説明

路面標示地図生成方法

【課題】 道路を走行しながら路面を撮影した画像から、路面標示を精度良く認識する。
【解決手段】 道路を走行しながら路面をビデオカメラで撮影するとともに、各撮影地点の位置座標をGPS等で取得する。コンピュータは、この動画の各フレーム画像を変換して真上から見た状態の正射画像を生成し、撮影地点に配置することで、走行したパスにそった連結画像を生成する。また、パスの異なる連結画像を合成して幅広の道路画像を生成する。この道路画像から、画像処理によって、路面標示を抽出し、種別・形状を認識する。その後、認識された路面標示について、複数の標示間の相関関係に基づいて誤認識の有無を判定し、誤認識と判断される標示を削除する。こうすることによって、標示単体で誤認識を判断するよりも、誤認識の判定精度を向上させることができ、標示の認識精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路面に施された標示を含む路面標示地図を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーションなどで使用される電子地図データには、多様な機能を実現するため、種々の詳細なデータが要求されている。その一つとして、横断歩道や中央線、車線境界線などの路面に描かれる標示が挙げられる。これらの標示を予め画像として取得しておくことにより、ユーザに対して実際の路面に近い画像を提供することができ、直感的に理解しやすい案内を実現することが可能となる。
【0003】
標示を含む路面の画像を効率的に生成するための技術として特許文献1、特許文献2などが挙げられる。
特許文献1は、車輌の前後または側方に対してデジタルカメラ等により取得された画像から、路面の標示を含む静止画像を生成する技術を開示している。この技術では、目的の道路を車両で走行しながら、その車両に搭載されたデジタルカメラ等で路面の標示等を撮影する。そして、動画を構成する各フレーム画像を真上から見た状態の正射画像に変換し、撮影位置に応じて配列する。正射画像とは、道路の垂直上方の無限遠点に視点を置いた場合の道路画像を言う。複数のフレーム画像を配列することによって、1回の走行の軌跡(以下、パスと呼ぶこともある)に沿った道路面の合成画像を得ることができる。
ただし、特許文献1は、1回のパスで得られる画像に対する処理を開示しているのみであり、道路全体を十分にカバーする方法については開示していない。
【0004】
特許文献2は、2つのパスで得られた画像を合成して幅広の道路画像を合成する技術を開示している。この技術では、まず一つのパスで得られた画像に対して、道路の車線境界線など、本来、直線的に描かれているものが直線として表示されるようにアフィン変換をかける。そして、2つのパスで共通して撮影されている車線境界線などの座標が一致するように、一方のパスの画像をアフィン変換する。また、同様の方法によって、パスごとに画像をアフィン変換しながら合成することによって3以上のパスを合成する技術も開示している。
ただし、特許文献2の技術は、道路が直線か曲線かに関わらず車両の進行方向をX軸とし、その移動距離をX座標として画像を表しているに過ぎず、このX軸に直交する方向にのみ画像をアフィン変換するに過ぎない。複数のパスで得られた画像について、このように定められたX座標が十分に一致しているという保証はないから、特許文献2の技術では路面の標示の位置座標を精度良く得ることはできない。
また、アフィン変換は、原画像の長方形領域を平行四辺形に歪ませる作用を持つ変換とも言えるから、特許文献2の技術では、アフィン変換によって画像の合成を行うことにより画質の劣化を招き、路面の標示の位置座標を一層低下させるという課題もある。
【0005】
特許文献3は、道路面の画像から、標示を抽出する技術を開示している。この技術では、航空写真などの画像から、画像処理によって道路ペイントに当たる部分を抽出し、抽出された部分の特徴量に基づいて道路ペイントの種別を判断する。特徴量としては、抽出した部分の長手方向を代表する軸と、道路ネットワークのリンクとの角度などが用いられている。
【0006】
【特許文献1】特開2007−249103号公報
【特許文献2】特許第3820428号公報
【特許文献3】特開2007−122665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
地図データには、経路探索用に道路をノード、リンクで表した道路ネットワーク、および地図を表示するために道路をポリゴンで表したデータなどがある。道路ネットワークでは、道路を1本または2本のリンクで代表させているため、リンクに付された座標は、道路のいずれの部分を表しているか厳密には分からない。描画データでは、道路を表すポリゴンの外周の位置座標は分かるものの、道路内部の地点についての位置座標は分からない。
例えば、道路内部の各地点の位置座標が詳細に得られている地図データが存在すれば、車両の現在位置に応じて、車両が道路のどの車線を走行しているかを判断して、車線変更の案内を行うことや、車両に横断歩道が接近していることを警告するなどの高機能な案内を実現することが可能となる。
しかし、従来の地図データは、これらの高精度、高機能な案内を実現するためには不十分な精度しか有していなかった。仮に車両の現在位置を精度良く把握したとしても、その位置情報を活かすだけの詳細な地図データが用意されていたとは言えなかったのである。
【0008】
路面の標示は道路上の位置座標を豊富にするための目的物として適している。例えば、横断歩道や車線境界線の位置座標が得られていれば、上述した高機能な案内の実現に資することができる。
しかし、従来技術では、道路面の画像から標示を認識する際の認識精度が十分とは言えなかった。
特許文献3は、道路ネットワークで与えられるリンクとの位置関係で標示の種別や位置を認定しているものの、先に説明した通り、リンクに付された座標は、道路のいずれの部分を表しているか厳密には分からないデータである。従って、リンクを基準として標示の位置を認識しても、十分な精度を確保することはできない。
また、特許文献3では、道路画像から抽出された領域の主軸とリンクとの角度等を特徴量として用いているが、主軸の方向は、この領域の抽出精度に依存しており、安定的に高い精度で求められるとは限らない。主軸に含まれる誤差を考慮して、標示の種別を判断する際の基準値の幅を広げれば、標示の誤認識を生じる可能性もある。
従来技術では、こうした誤認識への対処方法については検討されておらず、オペレータの手作業によって確認・修正するしかなかった。
【0009】
本発明は、これらの課題を解決し、道路面の合成画像から、路面の標示を認識する際における誤認識の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、コンピュータによって道路面に施された標示を含む路面標示地図を生成する生成方法として構成することができる。
本発明では、まず、コンピュータは、道路面を撮影する際の移動軌跡である複数のパスに沿って移動しながら標示を含む路面を撮影した連続画像の画像データと、この画像データの撮影位置を表す位置座標データとを入力する。
上述の画像データは、例えば、車両などの移動体に搭載した撮影装置によって撮影することができる。撮影装置としては、例えば、ディジタル・ビデオ・カメラなどを用いることができる。また、撮影装置には、撮影時の位置座標データを取得する位置計測装置を搭載しておくことが好ましい。位置計測装置は、例えば、GPS(Global Positioning System)や、ジャイロなどの慣性航法装置などを単独または組み合わせて用いることができる。また、処理の便宜上、撮影した画像と位置座標データを入力し、両者を同期させて記録する記録装置を用意しておくことが好ましい。
【0011】
画像データを入力すると、コンピュータは、画像データを構成する各フレーム画像を変換して、路面を真上から見た状態の正射画像を得る。正射画像は、各フレーム画像の一部を利用して生成してもよい。
そして、こうして得られた正射画像を位置座標データに基づいて、パス上に配置することにより、各パスの路面を表す連結画像を生成して表示する。この際、正射画像の一部が重なっても良い。正射画像は、例えば、その中心線がパスの進行方向に沿う状態で配置することが好ましい。
こうすることで連結画像がパスの本数分だけ得られる。
【0012】
また、コンピュータは、画像処理によって、連結画像に含まれる道路面の標示を認識する。
そして、認識された複数の標示間の位置および種別の相関関係に基づいて、標示についての誤認識を検出する。
本発明では、このように複数の標示間の相関関係を利用するため、標示単体で判定する場合に比較して、誤認識の有無を精度良く検出することが可能となる。標示間の相関関係を考慮することにより、認識された特定の標示が、認識された位置に存在すべき標示であるか否かを、周囲の状況から論理的に判断することが可能となるからである。
【0013】
本発明において、標示(以下、「路面標示」と呼ぶこともある)の認識は種々の方法を採ることができる。
第1の方法として、パターンマッチングを用いる方法が挙げられる。この方法では、まず、連結画像から標示に用いられる所定色の部分を抽出する。そして、標示の種別ごとに予め用意された標示パターンと抽出された部分とのマッチングによって標示の認識を行うのである。抽出すべき所定色としては、白および黄色を用いることができる。かかる領域を精度良く抽出するため、連結画像をグレースケール化し、所定以上の明度を有する領域を抽出する方法を採ることが出来る。
第1の方法は、比較的、複雑な形状の標示を抽出するのに適している。第1の方法を適用できる標示例として、矢印、Uターン、通行規制の時刻標示、転回禁止、速度規制などの数字、横断歩道予告、バスレーン文字、終わり記号などが挙げられる。
【0014】
標示を認識する第2の方法として、標示に該当する部分の幾何学的な条件に基づいて標示を特定する方法が挙げられる。この方法では、第1の方法と同じく、まず、連結画像から標示に用いられる所定色の部分を抽出する。そして、この抽出された部分のパスに対する方向および大きさに基づいて、標示の種別を認識する。標示を認識するための条件を以下に例示する。
横断歩道…パスに平行な方向に、均等な平行線が複数認識される領域;
自転車横断帯…パスに直交する線分のうち、一定の間隔で描かれている2本線を表しているもの(横断歩道の付近という条件を加味してもよい);
停止線…パスに直交する線分のうち、1本線を表しているもの;
車線境界線…パスに平行な線分のうち、所定長さ以上のもの;
減速帯…パスに直交する所定長さ線分が、パスに沿う方向に平行に配置されているもの;
ゼブラ…所定間隔で平行線が描かれている領域のうち、横断歩道および減速帯に該当しないもの;
【0015】
これらの標示を認識する際には、撮影時の基準点からの距離を表す距離軸を設定し、この距離軸上の各位置に正射画像を配置した直線状の連結画像を用いても良い。こうすることにより、距離軸に対する各標示の位置関係は、パスの絶対座標に関わらず一定となるため、比較的軽い負荷で安定的に標示を抽出することが可能となる利点がある。
直線状の連結画像を用いて標示を抽出した場合には、その後、抽出された標示も含めて連結画像を絶対座標系に写像することによって、標示の絶対座標を得ることができる。
【0016】
本発明において相関関係は、種々の態様で考慮することができる。
第1の態様として、複数の標示の種別の組み合わせを考慮するようにしてもよい。
路面標示の種別には、所定の組み合わせで描かれるものが含まれている。例えば、横断歩道と自転車横断帯とは隣接して標示されるのが通常であり、自転車横断帯が単独で描かれていることは稀である。
従って、標示が描かれる際の組み合わせを予めデータベース等で用意しておけば、認識された複数の標示について、この組み合わせの成否を判断することによって誤認識を検出することができる。
この組み合わせを考慮する際には、種別のみを判断要素としてもよいし、標示間の距離や、各標示の位置関係も判断要素に含めてもよい。
【0017】
第2の態様として、標示を認識する際の認識率を考慮するようにしてもよい。認識率とは、標示を認識する際の正確さを表す指標である。例えば、複数種類の画像を対象として同一の標示を認識させ、正確に認識された割合を認識率として用いることができる。
この場合、第2の態様では、各標示に対して、予め認識率に基づいて優劣を定めておき、認識率の高い標示を基準として、相関関係に基づく誤認識の検出を行う方法を採ることができる。例えば、認識率が高い標示は正しく認識されているとの前提で、相関関係を判断し、他の標示に誤認識の有無を判定するのである。
複数の標示間の相関関係が異常と検出された場合には、いずれの標示が誤認識されているのかを更に特定する必要がある。第2の態様によれば、優先度の高い標示を基準とすることにより、誤認識されている側の標示を比較的安定して特定することができる利点がある。
【0018】
第3の態様として、標示間の重なり状態に基づいて、誤認識を検出するようにしてもよい。
例えば、種別の異なる標示同士が重なっている部分では、何らかの誤認識があると判断することができる。標示の一部が相互に重なりあっている場合には、重なっている部分の標示全体の面積に対する割合を求め、所定値以上の割合で重なっている側に誤認識があると判断する方法を採っても良い。また、重なっている標示全体を誤認識と判断するのではなく、標示を、重なっている部分とそうでない部分とに分けた上で、重なっている部分について誤認識と判断するようにしてもよい。
標示は相互に重ならないように描かれているのが通常であるため、このように重なり状態を考慮することにより、比較的容易に誤認識の有無を判断できる利点がある。
【0019】
第4の態様として、文字からなる標示については、他の文字との位置関係に基づいて誤認識を検出するようにしてもよい。つまり、文字の場合には、横断歩道その他の異種の標示との相関関係ではなく、文字同士の相関関係を考慮するのである。もっとも、この態様は、異種の標示との相関関係を考慮することを禁じるものではない。
文字の場合、単独で描かれることはほとんどなく、複数の文字が近接して描かれるのが通常である。従って、文字同士の位置関係を考慮し、例えば、周囲に文字が存在しない場合には、誤認識されていると判断することができる。また、路面標示における文字間には標準的な間隔が規定されているから、複数の文字同士が、この間隔から極端に外れる位置関係にある場合には、いずれかに誤認識があると判断することができる。
このように文字の場合には、文字同士の位置関係を利用することにより、比較的容易に誤認識の有無を判断することが可能となる。
【0020】
第5の態様として、対向する車線に位置する標示の相関関係に基づいて、誤認識を検出するようにしてもよい。
路面標示は、車線の進行方向に応じて、運転者に必要な情報を与えるように描かれている。従って、進行方向が異なる対向車線では、標示の位置が進行方向にずれるのが通常である。このように、対向車線にある標示の位置関係における種々の特徴を考慮することによって、標示の誤認識の検出精度向上に資することができる。
【0021】
本発明では、例えば、ランダムなど任意の順序で処理対象となる標示を選択し、順に相関関係に基づいて誤認識を検出するようにしてもよい。
より好ましくは、標示の種別に応じて予め規定された順序で、種別ごとに誤認識の検出を行ってもよい。例えば、標示ごとに認識率が異なっている点を考慮し、認識率の高い順、または低い順に処理するようにしてもよい。また、誤認識の有無に用いられる相関関係が標示ごとに異なっている点を考慮し、関与する相関関係の多い順、または少ない順に処理するようにしてもよい。このように、予め規定された順序で処理するようにすることにより、誤認識の検出結果が、標示の選択順序などの変化によって影響を受けることを回避でき、安定した検出結果を得ることができる。
【0022】
本発明においては、各標示の形状を画像データとして抽出し、画像同士の重なり具合その他の位置関係を判断するようにしてもよい。
別の態様として、標示を包含する所定の幾何学形状からなる存在領域に基づいて、標示の位置の相関関係を判断するようにしてもよい。存在領域を利用すれば、各標示を比較的簡易に表すことができる。また、存在領域は、矩形など所定の幾何学形状であるため、存在領域同士の重なり具合や重心間の距離など、種々の位置関係を比較的容易に判断することができる利点がある。
【0023】
標示の誤認識が検出された場合、種々の対応方法が考えられる。
例えば、誤認識が検出された部分をオペレータに提示し、オペレータが手動で削除または修正するようにしてもよい。
また、誤認識と判断された標示を自動的に削除することによって、オペレータの負荷軽減を図っても良い。誤認識検出のために行われる相関関係の適否の判断には、複数の標示が関与するが、誤認識が検出された場合には、これらの複数の標示全てを削除するようにしてもよいし、この中で最も誤認識の可能性が高い標示のみを削除するようにしてもよい。誤認識の可能性については、認識率に基づいて判断することができる。
また、削除の態様は、全ての相関関係に対して固定的である必要はなく、相関関係に応じて変化させてもよい。例えば、複数の標示が、予め規定された組み合わせから外れている場合には、単独で用いられる可能性がない標示であれば全ての標示を削除すればよい。単独で用いられる可能性がある標示が含まれている場合には、その標示を残して他の標示を削除すればよい。
【0024】
また別の態様として、誤認識が検出された場合には、正しい標示に修正するようにしてもよい。誤認識の検出と同じく、相関関係に基づいて正しい標示を特定し、誤認識と判断された標示を、正しい標示に修正する方法を採ることができる。
例えば、標示が所定の組み合わせで用いられていない場合、その判定に用いた相関関係から、本来あるべき標示の組み合わせを特定し、誤っている標示を置換するのである。この修正も種々の態様を採ることができる。一例として、誤認識が検出された場合には、認識率の高い側の標示を正しいものと判断して、認識率が低い側の標示を、相関関係に基づいて特定される本来あるべき標示に置換する方法を採ることができる。また、全ての相関関係で必ずしも固定とする必要もなく、相関関係ごとに変化させてもよい。
【0025】
更に別の態様として、相関関係に基づいて、一つの標示が多重に認識されていると判断される部分が誤認識として検出された場合には、この多重に認識されていると判断された標示同士を、相互に結合するようにしてもよい。例えば、車線境界線では、認識を行う過程で、標示の画質によって、1本の境界線を構成する左右の輪郭が別々の境界線と認識されるなど、本来、一つの標示が、複数の標示であるかのように認識されることがある。かかる場合には、複数の標示が、非常に近接して存在していたり、相互に重なったりする位置関係にあることが多い。そこで、逆に、同一種別の標示が重なっているか非常に近接して存在するなどの位置関係にある場合など、各標示の種別および位置関係などの相関関係を参照することによって、一つの標示が複数の標示として誤認識されているか否かを判定することが可能となる。上述の態様によれば、このように誤認識されている部分を結合することによって、本来認識されるべき状態に修正することができ、標示の抽出精度を向上させることができる。
多重に認識されているか否かの判断は、全標示を対象として行ってもよいし、車線境界線など特定の標示のみを対象として行っても良い。
【0026】
本発明は一つのパスから得られた連結画像からの標示の抽出結果を対象とすることもできるし、複数のパスによって得られた連結画像を合成して得られた画像(以下、「道路画像」と称することもある)からの標示の抽出結果を対象とすることもできる。
【0027】
上述の合成は、次の方法で行うことができる。
コンピュータは、まず、複数のパスのそれぞれについて標示を抽出する。そして、複数のパスのうち2本以上のパスの連結画像に共通して撮影されている領域内で、それぞれの連結画像で得られた標示に基づいて、パス間で対応する対応点を特定する。例えば、2本のパスに横断歩道が共通に撮影されている場合には、それぞれの連結画像において横断歩道の縞模様のいずれかの角を対応する対応点とすることができる。対応点の特定は、距離軸上に正射画像を配置した連結画像ではなく、位置座標データに基づいて、パス上の各位置に正射画像を配置した絶対座標系での連結画像を用いることが好ましい。
