説明

車両のカウルパネル固定構造

【課題】パネル部の意匠面を構成するカウルパネルとこれに隣接する車体パネル部品との間に生ずる見切り幅を一定に保ってカウル部の外観を高めることができる車両のカウルパネル固定構造を提供すること。
【解決手段】カウル部の意匠面を構成する金属製カウルパネル7の車幅方向両端部がフロントピラーとフェンダパネル4及びフロントフードの3部品によって囲まれる車両の前記金属製カウルパネル7の固定構造として、前記フェンダパネル4に前記金属製カウルパネル7の意匠面より一段下がった受け面4aを両パネル4,7間の見切り線に沿って形成するとともに、前記金属製カウルパネル7の車幅方向両端に別体のカウルブラケット15を固着し、該カウルブラケット15を介して前記金属製カウルパネル7を前記フェンダパネル4の受け面4aに対して車両前後方向と左右方向及び上下方向に位置規制した状態で嵌合固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントガラス下端からフロントフードの後端までの間に配置されるカウル部の意匠面を構成するカウルパネルの固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントガラス下端からフロントフードの後端までの間にはカウル部が配置されており、該カウル部の意匠面を構成するカウルパネルには、フェンダパネルやフロントフード、サイドボディの一部を構成するフロントピラー等の車体パネル部品が隣接している。従って、カウル部の外観を高めるには、カウルパネルとこれに隣接する車体パネル部品との見切り部の位置精度を高める必要がある。
【0003】
そこで、従来、カウル部の意匠面を構成する部品とフェンダパネル等の周辺部品との合わせ部を弾性材で構成された連結部材で連結したり、可撓性を有するシール材によって合わせ部の隙間を埋めるようにした構成が提案されている(特許文献1,2参照)。
【特許文献1】実開平1−145674号公報
【特許文献2】実開平5−044764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来提案された構成によれば、カウル部の意匠面を構成するカウルパネルとその周辺部品との合わせ部の隙間のバラツキは弾性部材やシール材によって吸収することはできるが、両部品間の見切り幅を一定に保つことはできず、又、弾性部材やシール材の変形や撓み、経年劣化等によって各部品に高い位置精度を長期に亘って維持することは困難であった。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、パネル部の意匠面を構成するカウルパネルとこれに隣接する車体パネル部品との間に生ずる見切り幅を一定に保ってカウル部の外観を高めることができる車両のカウルパネル固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、カウル部の意匠面を構成するカウルパネルの車幅方向両端部がフロントピラーとフェンダパネル及びフロントフードの3部品によって囲まれる車両の前記カウルパネルの固定構造として、前記フェンダパネルに前記カウルパネルの意匠面より一段下がった受け面を両パネル間の見切り線に沿って形成するとともに、前記カウルパネルの車幅方向両端に別体のカウルブラケットを固着し、該カウルブラケットを介して前記カウルパネルを前記フェンダパネルの受け面に対して車両前後方向と左右方向及び上下方向に位置規制した状態で嵌合固定することを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記カウルパネルの車幅方向両端の前記フェンダパネルの受け面への嵌合固定部を少なくとも左右に各2箇所ずつ設け、前記フロントフードに近い側の嵌合固定部によって前記カウルパネルの車幅方向と上下方向の位置規制を行い、前記フロントピラーに近い側の嵌合固定部によって前記カウルパネルの車両前後方向と上下方向の位置規制を行うようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記カウルパネルの前記嵌合固定部での固定をクリップの嵌合によって行うことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記クリップは、垂直方向の差込動作によって前記カウルパネルを嵌合固定することを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記カウルパネルの下方に樹脂製カウルカバーを配置し、該樹脂製カウルカバーに前記カウルパネルの車幅方向両端以外の箇所を固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、カウルパネルの車幅方向両端に固着されたカウルブラケットを介してカウルパネルをフェンダパネルの受け面に対して車両前後方向と左右方向及び上下方向に位置規制した状態で嵌合固定するようにしたため、該カウルパネルとこれに隣接するフロントピラーとフェンダパネル及びフロントフードとの見切り幅が一定に保たれてカウル部の外観が高められる。
【0012】
又、カウルパネルは、車幅方向に長くて薄いため、中間部の変形や撓みによって車幅方向両端部での位置寸法のズレが大きくなり易いが、該カウルパネルの車幅方向両端の剛性が別体のカウルブラケットによって高められるため、車幅方向両端部での位置寸法のズレが小さく抑えられる。
【0013】
更に、カウルブラケットをカウルパネルとは別体に構成したため、該カウルブラケットにフランジ等を形成することによってその剛性を高めることができ、このカウルブラケットによってカウルパネルの剛性が更に高められる。又、カウルブラケットのカウルパネルへの接合時にその上下位置を調整することによって、ボディ精度の傾向に合わせたカウルパネルの上下方向高さの調整が可能となり、カウルパネルとカウルブラケットを部組みする際にカウルブラケットの上下方向位置をずらせば、生産上、カウルパネルの位置を調整することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、フロントフードに近い側の嵌合固定部によってカウルパネルの車幅方向と上下方向の位置規制を行うようにしたため、該カウルパネルとフェンダパネルの見切り精度を高めることができるとともに、組み付けに際してカウルパネルのフェンダバネルとの干渉を防ぐことができる。
【0015】
又、フロントピラーに近い側の嵌合固定部によってカウルパネルの車両前後方向と上下方向の位置規制を行うようにしたため、フェンダパネルに合わせてカウルパネルの位置が決まるとともに、フロントピラーとカウルパネルとの見切りもフェンダパネルに一致させることができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、カウルパネルの固定箇所が狭くて複雑な形状を有していても、該カウルパネルの車幅方向両端部をクリップの嵌合によってフェンダパネルの受け面に簡単に固定することができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、車幅方向に撓ませて左右両端部を嵌合固定することが困難であるカウルパネルであっても、クリップの垂直方向の差込動作によってカウルパネルを容易に組み付けることができるとともに、該カウルパネルに隣接する車体パネル部品の意匠面への傷付きを防ぐことができる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、カウルパネルの見切り部が集まる車幅方向両端部のみを剛性の高いフェンダパネルに固定し、それ以外の部分を柔軟性を有した樹脂製カウルカバーに固定するようにしたため、長尺方向のカウルパネルの両端では高い位置精度を確保しつつ、その他の場所ではカウルカバーによる支持効果と衝撃吸収効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は車両カウル部の部分斜視図、図2は図1のA−A線拡大断面図、図3はカウル部の樹脂製ガーニッシュ部分の斜視図、図4は樹脂製カウルカバーの左半分を示す部分斜視図、図5は同樹脂製カウルカバーの右半分を示す部分斜視図、図6は金属製カウルカバー左端部のフェンダパネルへの固定構造を示す部分斜視図、図7は図6のB−B線拡大断面図、図8は図6のC−C線拡大断面図、図9はカウルブラケットのフェンダパネルへの固定構造を示す分解斜視図、図10はカウル部の組付構造を示す分解斜視図である。
【0021】
図1及び図2に示すように、車両前部のフロントガラス1の下端とその前方に位置するフロントフード2の後端との間にはカウル部3が車幅方向に沿って設けられている。そして、カウル部3の左右両端部には金属製のフェンダパネル4が隣接しており、該フェンダパネル4とカウル部3との見切り線に沿った車両後方には左右一対のフロントピラー5を含むサイドボディ6が繋がっている。
