説明

車両のエンジン制御装置

【課題】変速機の入力軸にトルクコンバータを有する車両において、多数のマップを要することなく、トルクコンバータ直結状態での加速ショックを緩和する。
【解決手段】エンジン2の目標回転速度Nobjと現在回転速度Nerとの偏差に対応したエンジンの回転速度変化率の目標値dNeを算出する手段12と、変化率の現在値dNe及び目標値dNe_TGT(n)に基づき算出したトルク補正値dPi_dにより実際のエンジントルク値Pi_ACT_2cを補正する手段14と、補正後要求トルク値Pi_acc(n)に基づいてエンジン2のトルクを制御する手段18とを備え、トルクコンバータ6のトルク比τ及び容量係数Cと変速機特性から予め設定された変速機入力トルク値Taccとから算出したエンジン2の回転速度を目標回転速度Nobjに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと変速機との間にトルクコンバータを有する車両のエンジン制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の自動変速機には、入力軸にトルクコンバータ(以下、トルコンともいう)が多く採用されており、エンジン(内燃機関)の出力トルクを、トルコンを介して自動変速機に入力し適宜の変速比で変速して駆動輪に出力する構成となっている。
ロックアップクラッチ等が結合していない非直結時の場合、トルコンは、構造上、入力軸回転速度は出力軸回転速度に対してある一定範囲で差回転を持つことができる。このため、発進時や減速後の再加速時において、入力軸回転速度(エンジン回転速度)が急増することが起こりうる。一方、トルコンは、構造上、その入力側と出力側との回転速度比が1となる付近を境界として容量係数が大きく変化する場合がある。このトルコンの容量係数は、伝達効率と相関しており、容量係数が大きくなるとエンジンからの伝達トルクも大きくなる。
【0003】
ところで、非直結時の場合、トルコンは入力軸回転速度の自乗と容量係数に比例してトルクを伝達する。このため、エンジン回転速度が急増すると伝達トルクが急増して、車両の加速ショックを招きやすい。
もちろん、ロックアップクラッチ等が結合して、トルコンの入力側と出力側とが直結していれば、エンジン回転速度は急増しないので、このようなトルコンのトルク伝達特性に起因した加速ショックを招くことはない。
【0004】
現状では、このようなトルコン非直結時の加速ショック対策手法としては、容量係数が大きく変化する領域においてエンジン回転速度の急増を抑えるようなスロットル開度やエンジン出力トルクの目標値を設定して、これに実際のスロットル開度やエンジン出力トルクを近づけるように制御することが行われている。
例えば、特許文献1には、エンジンの動力を無段変速機へ伝達するトルコンをそなえ、トルコンのポンプインペラの回転速度(エンジン回転速度)Neがトルコンのタービンライナの回転速度Ntより低いか略同等状態であるとき、エンジンの目標トルクを制御し、回転速度Neが回転速度Ntより高くなると、エンジンの目標トルクを増加させることにより、加速ショックを抑制しつつ、加速応答性を向上させる技術が開示されている。
【0005】
この場合、ドライバのステップ的なアクセル操作(=APS出力)に対応するスロットル開度よりも小さいスロットル開度目標値とする。
このため、目標スロットル開度や目標トルクを設定する際には、変速機の変速比や車速などの諸条件によって最適設定値が異なるため、スロットル開度目標値のホールドの長さ及び幅とテーリングの傾きとを決定するために、多数のマップを設けて対応することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−255270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の目標スロットル開度や目標トルクを設定してエンジンを制御するものにおいて、トルコン非直結時の加速ショック対策として、多数のマップを設けて対応する技術では、多数のマップを作成するのに膨大な工数を要し、マップ作成の時間やコストが大きな課題になっており、多数のマップを要することなく、トルコン非直結時の加速ショックを抑制できるようにしたい。
【0008】
また、スロットル開度やエンジン出力トルクを目標値に対して精度よく制御できても、トルコン出力軸トルクを基に目標値設定しているわけではないため、例えば登坂時のような場合、トルコンの入力軸回転速度が出力軸回転速度に対して想定より過不足することが起こり得る。入力軸回転速度に過不足が起こると、実際の変速機入力トルクの精度が悪化し、加速ショックを有効に抑制できないおそれがある。