説明

身体に密着する衣類

【課題】 着用感を損なわず、着用者の外観を美しく保って、多少の体型補整機能及び/または筋肉サポート機能も具備した経編地を用いたヒップ部を有するフィットタイプの衣類を提供する。
【解決手段】 ジャカード編からなる地編が非弾性糸で編まれた経編地からなり、前記地編の表側にあらわれる編組織を緊迫力の強弱の要求に応じて切り替えることにより、所定の部分に、比較的緊迫力の弱い部分13bと、比較的緊迫力の強い部分からなる帯状であり且つカーブした連続パターン14a、14bが複数並列に設けられ、前記複数の連続パターンが、前記ヒップ部の膨らみの下から脇に至る位置に、ヒップ部下部方向へ凸状にカーブした状態に形成され、前記複数の連続パターンのそれぞれの幅がヒップ部内側からヒップ部外側へ至るに従って広くなるよう形成された身体に密着する衣類。
【選択図】 図12

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分的に緊迫力の強い部分と弱い部分を有するジャカード編の経編地から構成され、着用した場合に身体に密着する衣類に関し、特に、体型補正機能及び/または筋肉サポート機能を持たせるべく、所定の部分に緊迫力の強い部分を設けた衣類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガードル、ショーツ、ボディスーツ、水着、レオタード、ブラジャー、スパッツ、スポーツ用タイツなど、体型補正機能及び/または筋肉サポート機能を持たせるために、衣類の所定部分の緊迫力を大きくした衣類は、広く普及している。
【0003】
このような衣類において、所望の部分の緊迫力を大きくするために、適宜の当て布を衣類本体生地の裏側または表側から当てがうことが、最も一般的に行われていた。しかし、当て布によって緊迫力の大きい部分を形成した衣類は、当て布の存在する部分と当て布の存在しない部分との境界に厚みの相違による段差があるため、その段差がアウターウェアに反映し、アウターウェアの外側からも段差が見えてしまい、着用者の外観を著しく低下させると言う問題があった。更に当て布は衣類本体に縫合されるので、縫合部分の厚みの増大により、肌触りが低下したり、皮膚病(皮膚傷害)の原因となったりすると言う問題もあった。
【0004】
このような問題を生じることなく所望の部分の緊迫力を強くするために、ジャカード編からなる地編みの表側にあらわれる編組織を切り替えて組織を変化させることにより、比較的緊迫力の強い部分と弱い部分とをパターン状に設けた衣類が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3023354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、緊迫力を必要とする部分の面積が広く、且つ特に強い緊迫力が必要とされる場合は、その部分の全体を強い緊迫力を有する編組織で均一に構成した場合、身体への圧迫が強すぎて着用感が損なわれたり、比較的緊迫力の強い部分と比較的緊迫力の弱い部分との境界に段差が生じ、例えばガードル等のようにインナーウェアとして着用する衣類の場合、アウターウェアの外観にインナーウェアのラインがあらわれてしまうというような問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、着用感を損なわず、着用者の外観を美しく保って、かつ必要な体型補整機能及び/または筋肉サポート機能を有する衣類を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、次の様な衣類を提供する。

(1)ジャカード編からなる地編が非弾性糸で編まれた経編地からなる衣類において、前記地編の表側にあらわれる編組織を緊迫力の強弱の要求に応じて切り替えることにより、比較的緊迫力の強い部分と比較的緊迫力の弱い部分がパターン状に設けられ、所定の部分に、前記比較的緊迫力の強い部分からなる帯状であり且つカーブした連続パターンが複数並列に設けられた、身体に密着する衣類。
【0009】
(2)前記経編地に弾性糸が挿入され、緊迫力の強弱の要求に応じて、前記弾性糸の挿入本数及び/又は太さを変化させてなる、(1)に記載の身体に密着する衣類。
【0010】
(3)前記複数の連続パターンのうち少なくとも一本の幅を、緊迫力の要求に応じて、連続方向において変化させてなる、(1)または(2)に記載の身体に密着する衣類。
【0011】
(4)前記複数の連続パターンのそれぞれの幅を、互いに異ならせてなる、(1)または(2)に記載の身体に密着する衣類。
【0012】
(5)ヒップ部を有する衣類である、(1)〜(4)のいずれか一に記載の身体に密着する衣類。
【0013】
(6)前記複数の連続パターンが、着用した際に着用者の大転子近傍から腰部上部へ相当する位置に、腰部上部方向へ凸状にカーブした状態に形成された(5)に記載の身体に密着する衣類。
【0014】
(7)前記複数の連続パターンの相互間隔が、着用者の大転子近傍に相当する部分から腰部上部に相当する部分へ至るに従って広く形成された、(6)に記載の身体に密着する衣類。
【0015】
(8)前記複数の連続パターンのそれぞれの幅が、着用者の大転子近傍に相当する部分から腰部上部に相当する部分へ至るに従って広くなるよう形成された、(6)に記載の身体に密着する衣類。
【0016】
(9)前記複数の連続パターンが、前記ヒップ部の膨らみの下から脇に至る位置に、ヒップ部下部方向へ凸状にカーブした状態に形成された、(5)に記載の身体に密着する衣類。
【0017】
(10)前記複数の連続パターンのそれぞれの幅が、ヒップ部内側からヒップ部外側へ至るに従って広くなるよう形成された、(9)に記載の身体に密着する衣類。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、緊迫力を必要とする領域の面積が広く、且つ特に強い緊迫力が必要とされる場合であっても、その領域を、比較的緊迫力の強い編組織からなる細幅の連続パターンを、比較的緊迫力の弱い編組織を介在させて複数本並列に配置して構成することにより、複数本の連続パターン全体として強緊迫力部を作ることができる。これにより、着用感を損なわず、着用者の外観を美しく保って、かつ必要な体型補整機能及び/または筋肉サポート機能を有する衣類を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の衣類の一例であるショートタイプのガードルを後側から見た斜視図。
