説明

車両に搭載されるシートおよびそのシートの制御装置

【課題】車両駆動用のモータを制御する電子機器を備えた車両において、車両室内のスペースの有効利用を可能にするとともに、車両の乗員の疲労感や倦怠感を低コストで軽減する。
【解決手段】ドライバシート700は、ドライバの頭部に接するヘッドレスト710と、ドライバの背中に接するシートバック720と、ドライバが着座するシートクッション730とを含む。ヘッドレスト710のドライバの頭部と接する部分には、ドライバ状態センサ1010が設けられる。ドライバ状態センサ1010は、ドライバの頭部に接した状態で、ドライバの脳波を検出し、検出結果を表わす信号をECU1000に送信する。シートバック720の内部には、ECU1000から昇圧用IPM310に送信されるキャリア周波数に応じた振動や騒音を発生するリアクトル320を収容する収容部724が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるシートおよびその制御に関し、特に、車両駆動用のモータを制御する電子機器を備えた車両に搭載されるシートおよびその制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、運転手自らの選択によって、シート内部のバイブレータを作動させることができる車両用シートが公知である。このような車両用シートでは、バイブレータがマッサージ機能を発揮して運転手に刺激を与えるため、運転手の疲労感や倦怠感を取り除くことができる。しかし、疲労していることに運転者自らが気付いていない場合においては、バイブレータが自動的に作動しないことから、運転手に刺激を与えることができない。このような問題を解決する技術が、たとえば特開2005−152352号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された車両用シート装置は、運転状態を検出するための状態検出手段と、状態検出手段で検出された状態を解析するための解析手段と、シート内部に設けられ、駆動によって運転手に刺激を与える駆動部と、解析手段で解析された情報によって駆動部を駆動するための手段とを含む。
【0004】
特許文献1に開示された車両用シート装置によると、状態検出手段によって、居眠りし易い運転手の状態または疲労感を感じている運転手の状態を検出することができる。そして、解析手段によって、状態検出手段で検出された情報を解析することができる。こうして、解析手段で解析された情報によって駆動する駆動部によって、自動的に運転手に刺激が与えられることとなる。このため、運転の安全性を高めることができる。
【0005】
ところで、近年においては、モータを駆動源とする電気自動車やハイブリッド車両が実用化されている。これらの車両においては、モータ駆動用に使用されるインバータが搭載される場合が多い。これらの車両において、インバータへの振動入力を低減する技術が、特開2003−175730号公報(特許文献2)に開示されている。
【0006】
特許文献2に開示された電気自動車用インバータの取付構造は、電気自動車のモータ駆動用に使用されるインバータを着座シートの下部に取付けるとともに、着座シートと一体化されたインバータを、サスペンション機構を経由して車体に取付ける。
【0007】
特許文献2に開示された取付構造によると、サスペンション機構は、インバータの質量のみならず、これに着座シートの質量を加えた質量に対して作用する。そのため、車体からの振動を有効に減衰させることができ、インバータへの振動入力を低減することが可能となる。また、着座シートを経由して乗員に伝達される振動入力も同時に低減することができるので、通常の固定式シートに比べて、乗員の乗心地性を向上させることが可能となる。
【特許文献1】特開2005−152352号公報
【特許文献2】特開2003−175730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された車両用シート装置においては、運転者に刺激を与えるための専用の駆動部を設ける必要がある。そのため、コストが高くなるという問題があった。
【0009】
特許文献2に開示された電気自動車用インバータの取付構造においては、インバータ以外の電子部品の取付構造については何ら言及されていない。電気自動車には、インバータの他に、多くの電子部品が搭載される。特に、スイッチング素子とリアクトルとの協働により電圧を昇降させるコンバータを搭載する車両においては、リアクトルが比較的大きく、かつスイッチング素子の動作に起因した振動および騒音を発生するため、リアクトルの搭載位置が制限される場合が多い。しかしながら、特許文献2には、リアクトルを含むコンバータの取付構造については何ら開示されていない。そのため、リアクトルの搭載位置によっては、車両室内のスペースを有効に利用することができない場合がある。
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、車両駆動用のモータを制御する電子機器を備えた車両において、車両室内のスペースの有効利用を可能にするとともに、車両の乗員の疲労感や倦怠感を低コストで軽減することができるシートおよびそのシートの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明に係るシートは、車両駆動用のモータを制御する電子機器を備えた車両に搭載される。このシートは、内部に電子機器の少なくとも一部が設けられる。