コンピュータが、複数のパス間で、抽出された標示の種別および位置関係を比較し、標示の対応関係を特定することによって、標示上のいずれかの点を対応点として自動的に特定するようにしてもよい。また、連結画像および抽出された標示をコンピュータのディスプレイ上に表示し、オペレータがこの表示を見て、対応点を指示するようにしてもよい。
こうして特定された対応点同士のずれは、位置座標の誤差を表すことになる。
【0028】
コンピュータは、複数のパスのうち1本を基準パスとして設定する。この設定は、対応点が特定された後に行っても良いし、その前に行っても構わない。そして、対応する対応点の位置が一致するように設定された移動ベクトルに基づいて、基準パス以外のパスの連結画像に対して補正をかけることで、複数のパスにまたがる道路面の合成画像を生成する。
この補正は、移動ベクトルに基づいて、連結画像を構成する領域ごとに平行移動することによって行う。この領域は、一旦、生成された連結画像を元の正射画像に相当するサイズまたは別の任意に設定されたサイズに分割したものでもよい。また、連結画像を生成する際に、正射画像を合成せずに配置するだけに留めておく場合には、各正射画像ごとに位置を修正するようにしてもよい。
【0029】
こうすれば、撮影時の位置座標データに基づいて各パスの路面を表す連結画像を生成することができるため、位置精度が確保された状態で連結画像を得ることができる。
そして、複数のパスの中から、一つを基準パスと設定し、この基準パスは固定した状態で、他のパスの位置を修正するため、基準パスの位置精度を確保した状態で、各パス間の位置精度の誤差を解消することができる。
また、各パスの合成は、連結画像を領域ごとに平行移動することによって行うため、各領域の正射画像に歪みを加えることなく位置を修正することができる。従って、この修正時には路面の標示は、各領域の正射画像内での相対的な位置精度を保持しておくことができる。
以上の作用によって、本発明の生成方法によれば、位置精度を確保した状態で、路面の標示を含む合成画像を得ることができる。
【0030】
本発明の生成方法において、基準パスは、オペレータが指定するなど、種々の方法で設定することができる。
コンピュータは各パスについて、位置座標データの精度の評価データを併せて入力し、この評価データに基づいて基準パスを設定するようにしてもよい。例えば、複数のパスのうち、評価データに基づいて位置精度が最も高いと評価されるパスを基準パスと設定する方法が挙げられる。こうして設定された基準パスに他のパスを合わせるようにして合成画像を生成すれば、最も高い位置精度を確保することが可能となる。
評価データは、直接に位置精度を定量的に表すデータとしてもよいし、位置精度の算出に用いることができるデータとしてもよい。
【0031】
本発明は、必ずしも上述した特徴を全て備えている必要はなく、適宜、その一部を省略してもよいし、いくつかの特徴を適宜、組み合わせて備えるようにしてもよい。
本発明は、上述の生成方法に限らず、この生成方法によって道路面に施された標示を含む路面標示地図を生成する生成装置として構成してもよい。
また、上述の生成方法をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラムとして構成してもよいし、かかるコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成してもよい。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等、コンピュータが読取り可能な種々の媒体を利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の実施例について以下の順序で説明する。
A.システム構成:
A1.道路面撮影システム:
A2.路面標示地図生成装置:
B.処理概要:
B1.中間データ構成:
B2.処理例:
B3.位置合わせ加工概要:
C.路面標示地図生成方法:
C1.連結画像生成処理:
C2.位置合わせ加工:
C3.基準パス設定処理:
C4.連結画像移動処理:
C5.透明化ポリゴン設定処理:
C6.ペイント認識処理:
C7.ペイント解析処理:
D.効果:
【0033】
A.システム構成:
本実施例では、車両に搭載したビデオカメラで撮影した道路面の画像を用いて、路面の標示を含む地図(以下、「路面標示地図」と呼ぶ)を生成する方法を示す。
本実施例のシステムは、道路面撮影システムと路面標示地図生成装置から構成される。道路面撮影システムは、道路を走行しながら道路面の画像をビデオカメラで撮影するシステムである。本実施例では、対象となる道路を、異なる走行軌跡で複数回走行し、それぞれ画像を撮影する。
路面標示地図生成装置は、道路面撮影システムで撮影された道路面の画像に基づいて路面標示地図を生成する装置である。まず、上述の各走行軌跡上に、撮影された画像を正射画像に変換した上で配置することで、道路面の一部の車線についての連結画像を生成する。そして、複数の走行軌跡の画像を、位置座標が整合するように配置することで道路全体の画像を生成する。また、こうして生成された連結画像から道路面の標示を抽出する。
以下、道路面撮影システムと路面標示地図生成装置のシステム構成について説明する。
【0034】
A1.道路面撮影システム:
図1は実施例としての道路面撮影システムの構成を示す説明図である。
道路面撮影システム100は、車両に搭載されたシステムである。図の下方のブロック図に基づき、システム構成を説明する。
ビデオカメラ120は、走行中の道路面の画像を撮影する。
位置計測部110は、撮影中の位置座標を計測する装置である。位置計測部110は、GPS(Global Positioning System)114、IMU(Inertial
Measurement Unit)116、DMI(Distance Measuring Instrument)118およびコントローラ112から構成されている。GPS114は、全地球測位システムである。IMU116は、内部に3軸のジャイロおよび加速度センサを備えた慣性計測装置である。DMI118は、車輪の回転を検出して移動距離を計測する装置である。
【0035】
コントローラ112は、GPS114、IMU116、DMI118からの信号を受け、撮影時の位置座標を逐次出力する。位置座標は任意の座標系を採ることができるが、本実施例では、緯度経度および標高を用いた。
また、これらの信号の取得後、位置座標の計測精度の評価値である自己推定位置精度σを併せて出力する。一般にGPS114は、位置座標の検出に使用される人工衛星の配置、電波の受信状況、建造物などに反射した電波を受信することによるマルチパスの有無などによって検出精度が変動することが知られている。またディファレンシャル測位では、基準局の稼働状況によっても検出精度は影響を受ける。
自己推定位置精度σは、任意に定義可能である。例えば、GPS114の人工衛星の配置によって定まる精度低下率(DOP(Dilution of Precision))を用いて自己推定位置精度σを算出するようにしてもよい。
自己推定位置精度σは、取得されたデータを後述する路面標示地図生成装置で処理する際に、解析するようにしてもよい。
【0036】
記録装置130は、ビデオカメラ120および位置計測部110の出力信号を同期して記録する。本実施例では、記録装置130は、汎用のパーソナルコンピュータに、記録用のハードディスク140を増設した装置によって構成した。ハードディスク140内には、図示する通り、画像データ142、同期データ144、計測データ146が記録される。画像データ142は、ビデオカメラで撮影された画像の動画ファイルである。計測データ146は、位置計測部110で得られた位置座標である。同期データ144は、画像データ142と計測データ146との取得時刻を対応づけるデータである。同期データ144および計測データ146を参照することにより、画像データ142のフレームごとに撮影地点の位置座標を得ることができる。
【0037】
撮影時の記録用のデータ構造は、上述した構造に限られない。例えば、計測データ146は、画像データ142の各フレームの位置座標を順次、格納するデータとしてもよい。こうすることにより、同期データ144を省略することが可能となる。かかるデータを取得するためには、例えば、記録装置130がビデオカメラ120のフレームごとに同期信号を位置計測部110に出力し、その時の位置座標を取得する方法を採ることができる。
【0038】
図の上方に、車両に搭載した状態を模式的に示した。
ビデオカメラ120は、前方画像を撮影できるよう、車両の前方に設置する。画角を広げるために広角レンズを装着してもよい。
GPS114のアンテナ114Aは、車両のルーフ上部に設置する。本実施例では、GPS用の人工衛星からの電波を確実に受信し、十分な位置精度を確保することができるよう、アンテナ114Aを車両の前後に主副の2台設置した。いずれか一台のみを用いるものとしてもよい。
IMU116、DMI118、コントローラ112は、それぞれ車両の後部に設置した。DMI118は、後輪の回転を検出可能に装着されている。
記録装置130およびハードディスク140は車室内の任意の場所に設置可能であるため、図示を省略した。
【0039】
A2.路面標示地図生成装置:
図2は実施例としての路面標示地図生成装置の構成を示す説明図である。道路面撮影システムで撮影された道路面の画像に基づいて路面標示地図を生成するための装置である。本実施例では、完全に自動で路面標示地図を生成するのではなく、適宜、オペレータからのコマンドによる指示を受けながら対話型または半自動で処理を進める方法を採用した。
【0040】
図中には、路面標示地図生成装置200の機能ブロックを示した。本実施例では、路面標示地図生成装置200は、図示する各機能を実現するためのコンピュータプログラムを、汎用のパーソナルコンピュータにインストールすることによってソフトウェア的に構築した。これらの機能ブロックの一部は、OS(Operating System)によって提供してもよい。また、これらの機能ブロックは、それぞれハードウェア的に構成することも可能である。また、ここでは説明の便宜上、スタンドアロンで稼働する装置として説明するが、各機能ブロックをネットワークで接続された複数のコンピュータに分散して用意してもよい。
【0041】
主制御部201は、各機能ブロックを統合制御する。データ入力部204は、道路面撮影システム100で取得した各種データを記録したハードディスク140から、画像データ142、同期データ144、計測データ146を入力する。本実施例では、ハードディスク140を道路面撮影システム100から路面標示地図生成装置200に接続し直すことによって、これらのデータを受け渡す方法を採ったが、ネットワーク経由でデータを送信する方法や、DVDなどの記録媒体を用いてデータを受け渡す方法を採ってもよい。
【0042】
コマンド入力部202は、コンピュータに備えられたキーボードやマウスなどの操作を介して、オペレータからのコマンドを入力する。
表示制御部203は、コンピュータのディスプレイに、路面標示地図生成装置200での処理結果を表示したり、オペレータが種々のコマンドを指示するための画面を表示したりする。コマンド入力部202、表示制御部203の機能は、コンピュータのOS(Operating System)によって提供してもよい。
【0043】
軌跡データ算出部205は、計測データ146に基づき、画像データ142を撮影した時の走行軌跡(以下、「パス」と呼ぶこともある)を表すデータを生成する。本実施例では、軌跡データ算出部205は、道路面撮影システム100によって得られる位置座標を記録した計測データ146に対して、位置座標が既知の基準局から提供されている検出情報に基づく補正を施すことによって軌跡データを生成する。基準局の情報を用いて位置座標を補正する技術は周知であるため、説明を省略する。この処理によって位置座標の精度を向上させることが可能となる。
もっとも、基準局からのデータを用いることは必須ではない。計測データ146で得られた位置座標をそのまま用いるものとしてもよい。かかる場合には、軌跡データ算出部205は省略することも可能である。
【0044】
画像変換部206は、正射投影、即ち画像データ142の各フレーム画像を真上から見た状態に変換して正射画像を生成する。
1パス合成部207は、画像変換部206によって得られた各フレーム画像の正射画像を、その正射画像内の代表点が、撮影時の位置座標に基づいて定まる位置座標に来るように配置することによって、撮影時の走行軌跡(パス)に沿った道路面の画像を合成する。こうして合成された画像を、連結画像と呼ぶものとする。合成された連結画像は、処理データ記憶部210に保存される。
本実施例では、それぞれの道路に対して、異なる走行軌跡で、複数回走行して、撮影を行う。1パス画像合成部207は、それぞれのパスごとに合成画像を生成する。この結果、連結画像は、パスの本数に応じて、複数生成される。
なお、複数パスの画像は異なる時期に撮影したものでもよい。例えば、ある時期に道路面の画像を撮影し、路面標示を含む地図を整備した後、所定の時期が経過した時点で、再度、同じ道路を走行して画像を撮影し、前回の画像と今回の画像とを合成することによって、地図に路面標示の変化を反映させるようにしてもよい。
【0045】
位置合わせ処理部220は、1パス画像合成部207で生成された複数の連結画像を、位置合わせ処理、即ち連結画像間の位置座標の誤差を修正して路面の画像が整合するように配置する処理を行うことで、道路全体の正射画像(以下、「道路画像」と呼ぶこともある)を生成する。位置合わせ処理は、オペレータからの指示に応じて行う。処理内容は後述する。
位置合わせで得られた道路画像は、処理データ記憶部210に保存される。
【0046】
透明化ポリゴン設定部221は、得られた道路画像上に、オペレータの指示によって、透明化ポリゴンを設定する。上述の位置合わせを行う際には、隣接するパスに対応する正射画像の一部が重なり合うことがある。そして重なった部分では、下側に配置された正射画像の方に、路面標示が鮮明に写されている場合もある。透明化ポリゴンは、このような場合に、下側の画像が表示されるように上側の正射画像の一部を透明化する処理を施す領域を指定するためのポリゴンである。透明化ポリゴンを設定することにより、路面標示を正確に把握可能な地図を提供することが可能となる。
【0047】
ペイント認識部223は、道路面の標示(以下、「ペイント」と呼ぶこともある)を認識する。本実施例では、1パス画像合成部207で生成された連結画像に基づいて標示の認識を行うものとした。ペイント認識結果は、処理データ記憶部210に保存される。
【0048】
ペイント解析部225は、ペイント認識結果に対し、ペイント相互の相関関係に基づいて、誤認識の有無を検出する。誤認識が検出されたペイントに対しては、削除など、誤認識の態様に応じた対処を施す。これらの対処結果は、ペイント認識結果に反映される。
【0049】
路面標示地図生成装置は、以上で生成された道路画像に基づいて路面標示地図を出力することができる。例えば、道路画像を印刷可能なファイルとして出力してもよい。また、路面標示地図を電子地図として生成するように、道路画像を電子データとして出力してもよい。また、これらの出力に先立って、道路画像に基づいて路面標示の位置座標や形状データを取得する処理を行うようにしてもよい。
【0050】
B.処理概要:
B1.中間データ構成:
図3は路面標示地図の生成過程における中間データを示す説明図である。これらのデータは、順次、処理データ記憶部210(図2参照)に記憶される。
本実施例では、道路を走行しながらビデオカメラ120および位置計測部110で取得したデータが記録装置130としてのパーソナルコンピュータによってハードディスク140内に格納されている。格納されるデータとしては、画像データ142、計測データ146、および両者の同期をとるための同期データ144がある。
本実施例では、異なる時期に取得された複数の画像を処理対象とすることも可能ではあるが、以下では、同時期に異なる走行軌跡で撮影を行った場合を例にとって説明する。
【0051】
計測データ146は、撮影時の位置座標データの記録である。本実施例では、基準局データ150を参照して、計測データ146を補正することにより、軌跡データ210aを算出する。これは、先に図2で説明した軌跡データ算出部205が行う処理である。基準局データ150は、位置座標が既知の基準点におけるGPSでの検出結果を表すデータであり、例えば、国土地理院が提供している基準点データなどを用いることができる。ここで得られた軌跡データ210aは、以下、それぞれの処理において、道路面の画像を撮影した際の軌跡(以下、「パス」と呼ぶこともある)を緯度経度、高度からなる絶対座標で表すデータとして利用される。
【0052】
一方、画像データ142、同期データ144、軌跡データ210aからは、路面テクスチャ210cが生成される。また、同期データ144と軌跡データ210aから、路面軌跡データが生成される。
本実施例では、各道路を複数回走行して、道路面の画像を撮影する。従って、路面軌跡データ210bおよび路線軌跡データ210bは、各道路に対して複数パス分、生成されることになる。
【0053】
路面テクスチャ210cおよび路線軌跡データ210bを用いて、連結画像210dが生成される。連結画像210dは、図2中の1パス画像合成部207によって生成される画像である。つまり、連結画像210dとは、路線軌跡データ210bで表される位置座標に基づき、各路面テクスチャ210cを配置することによって生成される各パスの路面画像である。連結画像210dも、各道路に対して複数パス分、生成されることになる。
連結画像210dは、路面テクスチャ210cを結合した一つの画像ファイルとして生成することもできる。本実施例では、後に続く処理の便宜上、合成画像として生成するのではなく、路面テクスチャ210cを配置して連結画像210dを生成するための情報(以下、「登録データ」と呼ぶこともある)を、路面テクスチャ210cの各画像と対応づけて格納するものとした。かかる情報には、路面テクスチャ210cを配置する位置座標、配置する際の姿勢(角度)、および隣接する路面テクスチャ210cを特定する情報、隣接する路面テクスチャ210cとの上下関係などを含めることができる。
【0054】
こうして得られた連結画像210dを用いて、位置合わせおよび透明化ポリゴン設定などの処理を行う。これらの処理は、図2の位置合わせ処理部220、透明化ポリゴン設定部221が行う処理である。この処理によって、複数パス分の連結画像210dを合成して、道路ごとに道路画像210eを得ることができる。
道路画像210eについても、合成画像として生成してもよいし、路面テクスチャ210cを配置して道路画像210eを生成するための情報を、路面テクスチャ210cの各画像と対応づけて格納するようにしてもよい。本実施例では、後者の方法を採用した。それぞれの路面テクスチャ210cを配置する位置座標、配置する際の姿勢(角度)などの情報は、道路画像用登録データ210fとして保存されている。また、位置合わせの過程で、路線軌跡データ210bに対して、位置誤差を修正する処理が施されるため、この原データに対する修正過程を表す情報を、軌跡用登録データ210gとして保存する。
この他、連結画像210dのデータ(路面テクスチャ210c、路線軌跡データ210bを含む)も併せて保存する。原データである画像データ142、軌跡データ210aも保存しておくことが好ましい。仮に、合成画像化された形で連結画像210dを保存している場合には、道路画像210eは、連結画像210dを合成することになるため、合成の繰り返しで原データに比較して画質が劣化するおそれがある。これに対し、本実施例のように、路面テクスチャ210cも含めて、原データに近いデータを残しておくことにより、これらのデータを利用して道路画像210eを生成することが可能となる。従って、合成の繰り返しなど、画像データに重畳的に画像処理が施されることを抑制でき、道路画像210eの画質を向上させることが可能となる。
【0055】
B2.処理例:
次に、本実施例における処理の概要理解を容易にするため、処理例を示す。