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑み創案されたもので、変速機の入力軸にトルクコンバータを有する車両において、多数のマップを要することなく、トルクコンバータが非直結状態での発進時や再加速時に発生する加速ショックを緩和することができるようにした、車両のエンジン制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の車両のエンジン制御装置は、エンジンと変速機との間にトルクコンバータを有する車両のエンジン制御装置であって、前記エンジンの回転速度Neを検出する回転速度検出手段と、前記エンジンの目標回転速度Nobjを設定する目標回転速度設定手段と、前記回転速度検出手段で検出される現在の回転速度Neに基づき、前記エンジンの回転速度の変化率の現在値dNeを算出する変化率算出手段と、前記回転速度検出手段で検出される現在の回転速度Ne、及び、前記目標回転速度設定手段で設定される目標回転速度Nobjに基づき、前記エンジンの回転速度の変化率の目標値dNe_TGT(n)を算出する変化率目標値算出手段と、前記変化率算出手段で算出される前記変化率の現在値dNeと前記変化率目標値算出手段で算出される前記変化率の目標値dNe_TGT(n)とに基づき第1エンジン要求トルク補正値dPi_dを算出し、この第1エンジン要求トルク補正値dPi_dを用いて実際のエンジントルク値Pi_ACT_2cを補正した補正後要求トルク値Pi_acc(n)を算出する要求トルク値算出手段と、前記要求トルク値算出手段で算出された補正後要求トルク値Pi_acc(n)に基づいてエンジンのトルクを制御する制御手段とを備え、前記目標回転速度設定手段は、前記トルクコンバータのトルク比τ及び容量係数Cと前記変速機を含む前記車両の駆動系の振動特性に応じて予め設定された変速機入力トルク値Taccとを用いて前記エンジンの回転速度Neを算出する回転速度算出手段を有し、前記車両の加速中には、前記回転速度算出手段により算出した前記回転速度を前記目標回転速度Nobjに設定することを特徴としている。
【0011】
なお、前記回転速度算出手段は、前記トルク比τ及び前記容量係数Cと前記変速機を含む前記車両の駆動系の振動特性に応じて予め設定された変速機入力トルク値Taccとから、Tacc=τ×C×Neの関係式を用いて、前記回転速度Neを算出することができる。
前記目標回転速度設定手段は、前記車両が加速中でない場合には、前記トルクコンバータの出力軸の現在回転速度Ntに前記変速機を含む前記車両の駆動系の振動特性に応じて予め設定された増分量Nt_accを加算して前記目標回転速度Nobjを設定することが好ましい。
【0012】
前記目標回転速度設定手段は、前記現在の回転速度Neが前記トルクコンバータの出力軸の前記現在回転速度Ntよりも大きい場合に、前記車両が加速中であると判定することが好ましい。
前記制御手段は、前記エンジンのスロットル開度及び点火時期を制御することにより前記エンジンのトルクを制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両のエンジン制御装置によれば、回転速度検出手段により検出されるエンジンの現在の回転速度Ne及び目標回転速度設定手段により設定されるエンジンの目標回転速度Nobjに基づき、エンジンの回転速度の変化率の目標値dNe_TGT(n)を算出し、この変化率の目標値dNe_TGT(n)及び変化率算出手段で算出される変化率の現在値dNeに基づき算出した第1エンジン要求トルク補正値dPi_dにより、実際のエンジントルク値Pi_ACT_2cを基に補正後要求トルク値Pi_accを算出し、車両の加速中であってドライバ要求トルク値が補正後要求トルク値Pi_acc(n)を超えるとき、得られた補正後要求トルク値Pi_ acc(n)に基づいてエンジンのトルクを制御する。
【0014】
目標回転速度設定手段では、例えば、トルクコンバータの出力軸の現在回転速度Ntとエンジンの現在回転速度Neとの比である速度比Nt/Neを算出し、この速度比Nt/Neを引数とするマップからトルクコンバータのトルク比τと容量係数Cとを決定して、トルク比τ及び容量係数Cと変速機及び変速機以降の駆動系(プロペラシャフトやドライブシャフト、ディファレンシャル、ホイール(タイヤ)を繋ぐ伝達系)の振動特性に応じて予め設定された変速機入力トルク値Taccとから、目標とすべきエンジンの回転速度を算出し、車両の加速中には、算出したエンジンの回転速度Neを目標回転速度Nobjに設定する。
【0015】
したがって、車両の加速中には、上記駆動系(伝達系)の振動特性を考慮して設定されたエンジンの目標回転速度Nobjに基づくエンジンの回転速度の変化率の目標値dNe_TGT(n)及び変化率算出手段で算出される変化率の現在値dNeに基づき算出した第1エンジン要求トルク補正値dPi_dにより、実際のエンジントルク値Pi_ACT_2cを基に算出した補正後要求トルク値Pi_acc(n)を超えないように、例えば、スロットル開度や点火時期を制御してエンジンのトルクを制御するため、トルコン入力軸回転速度の出力軸回転速度に対する過不足を回避でき、変速機入力トルクを精度よく制御できるため、加速ショックを有効に緩和できる。
【0016】
また、様々なドライバのアクセル操作条件に対応して目標スロットル開度や目標トルクを設定するための、多数のマップを設ける必要がないため、多数のマップを用意するための膨大な工数を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態にかかるエンジン制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるエンジン要求トルク値の算出を説明するブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるエンジン要求トルク値の算出を説明するブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる基本変化率目標値の設定特性を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施形態にかかるトルクコンバータの容量係数の特性を説明する図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかるトルクコンバータのトルク比の特性を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
