説明

踏切支障報知装置

【課題】既設の踏切支障報知装置に容易に付加可能であり故障時においても踏切支障報知装置全体への異常電流を阻止可能である踏切監視機能を備えた、踏切支障報知装置を実現する。
【解決手段】踏切に設置され、押ボタン121を具備する操作器120と、押ボタン121が押下された時に踏切へ接近する列車に対して報知する報知手段112と、を備える踏切支障報知装置であって、押ボタン121が押下された時に操作者を撮影する撮像手段131と、撮像手段131によって撮影した画像を記録する画像記録手段132と、画像記録手段132に撮影画像の記録を行わせるトリガ信号を操作器120から伝えるための信号経路140と、をさらに備え、信号線140の少なくとも一端に、撮像手段131または画像記録手段132から操作器120へ異常電流が流れることを阻止する絶縁手段133を備えることを特徴とする踏切支障報知装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の踏切に設置される踏切支障報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
踏切の近傍には、踏切内で自動車が立ち往生する等の事象が発生した場合に、接近する列車の運転士や運行管理センター等の鉄道関係者に対して異常を知らせ、列車を停止させることができる装置、例えば、押ボタンを操作することにより即座に異常を知らせる踏切支障報知装置等を設置することが、当該踏切の交通量に応じて法令により義務づけられており、踏切事故防止に成果を上げている。
ところが、踏切支障報知装置が踏切事故を未然に防ぐことに効果的である反面、踏切内で異常が発生していないにも関わらず押ボタンを操作するいたずらが後を絶たず、列車の運行に悪影響を及ぼす要因ともなっている。
【0003】
そこで、いたずらを抑止するために、あるいは、いたずらで押ボタンを操作した者の特定を可能とするために、踏切支障報知装置の押ボタンが操作された時に、それと連動して当該押ボタン付近を撮影する機能を、使い捨てカメラ(レンズ付きフィルム)を用いて実現する装置が開発されており、広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、使い捨てカメラに代わるものとしてデジタルカメラ(CCDカメラ)を用いることによって同様の機能を実現し、さらに、内蔵した携帯電話を用いて撮影した画像を送受信することによって、遠隔地においても即座に画像の閲覧を可能とする装置も開発されており(例えば、特許文献2参照)、使い捨てカメラを用いた装置におけるネガフィルムの現像等に起因する画像確認の即時性および運用コストに関する欠点を解消することが可能である。
【特許文献1】特許第2838488号公報
【特許文献2】特開2006−130963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、どちらの装置においても、電源等のケーブルを踏切制御装置の機器類が設置してある場所から線路を横断させて新たに配線する必要があり、多大なコストと労力を要するという問題がある。
【0006】
また、踏切支障報知装置など列車の運行に直接影響を与える機器においては、既にその信頼性が確立しており、新たに付加した機能に異常が発生して踏切支障報知装置本来の機能が正常に機能しなくなることは避けなければならないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、既設の踏切支障報知装置に対して容易に付加可能であり故障時においても踏切支障報知装置全体への異常電流を阻止可能である踏切監視機能を備えた、踏切支障報知装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
踏切に設置され、少なくとも、押ボタンを具備する操作器と、前記押ボタンが押下された時に前記踏切へと接近する列車に対して押下されたことを報知する報知手段と、を備える踏切支障報知装置であって、
前記押ボタンが押下された時に操作者を撮影する光電変換素子を備えた撮像手段と、前記撮像手段によって撮影した画像を記録する画像記録手段と、前記画像記録手段に撮影画像の記録を行わせる引き金となるトリガ信号を前記操作器から伝えるための信号経路と、をさらに備え、
前記信号経路のいずれかの位置に、前記撮像手段または前記画像記録手段から前記操作器へ異常電流が流れることを阻止する第1の絶縁手段を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の踏切支障報知装置であって、
前記撮像手段および前記画像記録手段が必要とする電力を前記操作器から供給するための電源経路をさらに備え、
前記電源経路のいずれかの位置に、前記撮像手段または前記画像記録手段から前記操作器へ異常電流が流れることを阻止する第2の絶縁手段を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれか一項に記載の踏切支障報知装置であって、