図4は実施例における道路画像の生成例を示す説明図である。図4(a)には、1本のパスに沿って得られた連結画像の生成例を示し、図4(b)には、複数パスの連結画像を配置して得られた道路画像の例を示している。
図4(a)中の直線L41〜L44は、それぞれ道路面撮影システム100で走行しながら道路画像を撮影した際の走行軌跡(パス)を表している。図4(a)のPIC41は、パスL43を走行して得られた画像データに基づいて生成された連結画像である。本実施例では、広角レンズを用いて撮影しているため、1回のパスでも複数車線を覆うだけの連結画像を得ることができている。連結画像の両端が、のこぎり刃状にギザギザになっているのは、画像データの各フレームを正射投影した際に生じる形状歪みの影響である。この連結画像PIC41は、ギザギザの山数に応じたフレーム数の正射画像(路面テクスチャ)を配置して生成されているのである。
このような連結画像は、図中のパスL41〜L44のそれぞれに対して得られる。
【0056】
図4(b)は、パスL41〜L44に対する連結画像を合成して得られた道路画像PIC42を示している。図4(a)よりも幅広く、反対車線まで含めて道路画像が生成されていることが分かる。複数パスの連結画像を合成する際、各パスの位置座標に誤差があると、連結画像間にずれが生じる。これらのずれが存在すると、図4(b)中の横断歩道、車線境界線などの標示も途中でずれた状態で表示されてしまう。本実施例では、各パスの連結画像間の位置座標の誤差を修正しつつ合成を行う。この処理を位置合わせと呼ぶ。このように位置合わせを行って連結画像を合成することにより、図4(b)に示すように、横断歩道、車線境界線などの標示が整合した道路画像を得ることができる。
【0057】
B3.位置合わせ加工概要:
図5は位置合わせ加工の概要を示す説明図である。本実施例では、複数の連結画像に共通して撮影されている標示に基づいてオペレータが指定した対応点の位置を合わせるように、連結画像を平行移動することによって位置合わせを行う。
図5(a)には対応点が1つだけ指定された場合の処理方法を示した。図中には、2本の連結画像PIC51、PIC52が描かれている。これらには、それぞれ菱形の標示、つまり横断歩道の予告標示が含まれている。ただし、図5(a)左側の状態では、連結画像PIC51、PIC52には相対的に位置誤差があるため、標示の位置がずれている。
オペレータは、この表示画面を見ながら、マウス等のポインティングデバイスを用いて対応点を指定する。図の例では、横断歩道の予告表示の頂点に当たるP51、P52を指定した状態を示した。これらの対応点P51、P52は、連結画像PIC51、PIC52に位置誤差がなければ、本来、同じ位置に重なるはずの点である。そこで、本実施例では、対応点P51、P52が一致するよう、図中に矢印で示すように連結画像PIC51、PIC52を平行移動させる。
この際、連結画像PIC51、PIC52の一方を基準とし、他方を平行移動する方法を採った。図の例では、連結画像PIC51を基準とし、連結画像PIC52を移動させた例を示している。このように移動することにより、予告標示のずれが解消した状態の道路画像PIC53を得ることができる。
【0058】
図5(b)には対応点が複数指定された場合の処理方法を示した。図中には、2本の連結画像PIC54、PIC55が描かれている。これらには、それぞれ横断歩道の予告標示が含まれている。但し、図5(b)の左側の状態では、連結画像PIC54、PIC55には相対的に位置誤差があるため、標示の位置がずれている。
この状態で、オペレータが、2組の対応点を指定したとする。対応点P54、P53の組と、対応点P56、P55の組である。連結画像PIC54では、連結画像PIC55に含まれる予告標示M52は全体が描かれており、連結画像PIC54に含まれる予告標示M51は一部が消えている。このような状態であっても、対応点P55、P56が対応することは明らかであるため、対応点として指定することは可能である。
このように複数組の対応点が指定されると、連結画像PIC54を基準として、それぞれの対応点が一致するように、連結画像PIC55を移動させる。ただし、対応点P53をP54に一致させるための第1の移動量と、対応点P55をP56に一致させるための第2の移動量とが同じであるとは限らない。そこで、対応点P53とP55との間の領域では、第1の移動量、第2の移動量を直線補間して、各点の移動量を設定する。こうすることにより、予告標示のずれが解消した状態の道路画像PIC56を得ることができる。
【0059】
図5(b)中には、透明化ポリゴンの設定例も併せて示した。
この例では、連結画像PIC54中の予告標示M51は半分が欠けている。この状態で位置合わせを行うと、この例では、連結画像PIC54をPIC55の上側に重ねるように表示しているから、連結画像PIC55の予告標示M52は、連結画像PIC54によって覆い隠されてしまう。この結果、連結画像PIC55では完全な状態で描かれている標示M52を道路画像PIC56で活かすことができない。
そこで、このような場合に、オペレータの指示によって予告標示M52を取り囲むように透明化ポリゴンTP50を設定する。透明化ポリゴンTP50が設定された箇所では、上側の連結画像が透明化され、切り取られたように表示される。この結果、透明化ポリゴンTP50の部分では、連結画像PIC54の下側に配置された連結画像PIC55に描かれている予告標示M52が表示される。
本実施例では、このように透明化ポリゴンを設定可能とすることによって、それぞれの連結画像で描かれている標示を、道路画像においても有効活用することができる。
【0060】
図6は交差点が存在する場合の位置合わせの手順を示す説明図である。図の煩雑化を避けるため、ここでは連結画像のパスの位置関係のみを示した。図中には、2つの交差点周辺の道路が描かれている。縦の道路では、それぞれパスBP61、BP62に沿って連結画像が得られているとする。横の道路については、破線で示したパスBP63b、BP64b、NP61bに沿って連結画像が得られているとする。
【0061】
本実施例では、複数のパス間の位置合わせを行う際には、いずれか一つのパスを基準パスに設定し、他のパスを平行移動して基準パスに合わせる。基準パス以外のパスを、以下、標準パスと呼ぶものとする。基準パスおよび標準パスは、任意の方法で設定可能であるが、本実施例では、後述する通り、位置精度が高いものを基準パスとして設定している。
図6の例では、縦の道路については、それぞれ単一のパスしか存在しないため、パスBP61、BP62が基準パスとなる。
横の道路については、区間D61ではパスBP63bとNP61bのうち位置精度が高い側を基準パスとし、区間D62についてはBP64bとNP61bのうち位置精度が高い側を基準パスとする。ここでは、それぞれパスBP63b、BP64bが基準パスとして設定されているものとする。更に、パスBP63b、BP64b間の位置精度を比較して、優劣を決める。パスBP63b、BP64bはそれぞれ区間D61、D62の基準パスではあるが、一本の道路に配置された連続するパスなので、これらのパス間でも位置合わせを行う必要があるからである。図6の例では、パスBP63bの方が、パスBP64bよりも位置精度が高いものとする。
この結果、横のパスについては、基準パスBP63b>基準パスBP64b>標準パスNP61bの順に位置合わせの優先度が定まる。
【0062】
次に、上述の優先度に従って、それぞれのパスの位置合わせを行う。縦のパスBP61、BP62は既に位置合わせが完了しているものとする。
まず、基準パスBP63bの位置合わせを行う。オペレータの指示によって、基準パスBP63b上の対応点P63bが指定され、その本来の位置として、点P63aが指定されたとする。この結果、基準パスBP63bは、対応点P63bが、点P63aに一致するように移動され、実線で示した基準パスBP63aが得られる。
図示を省略したが、基準パスBP63bに対応した連結画像も基準パスBP63aに合わせて移動する。本実施例では、基準パスBP63bに沿って路面テクスチャを配置することによって連結画像を表示しており、これらの路面テクスチャを合成してはいない。従って、基準パスBP63aへの移動が行われた場合には、基準パスBP63aに沿うように、各路面テクスチャの位置を平行移動することによって、基準パスBP63aの連結画像を得ることができる。
【0063】
次に、基準パスBP64bの位置合わせを行う。オペレータの指示によって、基準パスBP64b上の対応点P65b、P64bが指定され、その本来の位置として、点P65a、P64aが指定されたとする。この対応点は、基準パスBP63aの連結画像に基づいて指定されている。つまり、基準パスBP63bを基準パスBP63aに位置合わせする処理の結果に応じて、基準パスBP64bの位置合わせは影響を受けることになる。
対応点が指定されると、基準パスBP64bは、対応点P65b、P64bが、点P65a、P64aに一致するように移動され、実線で示した基準パスBP64aが得られる。これに合わせて、基準パスBP64bの連結画像を構成していた路面テクスチャも、それぞれ基準パスBP64a上に平行移動される。
【0064】
最後に、標準パスNP61bの位置合わせを行う。オペレータの指示によって、標準パスNP61b上の対応点P68b、P67b、P66bが指定され、その本来の位置として、点P68a、P67a、P66aが指定されたとする。この対応点は、基準パスBP63a、BP64aの連結画像に基づいて指定されている。つまり、基準パスBP63bを基準パスBP63aに位置合わせする処理、および基準パスBP64bを基準パスBP64aに位置合わせする処理の結果に応じて、標準パスNP61bの位置合わせは影響を受けることになる。
対応点が指定されると、標準パスNP61bは、対応点P68b、P67bが、点P68a、P67aに一致するように移動されるとともに、対応点P67b、P66bが、点P67a、P66aに一致するように移動される。これらの3点は一直線上にはないから、結果として、標準パスNP61bは、折れ線状の標準パスN61aに移動される。これに合わせて、標準パスNP61bの連結画像を構成していた路面テクスチャも、それぞれ標準パスNP61a上に平行移動される。
【0065】
本実施例では、図6に示すように複数のパスが存在する場合には、以上で説明した手順によって、位置精度が高いパスから優先的に位置合わせが行われる。こうすることによって、全体の位置精度を十分に確保しつつ位置合わせを行うことができる。
例えば、図6の処理において、位置精度が低い順、つまり標準パスNP61b、基準パスBP64b、基準パスBP63bの順に位置合わせをしたとする。この場合には、基準パスBP64bの位置合わせは、標準パスNP61bの位置合わせの影響を受け、位置精度が低下する。基準パスBP63bの位置合わせは、標準パスNP61b、基準パスBP64bの位置合わせの影響を受け、位置精度が低下する。従って、位置精度が低い順に位置合わせを行うと、パス間の相互作用によって全体の位置精度が低下してしまう。
本実施例では、これとは逆に、位置精度が高い順に位置合わせを行う。従って、最も位置精度が高いパスの位置精度を劣化させることなく、全体の位置合わせを行うことが可能となるのである。
【0066】
C.路面標示地図生成方法:
以下、図1〜6で説明した路面標示地図の生成方法について、オペレータが必要に応じて指示を行う場合を例にとって、詳細に説明する。
まず、連結画像生成処理、つまり図3中の路面テクスチャ210c、路面軌跡データ210bに基づいて各パスの連結画像210dを得る処理について説明する。
次に、位置合わせ加工、つまり複数パスに対する連結画像210dの位置合わせを行う処理、および位置合わせ加工の中で行われる基準パス設定処理、連結画像移動処理について説明する。
また、透明化ポリゴンの設定処理について説明する。透明化ポリゴンの設定に関しては、まず、処理概要の理解を容易にするため、オペレータが指定する場合を例にとって説明する。
上述の一連の処理においては、路面標示地図生成装置が連結画像内の標示の位置を表示するようにすれば、オペレータが対応点や透明化ポリゴンの位置を容易に指定可能となる。また、自動的に対応点を特定したり、透明化ポリゴンを設定したりすることも可能となる。こうした処理を可能にするための処理として、ペイント認識処理について説明する。
そして、ペイント認識処理の結果に対して、誤認識の有無を判定し、誤認識が検出された時には、ペイントの削除などの対処を行うペイント解析処理について説明する。
【0067】
C1.連結画像生成処理:
図7は連結画像生成処理のフローチャートである。ハードウェア的には路面標示地図生成装置200のCPUが実行する処理である。これは、図2に示した画像変換部206、1パス合成部207の処理に相当する。
処理を開始すると、CPUは、まずフレームデータを読み込む(ステップS10)。フレームデータとは、道路面撮影システム100(図1)のビデオカメラ120で撮影された画像データ142を構成する各フレームの画像である。
【0068】
図中にフレームデータの例を示した。ビデオカメラ120は、道路面撮影システム100の前方に向けて設置されているため、フレームデータには、車両の前方の道路、前方車両などが写っている。本実施例では、道路面の画像を生成したいため、このフレームデータの一部の領域を切り出して使用する。図中の領域A71は、道路面のみが含まれるように設定された切り出し領域を現している。本実施例では、車両の前方5〜7mの領域の画像を取得するように領域A71を設定した。領域A71の各フレーム内での相対的な位置は一定である。
領域A71は、上述の例に限らず、任意に設定可能である。ビデオカメラ120が一定のフレームレートで画像を撮影するため、フレームデータは、道路面を間欠的に撮影した画像群となる。従って、領域A71は、間欠的に撮影された画像群を並べた時に、道路が連続画像として再現できるように範囲を決定することが好ましい。例えば、領域A71の縦幅を狭くすれば、車両の速度が速い場合には、あるフレームデータから切り出された領域と、次のフレームデータから切り出された領域との間に隙間が生じやすくなる。一方、領域A71の縦幅を広くすれば、前方車両や空、建物など、道路画像とは異なる雑多な映像が含まれやすくなる。領域A71は、これらの影響を考慮した上で、設定すればよい。
【0069】
次に、CPUは、取得されたフレームデータを正射画像(路面テクスチャ)に画像変換する(ステップS12)。図中に処理の概要を示した。上側にはフレームデータの例である。ここでは路面の状態のみが撮影され、道路の左右の車線規制線L71、L72および標示M7が写されている例を示した。前方を撮影した画像であるため、パース(遠近法)の影響で、本来平行な車線規制線L71、L72が、ハの字状に写されている。
先に説明した通り、このフレームデータの一部の領域A71を切り出して使用する。
下段には、領域A71の画像を正射投影変換した状態を例示した。道路を真上から見た画像に変換するため、左右の車線規制線L71、L72は図示する通り、平行な線分に変換される。標示M7も同様に真上から見た状態の形状に変換される。
【0070】
正射投影変換の方法を説明する。
まず、道路面撮影システム100を搭載した車両は水平面上を走行しており、被写体である道路も同一水平面上にあるものとする。
この時、道路画像、即ちフレームデータの画面上の2次元座標をm=[u,v]とする。また、地面に固定された世界座標系の3次元座標をM=[X,Y,Z]とする。これらの各座標に1の要素を直積で加えたベクトルを、次式(1)の通り定義する。
【0071】
【数1】

【0072】
3次元座標Mと、その投影画像の2次元座標mとの関係を以下の関係式(2)(3)によりモデル化する。
【0073】
【数2】

【0074】
ここで、sはスケール・ファクター;
[Rt]は、外部パラメータ行列;
Rは回転行列;
tは平行移動行列;
Aは内部パラメータ行列である。
【0075】
内部パラメータ行列Aは、ビデオカメラ120の焦点距離等を考慮した内部的なパラメータであり、実画像座標系(xy座標系)からフレーム座標系(uv座標系)への写像パラメータを表す。
α、βはそれぞれu軸、v軸方向のスケール因子、γは2つの画像軸のスキューにより表されるパラメータ;
[u0,v0は、画像の主点の座標(主点座標)である。
画像のピクセルサイズを(k、k)、u軸とv軸とのなす角をθ、焦点距離をfとすると、α、β、γは次式(4)で表される。
【0076】
【数3】

【0077】
外部パラメータ行列[Rt]は、ビデオカメラ120の設置位置、設置姿勢などによる外部的なパラメータであり、世界座標系(XYZ座標系)から実画像座標系(xy座標系)への写像パラメータを表す。世界座標系は、ビデオカメラ120の真下の路面を原点とし、車両の進行方向に対し垂直な水平軸をX軸、鉛直軸をY軸、進行方向の水平軸をZ軸とする。
平行移動ベクトルtは、世界座標系において原点に対する実画像の画像主点の移動ベクトルである。
ビデオカメラ120の高さ(実画像の画像主点の高さ)をhとすると、平行移動ベクトルtは次式(5)で表される。
【0078】
【数4】

【0079】
また、世界座標系において、実画像のヘディング方向の回転角(ヨー角)をφ、ピッチ角をω、ロール角をκとすると、回転行列Rは次式(6)で表される。
【数5】

【0080】
内部パラメータ行列Aは、事前の測定によって得られる。
ヨー角φ、ピッチ角ω、ロール角κおよび画像主点の高さhは、次の手順で得られる。まず、初期状態、即ち車両が水平な地面に設置されている状態において、ヨー角φ0、ピッチ角ω0、ロール角κ0、および高さh0の基準値を計測しておく。次に、走行中には逐次、車両の姿勢角の変化および車高の変化をジャイロ、加速度センサ等で記録しておき、上述の基準値にこの変化を反映することで、各地点でのヨー角φ、ピッチ角ω、ロール角κおよび高さを得ることができる。
【0081】
正射投影変換は、これらのパラメータに基づき、式(2)を用いることにより、行われ、フレーム座標系(uv座標系)の道路画像を、世界座標系(XYZ座標系)の投射道路画像に変換することができる。その手順は次の通りである。
まず、被写体である道路面を水平面(Y=0)の画像であると仮定する。この時、式(2)より、次式(7)の関係が成立する。
【0082】
【数6】

【0083】
この結果、ピクセル(u,v)に対する世界座標(X,Z)及びスケールパラメータsは次式(8)により求めることができる。
【0084】
【数7】

【0085】
次に、路面標示地図生成装置200のCPUは、被写体である道路面の傾斜を考慮した補正を行う。
まず、フレームデータを取得した各地点の位置座標データ(X,Y,Z)と、被写体である道路面付近の複数点の位置座標(X,Y,Z)とから、被写体である道路面の勾配を計算する。本実施例では、勾配は一様であるものと仮定した。
具体的には、撮影地点の世界座標点(X,Y,Z)付近の位置座標データから、高さの変化Δhを求める。つまり、Δh=Y−Yである。この時、一様な勾配を仮定すると、道路面上の世界座標系(X’,Y’,Z’)の点の奥行きZ’は次式(9)で求めることができる。
【0086】
【数8】

【0087】
補正した道路面上の奥行きZ’が決まると、式(2)より、フレーム座標点(u,v)と世界座標点(X’,Y’,Z’)との関係は次式(10)の通りとなる。
【0088】
【数9】

【0089】
これより、世界座標点のX’,Y’を次式(11)によって計算することができる。
【数10】

【0090】
以上の通り、フレームデータ上の点(u,v)を、それぞれ(X’,Z’)に写像すれば、正射画像(路面テクスチャ)を得ることができる。図7中に示すように、フレームデータを矩形の領域A71で切り出した上で正射投影すると、上方が広がる台形状の正射画像(路面テクスチャ)A72が得られる。
本実施例では、後に続く処理の便宜のため、正射画像(路面テクスチャ)を低解像度/高解像度の2通りで生成するものとした。高解像度の正射画像(路面テクスチャ)(以下、「高解像度画像」と呼ぶ)は、もとのフレームデータの切り出し領域A71をそのまま利用して生成された画像、即ち原画像と同じ解像度で生成された画像である。低解像度の正射画像(路面テクスチャ)(以下、「低解像度画像」と呼ぶ)は、解像度を原データよりも下げた画像である。低解像度画像の解像度は、路面標示地図生成装置200が軽い負荷で画像を表示することができる程度の値とすることが好ましく、原画像の解像度の半分など、任意に設定可能である。