〔構成〕
<駆動系の構成>
まず、本制御装置の対象であるトルクコンバータを有する自動車(車両)の駆動系の要部構成を説明する。
【0019】
図1に示すように、駆動系は、エンジン(内燃機関)2と、自動変速機4と、エンジン2と自動変速機4との間に介装されたトルクコンバータ(以下、トルコンとも言う)6とを備え、自動変速機4の出力軸は、図示しない駆動輪に接続され、エンジン2の回転を変速して駆動輪に伝達し駆動する。
トルコン6は、トルコンケーシング62内に、エンジン2の出力軸22に結合されたインペラ64と、自動変速機4の入力軸42に結合されたタービンライナ(単に、タービンともいう)66とが対向して装備され、インペラ64とタービンライナ66との間には、図示しない粘性流体が介在し、この粘性流体を介してインペラ64とタービンライナ66との間の動力伝達が行なわれる。
【0020】
自動変速機4は、本実施形態の場合、ベルト式無段変速機(CVT)が適用されている。つまり、自動変速機4は、ケーシング40内に、前後進切替機構44を介して入力軸42と接続されたプライマリ軸46Aと、このプライマリ軸46Aに装備されたプライマリプーリ46と、プライマリ軸46Aと並列して装備されたセカンダリ軸48Aと、このセカンダリ軸48Aに装備されたセカンダリプーリ48と、プライマリプーリ46とセカンダリプーリ48とに架け渡されたベルト50とを備え、プライマリプーリ46及びセカンダリプーリ48の可動プーリを軸方向に移動させて各プーリ46,48の有効径を変更することにより、変速比を連続的に変更することができる。
【0021】
セカンダリ軸48Aは、ギア対54aを介して出力軸54と接続されており、自動変速機4により変速された回転は図示しない駆動輪に伝達されて、駆動輪の回転によって車両が駆動される。
また、エンジン2及び自動変速機4を制御する電子制御ユニット(ECU)10が備えられている。このECU10は、詳細を図示しないが、入出力装置、記憶装置(ROM,RAM,不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えて構成された周知のコンピュータである。
【0022】
さらに、エンジン2のクランク軸の回転角度を検出しエンジン回転速度情報として出力するクランク角センサ(エンジン回転速度検出手段としてのエンジン回転速度センサ)20aと、トルコン6のタービン66の回転速度に対応する自動変速機4のプライマリ軸46Aの回転速度を検出するプライマリ回転速度センサ(タービン回転速度検出手段としてのプライマリ回転速度検出手段)20bとが備えられ、各センサ20a,20bの検出情報はECU10に送られる。
【0023】
前後進切替機構44は、詳細は図示しないが、例えば、サンギアと、リングギアと、サンギアと噛み合う第1のピニオンギアと、リングギアと噛み合う第2のピニオンギアと、第1,第2のピニオンギアを枢支するキャリアとからなるダブルピニオン型遊星歯車機構によって構成することができる。この場合、サンギアは入力軸42に連結され、キャリアはプライマリ軸46Aに連結されると共にピニオンギア,リングギア及びリバースブレーキを介してケーシング40に連結される。
【0024】
そして、車両の前進時には、フォワードクラッチを係合させると共にリバースブレーキを開放させ、車両の後進時には、リバースブレーキを係合させると共にフォワードクラッチを開放させる。また、動力の伝達・非伝達の切り替えについては、入力軸42とプライマリ軸46Aとのトルク伝達を遮断する場合には、フォワードクラッチおよびリバースブレーキをともに開放する。入力軸42とプライマリ軸46Aとのトルク伝達を行なう場合には、フォワードクラッチおよびリバースブレーキの何れかを結合する。
【0025】
前後進切替機構44に装備されたこのようなクラッチ及びブレーキは、一般に、油圧式により駆動される湿式多板クラッチ装置により構成される。なお、前後進切替機構44の代表的な切り替えに、ニュートラルレンジ(Nレンジ)とドライブレンジ(Dレンジ)との切り替えがあることから、かかるクラッチ及びブレーキについて、NDクラッチとも言う。
【0026】
<制御系の構成>
次に、本実施形態にかかるエンジン制御装置を説明する。この制御装置は、上述の自動車のエンジン2を制御するECU10によって構成される。