【0012】
第1の発明によると、シートの内部に、車両駆動用のモータを制御する電子機器(インバータやコンバータ)の少なくとも一部が設けられる。これにより、電子機器の搭載するための専用スペースを抑制できるので、車両室内のスペースを有効に利用することができる。さらに、電子機器の振動や騒音を、シートに着座した乗員に積極的に伝達することができる。そのため、専用の振動装置や音響装置を設けることなく、乗員に刺激を与えて乗員の疲労感や倦怠感を軽減することができる。その結果、車両駆動用のモータを制御する電子機器を備えた車両において、車両室内のスペースの有効利用を可能にするとともに、車両の乗員の疲労感や倦怠感を低コストで軽減することができるシートを提供することができる。
【0013】
第2の発明に係るシートにおいては、第1の発明の構成に加えて、電子機器は、スイッチング素子の動作により電圧を昇降させるコンバータである。シートは、車両の乗員が着座するシートクッションと、乗員の背中が接するシートバックと、シートクッションおよびシートバックの少なくともいずれかの内部に設けられ、コンバータの一部を構成するリアクトルであって、スイッチング素子との協働によって電圧を昇降させる際に、振動および騒音の少なくともいずれかを発生するリアクトルとを含む。
【0014】
第2の発明によると、シートクッションおよびシートバックの少なくともいずれかの内部に、コンバータの一部を構成するリアクトルが設けられる。これにより、コンバータを備える車両において、リアクトルを搭載するための専用スペースを設ける必要がなくなる。そのため、車両室内のスペースを有効に利用することができる。さらに、電圧の昇降時におけるリアクトルの振動や騒音を、シートに着座した乗員に積極的に伝達することができる。そのため、専用の振動装置や音響装置を設けることなく、乗員に刺激を与えて乗員の疲労感や倦怠感を軽減することができる。
【0015】
第3の発明に係るシートにおいては、第2の発明の構成に加えて、リアクトルは、乗員の操作により内部において移動できるように設けられる。
【0016】
第3の発明によると、シートに着座する乗員が、リアクトルの振動および騒音が乗員に的確に伝達される場所にリアクトルを移動させることができる。そのため、乗員に伝達される振動や騒音の大きさ、振動が乗員に伝達される個所などを、乗員自らの意思に応じて調節することができる。そのため、乗員に的確に刺激を与えることができる。
【0017】
第4の発明に係るシートにおいては、第2または3の発明の構成に加えて、リアクトルは、内部に分散して複数設けられる。
【0018】
第4の発明によると、複数のリアクトルがシート内部に分散して設けられるので、乗員の複数の個所に刺激を与えることができる。
【0019】
第5の発明に係る制御装置は、車両駆動用のモータを制御する電子機器を備えた車両に搭載されるシートを制御する。シートの内部には、電子機器の少なくとも一部が設けられる。制御装置は、車両の乗員の状態を推定するための推定手段と、状態に基づいて、電子機器の動作を制御するための制御手段とを含む。
【0020】
第5の発明によると、シートの内部に、車両駆動用のモータを制御する電子機器(インバータやコンバータ)の少なくとも一部が設けられる。これにより、電子機器を搭載するための専用スペースを抑制できるので、車両室内のスペースを有効に利用することができる。このようなシートに着座する乗員の状態が推定され、その状態に基づいて、電子機器の動作が制御される。これにより、たとえば、乗員が疲労した状態と推定された場合に、シートの内部に設けられた電子機器の振動や騒音を大きくして、乗員に積極的に刺激を与えることができる。そのため、専用の振動装置や音響装置を設けることなく、乗員に刺激を与えて乗員の疲労感や倦怠感を軽減することができる。その結果、車両駆動用のモータを制御する電子機器を備えた車両において、車両室内のスペースの有効利用を可能にするとともに、車両の乗員の疲労感や倦怠感を低コストで軽減することができるシートの制御装置を提供することができる。
【0021】
第6の発明に係る制御装置においては、第5の発明の構成に加えて、電子機器は、スイッチング素子の動作により電圧を昇降させるコンバータである。シートには、乗員が着座するシートクッションと、乗員の背中が接するシートバックと、シートクッションおよびシートバックの少なくともいずれかの内部に設けられ、コンバータの一部を構成するリアクトルであって、スイッチング素子との協働によって電圧を昇降させる際に、振動および騒音の少なくともいずれかを発生するリアクトルとが備えられる。制御手段は、状態に基づいて、振動および騒音の少なくともいずれかを変更するように、スイッチング素子の動作を制御するための手段とを含む。
【0022】