【0022】
ところで、本実施の形態においては、図2に示すように、カウル部3は、フロントフード2に連続する意匠面を構成する金属製カウルパネル7とその下方に配された樹脂製カウルカバー8とで2層構造として構成されている。ここで、金属製カウルパネル7は、フロントフード2と同じ質感を有する金属で構成されており、鋼板をプレス成形することによって得られ、これには車体色と同色の塗装が施されている。
【0023】
又、図3及び図10に示すように、金属製カウルパネル7の前縁の幅方向中央には横方向に細長い切欠き7aが形成されており、この切欠き7aには樹脂製ガーニッシュ9が取り付けられている。この樹脂製ガーニッシュ9は樹脂にて一体成形されており、図3に詳細に示すように、これには横方向に長いスリット状の複数の外気導入口9aが形成されている。
【0024】
他方、前記樹脂製カウルカバー8は、樹脂の一体成形品であって、その長手方向(横方向)の長さは金属製カウルパネル7のそれよりも若干短く、幅方向(前後方向)の長さ(幅寸法)は金属製カウルパネル7のそれよりも若干長く(幅広に)設定されている。そして、この樹脂製カウルカバー8の幅方向片側半分(左半分)には、図4に示すように、前後方向に長いスリット状の複数の外気導入口8aが形成される一方、該外気導入口8aが形成されていない図5に示す他側の片側半分(右半分)は、不図示のワイパーモジュールを上方から覆っている。尚、図2において、10はウォッシャノズルに洗浄液を供給するためのウォッシャホースである。
【0025】
又、図2に示すように、樹脂製カウルカバー8の前端部上にはリブ状の突起8bが全幅に亘って斜め上方に一体に突設されており、この突起8bにはゴム等の弾性材から成るシール部材11が被着されており、このシール部材11が前記フロントフード2の後端裏面に当接してエンジンルーム12をシールしている。ここで、樹脂製カウルカバー8の突起8bの基端部には、肉厚が部分的に薄い脆弱部8cが形成されており、この脆弱部8cが当該樹脂製カウルカバー8の割れの起点となる。
【0026】
次に、カウル部3を構成する前記金属製カウルパネル7と樹脂製カウルカバー8及び樹脂製ガーニッシュ9の組付構造を図10に基づいて説明する。
【0027】
先ず、樹脂製カウルカバー8の複数箇所(本実施の形態では4箇所)を車体側のカウルフロントパネル13にクリップ14によって取り付け、又、樹脂製カウルカバー8に部組みされたクリップ(本実施の形態では3箇所)を車体側のカウルトップパネル20に取り付け、その上に金属製カウルパネル7を取り付け、この金属製カウルパネル7に樹脂製ガーニッシュ9を取り付ける。
【0028】
ここで、上記金属製カウルパネル7の左右両端下面には別体のカウルブラケット15がそれぞれ固着されており、金属製カウルパネル7は、その左右両端の計4箇所が図6〜図9に示すフェンダパネル4内側の1段下がった受け面4aに2種類のクリップ16,17によって取り付けられ、他の2箇所が樹脂製カウルカバー8に不図示のクリップによって取り付けられ、更に別の2箇所がスクリュー18による締め付けによって樹脂製カウルカバー8に取り付けられる。
【0029】
ところで、前述のように金属製カウルパネル7に車体色と同色の塗装を施すと、該金属製カウルパネル7に隣接するフロントフード2との隙間が目立ち易い。特に、金属製カウルパネル7の左右両端部はフロントフード2とフェンダパネル4及びフロントピラー5の3部品によって囲まれた3方向に見切りが生じるため、これら全ての見切りを一定幅に保つことが要求され、一層厳しい見切り幅の規制が必要となる。
【0030】
そこで、本発明は、前述のように金属製カウルパネル7の車幅方向両端(左右端)に別体のカウルブラケット15を固着し、該カウルブラケット15を介して金属製カウルパネル7の左右両端をフェンダパネル4の受け面4aに対して車両前後方向と左右方向及び上下方向に位置規制した状態で嵌合固定するようにしている。以下に本発明の要旨を構成する金属製カウルブラケット7の左右両端の固定構造の詳細を図6〜図9に基づいて説明する。尚、図6〜図9には金属製カウルパネル7の幅方向一端(左端)の取付構造のみを示すが、他端(右端)の取付構造も同様であるため、これについての図示は省略する。