図1,図2に示すように、エンジンECU10内には、実際のエンジントルク値Pi_ACTを推定する実エンジントルク推定手段11と、エンジン2の目標回転速度(目標エンジン回転速度)Nobjを設定する目標回転速度設定手段12と、エンジン2の回転速度の変化率の目標値dNe_TGTを算出する変化率目標値算出手段13と、エンジンの回転速度の変化率の現在値dNeを算出する変化率算出手段14Aと、第1エンジン要求トルク補正値(微分補正項)dPi_dを算出する第1補正値算出手段14と、第2エンジン要求トルク補正値(補機負荷変化分補正量)dPi_AUXを算出する第2補正値算出手段16と、要求トルク値補正手段17Aを有し補正によりエンジンの要求トルク値Pi_accを算出する要求トルク値算出手段17と、エンジン要求トルク値Pi_accを超えないようにエンジンのトルクを制御するエンジントルク制御手段18とを、何れもコンピュータプログラムによるソフトウェアにより備えている。
【0027】
なお、各手段11〜18による推定,設定,算出及び制御の処理は、予め設定された制御周期で行なわれるようになっている。そこで、各推定値,設定値,算出値の現在値(現在の制御周期での値)については(n)を付し、前回値(前回の制御周期での値)については(n−1)を付して示す。
実エンジントルク推定手段11は、エアーフローセンサ(吸入空気流量検出手段)21により検出された吸入空気量Qaに基づいて現時点のエンジン2の吸気量に対応する現在の実際のエンジントルク値Pi_ACTを推定する。ただし、検出吸入空気量Qaが変化するとスロットル通過吸気流量が変化して現在エンジントルク値Pi_ACTも変化するが、スロットル通過吸気流量が変化しても、この流量が変化した吸気が、吸気管全体を満たすために拡散するため、実際にエンジン2に吸入される吸気量にはスロットル通過吸気流量に対して吸気管全体容積とエンジンの気筒容積に応じた応答遅れが生じる。そこで、実エンジントルク推定手段11は、充填効率Ecが現在のエアーフローセンサ21により検出された吸入空気量Qaに対して、吸気管全体容積とエンジン2の気筒容積とに対応した一次遅れをもって変化するものとして、現在の充填効率Ec(n)を推定し、現在の充填効率Ec(n)に対応する実際のエンジントルク値Pi_ACTを推定する。
【0028】
まず、この現時点のエアーフローセンサ21により検出された吸入空気量Qaに基づいて、推定される上記の応答遅れを考慮しない現時点の基本充填効率Ecrは、下記式(1)で求められる。
Ecr=Qa×τ×KQEc ・・・(1)
但し、τは4気筒エンジンの場合の180°CA周期(sec)であり、KQEcは変換係数である。
【0029】
そして、吸気管全体容積とエンジン2の気筒容積に応じた一次遅れの係数をKANFとすると、現在の充填効率Ec(n)は、下記式(2)のように、吸入空気量Qaに関する一次遅れを考慮して求められる。実エンジントルク推定手段11で設定される現在のエンジン2の出力トルク(エンジントルク)Pi_ACT(n)は、下記式(3)のように、充填効率Ec(n)に基づき、吸入空気量Qaに関する一次遅れを考慮して求められる。
Ec(n)=KANF・Ec(n−1)+(1−KANF)・Ecr ・・・(2)
Pi_ACT(n)=f2[Ne(n),Ec(n)] ・・・(3)
但し、Ne(n)はエンジン回転速度センサ(回転速度検出手段)22で検出された現在のエンジン回転速度である。
【0030】
また、係数KANFは、吸気管全体容積をVIM、内燃機関の気筒容積をVCYLとすると、下記式(4)で求められる。
ANF=VIM/(VIM+VCYL) ・・・(4)
【0031】
目標回転速度設定手段12は、車両の加速時と非加速時(特に、車両が加速中と判定する前)とで異なる手法でエンジン2の目標回転速度Nobjを設定する。
まず、加速時における目標回転速度Nobjの設定のために、目標回転速度設定手段12は、トルコン6の出力軸(つまり、自動変速機4の入力軸)42の現在回転速度(現在のタービン回転速度)Ntと現在エンジン回転速度Neとの比である速度比Nt/Neを算出する機能(速度比算出手段)12aと、この速度比Nt/Neを引数とするマップからトルコン6のトルク比τと容量係数Cとを決定する機能(トルク比,容量係数決定手段)12bと、トルク比τ及び容量係数Cと、自動変速機4及び図示しない自動変速機4以降の駆動系(プロペラシャフトやドライブシャフト、ディファレンシャル、ホイール(タイヤ)を繋ぐ伝達系)の振動特性に応じて予め設定された変速機入力トルク値(T/M入力トルク値)Taccとから、エンジン2の回転速度(第2目標回転速度)Nobj2を算出する機能(回転速度算出手段12c)とを備え、車両の加速時には、回転速度算出手段12cにより算出した回転速度Nobj2を目標回転速度Nobjに設定する。
【0032】
目標回転速度設定手段12は、車両の非加速時、特に加速中と判定する前の場合には、トルコン6の出力軸42の現在回転速度(現在のタービン回転速度)Ntの増分量Nt accを加算して得られるエンジン2の回転速度(第1目標回転速度)Nobj1を算出し、この回転速度Nobj1を目標回転速度Nobjに設定する。
ここで、増量分Nt_accは、トルコン6の出力軸42の現在回転速度がNtであって、エンジン回転速度がNt+Nt_accであるとしたときのトルコン出力軸トルクTacc_0が変速機入力トルクTaccの初期値以下となるように設定する。なお、トルコン出力軸トルクTacc_0は、トルコン6の出力軸42の現在回転速度がNtであって、エンジン回転速度がNt+Nt_accであるとしたときのトルク比τと容量係数Cを用いて、τ×C×(Nt+Nt_acc)の関係式を用いて得られる。このような目標回転速度を設定することにより、トルコン出力軸トルクTacc_0を変速機入力トルクTaccの初期値以下に確実に抑えることができる。