【0091】
次に、路面標示地図生成装置200のCPUは、得られた正射画像(路面テクスチャ)を配置して1パス画像の合成を行う(ステップS14)。図中に1パス画像合成の例を示した。この例では、正射画像(路面テクスチャ)A72[0]〜A72[5]が合成されている。
各正射画像(路面テクスチャ)A72は、フレーム座標系(uv座標系)の原点に対応する点を、各フレームデータの撮影時の位置座標に基づいて配置すればよい。フレームデータは車両の位置よりも前方を写したものであるため、正射画像(路面テクスチャ)は、車両位置から一定距離だけ前方に移動させた地点に配置する必要がある。本実施例では、フレームデータ毎に車輌位置とフレーム座標系の位置関係を計算して配置する。また、正射画像(路面テクスチャ)は、時系列的に古い画像から新しい画像に順次、配置するものとした。
このように正射画像(路面テクスチャ)を配置することによって、道路面の車線境界線L71、L72および標示M7が再現される。
本実施例では、連結画像生成処理の段階では、正射画像(路面テクスチャ)を1枚の画像に結合することなく、配置して表示する状態に留めている。従って、1パス画像合成処理(ステップS14)で生成されるのは、合成画像ではなく、各正射画像(路面テクスチャ)の配置を決定する情報となる。もっとも、この処理において、正射画像(路面テクスチャ)を1枚の画像に結合する方法を採ることもできる。
【0092】
C2.位置合わせ加工:
図8は位置合わせ加工のフローチャートである。ハードウェア的には路面標示地図生成装置200のCPUが実行する処理である。これは、図2に示した位置合わせ処理部220の処理に相当する。
処理を開始すると、CPUは、まず処理の対象となる道路(以下、「対象道路」と言う)についてのオペレータからの指定を入力する(ステップS20)。そして、対象道路に対応する連結画像を入力する(ステップS22)。本実施例では、それぞれの道路について、走行位置を変えながら複数回走行して、路面画像を撮影している。従って、各走行に対応するパスに基づいて、それぞれ連結画像が生成されている。ステップS22では、これらの複数の連結画像を読み込む。
【0093】
次に、CPUは基準パスを設定する(ステップS30)。基準パスとは、複数のパスの位置合わせをする際に、基準となるパスである。本実施例では、対象道路に対応するパスのうち、位置精度の評価値、即ち自己推定位置精度が最も高いものを選択する。基準パスの設定方法については、後述する。
【0094】
基準パスが設定されると、CPUはオペレータの操作に従い、各パスについて対応点を設定する処理を行う(ステップS40)。
本実施例では、図中に示すように、基準パスおよび標準パスの連結画像をディスプレイに表示し、オペレータが、マウスなどのポインティングデバイスを操作して、この画面内で対応点を設定するという方法を採った。図の例では、標準パスの画像内で菱形をした横断歩道予告標示の頂点を対応点として指定し、次に、これに対応する頂点を基準パスの画像内で指定する例を示した。対応点は、1点に限らず、複数の点を指定可能である。
後述するペイント認識処理が行われており、各連結画像内の標示が抽出されている場合には、CPUは、抽出した標示をディスプレイに表示し、オペレータがこの中から対応点として用いるべき標示を選択するようにしてもよい。また、連結画像間で抽出した標示の位置関係に基づいて、対応する標示を特定し、対応点や透明化ポリゴンを自動的に設定可能としてもよい。
【0095】
本実施例では、この連結画像の表示には、低解像度画像を用いる。こうすることにより、対応点を指定する際に、表示の移動、拡大・縮小を円滑に行うことができ、作業効率を高めることができる利点がある。
【0096】
対応点が指定されると、CPUは、対応点同士が一致するように、標準パスの連結画像を基準パスの連結画像に合わせるよう移動する処理を行って、位置合わせ加工を終了する(ステップS50)。
先に説明した通り、本実施例では、連結画像は一枚の合成画像として生成されている訳ではなく、正射画像(路面テクスチャ)を配置して表示している。従って、ステップS50の処理では、それぞれの正射画像(路面テクスチャ)を移動することで、連結画像の移動処理が行われる。移動処理と併せて、それぞれの正射画像を低解像度画像から高解像度画像に置換する処理が行われる。高解像度画像を用いて、正射画像を再配置する処理を行うものとしてもよい。
連結画像移動処理の内容は、後で詳述する。
【0097】
C3.基準パス設定処理:
図9は基準パス設定処理のフローチャートである。位置合わせ加工(図8)のステップS30に相当する処理であり、複数のパスの位置合わせをする際に、自己推定位置精度が最も高いものを基準パスとして設定するための処理である。
【0098】
CPUは、処理を開始すると、対象道路の各パスについて、フレーム画像が取得されている各地点での位置精度を入力する(ステップS31)。撮影時には、図中に示すように、パスにそって点P91,P92、P93等でフレーム画像を撮影するとともに、各点ごとに東西方向の位置精度AC1、南北方向の位置精度AC2が記録されている。
【0099】
一般にGPS114は、位置座標の検出に使用される人工衛星の配置、電波の受信状況、建造物などに反射した電波を受信することによるマルチパスの有無などによって検出精度が変動することが知られている。またディファレンシャル測位では、基準局の稼働状況によっても検出精度は影響を受ける。位置精度は、これらの影響を定量的に評価したものである。位置精度は、任意に定義可能であり、例えば、精度低下率(DOP(Dilution of Precision))等を用いても良い。
【0100】
CPUは、各点の位置精度に基づいて、パスごとに自己推定位置精度σを算出する(ステップS32)。
【0101】
自己位置推定精度は、GPSと、IMU、DMI等とのずれに基づいて定まる値としてもよい。この場合は、例えば、ずれ量の標準偏差を用いても良い。また、東西方向の標準偏差の自乗と、南北方向の標準偏差の自乗の和を求め、この平方根を自己位置推定精度として用いても良い。このように、GPSと、IMU、DMI等のずれ量に応じた値とする場合には、自己位置推定精度は、ずれが大きい程、大きい値となる。つまり、自己推定位置精度は値が小さい方が、精度が高いことを示す評価値となる。
各パスの自己推定位置精度σが得られると、CPUはこの値が最小となるパスを基準パスとして設定する(ステップS33)。対象道路に対して単一のパスしか存在しない場合には、無条件にそのパスが基準パスとして設定されることになる。この基準パスの自己推定位置精度をσとする。
【0102】
ステップS33で設定された基準パスの自己推定位置精度σが、所定の閾値σTHよりも低い場合には(ステップS34)、基準パス設定処理を終了する。
これに対し、自己推定位置精度σが、所定の閾値σTH以上の場合には、エラー表示を行って(ステップS35)、処理を終了する。この場合には、基準パスの位置精度が十分確保されていないことを意味するため、位置合わせ処理を行っても、位置精度が十分に保証されないからである。
所定の閾値σTHは、上述の通り、路面標示地図として確保すべき位置精度に基づいて任意に設定可能である。
【0103】
エラー表示(ステップS35)を行うか否かの判断対象となるのは、基準パスの自己推定位置精度σのみとした。他の標準パスについては、自己推定位置精度が低い場合でも、基準パスを基準として位置合わせを行うことにより、位置精度を高めることが可能だからである。
もっとも、位置合わせ処理における修正は、いずれのパスに対してもできるだけ小さい方が、より好ましいと言える。従って、ステップS34において、全てのパスの自己推定位置精度を閾値σTHと比較し、いずれか一本でも、この閾値を下回る精度のパスが存在する場合にはエラー表示を行うようにしてもよい。
ただし、標準パスにも基準パスと同等の位置精度を要求すると、エラー表示が頻繁になされるおそれがある。かかる弊害を回避するため、標準パスでは基準パスよりも高い閾値σTHを用いるようにしてもよい。つまり、標準パスについては位置精度の要求を基準パスよりも緩めるのである。こうすることによって、標準パスについても最低限の位置精度を保証しつつ、エラー表示が頻繁になされるのを回避することができる。
【0104】
C4.連結画像移動処理:
(1)フローチャート:
図10は連結画像移動処理のフローチャートである。位置合わせ処理(図8)のステップS50の処理に相当する。
処理を開始すると、CPUは移動対象となる標準パスのデータおよび対応点のデータを入力する(ステップS51)。標準パスのデータとは、フレーム画像が撮影された時の位置座標を順次、記録した点列からなる軌跡データである。対応点のデータは、図8のステップS20において、基準パスおよび標準パスが表示された画面内でオペレータが指定した対応点の座標値である。
【0105】
CPUは、次に、標準パス上で正射画像(路面テクスチャ)が配置されている点ごとに、移動ベクトルを算出する(ステップS52)。
図中に移動ベクトルの算出例を示した。この例では、標準パスNP10について、対応点P101、P103が指定されているものとする。標準パス上には、図中に台形で示すように正射画像(路面テクスチャ)が配置されている。
【0106】
対応点P101、P103に対応する点としては、基準パス上では、対応点P102、P104が指定されているものとする。CPUは、これらの指定結果に基づき、対応点について移動ベクトルを求める。図の例では、標準パスの対応点P101からP102に向かう移動ベクトルV10と、対応点P103からP104に向かう移動ベクトルV11が得られる。
【0107】
対応点は、標示の頂点など、オペレータが基準パスと標準パスとで対応をとりやすい点を指定するため、必ずしも標準パスNP10上で指定されるとは限らない。対応点が標準パスNP10からずれた場所で指定されている場合には、図中に破線で示すように標準パスNP10からずれた場所に移動ベクトルV10aが得られる。従って、この移動ベクトルV10aの始点が標準パスNP10上に来るように、標準パスNP10に垂直方向に移動させて移動ベクトルV10を求めればよい。
【0108】
対応点での移動ベクトルV10、V11が得られると、CPUは、これらを補間することによって、対応点P101、P103の間に位置する各点での移動ベクトルを求める。例えば、図中に示すように、フレーム画像の撮影地点PP10で移動ベクトルを求める場合には、この地点を始点とするように移動ベクトルV10、V11を平行移動し、両ベクトルの終点を結ぶ線分を、対応点P101〜PP10の距離、P103〜PP10の距離の比で内分する点を求める。こうすることによって、点PP10を始点とし、この内分点を終点とする移動ベクトルVP10を求めることができる。
【0109】
2つの移動ベクトルV10、V11に挟まれた区間に存在しない点については、最も近い位置にある移動ベクトルをそのまま用いる。図中の例では、点P101よりも右側の区間では、移動ベクトルV10をそのまま用い、点P103の左側の区間では、移動ベクトルV11をそのまま用いることになる。
また、対応点が一つしか指定されておらず、移動ベクトルが一つしか与えられない場合は、この移動ベクトルを用いる。
【0110】
CPUは以上の処理で得られた移動ベクトルに従って、正射画像(路面テクスチャ)を平行移動して(ステップS53)、連結画像移動処理を終了する。図の例では、標準パスNP10の点PP10に配置されていた路面テクスチャTX11が、移動ベクトルVP10に従って路面テクスチャTX12の位置に平行移動される例を示している。
この処理と併せて、標準パスNP10上の点PP10の位置も移動ベクトルVP10によって修正される。従って、ステップS53の処理では、路面テクスチャの移動と共に、標準パスNP10の軌跡も修正されることになる。
【0111】
(2)位置合わせ加工の処理例(1):
図11は位置合わせ加工の処理例(1)を示す説明図である。図11(a)〜図11(c)のそれぞれには、標準パスNP11および基準パスBP11に対する連結画像を重ねて表示表示した状態を示している。図11(a)は標準パスNP11の連結画像を、基準パスBP11の連結画像よりも上に配置した状態である。先に説明した通り、連結画像は多数の路面テクスチャを配置することで構成されているが、図中には、説明の便宜上、一つの路面テクスチャTX11に輪郭を付して示した。
オペレータは、この画面中で、標準パスNP11における対応点P111を指定する。対応点P111は、任意に設定可能である。本実施例では、分離帯標示M11の白線の斜め縞模様の端点の一つを対応点P111として選択している。
【0112】
図11(b)は、基準パスBP11の連結画像を上側にして配置した状態を示している。この状態では、標準パスNP11と基準パスBP11の位置がずれている。従って、基準パスBP11の連結画像を上側に表示すると、対応点P111の位置は、分離帯標示M12の白線の斜め縞模様からずれてしまう。
【0113】
図11(c)は、基準パスBP11の連結画像を上側にした状態で、対応点P112を指定した状態を示している。つまり、基準パスBP11を上側にした画像内で、分離帯標示M11の白線の斜め縞模様の端点を対応点P112として選択すればよい。
対応点P112が指定されると、標準パスNP11の対応点P111から基準パスBP11の対応点P112に向かうように移動ベクトルV11が求められる。この移動ベクトルV11に従って、路面テクスチャTX11を移動すれば、対応点P111は対応点P112に一致し、分離帯標示M11、M12の位置も一致させることができる。
【0114】
路面テクスチャTX11だけでなく、位置合わせ加工では、標準パスNP11を構成する他の路面テクスチャも同様に、移動ベクトルV11に従って移動させる。ここでは対応点を一つだけ指定した処理例を示したが、対応点は複数指定してもよい。例えば、図の例では、横断歩道の縞模様、停止線、車線境界線の端点などを対応点として利用することが考えられる。
【0115】
(3)位置合わせ加工の処理例(2):
図12は位置合わせ加工の処理例(2)を示す説明図である。標準パスNP12、基準パスBP12の連結画像を重ねた状態を示した。説明の便宜上、双方の路面標示を視認可能な状態で示している。位置合わせ前は、標準パスNP12、基準パスBP12の位置がずれているため、車線境界線などの標示の位置はずれている。
オペレータは、ここでは破線での車線境界線の端点の一つを対応点として選択している。標準パスNP12については車線境界線L122の端点を対応点P122として選択し、基準パスBP12については車線境界線L121の端点を対応点P121として選択する。この結果、標準パスNP12の対応点P122から基準パスBP12の対応点P121に向かう移動ベクトルV12が定まる。
【0116】
図13は位置合わせ加工の処理(2)の加工結果を示す説明図である。
上述の通り、標準パスNP12の連結画像を、移動ベクトルV12に従って移動することによって、車線境界線の位置を合わせることができる。位置合わせの結果が車線境界線L13である。
また、この位置合わせ加工によって、標準パスも基準パスの位置に合わせられる。本実施例は、本来、異なる位置を走行した複数のパスを位置合わせすることによって、道路面の画像を生成する。この際、図12、図13の比較から分かる通り、対応点に基づいて設定される移動ベクトルに従って、標準パスを平行移動することにより、複数のパス間で、路面標示の位置関係およびパスの位置関係を、非常によく一致させることができる。
【0117】
(4)絶対座標の取得:
図14は路面標示の絶対位置座標の取得方法を示す説明図である。図の例では、標準パスNP14上の路面テクスチャTX142、基準パスBP14上の路面テクスチャTX141を例示した。路面テクスチャTX141、TX142内には、それぞれ標示M141、M142が含まれている。
路面テクスチャTX141、TX142は、それぞれの代表点が、基準パスBP14上の点P141、および標準パスNP14上の点P143に一致するように配置される。
【0118】
路面テクスチャTX141内で、標示M141の頂点P142の位置は、代表点を原点とする相対的な座標(x142,y142)で特定することができる。従って、代表点の絶対座標、即ち路面テクスチャTX141が配置されている位置座標(X141,Y141)が分かれば、これに、上述の相対的な座標を加えることによって、標示M141の頂点P142の絶対位置座標を取得することができる。
【0119】
路面テクスチャTX142内も同様に、標示M142の頂点P145の位置は、代表点を原点とする相対的な座標(x145,Y145)で特定することができる。従って、代表点の絶対座標、即ち路面テクスチャTX142が配置されている位置座標(X143,Y143)が分かれば、これに、上述の相対的な座標を加えることによって、標示M142の頂点P145の絶対位置座標を取得することができる。
【0120】
路面テクスチャTX142については、位置合わせ加工によって、移動ベクトルV14に従って、代表点の位置P143が点P144に移動したとする。この時、位置合わせ後の点P144の絶対位置座標は、移動前の点P143の位置座標(X143,Y143)に、移動ベクトルV14の成分(VX14,VY14)を加えることで得ることができる。更に、こうして得られた点P144の絶対位置座標に対して、点P145の相対的な座標(x145,Y145)を加えれば、位置合わせ加工後の標示M142の頂点P145の絶対位置座標を取得することができる。
【0121】
ここでは、路面テクスチャ内の標示M141,M142の頂点について絶対位置座標を取得する方法を示したが、路面テクスチャ内の任意の点は、それぞれ路面テクスチャの代表点を基準とする相対的な座標で特定可能であるから、同様の方法によって任意の点の絶対位置座標を取得することが可能である。
【0122】
C5.透明化ポリゴン設定処理:
(1)処理概要:
図15は透明化ポリゴン設定処理の概要を示す説明図である。透明化ポリゴン設定処理は、重ねられた道路画像上に、オペレータの指示によって、透明化ポリゴンを設定することによって、隣接するパスに対応する正射画像同士が重なり合っている部分で、上側の正射画像の一部を透明化して、下側の正射画像を透視可能とする処理である。ここでは、まずオペレータが手動で設定する場合を例にとって処理内容を説明する。
図の中央に、正射画像P152の上に正射画像P151が重ねられている様子を斜視図的に示した。下側の正射画像P152には、横断歩道A154が分断された状態で含まれており、停止線A153が完全な状態で含まれている。上側の正射画像P151には、横断歩道A152が完全な形で含まれており、停止線A151が分断された状態で含まれている。それぞれ分断された部分を、破線で囲んで示した。
この状態で正射画像P151、P152を重ねると、左側に示したように表示される。つまり、両者が重なった部分では、上側の正射画像P151の画像のみが表示されるため、横断歩道A152は完全な状態で表示されるが、停止線A151は分断された状態で示されてしまうのである。
仮に、正射画像P151、P152の上下関係を変えたとすれば、今度は、停止線A153は完全な状態で表示することができるが、横断歩道A154が分断された状態で表示されることになる。このように、正射画像P151、P152の上下関係だけでは、横断歩道、停止線の双方を完全な状態で表示させることはできない。
【0123】
そこで、本実施例では、透明化ポリゴンPOL15を設定する。この例では、上側の正射画像P151において、分断されている停止線A151を覆うように設定した例を示した。透明化ポリゴンPOL15内では、上側の正射画像P151は透過した状態で表示される。従って、図の右側に示すように、正射画像P151、P152を重ねた状態では、透明化ポリゴンPOL15の内部では、下側の正射画像P152が表示され、その他の部分では、上側の正射画像P151が表示される。この結果、下側の正射画像P151に含まれる停止線A153と、上側の正射画像P152に含まれる横断歩道A152が表示され、停止線および横断歩道の双方を完全な形で表示することができる。
【0124】
(2)フローチャート:
図16は透明化ポリゴン設定処理のフローチャートである。ハードウェア的には路面標示地図生成装置200のCPUが実行する処理である。これは、図2に示した透明化ポリゴン設定部221の処理に相当する。
処理を開始すると、CPUは、オペレータからの対象道路の指定を入力し(ステップS100)、対象道路に対応する連結画像を入力する(ステップS102)。対象道路に対して複数のパスが対応している場合には、これらのパスに対応する複数の連結画像が入力される。
【0125】
CPUは、これらの連結画像を表示し、オペレータの操作に基づいて優先パスの指定を入力する(ステップS104)。優先パスとは、複数のパスのうち路面画像が最も良好なパスを言い、複数のパスの連結画像を重ねる際に最も上に位置するパスを言う。優先パスは、位置合わせ加工で用いられた基準パスとは異なる。基準パスは位置精度が最も良いものを意味したが、位置精度が良いからといって、路面画像が良好とは限らないからである。複数のパス間の連結画像の重ね合わせの上下関係がどのような状態であっても、位置合わせは支障なく行うことが可能であるから、位置合わせ用の基準パスと優先パスとは相互に独立して設定可能である。
本実施例では、優先パスは、オペレータが各パスの連結画像を比較しながら、任意に設定することができる。仮に、路面画像が最も粗いパスを優先パスに指定しても構わない。このような場合には、後述する透明化ポリゴンの設定数が増えるだけのことである。
【0126】
優先パスが設定されると、CPUは、オペレータの操作に従い透明化ポリゴンを設定する(ステップS106)。
図中に透明化ポリゴンの設定例を示した。この例では、優先パスに沿った路面テクスチャTX161と、その他のパスに沿った路面テクスチャTX162を示した。
撮影時には矩形の画像が、正射画像変換により、台形になるため、路面テクスチャTX161、TX162を配置すると、図示するようにのこぎり刃状になる。のこぎり刃状の部分からは、路面画像の見栄えを落とすと共に、分断された路面画像しか得られないため、完全な路面画像を得るという目的からは不要な部分となる。そこで、図の例では、路面テクスチャTX161、TX162が重なり合った部分では、のこぎり刃状になった路面テクスチャTX161の左端の部分に透明化ポリゴンPOL161を設定し、のこぎり刃状の部分が表示されないようにしている。
【0127】
一方、路面テクスチャTX161、TX162が重なりあっていない部分、図の例では、両端の領域A161、A162の部分には、透明化ポリゴンは設定しない。この部分では、それぞれ路面テクスチャTX161、TX162によって得られる画像が、唯一の画像情報となるからである。両端の領域に透明化ポリゴンを設定すると、この部分に含まれる路面画像の情報は活用し得なくなる。本実施例では、このように他の路面テクスチャと重なり合っていない部分には、透明化ポリゴンを設定しないようにすることで、路面テクスチャに含まれる路面画像の情報を有効活用できるようにした。
かかる設定は、単に路面テクスチャが重なっていない部分を避けて、オペレータが透明化ポリゴンを設定するという運用によって実現してもよいが、透明化ポリゴンの設定処理(ステップS106)において、透明化ポリゴンの設定位置を制限するようにしてもよい。つまり、路面テクスチャが重なり合っている部分についてのみ、オペレータによる透明化ポリゴンの設定操作を受け付けるようにしても良い。
【0128】
路面テクスチャTX161によって隠されている標示がある場合には、オペレータはその標示が視認できるように透明化ポリゴンを設定する。図の例では、矢印の標示を覆うように、透明化ポリゴンPOL162が設定されている例を示した。矢印の標示は、テクスチャTX161の下側に配置されているテクスチャに含まれている画像である。
【0129】
このように標示を覆う透明化ポリゴンPOL162を設定するためには、一旦、路面テクスチャTX161を他の路面テクスチャよりも下側に位置するように上下関係を変更したり、路面テクスチャTX161を非表示としたりすればよい。これらの操作によって、路面テクスチャTX161に隠された標示を視認可能な状態にした上で、その標示を覆うように透明化ポリゴンPOL162を設定し、路面テクスチャTX161の表示を元に戻せばよい。
【0130】
以上の処理によって、透明化ポリゴンの設定が終わると、CPUは、設定結果を出力して、透明化ポリゴン設定処理を終了する。
【0131】
(3)処理例:
図17は透明化ポリゴンを設定する前の道路画像例を示す説明図である。この例では、パスP171、P172の2本に沿って得られた連結画像の位置合わせを行って生成された道路画像を示した。パスP172の連結画像と、パスP171の連結画像とで、のこぎり刃状の両端の形状が逆向きになっているのは、これらのパスP171,P172を道路面撮影システム100の車両が走行する方向が逆だからである。
【0132】
パスP172の連結画像が、パスP171の連結画像と重なっている部分では、パスP172の連結画像の端部B17ののこぎり刃状の境界が現れており、道路画像の画質を劣化させている。ただし、図17では、図示の都合上、のこぎり刃状の輪郭を付して端部B17の形状を強調してある。
また、パスP172の路面画像が端の方で不鮮明なため、例えば、領域A171では横断歩道の縞模様が歪んでいる。領域A172では、停止線が分断された状態となっている。領域A173では、路線バス等優先通行帯(いわゆるバスレーン)であることを示す「バス専用」の文字が読めない程に崩れている。領域A174では、破線状の車線境界線が途中で分断された状態となっている。
【0133】
これらの影響を回避するため、図17では、領域A171〜A174および端部B17を包含する透明化テクスチャPOL17を図中の一点鎖線のように設定した。
このように透明化ポリゴンPOL17を設定すると、パスP172側の路面テクスチャは、透明化ポリゴンPOL17の内部では透視状態となり、下側に配置されたパスP171側の路面テクスチャが視認されるようになる。
【0134】
図18は透明化ポリゴンの設定後の道路画像例を示す説明図である。上述の透明化ポリゴンの作用により、領域A181では、下側の画像が表示されるため、図17で示した横断歩道の分断状態が解消される。領域A182でも同様に、停止線が完全な状態で表示される。また、領域B18に例示するように、路面テクスチャの端部ののこぎり刃状の輪郭は視認されなくなり、道路画像全体の画質が向上する。
領域A183では、バス専用の文字が、はっきりと判読可能な状態となる。領域A184では、車線境界線が完全な状態で表示される。
このように、本実施例では、透明化ポリゴンを設定することにより、道路画像の画質を向上させることができるとともに、道路面の標示の画質も向上させることができる。
【0135】
C6.ペイント認識処理:
(1)全体処理:
図19はペイント認識処理のフローチャートである。ハードウェア的には路面標示地図生成装置200のCPUが実行する処理である。これは、図2に示したペイント認識部223の処理に相当する。
処理を開始すると、CPUは処理データ記憶部210から、処理対象となっている道路の画像、即ち路面テクスチャ、パスのデータを読み込む(ステップS300)。
次に、CPUは縦配置処理を行って(ステップS302)、縦配置画像を生成し、処理データ記憶部210に格納する。
【0136】
図20は縦配置処理の内容を示す説明図である。図20(a)に通常の処理における連結画像を示した。図中の一点鎖線の矢印PA20は画像を撮影した際のパスを表している。通常の処理では、パスPA20に沿って路面テクスチャTx20を配置する。パスPA20の位置座標は、緯度経度などの絶対座標系XYで得られている。従って、絶対座標系でパスPA20および路面テクスチャTx20を配置すると、図20(a)に示すように連結画像は斜めに表示されることがある。この例では、直線状の道路を例示しているが、道路がカーブしている場合には、連結画像もカーブした状態となる。
【0137】
図20(b)は縦配置した画像例を示した。道路が直線状のため、図20(a)の向きを矢印A20方向に回転した状態の画像となっている。
縦配置の画像は、次の手順で生成することができる。まず、2次元座標xyの縦(y)方向に距離軸を設定する。距離軸とは、パスPA20に沿って画像を撮影する際の開始点からの移動距離を表す軸である。パスPA20が直線状の時は、パスPA20の進行方向を上向きに表示した状態となる。パスが曲線状のときには、パスを直線状に伸ばした状態となる。
それぞれの路面テクスチャTx20については、撮影時の位置座標データおよび撮影開始からの移動距離が得られているから(図1の位置計測部110参照)、これらのデータに基づき、距離軸上に路面テクスチャTx20を配置する。路面テクスチャTx20は、画像内の代表点を距離軸上に置き、左右対称軸が距離軸に平行になるよう配置する。こうすることによって、パスが曲線状か否かに関わらず、進行方向が縦方向に直線状に伸ばされた状態の連結画像を表示することができる。この連結画像によれば、図示する通り、横断歩道および停止線は距離軸に直交する方向(図中の左右方向)に描かれ、車線境界線は距離軸に沿う方向(図中の上下方向)に描かれる。縦配置画像には、このように道路の標示が一定の位置関係で描画されるため、これらの認識がしやすくなるという利点がある。
ここでは、距離軸を縦に配置する例を示したが、横または斜めなど任意の方向に配置可能である。
【0138】
図19に戻り、ペイント認識処理について説明する。
縦配置処理が完了すると、CPUは横断関連ペイント抽出処理を行う(ステップS310)。これは、横断歩道、自転車横断帯、停止線など交差点近辺の標示を抽出する処理である。本実施例では、処理データ記憶部210に格納された縦配置画像を用い、そこに描かれた標示を画像処理で抽出するとともに、標示に含まれる線分の位置関係や長さなどに基づく条件判断によって標示の種別を判断するようにした。
【0139】
横断関連ペイント処理が終わると、CPUは各種ペイント抽出処理を行う(ステップS350)。この処理で抽出対象となる標示を図中に示した。
「境界線」とは、実線および破線などで描かれた車線境界線である。
「矢印」とは、交差点内の進行方向の規制を示すために、交差点付近で各車線に示されている矢印である。
「ゼブラ」とは、横断歩道とは異なり、中央分離帯や右左折用の車線が増える箇所などに標示されている縞模様である。
「Uターン」とは、Uターン禁止道路に描かれているU字形状の矢印である。
「転回禁止」とは、Uターンの矢印とともに描かれている×印である。
「規制」とは、通行規制の時刻標示等である。例えば、バスレーンなどの標示と併せて描かれる「17−19」の標示(17時〜19時であることを意味)のような通行態様の規制等である。
「数字」とは、速度規制などの数字である。
「横断歩道予告」とは、横断歩道手前に描かれている菱形の記号である。
「減速帯」とは、車速の減速を促すために、路面上にパスに直交する方向の線分をパスの進行方向に沿って平行に複数本配置することで描かれている縞模様である。
「路面塗装」は、急カーブその他の運転者の注意を喚起すべき箇所に対し、通行の安全のために施されている赤色等の舗装領域である。
「バスレーン文字」とは、バスレーンとして使用される車線に付される「バス専用」「バス優先」という文字である。本実施例では、バスレーンを例示しているが、バスレーンに限らず、路面に標示される文字一般を対象としてもよい。
「終わり記号」とは、バスレーンなどの終了地点を示す「0」形状の記号である。
本実施例では、これらの標示を対象としているが、これらは例示に過ぎず、更に多くの標示を対象としてもよいし、この中の一部を抽出処理の対象外としても構わない。
【0140】
各種ペイント抽出処理(ステップS350)では、予め用意されたモデルを用いて、パターンマッチングを行う。本実施例では、人工モデル画像、OCRモデル画像の2種類を用いるものとした。これらのモデルは、予め処理データ記憶部210に記憶されている。
人工モデル画像とは、コンピュータグラフィックスによって生成されたモデルである。矢印、Uターン、転回禁止など、比較的単純な標示のマッチング用のモデルとして適している。
OCRモデル画像とは、撮影された画像から、オペレータが手作業で切り出した画像に基づいて生成されたモデルである。例えば、数字、バスレーンなどの複雑な形状をした標示のマッチング用のモデルとして適している。これらのモデルをコンピュータグラフィックスによって生成することも不可能ではないが、文字の形状を現実の道路標示に併せてモデルを生成するためには、結局、撮影した画像をトレース等する必要が生じるため、結果としてOCRモデルを利用しているのと大差ない。
【0141】
CPUは、以上の処理を直線状の連結画像単位で実行した後、絶対座標系に変換する相対座標変換処理(ステップS370)を行い、ペイント認識結果を処理データ記憶部210に格納して、ペイント認識処理を終了する。
認識されたペイントは、画像データとして格納してもよいが、併せて、種別と存在領域を格納してもよい。存在領域とは、認識されたペイントを包含する幾何形状を言う。例えば、横断歩道や自転車横断帯、矢印などに外接する矩形を存在領域として用いることができる。存在領域は重心位置および対角線長さで形状を表すようにしてもよいし、対角に位置する2つの頂点の座標値で表すようにしてもよい。存在領域は、矩形に限らず、種々の多角形や円形など任意の形状を利用することができる。
【0142】
(2)相対座標変換処理:
図21は相対座標変換処理の内容を示す説明図である。本実施例では、以上で説明した各種標示の認識結果は、全て距離軸に沿って路面テクスチャを配置した直線状の画像を用いて得られている。従って、認識結果は、この直線状の画像を表示する座標系における相対的な位置が取得されているに過ぎない。相対座標変換処理は、この相対的な位置を、撮影時の位置座標に対応する絶対座標系の位置に変換する処理である。
【0143】
図の左側には、直線状の連結画像で標示を認識した状態を示している。ここでは、矩形の存在領域M391、M392を示した。これらの存在領域M391、M392の位置は、代表点としての重心G391、G392の位置座標で表される。この座標は、直線状の連結画像を表示するための座標系xn、ynで与えられる。この座標系xn、ynは、例えば、距離軸NP39をyn軸として定義することが好ましい。
【0144】
連結画像では、路面テクスチャTx39の代表点が、撮影時の位置に応じて、距離軸上に配置されている。各路面テクスチャTx39内の各点の代表点からの相対的な座標は既知である。従って、各存在領域の重心G391、G392の路面テクスチャTx39内での相対的な座標が求まるため、重心G391、G392から距離軸におろした垂線の足R391、R392の座標も求めることができる。
【0145】
図の右側には、絶対座標系XYに変換した状態を示した。道路は直線とは限らないから、絶対座標系では、撮影時に取得された位置座標に従い、パスRP39は曲線状に描かれることもある。
各存在領域M391、M392の位置および向きは次の方法で求める。
まず、この曲線状のパスRP39の基準点からの距離に応じて、存在領域の垂線の足R391、R392のパスRP39上での位置を求め、点R391、R392から、それぞれ法線ベクトルV391、V392を描き、その終点を重心G391、G392とする。法線ベクトルV391、V392の大きさは、直線状の連結画像における点R391、G391間の距離、および点R392、G392間の距離にそれぞれ等しい。存在領域M391、M392の方向は、長手方向が法線ベクトルV391、V392と直交するように配置する。つまり、存在領域M391、M392と、重心G391、G392、および垂線の足R391、R392の相対的な位置関係が、直線状の連結画像(図の左側)と絶対座標系(図の右側)とで同一となるように、存在領域M391、M392を配置するのである。
この変換処理により、抽出された各標示の位置を絶対座標系の位置座標で表すことが可能となる。
【0146】
上述した絶対座標系への位置座標の変換処理は、次の方法で行っても良い。
まず、各存在領域の構成点、つまり存在領域の頂点の位置を、それぞれの頂点が属する路面テクスチャの代表点を基準とする相対座標で求める。そして、それぞれの路面テクスチャを絶対座標系XYでの配置に変換する際に、同様の変換をそれぞれの構成点に施すのである。こうすることにより、比較的容易に絶対座標系での構成点の位置座標を得ることができる。
ただし、この方法では、構成点ごとに座標変換するため、変換時に存在領域の形状が崩れる場合がある。従って、変換後の構成点の配置を、存在領域の形状に適合させる修正処理を施しても良い。
【0147】
C7.ペイント解析処理:
次にペイント解析処理の内容を説明する。ペイント解析処理とは、ペイント認識処理の結果に対して、誤認識の有無を判定し、誤認識が検出された時には、ペイントの削除などの対処を行う処理である。本実施例では、各ペイントを単独で解析するのではなく、ペイント相互の相関関係の適否を判定することで、誤認識を検出する。相関関係の適否は、ペイントの種別および位置関係に基づいて判断される。本実施例では、ペイント相互の位置関係は、ペイントの存在領域に基づいて判断するものとした。
【0148】
図22はペイントの存在領域を示す説明図である。存在領域とは、ペイントを包含する矩形などの予め決められた幾何学形状を言う。存在領域として用いるべき幾何学形状は、ペイントの種類ごとに任意に設定可能である。本実施例では、主として矩形を用いるものとした。
図には、矢印の存在領域RA22を例示した。上側に示す通り、直進右折矢印M221の頂点PA22,PB22を結ぶ軸に平行な辺を有する矩形を用いるものとし、各辺が4つの頂点PA22、PB22、PC22、PD22を通るように大きさを決定する。このように存在領域RA22を決めるとともに、「直進右折矢印」という種別を、矢印M221のデータとして記憶しておけば、矢印M221の画像データを保存しておかなくても、その形状を再現することができる。
【0149】
右側の図に示すように、画像から得られた矢印M221とは別に、予め直進右折矢印のモデルM222を用意しておく。モデルM222は、全ての直進右折矢印に共通して用いることができるポリゴンデータであり、その頂点はPa22,Pb22,Pc22,Pd22である。
存在領域RA22のデータと、直進右折矢印という種別が与えられると、下側の図に示すように、存在領域RA22の2辺を軸とする相対座標Xr、Yrを規定し、この座標系にモデルM222を配置する。そして、存在領域RA22にモデルの頂点Pa22、Pb22が内接するように、モデルM222の縦方向(Yr方向)の倍率を決定する。また、モデルの頂点Pc22、Pd22が存在領域RA22に内接するように、横方向(Xr方向)の倍率を決定する。そして、この倍率で拡大したモデル222が存在領域RA22に内接するように、配置を決定する。こうして決定された倍率および配置で描かれた状態をモデルM223として図示した。こうすることにより、上側の図に示した矢印M221の状態を再現できる。
【0150】
他のペイントについても同様である。各ペイントごとに存在領域として用いるべき幾何学形状を予め設定しておくとともに、図22中の右側に示すようなモデルを用意しておけば、それぞれのペイントを比較的容易に再現することが可能である。こうすることにより、ペイントのデータ容量を抑制することができる利点がある。また、存在領域は幾何学形状であるため、これを用いることにより、ペイント同士の間隔や、重なりの有無などの位置関係を比較的容易に判断することが可能である。
以下、ペイント解析処理の全体の流れを示した後、各ペイントについて存在領域の決定方法等を示し、ペイント解析処理の詳細な処理内容を説明する。
【0151】
(1)全体概要:
図23はペイント解析処理のフローチャートである。ハードウェア的には路面標示地図生成装置200のCPUが実行する処理である。これは、図2に示したペイント解析部225の処理に相当する。
処理を開始すると、CPUは、処理データ記憶部210から、ペイント認識結果を読み込む。本実施例では、この段階では、各ペイントを抽出した画像データおよび種別の形であるものとする。
【0152】
CPUは、処理対象となるべき各ペイントについて存在領域の解析処理によって、存在領域を設定する(ステップS510)。