第6の発明によると、シートクッションおよびシートバックの少なくともいずれかの内部に、コンバータの一部を構成するリアクトルが設けられる。これにより、コンバータを備える車両において、リアクトルを搭載するための専用スペースを設ける必要がなくなる。そのため、車両室内のスペースを有効に利用することができる。このようなシートに着座する乗員の状態が推定され、その状態に基づいて、リアクトルの振動および騒音の少なくともいずれかが変更される。これにより、たとえば、乗員が疲労した状態と推定された場合に、リアクトルの振動や騒音を大きくして、乗員に積極的に刺激を与えることができる。そのため、専用の振動装置や音響装置を設けることなく、乗員に刺激を与えて乗員の疲労感や倦怠感を軽減することができる。
【0023】
第7の発明に係る制御装置においては、第6の発明の構成に加えて、スイッチング素子は、キャリア周波数により動作される。乗員は、車両の運転者である。推定手段は、運転者が疲労した状態であるか否かを推定するための手段を含む。制御手段は、運転者が疲労した状態であると推定された場合に、振動および騒音の少なくともいずれかを大きくするように、キャリア周波数を制御するための手段を含む。
【0024】
第7の発明によると、運転者が疲労した状態であると推定された場合に、キャリア周波数が制御されて、振動および騒音の少なくともいずれかが大きくされる。そのため、運転者が疲労した状態であると推定された場合に、運転者に的確に刺激を与えることができる。
【0025】
第8の発明に係る制御装置においては、第7の発明の構成に加えて、制御手段は、運転者が疲労した状態でないと推定されると、キャリア周波数を非共振周波数に制御し、運転者が疲労した状態であると推定されると、キャリア周波数を共振周波数に制御するための手段を含む。
【0026】
第8の発明によると、運転者が疲労した状態であると推定されると、キャリア周波数が非共振周波数から共振周波数に変更される。これにより、運転者が疲労した状態であると推定された場合に、リアクトルの振動を大きくして、運転者に的確に刺激を与えることができる。
【0027】
第9の発明に係る制御装置においては、第7の発明の構成に加えて、制御手段は、運転者が疲労した状態でないと推定されると、キャリア周波数を非可聴周波数に制御し、運転者が疲労した状態であると推定されると、キャリア周波数を可聴周波数に制御するための手段を含む。
【0028】
第9の発明によると、運転者が疲労した状態であると推定されると、キャリア周波数が非可聴周波数から可聴周波数に変更される。これにより、運転者が疲労した状態であると推定された場合に、リアクトルの騒音を大きくして、運転者に的確に刺激を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0030】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本実施の形態に係るシートおよびそのシートの制御装置が搭載されたハイブリッド車両について説明する。なお、本実施の形態に係るシートおよびそのシートの制御装置が搭載される車両は、ハイブリッド車両に限定されず、電気自動車であってもよい。
【0031】
このハイブリッド車両は、走行用バッテリ100と、コンデンサ200と、昇圧コンバータ300と、コンデンサ400と、インバータ用IPM500A,500Bと、モータジェネレータ600A,600Bと、ECU(Electronic Control Unit)1000とを含む。
【0032】
走行用バッテリ100は、複数のセルを直列に接続したモジュールをさらに複数直列に接続して形成される二次電池である。
【0033】
コンデンサ200は、走行用バッテリ100から供給された直流電力の電圧を平滑化し、その平滑化された直流電力を昇圧コンバータ300へ供給する。
【0034】
昇圧コンバータ300は、コンデンサ200とコンデンサ400との間に設けられる。昇圧コンバータ300は、昇圧用IPM310と、リアクトル320とを含む。
【0035】
昇圧用IPM310は、2つのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)と、IGBTのエミッタ側からコレクタ側に電流を流すように、各IGBTにそれぞれ並列に接続された2つのダイオードとを含む。昇圧用IPM310は、ECU1000から送信されるキャリア周波数に基づいて、各IGBTのゲートをオン/オフ(通電/遮断)する。
【0036】
リアクトル320は、一方端が走行用バッテリ100の電源ラインに接続され、他方端が昇圧用IPM310の2つのIGBTの中間点に接続される。リアクトル320は、昇圧用IPM310の各IGBTのゲートがオン/オフされる際、キャリア周波数に応じた振動や騒音を発生する。
【0037】
昇圧コンバータ300は、走行用バッテリ100から供給された直流電圧を、昇圧用IPM310とリアクトル320との協働によって昇圧し、コンデンサ400に供給する。また、昇圧コンバータ300は、ハイブリッド車両の回生制動時、モータジェネレータ600A,600Bによって発電され、インバータ用IPM500A,500Bによって変換された直流電圧を、昇圧用IPM310とリアクトル320との協働によって降圧し、走行用バッテリ100へ供給する。
【0038】