【0033】
なお、本実施形態では、トルコン6の出力軸42の回転速度(タービン回転速度)Ntを検出するセンサを設けていないので、プライマリ回転速度センサ20bにより検出されるプライマリ回転速度Npをタービン回転速度Ntの代わりに用いている。このようにプライマリ回転速度Npを代用できるのは、トルコン6のタービン側(出力軸42)と自動変速機4のプライマリ軸46Aとの間に前後進切替機構44があるが、自動変速機4がDレンジ等の走行レンジに設定されている場合、前後進切替機構44の前後で回転速度は一致するためである。もちろん、タービン回転速度Ntを直接検出するタービン回転速度センサ(タービン回転速度検出手段)を設けて、このセンサの検出情報を用いてもよい。
【0034】
したがって、速度比算出手段12aでは、図3に示すように、プライマリ回転速度センサ20bにより検出されるプライマリ回転速度Npをタービン回転速度Ntに置き換え、さらに、このタービン回転速度Ntを、エンジン回転速度センサ20aにより検出されるエンジン回転速度Neにより除算して、速度比Nt/Neを算出する。
そして、トルコン6のトルク比τ及びトルコン6の容量係数Cは、トルコン6に係る設計値であって、図5,図6に示すように、速度比Nt/Neを引数とするマップを用意することができ、トルク比,容量係数決定手段12bでは、図3に示すように、これらのアップを用いて、速度比Nt/Neから、トルク比τ及びトルコン6の容量係数Cを決定する。
【0035】
回転速度算出手段12cでは、図3に示すように、トルク比τ及び容量係数Cと、予め設定されたT/M入力トルク値Taccとエンジン2の回転速度(第2目標回転速度)Nobj2との関係(下式(5A))から導出される下式(5B)によりエンジン2の回転速度(第2目標回転速度)Nobj2を算出する。
Tacc=τ・C・Nobj2 ・・・(5A)
Nobj2=√τ・C・Tacc ・・・(5B)
【0036】
また、目標回転速度設定手段12では、図3に示すように、タービン回転速度Ntに、前記増分量Nt accを加算下式(下式(5C))して車両の非加速時(特に加速中と判定する前)の場合のエンジン2の回転速度(第1目標回転速度)Nobj1を算出する。
Nobj1=Nt+Nt acc ・・・(5C)
【0037】
なお、目標回転速度設定手段12では、車両が加速中であるか非加速時であるかの判定を、エンジン回転速度Neとタービン回転速度Ntとを比較して行う。つまり、自動変速機4が走行可能な状態にあり、トルクコンバータ6が非直結状態であって、エンジン回転速度NeがNt+Nt_acc以下であるとき,車両が非加速時(特に加速中と判定する前)と判定する。そして、車両が非加速時(特に加速中と判定する前)と判定した後、エンジン回転速度Neがタービン回転速度Ntよりも大きくなったとき、車両は加速中と判定する。
【0038】
目標回転速度設定手段12は、車両の加速時には、式(5B)により算出された回転速度Nobj2を目標回転速度Nobjに設定(下式(5D))とし、車両の非加速時(特に加速中と判定する前)には、式(5C)により算出された回転速度Nobj1を目標回転速度Nobjに設定(下式(5E))とする。
Nobj=Nobj2 ・・・(5D)
Nobj=Nobj1 ・・・(5E)
【0039】
変化率目標値算出手段13は、目標回転速度設定手段12により設定された前回の目標回転速度Nobj(n−1)と現在エンジン回転速度Neとの偏差ΔNe[=Ne−Nobj(n−1)]に基づいて基本変化率目標値(目標値A)dNe_TGT´(n)を算出し、この基本変化率目標値dNe_TGT´(n)に、目標回転速度設定手段12において今回設定した目標回転速度Nobj(n)と前回の目標回転速度Nobj(n−1)から算出される単位時間当たりの増減分(変化率B)dNobjを増減して、今回のエンジンの回転速度変化率の目標値dNe_TGT(n)を算出する。
【0040】
変化率目標値算出手段13は、基本変化率目標値dNe_TGT´(n)を、前回と今回との目標回転速度Nobjの増減分(変化率Bに対応する値)dNobj×dtを無視して、エンジン回転速度センサ22により検出された現在エンジン回転速度Neから目標回転速度設定手段12により設定された前回の目標回転速度Nobj(n−1)を減算した偏差ΔNe[=Ne−Nobj(n−1)]に基づいて、例えば、図4に示すような特性で設定する。
【0041】
このように、前回と今回との目標回転速度Nobjの増減分dNobj×dtを無視するのは、増減分dNobj×dtを別途考慮して、今回のエンジン回転速度変化率目標値dNe_TGT(n)を算出するからである。
図4に示すように、偏差ΔNeが0であればエンジン回転速度を変化させる必要はなく基本変化率目標値dNe_TGT´(n)は0である。
【0042】
ΔNeが正の値(Ne>Nobj(n−1))であれば基本変化率目標値dNe_TGT´(n)は負の値とされ、この正の値であるΔNeが増大するほど基本変化率目標値dNe_TGT´(n)は負の方向へ増大する。このように、基本変化率目標値dNe_TGT´(n)を負の値とすることで現在エンジン回転速度Neが低下していくのでΔNeは減少する(0に近づく)。
【0043】
