説明

車両のサイドシル後部構造

【課題】 材料の歩留まりを良好にしてコスト的に有利に得られ、かつ、サイドシルの強度を十分に確保できる車両のサイドシル後部構造を提供する。
【解決手段】 サイドシル2の後端部にリアサイドメンバ4の前端部を結合するにあたって、リアサイドメンバ4を断面略U字状に形成し、その内側壁4inの上端部および外側壁4outの上端部をリアフロア5の下面に結合して閉断面を形成する一方、サイドシル2の後端部をサイドシルアウタパネル2outのみの断面略コ字状に形成し、その上側壁2upの先端部および下側壁2lowの先端部を、前記リアサイドメンバ4の外側壁4outの上・下端部に結合して該リアサイドメンバ4の外側壁4outと共同して閉断面を構成することにより、リアサイドメンバ4はその全長に亘って断面略U字状に形成すればよく、また、サイドシルアウタパネル2outはその全長に亘って断面略コ字状に形成すればよいため、材料の歩留まりを良好にしてコスト低減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサイドシル後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車幅方向両側下部に車両前後方向に延在するサイドシルの後部には、その内側にリアサイドメンバが結合されている。このリアサイドメンバはサイドシルの後端よりも更に後方に延在して、その後方延在部分は下壁、内側壁および外側壁によって断面U字状に形成されて、内側壁および外側壁の上端部をリアフロアに結合することにより閉断面を構成しているが、リアサイドメンバがサイドシルに並設する前端部分では前記外側壁を切除して断面L字状とし、前記下壁をサイドシルインナパネルの下部に結合することにより、サイドシルインナパネルをリアサイドメンバの外側壁として用いるようにしている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−306777号公報(第4頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、かかる従来のサイドシル後部構造では、サイドシルに並設されるリアサイドメンバ前端部分の外側壁は、前述したように切除されて破棄される部分であり、そのために材料の歩留まりが悪化してコスト的に不利となってしまう。
【0004】
そこで、本発明は材料の歩留まりを良好にしてコスト的に有利に得ることができる車両のサイドシル後部構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にあっては、車両の車幅方向両側下部に車両前後方向に延在し、サイドシルアウタパネルおよびサイドシルインナパネルからなるサイドシルを備えた車両のサイドシル後部構造であって、前記サイドシルアウタパネルは、車幅方向内方が開放する断面略コ字状に形成され、前記リアサイドメンバの車幅方向外側に結合し、前記リアサイドメンバの少なくとも外側壁と共同して車両前後方向に閉断面を構成することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、サイドシルアウタパネルは、リアサイドメンバの外側壁と共同して車両前後方向に閉断面を構成するようにしてあるので、リアサイドメンバおよびサイドシルを形成するにあたって材料を無駄にすることが無いため、材料の歩留まりを良好にしてコスト低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0008】
図1〜図4は本発明にかかる車両のサイドシル後部構造の一実施形態を示し、図1は本発明が適用される自動車の側面図、図2はサイドシル後部の分解斜視図、図3は図2中A−A線に対応する組み付け状態の断面図、図4は図2中B−B線に対応する組み付け状態の断面図である。
【0009】
本実施形態のサイドシル後部構造は、図1に示すように自動車1の車幅方向両側下部に車両前後方向に延在するサイドシル2の後端部分Rに適用される。
【0010】
前記サイドシル2は図2に示すようにサイドシルアウタパネル2outとサイドシルインナパネル2inとで閉断面に形成され、その車両後端がリアタイヤハウス3で終端となっていて、該サイドシル2の後部内側(車幅方向内方)にはリアサイドメンバ4の前端部が結合され、このリアサイドメンバ4はサイドシル2の後端から更に後方に延在している。
【0011】