【図2】本発明の衣類の一例であるショートタイプのガードルを後側から見た斜視図。
【図3】本発明の衣類の一例であるショートタイプのガードルを後側から見た斜視図。
【図4】本発明で用いるショートガードルの主として左後見頃に用いられる生地の裁断前の平面図。
【図5】地編組織に弾性糸からなる挿入糸が挿入されている状態を説明する為の組織図。
【図6】地編組織に弾性糸からなる挿入糸が挿入されている状態を説明する為の組織図。
【図7】地編組織に弾性糸からなる挿入糸が挿入されている状態を説明する為の組織図。
【図8】本発明の衣類の一例であるロングタイプのガードルを後側から見た斜視図。
【図9】本発明の衣類の一例であるロングタイプのガードルを後側から見た斜視図。
【図10】本発明の衣類の一例であるロングタイプのガードルを後側から見た斜視図。
【図11】本発明で用いるロングガードルの主として左後見頃に用いられる生地の裁断前の平面図。
【図12】本発明の衣類の一例であるショートタイプのガードルを後側から見た斜視図。
【図13】本発明の衣類の一例であるショートタイプのガードルを後側から見た斜視図。
【図14】本発明の衣類の一例であるショートタイプのガードルを後側から見た斜視図。
【図15】本発明の衣類の一例であるロングタイプのガードルを後側から見た斜視図。
【図16】本発明の衣類の一例であるロングタイプのガードルを後側から見た斜視図。
【図17】本発明の衣類の一例であるロングタイプのガードルを後側から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の衣類に用いる生地は、表側にあらわれる糸から構成されるパターン模様を形成する表側にあらわれる地編組織も、また、その裏側にあらわれる地編組織も、ジャカード編からなる経編で編まれる。さらに、適度な伸縮性を持たせるために、弾性糸が挿入されていることが好ましい。本発明の衣類に用いる生地は、編方向、即ち、糸が供給される方向が、完成した衣類のほぼ横方向になる様に設計される。しかし、適用される衣類の種類や適用される部位によっては斜めになることもある。
【0021】
本発明で用いる経編生地は、実際にはジャカード制御装置を有する経編機(例えば特開平6−166934号など参照)などを用いて、これらの経編機に地編用の非弾性糸を供給して(必要に応じて弾性糸を同時に供給しながら)編まれるものである。
【0022】
本発明の衣類は、ジャカード編みからなる地編の表側にあらわれる編組織を、緊迫力の強弱の要求に応じて切り替えることにより、帯状で且つカーブした細幅の連続パターン状に比較的緊迫力の強い部分(緊迫力の強いジャカード柄)を曲線状に形成した生地で構成される。また、この緊迫力の強いジャカード柄部分の少なくとも一部に弾性糸を挿入することで他よりも緊迫力の強くなった直線状部分を重ねることにより、より緊迫力の強い部分を作ることも好ましい。この細幅の連続パターンを、複数本、互いに近接させて並列に設けることにより、これら複数の連続パターンにより、全体として一つの比較的緊迫力の強い領域が形成される。従って、衣類として着用した場合に、体型を補正したり筋肉をサポートしたりするために高い緊迫力を持たせたい領域に、上述の複数本の連続パターンを設ければ、体型補正機能及び/または筋肉サポート機能を有する衣類を実現できる。
【0023】
緊迫力の強い帯状カーブの連続パターンは、2〜7本形成されていることが好ましく、特に、3本、4本、あるいは5本であることが好ましい。また、複数本の連続パターンを近接させて高い緊迫力を持たせた領域の中でも、特に高い緊迫力が求められる部分がある場合には、連続パターンの密集度や太さを調節することによって高い緊迫力を得ることも可能である。例えば、(1)緊迫力の強い帯状の連続パターンを当該部分に密集させる、(2)緊迫力の強い帯状の連続パターンの幅を当該部分において他の部分よりも太くする、などの構成をとることが好ましい。(1)の場合、(i)当該部分において連続パターンの本数を増やす、(ii)当該部分において連続パターンの1本毎の幅を太くする、などとすることが好ましい。(2)の場合、当該部分における連続パターン同士の間隔は他の部分と均一とすることにより当該部分における複数連続パターンの全体幅が他の部分より太くなるようにしても良いし、当該部分における連続パターン同士の間隔を小さくすることにより当該部分における連続パターンの密度が高くなるようにしても良い。後述するが、緊迫力の強い帯状カーブの連続パターンは、ジャカード柄として生地の任意の位置に任意の形状に形成することができるので、連続パターンの幅、本数、間隔などは任意に設計することが可能である。これにより、部分的に緊迫力の高い箇所を自在に形成することができる。また、ジャカード柄による曲線状の緊迫力の切り替えと、弾性糸挿入による直線状の緊迫力の切り替えとを組み合わせることにより、さらに局所的に緊迫力が異なる衣類を実現できる。
【0024】
なお、本発明の衣類は身体に密着させて着用するものであるが、「身体に密着する」とは、必ずしも素肌に直接触れる状態で着用することを意味するものではなく、適宜のアンダーウェア類を介して着用される衣類を含む。
【0025】
ここで、本発明にかかる衣類の具体例について、図面を参照しながら説明するが、本発明は、これらの衣類のみに限定されるものではない。
【0026】
まず、一つの具体例として、着用者の大転子から腰部上部中央に相当する位置に、腰部上部方向へ凸状にカーブした細幅の連続パターンが2本並列に近接して形成されたショートガードルを、図1に示す。
【0027】
図1に示すショートガードルは、シングルラッシェルジャカード編地からなる編組織で構成され、地編の表側にあらわれる編み組織を変化させたジャカード柄によって、細幅で帯状にカーブした連続パターン12a、12bが形成されたものである。連続パターン12a、12bは、ガードルの後ろから脇にかけての見頃生地に、着用した場合に着用者の大転子近傍からヒップの膨らみの上部を通って腰部上部中央に至るように、左右対称に形成されている。連続パターン12a、12bの編み組織は、ヒップの膨らみ全体を包み込む部分11aや、連続パターン12aおよび12bの間の部分11bや、ガードルの脇部分11cなどに比較して、緊迫力が相対的に強くなるように編まれている。なお、図1において、10はウエスト充当部である。