また、ΔNeが負の値(Ne<Nobj(n−1))であれば基本変化率目標値dNe_TGT´(n)は正の値とされ、この負の値であるΔNeの大きさが増大するほど基本変化率目標値dNe_TGT´(n)は正の方向へ増大する。このように、基本変化率目標値dNe_TGT´(n)を正の値とすることで現在エンジン回転速度Neが増加していくのでΔNeの大きさは減少する(0に近づく)。
【0044】
図4に示すように、偏差ΔNeに対する基本変化率目標値dNe_TGT´(n)の特性は、偏差ΔNeが0に近い領域では、偏差ΔNeの増減量に対して基本変化率目標値dNe_TGT´(n)の増減量は小さく、つまり、偏差ΔNeの変化に対する基本変化率目標値dNe_TGT´(n)の変化の割合(変化率)は小さくなっている。これは、偏差ΔNeが0に近い領域では、基本変化率目標値dNe_TGT´(n)をできるだけ小さくして制御を安定させるためである。
【0045】
そして、偏差ΔNeの大きさが大きくなっていく(0から離隔する)にしたがって、この変化率は次第に大きくなる。これは、偏差ΔNeが0から離隔する領域では、基本変化率目標値dNe_TGT´(n)を偏差ΔNeに応じて与えることにより偏差ΔNeを速やかに0近傍に近づけるためである。
ただし、基本変化率目標値dNe_TGT´(n)の大きさには、制限が設けられており、偏差ΔNeの大きさがさらに大きくなっていくと、上記変化率は次第に小さくなって制限値(上限値又は下限値)へと近づいていく。このように、基本変化率目標値dNe_TGT´(n)の大きさに制限を設けているのは、特に、目標回転速度が略一定の場合に、偏差ΔNeの大きさが極めて大きいからといって基本変化率目標値dNe_TGT´(n)を過剰に大きくすると、制御のオーバシュートやハンチングを招くおそれが発生するため、これを回避するためである。また、上記変化率を制限値に向けて滑らかに変化させることにより制御を安定させている。
【0046】
変化率目標値算出手段13は、下式(6)のように、この基本変化率目標値dNe_TGT´(n)に、目標回転速度Nobjの単位時間当たりの増減分dNobjだけ増減して今回のエンジン回転速度変化率目標値dNe_TGT(n)を算出する。
dNe_TGT(n)=dNe_TGT´(n)+dNobj ・・・(6)
【0047】
このように、前回から今回の目標回転速度の変化させるべき分である、目標回転速度Nobjの増減分dNobjを直接加算するため、今回のエンジン回転速度変化率目標値dNe_TGT(n)は目標回転速度Nobjの変化に速やかに応じた値となる。
【0048】
第1補正値算出手段14は、下式(7)のように、今回のエンジン回転速度変化率目標値(目標値C)dNe_TGT(n)とエンジン回転速度変化率現在値dNeとの差分にエンジンクランクシャフト周り(主運動系、フライホイール等を含む)の慣性モーメントIeを乗じて第1エンジン要求トルク補正値(微分補正項)dPi_dを算出する。
なお、エンジン回転速度変化率現在値dNeは変化率算出手段14Aにより算出される。変化率算出手段14Aでは、エンジン回転速度変化率現在値dNeを、エンジン回転速度センサ22により検出されたエンジン回転速度Neを処理して得られるが、2行程前から現時点までの2行程間のエンジン2の回転速度の変化率が得られ、これをエンジン2の回転速度の変化率の現在値dNeとする。
dPi_d=Ie×[dNe_TGT(n)−dNe] ・・・(7)
【0049】
この第1エンジン要求トルク補正値dPi_dは、エンジン回転速度変化率目標値dNe_TGT(n)とエンジンの回転速度変化率の現在値dNeとの差分に基づくトルク値対応の微分補正項となる。なお、第1エンジン要求トルク補正値dPi_dはトルク値と比例関係にある平均有効圧に相当する。
【0050】
第2補正値算出手段16は、エンジン2の補機類が作動した場合にこれに応じた負荷変化分を第2エンジン要求トルク補正値(補機負荷変化分補正量)dPi_AUXとして算出する。
エンジン要求トルク値算出手段17は、要求トルク値補正手段17Aにより、下式(8)のように、実際のエンジントルク値Pi_ACT_2cを基に、第1エンジン要求トルク補正値(微分補正項)dPi_dと第2エンジン要求トルク補正値(補機負荷変化分補正量)dPi_AUXとにより加算補正して、エンジン要求トルク値Pi_acc(n)を算出する。なお、実際のエンジントルク値Pi_ACT_2cには、現時点の2行程前の値を用いる。
【0051】
なお、エンジン回転速度変化率現在値dNe及び実際のエンジントルク値Pi_ACT_2cに、現時点の2行程前のものを用いるのは、直列4気筒エンジンの場合、現時点の1行程前のものに基づく算出では、エンジン回転速度変化率現在値dNe及び実際のエンジントルク値Pi_ACT_2cに燃焼による実際のエンジン回転速度の変化が十分反映されないが、現時点の2行程前のものに基づく算出によれば、エンジン回転速度変化率現在値dNe及び実際のエンジントルク値Pi_ACT_2cが燃焼による実際のエンジン回転速度の変化を十分反映したものとなるためである。
Pi_acc(n)=Pi_ACT_2c+dPi_d+dPi_AUX ・・・(8)
【0052】
エンジントルク制御手段18は、算出されたエンジン要求トルク値Pi_acc(n)を超えないようにエンジン2のトルクを制御する。具体的には、車両の加速中であってドライバ要求トルク値が要求トルク値Pi_acc(n)を超えるとき、エンジン2のスロットル開度および点火時期をエンジン要求トルク値Pi_acc(n)に対応したものに制御する。
