説明

路面バンク角推定装置

【課題】車輪に路面から作用する力を検出するための力センサを必要とすることなく、安価な構成で、路面のバンク角を安定に推定する。
【解決手段】車輪と路面との間の摩擦特性モデルを含む車両モデルを用い、水平面上での車両横力モデル推定値Fgy_total_estmを求めると共に、これを車両質量mで除算してなる横加速度モデル推定値Accy_estmを求める手段と、横加速度モデル推定値Accy_estmと横加速度センサ15の出力が示す横加速度検出値Accy_sensとの偏差を求める手段と、該偏差から路面のバンク角の暫定推定値を求め、該暫定推定値をハイカット特性のフィルタに通すことにより路面のバンク角推定値θbank_estmを求める手段とを備える。


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【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行している路面のバンク角を逐次推定する装置であって、
車両の車輪と路面との間の滑りと路面反力との関係を表す摩擦特性モデルを含み、水平面上での車両の動力学を表現する車両モデルを用い、少なくとも該車両モデル上での車両の車輪の前記滑りを特定するために必要な実際の車両の挙動に関する所定種類の観測対象量の観測値を該車両モデルに入力しつつ該車両モデルの演算処理を行うことによって、該車両モデル上での車両の各車輪に路面から作用する路面反力の合力のうちの少なくとも該車両の横方向の並進力成分の値である車両横力モデル推定値を求めると共に、該車両横力モデル推定値を車両の質量で除算してなる加速度である横加速度モデル推定値を求める車両モデル演算手段と、
実際の車両の横方向の加速度である横加速度に応じた出力を発生する横加速度センサと、
前記横加速度センサの出力が示す実際の車両の横加速度の検出値と、前記横加速度モデル推定値との偏差である横加速度偏差を求める横加速度偏差演算手段と、
該横加速度偏差と路面のバンク角との間の関係を表す関数に基づいて、前記横加速度偏差演算手段が求めた横加速度偏差に対応する路面のバンク角の値を暫定推定値として求め、その求めた暫定推定値をハイカット特性のフィルタに通してなる値を路面のバンク角の推定値として決定するバンク角推定値決定手段とを備えることを特徴とする路面バンク角推定装置。
【請求項2】
請求項1記載の路面バンク角推定装置において、
前記関数は、路面のバンク角の正弦関数値が、前記横加速度偏差を重力加速度で除算してなる値に一致するという関係を示す関数であることを特徴とする路面バンク角推定装置。
【請求項3】
車両が走行している路面のバンク角を逐次推定する装置であって、
車両の車輪と路面との間の滑りと路面反力との関係を表す摩擦特性モデルを含み、路面のバンク角に依存する車両の動力学を表現する車両モデルを用い、少なくとも既に決定された路面のバンク角の推定値と該車両モデル上での車両の車輪の前記滑りを特定するために必要な実際の車両の挙動に関する所定種類の観測対象量の観測値とを該車両モデルに入力しつつ該車両モデルの演算処理を行うことによって、該車両モデル上での車両の各車輪に路面から作用する路面反力の合力のうちの少なくとも該車両の横方向の並進力成分の値である車両横力モデル推定値を求めると共に、該車両横力モデル推定値を車両の質量で除算してなる加速度である横加速度モデル推定値を求める車両モデル演算手段と、
実際の車両の横方向の加速度である横加速度に応じた出力を発生する横加速度センサと、
前記横加速度センサの出力が示す実際の車両の横加速度の検出値と、前記横加速度モデル推定値との偏差である横加速度偏差を求める横加速度偏差演算手段と、
該横加速度偏差演算手段が求めた横加速度偏差を“0”に収束させるように、該横加速偏差に応じて路面のバンク角の推定値の増減操作量を決定するバンク角増減操作量決定手段と、
前記増減操作量に応じて路面のバンク角の推定値を更新することによって該バンク角の新たな推定値を決定するバンク角推定値更新手段とを備えることを特徴とする路面バンク角推定装置。
【請求項4】
請求項3記載の路面バンク角推定装置において、
車両が走行している路面の摩擦係数を逐次推定する路面摩擦係数推定手段を備えると共に、
前記モデル演算手段は、既に決定された路面の摩擦係数の推定値と、前記既に決定された路面のバンク角の推定値と、前記所定種類の観測対象量の観測値とを前記車両モデルに入力しつつ該車両モデルの演算処理を行うことによって、前記車両横力モデル推定値と前記横加速度モデル推定値とを求めることに加えて、該車両モデル上での車両の各車輪に路面から作用する路面反力の合力によって該車両のニュートラル・ステア・ポイント(以下、NSPという)でのヨー軸周りに発生する外力モーメントであるNSPヨーモーメントモデル推定値を求める手段であり、
前記摩擦係数推定手段は、
実際の車両の運動によって該車両のNSPでのヨー軸周りに発生する慣性力モーメントを規定する該車両の運動状態量の観測値であって、前記横加速度センサの出力が示す実際の車両の横加速度の検出値を含む該運動状態量の観測値から、該慣性力モーメントに釣り合う外力モーメントの値としてのNSPヨーモーメント検出値を求めるNSPヨーモーメント検出手段と、