一つの前記押ボタンに対して前記撮像手段を複数備えることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の踏切支障報知装置であって、
前記撮像手段は動画を撮影可能な撮像手段であり、前記撮像手段により撮影している画像をビデオ信号として出力可能とする映像出力手段をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の踏切支障報知装置であって、
前記画像記録手段は、撮影した画像を前記踏切支障報知装置から取外し可能な記憶手段に記録することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の踏切支障報知装置であって、
前記撮像手段は、常に所定の時間間隔でまたは連続的に撮影を続け、
前記画像記録手段は、前記押ボタンが押下された時に、押下された前後の所定の時間内に撮影した画像を記録することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、トリガ信号を伝える信号経路が操作器に接続されていることから、信号経路を踏切制御装置の機器類が設置してある場所から新たに配線する必要がないため、撮像手段および画像記録手段を既設の踏切支障報知装置に対して容易に付加可能である。また、信号経路のいずれかの位置に第1の絶縁手段を備えることから、撮像手段または画像記録手段において回路の短絡が起こるなどして異常な電流が発生した場合でも、信号経路を介して操作器へ流れることを阻止するため、押ボタンが押されると即座にその情報を列車の運転士等に伝えるという踏切支障報知装置本来の機能を維持することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、撮像手段および画像記録手段が必要とする電力を供給する電源経路が操作器に接続されていることから、撮像手段等が電池式ではなく外部から電源の供給が必要な場合においても、電源経路を踏切制御装置の機器類が設置してある場所から新たに配線する必要がないため、撮像手段および画像記録手段を既設の踏切支障報知装置に対して容易に付加可能である。また、電源経路のいずれかの位置に第2の絶縁手段を備えることから、撮像手段または画像記録手段において回路の短絡が起こるなどして異常な電流が発生した場合でも、電源経路を介して操作器へ流れることを阻止するため、押ボタンが押されると即座にその情報を列車の運転士等に伝えるという踏切支障報知装置本来の機能を維持することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、撮像手段を複数備えることから、押ボタンを操作した者を異なる角度から撮影するように配置し得るため、いたずらで押ボタンを操作した者の特定をより精度よく行うことができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、撮像手段が撮影している画像をビデオ信号として出力することから、どのような方向をどのような範囲で撮影するかをその場で確認することが可能なため、撮像手段の設置をより容易に行なうことができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、撮影された画像を取外し可能な記憶手段に記録することから、取り外してすぐにその場で携帯端末や携帯電話等を用いて画像を確認することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、押ボタンが押下された時に、押下された前後の所定の時間内に撮影した画像を記録することから、押ボタンを操作した者がその前後でどのような行動をとっていたかを確認することや、押ボタンを操作した瞬間だけでは捉えきれない操作者の容貌や表情を捉えることが可能なため、いたずらで押ボタンを操作した者の特定をより精度よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明における実施の形態について、図1から図4を参照しながら説明する。
【0021】
(踏切の構成等)
図1に示すように、踏切には踏切警報装置20が設置されており、踏切警報装置20は、踏切の両側それぞれに遮断桿22および警報器23と、それらを統括して制御する踏切制御装置21等を備えている。踏切警報装置20は、踏切に列車が接近すると既知の方法によって列車を検知して遮断桿22を下降させ警報器23を動作させること、列車通過後は遮断桿22を上昇させ警報器23を停止させることを基本とする踏切の制御を行う。
なお、踏切の通行量等によっては、遮断桿22や警報器23を複数備えている場合もあるし、遮断桿22を備えていない場合もある。
【0022】
(踏切支障報知装置の構成等)