【0031】
本発明においては、フェンダパネル4に形成された前記受け面4aのフロントフード2に近い側(車両前方側)に金属製カウルパネル7の車幅方向と上下方向の位置規制が可能な嵌合固定部を設け、フロントピラー5に近い側(車両後方側)に金属製カウルパネル7の車両前後方向と上下方向の位置規制が可能な嵌合固定部を設けている。
【0032】
具体的には、図9に示すように、左右一対のフェンダパネル4の受け面4aのフロントフード2に近い側(車両前方側)には車両前後方向に長い矩形の嵌合孔4bが形成され、その後方のフロントピラー5に近い側には円孔4cがそれぞれ形成されている。
【0033】
又、左右一対の前記カウルブラケット15は、板金のプレス成形品であって、フロントフード2に近い側(車両前方側)には下方に向かって矩形の嵌合孔を備えた係止片15aが上下方向に垂直に形成され、その後方のフロントピラー5に近い側の水平に折り曲げられた部分にはU字状に切り欠かれた嵌合溝15bが形成されている。
【0034】
ここで、前側の前記クリップ16は、図7及び図9に示すように、長手方向がフェンダパネル4と金属製カウルパネル7との見切り方向(車両前後方向)に沿った長方形の筒状形状に成形されており、これはフェンダパネル4の受け面4aに形成された前記嵌合孔4bに上方から垂直に差し込まれて嵌合される。
【0035】
而して、金属製カウルパネル7は、図7及び図9に示すように、これの左右両端に固着されたカウルブラケット15に形成された前記係止片15aをクリップ16の長方形の溝16aに上方から垂直に差し込み、クリップ16の爪とカウルブラケット15の矩形の嵌合孔が嵌合することによって、車幅方向と上下方向が位置規制された状態でフェンダパネル4の受け面4aに固定される。そして、図7に示すように係止片15aをクリップ16の一番奥まで差し込めば、金属製カウルカバー7の左右両端が浮き上がることなく確実に固定される。
【0036】
以上のように、カウルブラケット15の係止片15aをクリップ16の溝16aに垂直に差し込むことによって、金属製カウルパネル7が車幅方向と上下方向の位置が規制されながらフェンダパネル4の受け面4aに固定されるため、該金属製カウルパネル7とフェンダパネル4の見切り精度が高められ、両者間の見切り幅が一定に保たれるとともに、組み付け時の金属製カウルパネル7のフェンダパネル4との干渉が防がれ、組付作業性が高められるとともに、フェンダパネル4の傷付きが防がれる。
【0037】
又、金属製カウルパネル7を固定する前にクリップ16がフェンダパネル4側に取り付けられているため、金属製カウルパネル7がフェンダパネル4の動きに合わせて車幅方向と上下方向に動き、フェンダパネル4の調整に合わせて金属製カウルパネル7とフェンダパネル4の見切りが自動的に決まる。このような嵌合構造をフェンダパネル4と板金製カウルパネル7との見切り上の車両前後方向における前方側(フロントフード2側)に設けることによって、フロントフード2とフェンダパネル4の比較的長い範囲に亘って見切りが延在する箇所において高い見切り幅精度を確保することができる。
【0038】
他方、前記クリップ17は、差込みピンタイプのクリップのものであって、図8に示すように、フェンダパネル4の受け面4aに形成された円孔4cに上方から差し込まれる差込み部17aと、円孔4cよりも大径の頭部17bとを備えている。
【0039】
而して、金属製カウルパネル7の左右両端の車両後方側のフェンダパネル4への固定に際しては、カウルブラケット15に形成された嵌合溝15bにクリップ17の頭部17bを差し込んで該クリップ17をカウルブラケット15側に予め取り付けておく。そして、このクリップ17の差込み部17aをフェンダパネル4の受け面4aに形成された円孔4cに上方から垂直に差し込むことによって、金属製カウルパネル7の左右両端の車両後方側がフェンダパネル4に固定される。
【0040】
ここで、カウルブラケット15の嵌合溝15bは車幅方向に形成されているため、金属製カウルパネル7を車両前後方向に高い精度で規制してフェンダパネル4に固定することができる。この結果、金属製カウルパネル7をフェンダパネル4に合わせて位置決めすることができるとともに、フロントピラー5(サイドボディ6)と金属製カウルパネル7との見切りもフェンダパネル4と一致させることができる。特に、この範囲は短い距離ではあるが、形状の変化が激しい複雑な部分であるため、金属製カウルパネル7の左右両端のクリップ17による1点での固定は有効である。尚、カウルブラケット15に形成された嵌合溝15bは車幅方向に形成されているため、金属製カウルパネル7左右両端は、その車両後方側が車幅方向には規制されないが、前側のクリップ16によって車両前後方向の比較的長い範囲で車幅方向の規制がなされるため、該金属製カウルパネル7の車幅方向の位置ズレは発生しない。