【0028】
図1に示すショートガードルでは、細幅の連続パターン12a、12bが近接するように、連続パターン12a、12bの間の部分11bが細く形成されている。これにより、連続パターン12a、12bおよびこれらの間の部分11bが、全体として一つの緊迫力の強い領域を形成している。
【0029】
連続パターン12a、12bは、いずれも、大転子側から腰部上部へ至るに従って幅が広くなるように形成することが好ましい。例えば、大転子側の端部(裾側端部)における幅が約1.5cm、ウェスト充当部10付近での幅が約3.5cmとなるように、連続パターン12a、12bを形成することが好ましい。この場合、連続パターン12a、12bおよびこれらの間の部分11bにより形成される緊迫力の強い領域の幅は、大転子側で約4cmであり、腰部上部中央側で約8.5cmとなる。ただし、これらの数値は一例に過ぎず、要求する緊迫力の程度に応じて任意に設計することができる。
【0030】
また、連続パターンの本数も2本に限定されない。例えば、図2に示すように、着用者の大転子から腰部上部中央に相当する位置に、腰部上部方向へ凸状にカーブした細幅の連続パターン12a、12b、12cが3本並列に近接して形成されたショートガードルも、本発明の一実施形態である。図2に示すショートガードルの場合、連続パターン12a、12b、12cおよびこれらの間の部分11b、11cにより、全体として一つの緊迫力の強い領域が形成されている。図2における連続パターン12a、12b、12cのそれぞれは、図1に示したものよりも細く、例えば、大転子側の端部における幅が約1cm、ウェスト充当部10付近での幅が約2.5cmである。この場合、連続パターン12a、12b、12cおよびこれらの間の部分11b、11cにより形成される緊迫力の強い領域の全体幅は、大転子側で約4cmであり、腰部上部中央側で約8.5cmとなる。
【0031】
さらに、図3に示した例は、着用者の大転子から腰部上部中央に相当する位置に、腰部上部方向へ凸状にカーブした細幅の連続パターン12a、12b、12c、12d、12eが5本並列に近接して形成されたショートガードルである。図3に示すショートガードルの場合、連続パターン12a、12b、12c、12d、12eおよびこれらの間の部分11b、11c、11d、11eにより、全体として一つの緊迫力の強い領域が形成されている。図3における連続パターン12a、12b、12c、12d、12eのそれぞれは、図1および図2に示したものよりもさらに細く、例えば、大転子側の端部における幅が約0.5cm、ウェスト充当部10付近での幅が約1.5cmである。この場合、連続パターン12a〜12eおよびこれらの間の部分11b〜11eにより形成される緊迫力の強い領域の幅は、大転子側で約4.5cmであり、腰部上部中央側で約10cmとなる。
【0032】
図1〜図3に例示したように、着用者の大転子から腰部上部中央に相当する位置に、腰部上部方向へ凸状にカーブした細幅の連続パターンを互いに近接させて並列に形成してなる緊迫力の強い領域を設けることにより、着用者の背中側の筋肉(梨状筋および脊柱起立筋)をサポートし、着用者の上半身を起こして姿勢を良くする効果がある。さらに、ガードルの腹部側にも緊迫力の強い編組織を形成して腹筋をサポートすれば、着用者の背骨を前後からバランス良く支えて姿勢をさらに美しく見せる効果が得られる。
【0033】
また、図1〜図3に例示したように、着用者のヒップの膨らみ部分の上を通るように、連続パターンを腰部上部方向へ凸状にカーブさせることにより、ヒップの丸い膨らみをつぶすことがなく、ヒップラインを美しく整える効果がある。
【0034】
図1〜図3に例示したようなショートガードルの場合、複数の連続パターンのそれぞれの太さを互いに異ならせても良い。この場合、並列する複数の連続パターンのうち外側に位置する連続パターン(例えば図3の12a、12e)ほど細く、中央側に位置する連続パターン(例えば図3の12c)ほど太くなるように形成すれば、身体の立体形状に沿いやすい。
【0035】
ここで、図4に、図1〜図3に例示した様なショートガードルの、後ろから脇にかけての左側身頃生地の裁断前の平面図を示す。図4の例は、腰部上部方向へ凸状にカーブした緊迫力の強い細幅の連続パターンを7本、着用者の大転子から腰部上部中央に相当する位置に設けるための生地である。なお、図4において、矢印Sは、この経編生地を形成するための糸の供給方向を示す。
【0036】
図4において、41a〜41gの7つの連続パターンは、緊迫力を強くするために2針または3針以上の振りを1繰り返し単位内に所定の割合で入れたサテン調ネット組織として編まれ、その他の領域はメッシュ調ネット組織として編まれる。緊迫力の強いサテン調ネット組織で編まれたジャカードの複数の帯状カーブ部分の間の部分は、帯状カーブ部分よりも緊迫力の弱い、且つ、その他のメッシュ調ネット組織部分よりも緊迫力の強い編組織とすると、複数本のジャカードの帯状カーブ部分及びそれに挟まれた箇所を、全体として緊迫力の強い箇所とすることができる。なお、サテン調ネット組織およびメッシュ調ネット組織を混在させた編組織が、例えばジャカード制御装置を有する経編機などを用いて、この経編機のコンピュータに各ウェールと各コースの編み方に関する指令を入力することによって実現できることは、当業者にとっては周知の事項である(前述の特許文献1にも詳しい説明が開示されているので必要であれば参照されたい)。また、細幅の連続パターン部分の緊迫力は、特許文献1にも開示されているように、針の振り量及び/または1繰り返し単位内に針の振りを入れる割合を調整することにより、所望の強さに調整できる。
【0037】
また、41a〜41gの7つの連続パターンの少なくとも一部に弾性糸挿入部分を重ねることにより、各連続パターン内に特に緊迫力の強い部分を形成することも好ましい。弾性糸は、非弾性糸と同じく、図4に矢印Sで示す方向に供給されるので、弾性糸を供給するタイミングを制御することにより、連続パターン(ジャカード柄)部分に重なるように弾性糸挿入により緊迫力を強くすることができる。この場合、弾性糸によって与えられる緊迫力の強さは、挿入する弾性糸の本数及び/または太さで調節することが可能である。
【0038】