処理対象となるペイントとしては、図中に示す通り、数字、文字等が挙げられる。
それぞれのペイントの例、および存在領域の設定方法については、後述する。
設定された存在領域と、ペイントの種別とを併せて「オブジェクトファイル」または単に「オブジェクト」と称する。オブジェクトファイルは、処理データ記憶部210に記憶される。
【0153】
次に、CPUは、オブジェクトファイルを読み込み、ペイント相関解析処理(ステップS550)を行う。この処理は、近接して存在する複数のペイントの相関関係、即ち相互の種別および位置関係に基づいて、それぞれの認識結果の正誤を判断する処理である。ペイント単体での正誤の判定は、各ペイントの画像上の特徴を用いざるを得ないため、ペイントを認識する際の精度を大きく上回ることはできない。本実施例では、相関関係という、ペイントを認識する処理とは別の観点からの検討を行うことによって、正誤判定の精度向上を図っている。
【0154】
更に、CPUは、反対車線処理を行う(ステップS580)。反対車線処理とは相関解析処理の一環であり、道路の対向する車線に存在するペイント同士の相関関係に基づいて、ペイントの認識結果の正誤判定を行う処理である。
以上の処理によって、CPUは、それぞれのペイントの認識結果の正誤を判定する。また、これらの処理過程で、誤認識と判断されたペイントに対して、削除などの対処を行う。
これらの処理結果は、オブジェクトファイルに反映される。
【0155】
(2)存在領域解析処理〜数字等:
図24は数字の存在領域解析処理(1)を示す説明図である。数字とは、速度規制を表す路面標示である。図24(a)には、時速50km制限を表す数字を例示した。ペイント認識処理では、「5」「0」をまとめた状態で、数字の輪郭が認識されているとする。
【0156】
CPUは、図24(b)に示すように、上述の輪郭の頂点P24を抽出する。そして、ペイント内の任意の2点を、このペイントが描かれている連結画像のパスNP24に投影した点PA24、PB24を求める。
次に、ペイントが描かれている2次元座標系XYのY軸にパスNP24が一致するように、点PA24を中心として、ペイントを回転する。こうすることによって、ペイントの存在領域は、それぞれY軸とX軸に平行な2辺を有する矩形となるはずである。従って、図24(c)に示すように、ペイントの頂点P24を包含する矩形RA24を求め、これを存在領域とする。
存在領域が求められたら、図24(b)から図24(c)を得るために行ったのと、逆回転の写像をすることによって、絶対座標系での位置および座標を求めることができる。
【0157】
図25は数字の存在領域解析処理(2)を示す説明図である。ここでは、複数の認識結果を包含する存在領域を求める方法を示した。
本実施例では、ペイントの自動認識を行う際、処理できるデータ容量の制限により、連結画像を適宜、分割して処理している。分割は、パスに沿った所定の移動距離単位で行うため、ペイントが分断されてしまうおそれもある。本実施例では、こうした原因でペイントの認識精度が低下することを回避するため、連結画像を分断する場合には、一部分が重複するように分断した。つまり、分断された連結画像同士は、端の方の一定領域で隣の連結画像と重なり、オーバーラップする状態となるのである。
このように分割すると、連結画像の端のオーバーラップを生じる領域では、同一のペイントが、複数の連結画像にわたって重複して認識されることが起きる。そこで、本実施例では、このように同一のペイントが重複して認識された場合には、それぞれの存在領域を包含する存在領域を求めるものとした。
【0158】
図25(a)に示すように、絶対座標系2つの文字について存在領域A25、B25が得られているとする。これらの存在領域A25、B25について、辺がY軸に平行になるよう、図中矢印R25のように回転する。
図25(b)は、こうして回転を終えた存在領域A25、B25に対して、これらを包含する存在領域RA25を設定した例を示した。なお、図示の便宜上、存在領域RA25の辺は、存在領域A25、B25から若干ずらして示してある。
こうすることによって、存在領域RA25によって、重複して認識されている2つの存在領域A25、B25を一つにまとめることができる。従って、後で示すペイント相関関係解析処理の負荷を軽減することができる。
【0159】
図26は文字、矢印、転回禁止の標示例を示す説明図である。
図26(a)には文字A26の例を示した。図の例では、「首都高入口」などの通行案内、行き先案内の文字である。ペイント認識処理では、それぞれの文字の輪郭部分が抽出されている。
図26(b)には矢印B26を例示している。各車線において進行方向の規制として、直進と右折、または直進と左折を示す矢印が描かれている。矢印には、この他、直進、右折、左折などが存在する。
図26(c)には転回禁止C26の例を示した。転回禁止とは、Uターンの禁止を示すための×印の標示である。
【0160】
これらの文字、矢印、転回禁止に対しては、数字と同様の方法によって矩形の存在領域を設定する。つまり、文字等を構成する頂点を抽出し、各文字等が描かれているパスが、Y軸に平行になるように一旦回転し、その状態でY軸に平行な辺を持ち、ペイントに外接する矩形を設定する。数字と同様の処理であるため、ここでは、更なる詳細な説明を省略する。
【0161】
図27は横断歩道予告、規制文字、終り記号、バス関連文字の標示例を示す説明図である。
図27(a)には横断歩道予告A27を示した。横断歩道予告とは、進行方向の交差点に横断歩道が存在することを示す標示であり、図示する菱形の標示である。
図27(b)には規制文字B27の表示例を示した。規制文字とは、通行規制などが施される時間帯などを示すための文字である。図の例では、「バス専用」つまりバスレーンとなる時間帯を表している。「7−9」、「16−19」などの規制文字によって、午前7〜9時、16〜19時の間に、バス専用となる規制が表されている。ここでは、時間帯による規制を例示したが、種々の規制文字を対象とすることができる。
本実施例では、道路のパス方向に並ぶ文字列は、主として「文字」(図26参照)で処理するものとし、時刻のように、複数の文字等が比較的、高い密度でパスに直交する方向に配置するものを、図27(b)の規制文字で処理するものとした。
【0162】
図27(c)には終わり記号C27を示した。終わり記号とは、バスレーンなどの規制の終点を示す記号である。図中には、記号の輪郭を抽出した状態を示した。
図27(d)には「バス専用」なるバス関連文字D27を示した。
これらの横断歩道予告、規制文字、終わり記号、バス関連文字については、数字と同じ処理によって存在領域を決定する。つまり、一旦、Y軸に平行となるよう、画像を回転させ、その中で、Y軸に平行な辺を持つ矩形を、それぞれのペイントに対して設定するのである。
本実施例では、規制文字はひとまとまりの存在領域を求めるものとした。バス関連文字のように、複数の文字が含まれる場合には、各文字に対する存在領域を求めるものとした。バス関連文字についても、規制文字と同様、全体で一つの存在領域を求めるようにしてもよい。
【0163】
(3)存在領域解析処理〜ゼブラ等:
図28はゼブラ、停止禁止部分、減速帯、路面塗装の存在領域解析処理を示す説明図である。
図28(a)はゼブラの標示例を示している。「ゼブラ」とは、図中の標示Z28のように、横断歩道とは異なり、中央分離帯や右左折用の車線が増える箇所などに標示されている縞模様である。図中には、ゼブラZ28の周囲の境界線を抽出した状態を示している。ゼブラは、描かれる場所によって、形状が異なるため、規定の幾何学形状を用いて存在領域を設定するのではなく、ゼブラの境界線で表されるポリゴンを存在領域として用いるものとした。但し、図28(a)に示すように、画像からゼブラを抽出した状態では、境界線に微少な凹凸が残るため、スムージング処理を行う。スムージングには、ベジェ曲線、スプライン曲線などを用いることができる。
【0164】
スムージングの手順は次の通りである。
i) 境界線の認識結果を読み込む;
ii) 境界線の頂点のうち、隣接する頂点間の距離が所定値Thを超える場合には、所定値Th以下となるよう、頂点間を等分した位置に新たな頂点を設定する。
iii) これらの頂点に基づき、ベジェ曲線またはスプライン曲線によるスムージングを行う。
上述のステップii)のように、頂点を増加するのは、頂点間が離れた状態でスムージングを施すと、この間の曲線が、本来の形状と大きく異なった形状となってしまうおそれがあるからである。上述のように、頂点を増加しておくことにより、頂点間の間隔を抑えることができるため、こうした弊害を回避することが可能となる。
【0165】
このようにスムージングを施した後、自己交差点を除去する処理を行う。図28(b)、図28(c)は自己交差点の除去処理の例を示した。自己交差点とは、例えば、図28(b)、図28(c)の点PA28、点PB28に示すように、ゼブラを表すポリゴンの境界が、途中で交差してしまうことを言う。
これらの自己交差点は次の手順で除去することができる。
i) まず、自己交差点の有無を判定する。ポリゴンを形成する各辺について、他の辺と交差しているか否かを判定すればよい。
ii) 自己交差点が見つけられた場合には、自己交差点で複数のポリゴンに分割されているものと仮定して、分割された各ポリゴンの周囲の長さを求める。例えば、図28(b)の場合は、自己交差点PA28によってポリゴンが実線の部分と破線の部分に分割されている。従って、実線部分の長さ、破線部分の長さをそれぞれ求めるのである。
iii) こうして求められた長さを比較し、短い側のポリゴンを削除する。図28(b)の例では、破線部分の長さが実線部分よりも短いため、破線部分全体を消去することになる。
【0166】
なお、車線境界線などのようにライン状の図形に、スムージングを施すと、自己交差点が生じて、図28(c)のように、ラインの途中に閉図形が形成された状態となることがある。この場合でも、上述のステップi)〜iii)に従って、自己交差点を除去すればよい。ただし、この場合には、自己交差点PB28が生じる結果、ポリゴンは図中に破線で示す部分しか形成されない。従って、ステップiii)では、この破線部分のポリゴンを無条件に、周囲が最短の距離のポリゴンとみなして、削除する。この結果、図28(c)の形状では、破線部分が消去され、ライン状の境界線が残ることになる。
【0167】
これらの処理を施した後、オーバーラップ部分の合成処理を施す。これは、先に数字について図25で説明した処理である。つまり、連結画像を端部が相互にオーバーラップするように分割することによって、同一の標示が重複して認識されるため、オーバーラップ部分では、同一の標示に対応する存在領域が重複して生成される。従って、処理負荷を軽減する便宜上、これらの複数の存在領域を包含する一つの存在領域を求めるのである。
ゼブラの場合には、存在領域の形状は一定ではない。従って、合成処理では、認識された複数の存在領域の和集合を、新たな存在領域として認定するものとした。存在領域が滑らかな形状になるように、こうして生成された和集合に対して、更にスムージングを施してもよい。
【0168】
図28(d)は停止禁止部分の標示例を示している。「停止禁止部分」とは、図中の標示Md28のように、境界線の内部に部分的に斜線が描かれた標示である。緊急車両の出入り口付近などに描かれていることが多い。
停止禁止部分に対しても、ゼブラと同様の処理を施す。つまり、境界を抽出した後、スムージングを施し、自己交差点を除去するのである。スムージングを施す場合には、境界の頂点間の距離を抑制するように頂点を増加させておくことが好ましい。
停止禁止部分についても、オーバーラップ部分では存在領域が重複するため、和集合を求めることによって、存在領域を合成することが好ましい。
【0169】
図28(e)は減速帯の標示例を示している。「減速帯」とは、図中のMe281のように、車速の減速を促すために、路面上にパスに直交する方向の線分をパスの進行方向に沿って平行に複数本配置することで描かれている縞模様である。減速帯は、図中の境界線Me282のように、長方形の集合として認識される。
これらの長方形を、そのまま減速帯の存在領域として用いても良い。また、これらの長方形を包含する形状を存在領域として用いても良い。例えば、それぞれの長方形の短辺のみを抽出し、近接する短辺同士を順次結ぶことによって、包含する形状を設定することができる。
また、減速帯についても、オーバーラップ部分では存在領域が重複するため、和集合を求めることによって、存在領域を合成することが好ましい。
【0170】
図28(f)は路面塗装の標示例を示している。「路面塗装」は、急カーブその他の運転者の注意を喚起すべき箇所に対し、通行の安全のために施されている赤色等の舗装領域である。図中には、路面塗装RP28の境界線を抽出した状態を示した。
路面塗装に対しては、ゼブラと同様の処理を施す。つまり、存在領域にスムージングを施し、自己交差点を除去するのである。スムージングを施す場合には、境界の頂点間の距離を抑制するように頂点を増加させておくことが好ましい。
路面塗装についても、オーバーラップ部分では存在領域が重複するため、和集合を求めることによって、存在領域を合成することが好ましい。
【0171】
(4)存在領域解析処理〜車線境界線等:
図29は車線境界線の存在領域解析処理のフローチャートである。車線境界線は、ポリライン(点列を結んで定義される折れ線)で存在領域を表す。車線境界線は、ペイントを認識する段階で、折れ線の形式で抽出されているが、ここでは、分断されて認識されている車線境界線同士を結合したり、実線(長ライン)と破線(短ライン)とを区別して、ラインの種別を統一したりする。
この処理では、CPUはまず車線境界線の認識結果を読み込む(ステップS511)。車線境界線は、上述の通り、ポリラインで認識されている。
次に、CPUは、これらを車線の長さが所定値Th以上のものを長ライン、所定値Thより短いものを短ラインというように分類する(ステップS512)。所定値Thは、例えば、車線境界線の破線の長さよりも若干、長い値とすることができる。
【0172】
連結画像のオーバーラップ部分では、長ラインが重複して認識されている。従って、CPUは重複して認識された長ライン同士を結合するため、長ライン同士の最短距離を算出する(ステップS513)。
図中に最短距離の算出方法を示した。長ラインL291の端点を点P291、P292とし、長ラインL292の端点を点P293、P294とする。まず、近接する端点同士の距離D291、D294を求める。次に、端点から他の長ラインまでの距離を求める。図の例では、点P293から長ラインL291におろした垂線の長さD292、および点P292から長ラインL292におろした垂線の長さD293が求められる。点P291、P294から長ラインL292、L291にそれぞれおろした垂線は求められないため、この垂線に基づく距離は算出されない。これらの垂線を引くことができる場合には、その垂線の距離も求めておく。
【0173】
CPUは、上述の距離に基づいて、長ライン同士の結合処理を行う(ステップS514)。
本実施例では、上述の距離(図の例では4つの距離D291、D292、D293、D294)のうち2つ以上が所定の閾値よりも小さい場合に、結合対象と判断するものとした。閾値よりも小さくなる距離が1個または0個である場合には、これらの長ラインは、同一のものが重複して認識された訳ではないと判断し、結合対象外とする。
結合対象とされる長ラインについては、両者の位置関係に応じて、結合の処理方法を切り換える。
【0174】
図30は長ラインの結合処理の一覧を示す説明図である。左欄に2本の長ラインの位置関係を示し、右欄に処理方法を示した。
ケース(a)は、一方の長ラインの全構成点からの距離が閾値内にある場合である。図中に示すように、長ラインL301を構成する点P301等の各点から長ラインL302までの距離(図の破線)が全て閾値内にある状態であり、長ラインL302に沿うようにして長ラインL301が配置されている状態に相当する。長ラインL301、L302の端点P301、P302間の距離が閾値を超えていても構わない。
この状態にある時は、短い側の車線境界線を削除する。図の例では、短い側の長ラインL301を削除し、長ラインL302のみが残ることになる。
【0175】
ケース(b)は、双方の長ラインが閾値内の距離で重なっている場合である。図中に示すように、長ラインL303は、点P303から始まる区間D30の間で、各点から長ラインL304までの距離が全て閾値内となっている。区間D30の間のいずれかの点で、長ラインL304までの距離が閾値を超えるようであれば、この条件は満たさない。
このように重なっている場合には、一方の長ラインについて、重なり区間D30の構成点を除去し、他方と結合する。図中には、区間D30の構成点を除去した端点P305と、長ラインL304の端点P304とを結合する例を示した。このように結合した後、スムージングを施しても良い。
【0176】
重なり区間D30において、長ラインL303、L304のいずれを削除するかは、任意に設定可能である。重なり区間D30では、長ラインL303、L304の距離が比較的近接しているから、いずれを削除しても、全体の形状に大きな差は生じない。本実施例では、長ラインL303の端点P303から長ラインL304までの距離d303、長ラインL304の端点P304から長ラインL303までの距離d304のうち大きい方の長ラインを削除するものとした。「距離d303>距離d304」であれば、長ラインL303を削除するのである。
このように一方を削除する方法の他、重なり区間D30において、長ラインL303,L304の中間の点を求め、これらの点を用いるようにしてもよい。例えば、端点P303については、長ラインL304までの距離d303の中点に移動する。長ラインL303の重なり区間D30内にある各構成点も同様に、長ラインL304への距離の中点に移動する。同様に、端点P304も同様に、長ラインL303までの距離d304の中点に移動し、長ラインL304の重なり区間D30内にある各構成点も同様に、長ラインL303への距離の中点に移動する。このように移動した後の各構成点を結ぶことによって、重なり区間D30で、長ラインL303、L304の中間のラインを設定することができる。
【0177】
ケース(c)は、相互に端点からの最短距離点が他方の端点となる場合である。但し、この最短距離が、閾値内の時に限る。本実施例では、図29に示したように、各長ラインの端点同士の距離、および各長ラインの端点から他の長ラインへの垂線の距離によって、長ライン間の距離を評価している。ケース(c)では、いずれの長ラインにとっても、端点間の距離が、これらの数種類の距離の中で最小となっている関係を意味する。
図の例では、長ラインL306から長ラインL307への最短距離は、長ラインL306の端点P306から長ラインL307の端点P307への距離である。逆に、長ラインL307の端点P307から長ラインL306への最短距離も、端点P307から端点P306への距離となっている。このように、ケース(c)の条件を満たす配置とは、長ラインの端点同士が比較的近接して位置する状態、換言すれば長いラインの一部が欠落したかのような配置に相当する。
かかる配置にある場合には、端点同士を結合する。図中には、端点P306、P307を結合した状態を例示した。
【0178】
上述のケース(a)〜(c)のいずれにも該当しない場合には、2本の長ラインは、同一の長ラインを重複した認識した関係にはないと判断されるため、これらの結合処理は行わない。
【0179】
図29に戻り、引き続き車線境界線解析処理の内容を説明する。
長ライン同士の結合処理(ステップS514)が完了すると、CPUは長ラインと短ラインとの重複の解析処理を行う(ステップS515)。
以下、長ラインと短ラインとの重複解析の処理方法を説明する。
【0180】
図31は短ラインとの重複箇所に対する処理例を示す説明図である。図31(a)に示すように、長ラインとして認識されているラインL311と、短ラインとして認識されているラインL312とが、重なっている場合がある。このような箇所では、長ラインL311が誤認識であると判断して、右側に示すように、ラインL311を、ラインL311a、L311bに分断する。
【0181】