【0053】
〔作用,効果〕
本発明の一実施形態にかかるエンジン制御装置は、上述のように構成されるので、エンジンECU10では、予め設定された所定の制御周期で、エンジン要求トルク値Pi_acc(n)を算出する。
つまり、実エンジントルク推定手段11が、エアーフローセンサ21により検出された吸入空気量Qaに基づいて現時点のエンジン2の吸気量に対応する現在の実際のエンジントルク値Pi_ACTを推定する。
【0054】
そして、目標回転速度設定手段12が、車両の加速時には、速度比Nt/Neからトルコン6のトルク比τと容量係数Cとを決定し、トルク比τ及び容量係数Cと変速機および図示しない変速機以降の駆動系の特性に応じて予め設定したT/M入力トルク値Taccとから算出したエンジン2の回転速度(第2目標回転速度)Nobj2を目標回転速度Nobjに設定し、非加速時(特に加速中と判定する前)には、タービン回転速度Ntと前記タービン回転速度増分量Nt_accとから算出したエンジン2の回転速度(第1目標回転速度)Nobj1を目標回転速度Nobjに設定する。
【0055】
変化率目標値算出手段13は、設定された前回の目標回転速度Nobj(n−1)と現在エンジン回転速度Neとの偏差ΔNe[=Ne−Nobj(n−1)]に基づいて基本変化率目標値(目標値A)dNe_TGT´(n)を算出し、この基本変化率目標値dNe_TGT´(n)を目標回転速度Nobjの増減分(変化率B)dNobjだけ増減して今回のエンジン回転速度変化率目標値dNe_TGT(n)を算出する。
【0056】
つまり、基本変化率目標値dNe_TGT´(n)には、前回と今回との目標回転速度Nobj_TGTの増減分dNobj×dtを考慮しないで、この増減分dNobj×dtを別途考慮して、今回の前記エンジン回転速度変化率目標値dNe_TGT(n)を算出する。
かかる基本変化率目標値dNe_TGT´(n)により、目標回転速度が略一定の場合にも、偏差ΔNeの大きさが極めて大きいからといって基本変化率目標値dNe_TGT´(n)を過剰に大きくせずに(図3参照)、制御のオーバシュートやハンチングを回避することができる。
【0057】
この基本変化率目標値dNe_TGT´(n)に、前回から今回の目標回転速度の変化させるべき分である、外部要求に応じて設定される増減分dNobjを直接加算して、今回のエンジン回転速度変化率目標値dNe_TGT(n)を求めるので、エンジン回転速度変化率目標値dNe_TGT(n)は目標回転速度の変化に速やかに応じた値となる。
第1補正値算出手段14は、こうして算出した今回のエンジン回転速度変化率目標値(目標値C)dNe_TGT(n)とエンジン回転速度変化率現在値dNeとの差分にエンジンクランクシャフト周り(主運動系、フライホイール等を含む)の慣性モーメントIeを乗じて第1エンジン要求トルク補正値(微分補正項)dPi_dを算出する。
【0058】
また、第2補正値算出手段16は、エンジン2の補機類が作動した場合にこれに応じた負荷変化分を第2エンジン要求トルク補正値(補機負荷変化分補正量)dPi_AUXとして算出する。
そして、エンジン要求トルク値算出手段17は、実際のエンジントルク値Pi_ACT_2cを第1エンジン要求トルク補正値(微分補正項)dPi_dと第2エンジン要求トルク補正値(補機負荷変化分補正量)dPi_AUXとにより加算補正して補正後要求トルク値Pi_acc (n)を算出する。
【0059】
エンジントルク制御手段18では、こうして算出された補正後要求トルク値Pi_acc(n)を超えないようにエンジンのトルクを制御する。具体的には、車両の加速中であってドライバ要求トルク値が補正後要求トルク値Pi_acc(n)を超えるとき、エンジン2のスロットル開度を補正後要求トルク値Pi_ acc(n)に対応したものに制御する。
上記のように、第1エンジン要求トルク補正値dPi_dは、一定の目標エンジン回転速度に対して安定した制御を行なうように設定される基本変化率目標値dNe_TGT´(n)に、目標回転速度Nobjの変化に対応した所定の変化率dNobj(n)だけ増減して算出した、エンジン回転速度変化率目標値dNe_TGT(n)に基づいて設定されるので、目標エンジン回転速度Nobjが変化したら、所定の変化率dNobj(n)を増減して今回のエンジン回転速度の変化に速やかに対応して、エンジン2に対し適切なトルクを要求することができる。これにより、目標回転速度が変化する場合であっても、変化する目標値に確実に追従させるようにエンジントルク制御を実施することができる。
【0060】
特に、目標回転速度設定手段12では、加速時には、トルコン6の出力軸42の現在回転速度Ntとエンジンの現在回転速度Neとの比である速度比Nt/Neを引数とするマップからトルコン6のトルク比τと容量係数Cとを決定し、トルク比τ及び容量係数Cと、自動変速機4及び図示しない自動変速機4以降の駆動系の振動特性を考慮して設定されたT/M入力トルク値Taccとから算出したエンジンの回転速度(第2目標回転速度)Nobj2を目標回転速度Nobjに設定する。
【0061】