本実施の形態に係る踏切支障報知装置100は、図1および図2に示すように、踏切付近に設置された制御器部110と、警報器23を支持する支柱等に設けられ後述する押ボタン121等を備える操作器120と、制御器部110と操作器120とを接続する接続線と、操作器120と同じ支柱等に設けられた押ボタン121の操作者を撮影するためのカメラ部130と、記録開始の引き金となるトリガ信号を操作器120からカメラ部130へと伝える“信号経路”としての信号線140と、操作器120からカメラ部130へと電力を供給する“電源経路”としての電源線150と、を備えている。
なお、踏切支障報知装置100は、一つの踏切に複数の操作器120およびカメラ部130を備えていてもよいし、一つの操作器120に対して複数のカメラ部130を備えていてもよい。
【0023】
制御器部110は制御手段111と報知手段112を備えており、押ボタン121が操作されたことを意味するトリガ信号を制御手段111が受信すると、制御手段111は踏切に接近する列車を停止させるために報知手段112を作動させる。
報知手段112は、踏切支障報知装置100専用に設置された発光機を用いて運転士に知らせる特殊信号発光機であり、作動すると発光機が点滅し当該踏切に異常が発生していることを表示する。
なお、制御手段111は、通常はリレー等を用いた電気回路により構成されているが、マイクロコンピュータ等を用いてプログラムにより制御を行ってもよい。
なお、制御手段111および報知手段112は、制御器部110ではなく操作器120に具備されていてもよい。
なお、報知手段112は、発煙筒を焚いて運転士に知らせる信号煙管、左右のレールを電気的に接続し軌道短絡を発生させて信号を赤にする短絡器等、押ボタン121が操作されたことを運転士が知ること、あるいは、列車を強制的に停止させることが可能であれば、どのような手段を用いてもよい。
【0024】
操作器120は押ボタン121を備えており、押ボタン121が操作されるとカメラ部130および制御器部110へ向けたトリガ信号を発生する。
なお、操作器120は、通常はリレー等を用いた電気回路により構成されているが、マイクロコンピュータ等を用いてプログラムにより制御を行ってもよい。
【0025】
カメラ部130は、図2に示すように、押ボタン121の操作者を撮影する撮像手段131と、撮像手段131によって撮影した静止画像の記録を行う画像記録手段132と、画像記録手段132によって静止画像が記録される“記憶手段”としてのメモリーカード136と、信号線140が接続され、カメラ部130から操作器120へ異常電流が流れることを阻止する“第1の絶縁手段”としてのフォトカプラ133と、電源線150が接続され、同様に異常電流が流れることを阻止する“第2の絶縁手段”としてのコンバータ134と、撮像手段131によって撮影している静止画像をビデオ信号として出力する映像出力手段135と、を備えている。
なお、カメラ部130は、カメラ部を制御するカメラ部制御手段を別途備えていて、以下に示す撮像手段131および画像記録手段132の行う動作を統括して制御するよう構成してもよい。
なお、カメラ部130は、複数の撮像手段131を備えていてもよい。
【0026】
撮像手段131は、CMOSイメージセンサーを用いたカメラを搭載しており、カメラ部130に設けられた図示されていないカメラ部電源スイッチをONにした時から、所定の時間間隔(以下、インターバル時間という。例えば、0.5秒)をおいて常に静止画像の撮影を続けている。また、撮像手段131は、操作器120からのトリガ信号を受けるまでは、撮影してからの経過時間が所定の時間(以下、プリ記録時間という)以内の静止画像(例えば、常に10秒前から現時点までの10秒間の静止画像)を保持している。なお、トリガ信号が受信されない時にはプリ記録時間を経過した静止画像は続けて撮影される静止画像により上書きされ消えていくこととなる。そして、トリガ信号を受けると、後述の画像記録手段132の動作により保持していた静止画像は“記憶手段”としてのメモリーカード136に別途記録される。
引き続き撮像手段131は、今度は別の所定の時間(以下、操作後記録時間という。例えば、20秒間)が経過するまで撮影を続け、その静止画像を保持し続ける。操作後記録時間が経過すると、再度画像記録手段132の動作により保持していた静止画像がメモリーカード136に記録され、初めの状態に戻ってトリガ信号を受けるまでプリ記録時間内の静止画像の撮影と保持を続ける。
なお、カメラ部電源スイッチをONにした時から撮影を開始せずに、撮像開始ボタン等を設けて当該ボタンを押した時から撮影を開始しても良いし、カメラ部130の動作をリセットするリセットボタンを設けて当該ボタンを押した時から撮影を開始するよう構成しても良い。
【0027】
なお、撮像手段131は、記録回数を一定にするためにプリ記録時間と操作後記録時間の合計を一定にして(例えば、30秒間)プリ記録時間をその間で自由に設定できるようにしてもよい(ここでは、プリ記録時間を10秒とすると、操作後記録時間は20秒となる)し、プリ記録時間や操作後記録時間をそれぞれ個別に長くしたり短くしたり設定できるようにしてもよい。また、インターバル時間についても、記憶容量の節約のため長くしたり、細かな動きを確認するために短くしたりできるようにしてもよい。