コンデンサ400は、昇圧コンバータ300から供給された直流電力の電圧を平滑化し、その平滑化された直流電力をインバータ用IPM500A,500Bへ供給する。
【0039】
インバータ用IPM500A,500Bは、6つのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)と、IGBTのエミッタ側からコレクタ側に電流を流すように、各IGBTにそれぞれ並列に接続された6つのダイオードとを含む。インバータ用IPM500A,500Bは、ECU1000からの指令信号に基づいて各IGBTのゲートをオン/オフ(通電/遮断)することにより、走行用バッテリ100から供給された電流を、直流電流から交流電流に変換し、モータジェネレータ600A,600Bに供給する。
【0040】
ECU1000には、ドライバ状態センサ1010と、走行状態センサ1020とが
ハーネスなどを介在させて接続されている。
【0041】
ドライバ状態センサ1010は、車両のドライバの状態を検出し、検出結果を表わす信号をECU1000に送信する。なお、ドライバ状態センサ1010については後に詳述する。
【0042】
走行状態センサ1020は、たとえば、車両の速度、車両の加速度、車両の操舵角、車両の現在位置、車両が走行している道路の混雑状況などの車両の走行状態を検出し、検出結果を表わす信号をECU1000に送信する。
【0043】
ECU1000は、ドライバ状態センサ1010や走行状態センサ1020からの信号、車速センサ、シフトポジションセンサ、アクセル開度センサ、ストロークセンサ、スロットル開度センサ、エンジン回転数センサ(いずれも図示せず)などからの信号、ROM(Read Only Memory)に記憶されたマップおよびプログラムなどに基づいて、ハイブリッド車両が所望の走行状態となるように、機器類を制御する。
【0044】
図2を参照して、本実施の形態に係るシートであるドライバシート700について説明する。
【0045】
ドライバシート700は、ドライバの頭部に接するヘッドレスト710と、ドライバの背中に接するシートバック720と、ドライバが着座するシートクッション730とを含む。
【0046】
ヘッドレスト710のドライバの頭部と接する部分には、上述のドライバ状態センサ1010が設けられる。ドライバ状態センサ1010は、ドライバの頭部に接した状態で、ドライバの脳波を検出し、検出結果を表わす信号をECU1000に送信する。なお、ドライバの疲労感、倦怠感や眠気などに関連する状態を検出するのであれば、ドライバ状態センサ1010は、ヘッドレスト710に設けられることおよびドライバの脳波を検出することに限定されない。たとえば、ドライバ状態センサ1010をシートバック720に設け、ドライバ状態センサ1010でドライバの心拍数、脈拍、血圧などの状態を検出するようにしてもよい。また、ドライバの眠気を判断できるように、ドライバ状態センサ1010でドライバのまぶたの動きを検出するようにしてもよい。
【0047】
シートバック720の内部には、リアクトル320を固定して収容する収容部724が設けられる。さらに、シートバック720の内部には、防振部材722が設けられる。防振部材722は、収容部724に隣接し、収容部724よりもドライバ側に設けられる。リアクトル320の振動が小さい場合には、防振部材722は、リアクトル320の振動をドライバに伝えないように遮断する。
【0048】
図3を参照して、本実施の形態に係るドライバシート700の制御装置の機能ブロック図について説明する。図3に示すように、この制御装置は、ドライバ状態推定部1100と、キャリア周波数設定部1200とを含む。
【0049】
ドライバ状態推定部1100は、ドライバ状態センサ1010および走行状態センサ1020の少なくともいずれかからの信号に基づいて、ドライバが疲労しているか否かを推定する。
【0050】
キャリア周波数設定部1200は、ドライバ状態推定部1100の推定結果に基づいて、キャリア周波数を設定し、設定されたキャリア周波数信号を昇圧用IPM310に送信する。
【0051】
このような機能ブロックを有する本実施の形態に係る制御装置は、デジタル回路やアナログ回路の構成を主体としたハードウェアでも、ECU1000に含まれるCPU(Central Processing Unit)およびメモリとメモリから読み出されてCPUで実行されるプログラムとを主体としたソフトウェアでも実現することが可能である。一般的に、ハードウェアで実現した場合には動作速度の点で有利で、ソフトウェアで実現した場合には設計変更の点で有利であると言われている。以下においては、ソフトウェアとして制御装置を実現した場合を説明する。なお、このようなプログラムを記録した記録媒体についても本発明の一態様である。
【0052】
図4を参照して、本実施の形態に係るドライバシート700の制御装置であるECU1000が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、このプログラムは、予め定められたサイクルタイムで繰り返し実行される。
【0053】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、ECU1000は、ドライバ状態センサ1010からの信号に基づいて、ドライバの状態(脳波)を検出する。