前記NSPヨーモーメント検出値とNSPヨーモーメントモデル推定値との偏差、又は、該NSPヨーモーメント検出値を周波数成分調整用の第1フィルタに通してなる第1フィルタリング値とNSPヨーモーメントモデル推定値を周波数成分調整用の第2フィルタに通してなる第2フィルタリング値との偏差を“0”に収束させるように、少なくとも該偏差に応じて路面の摩擦係数の推定値の増減操作量を決定する摩擦係数増減操作量決定手段と、
前記増減操作量に応じて路面の摩擦係数の推定値を更新することによって該摩擦係数の新たな推定値を決定する摩擦係数推定値更新手段とを備えることを特徴とする路面バンク角推定装置。
【請求項5】
請求項4記載の路面バンク角推定装置において、
前記モデル演算手段は、既に決定された路面の摩擦係数の推定値と、前記既に決定された路面のバンク角の推定値と、前記所定種類の観測対象量の観測値とを前記車両モデルに入力しつつ該車両モデルの演算処理を行うことによって、該車両モデル上での車両の各車輪に路面から作用する路面反力のうちの少なくとも横力の値である車輪横力モデル推定値を算出し、該車輪横力モデル推定値を用いて前記車両横力モデル推定値と前記NSPヨーモーメントモデル推定値とを求めることを特徴とする路面バンク角推定装置。
【請求項6】
請求項4記載の路面バンク角推定装置において、
前記モデル演算手段は、既に決定された路面の摩擦係数の推定値と、前記既に決定された路面のバンク角の推定値と、前記所定種類の観測対象量の観測値とを前記車両モデルに入力しつつ該車両モデルの演算処理を行うことによって、該車両モデル上での車両の各車輪に路面から作用する路面反力のうちの駆動・制動力及び横力の値である車輪駆動・制動力モデル推定値及び車輪横力モデル推定値を算出し、該車輪駆動・制動力モデル推定値及び車輪横力モデル推定値を用いて前記車両横力モデル推定値と前記NSPヨーモーメントモデル推定値とを求めることを特徴とする路面バンク角推定装置。
【請求項7】
請求項5記載の路面バンク角推定装置において、
前記摩擦特性モデルは、少なくとも車両の各車輪のスリップ率又は該車輪に作用する路面反力のうちの駆動・制動力と、該路面反力のうちの横力と、該車輪の横すべり角と、路面の摩擦係数との間の関係を表すモデルを含むことを特徴とする路面バンク角推定装置。
【請求項8】
請求項6記載の路面バンク角推定装置において、
前記摩擦特性モデルは、車両の各車輪のスリップ率と、該車輪に作用する路面反力のうちの駆動・制動力と、該車輪の横すべり角と、路面の摩擦係数との間の関係を表す第1モデル、並びに、車両の各車輪のスリップ率又は該車輪に作用する路面反力のうちの駆動・制動力と、該路面反力のうちの横力と、該車輪の横すべり角と、路面の摩擦係数との間の関係を表す第2モデルを含むことを特徴とする路面バンク角推定装置。
【請求項9】
請求項4〜8のいずれか1項に記載の路面バンク角推定装置において、
前記NSPヨーモーメント検出手段は、前記運動状態量の観測値として、車両のヨー軸周りの回転運動に関する状態量の観測値と、前記加速度センサの出力が示す車両の横方向の加速度の値とを用いることを特徴とする路面バンク角推定装置。
【請求項10】
請求項4〜9のいずれか1項に記載の路面バンク角推定装置において、
路面の摩擦係数の増加量に対する前記NSPヨーモーメントの増加量の比率であるμ感度の値を、車両の車輪のうちの操舵輪の操舵角の観測値と、車両のヨーレートの観測値とを線形結合することにより求めるμ感度算出手段をさらに備え、
前記摩擦係数増減操作量決定手段は、前記NSPヨーモーメントモデル推定値とNSPヨーモーメント検出値との偏差、又は、前記第1フィルタリング値と第2フィルタリング値との偏差と、前記μ感度の値とに応じて前記増減操作量を決定することを特徴とする路面バンク角推定装置。
【請求項11】
請求項10記載の路面バンク角推定装置において、
前記摩擦係数増減操作量決定手段は、前記NSPヨーモーメントモデル推定値とNSPヨーモーメント検出値との偏差、又は、前記第1フィルタリング値と第2フィルタリング値との偏差と、前記μ感度の値、又は該μ感度の値を周波数成分調整用の第3フィルタと飽和特性要素とのうちの一方もしくは両方に通してなるμ感度依存値との積である偏差・μ感度積に応じて前記増減操作量を決定することを特徴とする路面バンク角推定装置。
【請求項12】
請求項11記載の路面バンク角推定装置において、
前記摩擦係数増減操作量決定手段は、前記増減操作量を前記偏差・μ感度積に比例させるように該偏差・μ感度積に応じて前記増減操作量を決定することを特徴とする路面バンク角推定装置。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の路面バンク角推定装置において、
前記μ感度算出手段は、前記線形結合において前記操舵角の観測値と前記ヨーレートの観測値とにそれぞれ掛かる重み係数を、当該両重み係数の相互の比率が車両の車速に応じて変化するように、当該両重み係数のうちの少なくともいずれか一方を該車速の観測値に応じて設定し、その設定した重み係数を用いて前記線形結合の演算を行うことを特徴とする路面バンク角推定装置。
【請求項14】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の路面バンク角推定装置において、
前記μ感度算出手段は、車両の車輪のうちの操舵輪の操舵角の観測値(δf_sens)と、車両のヨーレートの観測値(γ_sens)と、車両の車速の観測値(Vx_estm)とから、次式01により前記μ感度の値を求めることを特徴とする路面バンク角推定装置。