なお、設定により、撮像手段131では過去の静止画像を全く保持せずに撮影のみを続けて、静止画像の選択と保存を画像記録手段132に行わせてもよいし、常時撮影は行わないようにしてトリガ信号を受信した直後に一枚だけ撮影を行うようにしてもよい。
なお、撮像手段131には、CCDカメラなど光電変換素子を備えたものであれば何を用いてもよい。また、光電変換素子からデジタル画像を直接得られるように構成してもよいし、ビデオ信号を出力可能なカメラを用いて、その信号をデジタル画像に変換するように構成してもよい。
なお、撮像手段131は、必要に応じて、マイクロコンピュータ等を用いてプログラムにより制御および画像処理を行ってもよい。
【0028】
画像記録手段132は、トリガ信号を受けるまで待機しており、トリガ信号を受けると、撮像手段131が撮影し保持している静止画像をメモリーカード136に記録し、操作後記録時間が経過するまで待機する。そして、操作後記録時間が経過すると、再度、撮像手段131が撮影し保持している静止画像をメモリーカード136に記録し、初めの状態に戻ってトリガ信号を受けるまで待機する。この場合、メモリーカード136内の静止画像は上書き処理されないようになっている。
画像記録手段132が静止画像を記録するメモリーカード136としては、例えば、SDカード、メモリースティック、コンパクトフラッシュ(登録商標)等、どのようなものを使用してもよいが、携帯電話によく使用されるものを採用することで、設置箇所でのデータの確認をより容易に行うことが可能である。
なお、画像記録手段132は、撮像手段131が撮影する映像をその都度メモリーカード136に記録し、必要に応じてメモリーカード136に対して削除や上書きを行って、プリ記録時間から操作後記録時間までの静止画像を記録するようにしてもよい。この場合、撮像手段131は撮影した静止画像を保持する必要がない。
なお、画像記録手段132は、必要に応じて、マイクロコンピュータ等を用いてプログラムにより制御を行ってもよい。
なお、撮像手段131が撮影し、画像記録手段132がメモリーカード136に記録する画像は、静止画像に限らず動画像であってもよい。
【0029】
信号線140は、記録開始の引き金となるトリガ信号を操作器120からカメラ部130へと伝えるため、操作器120とカメラ部130とを接続しており、カメラ部130においてはフォトカプラ133に接続されている。信号線140を通して操作器120から伝えられたトリガ信号は、フォトカプラ133を介して撮像手段131および画像記録手段132へと伝えられる。
フォトカプラ133は、発光素子と受光素子が相対して外部からの光を遮断するパッケージに封じ込められたもので、入力された電気信号を発光素子で光に変換し、その光で受光素子を導通させることにより信号の伝達を実現する。このため、電気的には絶縁されており、例えば、カメラ部130の内部に雨水が浸入し回路がショートするなどして異常電流が発生したとしても、その異常電流が操作器120にまで流れてしまうことを阻止することができる。
なお、フォトカプラ133は、信号線140のカメラ部130側に限らず、信号線140の途中や操作器120側に設けられても同様の効果を得ることが可能である。
なお、ここでは第1の絶縁手段としてフォトカプラ133を用いたが、内部で入力側と出力側が絶縁されている絶縁型のDC/DCコンバータを用いてもよいし、ヒューズによって異常電流を遮断するようにしてもよい。
【0030】
電源線150は、カメラ部130が動作するために必要な電力を操作器120からカメラ部130へと供給するため、操作器120とカメラ部130とを接続しており、カメラ部130においてはコンバータ134に接続されている。電源線150を通して操作器120から供給される電力は、コンバータ134を介して撮像手段131および画像記録手段132等へと伝えられる。
コンバータ134は、直流電力を異なる電圧の直流電力に変換する装置であってスイッチング電源などにも一般的に用いられているDC/DCコンバータを用いる。特に、内部で入力側と出力側が絶縁されている(入力側と出力側の絶縁抵抗が高い)絶縁型のDC/DCコンバータを用いることで、カメラ部130の内部に雨水が浸入し回路がショートするなどして異常電流が発生したとしても、内部で絶縁されているため、その異常電流が操作器120にまで流れてしまうことを阻止することができる。
なお、DC/DCコンバータ内部の制御方式としてはリニア方式やPWM方式等複数存在するが、コンバータ134にはどの制御方式のDC/DCコンバータを用いてもよい。
なお、コンバータ134も、電源線150のカメラ部130側に限らず、電源線150の途中や操作器120側に設けられても同様の効果を得ることが可能である。
なお、ここでは第2の絶縁手段としてコンバータ134を用いたが、ヒューズによって異常電流を遮断するようにしてもよい。
【0031】
映像出力手段135は、撮像手段131が撮影している静止画像をビデオ信号として出力するもので、カメラ部130を踏切に設置する際にテレビモニターを接続することによって撮像手段131がどこを撮影しているのか確認することができるため、確実に撮影したい方向に撮像手段131を向けて設置することができる。
