制動するための制御を行う。逆に、減速しなければ安全に交差点を通過できると判断できるような場合には、車両Cの速度を維持するための制御を行うことができる。
【0073】
車両Cを制動したり速度を維持したりするため、支援制御部21dは、車両のブレーキ装置18(図4)やアクセルに対して直接的に制御を行ってもよい。また、支援制御部21dでは単に制動や速度維持に関する情報を生成し、その情報をECU16に通知することによってECU16でブレーキ装置18やアクセルを制御するものであってもよい。すなわち、支援制御部21dは、間接的な制御を行うものであってもよい。
【0074】
また、支援制御部21dは、車載装置の主導による制御のみならず、ブレーキアシストなど、ドライバの運転動作を補助する動作をしても良い。
【0075】
支援制御部21dは、車両Cの搭乗者に対して、信号灯色の推定の結果を音声や画像情報によって通知するようにしても良い。例えば、「間もなく信号が変わるので停止すべきである」といった内容の音声をスピーカ装置23からドライバに向けて発したり、ヘッドアップディスプレイやナビゲーション装置等のディスプレイ22に文字や図柄で表示したりすることができる。
安全運転の支援については、不適切なタイミングや内容でドライバに情報を通知することのないようなヒューマンインタフェースとするため、例えば低速走行時には音声や画像表示による報知を行わないようにすることもできる。
【0076】
以上詳述したように、上記構成の路車間通信システムによれば、補正部21cが、第二のダウンリンク情報30を構成する送信フレームの総フレーム数と、走行速度とに基づいて、第二のダウンリンク情報30を受信する間の車両Cの走行に応じた補正距離を求めることができる。これにより、アップリンク情報29の受信に応じて第二のダウンリンク情報30の送信が開始されてから、車載機2が第二のダウンリンク情報30を受信するまでの間に車両Cが進行することによる誤差が距離情報に生じたとしても、前記補正距離によって補正することができ、車両進行方向前方の所定位置P0までの距離について精度よく求めることができる。
【0077】
〔車両のワイパについて〕
光ビーコン4と車載ヘッド20との間の光通信においては、車載ヘッド20が光ビーコン4からの送信フレーム31を受信する際に、その通信環境等の条件に関わらず一定の確率で受信エラーが生じるが、通常車載ヘッド20は、車両Cのフロントガラス側のダッシュボード上に配置されるため、雨天時等にワイパを動作させることで、受信エラーを生じさせる場合がある。
これに対して、本実施形態の補正部21cは、ワイパの動作を検知すると、求めた補正距離に代えて予め設定された代替値を補正距離として距離情報の補正を行うように構成されている。
【0078】
具体的に、図4を参照して、車載ヘッド20は、フロントガラスG側のダッシュボード等の上に固定されており、光ビーコン4との間にフロントガラスGを介在して光通信を行う。
フロントガラスGの外側にはワイパ装置Wが配置されている。ワイパ装置Wは、被払拭部材としてのフロントガラスGの外側面を揺動して払拭するためのワイパブレードW1と、ワイパブレードW1を駆動制御するための駆動制御装置W2を備えている。駆動制御装置W2は、車両CのECU16に接続されており、ECU16は、ワイパ装置Wの動作状況を把握することができる。
補正部21cは、ECU16を介してワイパ装置Wが動作しているか否かを検知するとともに、ワイパ装置Wの動作を検知すると、求めた補正距離に代えて予め設定された代替値を補正距離として距離情報の補正を行うように構成されている。
【0079】
従って、ワイパブレードW1がフロントガラスGを揺動払拭することによって、フロントガラスGを通過して車載ヘッド20に到達するダウンリンク情報の受信が阻害され、補正部21cによる補正距離の演算が精度よくできないおそれが生じたとしても、補正部21cは、代替値を補正距離として採用するので、精度よく演算できなかった補正距離が用いられるのを防止できる。