例えば、連続パターンの一部に弾性糸挿入部分を重ねれば、緊迫力の強い連続パターンの中でも特に緊迫力が強い箇所を必要に応じて作ることができるので、身体の立体形状に美しくフィットして、必要な箇所だけに必要な強さの緊迫力を局所的に与える衣類を提供できる。
【0039】
図4において、生地40中に示された波線ラインA−B−C−D−E−Aは、ガードルの脇から後ろに用いられる着用者の左側半分の身頃を得るための裁断ラインを示したものである。この生地40からガードルのクロッチ用の布や腹部布等も裁断しても良いが、ここではその図示および詳しい説明は省略する。また、ガードルの脇から後ろに用いられる着用者の右側半分の身頃を得るための裁断ラインは、図4中に示した裁断ラインと左右線対称となる。A−Bラインは、図示しない腹部布と縫合され、E−Dラインは図示しない前述した右側半分の身頃の同様な部分と縫合されて後中心の縫合ラインを形成することになる。A−Eラインはウエスト充当部10の布を縫製により取り付ける。ウエスト充当部10の布の素材は、少なくともガードル横方向に伸縮性を有する生地を例えば2つ折りにして用いればよく、必要に応じてストレッチテープなどを内側に取り付けてもよい。さらに、C−Dライン等にクロッチ用の布を縫製により取り付けることにより、図1〜図3に示したようなショートガードルを作成することができる。
【0040】
なお、地編を構成する非弾性糸としては、ナイロン糸、ポリエステル糸などの合成繊維糸、レーヨン糸、アセテート糸、キュプラ糸などの再生繊維糸、木綿糸、絹糸、麻糸、ウール糸などの天然繊維などを用いることができるが、ナイロン糸が特に好ましく、太さとしてはナイロン糸で20〜80デニールに相当する太さの糸が好ましく用いられる。
【0041】
ただし、本発明で用いる生地は、かかる非弾性糸で編まれた編地のウェール方向に弾性糸を挿入することにより、緊迫力を調整したものであっても良い。さらに、挿入される弾性糸は、緊迫力の強弱の要求に応じて、その本数及び/または太さを変化させることが好ましい。
【0042】
弾性糸により緊迫力の強弱を変化させる場合は、例えば、裾部分や腰上部に充当する箇所に挿入する弾性糸を太くしたり本数を多くするなどして、これらの部分を緊迫力の強い部分とすることが好ましい。また、腰上部に充当する箇所において、緊迫力の強い編組織からなる複数の連続パターン(ジャカード柄)を形成すると共に弾性糸を挿入してさらに緊迫力を高めることにより、この箇所をガードル全体で最も緊迫力の強い部分とすることができる。これにより、腰上部へのサポートを強くすることができる。
【0043】
図5〜図7にジャカード編からなる地編ネット組織に弾性糸からなる挿入糸が挿入されている状態を説明する為の組織図を示した。弾性糸が挿入されていると言えば、通常当業者であれば、十分理解できるが、念の為その代表的な例を取り上げて説明する。図5〜図7に示した弾性糸からなる挿入糸が挿入されている態様は、一例であって、本発明においては、本発明の目的を阻害しない限り、弾性糸からなる挿入糸が挿入されているこれ以外の態様を用いることもできる。
【0044】
図5〜図7においては、いずれもサテン調ネット組織を例にとって、この組織に挿入糸が挿入されている状態を示した。尚、図5〜図7においては、いずれもサテン調ネット組織の表側と裏側の組織を重ねて示してある。そして、図5〜図7においては、いずれも図5(b)、図6(b)、図7(b)が、サテン調ネット組織に弾性糸からなる挿入糸が挿入されている状態を示した組織図であり、図5(a)、図6(a)、図7(a)が、それらを構成するそれぞれの糸1本ずつを取り上げて別々に組織図に記載したものである。
【0045】
いずれの図においても矢印Sの方向が糸の供給方向である。
【0046】
図5に示した態様は、地編としての2針の振りが入ったサテン調ネット組織に1本ずつの挿入糸が挿入されている状態を示した組織図である。
【0047】
図5(a)、(b)において、5が地編としてのサテン調ネット組織の表側に現れる非弾性糸であり、6が地編としてのサテン調ネット組織の裏側に現れる非弾性糸であり、7が弾性糸からなる挿入糸である。図5に示した態様では、各ウェールB1 、B2 、B3 、B4 、B5 の間にそれぞれ1本ずつの挿入糸7が挿入されている状態を示している。地編として2針の振りが入ったサテン調ネット組織を例にとって説明したが、これ以外のサテン調ネット組織やメッシュ調ネットその他の組織の場合にも、「1本ずつの挿入糸が挿入される」とは、地編の組織が異なっても、概念的には同じであり、各ウェールの間にそれぞれ1本ずつの挿入糸が挿入されている状態を言う。
【0048】
図6に示した態様は、地編としてのサテン調ネット組織に2本ずつの挿入糸が挿入されている状態を示した組織図である。
【0049】
図6(a)、(b)において、5が地編としてのサテン調ネット組織の表側に現れる非弾性糸であり、6が地編としてのサテン調ネット組織の裏側に現れる非弾性糸であり、8が弾性糸からなる挿入糸である。図6に示した態様では、各ウェールB1 、B2 、B3 、B4 、B5 の間にそれぞれ2本ずつの挿入糸8が挿入されている状態を示している。地編として2針の振りが入ったサテン調ネット組織を例にとって説明したが、他のサテン調ネット組織やメッシュ調ネットその他の組織の場合にも、「挿入糸が2本そろえて挿入されている」とは、地編の組織が異なっても、概念的には同じであり、各ウェールの間にそれぞれ2本ずつの挿入糸が挿入されている状態を言う。
【0050】
次に図7に示した態様は、地編としてのサテン調ネット組織に2本ずつの挿入糸と1本ずつの挿入糸が交互に挿入されている状態を示した組織図である。
【0051】
図7(a)、(b)において、5が地編としてのサテン調ネット組織の表側に現れる非弾性糸であり、6が地編としてのサテン調ネット組織の裏側に現れる非弾性糸であり、7と9が弾性糸からなる挿入糸である。図7に示した態様では、ウェールB1 とB2 の間には1本の挿入糸7が挿入されており、ウェールB2 とB3 の間には2本揃えた挿入糸9が挿入されており、次いで、ウェールB3 とB4 の間には1本の挿入糸7が挿入されており、更に、ウェールB4 とB5 の間には2本揃えた挿入糸9が挿入されている。地編として2針の振りが入ったサテン調ネット組織を例にとって説明したが、他のサテン調ネット組織やメッシュ調ネットその他の組織の場合にも、「2本ずつの挿入糸と1本ずつの挿入糸が交互に挿入されている」とは、地編の組織が異なっても、概念的には同じであり、各ウェールの間に交互にそれぞれ2本ずつと1本ずつの挿入糸が挿入されている状態を言う。