この処理に先だって、短ラインについても、長ラインと同様の結合処理(図29のステップS514および図30参照)を施してもよい。但し、短ラインとしての属性は残したまま、結合する。つまり、結合処理によって短ラインを長ライン化してしまうのではなく、結合処理では、それぞれの短ライン同士を関連づけ、これらの短ラインを結ぶ仮想的な長いラインを認識することになる。結合方法は、長ラインの場合と同様である。つまり、短ライン同士の距離を算出し、算出された距離に基づいて短ライン同士の位置関係を判断し、結合処理(図30参照)を行うのである。
【0182】
図31(b)および図31(c)には、長ラインと短ラインとの重なりを判定し、長ラインを分断するという上述の処理の手順を示した。
まず、図31(b)に示すように、短ラインを構成する線分LL31を近似した直線BL31を求める。直線BL31は、例えば、線分LL31の構成点P310、P311等へのずれ量の自乗が最小値となるように設定する方法を採ることができる。
【0183】
次に、この直線BL31に直交する方向に、各構成点を所定距離だけ移動する。例えば、構成点P311を移動することによって、構成点P311a、P311bが得られる。他の構成点についても同様である。端点については、直線BL31に直交する方向だけでなく、直線BL31に沿う方向にも移動する。端点P310をこのように移動することにより、点P310a、P310bが得られる。こうして得られた移動後の各点を結ぶことによって、短ラインを構成する各線分を太らせた状態のポリゴンPOL31を得ることができる。
【0184】
次にこうして得られたポリゴンと他のラインとの重なりの有無を判断する。
図31(c)には、短ラインを構成する線分L314を太らせて得られたポリゴンRP31と、長ラインL313が重なっている状態を示した。
長ラインL313との重なりが検出された場合には、下側の図に示すようにポリゴンRP313で長ラインL313を分割する。つまり、長ラインL313のうち、ポリゴンRP313に含まれる構成点P313を削除する。この結果、長ラインL313の残余の構成点によって分割されたラインL313a、L313bが定まる。本実施例では、ポリゴンRP313と長ラインL313との境界に新たに構成点を追加したりはしていない。
【0185】
図31(b)、図31(c)に示した以上の処理によって、図31(a)に示したように長ラインと短ラインとの重なりに応じて、長ラインを分断する処理を行うことができる。
【0186】
図29に戻り、車線境界線の解析処理について説明する。
短ラインとの重複解析処理(ステップS515)が終了すると、CPUはノイズ除去を行う(ステップS516)。これは、所定の面積または長さに至らない車線境界線を、誤認識されたノイズと判断して削除する処理である。長ラインまたは短ラインと誤認識された標示は、以上で説明した処理によって、他の長ライン、短ラインとの結合処理等が行われないため、車線境界線としては十分な面積または長さとならない。ノイズ除去では、十分な面積、長さに至らない標示を除去することにより、車線境界線と誤認識された標示の一部を除去することができる。
【0187】
(5)存在領域解析処理〜横断歩道等:
図32は横断歩道、自転車横断帯の存在領域解析処理を示す説明図である。
図32(a)には横断歩道の例を示した。横断歩道の画像CR321に対し、ペイント認識処理の結果、図中のポリゴンCR322で示す境界が抽出されている状態を例示した。
【0188】
横断歩道の存在領域としては、他の標示との重なりの有無その他の位置関係を判断するための四角形領域を以下の手順で生成する。
図32(b)に示す通り、画像から抽出された境界は、構成点P321〜P325から構成されているものとする。存在領域の解析処理では、この境界を以下の手順で四角形に近似する。
構成点P321〜P325のうち最大距離を有する2点の対角線L32を求める。そして、残余の各構成点P322、P323、P325から、この対角線L32への距離d322,d323、d325を求め、その中の大きい側から2つを選択する。図の例では、距離d323、d325が大きい値となるため、これらに対応する構成点P323、P325を選択する。
こうして選択された構成点P323、P325および対角線L32の両端の点P321、P324によって四角形R321を得ることができる。
【0189】
次に、図32(c)に示すように四角形領域R321を長手方向に両側に拡大し、存在領域R322を得る。拡大する倍率は、任意に設定可能である。この存在領域は、他の標示との重なりその他の位置関係の判定に使用するものであるため、道路幅全体にわたる存在領域が得られる範囲で設定することが好ましい。
ペイント認識処理を各パスの連結画像単位で行う場合には、その連結画像の幅と、道路幅との比に基づいて、拡大率を設定することができる。
もっとも、存在領域の拡大は必ずしも必要ではない。
【0190】
図32(d)に自転車横断帯を示した。自転車横断帯の画像CR323に対して、ペイント認識処理で、境界としてポリゴンCR323が抽出された状態を示している。
自転車横断帯についても、横断歩道と同様の処理によって存在領域を設定する。つまり、抽出されたポリゴンCR323を近似する四角形領域を設定し、それを長手方向、即ち道路幅方向に拡大する。
横断歩道の場合と同様、存在領域の拡大は必ずしも必要ではない。
【0191】
図33は停止線の存在領域解析処理を示す説明図である。
図33(a)は停止線の例を示している。ペイント認識処理によって境界線が抽出された状態を示した。
停止線の存在領域解析処理では、抽出された境界線に基づいて、以下の手順で、矩形の存在領域を設定する。
【0192】
図33(b)の左側に示すように、抽出された領域SL33に対して、構成点から近似直線L33を求める。近似曲線L33は、領域SL33の長手方向の直線で、構成点の中央を通る直線である。
こうして近似曲線L33が求まると、矢印A33に示すように、近似曲線L33が2次元座標のX軸に平行になるように回転する。右下に回転した状態を示した。
この状態で、X軸に平行な辺を有する矩形RT33を生成する。矩形RT33の長さ(長手方向)は、領域SL33の幅に合わせる。幅(X軸に直交する方向)は、領域SL33の構成点の最大幅に合わせて近似直線L33を幅方向に移動させる。この際、近似直線L33は図中の上下に同じ幅だけ移動させて矩形RT33を生成する。図の例では、領域SL33の上側の構成点に一致するまで近似直線L33を上方に移動させるとともに、同じ幅だけ下方に移動させるため、矩形RT33は、領域SL33よりも、若干、幅広となっている。
存在領域RT33が得られると、図中の矢印B33のように回転し、左側に示すように、もとの位置に戻すことにより、停止線の存在領域を設定することができる。
【0193】
連結画像には、撮影時に走行した車線とは異なる車線に描かれている停止線が含まれることもある。しかし、この停止線は、カメラの端の方に撮影されたものであるから、正射画像への変換時の歪みも大きく位置精度に欠ける。従って、本実施例では、撮影時の車線と異なる車線に描かれている停止線は削除するものとした。
図33(c)には停止線を削除するか否かの判断方法を示した。図中には、撮影時のパスNP33、道路のセンターラインCL33、および停止線SL331、SL332を示した。本実施例では、パスNP33と交差しない停止線を、撮影時の車線と異なる車線に描かれているものと判断し、削除する。図の例では、停止線SL331はパスNP33と交差しているため削除対象とはならない。停止線SL332はパスNP33と交差していないため、削除されることになる。
【0194】
(6)ペイント相関解析処理:
以上で説明した処理によって、連結画像または道路画像から抽出されたペイントの存在領域が設定された。次は、各ペイントの相関関係によって、誤認識の有無を判定する処理について説明する。この処理は、ペイント解析処理(図23)のステップS550に相当する処理である。
【0195】
(6−1)処理相関図:
図34はペイント相関解析処理の概要を示す説明図である。以下、この図を処理相関図と呼ぶこともある。
本実施例では、認識されたそれぞれの標示を順次、処理対象として選択し、選択された標示と他の標示との相関関係を判定することで誤認識を検出する。処理対象となる標示は、任意の順序で選択することもできるが、本実施例では、処理相関図に示す優先順序に従って選択するものとした。また、標示間の相関関係についても、処理相関図に示す優劣に基づいて判定し、相関関係に整合しない標示が見いだされた場合には、処理相関図において劣後する側に誤認識があると判断するものとした。
処理対象の選択の順序、および誤認識がある標示を特定する方法は、必ずしも処理相関図のように規定しておく必要はなく、ランダムに選択等をしてもよい。ただし、処理相関図のように予め優先順序および優劣関係を規定しておくことにより、処理対象の選択順序などに依存せず、安定的に処理を進めることができる利点がある。
【0196】
図34の処理相関図の内容について説明する。
この図は、上側から順に、処理対象の選択における優先順位を表している。つまり、全ての標示の中で、禁止記号または転回禁止(図26(c)のように道路に描かれた「×」印)が最優先となる。以下、優先順位を高い順に示す。
禁止記号→規制文字、Uターン矢印→数字、横断歩道、自転車横断帯→文字およびバス関連文字、停止線、矢印→車線境界線および結合済車線境界線;
なお、結合済車線境界線とは、車線境界線解析処理(図29参照)によって結合された後の車線境界線を意味する。
【0197】
本実施例では、処理相関図における処理の優先順位は、画像からの認識率の高い順に優先順位を設定した。
なお、横断帯予告など、図中で矢印が引かれていない標示は、各標示に固有のルールに基づく誤認識の判定が行われない標示である。これらの標示については、任意の順序で誤認識の判定を行っても差し支えないが、本実施例では、処理相関図に示す優先度で処理を行うものとした。つまり、横断歩道予告および減速帯は、禁止記号と同等の優先度とし、停止禁止部分、路面塗装、ゼブラは、文字、矢印、停止線と同等の優先度とした。
【0198】
図中の矢印は、相関関係を判断する際の基準、即ち誤認識の判定における優劣を示している。矢印の始点側の標示が基準となり、終点側の標示が劣後することを表している。
また、矢印に付した数字は、一つの標示について複数の矢印が付されている場合に、相関関係を判断する順序を示している。
矢印、車線境界線等については、図中の上半分の標示(禁止記号、規制文字等)全体との間で相関関係を判断する。
【0199】
図の例に従って、具体的に相関関係の判断順序について説明する。
禁止記号については、Uターン矢印との相関関係と、横断歩道との相関関係の2通りを判断することになっている。禁止記号に付された数字に従い、(2)横断歩道との相関関係よりも、(1)Uターン矢印との相関関係を先に判断することになる。
【0200】
禁止記号とUターン矢印との相関関係を判定した結果、両者の相関関係が本来あるべき状態と整合しなかったとする。この相関関係では、矢印の始点側が禁止記号であり、先端側がUターン矢印であるから、相関関係が、本来あるべき状態とは異なると判断される場合には、劣後する側のUターン矢印に誤認識があると判断することになる。
禁止記号については、次に、横断歩道との相関関係を判定する。ただし、この相関関係は、横断歩道については5番目に判断すべき関係となっているため、禁止記号とUターン矢印との相関関係を判定した後、Uターン矢印と横断歩道との相関関係が判断され、更に横断歩道と数字、自転車横断帯、結合済車線境界線などの判断がされてから、禁止記号との相関関係が判定されることになる。この相関関係では、禁止記号側が劣後しているため、相関関係に不整合がある場合には、禁止記号側に誤認識があると判断する。
【0201】
先に説明した通り、本実施例では、処理相関図における処理の優先順位は、画像からの認識率の高い順に設定してある。しかし、相関関係の優劣は、禁止記号と横断歩道のように、処理の優先順位と逆転する場合もある。
以下、それぞれの相関関係の判定方法について説明する。
【0202】
(6−2)組み合わせに基づく判定:
図35は転回禁止とUターン矢印の相関関係による処理例を示す説明図である。標示の組み合わせに基づく処理の一例である。
図35(a)に転回禁止X35およびUターン矢印U35を例示した。図中には、それぞれ画像から認識された境界を併せて示しているが、先に説明した通り、各標示は、存在領域で表されている。転回禁止X35とUターン矢印U35は、図示するように、組み合わせて描かれるのが通常である。本実施例では、これらが組み合わされて用いられているか否かという相関関係に基づいて、誤認識の有無を判定するものとした。
【0203】
図35(b)に転回禁止とUターン矢印の相関関係の判定方法を示した。
図示するように、Uターン矢印の存在領域RU351を長手方向に拡大して判定用の矩形領域RU352を生成する。拡大率は、Uターン矢印と転回禁止との通常の間隔に基づいて設定することができる。
こうして設定された判定用の矩形領域RU352と、転回禁止の存在領域RX35との重なりの有無を判定する。両者が重なっている場合には、Uターン矢印と転回禁止とが組み合わせて描かれていることを意味している。両者が重なっていない場合には、Uターン矢印の付近に転回禁止が存在しないことを意味している。
この場合には、図34の処理相関図に示したように、Uターン矢印側が劣後する関係にあるから、Uターン矢印に誤認識があるものと判断し、Uターン矢印を削除する。
【0204】
ここでは、Uターン矢印の存在領域RU351を拡大する方法を示したが、禁止記号の存在領域RX35を拡大し、判定用の矩形領域を作成してもよい。この場合には、判定用の矩形領域と、Uターン矢印の存在領域RU351との重なりの有無に基づいて相関関係の正誤を判断することができる。
【0205】
本実施例では、上述の相関関係が満たされていない場合には、Uターン矢印を削除するものとした。これに代えて、相関関係が満たされるように、Uターン矢印を設定するようにしてもよい。例えば、転回禁止を拡大して生成された判定用の矩形領域に対して、Uターン矢印以外の標示の存在領域が重なっていることが検出された場合には、その標示は、本来、Uターン矢印であると判断し、Uターン矢印に置換するのである。こうすることによって、標示の認識結果を有効活用することができる。
【0206】
Uターン矢印と転回禁止とが組み合わせで描かれているか否かは、存在領域RX35、RU351の位置関係によって判断することもできる。例えば、両者の重心の距離が所定値内か否かを判定するとともに、両者が道路に沿う方向に配置されているか否かを判定すればよい。
図35(b)に示した方法は、この判定を比較的に簡易に行うことができる利点がある。
【0207】
本実施例では、処理相関図(図34)に示した相関関係のうち、破線で矢印を示した表示間に、組み合わせに基づく判定を適用した。図34に示す通り、Uターン矢印と転回禁止との判定の他、横断歩道と自転車横断帯にも同様の判定方法が適用される。
横断歩道と自転車横断帯は図32(a)、図32(d)に示したように、隣接して描かれるのが通常である。従って、これらの標示が隣接するように組み合わせて描かれているか否かによって誤認識の有無を判定することができる。
この他にも、例えば、規制文字とバス関連文字との組み合わせに基づいて誤認識の有無を判定するようにしてもよい。停止線や矢印が、横断歩道の付近に描かれるのが通常であることから、これらの位置関係を誤認識の有無の判定に用いても良い。
【0208】
(6−3)重なり合いに基づく判定:
図36はペイント相互の重なり合いに基づく判定例を示す説明図である。本実施例では、ペイント相互の重なりも相関関係の一つとして判断している。ペイントは相互に重ならないように描かれるのが通常であるため、重なりがあることは、何らかの誤認識があることを意味するからである。
【0209】
図36(a)は数字と車線境界線との重なりの例を示している。数字の境界線Ma36の内部に車線境界線La36が位置していることが分かる。数字の「5」には、道路に沿う方向の直線部分が含まれるため、この直線部分を車線境界線と誤認識した結果と考えられる。
【0210】
図36(b)は横断歩道と車線境界線との重なりの例を示している。横断歩道の画像CR36内に、車線境界線Lb36の一部が入り込んでいることが分かる。横断歩道を構成する縞模様を車線境界線と誤認識した結果と考えられる。
【0211】
図36(c)には、このように重なりがある場合の処理例を示している。図中には、処理対象となる標示の判定用の矩形領域Pc36に車線境界線LC361、LC362が重なっている状態を例示した。矩形領域PC36は、例えば、横断歩道の存在領域とすることができる。判定領域Pc36は、存在領域をそのまま用いても良いし、所定の拡大率で拡大して用いるようにしてもよい。
【0212】
図36(c)に示すように車線境界線Lc361、Lc362の一部が矩形領域Pc36に重なっている場合、重なっている部分のみを削除してもよい。また、重なっている部分の割合が所定値を超える場合には、車線境界線自体を誤認識として削除してもよい。
図の例では、車線境界線Lc361は、一部で矩形領域Pc36に重なっているにすぎないから、重なっている部分のみを削除する。これに対し、車線境界線Lc362は、大部分が矩形領域Pc36に重なっているため、誤認識と判断し、全体を削除する。
全体を削除するか否かの判断基準は、任意に設定可能である。例えば、重なっている部分が、全体の50%を超える場合には全体を削除するものと判断することができる。
【0213】
図36(d)は、結合済車線境界線と、他の標示とが重なっている状態を示している。上側に示すように、判定用の矩形領域Pd36に対して車線境界線Ld361が貫通しており、別の車線境界線Ld362が一部で重なっている状態を例示した。
結合済みの車線境界線Ld361、Ld362は、いずれも長いため、矩形領域Pd36との重なりは、その一部で生じているだけである。図36(c)中の車線境界線Lc362のように大部分で重なることはない。従って、車線境界線Ld361、Ld362については、矩形領域Pd36に重なっている部分の構成点P36を削除する。この結果、下側に示すように、車線境界線Ld361は、車線境界線Ld361a、Ld361bのように分断される。また、車線境界線Ld362も短縮される。
【0214】
図36(c)、図36(d)では、車線境界線と他の標示とが重なり合っている場合の処理を示した。これらの処理は、車線境界線に限らず、種々の標示同士が重なっている場合に適用可能である。
【0215】
重なり合いに基づく判定は、処理相関図(図34)のうち種々の標示間に適用可能である。本実施例では、横断歩道とUターン記号、禁止記号、規制文字、数字、文字など、図34中の実線の矢印で示した標示間に適用した。組み合わせに基づく判定を行う標示(図34中の破線)に併せて適用してもよい。
【0216】
(6−4)文字等の相関関係に基づく判定:
図37は文字等の相関関係の解析処理のフローチャートである。ここでの文字等には、数字、文字、バス関連文字、規制文字が含まれる。
これらの文字等は、通常、「バス専用」「バス優先」などのように、複数の文字の組み合わせで描かれており、単独で描かれていることはない。本実施例では、文字単体で存在領域が設定されているため、これらの位置関係に基づいて、文字が複数で描かれているか否かを判定し、文字の誤認識の有無を判断する。
【0217】
処理内容は、フローチャートと併せて、図の右側の例に基づいて説明する。
右側に示した図中の4つの矩形は、4つの文字CH371〜CH374の存在領域を示している。それぞれの存在領域は、重心G371〜G374に位置している。文字CH371が処理対象となっているものとする。
文字CH371、CH373は、道路のパスNP37に平行な直線L37上に位置している。同様に、文字CH372、CH374も、パスNP37に平行な直線上に位置しているとする。
重心G371から重心G372、G373、G374までの距離は、それぞれd372、d373、d374である。
【0218】
CPUは、まず文字の認識結果を入力する(ステップS520)。ここでは、それぞれの文字について設定された存在領域の形状を入力する。併せて数字、文字、バス関連文字、規制文字など、文字の種別を入力してもよい。