なお、ここで前記代替値は、最大で、アップリンク領域UA内の所定位置P1から、ダウンリンク領域DAの下流端の位置d1までの距離に設定される。また、前記代替値は、補正距離として採用しうる値の内、比較的大きい値であることが好ましい。この場合、代替値が比較的小さい値であると、進行方向前方の所定位置P0が実際の位置よりもより前方であると認識される可能性が高くなるためである一方、比較的大きい値に設定すれば、所定位置P0が実際の位置よりもより上流側(車両の手前側)であると認識される可能が高くなり、進行方向前方の所定位置P0等に対して、停止等の判断を行うのに必要十分な距離を確保できるからである。
【0080】
〔ダウンリンク情報の切り替えについて〕
本実施形態において、光ビーコン4が有する4つのビーコンヘッド8から送信されるダウンリンク情報28,30は、全て同一の内容を送信するように構成されている。さらに、4つのビーコンヘッド8の内のいずれか一つのビーコンヘッド8が、車載機2からのアップリンク情報29を受信すると、全てのビーコンヘッド8から送信されるダウンリンク情報を切り替えて、新たなダウンリンク情報を送信するように構成されている。
【0081】
従って、図2に示すように、車線R2に設定された通信領域Aのアップリンク領域に進入した車両C1の車載機2が送信したアップリンク情報を受信することで、光ビーコン4が第二のダウンリンク情報を当該車載機2に送信している場合、車線R1を走行する車両C2に搭載された車載機2が、車線R1に設定された通信領域Aのアップリンク領域に進入してアップリンク情報を送信すると、光ビーコン4は、車両C2の車載機2からのアップリンク情報に応じて、それまで、送信していた第二のダウンリンク情報の送信を中止して車両C2の車載機2に対する第二のダウンリンク情報に切り替えて送信する。
このとき、光ビーコン4は、全ての車線で送信するダウンリンク情報を切り替えるので、車両C1の車載機2は、それまで受信していた自己に対する第二のダウンリンク情報とは連続性の無い、車両C2の車載機2に応じた第二のダウンリンク情報を受信することとなる。
【0082】
ここで、車両C1の車載機2が第二のダウンリンク情報の受信を終えていないとすると、受信しようとしていた第二のダウンリンク情報の送信は中止されてしまうので、当該車載機2の補正部21cは、受信しようとしていた第二のダウンリンク情報が格納されている送信フレーム等に基づいて、補正距離の演算を精度よく行うことができなくなる。
【0083】
これに対して、本実施形態の補正部21cは、第二のダウンリンク情報30を受信する際に当該第二のダウンリンク情報30が、自己以外の他の車載機2に対応して切り替えられたことを検知すると、求めた補正距離に代えて予め設定された代替値を前記補正距離として採用するように構成されている。
これにより、他の車載機2に応じて切り替えられた第二のダウンリンク情報が送信されることで、補正距離の演算が精度よくできなかったとしても、精度よく演算できなかった補正距離が距離情報の補正に用いられるのを防止できる。なお、この代替値の値としては、上記ワイパ装置Wの動作に応じて採用される代替値と同様の基準で設定される。
【0084】
また、上記の説明では、異なる車線を走行する車両Cに搭載された車載機2間の関係について述べたが、同一の車線を連なって走行する複数の車両C(車載機2)の内、先頭を走行する車載機2が自己のアップリンク情報に応じて送信される第二のダウンリンク情報を受信している場合、先頭の車載機2がその第二のダウンリンク情報の受信を終える前に、後続の車載機2が同一車線のアップリンク領域に進入することで、ダウンリンク情報が当該後続の車載機2に切り替えられる場合も同様である。
【0085】
なお、車載機2は、自己に対する第二のダウンリンク情報の送信が中止され自己以外の他の車載機2に応じた第二のダウンリンク情報に送信が切り替えられたか否かを、切り替えた直後の第二のダウンリンク情報が格納される送信フレームのヘッダ部に格納されているダウンリンク情報の切替回数を確認することによって判断することができる。つまり、車載機2が、自己に対する第二のダウンリンク情報30受信しているときに、他の車載機2に対応して第二のダウンリンク情報30が切り替えられれば、前記切替回数がカウントアップされる。従って、車載機2は、この切替回数がカウントアップされたことを確認することによって、第二のダウンリンク情報30が切り替えられたと認識することができる。