【0052】
以上説明したのは、挿入糸の本数が1本あるいは2本ずつの場合を例にとって説明したが、3本ずつ以上揃えて挿入したり、3本ずつ以上揃えて挿入した部分とそれより挿入本数が少なくなる部分とを交互に設けるなど、必要に応じて他の態様にしてもよい。一般的には、比較的緊迫力を強くしたい場合には、挿入糸は2本そろえて挿入され、比較的緊迫力を弱くしたい場合には、挿入糸は1本ずつ挿入される。
【0053】
なお、「n(nは自然数)針の振りが入った」地編組織とは、当業者にとっては周知の事項であるため詳細な説明を省略したが、前述の特許文献1に詳しい説明が開示されているので、必要であれば参照されたい。
【0054】
以上に説明した様な、地編組織と挿入糸との組み合わせ、例えば図5〜図7に示した様な挿入糸の挿入態様と、非弾性糸の編組織の切り替えによる緊迫力の強弱の態様とを組み合わせること、更には挿入する弾性糸の太さを挿入する部分に応じて変えることなどの組み合わせにより、緊迫力が相対的に異なる部分を、1つの経編生地の上に実現できる。
【0055】
前述した様な、弾性糸が挿入されたサテン調ネット組織やメッシュ調ネット組織の代表的な組織の例としては、これらを総称するものとしてラッシェル組織が挙げられる。挿入糸に用いる弾性糸としては、特に限定されるものではないが、ポリウレタン繊維糸が好ましい。
【0056】
弾性糸の太さは、用いる衣類の種類、地編組織の種類、同じ衣類でもどの部位に用いるかによって、それぞれ適宜の太さのものを用いればよく、例えば100〜560デニールの範囲から、それぞれの製品の種類や弾性糸の使用目的に応じて好適な範囲のものを用いればよい。
【0057】
この様にショートガードルを構成することにより、ヒップ形状を整えつつ、あまり強い緊迫力を必要としないところには不必要に緊迫力が掛からない様に、各部分の要求に応じた緊迫力を付与して、着用感が低下しない様にすることができる。
【0058】
また、強い緊迫力を必要とする領域が、細幅の連続パターン(緊迫力の強い編組織からなるジャカード柄)を複数本並列に近接させて構成されているので、この領域全体を均一な強い緊迫力を有する編組織で構成した場合と比較して、体型の凹凸に従って緊迫力に微妙な差を設けやすい。すなわち、身体の膨らみに沿わせたい箇所に十分な伸びを持たせつつ、且つ、必要な緊迫力を与えることが可能となる。これにより、身体の立体形状にぴったりとフィットする衣類を実現することができる。また、強い緊迫力を必要とする領域全体を均一な強い緊迫力を有する編組織で構成した場合のように、身体への圧迫が強すぎたり、この領域と緊迫力の弱い領域との境界が目立ったりするという問題を生じない。
【0059】
以下、図面を参照しながら、具体的衣類のさらに他の例について説明するが、本発明は、これらの衣類のみに限定されるものではない。
【0060】
図8は、本発明の衣類の一実施形態にかかるロングタイプのガードルの、後側から見た斜視図である。
【0061】
図8に示すロングガードルは、シングルラッシェルジャカード編地からなる編組織で構成され、地編の表側にあらわれる編み組織を変化させたジャカード柄によって、細幅で帯状にカーブした連続パターン17a、17bが形成されたものである。連続パターン17a、17bは、ガードルの後ろから脇にかけての見頃生地に、着用した場合に着用者の太腿下方に当接する裾口から大転子近傍を通って腰部上部中央に至るように、左右対称に形成されている。連続パターン17a、17bは、腰部上部方向へ凸状に形成されていることが好ましい。連続パターン17a、17bの編み組織は、ヒップの膨らみから太腿の後ろ側を包み込む部分16aや、連続パターン17aおよび17bの間の部分16bや、ガードルの脇部分16cなどに比較して、緊迫力が相対的に強くなるように編まれている。なお、図8において、15はウエスト充当部である。
【0062】
図8に示すロングガードルでは、連続パターン17a、17bが近接するように、連続パターン17a、17bの間の部分16bが細く形成されている。これにより、連続パターン17a、17bおよびこれらの間の部分16bが、全体として一つの緊迫力の強い領域を形成している。連続パターン17a、17bは、いずれも、裾口側から腰部上部側へ至るに従って幅が広くなるように形成することが好ましい。
【0063】
なお、連続パターンの本数は2本に限定されない。例えば、図9に示すように、着用者の太腿下方に当接する裾口から大転子近傍を通って腰部上部中央に至るように、腰部上部方向へ凸状にカーブした細幅の連続パターン17a、17b、17cが3本並列に近接して形成されたロングガードルも、本発明の一実施形態である。図9に示すロングガードルの場合、連続パターン17a、17b、17cおよびこれらの間の部分16b、16cにより、全体として一つの緊迫力の強い領域が形成されている。図9における連続パターン17a、17b、17cのそれぞれは、図8に示したものよりも細くなる。
【0064】
さらに、図10に示した例は、太腿下方に当接する裾口から大転子近傍を通って腰部上部中央に至るように、腰部上部方向へ凸状にカーブした細幅の連続パターン17a、17b、17c、17d、17eが5本並列に近接して形成されたロングガードルである。図10に示すロングガードルの場合、連続パターン17a、17b、17c、17d、17eおよびこれらの間の部分16b、16c、16d、16eにより、全体として一つの緊迫力の強い領域が形成されている。図10における連続パターン17a、17b、17c、17d、17eのそれぞれは、図8および図9に示したものよりも細幅となる。
【0065】
図8〜図10に例示したように、太腿下方に当接する裾口から大転子近傍を通って腰部上部中央に至るように、腰部上部方向へ凸状にカーブした細幅の連続パターンを互いに近接させて並列に形成してなる緊迫力の強い領域を設けることにより、着用者の背中側の筋肉(梨状筋および脊柱起立筋)をサポートし、着用者の上半身を起こして姿勢を良くする効果がある。さらに、ガードルの腹部側にも緊迫力の強い編組織を形成して腹筋をサポートすれば、着用者の背骨を前後からバランス良く支えて姿勢をさらに美しく見せる効果が得られる。
【0066】