【0054】
S102にて、ECU1000は、走行状態センサ1020からの信号に基づいて、ハイブリッド車両の走行状態を検出する。
【0055】
S104にて、ECU1000は、検出されたドライバの脳波およびハイブリッド車両の走行状態に基づいて、ドライバが疲労しているか否かを推定する。たとえば、ECU1000は、ドライバが疲労している場合の脳波の特性値を予め記憶しておき、ドライバ状態センサ1010で検出されたドライバの脳波の特性値と記憶した脳波の特性値が略一致する場合に、ドライバが疲労していると推定する。なお、ドライバが疲労しているか否かの推定方法は、これに限定されない。また、本ステップにおいて、ECU1000は、ドライバが倦怠感や眠気を感じているか否かを推定するようにしてもよい。この場合、たとえば、走行状態センサ1020の検出結果を解析し、車両が走行している道路が渋滞している、車両が一定時間以上低速で走行している、操舵角が一定時間変化しないなどの場合に、ドライバが倦怠感や眠気を感じていると推定してもよい。ドライバが疲労していると推定されると(S104にてYES)、処理はS106に移される。そうでないと(S104にてNO)、処理はS108に移される。
【0056】
S106にて、ECU1000は、キャリア周波数を共振周波数域に設定する。S108にて、ECU1000は、キャリア周波数を非共振周波数域に設定する。
【0057】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るドライバシート700の作用およびECU1000により制御されるドライバシート700の動作について説明する。
【0058】
ハイブリッド車両の運転中において、ドライバの脳波や車両の走行状態に基づいて、ドライバが疲労しているか否かが推定される(S100、S102、S104)。ドライバが疲労していないと推定されると(S104にてNO)、キャリア周波数が非共振周波数域に設定される(S108)。この場合、リアクトル320の振動は小さいため、図5の矢印Aに示すように、リアクトル320の振動は防振部材722により遮断され、ドライバには伝達されない。
【0059】
その後、ドライバが疲労していると推定されると(S104にてYES)、キャリア周波数が共振周波数域に設定される(S106)。これにより、リアクトル320が防振部材722の許容を超えて大きく振動し、図5の矢印Bに示すように、リアクトル320の振動はドライバに伝達される。これにより、専用の振動装置を設けることなく、リアクトル320の振動をドライバに的確かつ積極的に伝達して、ドライバの疲労感や倦怠感を軽減することができる。
【0060】
さらに、リアクトル320がシートバック720の内部に収容される。これにより、リアクトル320を搭載するための専用スペースを設ける必要がないので、車両室内のスペースを有効に利用することができる。
【0061】
以上のように、本実施の形態に係るシートおよびその制御装置によれば、車両のドライバが着座するシートの内部に、コンバータの一部を構成するリアクトルが設けられる。これにより、リアクトルを搭載するための専用スペースを設ける必要がなくなるため、車両室内のスペースを有効に利用することができる。さらに、ドライバが疲労していると推定されると、キャリア周波数が共振周波数域に設定され、リアクトルの振動が大きくなりドライバに伝達される。そのため、専用の振動装置を設けることなく、ドライバに刺激を与えて、ドライバの疲労感や倦怠感を軽減することができる。
【0062】
なお、本実施の形態においては、リアクトル320をシートバック720の内部に収容する場合について説明したが、リアクトル320の振動をドライバに伝達できる場所であれば、リアクトル320の収容場合はこれに限定されない。たとえば、リアクトル320をシートクッション730の内部に収容するようにしてもよい。また、リアクトル320に代えて、昇圧用IPM310やインバータ用IPM500A,500Bをドライバシート700の内部に収容し、昇圧用IPM310やインバータ用IPM500A,500Bの振動や騒音をドライバに伝達するようにしてもよい。
【0063】
また、本実施の形態においては、リアクトル320をドライバシート700の内部に収容する場合について説明したが、たとえば、ドライバ以外の乗員が着座するシートにリアクトル320を収容し、ドライバ以外の乗員の疲労感や倦怠感を軽減するようにしてもよい。
【0064】
<第1の実施の形態の変形例(その1)>
上述の第1の実施の形態に係るシートを、本変形例において以下のように変形してもよい。
【0065】
すなわち、上述の第1の実施の形態におけるドライバシート700に代えて、図6に示すようなドライバシート1700を搭載する。ドライバシート1700は、上述の第1の実施の形態におけるシートバック720を、シートバック1720に変更したものである。シートバック1720は、ドライバ自らの選択によりリアクトル320をドライバの背中に接する方向に移動することができるように収容する収容部1724を備える。
【0066】