したがって、車両の加速中であってドライバ要求トルク値が補正後要求トルク値Pi_acc(n)を超えるときには、自動変速機4を含む駆動系の振動特性に応じて設定されたエンジンの目標回転速度Nobjに基づくエンジンの回転速度の変化率の目標値dNe_TGT(n)及び変化率の現在値dNeに基づき算出した第1エンジン要求トルク補正値dPi_dにより、実際のエンジントルク値Pi_ACT_2cを補正した補正後要求トルク値Pi_acc(n)に基づいて、例えば、スロットル開度や点火時期を制御してエンジン2のトルクを制御するため、トルコン6の入力軸回転速度が出力軸回転速度に対して過不足することを回避でき、変速機入力トルクを精度よく制御できるため、加速ショックを有効に緩和できる。
【0062】
また、様々なドライバのアクセル操作条件や車速条件に対応して目標スロットル開度や目標トルクを設定するための、多数のマップを設ける必要がないため、多数のマップを用意するための膨大な工数を省くことができる。
【0063】
〔その他〕
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態の限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、この実施形態の一部を変形したて利用したり、この実施形態の一部のみを利用したりすることが可能である。
【0064】
例えば、上記の実施形態では、実際のエンジントルク値Pi_ACT_2cを第1エンジン要求トルク補正値(微分補正項)dPi_dと第2エンジン要求トルク補正値(補機負荷変化分補正量)dPi_AUXとにより加算補正して補正後要求トルク値Pi_acc(n)を算出しているが、本発明としては第1エンジン要求トルク補正値(微分補正項)dPi_dが必須である。
【0065】
また、上記の実施形態では、エンジントルクに相関するパラメータとして、平均有効圧Piを用いているが、エンジントルクのパラメータはこれに限るものではない。
【符号の説明】
【0066】
2 エンジン
10 エンジンECU(エンジン電子制御ユニット)
11 実エンジントルク推定手段
12 目標回転速度設定手段
12a 速度比算出手段
12b トルク比,容量係数決定手段
12c 回転速度算出手段
13 変化率目標値算出手段
14 第1補正値算出手段
14A 変化率算出手段
16 第2補正値算出手段
17 エンジン要求トルク値算出手段
17A 要求トルク値補正手段
18 エンジントルク制御手段
21 エアーフローセンサ(吸入空気流量検出手段)
22 エンジン回転速度センサ(エンジン回転速度検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと変速機との間にトルクコンバータを有する車両のエンジン制御装置であって、
前記エンジンの回転速度Neを検出する回転速度検出手段と、
前記エンジンの目標回転速度Nobjを設定する目標回転速度設定手段と、
前記回転速度検出手段で検出される現在の回転速度Neに基づき、前記エンジンの回転速度の変化率の現在値dNeを算出する変化率算出手段と、
前記回転速度検出手段で検出される現在の回転速度Ne、及び、前記目標回転速度設定手段で設定される目標回転速度Nobjに基づき、前記エンジンの回転速度の変化率の目標値dNe_TGT(n)を算出する変化率目標値算出手段と、
前記変化率算出手段で算出される前記変化率の現在値dNeと前記変化率目標値算出手段で算出される前記変化率の目標値dNe_TGT(n)とに基づき第1エンジン要求トルク補正値dPi_dを算出し、この第1エンジン要求トルク補正値dPi_dを用いて実際のエンジントルク値を補正した補正後要求トルク値Pi_acc(n)を算出する要求トルク値算出手段と、
前記要求トルク値算出手段で算出された補正後要求トルク値Pi_acc(n)に基づいてエンジンのトルクを制御する制御手段とを備え、
前記目標回転速度設定手段は、
前記トルクコンバータのトルク比τ及び容量係数Cと前記変速機を含む前記車両の駆動系の振動特性に応じて予め設定された変速機入力トルク値Taccとを用いて前記エンジンの回転速度Neを算出する回転速度算出手段を有し、
前記車両の加速中には、前記回転速度算出手段により算出した前記回転速度を前記目標回転速度Nobjに設定する
ことを特徴とする、車両のエンジン制御装置。
【請求項2】
前記目標回転速度設定手段は、前記車両が加速中でない場合には、前記トルクコンバータの出力軸の前記現在回転速度Ntに前記変速機を含む前記車両の駆動系の振動特性に応じて予め設定された増分量Nt_accを加算して前記目標回転速度Nobjを設定する
ことを特徴とする、請求項1記載の車両のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記目標回転速度設定手段は、前記現在の回転速度Neが前記トルクコンバータの出力軸の前記現在回転速度Ntよりも大きい場合に、前記車両が加速中であると判定する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の車両のエンジン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−140898(P2012−140898A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294061(P2010−294061)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】