【0086】
また、例えば、上記従来例に示した路車間通信システムにおいて、車載機に自己の位置標定を行わせるため、通信領域A内の特定位置から、停止線等の下流側の所定位置までの距離情報の他に、アップリンク情報を受信した後の最初の第二のダウンリンク情報の送信時を基準とした送信経過情報を第二のダウンリンク情報に含めて送信する場合がある。
上記送信経過情報は、最初の第二のダウンリンク情報の送信時からの経過時間等であり、第二のダウンリンク情報を構成する複数の送信フレームの内のいずれかに格納されて送信される。
車載機は、前記距離情報と、前記送信経過情報とを繰り返し送信される第二のダウンリンク情報から取得する。そして、前記送信経過情報を用いて、最初の第二のダウンリンク情報の送信開始時から第二のダウンリンク情報の受信を終えるまでの間に車両が進行することによる誤差を距離として求め、距離情報の補正を行うように構成することができる。
【0087】
上記車載機では、上記本実施形態で示したように、繰り返し送信される複数の送信フレームよりなる第二のダウンリンク情報を受信し、第二のダウンリンク情報を構成するのに必要な全ての送信フレームを受信した時点で、第二のダウンリンク情報の受信を終えたと認識するように構成されることがある。
この構成では、切り替え直後の最初の第二のダウンリンク情報の送信で、当該第二のダウンリンク情報を構成する送信フレームの全てを受信できない場合は、その後繰り返し送信される第二のダウンリンク情報の送信によって、受信できなかった送信フレームを補間的に受信する。
【0088】
ここで、ダウンリンク情報を受信するための受信部が、距離情報の補正等を行う演算処理部に直接接続され、当該演算処理部が、前記送信経過情報を含む送信フレームを受信したタイミングを認識できる場合には、この送信経過情報に基づいて距離情報の補正を正確に行うことができる。
【0089】
しかし、前記受信部は、その構成上、後から車両に取り付けられ、既に車両に設置されているカーナビゲーションシステム等に備えられている前記演算処理部に接続される場合があることから、本実施形態の車載機2のように、受信部(車載ヘッド20)と、演算処理部(車載コンピュータ21)とが、独立した構成とされる場合がある。この場合、受信部に、全ての送信フレームを受信することで第二のダウンリンク情報を構成する全ての送信フレームをそろえた上で、これら全ての送信フレームに係る情報を前記演算処理部に出力する機能を持たせ、前記演算処理部は、受信部が出力する第二のダウンリンク情報を構成する全ての送信フレームに係る情報を取得した段階で、第二のダウンリンク情報の受信が完了したと判断するように構成されることがある。従って、前記演算処理部は、第二のダウンリンク情報の受信が完了した時点については認識できる。
【0090】
前記演算処理部は、上述のように、第二のダウンリンク情報の受信が完了した時点については認識できるので、上記構成においては、光ビーコンがアップリンク情報を受信した後、第2ダウンリンク情報に切り替えた時点から、車載機が第二のダウンリンク情報の受信を完了した時点までの受信経過時間について、当該車載機が認識できれば、その間に車両が走行する走行距離を求めることができ、さらに、光ビーコンから提供される距離情報から前記走行距離を差し引くことで当該距離情報の補正を行い、車両から下流側の所定位置までの距離を求めることができる。
【0091】
ところが、車載機に提供される送信経過情報は、第二のダウンリンク情報に切り替えた時点から、当該送信経過情報を格納した送信フレームを送信した時点までの送信経過時間を示す情報であるため、車載機は、前記受信経過時間を認識できないことがある。
つまり、送信経過情報が含まれるフレームを受信したタイミングと、第二のダウンリンク情報を構成する全ての送信フレームを受信したタイミング(第二のダウンリンク情報の受信が完了したタイミング)とが異なる場合には、送信経過情報により示される送信経過時間と、受信経過時間とが異なることとなる。