なお、撮像手段131は、インターバル時間毎に撮影した静止画像に限らず、撮影している動画像をビデオ信号として出力してもよい。
【0032】
(踏切支障報知装置の動作等)
踏切に列車が接近した時に、踏切を通過する自動車が雪や氷でスリップして立ち往生していたり、前方の道路が渋滞していて踏切内に取り残されていたり、長い踏切を徒歩で渡りきれずに踏切内に取り残されたり、といった危険な状況を回避するため、踏切支障報知装置は各踏切に設置されている。このような状況に陥った時または陥りそうな時、当事者または近くで目撃している者が押ボタン121を操作することで、接近する列車の運転士や運行管理センター等の鉄道関係者に対して異常を知らせることができ、列車を停止させて事故を未然に防ぐことができる。
この時、制御手段111は、図3の踏切支障報知処理に示すフロー図に従い動作する。
【0033】
制御手段111は、操作器120からトリガ信号が送られてくるまで待機状態を維持する(ステップS11)。トリガ信号を受信すると(ステップS11:YES)、制御手段111は報知手段112を作動させる(ステップS12)。
なお、報知手段112を停止させて、制御手段111を元の待機状態に復帰させるには、現場に作業員が向かい、踏切の安全を確認した後に復帰作業を行うこととなる。
【0034】
一方で、踏切支障報知装置100は、押ボタン121の操作者を撮影した静止画像を記録する動作を行う。
この時、カメラ部130において、図4の撮像記録処理に示すフロー図に従い動作が行われる。
【0035】
まず、撮像手段131は操作器120からのトリガ信号を受信するまでインターバル時間毎に撮影を続け、常にプリ記録時間内の静止画像を保持し(ステップS21)続ける(ステップS22:NO)。操作器120からのトリガ信号を受信すると(ステップS22:YES)、画像記録手段132は撮像手段131が保持している静止画像をメモリーカード136に記録する(ステップS23)。引き続き、撮像手段131はインターバル時間毎に撮影を続けて、それら全ての静止画像を保持し(ステップS24)、操作後記録時間が経過するまで撮影と記録を繰り返す(ステップS25:NO)。そして、操作後記録時間が経過すると(ステップS25:YES)、画像記録手段132は撮像手段131が保持している静止画像をメモリーカード136に記録し(ステップS26)、処理を終了する。
上記の処理を終了した後、カメラ部130は改めて撮像記録処理を実行する。
その後、メモリーカード136に記録された画像は、作業員が踏切の安全確認と復帰作業を行う際に、カメラ部電源スイッチをOFFにしてメモリーカード136をカメラ部130から取外し、携帯端末や携帯電話等に接続されて確認および保存が行われることとなる。
【0036】
(踏切支障報知装置の効果)
以上説明した本実施の形態に係る踏切支障報知装置100は、トリガ信号を伝える信号線140が操作器120からカメラ部130に接続されていることから、信号線を踏切制御装置21の機器類が設置してある場所から新たに配線する必要がないため、撮像手段131および画像記録手段132を既設の踏切支障報知装置に対して容易に付加することができる。
【0037】
本実施の形態に係る踏切支障報知装置100は、信号線140の少なくとも一端にフォトカプラ133を備えることから、撮像手段131または画像記録手段132において回路の短絡が起こるなどして異常な電流が発生した場合でも、信号線140を介して操作器120へ流れることを阻止するため、押ボタン121が押されると即座にその情報を列車の運転士等に伝えるという踏切支障報知装置本来の機能を維持することができる。
【0038】
本実施の形態に係る踏切支障報知装置100は、信号線140の少なくとも一端にコンバータ134を備えることから、撮像手段131または画像記録手段132において回路の短絡が起こるなどして異常な電流が発生した場合でも、電源線150を介して操作器120へ流れることを阻止するため、押ボタン121が押されると即座にその情報を列車の運転士等に伝えるという踏切支障報知装置本来の機能を維持することができる。
【0039】
本実施の形態に係る踏切支障報知装置100は、撮像手段131が撮影している画像を映像出力手段135がビデオ信号として出力することから、どのような方向をどのような範囲で撮影するかをその場で確認することが可能なため、カメラ部130の設置をより容易に行なうことができる。
【0040】
本実施の形態に係る踏切支障報知装置100は、撮像手段131が撮影した画像を取外し可能なメモリーカード136に画像記録手段132が記録することから、メモリーカード136を取り外してすぐにその場で携帯端末や携帯電話等を用いて画像を確認することができる。
【0041】
本実施の形態に係る踏切支障報知装置100は、一つの操作器120に対して複数のカメラ部130を設けることや、一つのカメラ部130に複数の撮像手段131を設けることができるため、押ボタン121を操作した者を異なる角度から撮影するように配置し得るため、いたずらで押ボタン121を操作した者の特定をより精度よく行うことができる。