これにより、リアクトル320から伝達される振動の大きさやリアクトル320の振動が伝達される個所などを、ドライバの意思に応じて、ドライバ自身で調節することができる。
【0067】
<第1の実施の形態の変形例(その2)>
上述の第1の実施の形態に係るシートおよびリアクトルを、本変形例において以下のように変形してもよい。
【0068】
すなわち、上述の第1の実施の形態におけるリアクトル320に代えて、図7に示すように、複数のリアクトル2320A,2320B,2320Cを搭載する。リアクトル2320A,2320Bは、走行用バッテリ100の陽極側の電源ラインと昇圧用IPM310の2つのIGBTの中間点との間に、直列に接続される。リアクトル2320Cは、走行用バッテリ100の負極側の電源ラインと昇圧用IPM310の一方のIGBTの端点との間に、リアクトル2320A,2320Bに対して並列に接続される。なお、リアクトル2320A,2320B,2320Cは、リアクトル320と同じ機能を発揮する。
【0069】
さらに、上述の第1の実施の形態におけるドライバシート700に代えて、図8に示すようなドライバシート2700を搭載する。ドライバシート2700は、上述の第1の実施の形態におけるシートバック720およびシートクッション730を、それぞれシートバック2720およびシートクッション2730に変更したものである。シートバック2720は、リアクトル2320A,2320Bをドライバの背中に接する方向に分散して収容する。シートクッション730は、リアクトル2320Cを収容する。
【0070】
このように、複数のリアクトル2320A,2320B,2320Cがドライバシート700の内部に分散して設けられるので、ドライバの複数の個所に刺激を与えることができる。
【0071】
なお、リアクトル2320A,2320B,2320Cの位置は、図8に示す位置に限定されず、たとえば、リアクトル2320Aをドライバの右肩付近に、リアクトル2320Bをドライバの左肩付近に設けるようにしてもよい。
【0072】
<第2の実施の形態>
以下、本実施の形態に係るシートおよびその制御装置について説明する。本実施の形態に係るシートおよびその制御装置は、上述の第1の実施の形態に係るシートおよびその制御装置の構成と比較して、ECU1000で実行されるプログラムの制御構造のみが異なる。これ以外の構成は、上述の第1の実施の形態に係るシートおよびその制御装置の構成と同じ構成である。同じ構成については同じ参照符号が付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0073】
図9を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU1000が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、図9に示したフローチャートの中で、前述の図4に示したフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについて処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0074】
S200にて、ECU1000は、キャリア周波数を可聴周波数域に設定する。S202にて、ECU1000は、キャリア周波数を非可聴周波数域に設定する。
【0075】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るECU1000により制御されるドライバシート700の動作について説明する。
【0076】
ドライバが疲労していると推定されると(S104にてYES)、非可聴周波数域に設定(S200)されていたキャリア周波数が、可聴周波数に設定される(S202)。これにより、リアクトル320から可聴域の騒音が発生し、ドライバに伝達される。そのため、専用の音響装置を設けることなく、リアクトル320の騒音をドライバに的確かつ積極的に伝達して、ドライバの倦怠感を軽減することができる。
【0077】
なお、本実施の形態においては、リアクトル320の騒音を変更するようにキャリア周波数を設定したが、リアクトル320の振動および騒音の双方を変更するようにキャリア周波数を設定するようにしてもよい。
【0078】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るシートが搭載される車両の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るシートを構成するドライバシートを示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るシートを構成するECUの機能ブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るシートを構成するECUの制御構造を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るシートの動作を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態の変形例(その1)に係るシートを構成するドライバシートを示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態の変形例(その2)に係るシートが搭載される車両の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に対する第2の変形例に係るシートを構成するドライバシートを示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るシートを構成するECUの制御構造を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0080】