【0041】
以上のようにして金属製カウルパネル7の左右両端の計4箇所がフェンダパネル4内側の1段下がった受け面4aに2種類のクリップ16,17によって取り付けられ、他の2箇所が樹脂製カウルカバー8にクリップ14によって取り付けられ、更に別の2箇所がスクリュー18による締め付けによって樹脂製カウルカバー8に取り付けられると、最後に樹脂製ガーニッシュ9の2箇所を不図示のクリップによって金属製カウルパネル7に取り付ければ、カウル部3の組み付けが完了する。
【0042】
而して、以上のように本実施の形態では、金属製カウルパネル7の車幅方向両端に固着されたカウルブラケット15を介して金属製カウルパネル7をフェンダパネル4の受け面4aに対して車両前後方向と左右方向及び上下方向に位置規制した状態で嵌合固定するようにしたため、該金属製カウルパネル7とこれに隣接するフロントピラー5とフェンダパネル4及びフロントフード2との見切り幅が一定に保たれてカウル部3の外観が高められる。
【0043】
ところで、金属製カウルパネル7は、車幅方向に長くて薄いため、中間部の変形や撓みによって車幅方向両端部での位置寸法のズレが大きくなり易いが、該金属製カウルパネル7の車幅方向両端の剛性が別体のカウルブラケット15によって高められるため、車幅方向両端部での位置寸法のズレが小さく抑えられる。
【0044】
又、本実施の形態では、カウルブラケット15を金属製カウルパネル7とは別体に構成したため、該カウルブラケット15にフランジ等を形成することによってその剛性を高めることができ、このカウルブラケット15によって金属製カウルパネル7の剛性が更に高められる。そして、カウルブラケット15の金属製カウルパネル7への接合時にその上下位置を調整することによって、ボディ精度の傾向に合わせた金属製カウルパネル7の上下方向高さの調整が可能となり、金属製カウルパネル7とカウルブラケット15を部組みする際にカウルブラケット15の上下方向位置をずらせば、生産上、金属製カウルパネル7の位置を調整することができる。
【0045】
更に、本実施の形態では、金属製カウルパネル7が車幅方向に撓ませて左右両端部を嵌合固定することが困難である部品であっても、クリップ16,17の垂直方向の差込動作によって金属製カウルパネル7を容易に組み付けることができるとともに、該金属製カウルパネル7に隣接するフロントフード2、フェンダパネル4、フロントピラー5を含むサイドボディ6等の車体パネル部品の意匠面への傷付きを防ぐことができる。
【0046】
又、本実施の形態では、金属製カウルパネル7の見切り部が集まる車幅方向両端部のみを剛性の高いフェンダパネル15に固定し、それ以外の部分を柔軟性を有した樹脂製カウルカバー8に固定するようにしたため、長尺方向のカウルパネルの両端では高い位置精度を確保しつつ、その他の場所ではカウルカバー8による支持効果と衝撃吸収効果を得ることができる。見切りのバラツキが目立たない箇所でバラツキを吸収し、金属製カウルパネル7全体の歪みの発生を防ぐことができる。
【0047】
その他、本実施の形態では、カウル部3の意匠面を金属製カウルパネル7で構成したため、車両の前部から側部にかけて、フロントガラス1を除く殆どの意匠面が塗装を施した金属パネルで構成されることとなり、樹脂の成形技術が未だ余り進歩していなかった時代の車と同様な質感を得て車両にレトロな雰囲気の外観を与えることができる。
【0048】
又、金属製カウルパネル7を車体色と同色とすることによって、該金属製カウルパネル7の塗装を車体の塗装と同時に行うことができるため、塗装コストが大幅に削減されるとともに、金属製カウルパネル7と車体との色合わせが完全に一致するために車両に高い外観性が得られる。
【0049】