μ感度=A1(Vx_estm)*γ_sens+A2*δf_sens ……式01

ただし、A1(Vx_estm)=Iz*(a22−(a21/a11)*a12s)/Vx_estm、 A2=(b2−(a21/a11)*b1)、 a11=−2*(CPf0+CPr0)/m、 a12s=−2*(Lf*CPf0−Lr*CPr0)/m、a21=−2*(Lf*CPf0−Lr*CPr0)/Iz、 a22=−2*(Lf*Lf*CPf0+Lr*Lr*CPr0)/Iz、 b1=2*CPf0/m、 CPf0:摩擦係数=1となる路面での車両の前輪(操舵輪)の1輪当たりのコーナリングパワー、 CPr0:摩擦係数=1となる路面での車両の後輪の1輪当たりのコーナリングパワー、Lf:車両の重心と前輪の車軸との間の距離、Lr:車両の重心と後輪の車軸との間の距離、m:車両の質量、Iz:車両のヨー軸周りの慣性モーメント。
【請求項15】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の路面バンク角推定装置において、
前記μ感度算出手段が実行する前記線形結合は、実際の車両の横滑り運動とヨー軸周りの回転運動とを、操舵輪としての前輪と、非操舵輪としての後輪を1輪ずつ備えるモデル車両の挙動として近似表現する線形2輪車両モデルにおいて、路面の摩擦係数を一定値とした場合に、車両の車輪のうちの操舵輪の操舵角の観測値と、車両のヨーレートの観測値と、車両の車速の観測値とから前記線形2輪車両モデルを用いて特定される前記NSPヨーモーメントの値に、前記μ感度の値が比例するように該μ感度の値を決定する線形結合であることを特徴とする路面バンク角推定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−188763(P2010−188763A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32572(P2009−32572)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】