100 走行用バッテリ、200,400 コンデンサ、300 昇圧コンバータ、310 昇圧用IPM、320,2320A,2320B,2320C リアクトル、500A,500B インバータ用IPM、600A,600B モータジェネレータ、700,1700,2700 ドライバシート、710 ヘッドレスト、720,1720,2720 シートバック、722 防振部材、724,1724 収容部、730,2730 シートクッション、1000 ECU、1010 ドライバ状態センサ、1020 走行状態センサ、1100 ドライバ状態推定部、1200 キャリア周波数設定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両駆動用のモータを制御する電子機器を備えた車両に搭載されるシートであって、内部に前記電子機器の少なくとも一部が設けられたシート。
【請求項2】
前記電子機器は、スイッチング素子の動作により電圧を昇降させるコンバータであり、
前記シートは、
前記車両の乗員が着座するシートクッションと、
前記乗員の背中が接するシートバックと、
前記シートクッションおよび前記シートバックの少なくともいずれかの内部に設けられ、前記コンバータの一部を構成するリアクトルであって、前記スイッチング素子との協働によって前記電圧を昇降させる際に、振動および騒音の少なくともいずれかを発生するリアクトルとを含む、請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記リアクトルは、前記乗員の操作により前記内部において移動できるように設けられる、請求項2に記載のシート。
【請求項4】
前記リアクトルは、前記内部に分散して複数設けられる、請求項2または3に記載のシート。
【請求項5】
車両駆動用のモータを制御する電子機器を備えた車両に搭載されるシートの制御装置であって、前記シートの内部には、前記電子機器の少なくとも一部が設けられ、
前記制御装置は、
前記車両の乗員の状態を推定するための推定手段と、
前記状態に基づいて、前記電子機器の動作を制御するための制御手段とを含む、制御装置。
【請求項6】
前記電子機器は、スイッチング素子の動作により電圧を昇降させるコンバータであり、
前記シートには、前記乗員が着座するシートクッションと、前記乗員の背中が接するシートバックと、前記シートクッションおよび前記シートバックの少なくともいずれかの内部に設けられ、前記コンバータの一部を構成するリアクトルであって、前記スイッチング素子との協働によって前記電圧を昇降させる際に、振動および騒音の少なくともいずれかを発生するリアクトルとが備えられ、
前記制御手段は、前記状態に基づいて、前記振動および前記騒音の少なくともいずれかを変更するように、前記スイッチング素子の動作を制御するための手段とを含む、請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記スイッチング素子は、キャリア周波数により動作され、
前記乗員は、前記車両の運転者であり、
前記推定手段は、前記運転者が疲労した状態であるか否かを推定するための手段を含み、
前記制御手段は、前記運転者が疲労した状態であると推定された場合に、前記振動および前記騒音の少なくともいずれかを大きくするように、前記キャリア周波数を制御するための手段を含む、請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記運転者が疲労した状態でないと推定されると、前記キャリア周波数を非共振周波数に制御し、前記運転者が疲労した状態であると推定されると、前記キャリア周波数を共振周波数に制御するための手段を含む、請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記運転者が疲労した状態でないと推定されると、前記キャリア周波数を非可聴周波数に制御し、前記運転者が疲労した状態であると推定されると、前記キャリア周波数を可聴周波数に制御するための手段を含む、請求項7に記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−307977(P2008−307977A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156341(P2007−156341)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】