上記の場合、車載機は、前記送信経過情報を取得することで、前記送信経過時間の間に走行する走行距離を求め、車両から前記所定位置までの距離を求めることとなるので、前記受信経過時間と前記送信経過時間との差において車両が走行する距離だけ、車両から前記所定位置までの正しい距離との間でずれが生じる。
【0092】
以上のように、路車間通信システムにおいて、本実施形態の車載機2のように、受信部(車載ヘッド20)と、演算処理部(車載コンピュータ21)とが、独立して構成されている車載機の場合には、ダウンリンク情報についての正確な送信経過情報(受信経過時間と一致した送信経過時間を示す送信経過時間)を取得できず、精度よく距離情報の補正が行われないおそれがあり、車両進行方向前方の所定位置までの距離について精度よく求めることができないという問題があった。
【0093】
この点、本実施形態の路車間通信システムによれば、光ビーコン4からの送信フレームに送信経過情報が格納されていなくても、補正部21cは、第二のダウンリンク情報30を構成する送信フレーム31の総フレーム数と車両Cの走行速度とに基づいて、第二のダウンリンク情報30を受信する間の車両の走行に応じた補正距離を求めることができるので、車両進行方向前方の所定位置までの距離について精度よく求めることができる。
【0094】
〔第二の実施形態〕
図7は、本発明の第二の実施形態に係る路車間通信システムの全体構成を示すブロック図であり、図8は、光ビーコンの通信領域を示す側面図である。
本実施形態と上記第一の実施形態との相違点は、通信領域Aを構成するアップリンク領域UAが車両進行方向に分割してなる複数(4つ)の分割領域UA1〜UA4により構成されており、ビーコンヘッド8が、これら複数の分割領域UA1〜UA4に対応して車載機2からのアップリンク情報29を受信可能となるように車両進行方向に対応する方向に沿って並べて配置された複数のフォトセンサ11を備えている点と、光ビーコン4のビーコン制御機7が、複数のフォトセンサ11それぞれが出力する受光レベルに基づいて、アップリンク領域UA内における車載機2のアップリンク光の送信位置を特定する位置特定部7aを備えている点である。その他の点については、上記第一の実施形態と同様なので、説明を省略する。
【0095】
本実施形態の通信領域Aは、上記第一の実施形態と同様、ダウンリンク領域DAと、アップリンク領域UAとによって構成されているが、アップリンク領域UAは、上述のように、車両進行方向に複数に分割されている。具体的にアップリンク領域UAは、ビーコンヘッド8の位置を上端とし、道路R上の位置u1から位置u2の間に設定された位置e1〜e3を下端とする3本の境界線(境界部)Kによって4つに分割されている。
【0096】
ビーコンヘッド8に設けられた4つのフォトセンサ11は、それぞれアップリンク領域UAの各分割領域UA1〜UA4を受信領域としている。従って、例えば、分割領域UA1内で車載ヘッド20から送信されたアップリンク情報は、この分割領域UA1に対応するフォトセンサ11によって受信される。
【0097】
図8に示すように、光ビーコン4は、通信領域Aの所定位置P2〜P5からその下流側の所定位置P0までの距離L2〜L5の数値を距離情報として記憶している。そして、これら距離L2〜L4についての距離情報を第二のダウンリンク情報30に格納して送信する。
距離L2〜L5の上流端である位置P2〜P5は、アップリンク領域UAの各分割領域UA1〜UA4に応じて設定されている。具体的に位置P2〜P5は、各分割領域UA1〜UA4における道路R上の車両進行方向のほぼ中央の位置に設定されている。
【0098】
光ビーコン4は、予め記憶した複数の距離L2〜L5についての距離情報の内、いずれかを選択し、第二のダウンリンク情報30に格納する。距離L2〜L5の内、いずれを選択するかは、ダウンリンクの切り替え前にアップリンク情報29を受信したフォトセンサ11に基づいて決定される。
例えば、最上流側の分割領域UA1において、道路R上を走行している車両Cの車載ヘッド20がアップリンク情報29を送信し、この分割領域UA1に対応するフォトセンサ11が当該アップリンク情報29を受信した場合、ビーコン制御機7の位置特定部7aは、アップリンク情報29を受信したフォトセンサ11を特定し、分割領域UA1に対応する距離情報L2を選択するとともに、ダウンリンクを切り換え、距離L2についての距離情報を含む第二のダウンリンク情報30を送信する。