また、図8〜図10に示したように、着用者のヒップの膨らみ部分の上を通るように、連続パターンを腰部上部方向へ凸状にカーブさせることにより、ヒップの丸い膨らみをつぶすことがなく、ヒップラインを美しく整える効果がある。
【0067】
ここで、図11に、図8〜図10に例示した様なロングガードルの、後ろから脇にかけての左側身頃生地の裁断前の平面図を示す。図11の例は、腰部上部方向へ凸状にカーブした緊迫力の強い細幅の連続パターンを5本、着用者の太腿下方に当接する裾口から大転子近傍を通って腰部上部中央に至る位置に設けるための生地である。なお、図11において、矢印Sは、この経編生地を形成するための糸の供給方向を示す。
【0068】
図11において、51a〜51eの5本の連続パターンは、緊迫力を強くするために2針または3針以上の振りを1繰り返し単位内に所定の割合で入れたサテン調ネット組織として編まれ、その他の領域はメッシュ調ネット組織として編まれる。なお、サテン調ネット組織およびメッシュ調ネット組織を混在させた編組織が、例えばジャカード制御装置を有する経編機などを用いて、この経編機のコンピュータに各ウェールと各コースの編み方に関する指令を入力することによって実現できることは、当業者にとっては周知の事項である(前述の特許文献1にも詳しい説明が開示されているので必要であれば参照されたい)。また、細幅の連続パターン部分の緊迫力は、特許文献1にも開示されているように、針の振り量及び/または1繰り返し単位内に針の振りを入れる割合を調整することにより、所望の強さに調整できる。
【0069】
図11において、生地50中に示された波線ラインA−B−C−D−E−F−G−Aは、ガードルの脇から後ろに用いられる着用者の左側半分の身頃を得るための裁断ラインを示したものである。この生地50からガードルのクロッチ用の布や腹部布等も裁断しても良いが、ここではその図示および詳しい説明は省略する。また、ガードルの脇から後ろに用いられる着用者の右側半分の身頃を得るための裁断ラインは、図11中に示した裁断ラインと左右線対称となる。A−Bラインは、図示しない腹部布と縫合され、Q−CラインはE−Dラインと縫合されて左脚部を形成し、G−Fラインは図示しない前述した右側半分の身頃の同様な部分と縫合されて後中心の縫合ラインを形成することになる。F−Eラインはクロッチ布と縫合される。A−Gラインにはウエスト充当部15の布を縫製により取り付ける。ウエスト充当部15の布の素材は、少なくともガードル横方向に伸縮性を有する生地を例えば2つ折りにして用いればよく、必要に応じてストレッチテープなどを内側に取り付けてもよい。このようにして、図8〜図10に示したようなロングガードルを作成することができる。
【0070】
なお、図11の生地において、例えば、ヒップ下部から太腿に充当する部分には、弾性糸(例えば154dtex)を2本挿入し、ヒップの膨らみに充当する箇所には、他の部位と同じ太さの弾性糸を1本挿入し、腰上部に充当する箇所には、他の部位と同じ太さの弾性糸を2本挿入する。これにより、腰上部は、緊迫力の強い編組織からなり、全体として緊迫力の強い部分(ジャカード柄の複数の連続パターンを形成した部分)と、弾性糸によって緊迫力を強くした箇所とが重なり、ガードル全体の中でも最も緊迫力の強い部分となる。これにより、腰上部へのサポートを強くすることができる。
【0071】
なお、図8〜図10に示したようなロングガードルにおいて、両脚の裾口部分は、折り返して縫製するなどの端しまつを必要としない裾になっている。この様な端しまつを必要としない編み方は周知であるので説明を省略するが、通常、糸抜きの手法を応用して作られている。
【0072】
この様にロングガードルを構成することにより、ヒップ形状を整えつつ、着用者の動きによる裾部分のずり上がりを防止し、かつ太ももの形をスリムに整え、しかも、余り緊迫力を必要としないところには不必要に緊迫力が掛からない様に、各部分の要求に応じた緊迫力を付与して、着用感が低下しない様にすることができる。
【0073】
また、強い緊迫力を必要とする領域が、細幅の連続パターン(緊迫力の強い編組織からなるジャカード柄)を複数本並列に近接させて構成されているので、この領域全体を均一な強い緊迫力を有する編組織で構成した場合と比較して、体型の凹凸に従って緊迫力に微妙な差を設けやすい。すなわち、身体の膨らみに沿わせたい箇所に十分な伸びを持たせつつ、且つ、必要な緊迫力を与えることが可能となる。これにより、身体の立体形状にぴったりとフィットする衣類を実現することができる。また、強い緊迫力を必要とする領域全体を均一な強い緊迫力を有する編組織で構成した場合のように、身体への圧迫が強すぎたり、この領域と緊迫力の弱い領域との境界が目立ったりするという問題を生じない。
【0074】
図12に、本発明にかかる衣類のさらに他の実施形態を示す。図12に示す衣類は、ショートガードルであって、シングルラッシェルジャカード編地からなる編組織で構成され、地編の表側にあらわれる編み組織を変化させたジャカード柄によって、細幅で帯状にカーブした連続パターン14a、14bが形成されたものである。連続パターン14a、14bは、ガードルの後ろから脇にかけての見頃生地に、着用者のヒップ部の膨らみの下から脇に至る位置に、ヒップ部下部方向へ凸状にカーブした状態に、左右対称に形成されている。連続パターン14a、14bの編み組織は、ヒップの膨らみを包み込む部分13aや、連続パターン14aおよび14bの間の部分13bや、脇の裾口近傍部分13cなどに比較して、緊迫力が相対的に強くなるように編まれている。なお、図12において、10はウエスト充当部である。
【0075】
図12に示すショートガードルでは、連続パターン14a、14bが近接するように、連続パターン14a、14bの間の部分13bが細く形成されている。これにより、連続パターン14a、14bおよびこれらの間の部分13bが、全体として一つの緊迫力の強い領域を形成している。連続パターン14a、14bは、いずれも、ヒップ部内側からヒップ部外側へ至るに従って幅が広くなるように形成しても良いし、等幅で形成しても良い。例えば、連続パターン14a、14bのそれぞれを約3cmの等幅とし、それらを近接させて等間隔で配置することにより、連続パターン14a、14bとその間の部分13bとにより形成される緊迫力の強い領域全体の幅が約6cmになるようにする。
【0076】