更に又、本実施の形態では、図4に示すように樹脂製カウルカバー8の幅方向片側半分(左半分)に外気導入口8aを形成し、図5に示すように樹脂製カウルカバー8の外気導入口8aが形成されていない片側半分(右半分)で不図示のワイパーモジュールを覆うようにしたため、外気導入口8aによって必要な外気導入量を確保しつつ、ワイパーモジュールの被水を防ぐことができる。そして、樹脂製カウルカバー8が意匠面を構成する金属製カウルパネル7の下側に配置されるため、該樹脂製カウルカバー8に外気導入口8aを意匠に影響を与えることなく比較的自由に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】車両カウル部の部分斜視図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】カウル部の樹脂製ガーニッシュ部分の斜視図である。
【図4】樹脂製カウルカバーの左半分を示す部分斜視図である。
【図5】樹脂製カウルカバーの右半分を示す部分斜視図である。
【図6】樹脂製カウルカバーの左半分を示す部分斜視図である。
【図7】図6のB−B線拡大断面図である。
【図8】図6のC−C線拡大断面図である。
【図9】カウルブラケットのフェンダパネルへの固定構造を示す分解斜視図である。
【図10】カウル部の組付構造を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1 フロントガラス
2 フロントフード
3 カウル部
4 フェンダパネル
4a フェンダパネルの受け面
4b フェンダパネルの嵌合孔
4c フェンダパネルの円孔
5 フロントピラー
6 サイドボディ
7 金属製カウルパネル
7a 金属製カウルパネルの切欠き
8 樹脂製カウルカバー
8a 樹脂製カウルカバーの外気導入口
8b 樹脂製カウルカバーの突起
8c 樹脂製カウルカバーの脆弱部
9 樹脂製ガーニッシュ
9a 樹脂製ガーニッシュの外気導入口
10 ウォッシャホース
11 シール部材
12 エンジンルーム
13 カウルフロントパネル
14 クリップ
15 カウルブラケット
15a カウルブラケットの係止片
15b カウルブラケットの嵌合溝
16 クリップ
16a クリップの溝
17 クリップ
17a クリップの差込み部
17b クリップの頭部
18 スクリュー
20 カウルトップパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カウル部の意匠面を構成するカウルパネルの車幅方向両端部がフロントピラーとフェンダパネル及びフロントフードの3部品によって囲まれる車両の前記カウルパネルの固定構造であって、
前記フェンダパネルに前記カウルパネルの意匠面より一段下がった受け面を両パネル間の見切り線に沿って形成するとともに、前記カウルパネルの車幅方向両端に別体のカウルブラケットを固着し、該カウルブラケットを介して前記カウルパネルを前記フェンダパネルの受け面に対して車両前後方向と左右方向及び上下方向に位置規制した状態で嵌合固定することを特徴とする車両のカウルパネル固定構造。
【請求項2】
前記カウルパネルの車幅方向両端の前記フェンダパネルの受け面への嵌合固定部を少なくとも左右に各2箇所ずつ設け、前記フロントフードに近い側の嵌合固定部によって前記カウルパネルの車幅方向と上下方向の位置規制を行い、前記フロントピラーに近い側の嵌合固定部によって前記カウルパネルの車両前後方向と上下方向の位置規制を行うようにしたことを特徴とする請求項1記載の車両のカウルパネル固定構造。
【請求項3】
前記カウルパネルの前記嵌合固定部での固定をクリップの嵌合によって行うことを特徴とする請求項2記載の車両のカウルパネル固定構造。
【請求項4】
前記クリップは、垂直方向の差込動作によって前記カウルパネルを嵌合固定することを特徴とする請求項3記載の車両のカウルパネル構造。
【請求項5】
前記カウルパネルの下方に樹脂製カウルカバーを配置し、該樹脂製カウルカバーに前記カウルパネルの車幅方向両端以外の箇所を固定することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の車両のカウルカバー固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−255788(P2009−255788A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108478(P2008−108478)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】