ここで、本実施形態では前記サイドシル2と前記リアサイドメンバ4を結合するにあたって、図3に示すようにリアサイドメンバ4を断面略U字状に形成し、その内側壁4inの上端部および外側壁4outの上端部をフロアとしてのリアフロア5の下面に結合して閉断面を形成する一方、サイドシル2の後部をサイドシルアウタパネル2outのみの断面略コ字状に形成し、その上側壁2upの先端部(車幅方向内側端)および下側壁2lowの先端部(車幅方向内側端)を、前記リアサイドメンバ4の外側壁4outの上・下端部に結合して該リアサイドメンバ4の外側壁4outと共同して閉断面を構成してある。
【0012】
つまり、前記リアサイドメンバ4は開放側が上方となるように断面略U字状に形成してあり、前記内側壁4inの上端部にはフランジ部4aが形成されるとともに、外側壁4outの上端部にはサイドシル2方向に折曲した上面部としての折曲壁4bが形成され、前記フランジ部4aと前記折曲壁4bにリアフロア5がスポット溶接される。
【0013】
また、前記サイドシルアウタパネル2outは、開放側がリアサイドメンバ4側となる断面略コ字状に形成され、上側壁2upの先端部にフランジ部2aを形成して、そのフランジ部2aを前記リアサイドメンバ4の折曲壁4bの先端部(車幅方向外側端)に形成したフランジ部4cにスポット溶接してある。
【0014】
一方、前記サイドシルアウタパネル2outの前記下側壁2lowの先端部に、前記リアサイドメンバ4の内側壁4outの延長上で下方に折曲したフランジ部2bを形成し、このフランジ部2bと前記リアサイドメンバ4の底壁4botとに亘って、ブラケットとしてのジョイントブラケット6を結合してある。該ブラケット6は、断面L字状に形成され、ジャッキアップブラケットを兼ねている。
【0015】
従って、前記サイドシルアウタパネル2outの下側壁2lowの先端部は、前記ジョイントブラケット6を介してリアサイドメンバ4の外側壁4outの下端部に結合されることになり、結果的にサイドシルアウタパネル2outは、上側壁2upの先端部と下側壁2lowの先端部とによってリアサイドメンバ4に強固に結合されることになる。
【0016】
このとき、前記サイドシルアウタパネル2outの下側壁2lowの先端部に形成したフランジ部2bは、リアサイドメンバ4の内側壁4outの延長上に形成されるため、前記下側壁2lowのフランジ部2bを形成した角部2cは、前記リアサイドメンバ4の外側壁4outの下端に当接した状態で、前記内側壁4outと前記フランジ部2bとは略一直線上に配置されることになる。
【0017】
従って、前記ジャッキアップブラケットを兼ねた断面L字状のジョイントブラケット6に入力されたジャッキアップ時の荷重の作用方向が、前記リアサイドメンバ4の外側壁4outに沿った方向となり、ジャッキアップ荷重がその外側壁4outで支持される。
【0018】
また、前記ジョイントブラケット6は、ジャッキアップブラケットを兼ねるにあたって、図2,図4に示すようにジャッキ受け面用のエンボス部6aを下向きに膨出形成してあり、また、前記リアサイドメンバ4の底壁4botには前記エンボス部6aに対応する部位に同方向にエンボス部4dを膨出形成して2枚合わせ構造としてある。
【0019】
サイドシルインナパネル2inは、L字状に形成され、その上側壁2up1の端部に曲折成形したフランジ部2a1および下端のフランジ部2b1と、サイドシルアウタパネル2outのフランジ部2a,2bとを重合してスポット溶接してある。
【0020】
また、リアサイドメンバ4の前端部における外側壁4out、折曲壁4b、フランジ部4cは、それぞれこのサイドシルインナパネル2inの後端部における一般壁、上側壁2up1、上側のフランジ部2a1に重合してスポット溶接により連続的に結合してある。
【0021】
なお、図2中7はリアフロア下面に接合して車幅方向に延在する閉断面を構成するクロスメンバを示し、その車幅方向端部をサイドシルインナパネル2inの一般壁に突き合わせて接合する一方、リアサイドメンバ4の前端はこのクロスメンバ7の後側壁に突き合わせて結合される。
【0022】
以上の構成により本実施形態のサイドシル後部構造によれば、サイドシル2の後端部では、リアサイドメンバ4の外側壁4outがサイドシルインナパネル2inに連続的に結合してそのままサイドシルインナパネルを兼ねるようにしてあるので、後面衝突の入力をリアサイドメンバ4からサイドシル2へスムーズに伝達することができて、荷重伝達性能を向上することができる。
【0023】
また、リアサイドメンバ4はその全長に亘って断面略U字状に形成すればよく、サイドシルアウタパネル2outはその全長に亘って断面略コ字状に形成すればよい。
【0024】
このため、リアサイドメンバ4およびサイドシル2を形成するにあたって材料を無駄にすることが無いため、材料の歩留まりを良好にしてコスト低減を図ることができる。