なお、連続パターンの本数は2本に限定されない。例えば、図13に示すように、着用者のヒップ部の膨らみの下から脇に至る位置に、ヒップ部下部方向へ凸状にカーブした細幅の連続パターン14a、14b、14cが3本並列に近接して形成されたショートガードルも、本発明の一実施形態である。図13に示すショートガードルの場合、連続パターン14a、14b、14cおよびこれらの間の部分13b、13cにより、全体として一つの緊迫力の強い領域が形成されている。図13における連続パターン14a、14b、14cのそれぞれは、図12に示したものよりも細くなる。例えば、連続パターン14a、14b、14cのそれぞれを約2.5cmの等幅とし、それらを近接させて等間隔で配置することにより、連続パターン14a、14b、14cとその間の部分13b、13cとにより形成される緊迫力の強い領域全体の幅なるようにする。
【0077】
さらに、図14に示した例は、着用者のヒップ部の膨らみの下から脇に至る位置に、ヒップ部下部方向へ凸状にカーブした細幅の連続パターン14a、14b、14c、14d、14eが5本並列に近接して形成されたショートガードルである。図14に示すショートガードルの場合、連続パターン14a、14b、14c、14d、14eおよびこれらの間の部分13b、13c、13d、13eにより、全体として一つの緊迫力の強い領域が形成されている。図14における連続パターン14a、14b、14c、14d、14eのそれぞれは、図12および図13に示したものよりも細幅となる。例えば、連続パターン14a〜14eのそれぞれを約1cmの等幅とし、それらを近接させて等間隔で配置することにより、連続パターン14a、14bとその間の部分13bとにより形成される緊迫力の強い領域全体の幅が約6cmになるようにする。
【0078】
図12〜図14に示したショートガードルにおいて、連続パターンのそれぞれは等幅であっても良いし、幅が変化するように形成されていても良いが、例えば、ヒップ下部(外側)になるほど幅が広く、ヒップ内側になるほど幅が細くなっていると、ヒップの丸みをつぶすことなくヒップアップさせる効果があるので、特に好ましい。
【0079】
この様にショートガードルを構成することにより、ヒップ形状を整えつつ、あまり緊迫力を必要としないところには不必要に強い緊迫力が掛からない様に、各部分の要求に応じた緊迫力を付与して、着用感が低下しない様にすることができる。
【0080】
また、強い緊迫力を必要とする領域が、細幅の連続パターン(緊迫力の強い編組織からなるジャカード柄)を複数本並列に近接させて構成されているので、この領域全体を均一な強い緊迫力を有する編組織で構成した場合と比較して、体型の凹凸に従って緊迫力に微妙な差を設けやすい。すなわち、身体の膨らみに沿わせたい箇所に十分な伸びを持たせつつ、且つ、必要な緊迫力を与えることが可能となる。これにより、身体の立体形状にぴったりとフィットする衣類を実現することができる。また、強い緊迫力を必要とする領域全体を均一な強い緊迫力を有する編組織で構成した場合のように、身体への圧迫が強すぎたり、この領域と緊迫力の弱い領域との境界が目立ったりするという問題を生じない。
【0081】
図15に、本発明にかかる衣類のさらに他の実施形態を示す。図15に示す衣類は、ロングガードルであって、シングルラッシェルジャカード編地からなる編組織で構成され、地編の表側にあらわれる編み組織を変化させたジャカード柄によって、細幅で帯状にカーブした連続パターン19a、19bが形成されたものである。連続パターン19a、19bは、ガードルの後ろから脇にかけての見頃生地に、着用者のヒップ部の膨らみの下から脇に至る位置に、ヒップ部下部方向へ凸状にカーブした状態に、左右対称に形成されている。連続パターン19a、19bの編み組織は、ヒップの膨らみを包み込む部分18eや、連続パターン19aおよび19bの間の部分18bや、脚部18aなどに比較して、緊迫力が相対的に強くなるように編まれている。なお、図15において、15はウエスト充当部である。
【0082】
図15に示すロングガードルでは、連続パターン19a、19bが近接するように、連続パターン19a、19bの間の部分18bが細く形成されている。これにより、連続パターン19a、19bおよびこれらの間の部分18bが、全体として一つの緊迫力の強い領域を形成している。この領域全体の幅が、約5〜6cmになるよう連続パターン19a、19bとその間の部分18bが形成されている。連続パターン19a、19bの各々は、ヒップ部内側からヒップ部外側へ至るに従って幅が広くなるように形成しても良いし、等幅で形成しても良い。
【0083】
なお、連続パターンの本数は2本に限定されない。例えば、図16に示すように、着用者のヒップ部の膨らみの下から脇に至る位置に、ヒップ部下部方向へ凸状にカーブした細幅の連続パターン19a、19b、19cが3本並列に近接して形成されたロングガードルも、本発明の一実施形態である。図16に示すロングガードルの場合、連続パターン19a、19b、19cおよびこれらの間の部分18b、18cにより、全体として一つの緊迫力の強い領域が形成される。この領域全体の幅が図15に示したガードルと同様に約5〜6cmになるよう形成されているので、図16における連続パターン19a、19b、19cのそれぞれは、図15に示したものよりも細くなる。
【0084】
さらに、図17に示した例は、着用者のヒップ部の膨らみの下から脇に至る位置に、ヒップ部下部方向へ凸状にカーブした細幅の連続パターン19a、19b、19c、19dが4本並列に近接して形成されたロングガードルである。図17に示すロングガードルの場合、連続パターン19a、19b、19c、19dおよびこれらの間の部分18b、18c、18dにより、全体として一つの緊迫力の強い領域が形成されている。図15または図16に示したガードルと同様に、この領域全体の幅が約5〜6cmになるよう形成されているので、図17における連続パターン19a、19b、19c、19dのそれぞれは、図15および図16に示したものよりも細幅となる。
【0085】
この様にロングガードルを構成することにより、ヒップ形状を整えつつ、あまり緊迫力を必要としない箇所には不必要に強い緊迫力が掛からない様に、各部分の要求に応じた緊迫力を付与して、着用感が低下しない様にすることができる。
【0086】