CPUは、入力した文字の中から、いずれかを処理の対象文字として選択し、対象文字から距離R内に他の文字がない場合には(ステップS521)、対象文字が単独で描かれているものと判断し、対象文字を削除する(ステップS525)。
距離Rは、文字が単独で描かれているか否かの判定基準となる値である。例えば、種々の路面標示において、最も離れて文字が描かれる場合の間隔等に基づいて、距離Rを設定すればよい。
右側の図における距離d372、d373、d374は、いずれも距離R内にあるものとする。
【0219】
対象文字から距離R内に他の文字がある場合には(ステップS521)、対象文字から他の文字までの重心間距離を算出する(ステップS522)。
そして、重心間距離が閾値Th1以下となっている文字がない場合(ステップS523)には、対象文字を削除する(ステップS525)。右側の図の例では、距離d372、d373,d374のいずれもが閾値Th1よりも大きい場合には、対象文字は単独で描かれていると判断され、削除の対象となる。
【0220】
また、進行方向に沿った間隔が閾値Th2以下となる文字がある場合(ステップS524)にも、対象文字を削除する(ステップS525)。右側の図の例では、距離d373が閾値Th2以下である場合には、2つの文字が重なって描かれていると判断されるため、誤認識と判断される。
CPUは、以上の処理を全文字について終了するまで(ステップS526)、繰り返し実行して、文字解析処理を終了する。
【0221】
(7)反対車線処理:
図38は反対車線処理のフローチャートである。この処理は、ペイント解析処理(図23)のステップS580に相当する処理である。
反対車線処理とは相関解析処理の一環であり、道路の対向する車線に存在するペイント同士の相関関係に基づいて、ペイントの認識結果の正誤判定を行う処理である。
【0222】
処理を開始すると、CPUは実線および破線の車線境界線についての認識結果を入力する(ステップS530)。そして、この認識結果に基づいて、上下境界線の解析を行う(ステップS531)。上下境界線とは、認識された車線境界線のうち、対向する車線の境界、つまりセンターラインに相当する境界線を特定する処理である。
本実施例では、破線の境界線を基準として実線の境界線の位置関係を解析することによって、上下境界線を求めるものとした。従って、反対車線処理は、破線の境界線が得られていない道路では適用できない。ステップS530において、破線の車線境界線が入力されなかった道路については、CPUはそのまま処理を終了する。
【0223】
以下、図中に示すように、破線境界線、実線境界線の双方が存在している場合を例にとって、上下境界線の解析(ステップS531)の内容を説明する。
CPUは、認識されている車線境界線の中からいずれかの破線境界線を基準として選択する。図の例では、太線で示す破線境界線L385を基準として選択したものとする。以下、基準となる境界線L385を基準線L385と呼ぶものとする。
【0224】
CPUは基準となる破線境界線を選択した後、この境界線を等間隔に分割する。図中には分割した結果を縦の破線で示した。そして、この破線と実線の車線境界線L381、L382、L383、L384、L386およびパスNP38との交点を求める。図中の●または*が、これらの交点を表している。
この交点のうち、車線境界線L381、L382、L383、L384、L386との交点は、基準線L385から左右方向に最も近いものを採用する。ただし、基準線L385とパスNP38との間の交点は採用しない。
図の例では、基準線L384との交点(図中の*印)は、基準線L385とパスNP38との間に位置するため、不採用となる。また、基準線L381との交点(図中の*印)は、基準線L385との間に、基準線L383との交点があり、基準線L385に最も近いとは言えないため、不採用となる。
この結果、図中に●で示した交点が採用となる。
【0225】
次に、実線の車線境界線のうち、その長さに対して十分な割合で交点が存在しているものを抽出する。図の例では、車線境界線L382、L383、L386、L387が抽出される。
そして、これらについて、パスNP38の方向を見て、基準線L385に対して左側に位置するものは道路の外側の境界線と認識し、右側に位置するものを上下線境界線と認識する。
図の例では、車線基準線L382、L383が外側の境界線と認識され、車線境界線L386、L387が上下境界線と認識される。
【0226】
次に、CPUは反対車線のペイントを抽出し、削除する(ステップS532)。路面には種々のペイントが施されているが、対向する車線に近接して、同一のペイントが施されていることはない。従って、このような位置関係にあるペイントは誤認識であると考えられる。ステップS532では、かかる観点から、パスが存在する車線の反対車線に存在するペイントを削除するのである。
【0227】
図中に反対車線のペイントを削除する処理例を示した。この例では、パスNP38の存在する側の車線に矢印M381が存在する。また、上下線の境界線CL38を挟んで反対側の車線には、矢印M382が存在する。従って、反対車線に存在する矢印M382が削除されることになる。
矢印M382を削除する手順は次の通りである。
まず、図中に破線で示すように、それぞれの矢印M381、M382の境界線をパスMP38に交差するまで延長する。そして、これらの破線と、上下の境界線CL38との交点を求める。この交点が存在するものを反対車線に存在する標示と判断して、削除対象とする。図の例では、矢印M382が、上下の境界線CL38と交点P382で交差している。従って、矢印M382が削除対象となる。
ここでは矢印の例を示したが、文字、数字、規制文字など種々の標示について、同様の処理によって、反対車線側に存在するものを削除する。
【0228】
こうすることによって、パスNP38と反対車線のペイントを削除することができ、誤認識の可能性が高い標示を削減することができる。
反対車線に存在するからといって、必ずしも誤認識されたペイントとは限らない。従って、反対車線に位置するペイントに対し、更に、誤認識か否かの判定を行った上で削除するようにしてもよい。判定条件としては、例えば、パスNP38側の矢印M381との位置関係を考慮する方法が考えられる。パスNP38側の矢印M381と、反対車線の矢印M382のパスNP38に沿う方向の重心間距離を求め、両者の位置が進行方向に所定距離内にある場合に、誤認識があると判定してもよい。矢印は交差点の手前に標示されることが多いため、反対車線では標示される位置がパスNP38の進行方向にずれるのが通常だからである。反対車線に存在するペイントの誤認識を判定する条件は、かかる内容に限らず、種々の設定が可能である。
【0229】
D.効果:
以上で説明した実施例の道路面撮影システム100および路面標示地図生成装置200によれば、道路を走行しながら取得したフレーム画像を正射変換して得られた路面テクスチャを配置することにより、走行軌跡(パス)に沿って位置精度のよい連結画像を得ることができる。更に、複数のパスに沿って得られた連結画像同士を、位置合わせして合成することにより、道路全体の路面画像を得ることができる。この際、画像を撮影した際の各パスの位置精度が最も高いものを基準パスとして、他のパスをこの基準パスに合わせる方法を採ることにより、全体の位置精度を確保しつつ路面画像を生成することができる。
本実施例では、各パスの連結画像は、路面テクスチャを配置するまでに留め、これらを一枚の画像として合成していない。従って、路面テクスチャ単位で配置を平行移動することによって、複数パスの連結画像を容易に合成可能である。
【0230】
本実施例では、各パスの連結画像の生成、および複数パスの連結画像の合成のいずれの処理も、路面テクスチャに対するアフィン変換を施す必要がなく、単純な平行移動で行う。従って、複雑な画像処理に伴う画質の劣化を回避することができ、路面標示が鮮明な状態で表示された路面画像を得ることが可能である。また、平行移動で行うため、路面テクスチャ内の代表点を基準とする相対的な座標系は、連結画像の生成および合成の前後で維持される。この結果、代表点の絶対位置座標が得られれば、路面テクスチャ内の各点の絶対位置座標を容易に取得することが可能となり、路面標示の絶対位置座標を取得することも可能となる。
【0231】
本実施例では、連結画像から標示を認識した後、標示の相関関係に基づいて誤認識の有無を判定することができる。このように相関関係を用いることにより、標示単体で誤認識を判定するよりも、誤認識の有無の判定精度を向上させることができ、ひいては標示の認識精度を向上させることができる。
本実施例では、誤認識と判定された標示は、主として削除する例を示したが、本来あるべき標示が特定可能な場合には、かかる標示に置換するようにしてもよい。
【0232】
以上、本発明の種々の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。
例えば、連結画像は、路面テクスチャを合成した一枚の画像として生成してもよい。この場合、複数パスの合成を行う際には、連結画像を路面テクスチャに相当する複数の領域に分割した上で、領域ごとに平行移動すればよい。
本実施例では、車両に搭載したビデオカメラで撮影した画像を利用する例を示したが、車両に限らず自転車その他の種々の移動体を利用可能であり、歩行しながら撮影する方法を採っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0233】
【図1】実施例としての道路面撮影システムの構成を示す説明図である。
【図2】実施例としての路面標示地図生成装置の構成を示す説明図である。
【図3】路面標示地図の生成過程における中間データを示す説明図である。
【図4】実施例における道路画像の生成例を示す説明図である。
【図5】位置合わせ加工の概要を示す説明図である。
【図6】交差点が存在する場合の位置合わせの手順を示す説明図である。
【図7】連結画像生成処理のフローチャートである。
【図8】位置合わせ加工のフローチャートである。
【図9】基準パス設定処理のフローチャートである。
【図10】連結画像移動処理のフローチャートである。
【図11】位置合わせ加工の処理例(1)を示す説明図である。
【図12】位置合わせ加工の処理例(2)を示す説明図である。
【図13】位置合わせ加工の処理(2)の加工結果を示す説明図である。
【図14】路面標示の絶対位置座標の取得方法を示す説明図である。
【図15】透明化ポリゴン設定処理の概要を示す説明図である。
【図16】透明化ポリゴン設定処理のフローチャートである。
【図17】透明化ポリゴンを設定する前の道路画像例を示す説明図である。
【図18】透明化ポリゴンの設定後の道路画像例を示す説明図である。
【図19】ペイント認識処理のフローチャートである。
【図20】縦配置処理の内容を示す説明図である。
【図21】相対座標変換処理の内容を示す説明図である。
【図22】図22はペイントの存在領域を示す説明図である。
【図23】ペイント解析処理のフローチャートである。
【図24】数字の存在領域解析処理(1)を示す説明図である。
【図25】数字の存在領域解析処理(2)を示す説明図である。
【図26】文字、矢印、転回禁止の標示例を示す説明図である。
【図27】横断歩道予告、規制文字、終り記号、バス関連文字の標示例を示す説明図である。
【図28】ゼブラ、停止禁止部分、減速帯、路面塗装の存在領域解析処理を示す説明図である。
【図29】車線境界線の存在領域解析処理のフローチャートである。
【図30】長ラインの結合処理の一覧を示す説明図である。
【図31】短ラインとの重複箇所に対する処理例を示す説明図である。
【図32】横断歩道、自転車横断帯の存在領域解析処理を示す説明図である。
【図33】停止線の存在領域解析処理を示す説明図である。
【図34】ペイント相関解析処理の概要を示す説明図である。
【図35】転回禁止とUターン矢印の相関関係による処理例を示す説明図である。
【図36】ペイント相互の重なり合いに基づく判定例を示す説明図である。
【図37】文字等の相関関係の解析処理のフローチャートである。
【図38】反対車線処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0234】
100…道路面撮影システム
110…位置計測部
110…計測データ
112…コントローラ
114…GPS
114A…アンテナ
116…IMU
118…DMI
120…ビデオカメラ
130…記録装置
140…ハードディスク
142…画像データ
144…同期データ
146…計測データ
150…基準局データ
200…路面標示地図生成装置
201…主制御部
202…コマンド入力部
203…表示制御部
204…データ入力部
205…軌跡データ算出部
206…画像変換部
207…1パス画像合成部
210a…軌跡データ
210b…路面軌跡データ
210c…路面テクスチャ
210d…連結画像
210e…道路画像
210f…道路画像用登録データ
210g…軌跡用登録データ
210…処理データ記憶部
220…位置合わせ処理部
221…透明化ポリゴン設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって道路面に施された標示を含む路面標示地図を生成する生成方法であって、
(a) 前記道路面を撮影する際の移動軌跡である複数のパスに沿って移動しながら前記標示を含む路面を撮影した連続画像の画像データと、該画像データの撮影位置を表す位置座標データとを入力する工程と、
(b) 前記入力された画像データを構成する各フレーム画像を変換して、前記路面を真上から見た状態の正射画像を得る工程と、
(c) 前記正射画像を前記位置座標データに基づいて、前記パス上に配置することにより、前記各パスの路面を表す連結画像を生成する工程と、
(d) 画像処理によって前記連結画像に含まれる前記道路面の標示を認識する工程と、
(e) 認識された複数の標示間の位置および種別の相関関係に基づいて、該標示についての誤認識を検出する工程とを備える生成方法。
【請求項2】
請求項1記載の生成方法であって、
前記標示の種別には、所定の組み合わせで描かれるものが含まれており、
前記工程(e)は、前記認識された複数の標示について、前記組み合わせの成否によって前記誤認識を検出する生成方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の生成方法であって、
前記標示には、予め前記工程(d)における認識の正確さを表す認識率に基づいて優劣が定められており、
前記工程(e)は、前記認識率の高い標示を基準として、前記相関関係に基づく誤認識の検出を行う生成方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の生成方法であって、
前記工程(e)は、前記標示間の重なり状態に基づいて、前記誤認識を検出する生成方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の生成方法であって、
前記工程(e)は、文字からなる標示については、他の文字との位置関係に基づいて誤認識を検出する生成方法。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の生成方法であって、
前記工程(e)は、対向する車線に位置する標示の相関関係に基づいて、前記誤認識を検出する生成方法。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載の生成方法であって、更に、
前記工程(e)は、前記標示の種別に応じて予め規定された順序で、種別ごとに前記誤認識の検出を行う生成方法。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか記載の生成方法であって、
前記工程(e)は、前記標示を包含する所定の幾何学形状からなる存在領域に基づいて、前記標示の位置の相関関係を判断する生成方法。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか記載の生成方法であって、更に、
(f1) 誤認識と判断された前記標示を削除する工程を備える生成方法。
【請求項10】
請求項1〜8いずれか記載の生成方法であって、更に、
(f2) 前記相関関係に基づいて正しい標示を特定し、前記誤認識と判断された前記標示を、正しい標示に修正する工程を備える生成方法。
【請求項11】
請求項1〜8いずれか記載の生成方法であって、
前記工程(d)は、前記相関関係に基づいて、一つの標示が多重に認識されていると判断される部分を誤認識として検出し、
更に、
(f3) 前記多重に認識されていると判断された標示同士を、相互に結合する工程を備える生成方法。
【請求項12】
道路面に施された標示を含む路面標示地図を生成する生成装置であって、
前記道路面を撮影する際の移動軌跡である複数のパスに沿って移動しながら前記標示を含む路面を撮影した連続画像の画像データと、該画像データの撮影位置を表す位置座標データとを入力する入力部と、
前記入力された画像データを構成する各フレーム画像を変換して、前記路面を真上から見た状態の正射画像を得る画像変換部と、
前記正射画像を前記位置座標データに基づいて、前記パス上に配置することにより、前記各パスの路面を表す連結画像を生成する連結画像生成部と、
画像処理によって前記連結画像に含まれる前記道路面の標示を認識する標示認識部と、
認識された複数の標示間の位置および種別の相関関係に基づいて、該標示についての誤認識を検出する誤認識検出部とを備える生成装置。
【請求項13】
道路面に施された標示を含む路面標示地図を生成するためのコンピュータプログラムであって、
前記道路面を撮影する際の移動軌跡である複数のパスに沿って移動しながら前記標示を含む路面を撮影した連続画像の画像データと、該画像データの撮影位置を表す位置座標データとを入力する入力サブプログラムと、
前記入力された画像データを構成する各フレーム画像を変換して、前記路面を真上から見た状態の正射画像を得る画像変換サブプログラムと、
前記正射画像を前記位置座標データに基づいて、前記パス上に配置することにより、前記各パスの路面を表す連結画像を生成する連結画像生成サブプログラムと、
画像処理によって前記連結画像に含まれる前記道路面の標示を認識する標示認識サブプログラムと、
認識された複数の標示間の位置および種別の相関関係に基づいて、該標示についての誤認識を検出する誤認識検出サブプログラムとを備えるコンピュータプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図25】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図34】
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【図37】
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【図38】
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【図4】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図17】
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【図18】
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【図24】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図32】
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【図33】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2009−223817(P2009−223817A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70219(P2008−70219)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(597151563)株式会社ゼンリン (155)
【Fターム(参考)】