【0099】
他の分割領域UA2〜UA4に対応するフォトセンサ11のいずれかがアップリンク情報29を受信した場合も同様であり、位置特定部7aは、受信したフォトセンサ11に対応する分割領域に設定された位置P3〜P5に応じた距離L3〜L5を選択し、当該距離L2〜L4についての距離情報を含む第二のダウンリンク情報30を送信する。
【0100】
つまり、本実施形態では、アップリンク情報30を受信した光ビーコン4が切り替え後の最初の第二のダウンリンク情報30の送信を開始したときの車載機2(車両C)の位置が、アップリンク領域UA内の所定位置P2〜P5のいずれかであるとして、そのときの下流側の所定位置P0までの距離L2〜L5を選択し車載機2に認識させる。
すなわち、ビーコン制御機7の位置特定部7aは、アップリンク領域UAが複数の分割領域で構成されていることを利用して、アップリンク情報29を受信したときの車載機2の位置を特定する機能を有している。
【0101】
上記距離情報を含む第二のダウンリンク情報30を車載機2が受信すると、車載コンピュータ21は、そのダウンリンク情報30に含まれている距離情報を抽出して、前記距離情報が距離L2〜L5のいずれであるかを認識する。
そして、車載コンピュータ21の補正部21cは、補正距離を演算するとともに、認識した距離(距離L2〜L4のいずれか)を利用することで補正後の距離Lcを求め、ドライバに対する安全運転支援を行う。
【0102】
本実施形態によれば、補正部21cによって、車載機2が第二のダウンリンク情報30を受信するまでの間に車両が進行することによって生じる、距離情報の誤差を補正できることに加え、その前段階である光ビーコン4がアップリンク情報29を受信した段階の車載機2の位置を特定することができるので、車載機2における、車両進行方向前方の所定位置P0までの距離について精度よく求めることができる。
【0103】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されることはない。
上記実施形態では、車載ヘッド20は、第二のダウンリンク情報30を構成する総フレームに相当する全ての送信フレーム31が受信できた段階で、これらに関する情報を車載コンピュータ21に出力するように構成した場合を例示したが、例えば、送信フレーム31を受信するごとに、当該受信した送信フレーム31に係る情報を車載コンピュータ21に出力するように構成することもできる。
【0104】
また、上記実施形態では、必要送信回数を、送信フレーム31のビットエラーレートから求められる受信確率に応じて選択する場合を例示したが、車載ヘッド20が光ビーコン4からの第二のダウンリンク情報30を受信したときの受信レベル(受光レベル)に応じて、必要送信回数を選択するように構成することもできる。
【0105】
つまり、受信レベルが必要強度以上に高ければ、光ビーコン4と車載機2との間の光通信における通信品質は良好であり、送信エラー等の発生率が低下し、第二のダウンリンク情報30を構成する複数の送信フレーム31の全てを車載機2が受信できる確率である受信確率が高まる。一方、受信レベルが必要強度よりも低ければ、逆に受信確率が低下する。
このため、例えば、車載ヘッド20に光ビーコン4からの第二のダウンリンク情報30を受信したときの受信レベルを検出させるとともに、検出した受信レベルを車載コンピュータ21に出力させ、補正部21cに、前記受信レベルに応じて、必要送信回数を選択させるように構成してもよい。
さらに、前記受信レベルから前記受信確率を求め、この受信確率に応じて必要送信回数を選択するように構成することもできる。
【0106】
また、光ビーコン4と車載機2との間の光通信におけるビットエラーレートや受信レベルといった通信品質は、車載機2自身の受信性能によって、その要求される数値やレベルが車載機2それぞれで異なる。このため、補正部21cに、自己の受信性能に応じて、必要送信回数を選択させるように構成してもよい。