また、強い緊迫力を必要とする領域が、細幅の連続パターン(緊迫力の強い編組織からなるジャカード柄)を複数本並列に近接させて構成されているので、この領域全体を均一な強い緊迫力を有する編組織で構成した場合と比較して、体型の凹凸に従って緊迫力に微妙な差を設けやすい。すなわち、身体の膨らみに沿わせたい箇所に十分な伸びを持たせつつ、且つ、必要な緊迫力を与えることが可能となる。これにより、身体の立体形状にぴったりとフィットする衣類を実現することができる。また、強い緊迫力を必要とする領域全体を均一な強い緊迫力を有する編組織で構成した場合のように、身体への圧迫が強すぎたり、この領域と緊迫力の弱い領域との境界が目立ったりするという問題を生じない。
【0087】
上述した全ての態様に共通して、強い緊迫力を必要とする領域を、細幅の複数本の連続パターンで構成したことにより、次のような効果も得られた。すなわち、強い緊迫力を必要とする領域全体を、均一な強い緊迫力を有する編組織で形成しようとした場合、生地を編むときに隣接するウェール間で緊迫力の異なる部分が連続することにより、斜行が生じやすい。これに対して、本発明の場合は、比較的緊迫力の強い部分と比較的緊迫力が弱い部分とが編み方向において短い周期で交互にあらわれるので、斜行が生じにくい。
【0088】
なお、図12〜図14に示したショートガードルでは左右の連続パターンがヒップ下部中央では連結させず、図15〜図17に示したロングガードルでは左右の連続パターンをヒップ下部中央で連結させた態様としたが、これらの態様は、ガードルがショートタイプかロングタイプかに関わらず、求めるヒップアップ機能によって適宜選択すれば良い。
【0089】
さらに、以上に示した各種のガードルにおいて、連続パターンの本数やその幅および間隔などは、上記に具体的に提示した数値に限定されるものではなく、任意に設計することが可能である。
【0090】
以上に示したガードルは、通常時用のガードルの態様を示したものであるが、目的に応じて種々の別の態様にモディファイすることは何ら差し支えない。
【0091】
本発明で言うガードルには、例えば妊産婦用のガードル(ロングまたはショートタイプ)も含まれるが、妊産婦用のガードルに本発明を適用する場合の一態様を簡単に説明すると次の様である。すなわち例えば、複数本の連続パターンを並列させてなる比較的緊迫力の強い領域が、ガードル前側において腹部の中央より下の部分から左右の脇側に向かって斜め上に延在する様なほぼ帯状のパターンとし、前記緊迫力の比較的強い部分で囲まれた部分の腹部は、比較的緊迫力の弱い編み組織とする態様が挙げられる。例えばこの態様は妊産婦用のロングタイプまたはショートタイプのガードルやショーツにも適用可能である。
【0092】
また、本発明は、ガードルやショーツのようなヒップ部を有する衣類に限定されず、身体に密着して所定の部位に緊迫力を与えることによって体型補正機能及び/または筋肉サポート機能を有する衣類を実現する目的において、任意の衣類に適用される。例えば、ブラジャー、水着、レオタード、ボディスーツ、タイトペチコート、スパッツ、タイツや、その他の衣類に適用される。
【0093】
また、以上、説明した態様は、美観を向上させるための模様を付与することについては言及していないが、実質的に本発明の目的が発現できる限り、適宜、編組織を変更して、例えば女性用衣類によく用いられる小柄の花柄模様その他の適宜の小柄模様を入れることは任意である。こうすることにより、一層美観の向上した衣類に仕上げることが出来、好ましい。また、例えば比較的緊迫力の強い部分である“帯状でありかつカーブした連続したパターン”の部分を、複数の花柄模様などその他の適宜の複数の小柄模様が密集して各それぞれの小柄模様と小柄模様の間がつながっている小柄の連続模様によって形成してもよい。かかる小柄の連続模様は帯状パターンのみに限定されるものではなく、他の態様にも適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0094】
5 サテン調ネット組織の表側に現れる非弾性糸
6 サテン調ネット組織の裏側に現れる非弾性糸
7 弾性糸からなる挿入糸
8 弾性糸からなる挿入糸
9 弾性糸からなる挿入糸
10 ウエスト充当部
11a〜11e 比較的緊迫力の弱い部分
12a〜12e 比較的緊迫力の強い連続パターン
13a〜13e 比較的緊迫力の弱い部分
14a〜14e 比較的緊迫力の強い連続パターン
40 生地
41a〜41g 比較的緊迫力の強い連続パターン
15 ウエスト充当部
16a〜11f 比較的緊迫力の弱い部分
17a〜17e 比較的緊迫力の強い連続パターン
18a〜18e 比較的緊迫力の弱い部分
19a〜17d 比較的緊迫力の強い連続パターン
50 生地
51a〜51e 比較的緊迫力の強い連続パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャカード編からなる地編が非弾性糸で編まれた経編地からなるヒップ部を有する衣類において、
前記地編の表側にあらわれる編組織を緊迫力の強弱の要求に応じて切り替えることにより、比較的緊迫力の強い部分と比較的緊迫力の弱い部分がパターン状に設けられ、
所定の部分に、前記比較的緊迫力の強い部分からなる帯状であり且つカーブした連続パターンが複数並列に設けられ
前記複数の連続パターンが、前記ヒップ部の膨らみの下から脇に至る位置に、ヒップ部下部方向へ凸状にカーブした状態に形成され、
前記複数の連続パターンのそれぞれの幅が、ヒップ部内側からヒップ部外側へ至るに従って広くなるよう形成されたことを特徴とする身体に密着する衣類。
【請求項2】
前記経編地に弾性糸が挿入され、
緊迫力の強弱の要求に応じて、前記弾性糸の挿入本数及び/又は太さを変化させてなる、請求項1に記載の身体に密着する衣類。
【請求項3】
前記複数の連続パターンのそれぞれの幅を、互いに異ならせてなる、請求項1または2に記載の身体に密着する衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−215696(P2009−215696A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148506(P2009−148506)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【分割の表示】特願2002−320427(P2002−320427)の分割
【原出願日】平成14年11月1日(2002.11.1)
【出願人】(306033379)株式会社ワコール (116)
【Fターム(参考)】