【0025】
更に、断面略コ字状に形成したサイドシルアウタパネル2outの上側壁2upの先端部および下側壁2lowの先端部を、前記リアサイドメンバ4の外側壁4outの上・下端部に結合したので、リアサイドメンバ4とサイドシルアウタパネル2outとを複数列、つまり2列の結合点K1,K2(図3参照)で結合できるため、リアサイドメンバ4とサイドシル2との結合剛性を高めることができる。
【0026】
また、本実施形態では前記サイドシルアウタパネル2outの下側壁2lowをリアサイドメンバ4の外側壁4outの下端部に結合するにあたって、サイドシルアウタパネル2outの下側壁2lowの先端部に、リアサイドメンバ4の内側壁4outの延長上で下方に折曲したフランジ部2bを形成し、このフランジ部2bと前記リアサイドメンバ4の底壁4botとに亘って、ジャッキアップブラケットを兼ねた断面L字状のジョイントブラケット6を結合してあるので、ジャッキアップ時にサイドシル2の断面変形を抑える部品が不要になるとともに、ジャッキアップ強度対策のために前記ジョイントブラケットの厚肉化を抑制できるため、更なるコストダウンを図ることができる。
【0027】
ところで、本発明は前記実施形態に例をとって説明したが、この実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。例えば、図5のようにリアサイドメンバ4の底壁4botに、内側壁4inの延長上にジョイントブラケット6Aを接合配置する一方、サイドシルアウタパネル2Aは、その下壁2lowをリアサイドメンバ4の底壁4botの下側を跨ぐように形成して、フランジ部2bをジョイントブラケット6Aにスポット溶接して結合することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明が適用される自動車の側面図。
【図2】本発明の一実施形態におけるサイドシル後端部の分解斜視図。
【図3】図2中A−A線に対応する組み付け状態の断面図。
【図4】図2中B−B線に対応する組み付け状態の断面図。
【図5】本発明の他の実施形態を示す断面図。
【符号の説明】
【0029】
1 自動車(車両)
2 サイドシル
2out サイドシルアウタパネル
2up 上側壁
2low 下側壁
2in サイドシルインナパネル
2up1 上側壁
2low 下側壁
4 リアサイドメンバ
4in 内側壁
4b 折曲壁(上面部)
4out 外側壁
4bot 底壁
5 リアフロア(フロア)
6,6A ジョイントブラケット(ブラケット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車幅方向両側下部に車両前後方向に延在し、サイドシルアウタパネルおよびサイドシルインナパネルからなるサイドシルを備えた車両のサイドシル後部構造であって、
前記サイドシルアウタパネルは、車幅方向内方が開放する断面略コ字状に形成され、前記リアサイドメンバの車幅方向外側に結合し、前記リアサイドメンバの少なくとも外側壁と共同して車両前後方向に閉断面を構成することを特徴とする車両のサイドシル後部構造。
【請求項2】
前記リアサイドメンバをフロア下面に結合して閉断面を形成する一方、
前記サイドシルアウタパネルの下側壁の車幅方向内側端に、前記リアサイドメンバの外側壁の延長上で下方に折曲したフランジ部を形成し、このフランジ部と前記リアサイドメンバとに亘ってブラケットを結合したことを特徴とする請求項1に記載の車両のサイドシル後部構造。
【請求項3】
ブラケットは、ジャッキアップブラケットを兼ねた断面L字状のジョイントブラケットであることを特徴とする請求項2に記載の車両のサイドシル後部構造。
【請求項4】
前記リアサイドメンバの車幅方向外側は、外側壁の上端部から略水平方向に折曲した上面部と、該上面部の車幅方向外側端から上方に延びるフランジ部と、を有し、
前記リアサイドメンバの前端部における前記外側壁、上面部、フランジ部は、それぞれ、サイドシルインナパネルの一般壁、上側壁、上側フランジ部に連続的に結合することを特徴とする請求項3に記載の車両のサイドシル後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−45335(P2007−45335A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232411(P2005−232411)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】