【0042】
本実施の形態に係る踏切支障報知装置100は、押ボタン121が押下された時に、押下された前後の所定の時間内に撮影した画像を記録することから、押ボタン121を操作した者がその前後でどのような行動をとっていたかを確認することや、押ボタン121を操作した瞬間だけでは捉えきれない操作者の容貌や表情を捉えることが可能なため、いたずらで押ボタン121を操作した者の特定をより精度よく行うことができる。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態に係る踏切支障報知装置100は、いたずらで押ボタン121を操作した者の特定をより精度よく行うことができるため、いたずらを抑止する効果も向上することが期待される。
【0044】
(その他)
なお、本実施の形態に係る踏切支障報知装置100においては、カメラ部130の動作に必要な電力は操作器120から接続された電源線150によって供給されることとしているが、カメラ部130にバッテリー電源などを独自に備えることによって電源線150を省略することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明における実施の形態に係る踏切支障報知装置が設置されている踏切の主要な構成要素を表す図である。
【図2】本発明における実施の形態に係る踏切支障報知装置のブロック図である。
【図3】本発明における実施の形態に係る踏切支障報知装置が備える制御手段の動作を表すフロー図である。
【図4】本発明における実施の形態に係る踏切支障報知装置が備えるカメラ部の動作を表すフロー図である。
【符号の説明】
【0046】
20 踏切警報装置
21 踏切制御装置
22 遮断桿
23 警報器
100 踏切支障報知装置
110 制御器部
111 制御手段
112 報知手段
120 操作器
121 押ボタン
130 カメラ部
131 撮像手段
132 画像記録手段
133 フォトカプラ(第1の絶縁手段)
134 コンバータ(第2の絶縁手段)
135 映像出力手段
136 メモリーカード(記憶手段)
140 信号線(信号経路)
150 電源線(電源経路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏切に設置され、少なくとも、押ボタンを具備する操作器と、前記押ボタンが押下された時に前記踏切へと接近する列車に対して押下されたことを報知する報知手段と、を備える踏切支障報知装置であって、
前記押ボタンが押下された時に操作者を撮影する光電変換素子を備えた撮像手段と、前記撮像手段によって撮影した画像を記録する画像記録手段と、前記画像記録手段に撮影画像の記録を行わせる引き金となるトリガ信号を前記操作器から伝えるための信号経路と、をさらに備え、
前記信号経路のいずれかの位置に、前記撮像手段または前記画像記録手段から前記操作器へ異常電流が流れることを阻止する第1の絶縁手段を備えることを特徴とする踏切支障報知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の踏切支障報知装置であって、
前記撮像手段および前記画像記録手段が必要とする電力を前記操作器から供給するための電源経路をさらに備え、
前記電源経路のいずれかの位置に、前記撮像手段または前記画像記録手段から前記操作器へ異常電流が流れることを阻止する第2の絶縁手段を備えることを特徴とする踏切支障報知装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一項に記載の踏切支障報知装置であって、
一つの前記押ボタンに対して前記撮像手段を複数備えることを特徴とする踏切支障報知装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の踏切支障報知装置であって、
前記撮像手段は動画を撮影可能な撮像手段であり、前記撮像手段により撮影している画像をビデオ信号として出力可能とする映像出力手段をさらに備えることを特徴とする踏切支障報知装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の踏切支障報知装置であって、
前記画像記録手段は、撮影した画像を前記踏切支障報知装置から取外し可能な記憶手段に記録することを特徴とする踏切支障報知装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の踏切支障報知装置であって、
前記撮像手段は、常に所定の時間間隔でまたは連続的に撮影を続け、
前記画像記録手段は、前記押ボタンが押下された時に、押下された前後の所定の時間内に撮影した画像を記録することを特徴とする踏切支障報知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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