【0107】
また、上記各実施形態において、補正部21cは、第二のダウンリンク情報30の受信に応じて補正距離を求める都度毎に、単位補正距離を求め、さらに単位補正距離と必要送信回数とに基づいて補正距離を求める場合を例示したが、例えば、車両Cの走行速度と、必要送信回数とから求まる補正距離を予めテーブル等の形式で記憶部等に記憶しておき、前記走行速度と、前記必要送信回数とが取得できた段階で、補正距離を取得するように構成することもできる。
さらに、必要送信回数を予め決めておき、走行速度とそれに対応する補正距離(=走行速度×必要送信回数)の組み合わせをテーブル等の形式で記憶部等に予め記憶しておき、前記走行速度が取得できた段階で、補正距離を取得するように構成することもできる。
【0108】
また、上記各実施形態において、距離情報を構成する距離L1〜L5の所定位置P1〜P5の位置は、アップリンク領域UA及び分割領域UA1〜UA4の道路R上のほぼ中央位置に限らず任意に設定することができる。例えば、該当領域内の上流端や下流端に設定したりすることができる。
【0109】
また、車両進行方向下流側の所定位置P0は、停止線40のほか、信号機の設置位置や車両感知器の位置としてもよい。また、上記各実施形態における距離情報は、所定位置P0までの距離の値を直接格納する形式に限られず、所定位置P0までの距離を一意に決定しうる情報であれば、どのような形式であってもよい。
【0110】
また、上記第二の実施形態において、分割領域UA1〜UA4の数(フォトセンサ11の数)は、2つ、3つ、又は5つ以上としてもよい。
また、フォトセンサ11は、その受信領域を論理的に複数の領域に分割することによって、それぞれを受信部とすることができる。つまり、1つのフォトセンサ11が複数の受信部を有する構成とすることができる。そして、これら受信部をそれぞれ道路上の分割領域UA1〜UA4に対応させ、アップリンク光が当該フォトセンサ11のどの領域に照射されたかに応じて、距離情報を選択することもできる。この場合、分割領域の数よりも少ないフォトセンサ11を用いて全ての分割領域に対応させることができる。
【0111】
また、上記各実施形態では、第二のダウンリンク情報30に格納される距離情報は、下流端を停止線等が位置する位置P0とし、上流端をアップリンク領域UA、又は各分割領域UA1〜UA4に設定した位置P1〜P5としたときの両端間の距離L1〜L5としたが(図3,図8参照)、この距離情報は、他の形式によって示した情報とすることもできる。
例えば、上記第一の実施形態において、距離情報を、アップリンク領域UAの上流端である位置u2から位置P1までの距離(第一距離)と、位置u2から停止線40側の位置P0までの距離(第二距離)の二つの情報で示すことができ(図3参照)、車載機2は、前記第一距離と前記第二距離とから距離L1を求め、これに対して補正を行うことができる。
また、分割領域UA1〜UA4を導入した上記第二の実施形態の場合も同様に、距離情報を、位置u2から、各分割領域における位置P2〜P5までのそれぞれの距離(第一距離)と、位置u2から停止線40側の位置P0までの距離(第二距離)の二つの情報で示すことができ(図8参照)、車載機2は、前記第一距離と前記第二距離とから距離L2〜L5を求めて補正を行うことができる。
【0112】
本発明に関して、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0113】
2 車載機
4 光ビーコン
7 ビーコン制御機
21c 補正部
29 アップリンク情報
30 第二のダウンリンク情報
31 送信フレーム
40 停止線(所定位置)
A 通信領域
C 車両
R 道路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上の所定範囲に設定された通信領域においてアップリンク情報を送信する車載機と、前記通信領域において前記アップリンク情報を受信した後に所定のダウンリンク情報を所定の送信周期で前記車載機に繰り返し送信する光ビーコンと、を備えた路車間通信システムであって、
前記光ビーコンは、前記通信領域から車両進行方向前方の所定位置までの距離についての距離情報を、総フレーム数が所定数である複数の送信フレームよりなる前記所定のダウンリンク情報に格納するビーコン制御機を有し、
前記車載機は、前記総フレーム数と前記車両の走行速度とに基づいて、前記所定のダウンリンク情報を受信する間の前記車両の走行に応じた、前記距離情報に対する補正距離を求める補正距離演算部を有することを特徴とする路車間通信システム。
【請求項2】
前記補正距離演算部は、前記所定のダウンリンク情報が2回繰り返して送信される間に前記車両が走行した距離を前記補正距離として求める請求項1に記載の路車間通信システム。
【請求項3】
前記補正距離演算部は、前記所定のダウンリンク情報が1回送信される間に前記車両が走行した距離を前記補正距離として求める請求項1に記載の路車間通信システム。
【請求項4】
前記補正距離演算部は、前記総フレーム数と前記走行速度とから1つの前記所定のダウンリンク情報が送信される間に前記車両が走行する単位補正距離を求め、
前記総フレームに相当するすべての前記送信フレームを受信するために必要な前記所定のダウンリンク情報の必要送信回数を求め、
前記単位補正距離と前記必要送信回数とに基づいて前記補正距離を求める請求項1に記載の路車間通信システム。
【請求項5】
前記補正距離演算部は、前記必要送信回数を前記所定のダウンリンク情報の通信品質に基づいて定める請求項4に記載の路車間通信システム。
【請求項6】
前記補正距離演算部は、前記通信品質から求められる、前記所定のダウンリンク情報が繰り返し送信されたときの各送信回数に対応する、前記総フレーム数に相当するすべての前記送信フレームを受信できる確率を示す受信確率に基づいて、前記必要送信回数を決定する請求項5に記載の路車間通信システム。
【請求項7】
前記通信品質は、前記送信フレーム受信時のビットエラーレートである請求項5又は6に記載の路車間通信システム。
【請求項8】
前記通信品質は、前記車載機が受信した前記所定のダウンリンク情報の受信レベルである請求項5又は6に記載の路車間通信システム。
【請求項9】
前記車載機は、前記光ビーコンからの前記所定のダウンリンク情報を、前記車両に備えられたワイパ装置によって払拭される前記車両の被払拭部材を通過して受信するように設けられており、
前記補正距離演算部は、前記ワイパ装置の動作を検知すると、求めた前記補正距離に代えて予め設定された代替値を前記補正距離とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の路車間通信システム。
【請求項10】
前記補正距離演算部は、前記所定のダウンリンク情報を受信する際に当該所定のダウンリンク情報が、自己以外の他の車載機に対応して切り替えられたことを検知すると、求めた前記補正距離に代えて予め設定された代替値を前記補正距離とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の路車間通信システム。
【請求項11】
道路上の所定範囲に設定された通信領域においてアップリンク情報を送信するとともに、前記アップリンク情報を受信した光ビーコンから所定の送信周期で繰り返し送信される所定のダウンリンク情報を受信する車載機であって、
前記所定のダウンリンク情報は、総フレーム数が所定数である複数の送信フレームにより構成されるとともに、前記通信領域から車両進行方向前方の所定位置までの距離についての距離情報を含んでおり、
前記総フレーム数と前記車両の走行速度とに基づいて、前記所定のダウンリンク情報を受信する間の前記車両の走行に応じた、前記距離情報に対する補正距離を求める補正距離演算部を有することを特徴とする車載機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−60192(P2011−60192A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211822(P2009−211822)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】